(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】電動車両の駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 3/093 20060101AFI20231121BHJP
B60K 1/02 20060101ALI20231121BHJP
B60L 15/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
F16H3/093
B60K1/02
B60L15/00 Z
(21)【出願番号】P 2019213803
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】日下部 誠
(72)【発明者】
【氏名】長田 育充
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-199105(JP,A)
【文献】特開2018-100709(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102018203456(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第106828072(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/093
B60K 1/02
B60L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電動機と、
第2電動機と、
共通の軸線周りに回転可能な第1、第2および第3要素を有する遊星歯車機構と、
第1電動機の出力を遊星歯車機構の第1要素に伝達する第1伝達経路と、
第2電動機の出力を遊星歯車機構の第2要素に伝達する第2伝達経路と、
第1電動機の出力を
第2伝達経路に減速して伝達する第3伝達経路であって、伝達された第1電動機の出力が第2伝達経路を介して遊星歯車機構の第2要素
に伝達
される、第3伝達経路と、
第2電動機の出力を
第1伝達経路に減速して伝達する第4伝達経路であって、伝達された第2電動機の出力が第1伝達経路を介して遊星歯車機構の第1要素
に伝達
される、第4伝達経路と、
第1電動機の出力を第1伝達経路または第3伝達経路に切り換え可能に接続する第1切り換え機構と、
第2電動機の出力を第2伝達経路または第4伝達経路に切り換え可能に接続する第2切り換え機構と、
遊星歯車機構の第3要素に接続される出力要素と、
を含む、電動車両の駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両の駆動装置であって、
第1伝達経路は、遊星歯車機構の第1要素と一体に回転する第1被駆動ギヤと、当該第1被駆動ギヤとかみ合う第1駆動ギヤとを有し、
第2伝達経路は、遊星歯車機構の第2要素と一体に回転する第2被駆動ギヤと、当該第2被駆動ギヤとかみ合う第2駆動ギヤとを有し、
第3伝達経路は、第1駆動ギヤと同軸に配置された第3駆動ギヤと、第2駆動ギヤと一体に回転する第3被駆動ギヤと、第3駆動ギヤおよび第3被駆動ギヤとかみ合い、第3駆動ギヤと第3被駆動ギヤを接続する第1中間ギヤセットとを有し、
第4伝達経路は、第2駆動ギヤと同軸に配置された第4駆動ギヤと、第1駆動ギヤと一体に回転する第4被駆動ギヤと、第4駆動ギヤおよび第4被駆動ギヤとかみ合い、第4駆動ギヤと第4被駆動ギヤを接続する第2中間ギヤセットとを有し、
第1切り換え機構は、第1電動機の出力を第1駆動ギヤまたは第3駆動ギヤに切り換え可能に接続し、
第2切り換え機構は、第2電動機の出力を第2駆動ギヤまたは第4駆動ギヤに切り換え可能に接続する、
電動車両の駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電動車両の駆動装置であって、第1被駆動ギヤ、第2被駆動ギヤ、第1中間ギヤセットおよび第2中間ギヤセットは、同軸に配置されている、電動車両の駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電動車両の駆動装置であって、第1被駆動ギヤ、第2被駆動ギヤ、第1中間ギヤセットおよび第2中間ギヤセットは、共通の軸に支持されている、電動車両の駆動装置。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の電動車両の駆動装置であって、遊星歯車機構の第1要素が第1サンギヤであり、第2要素が第2サンギヤであり、第3要素が第2サンギヤにかみ合う第1プラネタリピニオンと、第1サンギヤおよび第1プラネタリピニオンにかみ合う第2プラネタリピニオンとを回転可能に支持するプラネタリキャリヤである、電動車両の駆動装置。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか1項に記載の電動車両の駆動装置であって、遊星歯車機構の第1要素または第2要素の回転を阻止可能な係止機構、を含む電動車両の駆動装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電動車両の駆動装置であって、第3伝達経路の減速作用担う要素と第4伝達経路の減速作用を担う要素とは互いに異なる要素である、電動車両の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の駆動装置、特に2機の電動機を備えた駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を駆動する原動機として2機の電動機を備えた車両が知られている。下記特許文献1には、第1電動機(M1)と第2電動機(M2)を備えた電動車両が開示されている。第1電動機(M1)は、第1入力歯車対(40)を介して遊星歯車機構(12)の第1サンギヤ(18)に接続され、第2電動機(M2)は、第2入力歯車対(46)を介して遊星歯車機構(12)の第2サンギヤ(20)に接続されている。なお、( )内の符号は下記特許文献1にて使用されている符号であり、本願の実施の形態の説明で使用される符号とは関連しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の装置では、第1および第2電動機と遊星歯車機構とを接続する伝達経路の変速比は固定されている。伝達経路に2対の並列する歯車対を設け、これらを切り換えることで変速比を変更可能になるが、大きな変速比を得ようとすると、装置が大形化する。
【0005】
本発明は、装置の大形化を抑制しつつ、大きな変速比を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動車両の駆動装置は、第1電動機と、第2電動機と、共通の軸線周りに回転可能な第1、第2および第3要素を有する遊星歯車機構とを含む。また、当該駆動装置は、第1電動機の出力を遊星歯車機構の第1要素に伝達する第1伝達経路と、第2電動機の出力を遊星歯車機構の第2要素に伝達する第2伝達経路と、第1電動機の出力を、第2伝達経路を介して遊星歯車機構の第2要素に減速して伝達する第3伝達経路と、第2電動機の出力を、第1伝達経路を介して遊星歯車機構の第1要素に減速して伝達する第4伝達経路とを含む。さらに、当該駆動装置は、第1電動機の出力を第1伝達経路または第3伝達経路に切り換え可能に接続する第1切り換え機構と、第2電動機の出力を第2伝達経路または第4伝達経路に切り換え可能に接続する第2切り換え機構とを含む。遊星歯車機構の第3要素は出力要素に接続される。
【0007】
第3伝達経路と第2伝達経路の2つの伝達経路、また第4伝達経路と第1伝達経路の2つの伝達経路を介して出力の伝達を行うことにより、大きな変速比を得ることができる。
【0008】
第1伝達経路は、遊星歯車機構の第1要素と一体に回転する第1被駆動ギヤと、当該第1被駆動ギヤとかみ合う第1駆動ギヤとを有するものとすることができ、第2伝達経路は、遊星歯車機構の第2要素と一体に回転する第2被駆動ギヤと、当該第2被駆動ギヤとかみ合う第2駆動ギヤとを有するものとすることができる。第3伝達経路は、第1駆動ギヤと同軸に配置された第3駆動ギヤと、第2駆動ギヤと一体に回転する第3被駆動ギヤと、第3駆動ギヤおよび第3被駆動ギヤとかみ合い、第3駆動ギヤと第3被駆動ギヤを接続する第1中間セットとを有するものとすることができ、第4伝達経路は、第2駆動ギヤと同軸に配置された第4駆動ギヤと、第1駆動ギヤと一体に回転する第4被駆動ギヤと、第4駆動ギヤおよび第4被駆動ギヤとかみ合い、第4駆動ギヤと第4被駆動ギヤを接続する第2中間セットとを有するものとすることができる。第1切り換え機構は、第1電動機の出力を第1駆動ギヤまたは第3駆動ギヤに切り換え可能に接続するものとすることができ、第2切り換え機構は、第2電動機の出力を第2駆動ギヤまたは第4駆動ギヤに切り換え可能に接続するものとすることができる。
【0009】
第1被駆動ギヤ、第2被駆動ギヤ、第1中間ギヤセットおよび第2中間ギヤセットは、同軸に配置されたものとすることができる。
【0010】
遊星歯車機構は、第1要素が第1サンギヤであり、第2要素が第2サンギヤであり、第3要素が、第2サンギヤにかみ合う第1プラネタリピニオンと、第1サンギヤと第1プラネタリピニオンにかみ合う第2プラネタリピニオンとを回転可能に支持するプラネタリキャリヤである遊星歯車機構とすることができる。
【0011】
前述の電動車両駆動装置は、さらに、遊星歯車機構の第1要素または第2要素の回転を阻止可能な係止機構を含むものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
2つの伝達経路を介して出力伝達を行うことにより、より大きな変速比を得ることができる。また、2つの伝達経路の一方は、単独でも使用される伝達経路であり、これを利用することで他方の伝達経路を小形とすることができ、装置全体を小形にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】電動車両の駆動装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す駆動装置における動力伝達経路の選択の一例を示す図である。
【
図3】
図1に示す駆動装置における動力伝達経路の選択の他の例を示す図である。
【
図4】
図1に示す駆動装置における動力伝達経路の選択の更に他の例を示す図である。
【
図5】
図1に示す駆動装置における動力伝達経路の選択の更に他の例を示す図である。
【
図6】
図2に示す動力伝達状態における遊星歯車機構の動作状態の一例を表した共線図である。
【
図7】
図3に示す動力伝達状態における遊星歯車機構の動作状態の一例を表した共線図である。
【
図8】
図3に示す動力伝達状態における遊星歯車機構の動作状態の他の例を表した共線図である。
【
図9】
図4に示す動力伝達状態における遊星歯車機構の動作状態の一例を表した共線図である。
【
図10】
図5に示す動力伝達状態における遊星歯車機構の動作状態の一例を表した共線図である。
【
図11】
図5に示す動力伝達状態における遊星歯車機構の動作状態の他の例を表した共線図である。
【
図12】
図3に示す動力伝達状態における遊星歯車機構の動作状態の更に他の例を表した共線図である。
【
図13】
図5に示す動力伝達状態における遊星歯車機構の動作状態の更に他の例を表した共線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態の電動車両の駆動装置10の構成を示す模式図である。駆動装置10は、車両を駆動する原動機として第1電動機12と第2電動機14を備え、第1電動機12と第2電動機14は、変速機構16を介して遊星歯車機構18の別個の2つの要素または共通の1つの要素に接続され得る。遊星歯車機構18のもう一つの要素には、差動装置を含む終減速機20を介して左右の駆動輪22が接続されている。
【0015】
遊星歯車機構18は、共通の軸線周りに回転する3つの要素を有し、これら3つの要素は、第1サンギヤ24、第2サンギヤ26およびプラネタリキャリヤ28である。プラネタリキャリヤ28は、第2サンギヤ26とかみ合う外側プラネタリピニオン30と、この外側プラネタリピニオン30と第1サンギヤ24にかみ合う内側プラネタリピニオン32を回転可能に支持する。以下において、プラネタリキャリヤ28、外側プラネタリピニオン30および内側プラネタリピニオン32を、それぞれキャリヤ28、外側ピニオン30および内側ピニオン32と記す。外側ピニオン30および内側ピニオン32は、自身の中心軸を中心に自転すると共に、キャリヤ28の回転に伴って公転する。キャリヤ28には、出力要素としての出力ギヤ34が一体に設けられ、出力ギヤ34は、差動装置36と一体のリングギヤ38とかみ合っている。
【0016】
第1電動機12の出力軸である第1電動機軸40上には、第1電動機軸40と継断可能に第1駆動ギヤ42が設けられている。第1駆動ギヤ42は、第1電動機軸40と接続されてつながったとき、第1電動機軸40と一体になって回転し、一方、第1電動機軸40から切り離されたとき、第1電動機軸40に対して自由に回転可能である。第1駆動ギヤ42には、第1サンギヤ24と一体に回転する第1被駆動ギヤ44がかみ合っている。第1駆動ギヤ42と第1被駆動ギヤ44は、第1電動機12の出力を第1サンギヤ24に伝達する第1伝達経路46を形成する。第1被駆動ギヤ44の歯数は、第1駆動ギヤ42の歯数より多くしてよく、この場合、第1伝達経路46は、第1電動機軸40の回転を減速して第1サンギヤ24に伝達する。
【0017】
第2電動機14の出力軸である第2電動機軸48上には、第2電動機軸48と継断可能に第2駆動ギヤ50が設けられている。第2駆動ギヤ50は、第2電動機軸48と接続されてつながったとき、第2電動機軸48と一体になって回転し、一方、第2電動機軸48から切り離されたとき、第2電動機軸48に対して自由に回転可能である。第2駆動ギヤ50には、第2サンギヤ26と一体に回転する第2被駆動ギヤ52がかみ合っている。第2駆動ギヤ50と第2被駆動ギヤ52は、第2電動機14の出力を第2サンギヤ26に伝達する第2伝達経路54を形成する。第2被駆動ギヤ52の歯数は、第2駆動ギヤ50の歯数より多くしてよく、この場合、第2伝達経路54は、第2電動機軸48の回転を減速して第2サンギヤ26に伝達する。
【0018】
第1電動機軸40上には、第1電動機軸40と継断可能な第3駆動ギヤ56が設けられている。第3駆動ギヤ56は、第1電動機軸40と接続されてつながったとき、第1電動機軸40と一体になって回転し、一方、第1電動機軸40から切り離されたとき、第1電動機軸40に対して自由に回転可能である。さらに、第3駆動ギヤ56は、第1中間ギヤセット58を介して第2駆動ギヤ50と一体の第3被駆動ギヤ60に接続されている。第1中間ギヤセット58は、歯数が異なり、一体となった第1中間ギヤ58aと第2中間ギヤ58bから構成される。第1中間ギヤ58aと第2中間ギヤ58bは、中心軸を共有し、隣接配置されている。第1中間ギヤ58aが第3駆動ギヤ56とかみ合い、第2中間ギヤ58bが第3被駆動ギヤ60とかみ合う。第1中間ギヤセット58は、第3駆動ギヤ56と第3被駆動ギヤ60を接続する。第3駆動ギヤ56、第3被駆動ギヤ60および第1中間ギヤセット58は、第3伝達経路62を形成する。第3伝達経路62の各ギヤは、第1電動機軸40の回転を減速して第2駆動ギヤ50に伝達するよう歯数が定められている。第1および第2中間ギヤ58a,58bは、第1および第2サンギヤ24,26と同軸に配置されてよい。第1電動機軸40と第2駆動ギヤ50を接続する伝達経路として、第3駆動ギヤ56、第3被駆動ギヤ60および第1中間ギヤセット58に替えて、スプロケットとチェーン、またプーリとベルトなどを用いた伝達経路を採用してもよい。
【0019】
第2電動機軸48上には、第2電動機軸48と継断可能な第4駆動ギヤ64が設けられている。第4駆動ギヤ64は、第2電動機軸48と接続されてつながったとき、第2電動機軸48と一体になって回転し、一方、第2電動機軸48から切り離されたとき、第2電動機軸48に対して自由に回転可能である。さらに、第4駆動ギヤ64は、第2中間ギヤセット66を介して第1駆動ギヤ42と一体の第4被駆動ギヤ68に接続されている。第2中間ギヤセット66は、歯数が異なり、一体となった第3中間ギヤ66aと第4中間ギヤ66bから構成される。第3中間ギヤ66aと第4中間ギヤ66bは、中心軸を共有し、隣接配置されている。第3中間ギヤ66aが第4駆動ギヤ64とかみ合い、第4中間ギヤ66bが第4被駆動ギヤ68とかみ合う。第2中間ギヤセット66は、第4駆動ギヤ64と第4被駆動ギヤ68を接続する。第4駆動ギヤ64、第4被駆動ギヤ68および第2中間ギヤセット66は、第4伝達経路70を形成する。第4伝達経路70の各ギヤは、第2電動機軸48の回転を減速して第1駆動ギヤ42に伝達するよう歯数を定められている。第3および第4中間ギヤ66a,66bは、第1および第2サンギヤ24,26と同軸に配置されてよい。第2電動機軸48と第1駆動ギヤ42を接続する伝達経路として、第4駆動ギヤ64、第4被駆動ギヤ68および第2中間ギヤセット66に替えて、スプロケットとチェーン、またプーリとベルトなどを用いた伝達経路を採用してもよい。
【0020】
第1電動機軸40上には、第1駆動ギヤ42と第3駆動ギヤ56のいずれを第1電動機軸40に接続するかを選択する第1切り換え機構72が設けられている。第1切り換え機構72は、一般的な手動変速機の変速機構と同様の構造を有し、シフトスリーブ72aを軸に沿って移動させて、接続するギヤを選択する。シフトスリーブ72aが第1駆動ギヤ42側に移動すると、第1駆動ギヤ42が第1電動機軸40に接続され、これらが一体に回転するようになる。逆に、シフトスリーブ72aを第3駆動ギヤ56側に移動すると、第3駆動ギヤ56が第1電動機軸40に接続され、これらが一体に回転するようになる。
【0021】
第2電動機軸48上には、第2駆動ギヤ50と第4駆動ギヤ64のいずれを第2電動機軸48に接続するかを選択する第2切り換え機構74が設けられている。第2切り換え機構74は、一般的な手動変速機の変速機構と同様の構造を有し、シフトスリーブ74aを軸に沿って移動させて、接続するギヤを選択する。シフトスリーブ74aが第2駆動ギヤ50側に移動すると、第2駆動ギヤ50が第2電動機軸48に接続され、これらが一体に回転するようになる。逆に、シフトスリーブ74aを第4駆動ギヤ64側に移動すると、第4駆動ギヤ64が第2電動機軸48に接続され、これらが一体に回転するようになる。
【0022】
第2サンギヤ26が固定された第2サンギヤ軸76には、第2サンギヤ軸76の回転を阻止可能な係止機構が設けられている。係止機構は、具体的には、ワンウェイクラッチ78であり、ワンウェイクラッチ78は、車両が前進するときの第2サンギヤ26の回転方向の回転を許容し、車両が後退するときの第2サンギヤ26の回転方向の回転を阻止する。ワンウェイクラッチは、第2サンギヤ軸76に替えて第1サンギヤ24が固定された軸に対して設けられてもよい。
【0023】
第1~第4伝達経路46,54,62,70の変速比を表1に示す。
【表1】
【0024】
第1伝達経路46の変速比γ1は、第1被駆動ギヤ44の歯数Z44と第1駆動ギヤ42の歯数Z42の比である(γ1=Z44/Z42)。第2伝達経路54の変速比γ2は、第2被駆動ギヤの歯数Z52と第2駆動ギヤ50の歯数Z50の比である(γ2=Z52/Z50)。第3伝達経路62の変速比γ3は、2対のギヤ対の変速比の積である。つまり、第1中間ギヤの歯数Z58aと第3駆動ギヤ56の歯数Z56の比と、第3被駆動ギヤ60の歯数Z60と第2中間ギヤの歯数Z58bの比との積である(γ3=(Z58a/Z56)*(Z60/Z58b))。第4伝達経路70の変速比γ4は、第3中間ギヤ66aの歯数Z66aと第4駆動ギヤ64の歯数Z64の比と、第4被駆動ギヤ68の歯数Z68と第4中間ギヤ66bの歯数Z66bの比との積である(γ4=(Z66a/Z64)*(Z68/Z66b))。また、遊星歯車機構18の第1サンギヤ24の歯数Zs1と第2サンギヤ26の歯数Zs2の比を遊星歯車比ρと記す。
【0025】
図2から
図5は、第1および第2切り換え機構の切り換え動作により得られる駆動装置10の動力伝達経路を示す図である。
【0026】
図2は、第1電動機12のみで車両を駆動するときの動力伝達経路を示す図である。第1切り換え機構72は、第1電動機軸40に第1駆動ギヤ42を接続している。第2切り換え機構74は、第2電動機軸48に第2駆動ギヤ50を接続しているか、または中立状態であってもよい。第1電動機12の出力は、第1駆動ギヤ42に入力し、第1伝達経路46を介して第1サンギヤ24に伝達される。そして、第1サンギヤ24からの入力が遊星歯車機構18を介して出力ギヤ34から出力し、車両を駆動する。
図2は、後述する「1機駆動モード」における動力伝達状態を示している。
【0027】
図3は、第1電動機12と第2電動機14の双方が動作して車両を駆動するときの動力伝達経路の一例を示す図である。第1切り換え機構72は、第1電動機軸40に第1駆動ギヤ42を接続している。第2切り換え機構74は、第2電動機軸48に第2駆動ギヤ50を接続している。第1電動機12の出力は、第1駆動ギヤ42に入力し、第1伝達経路46を介して第1サンギヤ24に伝達される。一方、第2電動機14の出力は、第2駆動ギヤ50に入力し、第2伝達経路54を介して第2サンギヤ26に伝達される。そして、第1サンギヤ24および第2サンギヤ26からの入力が遊星歯車機構18を介して出力ギヤ34から出力し、車両を駆動する。
図3は、後述する「2機駆動モード」、「極低速モード1」、「後退モード」における動力伝達状態を示している。
【0028】
図4は、第1電動機12と第2電動機14の双方が動作して車両を駆動するときの動力伝達経路の他の例を示す図である。第1切り換え機構72は、第1電動機軸40に第1駆動ギヤ42を接続している。第2切り換え機構74は、第2電動機軸48に第4駆動ギヤ64を接続している。第1電動機12の出力は、第1駆動ギヤ42に入力し、第1伝達経路46を介して第1サンギヤ24に伝達される。一方、第2電動機14の出力は、第4駆動ギヤ64に入力し、第4伝達経路70を介し、更に第1伝達経路46を介して第1サンギヤ24に伝達される。そして、第1サンギヤ24からの入力が遊星歯車機構18を介して出力ギヤ34から出力し、車両を駆動する。
図4は、後述する「2機低速モード1」における動力伝達状態を示している。
【0029】
図5は、第1電動機12と第2電動機14の双方が動作して車両を駆動するときの動力伝達経路の更に他の例を示す図である。第1切り換え機構72は、第1電動機軸40に第3駆動ギヤ56を接続している。第2切り換え機構74は、第2電動機軸48に第4駆動ギヤ64を接続している。第1電動機12の出力は、第3駆動ギヤ56に入力し、第3伝達経路62を介し、更に第2伝達経路54を介して第2サンギヤ26に伝達される。一方、第2電動機14の出力は、第4駆動ギヤ64に入力し、第4伝達経路70を介し、更に第1伝達経路46を介して第1サンギヤ24に伝達される。そして、第1サンギヤ24および第2サンギヤ26からの入力が遊星歯車機構18を介して出力ギヤ34から出力し、車両を駆動する。
図5は、後述する「2機低速モード2」、「極低速モード2」、「後退低速モード」における動力伝達状態を示している。
【0030】
図6~13は、各動作モードにおける駆動装置10の動作状態を表す共線図である。3つの縦軸S1,S2,Cは、遊星歯車機構18の3つの要素の回転速度を表す。つまり、S1軸が第1サンギヤ24の回転速度を、S2軸が第2サンギヤ26の回転速度を、C軸がキャリヤの回転速度を表す。各図において、横軸より上が正転を表し、下が逆転を表す。S1軸、S2軸およびC軸の間隔は、遊星歯車比ρに基づき定められており、図示するようS1軸とS2軸の間をρ対1に内分するようにC軸が位置している。このように3つの軸を配置することで、各要素の回転速度は、各軸に交差する1つの直線上に現れる。すなわち、3つの要素の回転速度の関係は、2つの要素の回転速度を定めれば、もう1つの要素の回転速度が一意に定まる関係となる。
【0031】
図6~13の各図において、遊星歯車機構18の各要素に加わるトルクが白抜きの矢印で表されている。定常状態においては、各要素に加わるトルクの和はゼロとなる。また、各図における各トルクのモーメントの和はゼロになる。
【0032】
図6は、第1電動機12のみで電動車両を駆動する「1機モード」の動作状態を示す図である。動力の伝達経路は
図2に示される。第1電動機12は正回転で運転され、第1電動機12の出力トルクT
M1は、第1伝達経路46を介することにより、この経路の変速比γ
1が乗算されて第1サンギヤ24に入力される(γ
1T
M1)。第2サンギヤ26は、第2サンギヤ軸76上のワンウェイクラッチ78により回転が阻止されている。なお、図中、ワンウェイクラッチ78は、「OWC」と記されている。このときのキャリヤ28に作用するトルクT
cは、
T
c={(1+ρ)/ρ}γ
1T
M1
となり、このトルクが、出力ギヤ34から出力される。
【0033】
第2サンギヤ26は、回転が阻止されるが、第1電動機12の回転速度を変化させることでキャリヤ28の回転速度を変更することができ、車両の走行速度を制御することができる。
【0034】
図7は、第1電動機12および第2電動機14の2機の電動機で電動車両を駆動する「2機モード」の動作状態を示す図である。動力の伝達経路は
図3に示される。第1電動機12は正回転で運転され、第1電動機12の出力トルクT
M1は、第1伝達経路46を介することにより、第1伝達経路46の変速比γ
1が乗算されて第1サンギヤ24に入力される(γ
1T
M1)。第2電動機14は正回転で運転され、第2電動機14の出力トルクT
M2は、第2伝達経路54を介することにより、この経路の変速比γ2が乗算されて第2サンギヤ26に入力される(γ
2T
M2)。このときのキャリヤ28に作用するトルクT
cは、
T
c=γ
1T
M1+γ
2T
M2
となり、このトルクが、出力ギヤ34から出力される。第1電動機12と第2電動機14の回転速度を変更することで、キャリヤ28の回転速度を変更することができ、車両の走行速度を制御することができる。また、走行速度、つまりキャリヤ28の回転速度を固定した場合であっても、第1電動機12と第2電動機14の回転速度を変更することができる。ただし、3つの要素の回転速度が共線図上で同一の直線上にあることが拘束条件となる。
【0035】
図8は、極低速の走行を可能にする「極低速モード1」の動作状態を示す図である。動力の伝達経路は
図3に示される。第1電動機12は逆回転で、更に発電機として運転される。第1電動機12が発電機として機能するので、第1電動機12が出力するトルクを正とすれば、このときのトルクは入力であり負の値で表される。出力トルク(-T
M1)は、第1伝達経路46を介することにより、第1伝達経路46の変速比γ
1が乗算されて第1サンギヤ24に入力される(γ
1(-T
M1))。第2電動機14は正回転で運転され、第2電動機14の出力トルクT
M2は、第2伝達経路54を介することにより、この経路の変速比γ
2が乗算されて第2サンギヤ26に入力される(γ
2T
M2)。このときのキャリヤ28に作用するトルクT
cは、
T
c=γ
1T
M1+γ
2T
M2
となり、このトルクが、出力ギヤ34から出力される。第1電動機12が逆回転しているため、キャリヤ28の速度をゼロまたはゼロ近傍の極めて低い速度にすることができ、車両を停止させること、またはゼロ近傍の速度とすることができる。また、第1電動機12と第2電動機14の回転速度を変更することで、キャリヤ28の回転速度を変更することができ、車両の走行速度を制御することができる。車両速度が極低速であっても、第1および第2電動機12,14の回転速度を比較的高く保つことができるので、第1および第2電動機12,14およびこれらを駆動する回路が保護される。
【0036】
図9は、走行速度が低速のときに、第1電動機12および第2電動機14の2機の電動機で電動車両を駆動する「2機低速モード1」の動作状態を示すである。動力の伝達経路は
図4に示される。第1電動機12は正回転で運転され、第1電動機12の出力トルクT
M1は、第1伝達経路46を介することにより、第1伝達経路46の変速比γ
1が乗算されて第1サンギヤ24に入力される(γ
1T
M1)。第2電動機14は正回転で運転され、第2電動機14の出力トルクT
M2は、第4伝達経路70および第1伝達経路46を介することにより、これらの伝達経路の変速比γ
4,γ
1が乗算され第1サンギヤ24に入力される(γ
1γ
4T
M2)。第2サンギヤ26は、第2サンギヤ軸76上のワンウェイクラッチ78により回転が阻止されている。このときのキャリヤ28に作用するトルクT
cは、
T
c={(1+ρ)/ρ}(γ
1T
M1+γ
1γ
4T
M2)
となり、このトルクが、出力ギヤ34から出力される。第1および第2電動機12,14の回転速度を変化させることでキャリヤ28の回転速度を変更することができ、車両の走行速度を制御することができる。第2サンギヤ26が停止しているため、
図7に示す2機モードに比べ、走行速度は低くなるが、より大きな出力トルクを得ることができる。また、
図6に示す1機モードに比べても、第2電動機14のトルクが加わることにより、より大きな出力トルクを得ることができる。
【0037】
図10は、走行速度が低速のときに、第1電動機12および第2電動機14の2機の電動機で電動車両を駆動する「2機低速モード2」の動作状態を示すである。動力の伝達経路は
図5に示される。第1電動機12は正回転で運転され、第1電動機12の出力トルクT
M1は、第3伝達経路62および第2伝達経路54を介することにより、これらの伝達経路の変速比γ
3,γ
2が乗算されて第2サンギヤ26に入力される(γ
2γ
3T
M1)。第2電動機14は正回転で運転され、第2電動機14の出力トルクT
M2は、第4伝達経路70および第1伝達経路46を介することにより、これらの伝達経路の変速比γ
4,γ
1が乗算され第1サンギヤ24に入力される(γ
1γ
4T
M2)。このときのキャリヤ28に作用するトルクT
cは、
T
c=γ
2γ
3T
M1+γ
1γ
4T
M2
となり、このトルクが、出力ギヤ34から出力される。第1電動機12と第2電動機14の回転速度を変更することで、キャリヤ28の回転速度を変更することができ、車両の走行速度を制御することができる。また、走行速度、つまりキャリヤ28の回転速度を固定した場合であっても、第1電動機12と第2電動機14の回転速度を変更することができる。ただし、3つの要素の回転速度が共線図上で同一の直線上にあることが拘束条件となる。第3伝達経路62および第4伝達経路70の変速比γ
3,γ
4により、第1電動機12および第2電動機14の回転速度が減速されるため、これらの電動機の運転状態が同じであっても、
図7に示す2機モードより低い車両速度、高いトルクとなる。
【0038】
図11は、極低速走行を可能にする「極低速モード2」の動作状態を示すである。動力の伝達経路は
図5に示される。第1電動機12は正回転で運転され、第1電動機12の出力トルクT
M1は、第3伝達経路62および第2伝達経路54を介することにより、これらの伝達経路の変速比γ
3,γ
2が乗算されて第2サンギヤ26に入力される(γ
2γ
3T
M1)。第2電動機14は逆回転で、更に発電機として運転される。第2電動機14の出力トルクT
M2は、第4伝達経路70および第1伝達経路46を介することにより、これらの伝達経路の変速比γ
4,γ
1が乗算され第1サンギヤ24に入力される(γ
1γ
4(-T
M2))。このときのキャリヤ28に作用するトルクT
cは、
T
c=γ
2γ
3T
M1+γ
1γ
4T
M2
となり、このトルクが、出力ギヤ34から出力される。第2電動機14が逆回転しているため、
図8に示す極低速モード1と同様、キャリヤ28の速度をゼロまたはゼロ近傍の極めて低い速度にすることができ、車両を停止させること、またはゼロ近傍の速度とすることができる。第1電動機12と第2電動機14の回転速度を変更することで、キャリヤ28の回転速度を変更することができ、車両の走行速度を制御することができる。第3伝達経路62および第4伝達経路70の変速比γ
3,γ
4により、第1電動機12および第2電動機14の回転速度が減速されるため、これらの電動機の運転状態が同じであっても、
図8に示す極低速モード1よりも高いトルクを得ることができる。さらに、
図8に示す極低速モード1よりも、第3伝達経路62および第4伝達経路70の変速比γ
3,γ
4によって、第1および第2電動機12,14の回転速度を高く保つことができ、電動機等の保護においてより有利となる。
【0039】
図12は、電動車両を後退させる「後退モード」の動作状態を示す図である。動力の伝達経路は
図3に示される。第1電動機12は逆回転で運転され、第1電動機12の出力トルクT
M1は、第1伝達経路46を介することにより、第1伝達経路46の変速比γ
1が乗算されて第1サンギヤ24に入力される(γ
1T
M1)。第2電動機14は正回転で、更に発電機として運転される。第2電動機14の出力トルクT
M2は、第2伝達経路54を介することにより、この経路の変速比γ
2が乗算されて第2サンギヤ26に入力される(γ
2(-T
M2))。このときのキャリヤ28に作用するトルクT
cは、
T
c=γ
1T
M1+γ
2T
M2
となり、このトルクが、出力ギヤ34から出力される。第1電動機12と第2電動機14の回転速度を変更することで、キャリヤ28の回転速度を変更することができ、車両の走行速度を制御することができる。
【0040】
図13は、車両を低速で後退させる「後退低速モード」の動作状態を示すである。動力の伝達経路は
図5に示される。第1電動機12は正回転で、更に発電機として運転され、第1電動機12の出力トルクT
M1は、第3伝達経路62および第2伝達経路54を介することにより、これらの伝達経路の変速比γ
3,γ
2が乗算されて第2サンギヤ26に入力される(γ
2γ
3(-T
M1))。第2電動機14は逆回転で運転され、第2電動機14の出力トルクT
M2は、第4伝達経路70および第1伝達経路46を介することにより、これらの伝達経路の変速比γ
4,γ
1が乗算され第1サンギヤ24に入力される(γ
1γ
4(-T
M2))。このときのキャリヤ28に作用するトルクT
cは、
T
c=γ
2γ
3T
M1+γ
1γ
4T
M2
となり、このトルクが、出力ギヤ34から出力される。第3伝達経路62および第4伝達経路70の変速比γ
3,γ
4により、第1電動機12および第2電動機14の回転速度が減速されるため、これらの電動機の運転状態が同じであっても、
図12に示す後退モードよりも高いトルクを得ることができる。
【0041】
上述の遊星歯車機構18は、2つのサンギヤ24,26とキャリヤ28を有するものであるが、これに限らず他の構成が採られてもよい。例えば、サンギヤ、キャリヤ、およびサンギヤとキャリヤを囲むように設けられた内歯のリングギヤを有する構成とすることができる。
【0042】
第2サンギヤ軸76の回転を阻止するワンウェイクラッチ78に替えて、必要に応じて第2サンギヤ軸76または第2サンギヤ軸76と一体に回転する部材に当接し、その回転を阻止するブレーキを採用することもできる。さらに、ワンウェイクラッチ等は、第1サンギヤ24の回転を阻止するものとすることもできる。
【0043】
第1中間ギヤセット58は、第3駆動ギヤ56と第3被駆動ギヤ60の双方にかみ合う1つのギヤから構成されてもよい。同様に、第2中間ギヤセット66は、第4駆動ギヤ64と第4被駆動ギヤ68の双方にかみ合う1つのギヤから構成されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 駆動装置、12 第1電動機、14 第2電動機、16 変速機構、18 遊星歯車機構、24 第1サンギヤ(第1要素)、26 第2サンギヤ(第2要素)、28 キャリヤ(第3要素)、30 外側ピニオン(第1プラネタリピニオン)、32 内側ピニオン(第2プラネタリピニオン)、34 出力ギヤ、40 第1電動機軸、42 第1駆動ギヤ、44 第1被駆動ギヤ、46 第1伝達経路、48 第2電動機軸、50 第2駆動ギヤ、52 第2被駆動ギヤ、54 第2伝達経路、56 第3駆動ギヤ、58 第1中間ギヤセット、58a 第1中間ギヤ、58b 第2中間ギヤ、60 第3被駆動ギヤ、62 第3伝達経路、64 第4駆動ギヤ、66 第2中間ギヤセット、66a 第3中間ギヤ、66b 第4中間ギヤ、68 第4被駆動ギヤ、70 第4伝達経路、72 第1切り換え機構、74 第2切り換え機構、76 第2サンギヤ軸、78 ワンウェイクラッチ(係止機構)。