(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】射出成形用スクリュ
(51)【国際特許分類】
B29C 45/60 20060101AFI20231121BHJP
B29C 45/52 20060101ALI20231121BHJP
B29C 45/50 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B29C45/60
B29C45/52
B29C45/50
(21)【出願番号】P 2019214730
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 範和
(72)【発明者】
【氏名】片桐 好秀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕子
(72)【発明者】
【氏名】笹山 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】河田 順平
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 昌英
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-094818(JP,U)
【文献】実開昭58-058525(JP,U)
【文献】特開昭63-004924(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0191359(US,A1)
【文献】特開2004-291409(JP,A)
【文献】特開2018-069574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に螺旋溝を備えるスクリュ本体と、
前記スクリュ本体と同軸で設けられるヘッド軸部と、
前記ヘッド軸部から延出されると共に、前記ヘッド軸部の外周から延出方向の先端側へ連続する樹脂移送溝を備える樹脂移送部と、
前記樹脂移送部から延出されると共に、延出方向の先端側へ向けて外径が小さくなり、前記樹脂移送溝の先端部分が位置し、前記樹脂移送溝が周方向に複数備えられているヘッド先端部と、
複数の前記樹脂移送溝を前記周方向に隔てる隔壁と、
前記ヘッド軸部の軸部外周と間隙をあけて前記軸部外周を覆うと共に、前記ヘッド軸部に対し軸方向に移動可能に前記軸部外周に装着されるチェックリングと、
前記樹脂移送溝を前記樹脂移送部の外周側であって前記チェックリングの内周面よりも半径方向外側で覆うと共に前記樹脂移送部と共に回転し、前記周方向で隣どうしの前記隔壁にかけ渡され、前記樹脂移送部に形成されているカバー部材と、
前記樹脂移送部に設けられ、前記ヘッド先端部から前記チェックリングまで連続する圧力伝達溝と、
を有し、
前記圧力伝達溝が、前記隔壁に設けられる射出成形用スクリュ。
【請求項2】
外周に螺旋溝を備えるスクリュ本体と、
前記スクリュ本体と同軸で設けられるヘッド軸部と、
前記ヘッド軸部から延出されると共に、前記ヘッド軸部の外周から延出方向の先端側へ
連続する樹脂移送溝を備える樹脂移送部と、
前記樹脂移送部から延出されると共に、延出方向の先端側へ向けて外径が小さくなり、前記樹脂移送溝の先端部分が位置しているヘッド先端部と、
前記ヘッド軸部の軸部外周と間隙をあけて前記軸部外周を覆うと共に、前記ヘッド軸部に対し軸方向に移動可能に前記軸部外周に装着されるチェックリングと、
前記樹脂移送溝を前記樹脂移送部の外周側で覆うと共に前記樹脂移送部と共に回転し、前記チェックリングに設けられているカバー部材と、
を有し、
前記チェックリングは、
前記ヘッド軸部に装着される円筒状の円筒部と、
前記円筒部から延出され前記樹脂移送溝の外周側を覆い、前記樹脂移送溝に嵌合されると共に、前記チェックリングが前記先端側に移動した状態で、前記ヘッド先端部の外周面に達する長さを有する前記カバー部材としての突起部と、を更に有し、
前記樹脂移送溝の底面が前記ヘッド先端部まで直線状に延び
る射出成形用スクリュ。
【請求項3】
外周に螺旋溝を備えるスクリュ本体と、
前記スクリュ本体と同軸で設けられるヘッド軸部と、
前記ヘッド軸部から延出されると共に、前記ヘッド軸部の外周から延出方向の先端側へ連続する樹脂移送溝を備える樹脂移送部と、
前記樹脂移送部から延出されると共に、延出方向の先端側へ向けて外径が小さくなり、前記樹脂移送溝の先端部分が位置し、前記樹脂移送溝が周方向に複数備えられているヘッド先端部と、
複数の前記樹脂移送溝を前記周方向に隔てる隔壁と、
前記ヘッド軸部の軸部外周と間隙をあけて前記軸部外周を覆うと共に、前記ヘッド軸部に対し軸方向に移動可能に前記軸部外周に装着されるチェックリングと、
前記樹脂移送溝を前記樹脂移送部の外周側で覆うと共に前記樹脂移送部と共に回転し、前記周方向で隣どうしの前記隔壁にかけ渡され、前記樹脂移送部に形成されているカバー部材と、
前記樹脂移送部に設けられ、前記ヘッド先端部から前記チェックリングまで連続する圧力伝達溝と、
を有し、
前記圧力伝達溝が、前記隔壁に設けられる射出成形用スクリュ。
【請求項4】
外周に螺旋溝を備えるスクリュ本体と、
前記スクリュ本体と同軸で設けられるヘッド軸部と、
前記ヘッド軸部から延出されると共に、前記ヘッド軸部の外周から延出方向の先端側へ連続する樹脂移送溝を備える樹脂移送部と、
前記樹脂移送部から延出されると共に、延出方向の先端側へ向けて外径が小さくなり、前記樹脂移送溝の先端部分が位置しているヘッド先端部と、
前記ヘッド軸部の軸部外周と間隙をあけて前記軸部外周を覆うと共に、前記ヘッド軸部に対し軸方向に移動可能に前記軸部外周に装着される円筒部を有するチェックリングと、
を有し、
前記チェックリングは、
前記樹脂移送部の周方向に間隔を空けて前記樹脂移送溝に対応して設けられ、前記樹脂移送溝を前記樹脂移送部の外周側で覆うと共に前記樹脂移送部と共に回転する複数の突起部と、前記周方向で隣どうしの前記突起部を前記周方向に接続するカバー部と、
を更に有し、
前記カバー部及び前記複数の突起部は、前記樹脂移送部及び前記円筒部の双方とも別体である射出成形用スクリュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、射出成形用スクリュに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、射出スクリュのフライト頂部の幅をスクリュ直径の0.2~0.4倍の範囲とし、フライト頂部におけるスクリュ先端側に1mm以下の段差をスクリュの径方向に形成した射出成形用スクリュが記載されている。
【0003】
特許文献2には、スクリュの長さ(L)/径(D)の比を10~24とし、スクリュの供給部の長さを10~14Dとし、スクリュの供給部の溝深さを13mm以上、スクリュの計量部の溝深さを8mm以上とし、ウエアプレートとチェックリングから形成される溶融樹脂通路における溶融樹脂の流れ方向に対する垂直方向の幅をスリット径の3~6%にしたインラインスクリュ式可塑化射出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-169646号公報
【文献】特開2004-291409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、長繊維を含有する熱可塑性樹脂の射出スクリュでの溶融中に、繊維の切断を少なくすることが記載されている。
【0006】
特許文献2では、供給部において、溶融樹脂に含まれるガラス繊維の破損を抑制できることが記載されている。
【0007】
しかし、引用文献1及び引用文献2のいずれの構成においても、たとえば、スクリュがシリンダと相対移動した場合に、スクリュとシリンダの間の領域に存在している樹脂材料中の繊維の破断を抑制することは難しい。
【0008】
本願では、繊維を含有する樹脂材料を用いた射出成形に用いられる射出成形用スクリュにおいて、成形中の射出成形用スクリュとシリンダとの相対移動に伴う繊維の破断を抑制することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一態様では、外周に螺旋溝を備えるスクリュ本体と、前記スクリュ本体と同軸で設けられるヘッド軸部と、前記ヘッド軸部から延出されると共に、前記ヘッド軸部の外周から延出方向の先端側へ連続する樹脂移送溝を備える樹脂移送部と、前記樹脂移送部から延出されると共に、延出方向の先端側へ向けて外径が小さくなり、前記樹脂移送溝の先端部分が位置しているヘッド先端部と、前記ヘッド軸部の軸部外周と間隙をあけて前記軸部外周を覆うと共に、前記ヘッド軸部に対し軸方向に移動可能に前記軸部外周に装着されるチェックリングと、前記樹脂移送溝を前記樹脂移送部の外周側で覆うと共に前記樹脂移送部と共に回転するカバー部材と、を有する。
【0010】
この樹脂成形用スクリュは、射出成形用のシリンダ内で回転すると共に、スクリュ本体の外周の螺旋溝を溶融樹脂が流れる。ヘッド軸部とチェックリングの間には間隙があいており、溶融樹脂は螺旋溝から、この間隙を流れる。樹脂移送部は、ヘッド軸部の外周から先端側へ連続する樹脂移送溝を備えているので、溶融樹脂はさらにこの樹脂移送溝を流れ、ヘッド先端部に達する。
【0011】
樹脂移送溝は、カバー部材で覆われているので、樹脂移送溝を流れる溶融樹脂が、射出成形用スクリュの外側のシリンダに接触しない。したがって、射出成形用スクリュがシリンダに対し相対回転しても、樹脂移送溝内の溶融樹脂に、射出成形用スクリュとシリンダとの相対移動による流れが生じず、せん断力も生じない。また、カバー部材は、樹脂移送部と共に回転するので、樹脂移送溝内の樹脂がカバー部材と擦れることもない。これにより、成形中の射出成形用スクリュとシリンダとの相対移動に伴う繊維の破断を抑制できる。
【0012】
第二態様では、第一態様において、前記カバー部材が、前記樹脂移送部に形成されている。
【0013】
カバー部材が樹脂移送部に設けられることで、部品点数の増加を抑制できる。また、カバー部材が樹脂移送部と一体で回転する構造を実現できる。
【0014】
第三態様では、第二態様において、前記樹脂移送溝が、前記ヘッド先端部の周方向に複数備えられ、複数の前記樹脂移送溝を前記周方向に隔てる隔壁を備え、前記カバー部材が、前記周方向で隣どうしの前記隔壁にかけ渡されている。
【0015】
複数の樹脂移送溝を設けることで、単数の樹脂移送溝を設ける構成と比較して、樹脂を移送できる断面積を広く確保できる。そして、隔壁により、複数の樹脂移送溝を区画した状態を維持できる。
【0016】
カバー部材は、隔壁にかけ渡されているので、隔壁の間で樹脂移送溝を覆う構造を実現できる。隔壁はカバー部材の支持部として作用するので、カバー部材の形状や位置を安定的に維持できる。
【0017】
第四実施形態では、第三態様において、前記樹脂移送部に設けられ、前記ヘッド先端部から前記チェックリングまで連続する圧力伝達溝を有する。
【0018】
射出成形用スクリュを用いた射出成形における射出工程では、圧力伝達溝を通じて溶融樹脂が先端側からチェックリングに達し、チェックリングに後端側への力を作用させる。これにより、チェックリングを後端側の位置に確実に維持できる。
【0019】
第五態様では、第一態様において、前記圧力伝達溝が、前記隔壁に設けられる。
【0020】
隔壁に圧力伝達溝を設けることで、カバー部材には圧力伝達溝を設ける必要がなくなり、カバー部材の強度や合成を維持できる。
【0021】
第六態様では、第五態様において、前記カバー部材が、前記チェックリングに設けられている。
【0022】
カバー部材がチェックリングに設けられることで、部品点数の増加を抑制できる。
【0023】
第七態様では、第六態様において、前記チェックリングが、前記ヘッド軸部に装着される円筒状の円筒部と、前記円筒部から延出され前記樹脂移送溝の外周側を覆う前記カバー部材としての突起部と、を有する。
【0024】
チェックリングは円筒部により、ヘッド軸部の軸部外周を覆う形状を実現できる。そして、円筒部から突起部を延出する簡単な構造で、カバー部材を設けることができる。
【0025】
第八態様では、第七態様において、前記突起部が、前記樹脂移送溝に嵌合されると共に、前記チェックリングが前記先端側に移動した状態で、前記ヘッド先端部の外周面に達する長さを有する。
【0026】
突起部は樹脂移送溝に嵌合されるので、カバー部材としての突起部が樹脂移送溝に対し相対回転することを抑制できる。
【0027】
突起部は、チェックリングが先端側に移動した状態で、ヘッド先端部の外周面に達するので、樹脂移送溝を先端側まで突起部で覆うことができる。
【0028】
第九態様では、第一態様において、前記カバー部材が、前記樹脂移送部及び前記チェックリングの双方と別体である。
【0029】
カバー部材が、樹脂移送部及びチェックリングの双方と別体であるので、形状の自由度が高い。
【発明の効果】
【0030】
本願では、成形中の射出成形用スクリュとシリンダとの相対移動に伴う繊維の破断を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は第一実施形態の射出成形用スクリュを示す斜視図である。
【
図2】
図2は第一実施形態の射出成形用スクリュを示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は第一実施形態の射出成形用スクリュのスクリュヘッドを示す斜視図である。
【
図4】
図4は第一実施形態の射出成形用スクリュを中心軸を含む断面で示す断面図である。
【
図5】
図5は第一実施形態の射出成形用スクリュを中心軸と直交する断面で示す断面図である。
【
図6】
図6は第一実施形態の射出成形用スクリュをシリンダ内に挿入した状態で示す計量工程での平面図である。
【
図7】
図7は第一実施形態の射出成形用スクリュをシリンダ内に挿入した状態で示す計量工程での
図6のVII-VII線断面図である。
【
図8】
図8は第一実施形態の射出成形用スクリュをシリンダ内に挿入した状態で示す射出・保圧工程での平面図である。
【
図9】
図9は第一実施形態の射出成形用スクリュをシリンダ内に挿入した状態で示す射出・保圧工程での
図8のIX-IX線断面図である。
【
図10】
図10は比較例の射出成形用スクリュを示す斜視図である。
【
図11】
図11は比較例の射出成形用スクリュを示す分解斜視図である。
【
図12】
図12は比較例の射出成形用スクリュのスクリュヘッドを示す斜視図である。
【
図13】
図13は比較例の射出成形用スクリュを中心軸を含む断面で示す断面図である。
【
図14】
図14は比較例の射出成形用スクリュを中心軸と直交する断面で示す断面図である。
【
図15】
図15は第二実施形態の射出成形用スクリュを示す斜視図である。
【
図16】
図16は第二実施形態の射出成形用スクリュのスクリュヘッドを示す斜視図である。
【
図17】
図17は第二実施形態の射出成形用スクリュを中心軸を含む断面で示す断面図である。
【
図18】
図18は第二実施形態の射出成形用スクリュを中心軸と直交する断面で示す断面図である。
【
図19】
図19は第三実施形態の射出成形用スクリュを示す斜視図である。
【
図20】
図20は第三実施形態の射出成形用スクリュを示す分解斜視図である。
【
図21】
図21は第三実施形態の射出成形用スクリュを中心軸を含む断面で示す断面図である。
【
図22】
図22は第三実施形態の射出成形用スクリュを中心軸と直交する断面で示す断面図である。
【
図23】
図23は第三実施形態の射出成形用スクリュをシリンダ内に挿入した状態で示す計量工程での平面図である。
【
図24】
図24は第三実施形態の射出成形用スクリュをシリンダ内に挿入した状態で示す計量工程での
図23のXXIV-XXIV線断面図である。
【
図25】
図25は第三実施形態の射出成形用スクリュをシリンダ内に挿入した状態で示す射出・保圧工程での平面図である。
【
図26】
図26は第三実施形態の射出成形用スクリュをシリンダ内に挿入した状態で示す射出・保圧工程での
図25のXXVI-XXVI線断面図である。
【
図27】
図27は第四実施形態の射出成形用スクリュのチェックリングを拡大して示す斜視図である。
【
図28】
図28は第四実施形態の射出成形用スクリュのチェックリングを拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して第一実施形態の射出成形用スクリュ12を説明する。射出成形用スクリュ12は、不連続な繊維を含有する溶融樹脂(熱可塑性樹脂)を金型に射出して樹脂成形品を得る場合において、射出成形用のシリンダ42(
図4及び
図5参照)に挿入されて用いられる。以下において、「先端側」とは、シリンダ42に挿入される向きでの先端側(
図4における右側)、「後端側」はその反対側を意味するものとする。
【0033】
第一実施形態の射出成形用スクリュ12は、
図1及び
図2に示すように、スクリュ本体14、シールリング16、スクリュヘッド18及びチェックリング20を有している。
【0034】
スクリュ本体14は、中心線CL1を中心とする円柱状又は円筒状で、外周に螺旋溝22が形成されている。スクリュ本体14の先端側(スクリュヘッド18との間)にシールリング16が同軸で配置されている。
【0035】
スクリュ本体14の螺旋溝22は、後述するように、射出成形における計量時に、溶融樹脂が後端側から先端側へ流れる溝であり、螺旋状であることで、スクリュ本体14の周方向への回転(
図1に示す例では矢印R1方向への回転)に伴って、溶融樹脂が先端側に移動する。
【0036】
シールリング16は、スクリュ本体14よりも大きな外径の部分を有している。本実施形態では、
図2及び
図4に示すように、シールリング16は、後端側から先端側に向けて外径が漸増する形状であり、後端部分はスクリュ本体14と略等しい外径であるが、先端部分はスクリュ本体14よりも大きな外径を有する。ただし、シールリング16の最大径の部分においても、外径はシリンダ42の内径よりは小さい。したがって、シールリング16の外周とシリンダ42の内周面との間には隙間GP1が生じている。
【0037】
スクリュヘッド18は、後端側から先端側へ向けて設けられた、ヘッド軸部24、樹脂移送部26及びヘッド先端部28を含んでおり、スクリュ本体14に同軸で取り付けられている。
【0038】
ヘッド軸部24は円柱状あるいは円筒状の部位であり、ヘッド軸部24の外径は、スクリュ本体14の外径よりも小さい。本実施形態では、
図2及び
図4に示すように、後端側(シールリング16に近い側)から先端側へと外径が漸減する径漸減部24Aと、径漸減部24Aから連続し先端側へ向けて一定の外径を有する径一定部24Bと、を有している。
【0039】
樹脂移送部26は、ヘッド軸部24から先端側へ連続して延出されている。
図2及び
図3に示すように、樹脂移送部26は、ヘッド軸部24よりも大径で、且つ軸方向に一定の径を有する部位である。
【0040】
図1~
図4に示すように、樹脂移送部26には、後端側から先端側へ向けて、1本又は複数本の樹脂移送溝30が形成されている。本実施形態では、
図5に示すように、樹脂移送部26の周方向で4本の樹脂移送溝30が、隔壁32に隔てられて設けられている。
【0041】
図4に示すように、それぞれの樹脂移送溝30は、後端側から先端側へと直線状に延在されており、樹脂移送溝30の底面30Bは、ヘッド軸部24の外周面と連続している。また、
図5に示す断面で見ると、それぞれの樹脂移送部26は、周方向に湾曲する円弧状である。本実施形態では、樹脂移送溝30は4本設けられているので、この断面において、周方向で隣りどうしの隔壁32の中心角α1は90度である。
【0042】
ヘッド先端部28は、樹脂移送部26から先端側へ連続して延出され、先端側に向かって外径が漸減する先細り形状である。換言すれば、ヘッド先端部28は、先端側を頂部とする円錐形状である。樹脂移送溝30の先端側は、ヘッド先端部28に位置している。換言すれば、ヘッド軸部24の外周面から、ヘッド先端部28の先細り部分までが、樹脂移送溝30によって連通された構造である。
【0043】
樹脂移送部26には、カバー部材34が設けられている。樹脂移送溝30は、樹脂移送部26の外周側において、このカバー部材34で覆われている。すなわち、樹脂移送溝30の外周側を、カバー部材34が蓋体として囲う形状である。
【0044】
第一実施形態では、カバー部材34は、
図5に示すように、周方向で隣りどうしの隔壁32にかけ渡されて形成されている。そして、隔壁32とカバー部材34とで、全体として円筒状の外周面(実質的に樹脂移送部26の外周面)を成している。換言すれば、4つのカバー部材34が全体で円筒状に形成され、隔壁32によって、この円筒状のカバー部材が支持されて、樹脂移送部26に固定されている構造である。
【0045】
第一実施形態では、このようなカバー部材34の形状としたことで、樹脂移送溝30のそれぞれは、樹脂移送部26の周方向に湾曲し、樹脂移送部26の径方向には扁平な形状の扁平流路である。そして、
図4に示すように、射出成形用スクリュ12の軸方向で、樹脂移送溝30は、シリンダ42の射出口44と干渉しない(被らない)位置で、中心線CL1よりに設けられている。
【0046】
チェックリング20は、
図2に示すように、ヘッド軸部24に装着される円筒状の部材である。チェックリング20の外径は、
図4に示すように、シリンダ42の内径より僅かに小さい。換言すれば、チェックリング20の外周面は、射出成形用スクリュ12における最大径部分よりも径方向外側には出っ張らず、射出成形用スクリュ12をシリンダ42に挿入する際に影響が出ないようになっている。実質的に、射出成形用スクリュ12がシリンダ42内に挿入された状態では、チェックリング20の外周面がシリンダ42の内周面に対し、全周で接触するか、もしくは僅かな隙間をあけて対向している。
【0047】
チェックリング20の内径は、ヘッド軸部24の外径(特に、径漸減部24Aにおける後端側の最大径部分の外径)よりも大きい。したがって、
図4に示すように、ヘッド軸部24の外周とチェックリング20の内周の間には間隙GP2が生じている。本実施形態では、チェックリング20は、ヘッド軸部24に対し、周方向に回転可能である。
【0048】
チェックリング20の軸方向の長さL1は、ヘッド軸部24において、シールリング16の先端から、樹脂移送部26の後端までの長さL2よりも短い。したがって、チェックリング20は、ヘッド軸部24に装着された状態で、ヘッド軸部24の軸方向に移動可能である。
図6及び
図7に示すように、チェックリング20が最も先端側に移動した状態では、シールリング16の先端とチェックリング20の後端との間に、間隙GP2に連なる隙間GP3が生じる。これに対し、
図8及び
図9に示すように、チェックリング20が最も後端側へ移動した状態では、チェックリング20の後端がシールリング16の先端に全周で接触し、隙間GP3がない状態となる。
【0049】
図2~
図4に示すように、ヘッド軸部24の後端の中心からは、取付シャフト36が後端側へ向けて延出されている。取付シャフト36の外周面には雄ネジが形成されている。これに対し、シールリング16の中心には、取付シャフト36の外径よりも大きな内径を有する挿通孔38が貫通して形成されている。スクリュ本体14の先端面の中心には、取付孔40が形成されている。取付孔40の内周面には、取付シャフト36の雄ネジが螺合される雌ネジが形成されている。取付シャフト36をシールリング16の挿通孔38に挿通し、取付シャフト36の雄ネジを取付孔40の雌ネジに螺合することで、スクリュ本体14とヘッド軸部24とでシールリングを挟持した状態で、スクリュ本体14にスクリュヘッド18が取り付けられる。すなわち、スクリュ本体14、シールリング16及びスクリュヘッド18が連結されて一体化される。なお、チェックリング20は、シールリング16の挿通孔38に取付シャフト36を挿通する前の段階で、後端側からヘッド軸部24に装着できる。
【0050】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0051】
第一実施形態の射出成形用スクリュ12を用いて射出成形を行う場合、
図6及び
図7に示すように、計量工程を行う。
【0052】
具体的には、シリンダ42内に射出成形用スクリュ12が挿入された状態で、図示しない樹脂供給孔から、繊維を含有する樹脂材料をシリンダ42の内部に供給する。なお、この樹脂材料は、シリンダ42内に供給される段階で溶融状態となっていてもよいし、たとえば、シリンダ42内に共有される段階ではペレット状で、射出成形用スクリュ12に設けられたスクリュ等で加熱されて溶融状態となる構成でもよい。射出成形用スクリュ12が、
図1に示す矢印R1方向に回転すると、螺旋溝22において、先端側への溶融樹脂の流れが生じる。
【0053】
図7に示すように、溶融樹脂は、螺旋溝22から、シールリング16の外周側(隙間GP1)を通り、先端側へ流れようとする。この状態で、チェックリング20はヘッド軸部24に対し矢印M1で示すように先端側へ移動しており、シールリング16とチェックリング20との間に隙間GP3が生じている。溶融樹脂は、
図7に矢印F1で示すように、この隙間GP3を通り、さらに、ヘッド軸部24の外周面とチェックリング20の内周面との間隙GP2から、樹脂移送溝30内を流れ、射出成形用スクリュ12の先端側に向けて移動する。
【0054】
ここで、
図10~
図14には、比較例の射出成形用スクリュ92が示されている。比較例の射出成形用スクリュ92では、スクリュヘッド94において、第一実施形態のスクリュヘッド18に対し、カバー部材34が設けられていない。すなわち、樹脂移送溝30が、樹脂移送部26の外周側に開いた構造である。比較例の射出成形用スクリュ92において、上記相違点以外は、第一実施形態の射出成形用スクリュ12と同一構成である。
【0055】
比較例の射出成形用スクリュ92を用いて射出成形を行う場合、計量時に樹脂移送溝30内に存在している溶融樹脂の一部が、シリンダ42の内周面に接触する。この状態で、射出成形用スクリュ92がシリンダ42に対して回転すると、たとえば
図14に矢印R2で示すように、シリンダ42と射出成形用スクリュ92との相対回転の速度差によって、樹脂移送溝30内の溶融樹脂に対し旋回流れ等の流動が生じ、溶融樹脂にせん断力が作用する。そして、溶融樹脂が強化繊維を含有する繊維強化樹脂である場合は、この強化繊維が分断されるおそれがある。強化繊維樹脂は、強化繊維によって強度等の力学的特性を高くしているため、強化繊維が短く分断されてしまうと、繊維強化樹脂としての力学的特性も低下する。
【0056】
これに対し、第一実施形態の射出成形用スクリュ12では、樹脂移送溝30がカバー部材34によって覆われているので、樹脂移送溝30を流れる溶融樹脂が、シリンダ42の内周面に接触しない。したがって、射出成形用スクリュ12がシリンダ42に対し相対回転しても、この相対回転の速度差に起因する溶融樹脂の旋回流れ等の流動が生じない。樹脂移送溝30内の溶融樹脂に作用するせん断力の増大が抑制され、溶融樹脂に含まれる強化繊維の破断も抑制されるので、繊維強化樹脂としての力学的特性の低下も抑制できる。
【0057】
そして、所定量の溶融樹脂(射出成形用スクリュ12を用いた樹脂成形に必要な量)の溶融樹脂がヘッド先端部28側に供給された状態で、射出成形用スクリュ12が、先端側へ移動されることで、溶融樹脂の計量が行われる。
【0058】
なお、
図6及び
図7に示す計量工程によって、所定量の溶融樹脂がシリンダ42内に送られると、計量工程の次工程として、
図8及び
図9に示すように、射出・保圧工程に移行する。
【0059】
射出・保圧工程では、射出成形用スクリュ12を先端側、すなわちシリンダ42の奥側(
図8及び
図9における右側)へ移動させて、シリンダ42の射出口44から、溶融樹脂を金型に向けて射出する。この場合、射出成形用スクリュ12において、チェックリング20は後端側へ流れようとする溶融樹脂に押されるので、矢印M2で示すように後端側へ移動する。その結果、チェックリング20の後端がシールリング16の先端に接触し、計量工程で生じていた隙間GP3(
図7参照)は塞がれる。したがって、
図9に矢印F2で示すように、溶融樹脂が間隙GP2を後端側に移動しようとしても、この溶融樹脂の移動は阻止される。これにより、溶融樹脂は、射出口44から確実に金型に射出される。射出成形用スクリュ12に対し引き続き射出口44へ向かう方向の力を作用させることで、溶融樹脂に圧力を作用させた状態(保圧状態)を維持できる。
【0060】
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態において、第一実施形態と同様の要素、部材等については第一実施形態と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0061】
図15及び
図16に示すように、第二実施形態の射出成形用スクリュ52では、樹脂移送部26に、先端側から後端側まで連続する圧力伝達溝54が設けられている。
図15及び
図16に示す例では、圧力伝達溝54は、隔壁32において、外周面側を部分的に凹ませて形成されている。したがって、
図17及び
図18に示すように、シリンダ42内に射出成形用スクリュ52が挿入された状態で、圧力伝達溝54の部分では、樹脂移送部26の外周面とシリンダ42の内周面との間隔が広くなっている。
【0062】
このような構成とされた第二実施形態の射出成形用スクリュ52では、圧力伝達溝54が設けられているので、射出工程では、
図17に示すように、圧力伝達溝54を通じて溶融樹脂が先端側からチェックリング20に達する。そして、チェックリング20に溶融樹脂から後端側への力が作用する。これにより、チェックリング20を後端側の位置、すなわち隙間GP3を塞いだ状態に確実に維持できる。
【0063】
第二実施形態において、圧力伝達溝54の位置は、上記した隔壁32の位置に限定されない。たとえば、カバー部材34における外周面側に形成されていてもよい。隔壁32はカバー部材34と比較して、樹脂移送部26の径方向における厚みが厚い部分である。したがって、隔壁32に圧力伝達溝54を設けても、カバー部材34の形状を安定的に維持できる。また、隔壁32が厚みを有することで、圧力伝達溝54を深く形成することができる。
【0064】
上記した第一実施形態及び第二実施形態では、カバー部材34が樹脂移送部26に設けられている。すなわち、カバー部材34が樹脂移送部26(スクリュヘッド18)と一体化されているので、カバー部材34をスクリュヘッド18と別体で形成した構成と比較して、部品点数を少なくできる。また、カバー部材34が樹脂移送部26と一体であるので、樹脂移送部26(スクリュヘッド18)と共にカバー部材34が回転して、樹脂移送溝30を覆った状態を維持できる。
【0065】
次に、第三実施形態について説明する。第三実施形態において、第一実施形態と同様の要素、部材等については第一実施形態と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0066】
図19及び
図20に示すように、第三実施形態の射出成形用スクリュ62では、樹脂移送部26に第一実施形態のカバー部材34(
図1~
図4参照)は設けられておらず、これに代えて、チェックリング20が突起部64を備えている。換言すれば、第三実施形態の射出成形用スクリュ62におけるチェックリング20は、樹脂移送部26に装着される円筒状の円筒部66と、この円筒部66の先端側から延出された突起部64を有する形状である。
【0067】
突起部64は、樹脂移送溝30のそれぞれに対応して設けられている。
図19及び
図20に示す例では、樹脂移送溝30は、樹脂移送部26の周方向に間隔をあけて4つ設けられているので、突起部64もこれに対応した位置に4つ設けられている。突起部64のそれぞれは、樹脂移送部26の周方向で、樹脂移送溝30の両側に位置する隔壁32に接触している。このように、突起部64が隔壁32に接触、もしくは僅かな隙間をあけて設けられているので、チェックリング20がスクリュヘッド18に対して周方向に相対回転することが抑制されると共に、樹脂移送溝30を覆った状態を確実に維持できる。
【0068】
図23及び
図24に示すように、突起部64の長さ、すなわち先端側への突出長は、チェックリング20が先端側へ移動した状態で、突起部64の先端部分が、ヘッド先端部28の外周面に達する長さとされている。
【0069】
このような構成とされた第三実施形態の射出成形用スクリュ62では、チェックリング20の突起部64がカバー部材34でもあり、この突起部64によって、樹脂移送溝30を覆うことができる。
図23及び
図24に示すように、樹脂成形を実施する場合の計量工程において、樹脂移送溝30がカバー部材34としての突起部64により覆われる。樹脂移送溝30内に存在している溶融樹脂は、シリンダ42の内周面に接触しない。このため、射出成形用スクリュ62がシリンダ42に対し相対回転しても、樹脂移送溝30内の溶融樹脂に作用するせん断力の増大が抑制され、溶融樹脂に含まれる強化繊維の破断も抑制される。
【0070】
第三実施形態の射出成形用スクリュ62では、チェックリング20が先端側へ移動した状態で、突起部64の先端部分が、ヘッド先端部28の外周面に達している。すなわち、計量時において、樹脂移送溝30を突起部64によって先端側まで覆うことができ、樹脂移送溝30内に存在している溶融樹脂が、シリンダ42の内周面に接触しない状態を確実に維持できる。
【0071】
第三実施形態の射出成形用スクリュ62では、また、突起部64の先端部分が、ヘッド先端部28の外周面に達している。そして、射出・保圧時には、溶融樹脂が、突起部64の先端部分に接触して、突起部64を後端側へ押す。これにより、
図25及び
図26に示すように、チェックリング20の後端がシールリング16の先端に接触した状態を維持できる。
【0072】
次に、第四実施形態について説明する。第四実施形態において、第一~第三実施形態と同様の要素、部材等については第一実施形態と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。また、第四実施形態では、第三実施形態に対し、チェックリング20の形状が異なっているが、他は同一の構成とされているので、以下では、第四実施形態のチェックリング20について説明する。
【0073】
第四実施形態の射出成形用スクリュでは、
図27に示すように、チェックリング20が、第三実施形態のチェックリング20と同様の突起部64を備えているが、さらに、カバー部74を備えている。カバー部74は、突起部64よりも径方向外側に位置すると共に、周方向に連続する円筒状の部位である。したがって、複数の突起部64が、周方向に連続するカバー部74によって繋がれている構造である。
【0074】
カバー部74の外周面は、円筒部66の外周面と同芯且つ同径であり、カバー部74の外周面と円筒部66の外周面とは、軸方向(矢印J1方向)にスムーズに連続している。したがって、カバー部74の外周面は、円筒部66の外周面と同様に、射出成形用スクリュ(
図19等に示す第三実施形態の射出成形用スクリュ62参照)における最大径部分よりも径方向外側には出っ張らず、射出成形用スクリュ72をシリンダ42に挿入する際に影響が出ないようになっている。
【0075】
このような構成とされた第四実施形態では、複数の突起部64がカバー部74によって周方向に繋がれているので、突起部64の形状および位置が安定する。
【0076】
次に、第五実施形態について説明する。第五実施形態において、第一~第四実施形態と同様の要素、部材等については第一実施形態と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。また、第五実施形態においても、第三実施形態に対し、チェックリング20の形状が異なっているが、他は同一の構成とされているので、以下では、第五実施形態のチェックリング20について説明する。
【0077】
第五実施形態の射出成形用スクリュでは、チェックリング20が、第四実施形態のチェックリング20と同様に円筒部66、突起部64及びカバー部74を備えているが、円筒部66の部分(後端側の部分)と、突起部64及びカバー部74の部分(先端側の部分)とに分割されている。
【0078】
このような構成とされた第五実施形態の射出成形用スクリュでは、チェックリング20をヘッド軸部24に装着する作業が容易である。円筒部66は、ヘッド軸部24に対し後端側から装着できる。これに対し、突起部64及びカバー部74は、実質的には樹脂移送部26に装着される部分であるので、樹脂移送部26に対し先端側、すなわちヘッド先端部28側から装着できる。なお、円筒部66をヘッド軸部24に、突起部64及びカバー部74を樹脂移送部26に、それぞれ装着した後、円筒部66と、突起部64及びカバー部74とを一体化してもよい。一体化の構造は特に限定されず、接着剤を用いても良いし、互いに係合する係合部を設けて、係合により一体化してもよい。
【0079】
上記各実施形態の射出成形用スクリュは、複数の樹脂移送溝30を備えている。したがって、樹脂移送溝30を1つのみ備える構成と比較して、実質的に樹脂を移送する部分の断面積を広く確保できる。
【0080】
そして、複数の樹脂移送溝30の間に隔壁32が位置しているので、この隔壁32により、樹脂移送溝30を複数に区画した状態を維持できる。
【0081】
上記各実施形態の射出成形用スクリュは、ヘッド軸部24から延出された取付シャフト36の雄ネジを、スクリュ本体14に形成された取付孔40の雌ネジに螺合することで、スクリュ本体14にスクリュヘッド18を固定する構造である。そして、スクリュヘッド18は軸方向に所定の長さを有する樹脂移送部26を有しているので、このような樹脂移送部26がない構造のスクリュヘッドと比較して、軸方向に長い形状である。取付シャフト36の雄ネジを取付孔40の雌ネジに螺合する際には、治具等によってスクリュヘッド18を把持して軸周りに回転させることがある。この場合、上記各実施形態のスクリュは、ヘッド軸部24だけでなく樹脂移送部26も、螺合時の把持部として効果的に用いることができる。また、スクリュヘッド18は、樹脂移送部26を有することで軸方向に長い形状でもある。このため、上記した螺合時や、スクリュをシリンダ42に挿入する際等に、射出成形用スクリュの揺動を抑制する効果も高い。さらには、射出・保圧工程において、スクリュヘッド18の揺動を抑制し、射出成形用スクリュ12、52、62の動きを安定化させる効果も高い。
【0082】
樹脂移送部26は、上記では、軸方向に一定径を有する構造として説明したが、樹脂移送部26は軸方向に一定の径を有する必要はなく、たとえば、後端側から先端側へ径が漸増する形状でもよい。
【0083】
樹脂移送部26の軸方向の長さに制限はないが、たとえば、樹脂移送部26の長さの下限値を、ヘッド先端部28の軸方向の長さの0.5倍とすれば、樹脂移送部26として、治具等によって把持されるのに十分な長さを確保できる。また、樹脂移送部26の軸方向の長さの上限値も制限はないが、過度に長いと、射出成形用スクリュとしての扱いにくくなる。したがって、たとえば、樹脂移送部26の長さの上限値を、ヘッド先端部28の軸方向の長さの3.0倍とすれば、射出成形用スクリュの全体の長さが過度に長くなることを抑制でき、取り扱いに優れた射出成形用スクリュとなる。
【符号の説明】
【0084】
12 射出成形用スクリュ
16 シールリング
18 スクリュヘッド
20 チェックリング
22 螺旋溝
24 ヘッド軸部
24A 径漸減部
24B 径一定部
26 樹脂移送部
28 ヘッド先端部
30 樹脂移送溝
30B 底面
32 隔壁
34 カバー部材
36 取付シャフト
38 挿通孔
40 取付孔
42 シリンダ
44 射出口
52 射出成形用スクリュ
54 圧力伝達溝
62 射出成形用スクリュ
64 突起部
66 円筒部
74 カバー部