(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】カバーガラス及びディスプレイ
(51)【国際特許分類】
B32B 7/023 20190101AFI20231121BHJP
C03C 17/42 20060101ALI20231121BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20231121BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B32B7/023
C03C17/42
B32B17/06
G09F9/00 302
G09F9/00 313
(21)【出願番号】P 2019221956
(22)【出願日】2019-12-09
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池上 耕司
(72)【発明者】
【氏名】梶岡 利之
(72)【発明者】
【氏名】金井 敏正
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-333592(JP,A)
【文献】特開2008-164884(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021560(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
G09F 9/00
C03C 15/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向し合う第1の主面及び第2の主面を有するガラス基板と、
前記ガラス基板の前記第1の主面に設けられている第1のアンチグレア層と、
前記ガラス基板の前記第2の主面側において構成されている第2のアンチグレア層と、
を備え、
前記第1のアンチグレア層が、
前記ガラス基板の前記第1の主面上に設けられている緩衝層を有し、かつ前記第1のアンチグレア層が、前記緩衝層上に設けられている膜であって、無機膜である第1のアンチグレア膜、及び前記緩衝層上に設けられている膜であって、マトリクス中に散乱粒子が分散されてなる第2のアンチグレア膜のうち一方を有する、カバーガラス。
【請求項2】
前記緩衝層が、シリコーン樹脂からなる、請求項1に記載のカバーガラス。
【請求項3】
前記第1のアンチグレア層が前記第2のアンチグレア膜を有し、前記散乱粒子がシリカ粒子である、請求項
1又は2に記載のカバーガラス。
【請求項4】
前記第2のアンチグレア層が、前記ガラス基板の前記第2の主面上に直接的又は間接的に設けられている、第4のアンチグレア膜を有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載のカバーガラス。
【請求項5】
前記第2のアンチグレア層が、前記ガラス基板の前記第2の主面に設けられた凹凸構造を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載のカバーガラス。
【請求項6】
対向し合う第1の主面及び第2の主面を有するガラス基板と、
前記ガラス基板の前記第1の主面に設けられている第1のアンチグレア層と、
前記ガラス基板の前記第2の主面側において構成されている第2のアンチグレア層と、
を備え、
前記第1のアンチグレア層が、前記ガラス基板の前記第1の主面上に直接的又は間接的に設けられており、かつアンチグレアフィルムからなる第3のアンチグレア膜を有し、
前記第2のアンチグレア層が、前記ガラス基板の前記第2の主面上に直接的又は間接的に設けられている、無機膜である第4のアンチグレア膜を有する、カバーガラス。
【請求項7】
対向し合う第1の主面及び第2の主面を有するガラス基板と、
前記ガラス基板の前記第1の主面に設けられている第1のアンチグレア層と、
前記ガラス基板の前記第2の主面側において構成されている第2のアンチグレア層と、
を備え、
前記第1のアンチグレア層が、前記ガラス基板の前記第1の主面上に直接的又は間接的に設けられており、かつアンチグレアフィルムからなる第3のアンチグレア膜を有し、
前記第2のアンチグレア層が、前記ガラス基板の前記第2の主面に設けられている凹凸構造からなる、カバーガラス。
【請求項8】
表示面を有する表示素子と、
前記表示素子の前記表示面上に設けられている、請求項1~
7のいずれか一項に記載のカバーガラスと、
を備え、
前記カバーガラスにおける前記ガラス基板の前記第1の主面及び前記第2の主面のうち、前記第1の主面が前記表示素子側に位置する、ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンチグレア機能を有するカバーガラス及びそのカバーガラスを用いたディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
カバーガラスは、携帯電話機、タブレット端末、テレビやデジタルサイネージ等のディスプレイに広く用いられている。このようなディスプレイの視認性は、外光の映り込みなどにより低下することがある。そのため、ディスプレイの視認性を高める様々な試みがなされている。例えば、下記の特許文献1には、防眩性等を高めるための凹凸構造を両面に有する、カバー部材が開示されている。このカバー部材の一方の面上に高屈折率層が設けられており、高屈折率層上に樹脂層が設けられている。樹脂層は、画像表示装置にカバーガラスを接合するための粘着剤として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カバーガラスをディスプレイ等に用いた場合には、外部からカバーガラスに応力が加わることがある。しかし、本願発明者らは、特許文献1に記載されたようなカバーガラスにおいては、防眩性等が高まる一方で、外部からの応力に対する耐久性を十分に高めることが困難であるという問題が見出した。
【0005】
本発明は、応力が加えられた場合においても破損し難い、カバーガラス及びディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るカバーガラスは、対向し合う第1の主面及び第2の主面を有するガラス基板と、ガラス基板の第1の主面に設けられている第1のアンチグレア層と、ガラス基板の第2の主面側において構成されている第2のアンチグレア層と、を備え、第1のアンチグレア層が、第1のアンチグレア層の亀裂の進展を緩和する機能を有することを特徴とする。
【0007】
第1のアンチグレア層が、ガラス基板の第1の主面上に設けられている緩衝層と、緩衝層上に設けられている第1のアンチグレア膜とを有することが好ましい。
【0008】
第1のアンチグレア層が、ガラス基板の第1の主面上に直接的又は間接的に設けられており、かつマトリクス中に散乱粒子が分散されてなる第2のアンチグレア膜を有することが好ましい。この場合、散乱粒子がシリカ粒子であることがより好ましい。
【0009】
第1のアンチグレア層が、ガラス基板の第1の主面上に直接的又は間接的に設けられており、かつアンチグレアフィルムからなる第3のアンチグレア膜を有することが好ましい。
【0010】
第2のアンチグレア層が、ガラス基板の第1の主面側に加わる応力を緩和することが好ましい。
【0011】
第2のアンチグレア層が、ガラス基板の第2の主面上に直接的又は間接的に設けられている、第4のアンチグレア膜を有することが好ましい。
【0012】
第2のアンチグレア層が、ガラス基板の第2の主面に設けられた凹凸構造を含むことが好ましい。
【0013】
本発明に係るディスプレイは、表示面を有する表示素子と、表示素子の表示面上に設けられている、上記カバーガラスと、を備え、カバーガラスにおけるガラス基板の第1の主面及び第2の主面のうち、第1の主面が画面表示素子側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、応力が加えられた場合においても破損し難い、カバーガラス及びディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るカバーガラスの正面断面図である。
【
図3】カバーガラスの強度測定の方法を説明するための略図的斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態及び比較例における、カバーガラスに加えられる荷重と破壊確率との関係を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係るカバーガラスの正面断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係るカバーガラスの正面断面図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態に係るカバーガラスの正面断面図である。
【
図8】本発明の第4の実施形態に係るガラスカバーの正面断面図である。
【
図9】本発明の第5の実施形態に係るディスプレイの略図的正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0017】
[カバーガラス]
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るカバーガラスの正面断面図である。
図1に示すカバーガラス1は、特に限定されないが、例えばディスプレイ等に用いられる。ディスプレイとしては、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、及び有機ELディスプレイ等が挙げられる。
【0018】
カバーガラス1は、ガラス基板2と、第1のアンチグレア層3と、第2のアンチグレア層4とを備える。第1のアンチグレア層3及び第2のアンチグレア層4は、外光の映り込み等を抑制する、いわゆる防眩効果を付与するために設けられている。
【0019】
ガラス基板2は、第1の主面2a及び第2の主面2bを有する。第1の主面2a及び第2の主面2bは対向し合っている。カバーガラス1がディスプレイに用いられる場合には、ガラス基板2の第1の主面2a及び第2の主面2bのうち、第1の主面2aがディスプレイの内部側に位置し、第2の主面2bがディスプレイの外部側に位置する。
【0020】
本実施形態において、ガラス基板2は、略矩形板状の形状を有する。もっとも、ガラス基板2は、例えば略円板状等の形状を有していてもよく、形状は特に限定されない。ガラス基板2の厚みは、光透過率などに応じて適宜設定することができる。ガラス基板2の厚みは、例えば、0.03mm~1.5mm程度とすることができる。なお、ガラス基板2の厚みは上記に限定されない。
【0021】
ガラス基板2に用いられるガラスとしては、特に限定されないが、例えば、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、アルミノシリケートガラス、化学強化ガラス等を挙げることができる。
【0022】
ガラス基板2の第1の主面2a上に、上記第1のアンチグレア層3が設けられている。本実施形態の第1のアンチグレア層3は、緩衝層5と、第1のアンチグレア膜6とを有する。具体的には、ガラス基板2の第1の主面2a上に直接的に緩衝層5が設けられている。緩衝層5上に第1のアンチグレア膜6が設けられている。
【0023】
緩衝層5は、亀裂の進展を緩和する機能及び透光性を有する。亀裂の進展を緩和する機能とは、具体的には、第1のアンチグレア層3において生じた亀裂が、ガラス基板2側に進展することを緩和する機能である。ここで、例えば、カバーガラス1に、第2の主面2b側から第1の主面2a側の方向に応力が加わったときには、第1の主面2a側に引っ張り応力が加わることとなる。そのため、第1のアンチグレア層3の第1のアンチグレア膜6において亀裂が生じ、このような亀裂がガラス基板2に進展するおそれがある。第1のアンチグレア膜6とガラス基板2との間に設けられている緩衝層5は、このような亀裂がガラス基板2側に進展することを緩和する。
【0024】
本実施形態においては、緩衝層5にはシリコーン樹脂が用いられている。もっとも、緩衝層5の材料は上記に限定されず、亀裂の進展を緩和する機能を有する他の適宜の材料を用いることもできる。緩衝層5の厚みは、例えば、0.001mm~0.1mm程度とすることができる。なお、緩衝層5の厚みは上記に限定されない。
【0025】
第1のアンチグレア層3においては、第1のアンチグレア膜6が防眩効果を有する。本実施形態においては、第1のアンチグレア膜6は無機膜である。第1のアンチグレア膜6は凹凸構造を有する。このような第1のアンチグレア膜6は、無機塗料を緩衝層5上に塗布することにより形成することができる。無機塗料のバインダーとしては、シリカ前駆体、アルミナ前駆体、ジルコニア前駆体、チタニア前駆体等を用いることができる。これらの中でも、シリカ前駆体が特に好ましく用いられる。なお、無機塗料は、粒子を含んでも良い。粒子としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子等が挙げられる。これらの中でも、シリカ粒子が特に好ましく用いられる。シリカ粒子としては、中実シリカ粒子がより好ましい。
【0026】
シリカ前駆体としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のアルコキシシラン、アルコキシシランの加水分解縮合物(ゾルゲルシリカ)、シラザン等が挙げられ、防眩効果をより高める観点からは、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のアルコキシシラン、それらの加水分解縮合物の少なくとも一種が好ましく、テトラエトキシシランの加水分解縮合物がより好ましい。
【0027】
アルミナ前駆体としては、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシドの加水分解縮合物、水溶性アルミニウム塩、アルミニウムキレート等が挙げられる。
【0028】
ジルコニア前駆体としては、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの加水分解縮合物等が挙げられる。
【0029】
チタニア前駆体としては、チタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解縮合物等が挙げられる。
【0030】
ガラス基板2の第2の主面2b上には、上記第2のアンチグレア層4が設けられている。本実施形態においては、第2のアンチグレア層4は、第1のアンチグレア膜6と同様の無機膜であり、凹凸構造を有する。なお、第2のアンチグレア層4は、ガラス基板2の第2の主面2b上に直接的に設けられている。一方で、第1のアンチグレア層3における第1のアンチグレア膜6は、ガラス基板2の第1の主面2a上に緩衝層5を介して間接的に設けられている。
【0031】
本実施形態の特徴は、ガラス基板2の第1の主面2a及び第2の主面2bに、それぞれ第1のアンチグレア層3及び第2のアンチグレア層4が設けられており、第1のアンチグレア層3が第1のアンチグレア層3自体の亀裂の進展を緩和する機能を有することにある。それによって、応力が加えられた場合においてカバーガラス1が破損し難い。以下において、この詳細を、本実施形態と比較例とを比較することにより説明する。
【0032】
第1の実施形態及び比較例の複数のカバーガラスを作製した。
図2に示すように、比較例は、第1のアンチグレア層103が第2のアンチグレア層4と同様に構成されている点において第1の実施形態と異なる。具体的には、比較例の第1のアンチグレア層103は緩衝層を有しない。なお、上記各カバーガラスのサイズは50mm角とし、厚みは0.55mmとした。これらのカバーガラスの強度測定を以下のように、リングオンリング試験によって行った。
【0033】
まず、
図3に示すように、支持リング104上に第1の実施形態のカバーガラス1を配置した。カバーガラス1におけるガラス基板2の第1の主面2a及び第2の主面2bのうち、第1の主面2aを支持リング104側とした。次に、ピストンリング105によりカバーガラス1に荷重Pを加えた。これにより、カバーガラス1を
図3における下方に押圧した。なお、支持リング104の直径は25mmであり、ピストンリング105の直径は12.5mmである。上記押圧は0.5mm/minの速度で、カバーガラス1を破壊するまでピストンリング105を下降させた。以上により、カバーガラス1の破壊荷重を測定した。このような強度測定を、第1の実施形態及び比較例の複数のカバーガラスについて行い、カバーガラスに加えられる荷重と破壊確率との関係を求めた。
【0034】
図4は、第1の実施形態及び比較例における、カバーガラスに加えられる荷重と破壊確率との関係を示す図である。
図4に示すように、比較例では、1500N程度の荷重を加えた場合において、カバーガラスの破壊確率が97%程度となっていることがわかる。これに対して、第1の実施形態においては、1500Nの荷重を加えても破壊確率は5%未満にすぎないことがわかる。さらに、2000Nと大きな荷重を加えてもなお、破壊確率が10%未満であることがわかる。2900Nという、より一層大きな荷重を加えた場合でさえも、破壊確率は63%未満となっていることがわかる。
【0035】
上述したように、カバーガラス1又はカバーガラス101をディスプレイに用いた場合には、ガラス基板2の第2の主面2b側がディスプレイの外部側に位置する。よって、カバーガラス1又はカバーガラス101に外部からの応力が加わる場合には、
図3に示した強度試験において荷重が加えられた場合と同様の応力が加わる。具体的には、カバーガラス1又はカバーガラス101に、ガラス基板2の第2の主面2b側から第1の主面2a側に向かい押圧される応力が加わる。そのため、第1の主面2a側には引っ張り応力が加わることとなる。
【0036】
比較例においては、第1のアンチグレア層103及び第2のアンチグレア層4が同様に構成されているため、ガラス基板2の第1の主面2a側及び第2の主面2b側の応力は相殺され、破損し難いとも思われる。しかしながら、上記の強度測定の結果から確認されるように、外部から応力が加わった場合には、カバーガラス101は破損し易い。この理由は、以下のように考えられる。外部から応力が加わった際に、ガラス基板2に亀裂が生じる前に、第1のアンチグレア層103に亀裂が生じる。第1のアンチグレア層103の亀裂がガラス基板2に到達することによって、ガラス基板2にも亀裂が生じ、カバーガラス101が破損する。
【0037】
これに対して、第1の実施形態においては、第1のアンチグレア層3は、緩衝層5を有することにより、第1のアンチグレア層3の亀裂の進展を緩和する機能を有する。それによって、外部から応力が加わった際に第1のアンチグレア層3に亀裂が生じたとしても、ガラス基板2に第1のアンチグレア層3の亀裂が到達することを抑制できる。これにより、ガラス基板2の割れをも抑制することができる。従って、カバーガラス1は、外部から応力が加わった場合において破損し難い。このように、本実施形態においては、第1のアンチグレア層3及び第2のアンチグレア層4が非対称であるにも関わらず、カバーガラス1を効果的に破損し難くすることができる。
【0038】
加えて、本実施形態においては、ガラス基板2の第1の主面2aに第1のアンチグレア層3が設けられており、第2の主面2bに第2のアンチグレア層4が設けられている。それによって、防眩性を効果的に高めることもできる。
【0039】
(変形例)
図5は、第1の実施形態の第1の変形例に係るカバーガラスの正面断面図である。本変形例は、第2のアンチグレア層14の構成が第1の実施形態と異なる。具体的には、第2のアンチグレア層14は、ガラス基板12の第2の主面12bに凹凸構造が設けられてなる。第2のアンチグレア層14は、ガラス基板12の第2の主面12b側において、ガラス基板12と一体的に構成されている。
【0040】
本変形例の第2のアンチグレア層14は、例えば、ガラス基板12の第2の主面12bにエッチング処理を行うことにより形成することができる。
【0041】
本変形例においても、ガラス基板12の第1の主面2a上に第1のアンチグレア層3が設けられている。従って、第1の実施形態と同様に、カバーガラス11は、外部から応力が加えられた場合において破損し難い。
【0042】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係るカバーガラスの正面断面図である。本実施形態は、第1のアンチグレア層23の構成が第1の実施形態と異なる。具体的には、カバーガラス21における第1のアンチグレア層23は第2のアンチグレア膜である。第2のアンチグレア膜は、ガラス基板2の第1の主面2a上に直接的に設けられている。第2のアンチグレア膜は、マトリクス23a中に散乱粒子23bが分散されてなる。
【0043】
第1のアンチグレア層23は凹凸構造を有しない。なお、第1のアンチグレア層23は凹凸構造を有していてもよい。
【0044】
第1のアンチグレア層23としての第2のアンチグレア膜は、防眩効果及び亀裂の進展を緩和する機能の双方を有する。第2のアンチグレア膜のマトリクス23aには、第1の実施形態の緩衝層5と同様の、シリコーン樹脂が用いられている。もっとも、マトリクス23aの材料は上記に限定されず、亀裂の進展を緩和する機能を有する他の適宜の材料を用いることもできる。
【0045】
散乱粒子23bとしては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子等が挙げられる。これらの中でも、シリカ粒子が特に好ましく用いられる。シリカ粒子としては、中空シリカ粒子がより好ましい。
【0046】
本実施形態においても、ガラス基板2の第1の主面2a上に第1のアンチグレア層23が設けられている。従って、第1の実施形態と同様に、カバーガラス21は、外部から応力が加えられた場合において破損し難い。
【0047】
なお、第1のアンチグレア層23は、第2のアンチグレア膜に加えて、緩衝層を有していてもよい。第1の実施形態と同様に、第2のアンチグレア膜は、ガラス基板2の第1の主面2a上に、緩衝層を介して間接的に設けられていてもよい。
【0048】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態に係るカバーガラスの正面断面図である。本実施形態は、第1のアンチグレア層33の構成が第2の実施形態と異なる。具体的には、第1のアンチグレア層33は、第1の実施形態と同様に、凹凸構造を有する。第1のアンチグレア層33を構成している第3のアンチグレア膜は、アンチグレアフィルムからなる。なお、第3のアンチグレア膜は、ガラス基板2の第1の主面2a上に直接的に設けられている。
【0049】
第1のアンチグレア層33を構成しているアンチグレアフィルムは、防眩効果及び亀裂の進展を緩和する機能の双方を有する。上記アンチグレアフィルムには、例えば、ハードコート剤をベースにしたシリカなどの拡散微粒子を添加した光拡散コート剤が塗布されたPETフィルムが用いられる。もっとも、アンチグレアフィルムの材料は上記に限定されない。
【0050】
本実施形態においても、ガラス基板2の第1の主面2a上に第1のアンチグレア層33が設けられている。従って、第2の実施形態と同様に、カバーガラス31は、外部から応力が加えられた場合において破損し難い。
【0051】
なお、第1のアンチグレア層33の第3のアンチグレア膜は、第1の実施形態と同様に、ガラス基板の第1の主面2a上に、緩衝層を介して間接的に設けられていてもよい。
【0052】
(第4の実施形態)
図8は、第4の実施形態に係るカバーガラスの正面断面図である。本実施形態は、第2のアンチグレア層44が第1のアンチグレア層3と同様の構成を有する点において、第1の実施形態と異なる。カバーガラス41の第2のアンチグレア層44は、緩衝層47及び第4のアンチグレア膜48を有する。具体的には、ガラス基板2の第2の主面2b上に直接的に緩衝層47が設けられている。緩衝層47上に第4のアンチグレア膜48が設けられている。このように、カバーガラス41の第2のアンチグレア層44は、第1のアンチグレア層3と同様に、第2のアンチグレア層44自体の亀裂の進展を緩和する機能を有する。また、第2のアンチグレア層44は、ガラス基板2の第1の主面2a側に加わる応力を緩和する。
【0053】
本実施形態においては、ガラス基板2の第1の主面2a側及び第2の主面2b側のいずれの方から押圧された場合においても、カバーガラス41は破損し難い。
【0054】
なお、第2のアンチグレア層44は、第2の実施形態における第1のアンチグレア層23と同様の構成を有していてもよく、あるいは、第3の実施形態における第1のアンチグレア層33と同様の構成を有していてもよい。
【0055】
[ディスプレイ]
(第5の実施形態)
図9は、第5の実施形態に係るディスプレイの略図的正面断面図である。
図9に示すディスプレイ50は、表示素子52と、カバーガラス1とを備える。ディスプレイ50は、特に限定されないが、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は有機ELディスプレイ等である。表示素子52は、特に限定されないが、例えば、液晶表示素子、プラズマ表示素子、又は有機EL表示素子等である。本実施形態では、カバーガラス1は第1の実施形態の構成を有する。もっとも、これに限定されず、ディスプレイ50におけるカバーガラスは、第2~第4の実施形態や変形例等の本発明に係るカバーガラスであればよい。
【0056】
表示素子52は表示面52aを有する。表示面52aは、画像が表示される面である。表示面52a上にカバーガラス1が設けられている。具体的には、ディスプレイ50は接着剤層53を有する。接着剤層53によって、カバーガラス1と表示素子52とが接合されている。もっとも、カバーガラス1と表示素子52との接合の形態は上記に限られない。
【0057】
図9に示すように、カバーガラス1におけるガラス基板2の第1の主面2a及び第2の主面2bのうち、第1の主面2aが表示素子52側に位置する。第2の主面2bは、ディスプレイ50における外部側に位置する。よって、ディスプレイ50に外部からの応力が加えられる場合、第2の主面2b側から応力が加えられることとなる。上述したように、カバーガラス1においては、ガラス基板2の第1の主面2a上に、第1のアンチグレア層3が設けられている。第1のアンチグレア層3は、第1のアンチグレア層3自体の亀裂の進展を緩和する機能を有する。よって、第1のアンチグレア層3に亀裂が生じたとしてもガラス基板2に第1のアンチグレア層3の亀裂が到達することを抑制できる。従って、ディスプレイ50は、外部から応力が加えられた場合において破損し難い。
【符号の説明】
【0058】
1…カバーガラス
2…ガラス基板
2a…第1の主面
2b…第2の主面
3…第1のアンチグレア層
4…第2のアンチグレア層
5…緩衝層
6…第1のアンチグレア膜
11…カバーガラス
12…ガラス基板
12b…第2の主面
14…第2のアンチグレア層
21…カバーガラス
23…第1のアンチグレア層
23a…マトリクス
23b…散乱粒子
31…カバーガラス
33…第1のアンチグレア層
41…カバーガラス
44…第2のアンチグレア層
47…緩衝層
48…第4のアンチグレア膜
50…ディスプレイ
52…表示素子
52a…表示面
53…接着剤層
101…カバーガラス
103…第1のアンチグレア層
104…支持リング
105…ピストンリング