IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-画像形成装置、および制御プログラム 図1
  • 特許-画像形成装置、および制御プログラム 図2
  • 特許-画像形成装置、および制御プログラム 図3
  • 特許-画像形成装置、および制御プログラム 図4
  • 特許-画像形成装置、および制御プログラム 図5
  • 特許-画像形成装置、および制御プログラム 図6
  • 特許-画像形成装置、および制御プログラム 図7
  • 特許-画像形成装置、および制御プログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】画像形成装置、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20231121BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G03G21/00 370
G03G21/00 318
G03G15/01 Y
G03G15/01 113
G03G21/00 538
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019224578
(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公開番号】P2021092724
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加納 邦彦
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-152350(JP,A)
【文献】特開2008-275938(JP,A)
【文献】特開2017-044978(JP,A)
【文献】特開2019-074596(JP,A)
【文献】特開2011-022468(JP,A)
【文献】特開2012-155210(JP,A)
【文献】特開2016-105147(JP,A)
【文献】特開2011-215583(JP,A)
【文献】特開2018-054862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続紙に画像形成可能な画像形成装置であって、
少なくとも1つの現像器により形成されたトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上のトナー像を連続紙に転写する転写部と、
前記像担持体上に残留したトナーを清掃するクリーニング部と、
所定の条件により、前記クリーニング部のクリーニング部材の前記像担持体への接触領域にトナーを供給するためのトナー帯を形成するか否かを判定する判定部と、
前記判定部が前記トナー帯を形成すると判定した場合に、プロセス速度を速度Vrに設定して、前記トナー帯を形成させる画像制御部と、を備え、
前記速度Vrは、通常時のプロセス速度である速度Vpよりも速い速度であり、
前記画像制御部は、前記トナー帯の形成を開始する時に、実行待ちの待機印刷ジョブがあるか否かを判定し、
前記待機印刷ジョブがある場合には、前記トナー帯を前記速度Vrのプロセス速度で形成させ、
前記待機印刷ジョブがない場合には、前記トナー帯を通常時と同じプロセス速度である前記速度Vpで形成させる、画像形成装置。
【請求項2】
連続紙に画像形成可能な画像形成装置であって、
少なくとも1つの現像器により形成されたトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上のトナー像を連続紙に転写する転写部と、
前記像担持体上に残留したトナーを清掃するクリーニング部と、
所定の条件により、前記クリーニング部のクリーニング部材の前記像担持体への接触領域にトナーを供給するためのトナー帯を形成するか否かを判定する判定部と、
前記判定部が前記トナー帯を形成すると判定した場合に、プロセス速度を速度Vrに設定して、前記トナー帯を形成させる画像制御部と、
前記画像形成装置の内部の飛散トナーを回収する回収部と、を備え、
前記速度Vrは、通常時のプロセス速度である速度Vpよりも速い速度であり、
前記画像制御部は、前記トナー帯形成時に前記プロセス速度を速度Vrにする場合、
前記像担持体のプロセス速度を速度Vrに設定し、
前記現像器の現像ローラーの回転速度を通常時と同じ回転速度に設定し、該現像器に印加する現像バイアスの絶対値を通常時よりも大きい値に設定し、かつ
前記トナー帯形成時の前記回収部の回収能力をWo、通常時の回収能力をWfとした場合、Wo≧Wfとなるように設定する、画像形成装置。
【請求項3】
前記転写部が前記像担持体に当接した当接状態と、離間した離間状態とに切り替える切替機構を、さらに備え、
前記画像制御部は、前記トナー帯を形成する際に、前記切替機構により、前記転写部を前記離間状態にしてから、前記トナー帯を形成させる、請求項1、または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記所定の条件として、印刷ジョブ終了時における、該印刷ジョブの平均印字率、または、所定期間、もしくは所定走行距離における平均印字率が、閾値よりも小さい場合に、前記トナー帯を形成すると判定する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記現像器は複数であり、
複数の前記現像器は、それぞれ異なる色のトナーにより前記トナー像を形成し、
前記判定部は、色毎に前記平均印字率が、閾値よりも小さいか否かに基づいて前記判定を行い、
前記画像制御部は、少なくとも前記所定の条件を満たす色のトナーを用いる前記現像器により、前記トナー帯を形成させる、請求項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成装置の内部の飛散トナーを回収する回収部を備え、
前記画像制御部は、前記トナー帯を形成する際に、前記回収部の回収能力Wmを、通常時の回収能力Wfよりも増加させるよう制御する、請求項1、および請求項3から請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記回収部は、吸気ファンを含み、前記吸気ファンの風量を増加させることで、前記回収部の回収能力を増加させる、請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像制御部は、前記トナー帯形成時にプロセス速度を前記速度Vrにする場合、
前記像担持体のプロセス速度を前記速度Vrに設定し、
前記現像器の現像ローラーの回転速度を通常時と同じ回転速度に設定するとともに、該現像器に印加する現像バイアス電圧の絶対値を通常時よりも大きい値に設定する、請求項1、および請求項3から請求項7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
連続紙に画像形成可能な画像形成装置であって、
少なくとも1つの現像器により形成されたトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上のトナー像を連続紙に転写する転写部と、
前記像担持体上に残留したトナーを清掃するクリーニング部と、を備える画像形成装置を制御する制御プログラムであって、
所定の条件を満たすか否かにより、前記クリーニング部のクリーニング部材の前記像担持体への接触領域にトナーを供給するためのトナー帯を形成するか否かを判定するステップ(a)と、
前記ステップ(a)でトナー帯を形成すると判定した場合に、プロセス速度を速度Vrに設定して、前記トナー帯を形成させるステップ(b)とを含み、
前記速度Vrは、通常時のプロセス速度である速度Vpよりも速い速度であり、
前記ステップ(b)の前に、実行待ちの待機印刷ジョブがあるか否かを判定するステップ(c)を含み、
前記ステップ(b)では、
前記待機印刷ジョブがある場合には、前記トナー帯を前記速度Vrのプロセス速度で形成させ、
前記待機印刷ジョブがない場合には、前記トナー帯を通常時と同じプロセス速度である前記速度Vpで形成させる、
処理をコンピューターに実行させるための制御プログラム。
【請求項10】
連続紙に画像形成可能な画像形成装置であって、
少なくとも1つの現像器により形成されたトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上のトナー像を連続紙に転写する転写部と、
前記像担持体上に残留したトナーを清掃するクリーニング部と、
前記画像形成装置の内部の飛散トナーを回収する回収部と、を備える画像形成装置を制御する制御プログラムであって、
所定の条件を満たすか否かにより、前記クリーニング部のクリーニング部材の前記像担持体への接触領域にトナーを供給するためのトナー帯を形成するか否かを判定するステップ(a)と、
前記ステップ(a)でトナー帯を形成すると判定した場合に、プロセス速度を速度Vrに設定して、前記トナー帯を形成させるステップ(b)とを含み、
前記速度Vrは、通常時のプロセス速度である速度Vpよりも速い速度であ
前記ステップ(b)では、前記トナー帯形成時に前記プロセス速度を速度Vrにする場合、
前記像担持体のプロセス速度を速度Vrに設定し、
前記現像器の現像ローラーの回転速度を通常時と同じ回転速度に設定し、該現像器に印加する現像バイアスの絶対値を通常時よりも大きい値に設定し、かつ
前記トナー帯形成時の前記回収部の回収能力をWo、通常時の回収能力をWfとした場合、Wo≧Wfとなるように設定する、処理をコンピューターに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において、クリーニングブレード(以下、単に「ブレード」とも称する)によって、中間転写ベルトや感光体ドラム等の像担持体を清掃する技術が知られている。
【0003】
このような技術では、像担持体とブレードの接触部において、清掃されたトナーから離脱した潤滑剤の機能を有する外添剤が堰き止められることによって、接触部での像担持体とブレードとの摩擦抵抗を低減させている。
【0004】
しかしながら、トナーの消費が少ない低印字率(「低カバレッジ」ともいう)の画像の印刷が連続した場合には、クリーニングされるトナーの量も少なくなる。そのため、接触部に供給されるトナー、およびその外添剤の量が不足し、摩擦抵抗が増加し、適切なクリーニングが行われなくなったり、ブレードの接触部が損傷したりする。
【0005】
このような問題に対して、特許文献1では、接触部において適切な量のトナーを供給するために、トナー像毎の印字率をモニターし、所定値以下の低印字率である場合には、画像形成を中断して、トナー帯を形成するように制御する画像形成装置が開示されている。
【0006】
また、近年、画像形成装置では、例えばロール紙などの装置本体の全長よりも長い連続紙にプリント可能なものがある。この場合、元巻きより供給されたロール紙は、搬送路に配置された複数の搬送ローラー対により挟持されながら、画像形成部に搬送され、その表面に画像が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-43533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような連続紙を用いた、画像形成装置においては、同じ様な画像を繰り返し印刷する傾向があるために、低印字率の画像が連続して行われた場合には、連続紙の所定の搬送距離毎に、印刷を中断して、トナー帯により多くのトナーを接触部に供給する必要がある。その分だけ、印刷の中断にともなう停止時間が長くなり生産性が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、クリーニング部材にトナーを供給するためのトナー帯を形成する時間を短くすることで、印刷中断時間を短くし、生産性の低下を抑制できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0011】
(1)連続紙に画像形成可能な画像形成装置であって、
少なくとも1つの現像器により形成されたトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上のトナー像を連続紙に転写する転写部と、
前記像担持体上に残留したトナーを清掃するクリーニング部と、
所定の条件により、前記クリーニング部のクリーニング部材の前記像担持体への接触領域にトナーを供給するためのトナー帯を形成するか否かを判定する判定部と、
前記判定部が前記トナー帯を形成すると判定した場合に、プロセス速度を速度Vrに設定して、前記トナー帯を形成させる画像制御部と、を備え、
前記速度Vrは、通常時のプロセス速度である速度Vpよりも速い速度であり、
前記画像制御部は、前記トナー帯の形成を開始する時に、実行待ちの待機印刷ジョブがあるか否かを判定し、
前記待機印刷ジョブがある場合には、前記トナー帯を前記速度Vrのプロセス速度で形成させ、
前記待機印刷ジョブがない場合には、前記トナー帯を通常時と同じプロセス速度である前記速度Vpで形成させる、画像形成装置。
(2)連続紙に画像形成可能な画像形成装置であって、
少なくとも1つの現像器により形成されたトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上のトナー像を連続紙に転写する転写部と、
前記像担持体上に残留したトナーを清掃するクリーニング部と、
所定の条件により、前記クリーニング部のクリーニング部材の前記像担持体への接触領域にトナーを供給するためのトナー帯を形成するか否かを判定する判定部と、
前記判定部が前記トナー帯を形成すると判定した場合に、プロセス速度を速度Vrに設定して、前記トナー帯を形成させる画像制御部と、
前記画像形成装置の内部の飛散トナーを回収する回収部と、を備え、
前記速度Vrは、通常時のプロセス速度である速度Vpよりも速い速度であり、
前記画像制御部は、前記トナー帯形成時に前記プロセス速度を速度Vrにする場合、
前記像担持体のプロセス速度を速度Vrに設定し、
前記現像器の現像ローラーの回転速度を通常時と同じ回転速度に設定し、該現像器に印加する現像バイアスの絶対値を通常時よりも大きい値に設定し、かつ
前記トナー帯形成時の前記回収部の回収能力をWo、通常時の回収能力をWfとした場合、Wo≧Wfとなるように設定する、画像形成装置。
【0012】
)前記転写部が前記像担持体に当接した当接状態と、離間した離間状態とに切り替える切替機構を、さらに備え、
前記画像制御部は、前記トナー帯を形成する際に、前記切替機構により、前記転写部を前記離間状態にしてから、前記トナー帯を形成させる、上記(1)、または上記(2)に記載の画像形成装置。
【0013】
)前記判定部は、前記所定の条件として、印刷ジョブ終了時における、該印刷ジョブの平均印字率、または、所定期間、もしくは所定走行距離における平均印字率が、閾値よりも小さい場合に、前記トナー帯を形成すると判定する、上記(1)から上記(3)のいずれかに記載の画像形成装置。
【0014】
)前記現像器は複数であり、
複数の前記現像器は、それぞれ異なる色のトナーにより前記トナー像を形成し、
前記判定部は、色毎に前記平均印字率が、閾値よりも小さいか否かに基づいて前記判定を行い、
前記画像制御部は、少なくとも前記所定の条件を満たす色のトナーを用いる前記現像器により、前記トナー帯を形成させる、上記()に記載の画像形成装置。
【0016】
(6)前記画像形成装置の内部の飛散トナーを回収する回収部を備え、
前記画像制御部は、前記トナー帯を形成する際に、前記回収部の回収能力Wmを、通常時の回収能力Wfよりも増加させるよう制御する、上記(1)から上記(5)のいずれかに記載の画像形成装置。
【0017】
(7)前記回収部は、吸気ファンを含み、前記吸気ファンの風量を増加させることで、前記回収部の回収能力を増加させる、上記(6)に記載の画像形成装置。
【0018】
(8)前記画像制御部は、前記トナー帯形成時にプロセス速度を前記速度Vrにする場合、
前記像担持体のプロセス速度を前記速度Vrに設定し、
前記現像器の現像ローラーの回転速度を通常時と同じ回転速度に設定するとともに、該現像器に印加する現像バイアス電圧の絶対値を通常時よりも大きい値に設定する、上記(1)から上記(7)のいずれかに記載の画像形成装置。
【0020】
)連続紙に画像形成可能な画像形成装置であって、
少なくとも1つの現像器により形成されたトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上のトナー像を連続紙に転写する転写部と、
前記像担持体上に残留したトナーを清掃するクリーニング部と、を備える画像形成装置を制御する制御プログラムであって、
所定の条件を満たすか否かにより、前記クリーニング部のクリーニング部材の前記像担持体への接触領域にトナーを供給するためのトナー帯を形成するか否かを判定するステップ(a)と、
前記ステップ(a)でトナー帯を形成すると判定した場合に、プロセス速度を速度Vrに設定して、前記トナー帯を形成させるステップ(b)とを含み、
前記速度Vrは、通常時のプロセス速度である速度Vpよりも速い速度であり、
前記ステップ(b)の前に、実行待ちの待機印刷ジョブがあるか否かを判定するステップ(c)を含み、
前記ステップ(b)では、
前記待機印刷ジョブがある場合には、前記トナー帯を前記速度Vrのプロセス速度で形成させ、
前記待機印刷ジョブがない場合には、前記トナー帯を通常時と同じプロセス速度である前記速度Vpで形成させる、
処理をコンピューターに実行させるための制御プログラム。
(10)連続紙に画像形成可能な画像形成装置であって、
少なくとも1つの現像器により形成されたトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体上のトナー像を連続紙に転写する転写部と、
前記像担持体上に残留したトナーを清掃するクリーニング部と、
前記画像形成装置の内部の飛散トナーを回収する回収部と、を備える画像形成装置を制御する制御プログラムであって、
所定の条件を満たすか否かにより、前記クリーニング部のクリーニング部材の前記像担持体への接触領域にトナーを供給するためのトナー帯を形成するか否かを判定するステップ(a)と、
前記ステップ(a)でトナー帯を形成すると判定した場合に、プロセス速度を速度Vrに設定して、前記トナー帯を形成させるステップ(b)とを含み、
前記速度Vrは、通常時のプロセス速度である速度Vpよりも速い速度であり、
前記ステップ(b)では、前記トナー帯形成時に前記プロセス速度を速度Vrにする場合、
前記像担持体のプロセス速度を速度Vrに設定し、
前記現像器の現像ローラーの回転速度を通常時と同じ回転速度に設定し、該現像器に印加する現像バイアスの絶対値を通常時よりも大きい値に設定し、かつ
前記トナー帯形成時の前記回収部の回収能力をWo、通常時の回収能力をWfとした場合、Wo≧Wfとなるように設定する、処理をコンピューターに実行させるための制御プログラム。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る画像形成装置は、連続紙に画像形成可能な画像形成装置であって、少なくとも1つの現像器により形成されたトナー像を担持する像担持体と、前記像担持体上のトナー像を連続紙に転写する転写部と、前記像担持体上に残留したトナーを清掃するクリーニング部と、所定の条件により、前記クリーニング部のクリーニング部材の前記像担持体への接触領域にトナーを供給するためのトナー帯を形成するか否かを判定する判定部と、前記判定部がトナー帯を形成すると判定した場合に、プロセス速度を速度Vrに設定して、前記トナー帯を形成させる画像制御部と、を備え、前記速度Vrは、通常時のプロセス速度である速度Vpよりも速い速度である。このようにすることで、クリーニング部材の像担持体との接触領域にトナーを供給することで、トナー枯渇による摩擦抵抗の増大によるクリーニング部材の摺れや損傷の加速を防止できるとともに、トナー帯の形成にともなう印刷中断時間を短くでき、生産性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施形態に係る画像形成装置の全体構成の概略を示す図である。
図2】画像形成装置の構成を示すブロック図である。
図3】画像形成部、および回収部の構成を示す断面図である。
図4】画像形成部、および回収部の構成を示す斜視図である。
図5】印刷ジョブの実行処理に係る制御処理を示すフローチャートである。
図6図5のステップS107(トナー帯形成モード)の処理を示すサブルーチンフローチャートである。
図7】トナー帯形成モードにおけるプロセス条件を示すテーブルである。
図8】変形例3に係る直転写方式の画像形成部の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、以下においては、用紙の搬送方向に直交する方向を軸方向ともいう。またトナー帯の幅方向は、用紙の搬送方向に対応する。
【0024】
図1は、第1の実施形態に係る画像形成装置800の全体構成の概略を示す図である。図2は、画像形成装置800のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0025】
(全体構成)
画像形成装置800は、画像形成装置本体100、給紙装置200、および排紙装置300を備える。
【0026】
給紙装置200は、連続紙Sの元巻きである供給ロールR0を収納、保持し、用紙搬送方向下流側に連続紙Sを搬送路下流側に送り出す。画像形成装置本体100では、送り出された連続紙Sに対して印刷(画像形成)を行う。画像形成装置本体100で印刷された連続紙Sは下流側の排紙装置300まで搬送され、回収ロールR1に巻き回されて、保持される。また連続紙Sとしては、接着剤を塗布したラベルを長尺の剥離紙に貼り合わせた長尺のラベル紙であってもよい。
【0027】
(画像形成装置本体100)
画像形成装置本体100は、ハードウェア構成として制御部10、記憶部20、操作表示部30、画像形成部40、定着装置50、搬送部60、当接状態切替機構70、回収部80、および通信部90を備えており、これらは信号線を介して相互に接続されている。画像形成部40は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各基本色にそれぞれ対応した複数の作像ユニット41Y、41M、41C、41Kを備え、フルカラーのトナー像を連続紙S上に形成する。以下においては、各色の作像ユニット41Y、41M、41C、41Kを総称して単に「作像ユニット41」ともいう(後述する各色の現像器412、1次転写部422、吸引ダクト81、82等も同様)。
【0028】
(制御部10)
制御部10は、1つまたは複数のCPU(Central Procesing Unit)、および半導体等で構成される内部メモリを備え、記憶部20に記憶されているプログラムを実行することで、画像形成装置800全体に関する、各種処理を実行する。また、制御部10は、判定部11、および画像制御部12として機能する。
【0029】
(判定部11)
判定部11は、平均印字率を算出するとともに、これを閾値と比較することで、トナー帯を形成するか否かを判定する。この判定は、例えば、画像形成時におけるプロセス部材(中間転写ベルト、感光体ドラム等)の走行距離が所定の規定値に到達する毎、もしくは所定期間(例えば所定時間)が所定の規定値に到達する毎、または1つの印刷ジョブが完了する度に実行する。
【0030】
「印字率」は、印字される1ページ分の用紙面積、または画像形成領域の面積に対する印字部分(トナーが印字されるドット)の積算面積が占める比率のことである。平均印字率は、ある区間(例えば1つの印刷ジョブ全体、または所定の走行距離)における印字率を平均化することで算出できる。例えば、印刷データをラスタライズ処理した後のラスターデータからドット数をカウントする。これを全ページ、または全走行距離に対する総ドット数で除することで平均印字率を算出できる。走行距離、およびドット数のカウントは、判定部11の内部カウンタである走行距離カウンタ、および積算印字カウンタでカウントされる。走行距離カウンタのカウントは、例えば、中間転写ベルト421や感光体ドラム411を駆動する駆動モーターのエンコーダーによりカウントできる。判定部11は、Y、M、C、Kの色を区別せずに所定期間における、4色合計のドット数を積算印字カウンタでカウントし、これから平均印字率を算出し、その大小によりトナー帯の要否を判定するようにしてもよい。例えば4色合計の平均印字率が5%以下であればトナー帯を形成すると判定する。あるいは、各色を区別し、色毎の積算印字カウンタでカウントし、これから各色の平均印字率を個別に算出し、これをそれぞれの閾値と比較することでトナー帯の要否を判定するようにしてもよい。例えばK色の平均印字率が3%以下の場合、またはY、M、Cのいずれかの平均印字率が1.5%以下の場合には、トナー帯を形成すると判定する。
【0031】
「トナー帯」は、像担持体(後述する中間転写ベルト421、または、感光体ドラム411)とこの表面のトナー(残留トナー)を清掃するクリーニング部材(後述するブレード431等)の接触領域にトナーを供給するためのものである。トナー帯の画像データは、予め記憶部20に記憶されており、全面を均一のベタ濃度、例えば濃度100%の画像で形成される。トナー帯は、いずれかの色のトナーで形成する帯、または4色の所定幅のトナーを移動方向に順に並べて繰り返し形成する帯である。トナー帯は、軸方向(用紙搬送方向に直交)における画像形成領域の略全域に形成する。トナー帯の幅(中間転写ベルト421等の移動方向(用紙搬送方向)における長さ)は、例えば十数mm~2m(2000mm)の範囲のいずれかに設定できる。トナー帯の幅が大きい場合には、各現像器412の消費トナーの片寄りがないように、順に形成することが好ましい。また、ある区間における平均印字率の算出を色毎に行う場合には、平均印字率の大小に応じて、トナー帯で消費するトナー量に差を付けてもよい。例えば、平均印字率の閾値が1.5%であれば、その閾値との差分に応じたトナーを消費するように各色の割合を設定する。
【0032】
(画像制御部12)
画像制御部12は、トナー帯形成モードにおける画像形成部40のプロセス条件の設定を行う。トナー帯形成モードは、判定部11によりトナー帯を形成すると判定された場合に実行される。トナー帯形成モードでは印刷は行われず、後述するように、画像形成部40のプロセス速度を変更したり、画像形成部40での現像バイアス電圧を変更したり、当接状態切替機構70、および回収部80を制御したりする。
【0033】
ここで「プロセス速度」とは、画像形成を行う感光体ドラム411、中間転写ベルト421等のプロセス部材の表面の移動速度(「線速」ともいう)である。特に、クリーニング部(クリーニング部43、413)へのトナー帯のトナーの搬送、供給に関係するプロセス部材の移動速度である。通常時のプロセス速度は、300~500mm/secの範囲内のいずれかの速度であり、例えば390mm/secである。ここで通常時とは、画像形成時(または印刷時)のことであり、以下においては、トナー帯形成モードと対比する概念として画像形成モードとも称する。
【0034】
(記憶部20)
記憶部20は、予め各種プログラムや各種データを格納しておくROM、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するRAM、および各種プログラムや各種データを格納するハードディスク等から構成される。
【0035】
(操作表示部30)
操作表示部30はタッチパネル、テンキー、スタートボタン、ストップボタン等を備えており、ユーザーによる装置に関する各種設定の入力や、装置の状態の表示および各種指示の入力に使用される。操作表示部30により、ユーザーにより設定された印刷ジョブを受け付ける。また、操作表示部30により、判定部11によるトナー帯の要否判定の平均印字率の閾値の設定変更を受け付けるようにしてもよい。
【0036】
(画像形成部40)
図3図4はそれぞれ、画像形成部40、および回収部80の構成を示す断面図、および斜視図である。これらの図に示すように、画像形成部40は、上述のようにY、M、C、Kの各基本色に対応した複数の作像ユニット41(41Y、41M、41C、41K)を備える。また、画像形成部40は、作像ユニット41の他に、ベルトユニット42、ベルト清掃用のクリーニング部43、および2次転写部44を備える。
【0037】
なお、各作像ユニット41は、現像器412に収納されている現像剤のトナーの色が異なるが、それ以外は同一の構成である。以下においては、Y用の作像ユニット41Y等について説明し、その他の色用の作像ユニットの説明については、同様の構成であることから説明を省略する。また、図3においては、作像ユニット41Yについてのみ符号を付しており、その他の色の作像ユニット41M、41C、41Kについては符号を省略している。また、同様に、各作像ユニット41の周辺にそれぞれ取り付けられた回収部80の吸引ダクト81Y、82Y、および1次転写部422YについてはY用の構成部品のみ符号を付し、その他の色用の構成部品については符号を省略している。
【0038】
(作像ユニット41(41Y、41M、41C、41K))
作像ユニット41Yは、感光体ドラム411Y、現像器412Y、およびクリーニング部413Yを備える。また、図示していないが、帯電極、露光部も設けられている。
【0039】
感光体ドラム411Yは、1つの現像器412Yにより形成されたトナー像を担持する像担持体として機能する。感光体ドラム411Yは、例えばドラム状の金属基体の外周面に、有機光導電体を含有させた樹脂よりなる感光層が形成された有機感光体よりなり、図3において矢印に示すように反時計方向に回転する。
【0040】
感光体ドラム411Yは、ローラー方式、またはスコロトロン方式の帯電極(図示せず)により表面を一定の電位に均一に帯電させられる。また、感光体ドラム411Yは、帯電極より一様に帯電された後、レーザーダイオード、ポリゴンミラー、レンズ光学系、等により構成された露光部(図示せず)により、印刷ジョブの画像データに基づいて露光され、静電潜像が形成される。
【0041】
現像器412Yは、上述のように、それぞれイエロー色の小粒径のトナーとキャリアからなる2成分現像剤を内包する。現像器412Yの現像ローラー4121は、内部の固定の磁極と、外周面の所定速度で回転するスリーブで構成される。回転するスリーブにより、2成分現像剤が、現像ニップに搬送される。現像ローラー4121には電源により現像バイアスが印加される。現像ニップに搬送された現像剤により、感光体ドラム411Yの静電潜像が、現像され、感光体ドラム411Y上にトナー像が形成される。トナー像は、後述する1次転写部422Yとの転写ニップで、中間転写ベルト421に転写される。転写後の感光体ドラム411Y上のトナー(残留トナー)は、クリーニング部413Yにより清掃される。クリーニング部413Yの構成は、後述するベルト用のクリーニング部43と同様の構成を備える。
【0042】
現像ローラー4121(スリーブ)の回転数は、プロセス速度(感光体ドラム411Yの移動速度)に対して所定の速度比(以下、「線速比θ」という)になるように設定される。現像ローラー4121の回転方向は、感光体ドラム411Yの回転方向と同じ、すなわち現像ニップで反対(カウンター方向)の移動方向になるように設定されるが、同じ方向(ウィズ方向)となるように設定してもよい。速度比は、現像ローラー4121の方が速く、例えば、線速比θ=1.5~2.0である。
【0043】
2成分現像剤は、フェライトをコアとしてその周りに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、ポリエステルを主材料としてカーボンブラック等の着色剤、荷電制御剤、シリカ、酸化チタン等の外添剤を加えたトナーとからなる。キャリアは粒径15~100μm、飽和磁化10~80emu/g、トナーは粒径3~15μm、トナーの帯電特性は負帯電特性であり平均電荷量としては-20~-60μC/gである。2成分現像剤としてはこれらのキャリアとトナーとを、トナー濃度4~10質量%になるように混合したものを用いる。
【0044】
(ベルトユニット42)
ベルトユニット42は、中間転写ベルト421、複数の1次転写部422(1次転写部422Y等)、対向ローラー423を含む複数の支持ローラー、およびクリーニング部43で構成される。
【0045】
中間転写ベルト421は、内周面に配置された複数の支持ローラーにより、回転可能に張架されている。図3では、同図の矢印に示すように、中間転写ベルト421は時計方向に回転する。複数の支持ローラーのうち、1つ、または複数のローラーは、駆動モーター(図示せず)により駆動力が伝達され、中間転写ベルト421を駆動する。図3に示すように、複数の支持ローラーには、対向ローラー423が含まれ、2次転写部44との間で転写ニップを形成する。
【0046】
中間転写ベルト421は、例えば、ポリイミドを材料として体積抵抗率を8~11LOGΩ・cmに設定した厚さ80μmの半導体ベルトを用いる。上述したように、各作像ユニット41で形成されたトナー像は、1次転写部422により転写され、中間転写ベルト421上にフルカラーのトナー像が形成される。この中間転写ベルト421も、感光体ドラム411と同様に、像担持体として機能する。この場合、中間転写ベルト421は、複数の現像器412Y、412M、412C、412Kにより形成されたトナー像を担持する像担持体として機能する。
【0047】
1次転写部422は、材料がNBR(Nitrile Butadiene Rubber:ニトリルゴム)の発泡ローラーやソリッドローラー等が用いられる。1次転写部422は、中間転写ベルト421の内周面側から、中間転写ベルト421を介して感光体ドラム411に当接することで転写ニップを形成する。1次転写部422の回転軸に転写用電源(図示せず)から供給される電圧により、トナーの極性(負帯電)と逆極性の電圧が印加され、中間転写ベルト421に、感光体ドラム411Y上のトナー像が転写される。
【0048】
(クリーニング部43)
図3に示すようにクリーニング部43は、クリーニングブレード431(以下、単に「ブレード431」という)、およびブラシローラー432を備え、ブレード431は、中間転写ベルト421に当接(接触)し、中間転写ベルト421を清掃する平板状の部材である。ブレード431は、図3に示すように、ブラシローラー432よりも中間転写ベルト421の移動方向の下流側において、中間転写ベルト421の移動方向(連続紙Sの搬送方向ともいう)に対してカウンター方向に当接する。ブレード431は、クリーニング部材として機能する。ブラシローラー432は、補助的なクリーニング部材として機能し、ブレード431の前に中間転写ベルト421の表面を清掃する。なお、ブラシローラー432に滑剤供給部材を設け、ブラシローラー432により中間転写ベルト421の表面に潤滑剤を塗布するように構成してもよい。
【0049】
ブレード431は、トナーに対する所望のクリーニング性能を達成するために、例えば、ウレタンゴムから構成されてもよく、中間転写ベルト421に対するブレード431の当接力は15~40N/m、当接角は12~23°であってもよい。ただし、ブレード431の材料や、中間転写ベルト421に対する当接条件等は、これらの例に限定されず、所望のクリーニング性能が達成できるように設定されればよい。ブレード431は、中間転写ベルト421を介在して、支持ローラーに対向して配置される。
【0050】
(2次転写部44)
2次転写部44は、1次転写部422と同様の構成を備え、中間転写ベルト421の内周面側に配置された対向ローラー423との間で転写ニップを形成する。中間転写ベルト421上に重畳して転写されたトナー像(フルカラー)は、2次転写部44により連続紙Sに転写される。一方で、中間転写ベルト421上に残ったトナー(残留トナー)は、上述した、下流側のクリーニング部43で除去される。
【0051】
(定着装置50)
定着装置50は、ヒーターを内蔵する加熱ローラー、および加圧ローラーを備える。加熱ローラーに加圧ローラーが所定の圧力で当接し、両ローラーで形成される定着ニップに搬送された、画像形成部40で連続紙S上に転写されたトナー像は、加熱、加圧処理される。これにより連続紙S上に画像が形成される。なお、定着装置50についても、後述する当接状態切替機構70と同様の機構を設けてもよい。これにより、トナー帯形成モード時において、連続紙Sの搬送を停止させる際に、加圧ローラー(下側ローラー)を下方に退避させて、加熱ローラーと離間させることで圧着の解除を行う。これにより搬送停止時の過剰な加熱により定着ニップで連続紙Sが変形したり、変色したりすることを防止できる。
【0052】
(搬送部60)
図1図3に示すように、搬送部60は、搬送路に沿って配置した、複数の搬送ローラー対61、62、63等、およびこれらの搬送ローラーを駆動する駆動モーター(図示せず)等の駆動源を備え、連続紙Sの搬送を行う。この搬送速度は、通常時のプロセス速度と同じ速度である。
【0053】
(当接状態切替機構70)
当接状態切替機構70は、2次転写部44の回転軸の両端に係合しており、2次転写部44の状態を、当接状態と離間状態とで相互に切り替える。当接状態切替機構70は、例えば、駆動モーター等の駆動源、カム、およびこれらを連結するギア等を備え、2次転写部44を、弾性部材の付勢力に抗って中間転写ベルト421から離れる方向に移動させることで、当接状態から離間状態に切り替える。離間状態では、連続紙Sは、中間転写ベルト421とは非接触となる。
【0054】
(回収部80)
図3図4を参照して、回収部80について説明する。回収部80は、作像ユニット41(特に現像器412)から発生する飛散トナーを回収する。これにより、機内が飛散したトナーで汚れることを防ぐ。回収部80は、各現像器412の上下に配置した吸引ダクト81、82の他に、共通ダクト83、中継ダクト84、サイクロン部85、トナー集積部86、下流ダクト87、エアフィルター88、および吸気ファン89を含む。回収部80の回収能力は、画像制御部12が吸気ファン89の風量(回転速度)を制御することで、増減される。
【0055】
なお、図3図4においては分かり易さのために、現像器412Y用の吸引ダクト81Y、82Yのみグレー色で示している。吸引ダクト81Yは、現像器412Yの上蓋に取り付けられている(一体で構成される)。吸引ダクト81Yは、軸方向に延在し、軸方向の長さは、現像器412Yの現像ローラー4121とほぼ同じ長さであり、現像器412Yの現像ローラー4121から飛散により飛び散ったトナーを流入口1x(図3参照)から吸引する。吸引ダクト82Yは、軸方向において奥側(背面側)に配置され、現像器412Yから飛散により下方に飛散したトナーを流入口2x(図3参照)から吸引する。
【0056】
吸気ファン89の吸引力により、各吸引ダクト81、82から、吸われた飛散トナーを含むエアーは、共通ダクト83、中継ダクト84を経由して、サイクロン部85に運ばれる。サイクロン部85は、外側パイプとその内側のパイプの2つの断面が円のパイプで構成される。サイクロン部85に入った飛散トナーを含むエアーは、サイクロン部85の外周パイプの内周面を接線方向に進む。これにより、サイクロン部85の内部には、空気が旋回する旋回流れが発生する。旋回流れにあるトナーは、物体が円運動することで作用する遠心力により半径方向に移動するため、大部分のトナーが空気から分離(遠心分離)される。分離されたトナーは、自重によって下方に落下し、トナー集積部86に貯留される。一方、トナーを分離した残りのエアーは、サイクロン部85の上部に設けられた内側パイプから、下流ダクト87を経由して、吸気ファン89から装置外部に排出される。下流ダクト87の途中には、エアフィルター88が配置される。なお、エアフィルター88は、防塵フィルター、オゾン触媒フィルター等の複数層のフィルターで構成される。
【0057】
(通信部90)
通信部90は、イーサネット(登録商標)等の規格による有線通信のネットワークインターフェースや、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11等の規格による無線通信のインターフェース等の各種ローカル接続向けのインターフェースを用いて、各装置との通信を行う。また、画像形成装置800の他の装置(給紙装置200、排紙装置300)との通信も行う。通信部90により、外部の端末装置(PC等)から印刷ジョブを受け付ける。
【0058】
(印刷ジョブの実行処理)
次に図5図6を参照し、第1の実施形態に係る画像形成装置800における印刷ジョブの実行処理、およびその印刷ジョブにおいて行われるトナー帯形成モードについて説明する。図5は、印刷ジョブの実行処理に係る制御処理を示すフローチャートであり、図6は、図5のステップS107(トナー帯形成モード)を示すサブルーチンフローチャートである。
【0059】
(ステップS101)
画像形成装置800の画像形成装置本体100は、受け付けた印刷ジョブの実行を開始する。この印刷ジョブは、通信部90、または操作表示部30を通じて受け付けたものである。
【0060】
(ステップS102)
画像形成装置本体100の制御部10の判定部11は、走行距離、およびドット数をそれぞれ走行距離カウンタ、および積算印字カウンタでのカウントを開始する。積算印字カウンタは、ここでは例として、各色を区別せずに4色合計でカウントするものとする。
【0061】
(ステップS103)
制御部10は、実行中の印刷ジョブが終了したか否かを判断し、終了したのであれば(YES)、処理をステップS111に進める。終了していなければ(NO)、処理をステップS104に進める。
【0062】
(ステップS104)
制御部10の判定部11は、走行距離カウンタを参照し、走行距離が規定値Aに達しているか否かを判定する。例えば、規定値Aとしては、10分~60分の範囲のいずれかの時間に相当する走行距離を用いることができる。規定値Aに達していれば(YES)、処理をステップS105に進め、達していなければ(NO)、処理をステップS103に戻す。
【0063】
(ステップS105)
判定部11は、トナー帯形成条件を満たすか否かを判定する。例えば、これまので4色合計の積算印字カウンタのカウント値を、走行距離カウンタのカウント値(=規定値A)で除し、平均印字率を得る。そして、これが閾値以下(例えば印字率5%以下)であればトナー帯形成条件を満たすと判定し(YES)、処理をステップS106に進める。トナー帯形成条件を満たさないと判定した場合には(NO)、処理をステップS108(丸数字の10)に進める。
【0064】
(ステップS106)
制御部10は、実行中の印刷ジョブを中断させる。具体的には、露光部による画像データの印字を停止する。
【0065】
(ステップS107)
画像制御部12は、以下のトナー帯形成モードを、条件1で実行させる。
【0066】
(トナー帯形成モード)
(ステップS201)
図6に示すように、画像制御部12は、当接状態切替機構70を制御することで、2次転写部44を離間状態に設定する。
【0067】
(ステップS202)
画像制御部12は、搬送部60を制御することで、連続紙Sの搬送を停止させる。このときに定着装置50に加熱ヒーターを消灯させ、加圧ローラーを加熱ローラーから離間させるようにしてもよい。
【0068】
(ステップS203)
画像制御部12は、プロセス条件、および回収部80の条件を条件1に設定する。図7は、トナー帯形成モードにおける各条件を示すテーブルである。図7では条件1との対比において他のモードでの条件も示している。
【0069】
図7に示すように画像形成モード(通常時)においては、感光体ドラム411、および中間転写ベルト421のプロセス速度(移動速度)は速度Vp(例えば390mm/sec)、現像器412の現像ローラー4121の回転速度は速度V1(線速比θ=1.5)、現像ローラー4121の現像バイアスは電圧V1(例えば-600V)である。また、吸気ファン89は通常時の回転数で、そのときの回収部80の回収能力はWfである。
【0070】
トナー帯形成モードの条件1においては、感光体ドラム411、および中間転写ベルト421のプロセス速度は速度Vr(Vr>Vp、Vrは例えば585mm/sec)、現像器412の現像ローラー4121の回転速度は速度V2(V2>V1、Vrに対するV2の線速比θ=1.5)、現像バイアスは通常時と同じ電圧V1である。また、吸気ファン89は通常時よりも高い回転数で回転させ、回収部80の回収能力はWm(回収能力Wm>Wf)である。
【0071】
(ステップS204)
画像制御部12は、ステップS203で設定した条件1で、トナー帯を形成させる。トナー帯の幅(移動方向の長さ)は、一定値であってもよく、平均印字率に応じた長さであってもよい。後者の場合は、ステップS105で算出した平均印字率が低い程、幅を大きくする。また、このときは、各色の消費トナー量が均等になるように、4色の縞状のトナー帯を形成するようにしてもよい。
【0072】
(ステップS205、S206)
連続紙Sは、中間転写ベルト421と非接触であり、ステップS204で形成されたトナー帯は、中間転写ベルト421を経由して、連続紙Sに転写されることなく、ブレード431に供給される。全てのトナーがブレード431に到達した後、すなわちトナー帯の後端がブレード431に到達した後、画像形成部40の各駆動を停止させる。
【0073】
(ステップS207)
画像制御部12は、当接状態切替機構70を制御し、2次転写部44を離間状態から当接状態に戻す。以上でサブルーチン処理を終了し、図5の処理に戻る(リターン)。
【0074】
(ステップS108)
図5のステップS108では、判定部11は、走行距離カウンタ、および積算印字カウンタをリセットして、ステップS101以降の処理を繰り返す。
【0075】
(ステップS111)
ステップS103で印刷ジョブが終了したと判断された場合には、ステップS105と同様の処理により、判定部11は、トナー帯形成条件を満たすか否かを判定する。具体的には、それまでの4色合計の積算印字カウンタのカウント値を、走行距離カウンタのカウント値で除し、平均印字率を得る。そして、これが閾値以下であればトナー帯形成条件を満たすと判定し(YES)、処理をステップS113進める。トナー帯形成条件を満たさないと判定した場合には(NO)、処理をステップS112に進める。
【0076】
(ステップS112)
ここでは制御部10は、待機印刷ジョブがあるか否かを判断する。待機印刷ジョブ、すなわち、直ぐに処理を行うべき未処理の受け付け済みの印刷ジョブがあれば(YES)、処理をステップS108(丸数字の10)に進め、なければ(NO)、処理をステップS116(丸数字の20)に進める。
【0077】
(ステップS113)
ステップS112と同様の処理を行い、待機印刷ジョブがあれば(YES)、処理をステップS114に進め、待機印刷ジョブがなければ(NO)、処理をステップS115に進める。
【0078】
(ステップS114)
ここでは、画像制御部12は、ステップS107と同じ処理を行う。すなわち、画像制御部12は、図6に示すサブルーチンフローにより、トナー帯形成モードを、条件1で実行させる。
【0079】
(ステップS115)
ここでは、画像制御部12は、トナー帯形成モードを条件2に設定し、ステップS107と同様の処理を行う。すなわち、画像制御部12は、図6に示すサブルーチンフローにより、ステップS203において条件2に設定する以外は、図6に示すステップS107のサブルーチン処理と同じ処理を行う。
【0080】
図7に示すように、このトナー帯形成モードの条件2においては、感光体ドラム411、および中間転写ベルト421の移動速度(プロセス速度)、現像器412の回転速度、現像バイアスの電圧、吸気ファン89の風量(回収部80の回収能力)は、全て通常時と同じ設定である。
【0081】
(ステップS116)
ここでは、判定部11は、図5のステップS108と同様のリセット処理を行う。すなわち走行距離カウンタ、および積算印字カウンタをリセットして、処理を終了する(エンド)。
【0082】
(効果)
このように第1の実施形態では、所定の条件により、クリーニング部のクリーニング部材の像担持体への接触領域にトナーを供給するためのトナー帯を形成するか否かを判定する判定部と、判定部がトナー帯を形成すると判定した場合に、プロセス速度を、通常時のプロセス速度である速度Vpよりも速い速度Vrに設定して、トナー帯を形成させる画像制御部と、を備える。このようにクリーニング部材の像担持体との接触領域にトナーを供給することで、トナー枯渇による摩擦抵抗の増大によるクリーニング部材の摺れや損傷の加速を防止できるとともに、クリーニング部43のクリーニング部材(ブレード431等)へのトナー供給に関連するプロセス部材のプロセス速度を、通常時よりも速くすることで、トナー帯形成モードの処理にかかる時間を短縮できる。例えば、プロセス速度を通常時に対して1.5倍にすることで、処理時間を約33%短縮でき、トナー帯モード実行による印刷中断時間を短くでき、生産性の低下を抑制できる。
【0083】
また、第1の実施形態では、トナー帯を形成する際に、回収部80の回収能力Wmを、通常時の回収能力Wfよりも増加させるよう制御する、これにより、画像形成装置本体100内でのトナー飛散による汚れの程度が悪化することを防止できる。
【0084】
また、トナー帯を形成すると判定した場合に、待機ジョブがない場合には、通常時と同じプロセス速度でトナー帯を形成させることで、トナー帯形成モードの処理にかかる時間の短縮は見込めないが、プロセス速度の増加にともなう飛散トナー増加と、回収部80の吸気ファン89の風量アップにともなう騒音の増加を生じさせない。
【0085】
以上に説明した、画像形成装置800の構成は、上述の実施形態の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、上述の構成に限られず、特許請求の範囲内において、下記のように種種改変することができる。また、一般の画像形成装置が備える構成を排除するものではない。
【0086】
(変形例1(条件3))
図5図6の処理においては、トナー帯形成モードの条件として図7に示す条件1に代えて、条件3を適用してもよい。
【0087】
トナー帯形成モードの条件3においては、感光体ドラム411、および中間転写ベルト421のプロセス速度は条件1と同じ速度Vr(Vr>Vp)、現像器412の現像ローラー4121の回転速度は通常時と同じ速度V1にする。現像バイアスは通常時、および条件1よりも高い電圧V2(|電圧V2|>|電圧V1|)とすることで現像ギャップ(露光電圧との電位差)を大きくする(例えば電圧V2=-800V)。また、吸気ファン89は通常時と同じ、または通常時と条件1との間の回転数で回転させ、回収部80の回収能力はWo(回収能力Wm>Wo≧Wf)である。なお、他の変形例として条件3において回収能力を条件1と同じWmとしてもよい。
【0088】
このような条件3を適用することで、トナー飛散を悪化させる原因となる、現像ローラー4121の回転速度を増加させずに、通常時と同じ速度V1にするとともに、現像バイアスの絶対値を通常よりも大きい値に設定する。これにより、単位面積あたりのトナー付着量を維持し、クリーニング部材へのトナーの供給量の低下を防ぎながら、トナー飛散の増加を防ぐことができる。
【0089】
(変形例2)
図5図6の処理においては、4色合計の積算印字カウンタのカウント値を用いて、平均印字率の算出を行ったが、これに代えて、色毎の積算印字カウンタにより個別にカウントを行い、色毎の平均印字率の算出を行うようにしてもよい。この場合、ステップS105、S111のトナー帯形成条件の判定処理においては、いずれかの色の平均印字率が閾値以下であれば、トナー帯を形成すると判定し、トナー帯形成モードに移行する。そして、トナー帯形成モードでは、(1)閾値を下回った色の作像ユニット41のみ用いて、トナー帯を形成する、または(2)判定時の各色の平均印字率と、閾値の差分量に応じたトナー帯幅で、複数色で構成したトナー帯を形成する。
【0090】
作像ユニット41の現像器412のトナーは、印字率が低い印刷を続けると、新たに補給されるトナーとの入れ替わりがあまり行われずに、トナーの平均的な滞留時間が長くなる。滞留時間が長くなると、トナーは、長時間の攪拌による機械的なストレスによって外添剤の剥離等が生じ、ひいてはトナーの帯電性や流動性に関する性能劣化が生じる。このような場合に、変形例2のような処理を行って、クリーニング部材の像担持体との接触領域にトナーを供給することで、トナー枯渇による摩擦抵抗の増大によるクリーニング部材の摺れや損傷の加速を防止できるとともに、現像器412のトナーの入れ替わりを促進でき、トナーの性能劣化を低減できる。
【0091】
(変形例3)
図8は、変形例3に係る直転写方式の画像形成部の概略構成を示す図である。図1図3に示す例では、画像形成装置本体100として、4つの作像ユニット41により形成した各色のトナー像を中間転写ベルトに転写し、これをさらに、連続紙Sに転写するという、いわゆる中間転写方式の画像形成装置を用いた。これに代えて図8に示すような、中間転写ベルトを用いずに、感光体ドラム411から直接的に連続紙Sに転写する、いわゆる直転写方式の画像形成装置を用いてもよい。この場合においても、図5図6で示した処理のトナー帯形成モードにより、クリーニング部413のクリーニング部材であるブレード4131へ、トナーを供給することができ、第1の実施形態、および各変形例と同様の効果が得られる。
【0092】
また、上述した実施形態に係る画像形成装置800における各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウェア回路、またはプログラムされたコンピューターのいずれによっても実現することが可能である。上記プログラムは、例えば、USBメモリやDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスク等の記憶部に転送され記憶される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、一機能として装置のソフトウエアに組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0093】
800 画像形成装置
100 画像形成装置本体
10 制御部
11 判定部
12 画像制御部
20 記憶部
30 操作表示部
40 画像形成部
41、41Y、41M、41C、41K 作像ユニット
411Y 感光体ドラム(像担持体)
412Y、412M、412C、412K 現像器
4121 現像ローラー
413Y クリーニング部
4131 クリーニングブレード(クリーニング部材)
42 ベルトユニット
421 中間転写ベルト(像担持体)
422Y 1次転写部
423 対向ローラー
43 クリーニング部
431 クリーニングブレード(クリーニング部材)
432 ブラシローラー(クリーニング部材)
44 2次転写部
50 定着装置
60 搬送部
70 当接状態切替機構
80 回収部
81Y、81M、81C、81K、82Y、82M、82C、82K 吸引ダクト
1x、2x 流入口
83 共通ダクト
84 中継ダクト
85 サイクロン部
86 トナー集積部
87 下流ダクト
88 エアフィルター
89 吸気ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8