(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】生体情報計測装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/308 20210101AFI20231121BHJP
A61B 5/332 20210101ALI20231121BHJP
【FI】
A61B5/308
A61B5/332
(21)【出願番号】P 2020003051
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 健児
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-508095(JP,A)
【文献】特表2012-532740(JP,A)
【文献】特開2013-52138(JP,A)
【文献】特開平9-56686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/308
A61B 5/318-5/366
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第2電極と、第3電極と、を備え、前記第1電極と前記第2電極の電位差に基づいて計測対象の生体情報を計測する生体情報計測装置であって、
前記第1電極、前記第2電極、前記第3電極の全てが前記計測対象の表面に接触している状態を検知して出力する、電極接触検知手段と、
前記生体情報を計測する計測処理を実行する制御手段と、を有しており
前記電極接触検知手段は、
前記第1電極及び前記第2電極が、前記第3電極よりも高電位である接触検知電位になるように、前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれに電圧を印加するバイアス用電源と、
前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれに接続され、前記接触検知電位と、前記第1電極、前記第2電極のそれぞれの電位と、を比較する第1比較器、及び第2比較器と、
前記第1比較器及び前記第2比較器の出力に基づいて、前記第1電極、前記第2電極、及び前記第3電極の全ての電極が、前記計測対象の表面に接触している状態であるか否かを判定する、接触状態判定部と、を備え、
前記制御手段は、
前記電極接触検知手段が、前記第1電極、前記第2電極、前記第3電極の全ての電極が前記計測対象の表面に接触している状態であることを出力した場合に、前記第1電極及び前記第2電極と、前記バイアス用電源とを開放する処理を実行し、前記計測処理を実行する、
ことを特徴とする、生体情報計測装置。
【請求項2】
前記第3電極はグランド電極であって、
前記第1電極と前記第2電極とに接続され、前記第1電極と前記第2電極間の電位差を増幅して出力する第1差動増幅器を備え、
前記制御手段は、前記第1差動増幅器の出力に基づいて、前記計測対象の生体情報を計測する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の生体情報計測装置。
【請求項3】
前記第1電極と前記第3電極とに接続され、前記第1電極と前記第3電極間の電位差を増幅して出力する第2差動増幅器と、
前記第2電極と前記第3電極とに接続され、前記第2電極と前記第3電極間の電位差を増幅して出力する第3差動増幅器と、
前記第2差動増幅器及び前記第3差動増幅器の出力側に接続され、前記第2差動増幅器の出力電圧と、前記第3差動増幅器の出力電圧との電位差を増幅して出力する、第4差動増幅器と、を備え、
前記制御手段は、前記第4差動増幅器の出力に基づいて、前記計測対象の生体情報を計測する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の生体情報計測装置。
【請求項4】
前記生体情報は心電波形である、
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項5】
前記生体情報計測装置は、携帯型の装置である、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルスケア関連の技術分野に属し、特に、生体情報計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血圧値、心電波形などの、個人の身体・健康に関する情報(以下、生体情報ともいう)を計測機器によって計測し、当該計測結果を情報端末で記録、分析することで、健康管理を行うことが普及しつつある。
【0003】
上記のような計測機器の一例として、日常生活において胸部の痛みや動悸などの異常発生時にすぐに心電波形を計測する携帯型の心電計測装置が提案されており、心疾患の早期発見や適切な治療への貢献が期待されている(例えば、特許文献1など)。
【0004】
特許文献1には、本体に測定用の3つの電極を備える携帯型心電計が開示されており、当該文献において、本体を把持する手の押圧変化による心電信号の基線動揺を防止し、正確な心電信号を得る技術が提案されている。具体的には、心電計を把持する手の一部を基準電位とする第3の測定電極を設け、該第3の測定電極と胸部に接触させた第1の測定電極間の電位差と、第3の測定電極と把持した手が接触する第2の測定電極間の電位差との差分を、心電信号として増幅する、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、当該特許文献1に記載の技術によっても、3つの電極が正しく計測対象に接触されていない状態で計測を行った場合、電極と計測対象(の皮膚)との接触抵抗が十分に小さくならず、結局は正確な生体情報の計測ができないという問題がある。
【0007】
上記のような従来の技術に鑑み、本発明は、3つ以上の電極を用いる生体情報計測装置において、前記3つの電極の全てが適切に計測対象に接触している場合のみ計測を実行することを可能にし、精度よく生体情報を計測できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る生体情報計測装置は、
第1電極と、第2電極と、第3電極と、を備え、前記第1電極と前記第2電極の電位差に基づいて計測対象の生体情報を計測する生体情報計測装置であって、
前記第1電極、前記第2電極、前記第3電極の全てが前記計測対象の表面に接触している状態を検知して出力する、電極接触検知手段と、
前記生体情報を計測する計測処理を実行する制御手段と、を有しており
前記電極接触検知手段は、
前記第1電極及び前記第2電極が、前記第3電極よりも高電位である接触検知電位になるように、前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれに電圧を印加するバイアス用電源と、
前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれに接続され、前記接触検知電位と、前記第1電極、前記第2電極のそれぞれの電位と、を比較する第1比較器及び第2比較器と、
前記第1比較器及び前記第2比較器の出力に基づいて、前記第1電極、前記第2電極、
及び前記第3電極の全ての電極が、前記計測対象の表面に接触している状態であるか否かを判定する、接触状態判定部と、を備え、
前記制御手段は、
前記電極接触検知手段が、前記第1電極、前記第2電極、前記第3電極の全ての電極が前記計測対象の表面に接触している状態であることを出力した場合に、前記第1電極及び前記第2電極と、前記バイアス用電源とを開放する処理を実行し、前記計測処理を実行する、ことを特徴とする。
【0009】
ここで、前記バイアス用電源は前記第1電極と前記第2電極とで共通の電源であってもよいし、それぞれの電極に対する別個の電源であってもよい。
【0010】
上記のような構成により、3つの電極の全てが適切に計測対象の表面に接触しないと計測が開始されないため、S(Signal)/N(Noise)比の高い信号により精度よく生体情報を計測することが可能になる。また、前記制御手段は、前記計測処理を実行する前に前記バイアス用電源を回路からOFFする処理を行うため、当該電源が接続されていることにより発生するノイズを排除することができる。
【0011】
また、前記第3電極はグランド電極であって、
前記第1電極と前記第2電極とに接続され、前記第1電極と前記第2電極間の電位差を増幅して出力する第1差動増幅器を、備えており、
前記制御手段は、前記第1差動増幅器の出力に基づいて、前記計測対象の生体情報を計測する、ものであってもよい。
【0012】
このような構成であると、信号のAD(Analog to Digital)変換器とグランド(GND)を共通にすることができ、AD変換時に信号の同相ノイズを除去することが容易になる。
【0013】
また、前記第1電極と前記第3電極とに接続され、前記第1電極と前記第3電極間の電位差を増幅して出力する第2差動増幅器と、
前記第2電極と前記第3電極とに接続され、前記第2電極と前記第3電極間の電位差を増幅して出力する第3差動増幅器と、
前記第2差動増幅器及び前記第3差動増幅器の出力側に接続され、前記第2差動増幅器の出力電圧と、前記第3差動増幅器の出力電圧との電位差を増幅して出力する、第4差動増幅器と、を備え、
前記制御手段は、前記第4差動増幅器の出力に基づいて、前記計測対象の生体情報を計測する、ものであってもよい。
【0014】
このような構成であると、前記第4差動増幅器が出力するアナログ信号を増幅する際に、信号の同相ノイズを容易に除去することができる。
【0015】
また、前記生体情報は心電波形、即ち前記生体情報計測装置は心電計であってもよい。心電波形の計測においては、より繊細な信号の変化を計測する必要があるため、ノイズが少なく、精度の高い信号を得ることができる本願発明を適用するのに好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、3つ以上の電極を用いる生体情報計測装置において、前記3つの電極の全てが適切に計測対象に接触している場合のみ計測を実行することを可能にし、精度よく生体情報を計測できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す六面図である。
図1Aは、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す正面図である。
図1Bは、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す背面図である。
図1Cは、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す左側面図である。
図1Dは、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す右側面図である。
図1Eは、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す平面図である。
図1Fは、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す底面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る携帯型心電計測装置の機能構成を説明するブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る携帯型心電計測装置の電気回路構成の一部を示す回路図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る携帯型心電計測装置における心電波形計測処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態に係る携帯型心電計測装置において電極接触検知の処理を行うサブルーチンを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、変形例に係る携帯型心電計測装置の電気回路構成の一部を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0019】
(心電計測装置)
図1は、本実施形態における携帯型心電計10の構成を示す図である。
図1Aは本体の正面を示す正面図であり、同様に
図1Bは背面図、
図1C左側面図、
図1Dは右側面図、
図1Eは平面図、
図1Fは底面図、となっている。
【0020】
携帯型心電計10の底面には、心電計測時に身体の左側に接触させる左側電極12aが設けられており、反対側面の上面側には、同様に右手人差し指の中節を接触させる第一右側電極12bと、右手人指し指の基節を接触させる第二右側電極12cが設けられている。
【0021】
心電計測時には、右手で携帯型心電計10を保持し、右手人差し指を、第一右側電極12b、第二右側電極12cに正しく接触するように携帯型心電計10の上面部に配置する。そのうえで、左側電極を所望の計測法に対応する位置の皮膚に接触させる。例えば、いわゆるI誘導で計測を行う場合には、左側電極を左手の掌に当てて接触させ、いわゆるV4誘導で計測を行う場合には、左胸部の心窩部やや左方・乳頭下方の肌に接触させる。
【0022】
また、携帯型心電計10の左側面には各種の操作部、及びインジケータが配置されている。具体的には、電源スイッチ16、電源LED16a、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信ボタン17、BLE通信LED17a、メモリー残表示LED18、電池交換LED19、等を備えている。
【0023】
また、携帯型心電計10の正面には、計測状態通知LED13、解析結果通知LED14、が設けられ、携帯型心電計10の背面には、バッテリーの収容口、電池カバー15が配置されている。
【0024】
また、
図2には携帯型心電計10の機能構成を示すブロック図が記載されている。
図2に示すように、携帯型心電計10は制御部101、電極部12、アンプ部102、AD変換部103、タイマ部104、記憶部105、表示部106、操作部107、電源部108、通信部10
9、解析部110、接触検知部111の各機能部を備える構成となっている。
【0025】
制御部101は、携帯型心電計10の制御を司る手段であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含んで構成される。制御部101は、操作部107を介してユーザーの操作を受け付けると、所定のプログラムに従って心電計測、情報通信など各種の処理を実行するように携帯型心電計10の各構成要素を制御する。なお、所定のプログラムは後述の記憶部105に保存され、ここから読み出される。
【0026】
また、制御部101は、機能モジュールとして、心電波形の解析を行う解析部110を備えている。解析部110は計測された心電波形について、波形の乱れの有無などを解析し、少なくとも計測時の心電波形が正常か否かの結果をアウトプットする。
【0027】
電極部12は、左側電極12a、第一右側電極12b、第二右側電極12cからなり、心電波形を検出するセンサとして機能する。アンプ部102は、後述するように電極部12から出力された心電波形を示す信号を増幅する機能を有している。AD変換部103は、アンプ部102で増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、制御部101へ伝送する機能を有している。
【0028】
タイマ部104はRTC(Real Time Clock)を参照して、時間を計測する機能を有している。例えば、後述するように、電極接触検知の処理を行う際、左側電極12a、第一右側電極12b、第二右側電極12cの全ての電極が身体に接触している時間をカウントする。また、心電計測時に計測終了までの時間をカウントし、これをアウトプットしてもよい。
【0029】
記憶部105は、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置を含んで構成され、アプリケーションプログラム、計測心電波形、解析結果などの各種の情報を記憶する。また、RAMに加えて、例えばフラッシュメモリなどの長期記憶媒体を備えていても良い。
【0030】
表示部106は、前述の電源LED16a、BLE通信LED17a、メモリー残表示LED18、電池交換LED19などを含んで構成され、LEDの点灯、点滅などによって装置の状態をユーザーに伝達する。また、操作部107は、電源スイッチ16、通信ボタン17等を含み、ユーザーからの入力操作を受け付け、制御部101に操作に応じた処理を実行させるための機能を有する。
【0031】
電源部108は、装置の稼働に必要な電力を供給するバッテリーを含んで構成される。バッテリーは、例えばリチウムイオンバッテリーなどの二次電池であっても良いし、一次電池としても良い。
【0032】
通信部109は、無線通信用のアンテナを含み、少なくともBLE通信により、情報処理端末などの他の機器と通信する機能を有する。また、有線による通信のための端子を備えていても良い。
【0033】
接触検知部111は、左側電極12a及び第一右側電極12bと接続される電気回路を含んで構成され、左側電極12a、第一右側電極12b、第二右側電極12cの全ての電極が、正しく身体の各部位に接触されている状態を検知して出力する機能を有する。以下、
図3に基づいて、接触検知部111について詳細に説明する。
図3は、接触検知部11
1を構成する電気回路について説明する回路図である。
【0034】
接触検知部111は概略、左側電極12aと接続される左側検知部91と、第一右側電極12bと接続される右側検知部92と、左側検知部91と右側検知部92の出力に基づいて、全ての電極が接触状態であるか否かを判定する、接触状態判定部93とを有する構成となっている。
【0035】
左側検知部91は、左側比較器910と、左側バイアス電源911と、左側スイッチング素子912と、左側プルアップ抵抗913と、左側RCフィルタ914と、左側基準電圧電源915と、左側基準電圧抵抗916a、916bと、左側ヒステリシス抵抗917a、917bとを含んで構成される。
【0036】
左側バイアス電源911は左側電極12aが第二右側電極12cよりも高電位であるバイアス電位になるように、左側電極12aにバイアス電圧(例えば3V程度)を印加する。左側スイッチング素子912は例えば、電界効果トランジスタ(FET)などで構成されており、制御部101の制御により、左側バイアス電源911と回路とをON/OFFする。左側プルアップ抵抗913は接続されている回路の電位を高電位に保ち、左側RCフィルタ914は高周波成分を除去して左側バイアス電源911からの電圧を左側比較器910の-入力端子に入力する。以下、左側比較器910の-入力端子に入力される電位を左側バイアス電位という。
【0037】
左側比較器910の+入力端子には、左側基準電圧電源915から供給され、左側基準電圧抵抗916a、916bによって調整される所定の接触検知基準電圧(例えば1.5V程度)が入力される。以下、左側比較器910の+入力端子に入力される電位を左側検知基準電位という。
【0038】
左側比較器910は、例えばオペアンプで構成されており、左側バイアス電位が、左側検知基準電位に対して所定のヒステリシス分低下した場合に、Highを出力する。一方、左側バイアス電位が、左側検知基準電位と同程度以上である場合にはLowを出力する。
【0039】
左側電極12aと第二右側電極12cとが、ともに身体の皮膚に正しく接触されていると、人体のインピーダンスを経由して左側電極12aよりも低電位の第二右側電極12cに電流が流れ、左側プルアップ抵抗913において電圧降下が発生し、左側バイアス電位が低下する。そうすると、左側比較器910の出力はLowからHighに変化する。なお、図中の破線部の回路が人体のインピーダンスを経由した電流の経路を示している。
【0040】
右側検知部92も、左側検知部91と同様に、右側比較器920と右側バイアス電源921と、右側スイッチング素子922と、右側プルアップ抵抗923と、右側RCフィルタ924と、右側基準電圧電源925と、右側基準電圧抵抗926a、926bと、右側ヒステリシス抵抗927a、927bとを含んで構成される。
【0041】
右側バイアス電源921は第一右側電極12bが第二右側電極12cよりも高電位であるバイアス電位になるように、第一右側電極12bにバイアス電圧を印加する。その他、右側検知部92の各要素の構成・機能は、左側電極12aに対する左側検知部91のそれと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0042】
接触状態判定部93は、例えばAND回路などで構成され、左側比較器910及び右側比較器920のいずれもがHighを出力した場合に、左側電極12a、第一右側電極12b、第二右側電極12c、の全ての電極が正しく接触されている状態であると判断し、
その旨を制御部101に対して出力する。
【0043】
なお、
図3に示すように、左側電極12aは差動増幅器94の+入力端子と接続されており、第一右側電極12bは差動増幅器94の-入力端子と接続されており、第二右側電極12cはGNDに接続されている。差動増幅器94は、左側電極12aと第一右側電極12bとの電位差を増幅して出力し、当該出力が、図示しないフィルタ回路を介して、アンプ部102、AD変換部103へと伝達されることで心電計測が行われる。
【0044】
(携帯型心電計を用いた心電計測処理)
次に、心電計測を行う際の携帯型心電計10の動作について、
図1から
図5に基づいて説明する。
図4は、携帯型心電計10を用いて心電計測を行う際の処理の手順を示すフローチャートであり、
図5は、携帯型心電計10において電極接触検知の処理を行うサブルーチンを示すフローチャートである。
【0045】
図4を参照すると、ユーザーはまず、計測に先立ち、電源スイッチ16を操作し携帯型心電計10の電源をONにする。そうすると、電源LED16aが点灯して電源がONであることを表示する。そして、右手で携帯型心電計10を保持し、右手人差し指を、第一右側電極12b、第二右側電極12cに接触させ、計測を行う箇所の肌に、左側電極12aを接触させる。そうすると、制御部101は電極部12、接
触検知部111を介して、各電極の接触状態を検出す
る(S101)。
【0046】
ここで、
図5に基づいて、ステップS101のサブルーチンの処理を説明する。まず電源スイッチ16がONにされると、制御部101は左側スイッチング素子912、右側スイッチング素子922をONにし、左側電極12a、第一右側電極12bにバイアス電圧を印加する(S201)。
【0047】
既に述べたように、左側電極12a、第一右側電極12b、第二右側電極12cが全て身体に接触されていれば、左側比較器910と右側比較器920はいずれもHighを出力し、接触状態判定部93がその旨を制御部101に出力する。そして、当該Highの信号が所定時間(例えば3秒)継続して出力されれば、各電極が正しく計測対象に接触されている状態であるとする。ここで、所定時間が経過したか否かはタイマ部104を参照して行えばよく、制御部101は、ステップS202において、全電極が接触状態である時間を計測するタイマカウント値(以下、接触時間カウント値という)をリセット(0に設定)する。
【0048】
次にステップS203において、制御部101は、左側電極12a、第一右側電極12b、第二右側電極12cがそれぞれ身体に接触されていると判定した場合には、ステップS204に進み、その状態で所定時間が経過したか否かを判定する。一方、ステップS203において、全ての電極が正しく接触されていないと判定した場合には、ステップS202に戻って接触時間カウント値をリセットし、以後の処理を繰り返す。
【0049】
ステップS204において、所定時間が経過していないと判定した場合には、ステップS203に戻り、以後の処理を繰り返す。一方、ステップS204において、所定時間が経過していると判定した場合には、左側スイッチング素子912及び右側スイッチング素子922をOFFにしてプルアップ抵抗を無効にし(ステップS205)、サブルーチンを終了する。
【0050】
図4の説明に戻ると、ステップS101のサブルーチンが終了した後、制御部101は実際の心電計測処理を実行する(ステップS102)。制御部101は、心電計測を行っている間は、随時計測値を記憶部105に保存するとともに、本体正面の計測状態通知L
ED13を所定のリズムで点滅させることにより、心電計測中であることを表示する(S103)。
【0051】
次に、制御部101は心電計測の時間が所定の計測時間(例えば30秒)を経過したか否かを判定する処理を行う(ステップS104)。ここで、まだ所定の時間を経過していないと判断した場合には、ステップS102に戻って以降の処理を繰り返す。一方、所定の計測時間が経過したと判断した場合には、計測を終了するとともに、計測状態通知LED13の点滅を終了する処理を行う(ステップS105)。
【0052】
次に、制御部101の解析部110により、記憶部105に保存された計測データ(心電波形)の解析が行われ(S106)、解析結果は、心電波形と共に長期記憶装置に保存される(S107)。そして、制御部101は、解析結果通知LED14により、解析の結果を表示して(S108)、一連の処理を終了する。なお、解析結果の表示は、例えば、心電波形に異常がみられる場合のみLEDを点灯するのであっても良いし、解析結果に応じた点灯・点滅方法によりLEDを点灯させるようにしても良い。
【0053】
以上のような構成の本実施形態に係る携帯型心電計10によれば、ユーザーは電源スイッチ16を操作した後、計測部位に電極を接触させる以外の操作をすることなく計測を開始することができるとともに、全ての電極が適切に接触しないと計測が開始されないため、精度の良い計測結果を得ることができる。
【0054】
また、第一右側電極12bはGNDに接続され、GND電極としての機能を果たすため、信号のAD変換器とGNDを共通にすることができ、AD変換時に信号の同相ノイズを除去することが容易になる。
【0055】
<変形例>
なお、上記の実施形態では、第一右側電極12bはGND電極として機能していたが、必ずしもこのような構成とする必要はない。
図6に携帯型心電計の他の構成例を示す。なお、実施形態1と同様の構成については、同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0056】
図6に示すように、本変形例に係る携帯型心電計は、左側差動増幅器95a、右側差動増幅器95b、左右差動増幅器95cの、三つの差動増幅器を備え、これらの出力によって心電波形が計測される構成となっている。
【0057】
具体的には、左側差動増幅器95aは+側入力に左側電極12aの電位が入力され、-側入力に第二右側電極12cの電位が入力され、これらの電位差が出力される。また、右側差動増幅器95bは+側入力に第一右側電極12bの電位が入力され、-側入力に第二右側電極12cの電位が入力され、これらの電位差が出力される。
【0058】
また、左右差動増幅器95cの+側入力に左側差動増幅器95aの出力電位が入力され、-側入力に右側差動増幅器95bの出力電位が入力され、これらの電位差が出力される。そして、左右差動増幅器95cから出力された信号が、図示しないフィルタ回路を介して、アンプ部102、AD変換部103へと伝達されることで心電計測が行われる。
【0059】
このような構成であると、第二右側電極12cを基準電極として、左側電極12a、第一右側電極12bとの電位差を増幅して信号を得るため、信号を増幅する際に、その同相ノイズを容易に除去することが可能になる。
【0060】
<その他>
上記の実施形態の説明は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明は、その技術的思想の範囲内で種々の変形及び組み合わせが可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態におけるスイッチング素子はFETに限られず、比較器、差動増幅器も必ずしもオペアンプによるものでなくてもよい。また、上記の実施形態では詳しく説明していないが、通信部109によるBLE通信機能によって、心電計と他の情報端末機器とを連携して活用することも可能である。逆に、通信機能やLED表示部を備えない心電計とすることも可能である。
【0062】
なお、上記では本発明を携帯型の心電計に適用したが、携帯型でない心電計にも適用可能であるし、体組成計などの他の生体計測装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
10・・・携帯型心電計
13・・・計測状態通知LED
12a・・・左側電極
12b・・・第一右側電極
12c・・・第二右側電極
14・・・解析結果通知LED
15・・・電池カバー
16・・・電源スイッチ
16a・・・電源LED
17・・・通信ボタン
17a・・・BLE通信LED
18・・・メモリー残表示LED
19・・・電池交換LED
91・・・左側検知部
910・・・左側比較器
911・・・左側バイアス電源
912・・・左側スイッチング素子
913・・・左側プルアップ抵抗
914・・・左側RCフィルタ
915・・・左側基準電圧電源
916a、916b・・・左側基準電圧抵抗
917a、917b・・・左側ヒステリシス抵抗
92・・・右側検知部
93・・・接触状態判定部
94・・・差動増幅器
95a・・・左側差動増幅器
95b・・・右側差動増幅器
95c・・・左右差動増幅器