(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】リハビリテーションを支援する情報の提供の方法およびリハビリテーション支援システム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/30 20180101AFI20231121BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G16H20/30
A61B5/11 120
A61B5/11 200
(21)【出願番号】P 2020005131
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2022-09-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、ロボット介護機器開発・標準化事業(開発補助事業)「ロボット技術を用いた介護老人保健施設入所者のADL状態定量化による施設運営の効率化を目指した研究」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真和
(72)【発明者】
【氏名】水島 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】大河内 二郎
【審査官】森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-109937(JP,A)
【文献】特開2009-285077(JP,A)
【文献】特開2019-160228(JP,A)
【文献】特開2019-020993(JP,A)
【文献】国際公開第2019/008657(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リハビリテーションを支援する情報を提供するためにコンピュータで実行される方法であって、
被介護者の日常生活下の第1の動作を記録した第1の記録を生成するステップと、
被介護者の非日常生活下の前記第1の動作を記録した第2の記録を生成するステップと、
前記第1および第2の記録の比較に基づいて、日常生活下の前記第1の動作の実行に要する第1の時間と、非日常生活下の前記第1の動作の実行に要する第2の時間とを比較するステップと、
前記第1の時間と、前記第2の時間との比較の結果に基づいて、前記第1の動作の改善の期待値を算出するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記第1の動作の改善の期待値を算出するステップは、前記第1の時間および前記第2の時間の実行時間の差分、または前記第1の時間および前記第2の時間の実行時間の比率に基づいて、前記第1の動作の改善の期待値を算出するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の記録は、リハビリテーション中または体力測定中の動作の記録を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の動作は、歩行動作または頭部の高さ変化が伴う姿勢変化の動作を含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
日常生活下において、被介護者の動作を複数回記録するステップと、
複数回記録された被介護者の動作の各々に含まれる前記第1の動作の実行時間の変化量に基づいて、前記第1の動作の改善値を算出するステップとをさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1の時間の変化量のグラフと、前記第2の時間の変化量のグラフと、前記第1の動作の改善値のグラフと、今後の前記第1の動作の改善の期待値のグラフとを、ディスプレイに表示するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の時間および前記第2の時間の実行時間の差分または比率に基づいて、改善の期待値の大きいリハビリテーションを推定するステップをさらに含む、請求項2~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第1および第2の記録を生成するステップは、それぞれ、
カメラから、被介護者の撮像情報を取得するステップと、
前記撮像情報に映る被介護者の頭部の大きさと、頭部および関節の位置関係の変化とに基づいて、被介護者の姿勢を特定するステップと、
特定された姿勢の変化に基づいて、被介護者の動作を特定するステップとを含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
被介護者の動作を特定するステップは、
前記撮像情報に映る被介護者の頭部の大きさと、頭部および関節の位置関係との変化量を推定するステップと、
推定した前記変化量に基づいて、データベースから近い変化パターンを検索するステップと、
前記データベースから検索された前記変化パターンに紐付いた動作を取得するステップとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
被介護者の生活場所に設置されたカメラによる前記撮像情報に含まれる前記第1の動作を抽出するステップと、
抽出された前記第1の動作に基づいて、前記第1の時間を算出するステップと、
非日常生活の場所に設置されたカメラによる前記撮像情報に含まれる前記第1の動作を抽出するステップと、
抽出された前記第1の動作に基づいて、前記第2の時間を算出するステップとをさらに含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の動作は歩行動作を含み、
前記方法は、前記撮像情報のタイムスタンプの変化量と、前記撮像情報に含まれる被介護者の位置の変化量とに基づいて、歩行動作に関する前記第1の時間を算出するステップをさらに含む、請求項8~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第1の動作は起床動作を含み、
前記方法は、前記撮像情報のタイムスタンプの変化量と、前記撮像情報に含まれるベッド上での被介護者の姿勢の変化量とに基づいて、起床動作に関する前記第1の時間を算出するステップをさらに含む、請求項8~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記第1の動作は起立動作を含み、
前記方法は、前記撮像情報のタイムスタンプの変化量と、前記撮像情報に含まれるベッド付近または椅子付近での被介護者の姿勢の変化量とに基づいて、起立動作に関する前記第1の時間を算出するステップをさらに含む、請求項8~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
被介護者の生活環境また非日常生活環境の各々に設置される複数の端末装置と通信する通信部と、
プロセッサーとを備え、
前記通信部は、
前記生活環境に設置された端末装置から、被介護者の日常生活下の第1の動作を記録した第1の記録を受信し、
前記非日常生活環境に設置された端末装置から、被介護者の非日常生活下の前記第1の動作を記録した第2の記録を受信し、
前記プロセッサーは、
前記第1および第2の記録の比較に基づいて、日常生活下の前記第1の動作の実行に要する第1の時間と、非日常生活下の前記第1の動作の実行に要する第2の時間とを比較し、
前記第1の時間と、前記第2の時間との比較の結果に基づいて、前記第1の動作の改善の期待値を算出する、リハビリテーション支援システム。
【請求項15】
前記第1の動作の改善の期待値を算出することは、前記第1の時間および前記第2の時間の実行時間の差分、または前記第1の時間および前記第2の時間の実行時間の比率に基づいて、前記第1の動作の改善の期待値を算出する、請求項14に記載のリハビリテーション支援システム。
【請求項16】
前記第2の記録は、リハビリテーション中または体力測定中の動作の記録を含む、請求項14または15に記載のリハビリテーション支援システム。
【請求項17】
前記第1の動作は、歩行動作または頭部の高さ変化が伴う姿勢変化の動作を含む、請求項14~16のいずれかに記載のリハビリテーション支援システム。
【請求項18】
前記通信部は、前記生活環境に設置された端末装置から、日常生活下において、被介護者による動作の複数の記録を受信し、
前記プロセッサーは、各動作の記録の各々に含まれる前記第1の動作の実行時間の変化量に基づいて、前記第1の動作の改善値を算出する、請求項14~17のいずれかに記載のリハビリテーション支援システム。
【請求項19】
前記通信部は、前記第1の時間の変化量のグラフと、前記第2の時間の変化量のグラフと、前記第1の動作の改善値のグラフと、今後の前記第1の動作の改善の期待値のグラフとをディスプレイに表示させるための情報を外部の装置に送信する、請求項18に記載のリハビリテーション支援システム。
【請求項20】
前記プロセッサーは、前記第1の時間および前記第2の時間の実行時間の差分または比率に基づいて、改善の期待値の大きいリハビリテーションを推定する、請求項15~19のいずれかに記載のリハビリテーション支援システム。
【請求項21】
前記通信部は、複数の端末装置の各々から被介護者の撮像情報を受信し、
前記プロセッサーは、
前記撮像情報に映る被介護者の頭部の大きさと、頭部および関節の位置関係の変化とに基づいて、被介護者の姿勢を特定し、
特定された姿勢の変化に基づいて、被介護者の動作を特定する、請求項14~20のいずれかに記載のリハビリテーション支援システム。
【請求項22】
前記撮像情報を解析するためのデータを記憶するデータベースをさらに備え、
前記プロセッサーは、
前記撮像情報に映る前記被介護者の頭部の大きさと、頭部および関節の位置関係との変化量を推定し、
推定した前記変化量に基づいて、前記データベースから近い変化パターンを検索し、
前記データベースから検索された前記変化パターンに紐付いた動作を取得する、請求項21に記載のリハビリテーション支援システム。
【請求項23】
前記プロセッサーは、
前記生活環境に設置された端末装置から受信した前記撮像情報に含まれる前記第1の動作を抽出し、当該抽出された前記第1の動作に基づいて、前記第1の時間を算出し、
前記非日常生活環境に設置された端末装置から受信した前記撮像情報に含まれる前記第1の動作を抽出し、当該抽出された前記第1の動作に基づいて、前記第2の時間を算出する、請求項21または22に記載のリハビリテーション支援システム。
【請求項24】
前記第1の動作は歩行動作を含み、
前記プロセッサーは、前記撮像情報のタイムスタンプの変化量と、前記撮像情報に含まれる被介護者の位置の変化量とに基づいて、歩行動作に関する前記第1の時間を算出する、請求項21~23のいずれかに記載のリハビリテーション支援システム。
【請求項25】
前記第1の動作は起床動作を含み、
前記プロセッサーは、前記撮像情報のタイムスタンプの変化量と、前記撮像情報に含まれるベッド上での被介護者の姿勢の変化量とに基づいて、起床動作に関する前記第1の時間を算出する、請求項21~24のいずれかに記載のリハビリテーション支援システム。
【請求項26】
前記第1の動作は起立動作を含み、
前記プロセッサーは、前記撮像情報のタイムスタンプの変化量と、前記撮像情報に含まれるベッド付近または椅子付近での被介護者の姿勢の変化量とに基づいて、起立動作に関する前記第1の時間を算出する、請求項21~25のいずれかに記載のリハビリテーション支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リハビリテーション支援システムに関し、より特定的には、リハビリテーションにおける被介護者の運動能力の改善の期待値を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高齢化の進行により、多くの高齢者が病院や老人福祉施設などの介護施設に入居している。介護施設では、介護スタッフや看護師などの介護者が、入居者である被介護者に様々な介護作業を行う。
【0003】
近年、これらの介護施設は、入居者の在宅復帰率を向上させることを求められている。入居者の在宅復帰率を向上させるためには、入居者の現在の運動能力を高い精度で把握し、入居者の運動能力に応じて適切なリハビリテーションを提供することが不可欠である。しかし、既存の入居者の運動能力の把握は、介護者の経験および主観に基づくことが多く、介護者ごとに入居者の運動能力の把握にバラツキが存在した。そのため、より正確な入居者の運動能力の把握方法が求められている。
【0004】
入居者の運動能力の把握方法に関し、例えば、特開2019-067177号公報(特許文献1)は、「映像から得られた患者の歩行時の動作に関する第1の情報と、患者の映像撮影時の歩行時での視線の動きに関する第2の情報とを受け付けるリハビリ患者情報入力手段と、複数の患者の歩行時の動作と該歩行時の視線の動きとを参照して、患者の各時点の歩行時の動作と該歩行時の視線の動きとの関係性を学習した関係性モデルを生成するモデル生成手段と、リハビリ患者情報入力手段で入力された、第1の情報と、第2の情報とを、モデル生成手段で生成した関係性モデルに基づいて、該患者の現時点の回復状況を定量化するリハビリ効果定量化手段と、を具備する」医療情報処理システムを開示している([要約]参照)。
【0005】
また、入居者の運動能力の把握方法に関し、他の例が、特開2000-138927号公報(特許文献2)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-067177号公報
【文献】特開2000-138927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および2に開示された技術によると、被介護者の動作ごとのリハビリテーションによる改善の期待値を客観的に示すことができない。したがって、被介護者の動作ごとのリハビリテーションによる改善の期待値を客観的に示す技術が必要とされている。
【0008】
本開示は、上記のような背景に鑑みてなされたものであって、ある局面における目的は、被介護者の動作ごとのリハビリテーションによる改善の期待値を客観的に示す技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある実施の形態に従うと、リハビリテーションを支援する情報を提供するためにコンピュータで実行される方法が提供される。この方法は、被介護者の日常生活下の第1の動作を記録した第1の記録を生成するステップと、被介護者の非日常生活下の第1の動作を記録した第2の記録を生成するステップと、第1および第2の記録の比較に基づいて、日常生活下の第1の動作の実行に要する第1の時間と、非日常生活下の第1の動作の実行に要する第2の時間とを比較するステップと、第1の時間と、第2の時間との比較の結果に基づいて、第1の動作の改善の期待値を算出するステップとを含む。
【0010】
ある局面において、第1の動作の改善の期待値を算出するステップは、第1の時間および第2の時間の実行時間の差分、または第1の時間および第2の時間の実行時間の比率に基づいて、第1の動作の改善の期待値を算出するステップを含む。
【0011】
ある局面における方法において、第2の記録は、リハビリテーション中または体力測定中の動作の記録を含む。
【0012】
ある局面における方法において、第1の動作は、歩行動作または頭部の高さ変化が伴う姿勢変化の動作を含む。
【0013】
ある局面において、方法は、日常生活下において、被介護者の動作を複数回記録するステップと、複数回記録された被介護者の動作の各々に含まれる第1の動作の実行時間の変化量に基づいて、第1の動作の改善値を算出するステップとをさらに含む。
【0014】
ある局面において、方法は、第1の時間の変化量のグラフと、第2の時間の変化量のグラフと、第1の動作の改善値のグラフと、今後の第1の動作の改善の期待値のグラフとを、ディスプレイに表示するステップをさらに含む。
【0015】
ある局面において、方法は、第1の時間および第2の時間の実行時間の差分または比率に基づいて、改善の期待値の大きいリハビリテーションを推定するステップをさらに含む。
【0016】
ある局面において、第1および第2の記録を生成するステップは、それぞれ、カメラから、被介護者の撮像情報を取得するステップと、撮像情報に映る被介護者の頭部の大きさと、頭部および関節の位置関係の変化とに基づいて、被介護者の姿勢を特定するステップと、特定された姿勢の変化に基づいて、被介護者の動作を特定するステップとを含む。
【0017】
ある局面において、被介護者の動作を特定するステップは、撮像情報に映る被介護者の頭部の大きさと、頭部および関節の位置関係との変化量を推定するステップと、推定した変化量に基づいて、データベースから近い変化パターンを検索するステップと、データベースから検索された変化パターンに紐付いた動作を取得するステップとを含む。
【0018】
ある局面において、方法は、被介護者の生活場所に設置されたカメラによる撮像情報に含まれる第1の動作を抽出するステップと、抽出された第1の動作に基づいて、第1の時間を算出するステップと、非日常生活の場所に設置されたカメラによる撮像情報に含まれる第1の動作を抽出するステップと、抽出された第1の動作に基づいて、第2の時間を算出するステップとをさらに含む。
【0019】
ある局面において、第1の動作は歩行動作を含む。方法は、撮像情報のタイムスタンプの変化量と、撮像情報に含まれる被介護者の位置の変化量とに基づいて、歩行動作に関する第1の時間を算出するステップをさらに含む。
【0020】
ある局面において、第1の動作は起床動作を含む。方法は、撮像情報のタイムスタンプの変化量と、撮像情報に含まれるベッド上での被介護者の姿勢の変化量とに基づいて、起床動作に関する第1の時間を算出するステップをさらに含む。
【0021】
ある局面において、第1の動作は起立動作を含む。方法は、撮像情報のタイムスタンプの変化量と、撮像情報に含まれるベッド付近または椅子付近での被介護者の姿勢の変化量とに基づいて、起立動作に関する第1の時間を算出するステップをさらに含む。
【0022】
他の実施の形態に従うと、リハビリテーションを支援するリハビリテーション支援システムが提供される。このリハビリテーション支援システムは、被介護者の生活環境また非日常生活環境の各々に設置される複数の端末装置と通信する通信部と、プロセッサーとを備える。通信部は、生活環境に設置された端末装置から、被介護者の日常生活下の第1の動作を記録した第1の記録を受信し、非日常生活環境に設置された端末装置から、被介護者の非日常生活下の第1の動作を記録した第2の記録を受信する。プロセッサーは、第1および第2の記録の比較に基づいて、日常生活下の第1の動作の実行に要する第1の時間と、非日常生活下の第1の動作の実行に要する第2の時間とを比較し、第1の時間と、第2の時間との比較の結果に基づいて、第1の動作の改善の期待値を算出する。
【0023】
ある局面において、プロセッサーは、第1の時間および第2の時間の実行時間の差分、または第1の時間および第2の時間の実行時間の比率に基づいて、第1の動作の改善の期待値を算出する。
【0024】
ある局面におけるリハビリテーション支援システムにおいて、第2の記録は、リハビリテーション中または体力測定中の動作の記録を含む。
【0025】
ある局面におけるリハビリテーション支援システムにおいて、第1の動作は、歩行動作または頭部の高さ変化が伴う姿勢変化の動作を含む。
【0026】
ある局面において、通信部は、生活環境に設置された端末装置から、日常生活下において、被介護者による動作の複数の記録を受信する。プロセッサーは、各動作の記録の各々に含まれる第1の動作の実行時間の変化量に基づいて、第1の動作の改善値を算出する。
【0027】
ある局面において、通信部は、第1の時間の変化量のグラフと、第2の時間の変化量のグラフと、第1の動作の改善値のグラフと、今後の第1の動作の改善の期待値のグラフとをディスプレイに表示させるための情報を外部の装置に送信する。
【0028】
ある局面において、プロセッサーは、第1の時間および第2の時間の実行時間の差分または比率に基づいて、改善の期待値の大きいリハビリテーションを推定する。
【0029】
ある局面において、通信部は、複数の端末装置の各々から被介護者の撮像情報を受信する。プロセッサーは、撮像情報に映る被介護者の頭部の大きさと、頭部および関節の位置関係の変化とに基づいて、被介護者の姿勢を特定し、特定された姿勢の変化に基づいて、被介護者の動作を特定する。
【0030】
ある局面において、リハビリテーション支援システムは、撮像情報を解析するためのデータを記憶するデータベースをさらに備える。プロセッサーは、撮像情報に映る被介護者の頭部の大きさと、頭部および関節の位置関係との変化量を推定し、推定した変化量に基づいて、データベースから近い変化パターンを検索し、データベースから検索された変化パターンに紐付いた動作を取得する。
【0031】
ある局面において、プロセッサーは、生活環境に設置された端末装置から受信した撮像情報に含まれる第1の動作を抽出し、当該抽出された第1の動作に基づいて、第1の時間を算出し、非日常生活環境に設置された端末装置から受信した撮像情報に含まれる第1の動作を抽出し、当該抽出された第1の動作に基づいて、第2の時間を算出する。
【0032】
ある局面において、第1の動作は歩行動作を含む。プロセッサーは、撮像情報のタイムスタンプの変化量と、撮像情報に含まれる被介護者の位置の変化量とに基づいて、歩行動作に関する第1の時間を算出する。
【0033】
ある局面において、第1の動作は起床動作を含む。プロセッサーは、撮像情報のタイムスタンプの変化量と、撮像情報に含まれるベッド上での被介護者の姿勢の変化量とに基づいて、起床動作に関する第1の時間を算出する。
【0034】
ある局面において、第1の動作は起立動作を含む。プロセッサーは、撮像情報のタイムスタンプの変化量と、撮像情報に含まれるベッド付近または椅子付近での被介護者の姿勢の変化量とに基づいて、起立動作に関する第1の時間を算出する。
【発明の効果】
【0035】
ある実施の形態に従うと、介護者の動作ごとのリハビリテーションによる改善の期待値を算出することが可能である。
【0036】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】ある実施の形態に従うリハビリテーション支援システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】居室900における入居者800の動作記録の概要の一例を示す図である。
【
図3】センサーボックス100および携帯端末300のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】管理者端末30または管理装置200として使用され得る情報処理装置400のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図5】居室900における入居者800の動作記録の一例を示す図である。
【
図6】リハビリテーション室950における入居者800の動作記録の一例を示す図である。
【
図7】日常生活下の入居者800の歩行速度と、非日常生活下の入居者800の歩行速度との比較の一例を表す図である。
【
図8】ある実施の形態に従うリハビリテーション支援システムにおける入居者800の姿勢推定方法の一例を示す図である。
【
図9】入居者800の起床の動作の改善の期待値の算出の一例を示す図である。
【
図10】入居者800の起立の動作の改善の期待値の算出の一例を示す図である。
【
図11】管理装置200が記憶する各種情報に基づいて生成される画面1100の一例を示す図である。
【
図12】管理装置200が記憶する各種情報に基づいて生成される画面1200の一例を示す図である。
【
図13】管理装置200が記憶する各種情報に基づいて生成される画面1300の一例を示す図である。
【
図14】リハビリテーション支援システムの応用の一例を示す図である。
【
図15】管理装置200が動作記録を収集する処理の流れを示す図である。
【
図16】携帯端末300がリハビリテーション支援システムの分析結果を表示する処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る技術思想の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0039】
(システム構成)
最初に、
図1および
図2を参照して、リハビリテーション支援システムの全体像について説明する。
図1は、本実施の形態に従うリハビリテーション支援システムの構成の一例を示す図である。
図1を参照して、リハビリテーション支援システムの概要および用途について説明する。本実施の形態に従うリハビリテーション支援システムは、主に高齢者のいる住居、特別老人ホームや介護施設など(以下、総称して「施設」と呼ぶ)で使用されることを想定している。以降の説明において、施設内で介護を受ける側である被介護者を「入居者」と呼ぶ。さらに、施設内で介護作業を行う側の介護者を「スタッフ」と呼ぶ。
【0040】
リハビリテーション支援システムは、施設内における入居者の様々な動作ごと(歩行、起床および起立など)の実行時間を正確に計測し、当該計測結果に基づいて、動作ごとのリハビリテーションによる改善の期待値(伸び代)を推定する。ここでの「起床」とは、臥位(寝た状態)から座位(座った状態)に移行すること、すなわちベッドなどで寝た状態から上半身を起こす動作を指す。「起立」とは、座位から立位に移行すること、すなわち椅子などに座った状態から立ち上がる動作を指す。また、これ以降の説明における、ある動作の改善の期待値および改善値は、各々、ある動作に関係する運動能力の改善の期待値および改善値であってもよいし、ある動作の実行時間(の短縮)の改善の期待値および改善値であってもよい。
【0041】
リハビリテーション支援システムは、センサーボックス100と、管理者端末30と、管理装置200とを含む。リハビリテーション支援システムは、さらに、交換装置12と、ゲートウェイサーバー11と、スタッフの携帯端末300とを含んでいてもよい。
【0042】
施設10は、少なくとも、居室900と、リハビリテーション室950とを備える。居室900は、入居者800が日常生活を送るための部屋である。リハビリテーション室950は、入居者800が運動能力の向上などを目的としたリハビリテーションまたは体力測定などを行なう部屋である。
図1に示す例では、入居者800Aが、居室900で日常生活を送っており、入居者800Bが、リハビリテーション室950でリハビリテーションを受けている。
【0043】
ゲートウェイサーバー11は、施設10の内部ネットワークと、施設10の外部ネットワークとを相互接続する。内部ネットワークは、有線と無線とからなるローカルネットワークであってもよい。外部ネットワークは、例えば、インターネット網や公衆電話回線網である。内部ネットワークまたは外部ネットワークに接続された機器は、例えば、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)、UDP(User Datagram Protocol)およびICMP(Internet Control Message Protocol)などの通信プロトコルを用いて、データを送受信する。
【0044】
ある局面において、ゲートウェイサーバー11は、セキュリティに関する機能を備えていてもよい。例えば、ゲートウェイサーバー11は、ファイヤーウォールまたはフィルタリング機能などにより、外部ネットワークに接続された機器が、内部ネットワークの各機器にアクセスできないようにしてもよい。逆に、ゲートウェイサーバー11は、内部ネットワークに接続された各機器に対して、外部ネットワーク上の特定のウェブページを参照できなくするなどの制限を設けてもよい。
【0045】
交換装置12は、施設10の内部ネットワーク上の各機器を相互接続する。ある局面において、ルーターまたはスイッチが交換装置12として使用されてもよい。交換装置12は、複数のイーサーネット(登録商標)の通信ポートを備え、各機器とイーサーネットケーブルを介して接続され得る。さらに、交換装置12は、Wi-Fi(登録商標)(Wireless Fidelity)などに対応した無線アンテナを備えていてもよい。その場合、交換装置12は、有線および無線の両方の手段で、各機器と通信し得る。
図1に示す例では、交換装置12の数は1であるが、交換装置12の数はこれに限定されない。施設10の内部ネットワークは、複数の交換装置12の組み合わせによって構成されてもよい。
【0046】
アクセスポイント13は、無線アンテナを備えており、無線通信を介して、各機器を内部ネットワークに接続する。ある局面において、Wi-Fiルーターが、アクセスポイント13として使用されてもよい。ある局面において、交換装置12およびアクセスポイント13は、一体型であってもよい。
【0047】
管理装置200は、リハビリテーション支援システムのプログラムや各種データを管理する。また、管理装置200は、入居者800の居室900(日常生活環境)における動作記録と、入居者800のリハビリテーション室950(非日常生活環境)における動作記録とを保存する。管理装置200は、これら各環境における動作記録の比較結果に基づいて、入居者800の動作の改善の期待値を算出する。ある局面において、管理装置200は、入居者800の複数種類の動作についての記録を保存してもよい。その場合、管理装置200は、各動作の改善の期待値を算出し、当該推定結果に基づいて、リハビリテーションプランを選択し、スタッフに提示し得る。管理者端末30は、施設10の管理者が管理装置200にログインするための端末として使用され得る。
【0048】
また、他の局面において、管理装置200は、外部ネットワーク上のクラウドサーバーであってもよい。その場合、管理装置200は、ゲートウェイサーバー11を介して、内部ネットワークの各機器と通信することになる。他の局面において、管理装置200は、管理者端末30と一体型であってもよい。
【0049】
センサーボックス100は、センサーボックス100に内蔵されたカメラおよびセンサーと、居室900内の他の各種センサーと連携することにより、各居室900内の入居者800の動作記録(「日常動作の記録」と呼ぶ)を取得し得る。センサーボックス100は、内部ネットワークを介して、管理装置200に、取得した入居者800の日常動作の記録を送信する。また、センサーボックス100は、リハビリテーション室950にも設置され得る。リハビリテーション室950のセンサーボックス100は、入居者800のリハビリテーションにおける動作記録を取得する。これ以降、リハビリテーションまたは体力測定などの非日常下における動作記録を「非日常動作の記録」と呼ぶ。
【0050】
センサーボックス100は、内部ネットワークを介して、管理装置200に、取得した入居者800の非日常動作の記録を送信する。これ以降の説明で、「日常動作の記録」および「非日常動作の記録」を総称するときは「動作記録」と呼ぶ。
【0051】
入居者800の動作記録は、例えば、カメラによって撮像された撮像情報(映像または画像)である。入居者800の動作記録は、一例として、立位の状態で入居者800の位置が変化する「歩行」と、入居者800の体勢が臥位から座位に変化する「起床」と、入居者800の体勢が座位から立位に変化する「起立」とを含む。ある局面において、入居者800の動作記録は、上記の動作以外の任意の動作を含んでいてもよい。
【0052】
ある局面において、センサーボックス100は、居室900またはリハビリテーション室950における入居者800の動作記録を解析し、当該解析結果を管理装置200に送信してもよい。解析結果は、一例として、入居者800の動作記録に含まれる歩行、起床および起立などの動作の抽出結果と、抽出された各動作の動作時間または動作速度とを含み得る。その場合、センサーボックス100は、動作記録に含まれる個別の動作と、各動作の開始および終了のタイムスタンプ(または動作速度)と、入居者800、居室900またはリハビリテーション室950を識別する情報とを管理装置200に送信してもよい。
【0053】
センサーボックス100は、さらに、位置情報を管理装置200に送信してもよい。ここでの位置情報とは、居室900、リハビリテーション室950、食堂およびその他の共有スペースなどに関する情報を含んでいてもよい。他の局面において、センサーボックス100は、取得した情報の全てまたは一部を携帯端末300に送信してもよい。その場合、携帯端末300は、センサーボックス100から取得した各種情報を管理装置200に送信し得る。
【0054】
センサーボックス100は、居室900内の入居者800の動作を検出するためのセンサーを内蔵する。センサーの一例は、物体の動作を検出するためのドップラーセンサーである。他の例は、カメラである。さらに他の例は、ケアコール子機500、ドアセンサー510、トイレセンサー520、臭いセンサー530、または、バイタルセンサー540である。センサーボックス100は、センサーとして、これらのセンサー中の少なくとも一つを含む。
【0055】
携帯端末300は、施設10で介護に従事するスタッフにより使用される。スタッフは、携帯端末300を用いて、入居者800の非日常動作の記録を管理装置200に送信し得る。スタッフは、携帯端末300を用いて、入居者800のリハビリテーションまたは体力測定などを行なう。例えば、スタッフは、携帯端末300をストップウォッチとして使用して、歩行、起床および起立などの動作の時間を計測し得る。その場合、携帯端末300は、各動作のタイムスタンプ(開始時間および終了時間)を管理装置200に送信し得る。
【0056】
ある局面において、管理装置200は、センサーボックス100から受信した入居者800の非日常動作の記録と、携帯端末300から受信したタイムスタンプとを紐付けて管理してもよい。他の局面において、管理装置200は、センサーボックス100から受信した動作記録のみを保存してもよい。その場合、リハビリテーション室950における記録は、センサーボックス100のみにより行なわれる。
【0057】
図1の例では、施設10に含まれる居室900およびリハビリテーション室950の数は各々1つであるが、本実施の形態に従うリハビリテーション支援システムは、任意の数の居室900と、任意の数のリハビリテーション室950を持つ施設10で使用することができる。同様に、携帯端末300、アクセスポイント13および交換装置12などの他の機器の数に関しても、
図1の例示に限定されない。
【0058】
居室900は、設備として、例えば、ベッド901、トイレ902、および、家具903を含む。居室900のドアには、当該ドアの開閉を検出するドアセンサー510が設置されている。トイレ902のドアには、トイレ902の開閉を検出するトイレセンサー520が設置されている。ベッド901には、入居者800の排泄情報を取得する臭いセンサー530が設置されている。入居者800は、当該入居者800のバイタル情報を検出するバイタルセンサー540を装着している。検出されるバイタル情報の一例は、入居者の体温である。他の例は、入居者の呼吸である。さらに他の例は、入居者の心拍数である。さらに他の例は、これらの情報の中の2以上の種類の情報である。居室900では、入居者800はケアコール子機500を操作することができる。
【0059】
図2は、居室900における入居者800の動作記録の概要の一例を示す図である。センサーボックス100と、管理装置200と、携帯端末300とは、互いに有線ネットワークまたは無線ネットワークを介して接続され得る。
図2に示す例は、居室900であるが、リハビリテーション支援システムは、リハビリテーション室950においても同様の手順で入居者800の動作記録を取得し得る。
【0060】
センサーボックス100は、カメラ105と、任意のセンサー260(マイク、赤外線センサー、ドップラーセンサーまたはこれらの組み合わせなど)とを含む。センサーボックス100は、一例として、センサー260が入居者800の動作を検知したときのみ、カメラ105で入居者800の動作を撮影し、撮像情報を動作記録として管理装置200に送信してもよい。他の例として、センサーボックス100は、常に入居者800の動作を撮影し続け、センサー260から一定間隔で取得した検出値を付加した撮像情報を、動作記録として管理装置200に送信してもよい。
【0061】
管理装置200は、受信した動作記録を解析して、入居者ごとに、複数種類の動作と、当該動作の実行時間(または実行速度)とを保存し得る。管理装置200は、入居者800の日常動作の記録と、入居者800の非日常動作の記録とを比較し、その差分に基づいて、各動作の改善の期待値を算出する。また、管理装置200は、各動作に紐付けられたリハビリテーションプランの中から最適なリハビリテーションプランを選択し得る。携帯端末300は、管理装置200から、入居者800の各動作の改善の期待値と、選択されたリハビリテーションプランとを取得し、取得した情報をディスプレイに表示し得る。
【0062】
カメラ105は、居室内を撮影し、撮影によって得られた撮像情報をセンサーボックス100に送信する。ある局面において、カメラ105は、可動軸が2軸以上の可動式カメラであってもよい。他の局面において、カメラ105は、赤外線カメラであってもよい。さらに、カメラ105は、可動式の赤外線カメラであってもよい。その場合、センサーボックス100は、夜間の消灯時間においても、入居者800の睡眠を妨げることなく、居室101内を撮影することができる。さらに、他の局面において、カメラ105は、通常のカメラおよび外線カメラの両方を含んでいてもよい。その場合、センサーボックス100は、通常のカメラにより日中の居室900内を撮影し、赤外線カメラにより夜間の居室900内を撮影し得る。
【0063】
センサー260は、入居者800の動作を検出または解析のためのデータを取得し得る。センサー260は、例えば、入居者800の動作の開始時間、動作の終了時間および位置情報などを取得し得る。センサーボックス100または管理装置200は、撮像情報と、センサー260から取得した情報とに基づいて、高精度に入居者800の動作を解析することができる。
【0064】
ある局面において、リハビリテーション室950での入居者800の各動作のタイムスタンプは、スタッフが携帯端末300を使用して記録してもよい。その場合、管理装置200は、携帯端末300からタイムスタンプを取得し、センサーボックス100から撮像情報を取得し、これらの情報に基づいて、入居者800の動作を解析する。
【0065】
(ハードウェア構成)
次に、
図3および
図4を参照して、センサーボックス100、携帯端末300および管理装置200のハードウェア構成について説明する。
図3は、センサーボックス100および携帯端末300のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3を参照して、センサーボックス100および携帯端末300のハードウェア構成と、各構成の機能とについて説明する。
【0066】
センサーボックス100は、居室900またはリハビリテーション室950における入居者800の動作を撮影し、動作記録として、撮影した画像を管理装置200に送信する。センサーボックス100は、制御装置101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、通信インターフェイス104と、カメラ105と、ドップラーセンサー106と、無線通信装置107と、記憶装置108とを備える。
【0067】
制御装置101は、センサーボックス100を制御する。制御装置101は、例えば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、例えば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらの組み合わせなどによって構成される。
【0068】
ROM102は、制御装置101が実行する各種プログラムおよび設定を保存し得る。RAM103は、ROM102または記憶装置108からロードされたプログラムなどを一時的に記憶する。制御装置101は、RAM103に読み込まれたプログラムを実行する。
【0069】
通信インターフェイス104は、アンテナ(図示せず)などに接続される。センサーボックス100は、当該アンテナを介して、他の通信機器との間でデータをやり取りする。他の通信機器は、例えば、管理装置200、携帯端末300、アクセスポイント13およびその他の通信端末などを含む。ある局面において、通信インターフェイス104は、有線接続で他の通信機器と接続されてもよい。
【0070】
カメラ105は、一実現例では、近赤外カメラである。近赤外カメラは、近赤外光を投光するIR(Infrared)投光器を含み、夜間でも居室900の内部を表わす映像および/または写真を撮影できる。他の実現例では、カメラ105は、可視光のみを受光する監視カメラである。さらに他の実現例では、カメラ105として、3Dセンサーやサーモグラフィーカメラが用いられてもよい。センサーボックス100およびカメラ105は、一体的に構成されてもよいし、別体で構成されてもよい。
【0071】
ドップラーセンサー106は、例えばマイクロ波ドップラーセンサーであり、電波を放射および受信して、居室900内の物体の挙動(動作)を検出する。これにより、居室900内の入居者800の生体情報が検出され得る。一例では、ドップラーセンサー106は、24GHz帯のマイクロ波を各居室900のベッド901に向けて放射し、入居者800で反射したマイクロ波(以下「反射波」という。)を受信する。反射波は、入居者800の動作により、ドップラーシフトしている。ドップラーセンサー106は、当該反射波から、入居者800の呼吸状態や心拍数を検出し得る。ドップラーセンサー106は、
図2で示した入居者800の動作を検出するセンサー260に相当する。ある局面において、センサーボックス100は、ドップラーセンサー106以外にも入居者800の動作を検出する任意のセンサーを備えていてもよい。
【0072】
無線通信装置107は、ケアコール子機500、ドアセンサー510、トイレセンサー520、臭いセンサー530、および、バイタルセンサー540からの各信号を受信し、当該信号を制御装置101へ送信する。例えば、ケアコール子機500は、ケアコールボタン501を備える。ケアコールボタン501が操作されると、ケアコール子機500は、当該操作があったことを示す信号を無線通信装置107へ送信する。ドアセンサー510、トイレセンサー520、臭いセンサー530、および、バイタルセンサー540のそれぞれは、それぞれの検出出力を無線通信装置107へ送信する。
【0073】
記憶装置108は、例えば、ハードディスクや外付けの記憶装置などの記憶媒体である。記憶装置108は、カメラ105によって取得された撮像情報と、ドップラーセンサー106の検出情報とを保存し得る。ある局面において、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)が、記憶装置108として使用されてもよい。
【0074】
携帯端末300は、入居者800の各動作の改善の期待値、および管理装置200によって提案されたリハビリテーションプランなどを表示する。また、携帯端末300は、入居者800の非日常動作の記録の入力を受け付けて、受け付けた非日常動作の記録を管理装置200に送信する。携帯端末300は、制御装置301と、RAM303と、通信インターフェイス304と、ディスプレイ305と、入力デバイス306と、内部メモリー320とを含む。
【0075】
制御装置301は、携帯端末300を制御する。制御装置301は、例えば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、例えば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのASIC、少なくとも1つのFPGA、またはそれらの組み合わせなどによって構成される。RAM303は、内部メモリー320からロードされたプログラムなどを一時的に記憶する。制御装置301は、RAM303に読み込まれたプログラムを実行する。
【0076】
通信インターフェイス304は、アンテナ(図示せず)などに接続される。携帯端末300は、当該アンテナおよびアクセスポイント13を介して、外部の通信機器との間でデータをやり取りする。外部の通信機器は、例えば、センサーボックス100、管理装置200などを含む。
【0077】
ディスプレイ305は、例えば液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイによって実現される。入力デバイス306は、例えばディスプレイ305に重ねられたタッチセンサーによって実現される。当該タッチセンサーは、携帯端末300に対する各種操作をタッチ操作で受け付け、当該操作の内容を制御装置301へ出力する。ディスプレイ305は、介護記録を入力するための画面を表示し、スタッフの介護記録の入力を受け付けてもよい。
【0078】
内部メモリー320は、例えば、eMMC(Embedded Multimedia Card)などの記憶媒体である。一例として、内部メモリー320は、制御装置301によって実行されるプログラムを格納するが、当該プログラムは、制御装置301がアクセス可能な記憶装置であれば、内部メモリー320以外の記憶装置に格納されていてもよい。
【0079】
図4は、管理者端末30または管理装置200として使用され得る情報処理装置400のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4を参照して、情報処理装置400のハードウェア構成と、各構成の機能とについて説明する。情報処理装置400は、一例として、PC(Personal Computer)またはワークステーションであってもよい。
【0080】
情報処理装置400は、制御装置201と、ROM202と、RAM203と、通信インターフェイス204と、表示インターフェイス205と、操作インターフェイス207と、記憶装置220とを含む。
【0081】
制御装置201は、情報処理装置400を制御する。制御装置201は、例えば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、例えば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのASIC、少なくとも1つのFPGA、またはこれらの組み合わせなどによって構成される。
【0082】
ROM202は、制御装置201が実行する各種プログラムおよび設定を保存し得る。RAM203は、ROM202または記憶装置220からロードされたプログラムなどを一時的に記憶する。制御装置201は、RAM203に読み込まれたプログラムを実行する。
【0083】
通信インターフェイス204には、アンテナ(図示せず)などが接続される。情報処理装置400は、当該アンテナを介して、外部の通信機器との間でデータをやり取りする。外部の通信機器は、例えば、センサーボックス100を含む。
【0084】
表示インターフェイス205は、ディスプレイ206と接続され、制御装置201などからの指令に従って、ディスプレイ206に対して、画像を表示するための画像信号を送出する。ある局面において、ディスプレイ206は、入居者800の各動作の改善の期待値、リハビリテーションプランおよびリハビリテーションの記録などを表示し得る。
【0085】
操作インターフェイス207は、例えば、USB(Universal Serial Bus)端子であり、入力デバイス209に接続される。操作インターフェイス207は、入力デバイス209からのユーザー操作を示す信号を受ける。入力デバイス209は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、またはユーザーの入力操作を受け付けることが可能なその他の装置である。
【0086】
記憶装置220は、例えば、ハードディスクや外付けの記憶装置などの記憶媒体である。記憶装置220は、一例として、日常動作の記録、非日常動作の記録、動作記録の解析結果、各入居者800の各動作の改善の期待値および各入居者800のリハビリテーションの記録などを保存する。ある局面において、HDDまたはSSDが、記憶装置220として使用されてもよい。
【0087】
(動作ごとの改善の期待値の推定方法)
次に、
図5~
図10を参照して、リハビリテーション支援システムにおける入居者800の動作記録の取得処理と、取得した動作記録の解析処理と、解析結果の表示処理とについて説明する。
【0088】
まず、
図5~
図7を参照して、一例として、動作記録の取得と、動作記録に含まれる動作「歩行」の抽出と、入居者800の歩行の改善の期待値の推定方法とを説明する。
【0089】
図5は、日常動作の記録の一例を示す図である。
図5に示す例は、居室900の天井に設けられたセンサーボックス100のカメラ105から見た居室900である。行動導線580は、入居者800が移動した軌跡を表す。
【0090】
センサーボックス100は、カメラ105により、居室900を撮像する。センサーボックス100は、当該撮像情報にタイムスタンプおよびセンサー260の検出データなど付加して、日常動作の記録を生成する。センサーボックス100は、定期的に、日常動作の記録を管理装置200に送信する。
【0091】
管理装置200は、日常動作の記録に含まれる撮像情報およびセンサー260の検出データを解析し、行動導線580を抽出する。次に、管理装置200は、行動導線580に基づく入居者800の位置の変化量と、入居者800の位置が変化するときのタイムスタンプとに基づいて、日常生活下の入居者800の歩行速度を算出する。ある局面において、センサーボックス100が日常生活下の入居者800の歩行速度を算出し、当該算出の結果を管理装置200に送信してもよい。
【0092】
図6は、非日常動作の記録の一例を示す図である。
図6に示す例では、入居者800は、スタッフの指導を受けながら、歩行のリハビリテーションを受けている。センサーボックス100は、居室900と同様にリハビリテーション室950の天井に設けられている。
【0093】
入居者800は、スタッフの指示に従いスタート地点601からゴール地点602まで歩行する。センサーボックス100は、カメラ105により、一例として、入居者800がリハビリテーションを受けているときのリハビリテーション室950を撮像する。センサーボックス100は、当該撮像情報にタイムスタンプおよびセンサー260の検出データなど付加して、非日常動作の記録を生成する。センサーボックス100は、非日常動作の記録を管理装置200に送信する。
【0094】
管理装置200は、
図5の説明と同様の手順で、一例として、リハビリテーション中の入居者800の歩行速度を算出する。ある局面において、センサーボックス100がリハビリテーション中の入居者800の歩行速度を算出し、当該算出の結果を管理装置200に送信してもよい。管理装置200は、入居者800の日常生活下の歩行速度と非常生活下の歩行速度との比較結果に基づいて、入居者800の歩行の改善の期待値を算出する。一例として、日常生活下の歩行速度と、リハビリテーション中の歩行速度との比較について説明したが、管理装置200の比較対象はこれに限定されるものではない。管理装置200は、入居者800の日常生活下の歩行速度と、任意の非常生活下の歩行速度との比較結果に基づいて、入居者800の歩行の改善の期待値を算出し得る。ある局面において、ここでの比較結果とは、歩行速度の差分であってもよいし、比率であってもよい。
【0095】
図7は、入居者800の日常生活下の歩行速度と、非日常生活下の歩行速度との比較の一例を表す図である。
図7に示すように、入居者800は、通常、日常生活にて歩行する場合と比較して、リハビリテーションまたは体力測定などの非日常生活下にて全力で歩行するときのほうが速く歩行できる場合が多い。なぜならば、入居者800は、リハビリテーションまたは体力測定の場合、スタッフ(コーチ)の指導に基づいて、全力で歩行するためである。
【0096】
管理装置200は、入居者800の日常生活下の歩行速度と、非日常生活下の歩行速度とを比較し、それぞれの環境の歩行速度の差分を歩行の改善の期待値(伸び代)であると推定し得る。例えば、管理装置200は、非日常生活下の歩行速度が日常生活下の歩行速度よりも非常に速い場合(差分が大きい場合)、入居者800は日常生活で余力を残しており、歩行の改善の期待値が高いと判定する。
【0097】
ある局面において、管理装置200は、日常生活下の歩行速度と、非日常生活下の歩行速度との比率に基づいて、入居者800の歩行の改善の期待値を判定してもよい。例えば、比率を「非日常生活下の歩行速度/日常生活下の歩行速度」と定義した場合、比率が限りなく1に近いとき、管理装置200は、入居者800の歩行の改善の期待値は低いと判断し得る。逆に、比率が1よりある程度以上大きいとき、管理装置200は、入居者800の歩行の改善の期待値は高いと判断し得る。
【0098】
次に、
図8~
図10を参照して、動作記録に含まれる動作「起床」および「起立」の抽出と、入居者800の起床および起立の改善の期待値の推定方法とを説明する。
【0099】
図8は、本実施の形態に従うリハビリテーション支援システムにおける入居者800の姿勢推定方法の一例を示す図である。管理装置200は、動作記録に基づいて入居者800の姿勢を推定し、入居者800の姿勢の変化を検出することで、入居者800の動作を推定し得る。入居者800の姿勢推定方法は、次の4つのステップを含む。
【0100】
ステップ850において、管理装置200は、動作記録から、時系列が連続した複数の画像を抽出する。ある局面において、管理装置200は、ある一定期間の映像を抽出してもよい。
【0101】
ステップ860において、管理装置200は、ステップ850にて抽出した各画像に含まれる入居者800を特定する。ある局面において、管理装置200は、既存の画像認識技術を用いて、画像に含まれる入居者800を特定してもよい。ステップ870において、管理装置200は、ステップ850にて抽出した各画像に含まれる入居者800の頭部の大きさと、頭部および全身の関節の位置とを特定する。
【0102】
ステップ880において、管理装置200は、時系列順に隣接する画像同士を比較し、入居者800の頭部の大きさの変化と、頭部および全身の関節の位置関係の変化とに基づいて、入居者800の動作を推定する。各画像にはタイムスタンプが紐付けられており、管理装置200は、タイムスタンプに基づいて、入居者800の動作の速度も算出し得る。
【0103】
ある局面において、管理装置200は、記憶装置220に、入居者800の頭部の大きさの変化と、頭部および全身の関節の位置関係とのパターン情報と、入居者800の姿勢とを関連付けた第1の関連情報を記憶してもよい。その場合、管理装置200は、当該第1の関連情報に基づいて、各画像における入居者800の姿勢を推定し得る。さらに、管理装置200は、各画像における入居者800の姿勢の変化に基づいて、入居者800の動作を推定し得る。一例として、管理装置200は、入居者800の姿勢が座位から立位に変化した場合は、入居者800は動作「起立」をしたと推定する。
【0104】
他の局面において、管理装置200は、記憶装置220に、入居者800の頭部の大きさの変化量と、頭部および全身の関節の位置関係の変化量とのパターン情報と、入居者800の動作とを関連付けた第2の関連情報を記憶してもよい。その場合、管理装置200は、連続した各画像において入居者800の頭部の大きさと、頭部および全身の関節の位置関係とがどのように変化したかに基づいて、直接、入居者800の動作を推定し得る。また、他の局面において、管理装置200は、第1の関連情報および第2の関連情報を組み合わせて、入居者800の動作を推定してもよい。
【0105】
図9は、入居者800の起床の動作の改善の期待値の算出の一例を示す図である。管理装置200は、
図8を参照して説明した入居者800の動作の推定処理を用いて、居室900およびリハビリテーション室950の各々における動作記録から、入居者800の起床の動作を抽出する。被介護者は、ベッド上で起床動作を行なう可能性が高い。そこで、ある局面において、管理装置200は、動作記録に含まれるベッド上での被介護者の姿勢の変化量に基づいて、起床動作の姿勢の変化を求め、さらに、姿勢の変化の開始時および終了時のタイムスタンプから起床動作の実行時間を算出してもよい。
【0106】
図9に示すように、入居者800は、ベッドの上で臥位から座位に姿勢を変化させている(起床している)。このとき、センサーボックス100は、カメラ105により、少なくとも、臥位の入居者800の画像960と、座位の入居者800の画像961とを撮像し得る。
【0107】
画像960と、画像961とを比較すると、座位は、臥位に対して、頭部の面積が大きくなり、かつ足首関節と膝関節との距離が短くなることがわかる。管理装置200は、第1の関連情報または/および第2の関連情報を参照することで、これらの画像960,961に映る入居者800の姿勢および動作(姿勢の変化)を特定する。
【0108】
また、管理装置200は、動作記録に紐付けられたタイムスタンプに基づいて、居室900およびリハビリテーション室950の各々における入居者800の起床の動作に要した時間を算出する。管理装置200は、居室900における入居者800の起床の動作に要した時間と、リハビリテーション室950における入居者800の起床の動作に要した時間とを比較して、当該比較の結果に基づいて入居者800の起床の改善の期待値を算出する。
【0109】
図10は、入居者800の起立の改善の期待値の算出の一例を示す図である。管理装置200は、
図8を参照して説明した入居者800の動作の推定処理を用いて、居室900およびリハビリテーション室950の各々における動作記録から、入居者800の起立の動作を抽出する。被介護者は、ベッドまたは椅子付近で起立動作を行なう可能性が高い。そこで、ある局面において、管理装置200は、動作記録に含まれるベッドまたは椅子付近での被介護者の姿勢の変化量に基づいて、起立動作の姿勢の変化を求め、さらに、姿勢の変化の開始時および終了時のタイムスタンプから起床動作の実行時間を算出してもよい。
【0110】
図10に示すように、入居者800は、ベッドまたは椅子に座った状態(座位)から、立位に姿勢を変化させている(起床している)。このとき、センサーボックス100は、カメラ105により、少なくとも、座位の入居者800の画像1000と、立位の入居者800の画像1001とを撮像し得る。
【0111】
画像1000と、画像1001とを比較すると、立位は、座位に対して、頭部の面積が大きくなり、かつ全ての関節同士の距離が短くなることがわかる。管理装置200は、第1の関連情報または/および第2の関連情報を参照することで、これらの画像1000,1001に映る入居者800の姿勢および動作(姿勢の変化)を特定する。
【0112】
また、管理装置200は、動作記録に紐付けられたタイムスタンプに基づいて、居室900およびリハビリテーション室950の各々における入居者800の起立の動作に要した時間を算出する。管理装置200は、居室900における入居者800の起立の動作に要した時間と、リハビリテーション室950における入居者800の起立の動作に要した時間とを比較して、当該比較の結果に基づいて入居者800の起立の改善の期待値を算出する。
【0113】
ある局面において、管理装置200は、歩行、起床および起立などの各動作の改善の期待値を算出し、各改善の期待値の比較の結果に基づいて、改善の期待値の大きいリハビリテーションプランを選択して、ディスプレイ206に表示してもよいし、管理者端末30または携帯端末300に送信してもよい。
【0114】
[推定情報およびリハビリテーションの結果の可視化]
次に、
図11~
図14を参照して、管理装置200が、各種情報(居室900での入居者800の動作記録、リハビリテーション室950での入居者800の動作記録、各動作の改善の期待値および非日常動作の記録)を用いて、スタッフまたは入居者800の家族に提示可能な画面、および、提供可能なサービスの一例を説明する。ある局面において、管理装置200は、
図11~
図13に示す各画面をディスプレイ206に表示してもよいし、管理者端末30または携帯端末300に配信してもよい。
【0115】
図11は、管理装置200が記憶する各種情報に基づいて生成される画面1100の一例を示す図である。最初に、画面1100に含まれる各グラフについて説明する。画面1100は、入居者800の歩行の動作のリハビリテーションの推移を表す。画面1100は、居室900での歩行速度を表すグラフ1101と、リハビリテーション室950での歩行速度を表すグラフ1102と、歩行の改善の期待値を表すグラフ1103と、居室900での歩行の改善値を表すグラフ1104と、リハビリテーション室950での歩行の改善値を表すグラフ1105と、を含む。管理装置200は、複数回、センサーボックス100から、居室900における動作記録を取得し、動作記録に含まれる各動作(歩行、起床および起立など)の実行時間の変化に基づいて、日常生活における各動作の改善値を算出し得る。また、管理装置200は、複数回、センサーボックス100から、リハビリテーション室950における動作記録を取得し、動作記録に含まれる各動作の実行時間の変化に基づいて、リハビリテーションにおける各動作の改善値を算出し得る。
【0116】
グラフ1103の値は、グラフ1101および1102の差分の大きさに反比例する。グラフ1104の値は、グラフ1101の推移に比例する。グラフ1105の値は、グラフ1102の推移に比例する。
【0117】
次に、各グラフを分析することで得られる入居者800の情報について説明する。第1の例として、スタッフは、グラフ1101の推移と、グラフ1102の推移とを比較することで、次のことがわかる。2019年10月において、グラフ1101および1102の間には大きな差がある。2020年2月には、グラフ1101および1102の間の差は非常に小さくなっている。このことから、スタッフは、入居者800はリハビリテーションを続けたことで、居室900(日常生活環境)においても、リハビリテーション室950(非日常生活環境)での全力の歩行に近いパフォーマンスで歩行できるようになったことを読み取ることができる。
【0118】
第2の例として、スタッフは、グラフ1104および1105の推移を見ることで、次のことがわかる。グラフ1104の値は、2019年10月~2020年1月までの期間で順調に増加している。このことから、スタッフは、日常生活環境における入居者800の歩行が改善していることを読み取ることができる。一方で、グラフ1105の値の変化は全期間を通して小さい。このことから、スタッフは、入居者800の全力の歩行はすでに改善の上限に近いことを読み取ることができる。
【0119】
第3の例として、スタッフは、グラフ1103の推移を見ることで、次のことがわかる。グラフ1103は、2019年10月~2020年1月までの期間で減少しており、2020年1月以降は変化していない。このことから、スタッフは、入居者800の歩行は十分に改善し、逆に改善の期待値は減少しており、リハビリテーションプランを別の動作のものに切り替えた方が、リハビリテーションが効果的になることを読み取ることができる。
【0120】
図12は、管理装置200が記憶する各種情報に基づいて生成される画面1200の一例を示す図である。画面1200は、グラフ1201,1202,1203,1204および1205を含む。グラフ1201,1202,1203,1204および1205の各々は、グラフ1101,1102,1103,1104および1105の各々に対応する。
【0121】
スタッフは、グラフ1201および1202の各々の推移から、全期間と通して差が小さく、歩行の改善の期待値が低いことを読み取ることができる。また、スタッフは、グラフ1203~1205の各々の推移から、入居者800の歩行が全く改善されていないことを読み取ることができる。この場合、スタッフは、即座にリハビリテーションプランを切り替える必要があると判断できる。
【0122】
図13は、管理装置200が記憶する各種情報に基づいて生成される画面1300の一例を示す図である。画面1300は、グラフ1301,1302,1303,1304および1305を含む。グラフ1301,1302,1303,1304および1305の各々は、グラフ1101,1102,1103,1104および1105の各々に対応する。
【0123】
スタッフは、グラフ1301および1302の各々の推移から、全期間を通して差が大きく、常に歩行の改善の期待値が高いことを読み取ることができる。また、グラフ1304および1305の両方が増加している。このことから、スタッフは、入居者800の歩行が極めて順調に改善しており、現在のリハビリテーションプランを続けることが望ましいことを読み取ることができる。
【0124】
ある局面において、管理装置200は、
図11~
図13で説明した分析をプログラムとして実行し、分析結果を各画面1100~1300と共にスタッフに提示してもよい。その場合、管理装置200は、各グラフを比較するときの評価基準となる複数の閾値を記憶する。一例として、管理装置200は、グラフ1104の変化量に基づいて、日常生活環境における動作がどの程度改善しているか判別するための第1の閾値を記憶し得る。また、別の例として、管理装置200は、グラフ1101および1102の差分の変化量に基づいて、日常生活環境における各動作の改善の期待値の大きさ(小さい、中程度、大きいなど)を判別するための第2の閾値を記憶し得る。
【0125】
上述の各画面1100~1300は、歩行に関する画面であるが、各画面1100~1300の例は、歩行に関する画面に限られない。ある局面において、各画面1100~1300は、任意の動作に関する画面を含み得る。他の局面において、各画面1100~1300の生成および分析結果の生成は、これらの画面を表示する端末装置(携帯端末300など)によって実行されてもよい。
【0126】
図14は、リハビリテーション支援システムの応用の一例を示す図である。
図14に示す例は、
図1のリハビリテーション支援システムをクラウド環境と連携させた例(以下、「応用システム」と呼ぶ)である。最初に応用システムの構成について説明する。
【0127】
応用システムは、
図1の構成に加えて、サーバー1402と、端末装置1407とをさらに備える。サーバー1402は、ネットワーク1401を介して、管理装置200と接続される。ある局面において、サーバー1402は、1以上のサーバーマシンによって構成されていてもよいし、クラウド環境で仮想的に実現されてもよい。他の局面において、端末装置1407は、PC、スマートフォンまたはタブレットなどの任意の情報処理端末であってもよい。
【0128】
管理装置200は、記憶装置220に保存してある各種情報(動作記録およびリハビリテーションの記録など)をサーバー1402にアップロードする。サーバー1402は、日常動作の記録に基づいて生成された居室データ1404と、非日常動作の記録に基づいて生成されたリハビリテーション室データ1405と、動作記録およびリハビリテーションの記録に基づいて生成された伸び代データ1406とをデータベース1403に記憶する。サーバー1402は、入居者800ごとに、これらの各種データを記憶する。居室データ1404およびリハビリテーション室データ1405は、動作記録に加えて各動作の速度の情報を含んでいてもよい。
【0129】
端末装置1407は、情報取得要求をサーバー1402に送信することで、これらの各種情報にアクセスすることができる。一例として、端末装置1407は、各画面1100~1300を表示し得る。また、他の例として、端末装置1407は、各画面1100~1300に加えて、管理装置200による動作記録の分析結果および提案されたリハビリテーションプランを表示し得る。
【0130】
スタッフは、これらの情報を参照しながら、リハビリテーションプランを検討でき、また、入居者800の各動作の改善状況を適切に把握することができる。さらに、スタッフは、端末装置1407に表示される各種情報を入居者800の家族に提示することで、どのようなリハビリテーションを行なっているか、入居者800の状態はどのように推移しているかを説明することができる。
【0131】
[システムの動作フロー]
図15は、管理装置200が動作記録を収集する処理の流れを示す図である。ある局面において、管理装置200は、
図15の処理を行うためのプログラムを記憶装置220からRAM203に読み込んで、当該プログラムを実行してもよい。他の局面において、当該処理の一部または全部は、当該処理を実行するように構成された回路素子の組み合わせとしても実現され得る。
【0132】
ステップS1510において、管理装置200は、各居室900に設けられたセンサーボックス100の各々から入居者800の日常動作の記録を取得する。ステップS1520において、管理装置200は、各リハビリテーション室950に設けられたセンサーボックス100の各々から入居者800の非日常動作の記録を取得する。
【0133】
ステップS1530において、管理装置200は、携帯端末300からリハビリテーションの記録を取得する。ある局面において、リハビリテーションの記録は、リハビリテーション後にスタッフによって携帯端末300に入力されてもよい。他の局面において、リハビリテーションの記録は、リハビリテーションを行なった時刻および入居者800の識別情報などを含んでいてもよく、管理装置200は、これらの情報に基づいて、日常動作の記録と、非日常動作の記録とを紐付けてもよい。また、他の局面において、センサーボックス100が、日常動作の記録と、非日常動作の記録とのそれぞれに入居者800の識別情報を付加してもよい。
【0134】
ステップS1540において、管理装置200は、クラウドシステム(サーバー1402)に、動作記録、リハビリテーションの記録およびそれらの分析結果を送信する。ある局面において、サーバー1402が、管理装置200の役割を兼ねていてもよい。
【0135】
図16は、携帯端末300がリハビリテーション支援システムの分析結果を表示する処理の流れを示す図である。ある局面において、携帯端末300は、
図16の処理を行うためのプログラムを内部メモリー320からRAM303に読み込んで、当該プログラムを実行してもよい。他の局面において、当該処理の一部または全部は、当該処理を実行するように構成された回路素子の組み合わせとしても実現され得る。
【0136】
ステップS1610において、携帯端末300は、管理装置200から入居者800の動作記録を取得する。ある局面において、携帯端末300は、入居者800の識別情報を含む情報取得要求を管理装置200に送信することで、管理装置200から入居者800の動作記録を取得してもよい。他の局面において、携帯端末300は、動作記録に加えて、非日常動作の記録または入居者800の各動作の改善の期待値なども受信してもよい。
【0137】
ステップS1620において、携帯端末300は、入居者800の動作記録に基づいて、入居者800ごとの各動作の改善の期待値を算出する。携帯端末300は、ステップS1610にて、入居者800の各動作の改善の期待値を受信していた場合は、本ステップを実行しない。
【0138】
ステップS1630において、携帯端末300は、入居者800の各動作の改善の期待値に基づいて、効果の高いリハビリテーションプランを選定する。ある局面において、携帯端末300は、各動作に紐付いたリハビリテーションプランのリスト情報を予め記憶し、当該リハビリテーションプランのリスト情報に基づいて、リハビリテーションプランを選定してもよい。他の局面において、携帯端末300は、本ステップの代わりに、リハビリテーションプランを管理装置200から受信してもよい。
【0139】
ステップS1640において、携帯端末300は、入居者800の動作記録およびリハビリテーションの記録に基づいて、リハビリテーションの経過情報を生成する。ある局面において、携帯端末300は、本ステップの代わりに、リハビリテーションの経過情報を管理装置200から受信してもよい。
【0140】
ステップS1650において、携帯端末300は、ステップS1620~S1640までの処理で求めた情報に基づいて、入居者800のリハビリテーションに関するグラフおよび説明文を表示する。当該グラフは、
図11~
図13で説明したグラフに相当する。説明文は本ステップで表示されるグラフの分析結果である。ある局面において、携帯端末300は、本ステップの処理を実行するかわりに、管理装置200から入居者800のリハビリテーションに関するグラフおよび説明文を受信して表示してもよい。
【0141】
端末装置1407は、施設10の外部において、上述した
図16の各ステップと同じ手順で、サーバー1402から受信した各種データに基づいて、入居者800のリハビリテーションに関するグラフおよび説明文を生成し得る。
【0142】
以上説明したように、本実施の形態に従うリハビリテーション支援システムは、入居者800の日常動作の記録と非日常動作の記録とを比較することで、各動作の改善の期待値を求めて提示する。さらに、リハビリテーション支援システムは、各動作の改善の期待値に基づいて選択したリハビリテーションプランを提示し得る。当該処理により、スタッフは、客観的に入居者800の各動作の改善の期待値に基づいて、適切なリハビリテーションプランを選択し得る。
【0143】
また、リハビリテーション支援システムは、入居者800の日常動作の記録と非日常動作の記録とリハビリテーションの記録とに基づいて、入居者800の各動作(または運動能力)の改善状況を例えばグラフという形で客観的に示す。当該処理により、スタッフは、入居者800の運動能力の改善状況を容易に確認し、適切なタイミングでリハビリテーションプランの継続または変更などの判断をすることができる。また、スタッフは、この視覚的に表示された情報を入居者800の家族に提示することで、適切にリハビリテーションの内容とその結果を伝えて、家族から信頼を得ることができる。
【0144】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内で全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および各変形例において説明された発明は、可能な限り、単独でも、組合わせても、実施することが意図される。
【符号の説明】
【0145】
10 施設、11 ゲートウェイサーバー、12 交換装置、13 アクセスポイント、30 管理者端末、100 センサーボックス、101,201,301 制御装置、102,202 ROM、103,203,303 RAM、104,204,304 通信インターフェイス、105 カメラ、106 ドップラーセンサー、107 無線通信装置、200 管理装置、108,220 記憶装置、205 表示インターフェイス、206,305 ディスプレイ、207 操作インターフェイス、209,306 入力デバイス、260 センサー、300 携帯端末、320 内部メモリー、400 情報処理装置、500 ケアコール子機、501 ケアコールボタン、510 ドアセンサー、520 トイレセンサー、530 臭いセンサー、540 バイタルセンサー、580 行動導線、601 スタート地点、602 ゴール地点、800 入居者、900 居室、901 ベッド、902 トイレ、903 家具、950 リハビリテーション室、960,961,1000,1001 画像、1100,1200,1300 画面、1101,1102,1103,1104,1105,1201,1202,1203,1204,1205,1301,1302,1303,1304 グラフ、1401 ネットワーク、1402 サーバー、1403 データベース、1404 居室データ、1405 リハビリテーション室データ、1406 伸び代データ、1407 端末装置。