(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】水分検知装置、水分検知システム、水分検知方法および水分検知プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 22/04 20060101AFI20231121BHJP
G01N 22/00 20060101ALI20231121BHJP
A61F 5/44 20060101ALI20231121BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20231121BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20231121BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G01N22/04 B
G01N22/00 Y
G01N22/00 V
A61F5/44 S
G06K19/077 228
G06K7/10 184
G06K7/10 252
G06K19/07 160
(21)【出願番号】P 2020006987
(22)【出願日】2020-01-20
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2019061334
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇田 潤史
(72)【発明者】
【氏名】堀井 新司
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 清一郎
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-085277(JP,A)
【文献】特開2016-173253(JP,A)
【文献】国際公開第2019/049758(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3151939(JP,U)
【文献】特開2014-190857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 22/00-22/04
G01N 27/00-27/24
A61F 5/44-5/458
A41B 13/00-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺に水分が存在する環境下で特性が変化する無線通信デバイスに対して応答を促す信号である送信信号を通信部に送信させる制御部と、
前記無線通信デバイスから
前記無線通信デバイスの回路部において前記送信信号の搬送波を変調した応答信号を受信した場合、該応答信号に対応する前記送信信号の特性と初期特性とを用いて前記無線通信デバイスの周辺における水分の有無を判定する判定部と、
を備え、
前記制御部は、
前記送信信号の特性を前記初期特性から順次変化させて前記通信部に繰り返し送信させ
、
前記判定部は、
前記変調した応答信号に含まれる少なくとも1つの信号成分の周波数をさらに用いて判定を行う、
水分検知装置。
【請求項2】
前記送信信号の特性が送信信号の強度であり、
前記制御部は、
前記無線通信デバイスから前記応答信号を受信するまで、前記送信信号の強度を初期強度から順次変化させて前記通信部に繰り返し送信させる請求項1に記載の水分検知装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記応答信号の強度をさらに用いて判定を行う請求項2に記載の水分検知装置。
【請求項4】
前記応答信号に含まれる少なくとも1つの信号成分の周波数が、前記無線通信デバイスが備える発振回路を基にした発振周波数である請求項
1に記載の水分検知装置。
【請求項5】
周辺に水分が存在する環境下で特性が変化する無線通信デバイスに対して応答を促す信号である送信信号を通信部に送信させる制御部と、
前記無線通信デバイスからの応答信号を受信した場合、該応答信号に対応する前記送信信号の特性と初期特性とを用いて前記無線通信デバイスの周辺における水分の有無を判定する判定部と、
を備え、
前記送信信号の特性が送信信号の強度であり、
前記制御部は、
前記無線通信デバイスから前記応答信号を受信するまで、前記送信信号の強度を初期強度から順次変化させて前記通信部に繰り返し送信させ、
前記判定部は、
前記無線通信デバイスに対して水分ありと判定した履歴がある場合において、前記制御部が前記送信信号を前記通信部に送信させたとき、水分ありと判定した際の前記送信信号の強度と最新の前記応答信号の強度とを用いて前記無線通信デバイスの周辺の水分の増加の有無を判定する
、
水分検知装置。
【請求項6】
前記制御部は、
同じ対象体に設けられた複数の前記無線通信デバイスに対して、全ての前記無線通信デバイスからの応答を検出するまで、前記送信信号の特性を前記初期特性から順次変化させて前記通信部に繰り返し送信させ、
前記判定部は、
全ての前記無線通信デバイスからの応答を受信した場合、少なくとも1つの無線通信デバイスの周辺における水分の有無を判定する請求項1に記載の水分検知装置。
【請求項7】
周辺に水分が存在する環境下で特性が変化する無線通信デバイスに対して応答を促す信号である送信信号を通信部に送信させる制御部と、
前記無線通信デバイスからの応答信号を受信した場合、該応答信号に対応する前記送信信号の特性と初期特性とを用いて前記無線通信デバイスの周辺における水分の有無を判定する判定部と、
を備え、
前記送信信号の特性が送信信号の周波数であり、
前記制御部は、
前記無線通信デバイスから前記応答信号を受信するまで、前記送信信号の周波数を初期周波数から順次変化させて前記通信部に繰り返し送信させ、
前記送信信号の周波数を初期周波数からの増加および減少の一方を所定回数継続しても前記応答信号を受信しない場合、前記初期周波数からの変化の向きを逆にして、無線通信デバイスから前記応答信号を受信するまで、前記送信信号の周波数を前記初期周波数から順次変化させて前記通信部に繰り返し送信させる
、
水分検知装置。
【請求項8】
周辺に水分が存在する環境下で特性が変化する無線通信デバイスに対して応答を促す信号である送信信号を通信部に送信させる制御部と、
前記無線通信デバイスからの応答信号を受信した場合、該応答信号に対応する前記送信信号の特性と初期特性とを用いて前記無線通信デバイスの周辺における水分の有無を判定する判定部と、
を備え、
前記送信信号の特性が送信信号の周波数であり、
前記制御部は、
前記無線通信デバイスから前記応答信号を受信するまで、前記送信信号の周波数を初期周波数から順次変化させて前記通信部に繰り返し送信させ、
前記判定部は、
前記無線通信デバイスに対して水分ありと判定した履歴がある場合において、前記制御部が前記送信信号を前記通信部に送信させたとき、水分ありと判定した際の前記送信信号の周波数と最新の前記応答信号に含まれる少なくとも1つの信号成分の周波数をさらに用いて前記無線通信デバイスの周辺の水分の増加の有無を判定する
、
水分検知装置。
【請求項9】
前記応答信号に含まれる少なくとも1つの信号成分の周波数が、前記無線通信デバイスが備える発振回路を基にした発振周波数である請求項
8に記載の水分検知装置。
【請求項10】
前記判定部は、
前記無線通信デバイスに対して前記制御部が前記送信信号を前記通信部に送信させた際に前記応答信号の強度が最大となる周波数を、前記無線通信デバイスが乾燥状態にある場合に前記応答信号の強度が最大となる周波数と比較することにより、前記無線通信デバイスの周辺の水分の有無を判定する請求項1に記載の水分検知装置。
【請求項11】
前記通信部を備える請求項1に記載の水分検知装置。
【請求項12】
前記通信部を備える送受信装置と通信可能である請求項1に記載の水分検知装置。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の水分検知装置と、
前記無線通信デバイスを有する対象体と、
を備える水分検知システム。
【請求項14】
前記対象体は、
前記水分を吸収して保持する吸水材と、防水機能を有し、前記吸水材を外装する防水材と、を備え、人体に装着されて該人体により排出された水分を吸収可能なおむつであり、
前記無線通信デバイスは、
前記防水材の面のうち吸収材に対向する面とは異なる面上に位置する請求項
13に記載の水分検知システム。
【請求項15】
前記対象体は、
複数の前記無線通信デバイスを有し、
少なくとも一つの前記無線通信デバイスは、前記対象体が水分を吸収した状態において乾燥状態を維持する可能性が高い場所に位置する請求項
14に記載の水分検知システム。
【請求項16】
周辺に水分が存在する環境下で特性が変化する無線通信デバイスに対して応答を促す信号である送信信号を通信部に送信させる制御ステップと、
前記無線通信デバイスから
前記無線通信デバイスの回路部において前記送信信号の搬送波を変調した応答信号を受信した場合、該応答信号に対応する前記送信信号の特性と初期特性とを用いて前記無線通信デバイスの周辺における水分の有無を判定する判定ステップと、
を
含み、
前記制御ステップは、
前記送信信号の特性を前記初期特性から順次変化させて前記通信部に繰り返し送信させ
、
前記判定ステップは、
前記変調した応答信号に含まれる少なくとも1つの信号成分の周波数をさらに用いて判定を行う、
水分検知方法。
【請求項17】
周辺に水分が存在する環境下で特性が変化する無線通信デバイスに対して応答を促す信号である送信信号を通信部に送信させる制御ステップと、
前記無線通信デバイスから
前記無線通信デバイスの回路部において前記送信信号の搬送波を変調した応答信号を受信した場合、該応答信号に対応する前記送信信号の特性と初期特性とを用いて前記無線通信デバイスの周辺における水分の有無を判定する判定ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記制御ステップは、
前記送信信号の特性を前記初期特性から順次変化させて前記通信部に繰り返し送信させ
、
前記判定ステップは、
前記変調した応答信号に含まれる少なくとも1つの信号成分の周波数をさらに用いて判定を行う、
水分検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分検知装置、水分検知システム、水分検知方法および水分検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
おむつ等の対象体における水分の存在を検知する技術として、対象体に設けられたRFICデバイスと、RFICリーダとの間の通信の成否に基づいて、RFICデバイスの周辺における水分の有無を検知する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術では、通信できない理由が水分によるものか、あるいはRFICデバイスの故障によるものかを区別することができなかった。このため、対象体における水分の存在をより正確に検知することができる技術が待望されていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、対象体における水分の存在を正確に検知することができる水分検知装置、水分検知システム、水分検知方法および水分検知プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る発明は、周辺に水分が存在する環境下で特性が変化する無線通信デバイスに対して応答を促す信号である送信信号を通信部に送信させる制御部と、前記無線通信デバイスからの応答信号を受信した場合、該応答信号に対応する前記送信信号の特性と初期特性とを用いて前記無線通信デバイスの周辺における水分の有無を判定する判定部と、を備え、前記制御部は、前記送信信号の特性を前記初期特性から順次変化させて前記通信部に繰り返し送信させる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記送信信号の特性が送信信号の強度であり、前記制御部は、前記無線通信デバイスから前記応答信号を受信するまで、前記送信信号の強度を初期強度から順次変化させて前記通信部に繰り返し送信させる。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記判定部は、前記応答信号の強度をさらに用いて判定を行う。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記判定部は、前記応答信号に含まれる少なくとも1つの信号成分の周波数をさらに用いて判定を行う。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、前記応答信号に含まれる少なくとも1つの信号成分の周波数が、前記無線通信デバイスが備える発振回路を基にした発振周波数である。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記判定部は、前記無線通信デバイスに対して水分ありと判定した履歴がある場合において、前記制御部が前記送信信号を前記通信部に送信させたとき、水分ありと判定した際の前記送信信号の強度と最新の前記応答信号の強度とを用いて前記無線通信デバイスの周辺の水分の増加の有無を判定する。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記制御部は、同じ対象体に設けられた複数の前記無線通信デバイスに対して、全ての前記無線通信デバイスからの応答を検出するまで、前記送信信号の特性を初期特性から順次変化させて前記通信部に繰り返し送信させ、前記判定部は、全ての前記無線通信デバイスからの応答を受信した場合、少なくとも1つの無線通信デバイスの周辺における水分の有無を判定する。
【0013】
請求項8に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記送信信号の特性が送信信号の周波数であり、前記制御部は、前記無線通信デバイスから前記応答信号を受信するまで、前記送信信号の周波数を初期周波数から順次変化させて前記通信部に繰り返し送信させる。
【0014】
請求項9に係る発明は、請求項8に係る発明において、前記制御部は、前記送信信号の周波数を初期周波数からの増加および減少の一方を所定回数継続しても前記応答信号を受信しない場合、前記初期周波数からの変化の向きを逆にして、無線通信デバイスから前記応答信号を受信するまで、前記送信信号の周波数を前記初期周波数から順次変化させて前記通信部に繰り返し送信させる。
【0015】
請求項10に係る発明は、請求項8に係る発明において、前記判定部は、前記無線通信デバイスに対して水分ありと判定し8履歴がある場合において、前記制御部が前記送信信号を前記通信部に送信させたとき、水分ありと判定した際の前記送信信号の周波数と最新の前記応答信号に含まれる少なくとも1つの信号成分の周波数をさらに用いて前記無線通信デバイスの周辺の水分の増加の有無を判定する。
【0016】
請求項11に係る発明は、請求項10に係る発明において、前記応答信号に含まれる少なくとも1つの信号成分の周波数が、前記無線通信デバイスが備える発振回路を基にした発振周波数である。
【0017】
請求項12に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記判定部は、前記無線通信デバイスに対して前記制御部が前記送信信号を前記通信部に送信させた際に前記応答信号の強度が最大となる周波数を、前記無線通信デバイスが乾燥状態にある場合に前記応答信号の強度が最大となる周波数と比較することにより、前記無線通信デバイスの周辺の水分の有無を判定する。
【0018】
請求項13に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記通信部を備える。
【0019】
請求項14に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記通信部を備える送受信装置と通信可能である。
【0020】
請求項15に係る発明は、請求項1~14のいずれか一項に記載の水分検知装置と、前記無線通信デバイスを有する対象体と、を備える。
【0021】
請求項16に係る発明は、請求項15に係る発明において、前記対象体は、前記水分を吸収して保持する吸水材と、防水機能を有し、前記吸水材を外装する防水材と、を備え、人体に装着されて該人体により排出された水分を吸収可能なおむつであり、前記無線通信デバイスは、前記防水材の面のうち吸収材に対向する面とは異なる面上に位置する。
【0022】
請求項17に係る発明は、請求項16に係る発明において、前記対象体は、複数の前記無線通信デバイスを有し、少なくとも一つの前記無線通信デバイスは、前記対象体が水分を吸収した状態において乾燥状態を維持する可能性が高い場所に位置する。
【0023】
請求項18に係る発明は、周辺に水分が存在する環境下で特性が変化する無線通信デバイスに対して応答を促す信号である送信信号を通信部に送信させる制御ステップと、前記無線通信デバイスからの応答信号を受信した場合、該応答信号に対応する前記送信信号の特性と初期特性とを用いて前記無線通信デバイスの周辺における水分の有無を判定する判定ステップと、を備え、前記制御ステップは、前記送信信号の特性を前記初期特性から順次変化させて前記通信部に繰り返し送信させる。
【0024】
請求項19に係る発明は、周辺に水分が存在する環境下で特性が変化する無線通信デバイスに対して応答を促す信号である送信信号を通信部に送信させる制御ステップと、前記無線通信デバイスからの応答信号を受信した場合、該応答信号に対応する前記送信信号の特性と初期特性とを用いて前記無線通信デバイスの周辺における水分の有無を判定する判定ステップと、をコンピュータに実行させ、前記制御ステップは、前記送信信号の特性を前記初期特性から順次変化させて前記通信部に繰り返し送信させる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、対象体における水分の存在を正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る水分検知システムを模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る水分検知システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、対象体であるおむつの要部の構成を模式的に示す部分断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る水分検知装置が送信する送信信号の初期強度を決定する処理の概要を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係る水分検知装置が行う水分検知処理の概要を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施の形態1の変形例に係る水分検知処理の概要を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施の形態2に係る水分検知装置が行う水分検知処理の概要を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施の形態2の変形例における無線通信デバイスの構成を示す図である。
【
図9】
図9は、実施の形態2の変形例に係る水分検知処理の概要を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施の形態3に係る水分検知システムを模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、実施の形態3に係る水分検知装置が行う水分検知処理の概要を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、実施の形態3の変形例1に係る水分検知装置が行う水分検知処理の概要を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施の形態3の変形例2に係る水分検知装置が行う水分検知処理の概要を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、実施の形態4に係る水分検知システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図15】
図15は、実施の形態5に係る水分検知装置が送信する送信信号の初期周波数を決定する処理の概要を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、実施の形態5に係る水分検知装置が行う水分検知処理の概要を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、実施の形態5の変形例に係る水分検知処理の概要を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、実施の形態6に係る水分検知装置が行う水分検知処理の概要を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、実施の形態7に係る水分検知装置が乾燥状態にある無線通信デバイスからの応答信号の強度が最大となる周波数を決定する処理の概要を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、実施の形態7に係る水分検知装置が行う水分検知処理の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る水分検知システムを模式的に示す図である。同図に示す水分検知システム1は、所定の周波数帯域の信号を無線で送受信する水分検知装置2と、水分検知装置2と非接触の通信(無線通信)が可能な無線通信デバイス3が設けられており、人体に装着されて排尿時の水分を吸収可能なおむつ4とを備える。
【0029】
図2は、水分検知システム1の構成を示すブロック図である。以下、
図2を参照して水分検知装置2と無線通信デバイス3の機能構成を説明する。
【0030】
水分検知装置2は、入力部21と、通信部22と、判定部23と、報知部24と、制御部25と、記憶部26とを備える。
【0031】
入力部21は、送信信号の強度の指示信号を含む各種信号の入力を受け付けるユーザーインターフェースである。
【0032】
通信部22は、所定の周波数帯域の信号(搬送波)を送信し、その信号に対する応答信号を受信する。応答信号には、無線通信デバイス3に固有の情報が含まれる。以下、無線通信デバイス3に応答を促す信号を送信信号という。
【0033】
判定部23は、通信部22が送信した送信信号および無線通信デバイスから受信した応答信号をもとに無線通信デバイス3の周囲の水分の有無、換言すればおむつ4が水分を吸収しているか否かを判定する。なお、判定部23は無線通信デバイス3の固有の情報の判定を行ってもよい。
【0034】
報知部24は、判定部23の判定結果を報知する。報知部24は、例えば光を発生するランプ、音を発生するスピーカ、表示機能を有する液晶等のディスプレイ、振動を発生するバイブレータの少なくともいずれか一つを用いて構成される。換言すれば、報知部24は、ユーザが視覚、聴覚または触覚によって判定結果を知覚できる機能を有していればよい。
【0035】
制御部25は、水分検知装置2の動作を統括して制御する。制御部25は、通信部22における送信信号の強度を制御する。また、制御部25は、判定部23の判定結果に基づいて報知部24の動作を制御する。
【0036】
記憶部26は、各種情報を記憶する。記憶部26は、送信信号の強度と応答信号の受信の有無を関連付けて記憶する。また、記憶部26は、実施の形態1に係る水分検知プログラムを含み、水分検知装置の動作に必要なプログラムを記憶する。なお、水分検知プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。
【0037】
以上の機能構成を有する水分検知装置2は、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のハードウェアを用いて構成される。このような水分検知装置2は、例えばリーダライタのように無線通信デバイス3との通信専用の端末でもよいし、スマートフォン等の汎用の携帯端末でもよい。
【0038】
無線通信デバイス3は、回路部31と、回路部31に接続されるアンテナ32とを備える。無線通信デバイス3は、水分検知装置2によって送信された信号(搬送波)を受信し、この信号をエネルギー源として、無線通信デバイス3に固有の情報を加えた信号(反射波)を返信する。
【0039】
アンテナ32は、回路部31に接続されており、水分検知装置2との間で信号の送受信を行う。アンテナ32は、ダイポールアンテナやループアンテナ等でもよい。
【0040】
アンテナ32の周囲の水分量が変化するとアンテナ32周囲の誘電率が変化し、アンテナ32の共振周波数が変化する。その結果、水分検知装置2からの送信信号の受信効率が変化し、より高い送信信号強度でないと無線通信デバイス3が動作しなかったり、又はより低い送信信号強度でも無線通信デバイス3が動作したりする。さらに、無線通信デバイス3が動作した場合でも、乾燥時とは応答信号の強度が変化したりする。
【0041】
以上の構成を有する無線通信デバイス3は、例えばパッシブ型のRFID(Radio Frequency Identifier)タグである。この場合、水分検知装置2の通信部22が送信する送信信号は、例えばUHF帯(860~960MHz)またはマイクロ波帯(2.45GHz)の周波数を有する電波である。
【0042】
図3は、対象体であるおむつ4の要部の構成を模式的に示す部分断面図である。おむつ4は、不織布等を用いて構成され、人の肌が直接接触する表面材41と、高吸水性高分子等を用いて構成され、表面材41を通過した水分を吸収して保持する吸水材42と、防水性を有するシート状の材料からなり、吸水材42の表面のうちおむつ4の外表面側の外装体をなす防水材43とを有する。防水材43の外側には、無線通信デバイス3が設けられている。無線通信デバイス3の設置位置は、排尿によって吸水材42が水分を吸収しやすい位置の周辺、換言すれば、人がおむつ4を装着して排尿したときに尿があたる可能性が高い領域内の周辺であり、おむつ4が吸収した水分と直接接触しない位置である。例えば、おむつ4の着用者が女性である場合、無線通信デバイス3がおむつ4の後側(着用者の背中が当たる側)に位置していた方が水分を検知しやすい。一方、おむつ4の着用者が男性である場合、無線通信デバイス3がおむつ4の前側(着用者の腹が当たる側)に位置していた方が水分を検知しやすい。このように、無線通信デバイス3の配置位置は、着用者の性別に応じて変更してもよく、さらに排尿の位置は個人差があるため着用者に応じて適切な位置に配置してもよい。
【0043】
以上の構成を有するおむつ4を装着した人が排尿等によって水分を体外に放出すると、吸水材42がその水分を吸収する。これにより、吸水材42の周囲に設定された無線通信デバイス3のアンテナ32の周囲の誘電率が変化してアンテナ32の共振周波数が変化する。その結果、水分検知装置2からの送信信号の受信効率が変化し、より高い送信信号強度でないと無線通信デバイス3が動作しなかったり、又はより低い送信信号強度でも無線通信デバイス3が動作したりする。さらに、無線通信デバイス3が動作した場合でも、乾燥時とは応答信号の強度が変化したりする。
【0044】
以上の構成を有する水分検知システム1の利用シーンとして、例えば、水分検知装置2が介護者の携帯端末に組み込まれており、介護者が介護利用者の状態を夜間などに見回る際に無線通信デバイス3を読み取り、水分検知を行う利用シーンを挙げることができる。
【0045】
つぎに、水分検知システム1の動作を説明する。まず、
図4のフローチャートを参照して、水分検知装置2が送信する送信信号の初期強度を決定する処理の概要を説明する。
【0046】
まず、制御部25は、通信部22に対し、所定の強度を有する送信信号を無線通信デバイス3に送信させる(ステップS1)。この初期値として、制御部25が記憶部26に記憶されている値を参照して設定してもよいし、入力部21が設定入力を受け付けた値を用いてもよい。
【0047】
その後、通信部22が無線通信デバイス3から応答信号を受信した場合(ステップS2:Yes)、制御部25はステップS1で送信した送信信号の強度を初期強度と設定して記憶部26に記憶させる(ステップS3)。
【0048】
一方、通信部22が無線通信デバイス3からの応答信号を受信しない場合(ステップS2:No)、制御部25は、送信信号の強度を増加させる設定を行い(ステップS4)、通信部22に強度が増加した送信信号を送信させる(ステップS5)。この後、水分検知装置2はステップS2に戻り、無線通信デバイス3から応答信号を受信するまで、ステップS4の設定処理とステップS5の送信処理を繰り返す。なお、ステップS4における強度の増加量は、増加の繰り返しの回数によらず一定としてもよいし、増加の繰り返しの回数ごとに変化させてもよい。
【0049】
以上説明した初期強度決定処理は、水分検知装置2のユーザが初期強度を決定する際に行ってもよいし、水分検知装置2の製造者が水分検知装置2を出荷する前に行ってもよい。
【0050】
つぎに、
図5のフローチャートを参照して、水分検知装置2が行う水分検知処理の概要を説明する。まず、制御部25は、通信部22に対し、初期強度を有する送信信号を無線通信デバイス3に送信させる(ステップS11)。
【0051】
その後、通信部22が無線通信デバイス3から応答信号を受信した場合(ステップS12:Yes)、制御部25は、直前に送信した送信信号の強度を応答可能な送信信号の強度として決定し、記憶部26に記憶させる(ステップS13)。
【0052】
続いて、判定部23は、無線通信デバイス3が応答可能な送信信号の強度(以下、「応答可能強度」ともいう)を初期強度と比較する(ステップS14)。比較の結果、両者が異なる場合(ステップS14:No)、判定部23は水分ありと判定する(ステップS15)。なお、ステップS14において、判定部23は、初期強度と応答可能強度の差が所定の範囲内であれば「等しい」と判定するようにしてもよい。
【0053】
ステップS14における比較の結果、初期強度と応答可能強度が等しい場合(ステップS14:Yes)、判定部23は水分なしと判定する(ステップS16)。
【0054】
ステップS15またはS16の後、制御部25は、報知部24に判定部23の判定結果を報知させる(ステップS17)。この後、水分検知装置2は一連の処理を終了する。なお、判定部23が水分なしと判定した場合には、報知部24が報知しないようにしてもよい。
【0055】
ステップS12において、通信部22が応答信号を受信しない場合(ステップS12:No)、制御部25は、送信信号の強度を増加させる設定を行い(ステップS18)、通信部22に強度が増加した送信信号を送信させる(ステップS19)。この後、水分検知装置2はステップS12に戻り、無線通信デバイス3から応答信号を受信するまで、ステップS18の設定処理とステップS19の送信処理を繰り返す。なお、ステップS18においても、強度の増加量は、増加の繰り返しの回数によらず一定としてもよいし、増加の繰り返しの回数ごとに変化させてもよい。また、ステップS18において、制御部25が送信信号の強度を減少させるように設定し、ステップS19において、制御部25が通信部22に強度が減少した送信信号を送信させるようにしてもよい。この場合にも、強度の減少量を減少の繰り返しの回数によらず一定としてもよいし、減少の繰り返しの回数ごとに変化させてもよい。
【0056】
以上説明した実施の形態1によれば、無線通信デバイスから応答信号を受信するまで、送信信号の強度を初期強度から順次変化させて繰り返し無線通信デバイスへ送信し、応答信号を受信した状況で無線通信デバイスの周辺における水分の有無を判定するため、対象体における水分の存在を正確に検知することができる。
【0057】
また、実施の形態1によれば、応答信号を受信した時点で水分の有無を判定するため、応答信号を受信しないことによって水分を検知する場合に起こりうる、水分検知装置2のユーザの操作ミスや無線通信デバイスの故障等に起因した誤認識を防止することができる。
【0058】
(変形例)
図6は、実施の形態1の変形例に係る水分検知処理の概要を示すフローチャートである。本変形例において、水分検知装置2は、上述した水分検知処理を行った結果、水分ありと判定された場合、その判定履歴を応答可能信号の強度とともに記憶部26に記憶させておき、時間が経過してから再度水分検知処理を行って水分が増加したか否かを判定する。
【0059】
まず、制御部25は、記憶部26を参照して、水分ありの判定履歴があるか否かを判定する(ステップS21)。水分ありの判定履歴がある場合(ステップS21:Yes)、制御部25は、通信部22に対し、記憶部26が記憶する応答可能強度を有する送信信号を無線通信デバイス3に送信させる(ステップS22)。なお、水分ありの判定履歴がない場合(ステップS21:No)、水分検知装置2は、
図5に示す水分検知処理を実行する。
【0060】
その後、通信部22が無線通信デバイス3から応答信号を受信した場合(ステップS23:Yes)、制御部25は、直前に送信した送信信号の強度を第2応答可能強度として決定し、記憶部26に記憶させる(ステップS24)。
【0061】
続いて、判定部23は、第2応答可能強度を初期強度と比較する(ステップS25)。比較の結果、両者が異なる場合(ステップS25:No)、判定部23は水分増加ありと判定する(ステップS26)。
【0062】
ステップS25における比較の結果、応答可能強度と第2応答可能強度が等しい場合(ステップS25:Yes)、判定部23は水分増加なしと判定する(ステップS27)。
【0063】
ステップS26またはS27の後、制御部25は、報知部24に判定部23の判定結果を報知させる(ステップS28)。この後、水分検知装置2は一連の処理を終了する。なお、判定部23が水分なしと判定した場合には、報知部24が報知しないようにしてもよい。
【0064】
ステップS23において、通信部22が応答信号を受信しない場合(ステップS23:No)、制御部25は、送信信号の強度を増加させる設定を行い(ステップS29)、通信部22に強度が増加した送信信号を送信させる(ステップS30)。この後、水分検知装置2はステップS23に戻り、無線通信デバイス3から応答信号を受信するまで、ステップS29の設定処理とステップS30の送信処理を繰り返す。なお、ステップS29においても、強度の増加量は、増加の繰り返しの回数によらず一定としてもよいし、増加の繰り返しの回数ごとに変化させてもよい。また、ステップS29において、制御部25が送信信号の強度を減少させるように設定し、ステップS30において、制御部25が通信部22に強度が減少した送信信号を送信させるようにしてもよい。この場合にも、強度の減少量を減少の繰り返しの回数によらず一定としてもよいし、減少の繰り返しの回数ごとに変化させてもよい。
【0065】
なお、本変形例の処理を繰り返し行ってもよい。その場合には、例えば水分の増加を検知した回数が閾値を超えた場合に報知部24が報知するようにしてもよい。
【0066】
以上説明した変形例によれば、おむつに含まれる水分の時間変化を把握することができる。また、処理を繰り返すことによってより正確な水分検知を行うことができる。
【0067】
(実施の形態2)
図7は、実施の形態2に係る水分検知装置が行う水分検知処理の概要を示すフローチャートである。実施の形態2に係る水分検知装置の構成は、実施の形態1で説明した水分検知装置2の構成と同様である。このため、以下の説明では、実施の形態1と同じ符号を用いて説明する。
【0068】
まず、制御部25は、記憶部26を参照して、水分ありの判定履歴の有無を確認する(ステップS41)。判定履歴がない場合(ステップS41:No)、制御部25は、通信部22に対し、初期強度を有する送信信号を無線通信デバイス3に送信させる(ステップS42)。一方、判定履歴がある場合(ステップS41:Yes)、制御部25は、通信部22に対し、記憶部26から読み出した応答可能強度を有する送信信号を無線通信デバイス3に送信させる(ステップS43)。
【0069】
ステップS42またはS43の後、通信部22が無線通信デバイス3から応答信号を受信した場合(ステップS44)、制御部25は、応答信号の強度を記憶部26に記憶させる(ステップS45)。
【0070】
続いて、制御部25は、再び水分ありの判定履歴の有無を確認し、判定履歴がない場合(ステップS46:No)、直前に送信した送信信号の強度を応答可能な送信信号の強度(応答可能強度)として決定し、記憶部26に記憶させる(ステップS47)。ステップS47の後のステップS48~S51の処理は、
図4を参照して説明したステップS14~S17の処理に順次対応している。
【0071】
ステップS46において判定履歴がある場合(ステップS46:Yes)、制御部25は、直前に送信した送信信号の強度を第2応答可能強度として決定し、記憶部26に記憶させる(ステップS52)。
【0072】
続いて、判定部23は、第2応答可能強度を初期強度と比較する(ステップS53)。比較の結果、両者が異なる場合(ステップS53:No)、判定部23は水分増加ありと判定する(ステップS54)。
【0073】
ステップS53における比較の結果、応答可能強度と第2応答可能強度が等しい場合(ステップS53:Yes)、判定部23は、無線通信デバイス3からの応答信号の強度が変化したか否かを判定する(ステップS55)。ここでいう応答信号の強度の変化は、水分ありと判定したときに受信した応答信号の強度と、その後に受信した応答信号の強度との比較に基づいて求められる。なお、応答信号の強度の変化量の絶対値が閾値以上である場合を「変化あり」と定義してもよい。
【0074】
応答信号の強度が変化した場合(ステップS55:Yes)、判定部23は水分増加ありと判定する(ステップS54)。一方、応答信号の強度が変化していない場合(ステップS55:No)、判定部23は水分増加なしと判定する(ステップS56)。
【0075】
ステップS54またはS56に続いて、制御部25は、報知部24に水分増加の有無に関する判定結果を報知させる(ステップS51)。この後、水分検知装置2は一連の処理を終了する。なお、判定部23が水分なしと判定した場合には、報知部24が報知しないようにしてもよい。
【0076】
ステップS44において、通信部22が応答信号を受信しない場合(ステップS44:No)、制御部25は、送信信号の強度を増加させる設定を行い(ステップS57)、通信部22に強度が増加した送信信号を送信させる(ステップS58)。この後、水分検知装置2はステップS44に戻り、無線通信デバイス3から応答信号を受信するまで、ステップS57の設定処理とステップS58の送信処理を繰り返す。なお、ステップS57においても、強度の増加量は、増加の繰り返しの回数によらず一定としてもよいし、増加の繰り返しの回数ごとに変化させてもよい。また、ステップS57において、制御部25が送信信号の強度を減少させるように設定し、ステップS58において、制御部25が通信部22に強度が減少した送信信号を送信させるようにしてもよい。この場合にも、強度の減少量を減少の繰り返しの回数によらず一定としてもよいし、減少の繰り返しの回数ごとに変化させてもよい。
【0077】
以上説明した実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、対象体における水分の存在を正確に検知することができる。
【0078】
また、実施の形態2によれば、2回の水分検知処理で応答可能強度に変化がない場合であっても、応答信号の強度に変化があれば水分が増加したと判定するため、さらに精度よく水分の存在を検知することができる。
【0079】
(変形例)
上述した実施の形態2では、応答可能信号が変化していない場合、判定部23が応答信号の強度変化を分析することによって水分増加の有無を検出していたが、判定部23が応答信号に含まれる少なくとも1つの信号成分の周波数変化を分析することによって水分増加の有無を判定してもよい。
【0080】
図8は、実施の形態2の変形例における無線通信デバイスの構成を示す図である。同図に示す無線通信デバイス3Aの回路部31Aは、所定の発振周波数を有する発振回路33と、発振回路33に接続される容量34とを有する。回路部31Aでは、周囲の水分量が変化すると容量34の容量値が変化し、発振回路33の発振周波数が変化する。
【0081】
無線通信デバイス3Aは、送信信号の搬送波を、発振周波数を基に生成した信号によって変調した応答信号を水分検知装置2に送信する。変調方式には特に限定されるものではなく、例えば、振幅偏移変調(ASK)、周波数偏移変調(FSK)、位相偏移変調(PSK)などが挙げられる。この変調の周期が発振回路33の発振周波数によって変化するため、応答信号から水分の有無を検知することができる。
【0082】
なお、判定部23は、発振周波数の周波数以外に搬送波に重畳する信号成分の周波数変化を用いて判定を行ってもよい。
【0083】
また、発振回路33としては例えばリングオシレータ回路が挙げられるが、これに限定されるわけではない。また、容量34の構造としてはコンデンサーが挙げられる。おむつ4に無線通信デバイス3Aが装着される場合、無線通信デバイス3Aは前記コンデンサー用の電極を少なくとも1つ有し、電極近傍の防水材/及び吸水材がコンデンサーの容量部となる。
【0084】
図9は、実施の形態2の変形例に係る水分検知装置が行う水分検知処理の概要を示すフローチャートである。
図9に示すように、上述したステップS45に代えて、制御部25は、無線通信デバイス3Aからの応答信号の発振周波数を記憶部26に記憶させる(ステップS45A)。
【0085】
また、上述したステップS55に代えて、判定部23は、無線通信デバイス3Aからの応答信号の発振周波数が変化したか否かを判定する(ステップS55A)。応答信号の発振周波数が変化した場合(ステップS55A:Yes)、判定部23は水分増加ありと判定する(ステップS54)。一方、応答信号の発振周波数が変化していない場合(ステップS55A:No)、判定部23は水分増加なしと判定する(ステップS56)。
【0086】
以上説明したステップS45A、55A以外の処理は、
図7のフローチャートを参照して上述した処理(ステップS41~S58)と同様である。
【0087】
以上説明した実施の形態2の変形例は、強度変化よりも水分量の変化に敏感である発振回路の発振周波数の変化を用いて水分増加の有無を検出するため、さらに精度よく水分の存在を検知することができる。
【0088】
(実施の形態3)
図10は、実施の形態3に係る水分検知システムを模式的に示す図である。同図に示す水分検知システム5は、所定の周波数帯域の信号を無線で送受信する水分検知装置2と、水分検知装置2と非接触の通信(無線通信)が可能な2つの無線通信デバイス3a、3bが設けられており、人体に装着されて排尿時の水分を吸収可能なおむつ6とを備える。
【0089】
無線通信デバイス3a、3bは、上述した無線通信デバイス3と同様の機能構成を有する。無線通信デバイス3aは、人体からの水分を吸収しやすい位置の周辺(着用者の尿道出口の周辺)に設けられている。例えば、おむつ6の着用者が女性である場合、無線通信デバイス3aがおむつ6の後側(着用者の背中が当たる側)に位置していた方が水分を検知しやすい。一方、おむつ6の着用者が男性である場合、無線通信デバイス3aがおむつ6の前側(着用者の腹が当たる側)に位置していた方が水分を検知しやすい。このように、無線通信デバイス3aの配置位置は、着用者の性別に応じて変更してもよく、さらに排尿の位置は個人差があるため着用者に応じて適切な位置に配置してもよい。これに対して、無線通信デバイス3bは、おむつ6が人体からの水分を吸収しても乾燥状態を維持する可能性が高い位置に設けられている。
図8に示す場合、無線通信デバイス3bはおむつ6の前側(着用者の腹が当たる側)の上方に位置している。この位置はおむつ6の着用者が女性である場合に乾燥状態を維持する可能性が高い位置である。おむつ6の着用者が男性である場合には、無線通信デバイス3bをおむつ6の後側(着用者の背中が当たる側)の上方に配置した方が好ましい。このように、無線通信デバイス3bの配置位置は、着用者の性別に応じて変更してもよく、さらに排尿の位置は個人差があるため、着用者に応じて適切な位置に配置してもよい。また、無線通信デバイスの数は2つに限られるわけではなく、湿潤状態に変化する可能性が高い位置に複数の無線通信デバイスを設けてもよい。さらに、乾燥状態を維持する可能性が高い複数の位置にそれぞれ無線通信デバイスを設けてもよい。
【0090】
つぎに、
図11のフローチャートを参照して、水分検知装置2が行う水分検知処理の概要を説明する。まず、制御部25は、通信部22に対し、初期強度を有する送信信号を無線通信デバイス3a、3bに送信させる(ステップS61)。
【0091】
この後、通信部22が2つの無線通信デバイス3a、3bから応答信号を受信した場合(ステップS62:Yes)、制御部25は無線通信デバイス3a、3bにそれぞれ送信して最初に応答信号を受信したときの送信信号の強度を無線通信デバイス3a、3bの応答可能強度としてそれぞれ決定し、記憶部26に記憶させる(ステップS63)。
【0092】
続いて、判定部23は、無線通信デバイス3aの応答強度と無線通信デバイス3bの応答強度を比較する(ステップS64)。比較の結果、両者が異なる場合(ステップS64:No)、判定部23は水分ありと判定する(ステップS65)。一方、比較の結果、両者が同じである場合(ステップS64:Yes)、判定部23は水分なしと判定する(ステップS66)。
【0093】
ステップS65またはS66の後、制御部25は、報知部24に判定部23の判定結果を報知させる(ステップS67)。この後、水分検知装置2は一連の処理を終了する。
【0094】
ステップS62において、通信部22が応答信号を受信しない場合(ステップS62:No)、制御部25は、無線通信デバイス3a、3bへの送信信号の強度を増加させる設定を行い(ステップS68)、通信部22に強度が増加した送信信号を送信させる(ステップS69)。この後、水分検知装置2はステップS62に戻り、2つの無線通信デバイス3a、3bから応答信号を受信するまで、ステップS68の設定処理とステップS69の送信処理を繰り返す。なお、ステップS68においても、強度の増加量は、増加の繰り返しの回数によらず一定としてもよいし、増加の繰り返しの回数ごとに変化させてもよい。また、ステップS68において、制御部25が送信信号の強度を減少させるように設定し、ステップS69において、制御部25が通信部22に強度が減少した送信信号を送信させるようにしてもよい。この場合にも、強度の減少量を減少の繰り返しの回数によらず一定としてもよいし、減少の繰り返しの回数ごとに変化させてもよい。
【0095】
以上説明した実施の形態3によれば、実施の形態1と同様に、対象体における水分の存在を正確に検知することができる。
【0096】
また、実施の形態3によれば、対象体の中で乾燥状態を維持する可能性が高い場所にも無線通信デバイスを設置しているため、毎回の測定時に、乾燥状態の無線通信デバイスの応答強度をリファレンスとして取得できるとともに、毎回の測定時の姿勢や読み取り距離における乾燥状態での応答可能強度を取得できる。したがって、実施の形態3によれば、さらに精度よく水分の存在を検知することができる。
【0097】
(変形例1)
つぎに、
図12のフローチャートを参照して、実施の形態3の変形例1に係る水分検知装置2が行う水分検知処理の概要を説明する。まず、制御部25は、記憶部26を参照して、水分ありの判定履歴の有無を確認する(ステップS71)。判定履歴がない場合(ステップS71:No)、制御部25は、通信部22に対し、初期強度を有する送信信号を無線通信デバイス3a、3bに送信させる(ステップS72)。一方、判定履歴がある場合(ステップS61:Yes)、制御部25は、通信部22に対し、乾燥状態にある無線通信デバイス3bの応答可能強度を記憶部26から読み出して、その強度を有する送信信号を無線通信デバイス3a、3bに送信させる(ステップS73)。
【0098】
ステップS72またはS73の後、通信部22が2つの無線通信デバイス3a、3bから応答信号を受信した場合(ステップS74:Yes)、制御部25は、再び水分ありの判定履歴の有無を確認する(ステップS75)。ステップS75において判定履歴がない場合(ステップS75:No)に続けて行うステップS76~S80の処理は、上述したステップS63~S67の処理に順次対応している。
【0099】
ステップS75において判定履歴がある場合(ステップS75:Yes)、制御部25は、判定部23が水分ありの判定をした後、無線通信デバイス3a、3bにそれぞれ送信して最初に応答信号を受信したときの送信信号の強度を無線通信デバイス3a、3bの第2応答可能強度としてそれぞれ決定し、記憶部26に記憶させる(ステップS81)。
【0100】
続いて、判定部23は、湿潤状態にある無線通信デバイス3aにおける第2応答可能強度を、ステップS76で決定した応答可能強度と比較する(ステップS82)。比較の結果、両者が異なる場合(ステップS82:No)、判定部23は水分増加ありと判定する(ステップS83)。一方、比較の結果、両者が同じである場合(ステップS82:Yes)、判定部23は水分増加なしと判定する(ステップS84)。
【0101】
ステップS83またはS84に続いて、制御部25は、報知部24に水分増加の有無に関する判定結果を報知させる(ステップS80)。この後、水分検知装置2は一連の処理を終了する。なお、判定部23が水分増加なしと判定した場合には、報知部24が報知しないようにしてもよい。
【0102】
ステップS74において、通信部22が応答信号を受信しない場合(ステップS74:No)に続けて行うステップS85、S86の処理は、上述したステップS68、S69の処理にそれぞれ対応している。
【0103】
(変形例2)
実施の形態3の変形例2においては、無線通信デバイスが、実施の形態2で説明した無線通信デバイス3Aと同様の構成を有している。すなわち、本変形例2における無線通信デバイス3Aは、
図8に示すように、発振回路33および容量34を有する回路部31Aを備える。以下、このような構成を有する2つの無線通信デバイスを、無線通信デバイス3Aa、3Abという。
【0104】
図13は、実施の形態3の変形例2に係る水分検知装置が行う水分検知処理の概要を示すフローチャートである。
図13に示すフローチャートは、
図12に示すフローチャートにステップS87、S88が加わっている。以下、ステップS87、S88について説明する。
【0105】
ステップS87は、ステップS74において、通信部22が2つの無線通信デバイス3Aa、3Abから応答信号を受信した場合(ステップS74:Yes)に行われる処理である。具体的には、制御部25は、2つの無線通信デバイス3Aa、3Abからの応答信号の発振周波数を記憶部26に記憶させる(ステップS87)。この後、水分検知装置はステップS75へ移行する。
【0106】
ステップS88は、ステップS82において、湿潤状態にある無線通信デバイス3Aaにおける第2応答可能強度を、ステップS76で決定した応答可能強度と比較した結果、両者が同じである場合(ステップS82:Yes)に続けて行われる処理である。具体的には、判定部23は、湿潤状態にある無線通信デバイス3Aaからの応答信号の発振周波数が変化したか否かを判定する(ステップS88)。応答信号の発振周波数が変化した場合(ステップS88:Yes)、判定部23は水分増加ありと判定する(ステップS83)。一方、応答信号の発振周波数が変化していない場合(ステップS88:No)、判定部23は水分増加なしと判定する(ステップS84)。
【0107】
以上説明した実施の形態3の変形例2によれば、水分量の変化に敏感である発振回路の発振周波数の変化を用いて水分増加の有無を検出するため、さらに精度よく水分の存在を検知することができる。
【0108】
なお、変形例2において、判定部23が、発振回路の発振周波数の変化を用いる代わりに、応答信号の強度変化を用いて水分増加の有無を判定してもよい。
【0109】
(実施の形態4)
図14は、実施の形態4に係る水分検知システムの機能構成を示すブロック図である。同図に示す水分検知システム7は、水分検知装置8と、送受信装置9と、無線通信デバイス3を有するおむつ4とを備える。水分検知装置8と送受信装置9は、通信可能に接続されている。また、送受信装置9と無線通信デバイス3は、無線通信可能に接続されている。
【0110】
水分検知装置8は、入力部81と、通信部82と、判定部83と、報知部84と、制御部85と、記憶部86とを備える。入力部81、判定部83、報知部84の機能は、上述した入力部21、判定部23、報知部24とそれぞれ同様である。
【0111】
通信部82は、送受信装置9との間で信号の送受信を行う。具体的には、送受信装置9が送信する送信信号を制御する信号や、送受信装置9が無線通信デバイス3から受信した応答信号を受信する。水分検知装置と送受信装置9との間の通信は有線でも無線でもよく、インターネット等の通信ネットワークを介した通信でもよい。
【0112】
制御部85は、水分検知装置8の動作を統括して制御する。制御部85は、上述した制御部25と同様、通信部22における送信信号の強度を制御したり、判定部23の判定結果に基づいて報知部24の動作を制御したりする。
【0113】
記憶部86は、送信信号の強度と応答信号の受信の有無を関連付けて記憶する。また、記憶部86は、水分検知プログラムを含み水分検知装置の動作に必要なプログラムを記憶する。
【0114】
以上の機能構成を有する水分検知装置8は、CPU、FPGA、RAM、ROM等のハードウェアを用いて構成される。このような水分検知装置8は、例えばデスクトップ型またはノート型のパーソナルコンピュータ、またはタブレット端末等を用いて構成される。
【0115】
送受信装置9は、通信部91と、制御部92とを有する。通信部91は、水分検知装置8および無線通信デバイス3との間で情報の送受信を行う。通信部91は、水分検知装置8から送られてくる制御信号に基づいた制御部92の制御のもと、無線通信デバイス3に所定の強度の送信信号を送信する。また、通信部91は、無線通信デバイス3から送られてくる応答信号を受信する。
【0116】
制御部92は、送受信装置9の動作を統括して制御する。制御部92は、水分検知装置8からの制御信号に基づいて通信部91に送信信号を送信させる。また、制御部92は、通信部91が無線通信デバイス3から受信した応答信号を水分検知装置8に送信させる。なお、制御部92は、応答信号を解析して、その強度や周波数等の情報を通信部91から水分検知装置8に送信させるようにしてもよい。
【0117】
以上の機能構成を有する送受信装置9は、CPU、FPGA、RAM、ROM等のハードウェアを用いて構成される。このような送受信装置9は、例えばリーダライタのように無線通信デバイス3との通信専用の端末でもよいし、スマートフォン等の汎用の携帯端末でもよい。
【0118】
以上の機能構成を有する水分検知システム7においては、水分検知装置8が無線通信デバイス3と直接通信を行わず、送受信装置9と無線通信デバイス3との通信に基づいて水分検知を行う。この点を除く水分検知装置8の処理の概要は、実施の形態1で説明した処理の概要と同様である。また、水分検知システム7の利用シーンとして、例えば、水分検知装置8は介護者の事務所に設置される一方、送受信装置9は介護利用者の寝台の近辺や寝台自体に組み込まれており、介護者の事務所で、各介護利用者の排尿を検知する利用シーンが考えられる。
【0119】
なお、水分検知装置8が、実施の形態2と同様の処理を行うことができる。また、おむつ4に代えて2つの無線通信デバイス3a、3bを有するおむつ6を用いた場合、水分検知装置8は実施の形態3と同様の処理を行うことができる。
【0120】
また、送受信装置9は、入力部を備えてもよい。この場合には、例えば水分検知装置8からの制御信号に基づいて、ユーザが送受信装置9の入力部から送信信号の強度を設定入力するようにしてもよい。
【0121】
また、送受信装置9が報知部を備えてもよい。例えば介護施設のような場所でベッドに寝ている被介護者がおむつ4を着用している場合には、送受信装置9が報知部を備えていれば、迅速に水分検知結果を把握することができる。
【0122】
以上説明した実施の形態4によれば、実施の形態1と同様に、対象体における水分の存在を正確に検知することができる。
【0123】
また、実施の形態4によれば、対象体から離れた場所で水分検知を実行するため、水分検知システムを構成する際の自由度が増え、効率的な管理を行うことができる。
【0124】
なお、実施の形態4においても、実施の形態2、3で説明したのと同様の方法を取り入れてもよい。
【0125】
(実施の形態5)
図15は、実施の形態5に係る水分検知装置が送信する初期周波数を決定する処理の概要を示すフローチャートである。実施の形態5に係る水分検知装置の構成は、実施の形態1で説明した水分検知装置2の構成と同様である。このため、以下の説明では、実施の形態1と同じ符号を用いて説明する。
【0126】
まず、制御部25は、通信部22に対し、所定の周波数を有する送信信号を無線通信デバイス3に送信させる(ステップS101)。この周波数は、制御部25が記憶部26に記憶されている値を参照して設定してもよいし、入力部21が設定入力を受け付けた値を用いてもよい。
【0127】
その後、通信部22が無線通信デバイス3から応答信号を受信した場合(ステップS102:Yes)、制御部25はステップS101で送信した送信信号の周波数を初期周波数と設定して記憶部26に記憶させる(ステップS103)。
【0128】
一方、通信部22が無線通信デバイス3からの応答信号を受信しない場合(ステップS102:No)、制御部25は、送信信号の周波数を減少させる設定を行い(ステップS104)、通信部22に周波数が減少した送信信号を送信させる(ステップS105)。なお、ステップS104において、制御部25が送信信号の周波数を増加させるように設定し、ステップS105において、制御部25が通信部22に周波数が増加した送信信号を送信させるようにしてもよい。
【0129】
ステップS105の後、水分検知装置2はステップS102に戻り、無線通信デバイス3から応答信号を受信するまで、ステップS104の設定処理とステップS105の送信処理を繰り返す。なお、ステップS104における周波数の減少量は、減少の繰り返しの回数によらず一定としてもよいし、減少の繰り返しの回数ごとに変化させてもよい。また、ステップS104において制御部25が送信信号の周波数を増加させるように設定した場合には、周波数の増加量を増加の繰り返しの回数によらず一定としてもよいし、増加の繰り返しの回数ごとに変化させてもよい。
【0130】
以上説明した初期周波数決定処理は、水分検知装置2のユーザが初期周波数を決定する際に行ってもよいし、水分検知装置2の製造者が水分検知装置2を出荷する前に行ってもよい。
【0131】
つぎに、
図16のフローチャートを参照して、水分検知装置2が行う水分検知処理の概要を説明する。まず、制御部25は、通信部22に対し、初期周波数を有する送信信号を無線通信デバイス3に送信させる(ステップS111)。
【0132】
その後、通信部22が無線通信デバイス3から応答信号を受信した場合(ステップS112)、制御部25は、直前に送信した送信信号の周波数を応答可能な送信信号の周波数として決定し、記憶部26に記憶させる(ステップS113)。
【0133】
続いて、判定部23は、無線通信デバイス3が応答可能な送信信号の周波数(以下、「応答可能周波数」ともいう)を初期周波数と比較する(ステップS114)。比較の結果、両者が異なる場合(ステップS114:No)、判定部23は水分ありと判定する(ステップS115)。なお、ステップS114において、判定部23は、初期周波数と応答可能周波数の差が所定の範囲内であれば「等しい」と判定するようにしてもよい。
【0134】
ステップS114における比較の結果、初期周波数と応答可能周波数が等しい場合(ステップS114:Yes)、判定部23は水分なしと判定する(ステップS116)。
【0135】
ステップS115またはS116の後、制御部25は、報知部24に判定部23の判定結果を報知させる(ステップS117)。この後、水分検知装置2は一連の処理を終了する。なお、判定部23が水分なしと判定した場合には、報知部24が報知しないようにしてもよい。
【0136】
ステップS112において、通信部22が応答信号を受信しない場合(ステップS112:No)、制御部25は、送信信号の周波数を減少させる設定を行い(ステップS118)、通信部22に周波数が減少した送信信号を送信させる(ステップS119)。この後、水分検知装置2はステップS112に戻り、無線通信デバイス3から応答信号を受信するまで、ステップS118の設定処理とステップS119の送信処理を繰り返す。なお、周波数の減少量は、減少の繰り返しの回数によらず一定としてもよいし、減少の繰り返しの回数ごとに変化させてもよい。
【0137】
以上説明した実施の形態5によれば、無線通信デバイスから応答信号を受信するまで、送信信号の周波数を初期周波数から順次変化させて繰り返し無線通信デバイスへ送信し、応答信号を受信した状況で無線通信デバイスの周辺における水分の有無を判定するため、対象体における水分の存在を正確に検知することができる。
【0138】
また、実施の形態5によれば、実施の形態1と同様に、対象体における水分の存在を正確に検知することができる。
【0139】
また、実施の形態5によれば、無線通信デバイスからの応答信号を検知するまで送信信号の周波数を減少させるため、無線通信デバイスが水分を含むことによって生じる共振周波数の減少に合わせて応答信号を確実に受信することができる。
【0140】
(変形例)
図17は、実施の形態5の変形例に係る水分検知処理の概要を示すフローチャートである。本変形例において、水分検知装置2は、上述した水分検知処理を行った結果、水分ありと判定された場合、その判定履歴を応答可能信号の周波数とともに記憶部26に記憶させておき、時間が経過してから再度水分検知処理を行って水分が増加したか否かを判定する。
【0141】
まず、制御部25は、記憶部26を参照して、水分ありの判定履歴があるか否かを判定する(ステップS121)。水分ありの判定履歴がある場合(ステップS121:Yes)、制御部25は、通信部22に対し、記憶部26が記憶する応答可能周波数を有する送信信号を無線通信デバイス3に送信させる(ステップS122)。なお、水分ありの判定履歴がない場合(ステップS121:No)、水分検知装置2は、
図16に示す水分検知処理を実行する。
【0142】
その後、通信部22が無線通信デバイス3から応答信号を受信した場合(ステップS123:Yes)、制御部25は、直前に送信した送信信号の周波数を第2応答可能周波数として決定し、記憶部26に記憶させる(ステップS124)。
【0143】
続いて、判定部23は、第2応答可能周波数を初期周波数と比較する(ステップS125)。比較の結果、両者が異なる場合(ステップS125:No)、判定部23は水分増加ありと判定する(ステップS126)。
【0144】
ステップS125における比較の結果、応答可能周波数と第2応答可能周波数が等しい場合(ステップS125:Yes)、判定部23は水分増加なしと判定する(ステップS127)。
【0145】
ステップS126またはS127の後、制御部25は、報知部24に判定部23の判定結果を報知させる(ステップS128)。この後、水分検知装置2は一連の処理を終了する。なお、判定部23が水分なしと判定した場合には、報知部24が報知しないようにしてもよい。
【0146】
ステップS123において、通信部22が応答信号を受信しない場合(ステップS123:No)、制御部25は、送信信号の周波数を減少させる設定を行い(ステップS129)、通信部22に周波数が減少した送信信号を送信させる(ステップS30)。この後、水分検知装置2はステップS123に戻り、無線通信デバイス3から応答信号を受信するまで、ステップS129の設定処理とステップS30の送信処理を繰り返す。なお、ステップS129においても、周波数の減少量は、減少の繰り返しの回数によらず一定としてもよいし、減少の繰り返しの回数ごとに変化させてもよい。
【0147】
なお、本変形例の処理を繰り返し行ってもよい。その場合には、例えば水分の増加を検知した回数が閾値を超えた場合に報知部24が報知するようにしてもよい。
【0148】
以上説明した変形例によれば、おむつに含まれる水分の時間変化を把握することができる。また、処理を繰り返すことによってより正確な水分検知を行うことができる。
【0149】
(実施の形態6)
図18は、実施の形態6に係る水分検知装置が行う水分検知処理の概要を示すフローチャートである。実施の形態6に係る水分検知装置の構成は、実施の形態1で説明した水分検知装置2と同様である。また、無線通信デバイスの構成は、実施の形態2の変形例で説明した無線通信デバイス3Aと同様である。
【0150】
まず、制御部25は、記憶部26を参照して、水分ありの判定履歴の有無を確認する(ステップS141)。判定履歴がない場合(ステップS141:No)、制御部25は、通信部22に対し、初期周波数を有する送信信号を無線通信デバイス3に送信させる(ステップS142)。一方、判定履歴がある場合(ステップS141:Yes)、制御部25は、通信部22に対し、記憶部26から読み出した応答可能周波数を有する送信信号を無線通信デバイス3に送信させる(ステップS143)。
【0151】
ステップS142またはS143の後、通信部22が無線通信デバイス3から応答信号を受信した場合(ステップS144)、制御部25は、応答信号の周波数を記憶部26に記憶させる(ステップS145)。
【0152】
続いて、制御部25は、再び水分ありの判定履歴の有無を確認し、判定履歴がない場合(ステップS146:No)、直前に送信した送信信号の周波数を応答可能な送信信号の周波数(応答可能周波数)として決定し、記憶部26に記憶させる(ステップS147)。ステップS147の後のステップS148~S151の処理は、
図16を参照して説明したステップS114~S117の処理に順次対応している。
【0153】
ステップS146において判定履歴がある場合(ステップS146:Yes)、制御部25は、直前に送信した送信信号の周波数を第2応答可能周波数として決定し、記憶部26に記憶させる(ステップS152)。
【0154】
続いて、判定部23は、第2応答可能周波数を初期周波数と比較する(ステップS153)。比較の結果、両者が異なる場合(ステップS153:No)、判定部23は水分増加ありと判定する(ステップS154)。
【0155】
ステップS153における比較の結果、応答可能周波数と第2応答可能周波数が等しい場合(ステップS153:Yes)、判定部23は、無線通信デバイス3からの応答信号に含まれる少なくとも1つの信号成分の発振周波数が変化したか否かを判定する(ステップS155)。ここでいう応答信号の発振周波数の変化は、水分ありと判定したときに受信した応答信号の発振周波数と、その後に受信した応答信号の発振周波数との比較に基づいて求められる。なお、応答信号の発振周波数の変化量の絶対値が閾値以上である場合を「変化あり」と定義してもよい。
【0156】
応答信号の発振周波数が変化した場合(ステップS155:Yes)、判定部23は水分増加ありと判定する(ステップS154)。一方、応答信号の発振周波数が変化していない場合(ステップS155:No)、判定部23は水分増加なしと判定する(ステップS156)。
【0157】
ステップS154またはS156に続いて、制御部25は、報知部24に水分増加の有無に関する判定結果を報知させる(ステップS151)。この後、水分検知装置2は一連の処理を終了する。なお、判定部23が水分なしと判定した場合には、報知部24が報知しないようにしてもよい。
【0158】
ステップS144において、通信部22が応答信号を受信しない場合(ステップS144:No)、制御部25は、送信信号の周波数を減少させる設定を行い(ステップS157)、通信部22に周波数が減少した送信信号を送信させる(ステップS158)。この後、水分検知装置2はステップS144に戻り、無線通信デバイス3から応答信号を受信するまで、ステップS157の設定処理とステップS158の送信処理を繰り返す。なお、ステップS157においても、周波数の減少量は、減少の繰り返しの回数によらず一定としてもよいし、減少の繰り返しの回数ごとに変化させてもよい。
【0159】
以上説明した実施の形態6によれば、実施の形態1と同様に、対象体における水分の存在を正確に検知することができる。
【0160】
また、実施の形態6によれば、2回の水分検知処理で応答可能周波数に変化がない場合であっても、応答信号の発振周波数に変化があれば水分が増加したと判定するため、さらに精度よく水分の存在を検知することができる。
【0161】
(実施の形態7)
図19は、実施の形態7に係る水分検知装置が乾燥状態にある無線通信デバイスからの応答信号の強度が最大となる周波数を決定する処理の概要を示すフローチャートである。実施の形態7に係る水分検知装置の構成は、実施の形態1で説明した水分検知装置2の構成と同様である。このため、以下の説明では、実施の形態1と同じ符号を用いて説明する。
【0162】
まず、制御部25は、通信部22に対し、所定の周波数を有する送信信号を無線通信デバイス3に送信させる(ステップS161)。この初期値として、制御部25が記憶部26に記憶されている値を参照して設定してもよいし、入力部21が設定入力を受け付けた値を用いてもよい。
【0163】
その後、通信部22が無線通信デバイス3から応答信号を受信した場合(ステップS162:Yes)、制御部25はステップS161で受信した応答信号の強度を記憶部26に記憶させる(ステップS163)。
【0164】
続いて、制御部25は送信信号の周波数を減少させる設定を行い(ステップS164)、通信部22に周波数が減少した送信信号を送信させる(ステップS165)。
【0165】
その後、通信部22が無線通信デバイス3から受信した応答信号の強度を記憶部26に記憶させる(ステップS166)。
【0166】
続いて、判定部23は、ステップS166で受信した最新の応答信号の強度が最大であるか否かを判定する(ステップS167)。判定部23による判定の結果、最新の応答信号の強度が最大である場合(ステップS167:Yes)、制御部25は、この応答信号に対応する送信信号の周波数(fd)を記憶部26に記憶させる(ステップS168)。なお、ステップS167において判定部23が応答信号の強度が最大であると判定するためには、ステップS161以降に通信部22が互いに異なる周波数の送信信号を少なくとも3回送信している必要がある。この意味で、判定部23は、ステップS161以降の送信信号の送信履歴も参照して、ステップS167における判定を行う。
【0167】
ステップS167において、最新の応答信号の強度が最大ではない場合(ステップS167:No)、制御部25は送信信号の周波数を減少させる設定を行い(ステップS169)、通信部22に周波数が減少した送信信号を送信させる(ステップS170)。その後、通信部22が無線通信デバイス3から受信した応答信号の強度を記憶部26に記憶させる(ステップS171)。ステップS171の後、水分検知装置2はステップS167に戻り、最新の応答信号の強度が最大となるまでステップS169~S171の処理を繰り返す。なお、ステップS167において、最新の応答信号の強度が最大値でないという判定が所定回数繰り返された場合には、初期周波数に戻って送信信号の周波数を逆向きに変化(ここでは増加)させて送信信号を送信するようにしてもよい。
【0168】
ステップS162において、通信部22が無線通信デバイス3からの応答信号を受信しない場合(ステップS162:No)、制御部25は、送信信号の周波数を減少させる設定を行い(ステップS172)、通信部22に周波数が減少した送信信号を送信させる(ステップS173)。この後、水分検知装置2はステップS162に戻り、無線通信デバイス3から応答信号を受信するまで、ステップS172の設定処理とステップS173の送信処理を繰り返す。
【0169】
なお、ステップS169、S172における周波数の減少量は、減少の繰り返しの回数によらず一定としてもよいし、減少の繰り返しの回数ごとに変化させてもよい。また、ステップS164、S169、S172において、制御部25が送信信号の周波数を増加させるように設定し、ステップS165、S170、S173において、制御部25が通信部22に周波数が増加した送信信号を送信させるようにしてもよい。
【0170】
以上説明したステップS161~S173の処理は、水分検知装置2のユーザが行ってもよいし、水分検知装置2の製造者が水分検知装置2を出荷する前に行ってもよい。
【0171】
つぎに、
図20のフローチャートを参照して、水分検知装置2が行う水分検知処理の概要を説明する。まず、制御部25は、通信部22に対し、初期周波数を有する送信信号を無線通信デバイス3に送信させる(ステップS181)。
【0172】
その後、通信部22が無線通信デバイス3から応答信号を受信した場合(ステップS182:Yes)、制御部25は、直前に受信した応答信号の強度を記憶部26に記憶させる(ステップS183)。
【0173】
続くステップS184~S187の処理は、上述したステップS164~S167の処理に順次対応している。
【0174】
ステップS187において、判定部23が最新の応答信号の強度を最大と判定した場合(ステップS187:Yes)、制御部25は、この応答信号に対応する送信信号の周波数(fw)を記憶部26に記憶させる(ステップS188)。
【0175】
続いて、判定部23は、ステップS188で記憶した周波数(fw)と、乾燥状態にある無線通信デバイス3からの応答信号の強度が最大となる周波数(fd)との大小を比較する(ステップS189)。比較の結果、周波数fwと周波数fdが等しい場合(ステップS189:Yes)、判定部23は、水分なしと判定する(ステップS190)。一方、比較の結果、周波数fwと周波数fdが等しくない場合(ステップS189:No)、判定部23は、水分ありと判定する(ステップS191)。なお、ステップS178において、判定部23は、2つの周波数の差の絶対値|fw-fd|が所定値よりも小さい場合に両者が等しいと判定してもよい。
【0176】
ステップS182において、通信部22が無線通信デバイス3からの応答信号を受信しない場合(ステップS182:No)、制御部25は、送信信号の周波数を減少させる設定を行い(ステップS192)、通信部22に周波数が減少した送信信号を送信させる(ステップS193)。この後、水分検知装置2はステップS182に戻り、無線通信デバイス3から応答信号を受信するまで、ステップS192の設定処理とステップS193の送信処理を繰り返す。なお、ステップS192における周波数の減少量は、減少の繰り返しの回数によらず一定としてもよいし、減少の繰り返しの回数ごとに変化させてもよい。
【0177】
以上説明した実施の形態7によれば、実施の形態1と同様に、対象体における水分の存在を正確に検知することができる。
【0178】
また、実施の形態7によれば、無線通信デバイスが乾燥状態である場合に応答信号の強度が最大となったときの送信信号の周波数を記憶しておき、おむつ使用時の応答信号の強度が最大となったときの送信信号の周波数と比較することによって水分の有無を検知するため、水分の存在を精度よく検知することができる。
【0179】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は、上述した実施の形態1~7によってのみ限定されるべきものではない。例えば、水分検知装置または送受信装置と無線通信デバイスとの間の通信を周波数が13.56MHzのNFC(Near Field Communication)通信によって実現してもよい。
【0180】
また、水分検知システムを、自動車の製造時における室内の防水チェック、橋梁、トンネル、ダムなどのインフラストラクチャーの製造時における水濡れ検知、排水管の水漏れ検知等を目的とするシステムに適用することも可能である。
【0181】
また、対象体によっては、水分を含んだときに無線通信デバイスの共振周波数が増加する方向に変化する場合があることに鑑み、実施の形態5、6において、そのような対象体の水分検知を行う際には、無線通信デバイスからの応答信号を受信するまで、送信信号の周波数を増加させて繰り返し送信するようにしてもよい。さらに、実施の形態5、6において、周波数の変化を所定回数続けても応答信号を受信しない場合には、初期周波数に戻って送信信号の周波数を逆向きに変化させて送信信号を送信するようにしてもよい。
【0182】
また、対象体によっては、水分を含んだときに無線通信デバイスの共振周波数が増加する方向に変化する場合があることに鑑み、実施の形態7において、そのような対象体の水分検知を行う際には、応答信号の強度が最大値であると判定するまで、送信信号の周波数を増加させて繰り返し送信するようにしてもよい。さらに、実施の形態7において、周波数の変化を所定回数続けても最新の応答信号の強度が最大値でないという判定が所定回数繰り返されたには、初期周波数に戻って送信信号の周波数を逆向きに変化させて送信信号を送信するようにしてもよい。
【0183】
また、実施の形態3、4において、無線通信デバイスから応答信号を受信するまで、送信信号の強度を増加させる代わりに周波数を減少させて繰り返し送信するようにしてもよい。この場合にも、対象体に応じて、応答信号を受信するまで送信信号の周波数を増加させて繰り返し送信するようにしてもよい。
【0184】
また、実施の形態3、4において、無線通信デバイスが乾燥状態である場合に応答信号の強度が最大となったときの送信信号の周波数を記憶しておき、おむつ使用時の応答信号の強度が最大となったときの送信信号の周波数と比較することによって水分の有無を検知するようにしてもよい。
【0185】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含み得るものである。
【符号の説明】
【0186】
1、5、7 水分検知システム
2、8 水分検知装置
3、3A、3Aa、3Ab、3a、3b 無線通信デバイス
4、6 おむつ
9 送受信装置
21、81 入力部
22、82、91 通信部
23、83 判定部
24、84 報知部
25、85、92 制御部
26、86 記憶部
31、31A 回路部
32 アンテナ
33 発振回路
34 容量
41 表面材
42 吸水材
43 防水材