(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】建造物および建造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/80 20060101AFI20231121BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
E04B1/80 100J
E04B1/76 500F
(21)【出願番号】P 2020009347
(22)【出願日】2020-01-23
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】東 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】野間 賢
(72)【発明者】
【氏名】梅野 徹也
(72)【発明者】
【氏名】杉村 保人
(72)【発明者】
【氏名】湯 正明
(72)【発明者】
【氏名】漆原 慎
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-291639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物であって、
柱と、
前記柱の前記建造物の外側に向く面よりも外側に設けられた外壁パネルと、
前記柱以外の領域で、前記柱の前記建造物の内側に向く面よりも内側の位置で横方向に延びる断熱材と、
前記断熱材の前記建造物の外側に向く面を覆うように配置された第1の防湿シートと、
前記断熱材の前記建造物の内側に向く面を覆うように配置された第2の防湿シートと、
前記外壁パネルと前記断熱材との間に、前記断熱材とともに前記第1の防湿シートを挟むように設けられた第1の補助断熱材と、を備えている、建造物。
【請求項2】
建造物であって、
柱と、
前記柱の前記建造物の外側に向く面よりも外側に設けられた外壁パネルと、
前記柱の前記建造物の内側に向く面よりも内側の位置で横方向に延びる断熱材と、
前記断熱材の前記建造物の外側に向く面を覆うように配置された第1の防湿シートと、
前記断熱材の前記建造物の内側に向く面を覆うように配置された第2の防湿シートと、
を備えており、
前記建造物は、前記柱の周囲において前記外壁パネルと前記断熱材との間に、前記断熱材とともに前記第1の防湿シートを挟むように設けられた第2の補助断熱材を有し、
前記断熱材は、
前記柱以外の領域に設けられた第1の断熱材と、前記柱に対向する位置に設けられた第2の断熱材
と、を有
する
、建造物。
【請求項3】
前記第1の断熱材と、前記第2の断熱材とは、同じ厚みを有する、請求項2に記載の建造物。
【請求項4】
建造物の施工方法であって、
枠体と、前記枠体内に充填された断熱材と、前記枠体の一方の面を覆うように設けられた第1の防湿シートと、前記枠体の他方の面を覆うように設けられた第2の防湿シートと、を有する断熱ユニットを準備する断熱ユニット準備ステップと、
柱の建造物の外側に向く面よりも外側の位置に外壁パネルを設ける外壁パネル設置ステップと、
前記第1の防湿シートが前記外壁パネルの内側となるように前記断熱ユニットを設ける断熱ユニット設置ステップと、を有
し、
前記断熱ユニット準備ステップにおいて、前記断熱材とともに前記第1の防湿シートを挟むように設けられた、補助断熱材をさらに有する柱間断熱ユニットを準備し、
前記断熱ユニット設置ステップにおいて、前記柱以外の領域に前記柱間断熱ユニットを設ける、建造物の施工方法。
【請求項5】
建造物の施工方法であって、
第1の断熱ユニットおよび第2の断熱ユニットを準備する断熱ユニット準備ステップと、
柱の建造物の外側に向く面よりも外側の位置に外壁パネルを設ける外壁パネル設置ステップと、
前記第1の断熱ユニットおよび前記第2の断熱ユニットを設ける断熱ユニット設置ステップと、
前記断熱ユニット設置ステップの前に、前記柱の周囲に補助断熱材を設けるステップと、を有し、
前記第1の断熱ユニットは、第1の枠体と、前記第1の枠体内に充填された第1の断熱材と、前記第1の枠体の一方の面を覆うように設けられた第1一方面防湿シートと、前記第1の枠体の他方の面を覆うように設けられた第1他方面防湿シートと、を有し、
前記第2の断熱ユニットは、第2の枠体と、前記第2の枠体内に充填された第2の断熱材と、前記第2の枠体の一方の面を覆うように設けられた第2一方面防湿シートと、前記第2の枠体の他方の面を覆うように設けられた第2他方面防湿シートと、を有し、
前記断熱ユニット設置ステップにおいて、前記補助断熱材と前記第2の断熱材との間で第2一方面防湿シートが挟まれた状態となるように前記第2の断熱ユニットを設け、さらに、前記第1一方面防湿シートが前記外壁パネルの内側となり、かつ、前記第1の断熱ユニットの前記第1の枠体が前記第2の断熱ユニットの第2の枠体に横方向に隣接するように前記柱以外の領域に前記第1
の断熱ユニットを設ける、施工方法。
【請求項6】
前記断熱ユニット準備ステップでは、同じ厚みを有する前記第1の断熱材および前記第2の断熱材を備えた前記第1の断熱ユニットおよび前記第2の断熱ユニットを準備する、請求項5に記載の施工方法。
【請求項7】
建造物であって、
柱と、
前記柱の前記建造物の外側に向く面よりも外側に設けられた外壁パネルと、
前記柱の前記建造物の内側に向く面よりも内側の位置で横方向に延びる断熱材と、
前記断熱材の前記建造物の外側に向く面を覆うように配置された第1の防湿シートと、
前記断熱材の前記建造物の内側に向く面を覆うように配置された第2の防湿シートと、
を備えて
おり、
前記建造物は、前記柱以外の領域で前記外壁パネルと前記断熱材との間に、前記断熱材とともに前記第1の防湿シートを挟むように設けられた第1の補助断熱材を有し、
前記断熱材は、前記第1の補助断熱材に対向する位置に設けられた第1の断熱材を有し、
前記第1の断熱材は、前記第1の補助断熱材よりも軟質の断熱材である、建造物。
【請求項8】
建造物であって、
柱と、
前記柱の前記建造物の外側に向く面よりも外側に設けられた外壁パネルと、
前記柱の前記建造物の内側に向く面よりも内側の位置で横方向に延びる断熱材と、
前記断熱材の前記建造物の外側に向く面を覆うように配置された第1の防湿シートと、
前記断熱材の前記建造物の内側に向く面を覆うように配置された第2の防湿シートと、
を備えており、
前記建造物は、前記柱の周囲において前記外壁パネルと前記断熱材との間に、前記断熱材とともに前記第1の防湿シートを挟むように設けられた第2の補助断熱材を有し、
前記断熱材は、前記柱に対向する位置に設けられた第2の断熱材を有し、
前記第2の断熱材は、前記第2の補助断熱材よりも硬質の断熱材である
、建造物。
【請求項9】
建造物の施工方法であって、
枠体と、前記枠体内に充填された断熱材と、前記枠体の一方の面を覆うように設けられた第1の防湿シートと、前記枠体の他方の面を覆うように設けられた第2の防湿シートと、を有する断熱ユニットを準備する断熱ユニット準備ステップと、
柱の建造物の外側に向く面よりも外側の位置に外壁パネルを設ける外壁パネル設置ステップと、
前記第1の防湿シートが前記外壁パネルの内側となるように前記断熱ユニットを設ける断熱ユニット設置ステップと、を有
し、
前記断熱ユニット準備ステップにおいて、前記断熱材とともに前記第1の防湿シートを挟むように設けられた、前記断熱材よりも硬質の補助断熱材をさらに有する柱間断熱ユニットを準備し、
前記断熱ユニット設置ステップにおいて、前記柱以外の領域に前記柱間断熱ユニットを設ける、建造物の施工方法。
【請求項10】
建造物の施工方法であって、
枠体と、前記枠体内に充填された断熱材と、前記枠体の一方の面を覆うように設けられた第1の防湿シートと、前記枠体の他方の面を覆うように設けられた第2の防湿シートと、を有する断熱ユニットを準備する断熱ユニット準備ステップと、
柱の建造物の外側に向く面よりも外側の位置に外壁パネルを設ける外壁パネル設置ステップと、
前記第1の防湿シートが前記外壁パネルの内側となるように前記断熱ユニットを設ける断熱ユニット設置ステップと、
前記断熱ユニット設置ステップの前に、前記柱の周囲に前記断熱材よりも軟質の補助断熱材を設けるステップと、を有し、
前記断熱ユニット設置ステップにおいて、前記柱の前記建造物の内側に向く面に対向するように前記断熱ユニットを設ける
、施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物および建造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の内部における居住性を高めるため、壁部材に断熱材を設け、建造物の内部を外部から断熱することが行われている。例えば特許文献1には、内壁パネルと外壁パネルとの間に断熱材が配置された建造物が開示されている。この建造物に使用されている断熱材の内壁パネル側には防湿性を有するシート(以下、「防湿シート」という。)が設けられ、断熱材の外壁パネル側には透湿性はあるが通気性のないシート(以下、「透湿シート」という。)が設けられている。また、透湿シートと外壁パネルとの間に通気層が設けられており、透湿シートと通気層とによって断熱材の中に水分がこもるのを抑制し、断熱効果の維持および建造物の耐久性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の建造物では、建造物の外部の湿度が低い場合には、断熱材の中の水分は外壁パネル側に設けられた透湿シートを通じて外部に排出される。しかし、外部の湿度が高い場合には、水分を多く含む空気が外壁パネル側の透湿シートを通じて断熱材に入り込む。
【0005】
この場合、防湿シートが室内の温度の影響を受けて冷却されると、防湿シートの断熱材側の面で結露が生じるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、建造物の外壁パネルの内側に設けられた断熱材の室内側の面に設けられた防湿シートでの結露の発生を抑制することが可能な建造物、およびこのような建造物の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々検討した結果、上記目的は、以下の発明により達成されることを見出した。
【0008】
本発明の一局面に係る建造物は、柱と、前記柱の前記建造物の外側に向く面よりも外側に設けられた外壁パネルと、前記柱の前記建造物の内側に向く面よりも内側の位置で横方向に延びる断熱材と、前記断熱材の前記建造物の外側に向く面を覆うように配置された第1の防湿シートと、前記断熱材の前記建造物の内側に向く面を覆うように配置された第2の防湿シートと、を備えており、前記建造物は、前記柱以外の領域で前記外壁パネルと前記断熱材との間に、前記断熱材とともに前記第1の防湿シートを挟むように設けられた第1の補助断熱材を有し、前記断熱材は、前記第1の補助断熱材に対向する位置に設けられた第1の断熱材を有し、前記第1の断熱材は、前記第1の補助断熱材よりも軟質の断熱材である。
【0009】
上記の建造物では、夏季のように建造物の外部の温度および湿度が建造物の室内の温度および湿度よりも高い場合には、第1の防湿シートにより、建造物の外部から断熱材および第2の防湿シートへの湿度の高い空気の流入が抑制される。
【0010】
そのため、夏季において、室内の温度の影響によって断熱材および第2の防湿シートが冷却されても、第1の防湿シートによってこれらの部材の周囲での湿度の上昇が抑制されており、断熱材および第2の防湿シートにおける結露の発生が抑制される。
【0011】
一方、冬季のように建造物の室内の温度および湿度が建造物の外部の温度および湿度よりも高い場合には、第2の防湿シートにより、建造物の室内から断熱材、第1の防湿シートへの湿度の高い空気の流入が抑制される。
【0012】
そのため、冬季において、外部の温度の影響によって断熱材、第1の防湿シートが冷却されても、第2の防湿シートによってこれらの部材の周囲での湿度の上昇が抑制されており、断熱材および第1の防湿シートにおける結露の発生が抑制される。
【0013】
また、上記の建造物では、第1の防湿シートおよび第2の防湿シートによって、結露の発生が抑制されるだけでなく、建造物の気密性を向上させることができる。
【0014】
本発明では、前記柱以外の領域で前記外壁パネルと前記断熱材との間に、前記断熱材とともに前記第1の防湿シートを挟むように設けられた第1の補助断熱材を有し、前記断熱材は、前記第1の補助断熱材に対向する位置に設けられた第1の断熱材を有し、前記第1の断熱材は、前記第1の補助断熱材よりも軟質の断熱材である。
【0015】
これにより、柱以外の領域の部分において、硬質の第1の補助断熱材によって断熱性を向上させることができる。その一方で、硬質の第1の補助断熱材の設けられた領域には配線等の設備を設けることが難しくなるが、軟質の第1の断熱材の内部に配線等の設備を配置することが可能である。
【0016】
本発明の他の一局面に係る建造物は、柱と、前記柱の前記建造物の外側に向く面よりも外側に設けられた外壁パネルと、前記柱の前記建造物の内側に向く面よりも内側の位置で横方向に延びる断熱材と、前記断熱材の前記建造物の外側に向く面を覆うように配置された第1の防湿シートと、前記断熱材の前記建造物の内側に向く面を覆うように配置された第2の防湿シートと、を備えており、前記建造物は、前記柱の周囲において前記外壁パネルと前記断熱材との間に、前記断熱材とともに前記第1の防湿シートを挟むように設けられた第2の補助断熱材を有し、前記断熱材は、前記柱に対向する位置に設けられた第2の断熱材を有し、前記第2の断熱材は、前記第2の補助断熱材よりも硬質の断熱材である。
【0017】
これにより、硬質の断熱材を配置することが難しい柱の周囲には、軟質の断熱材を第2の補助断熱材として配置し、さらに、第2の補助断熱材に対向する位置にこれよりも硬質の断熱材からなる第2の断熱材を配置することにより、柱の配置される部分における断熱性を確保することが可能である。
【0018】
本発明の他の一局面に係る建造物の施工方法は、枠体と、前記枠体内に充填された断熱材と、前記枠体の一方の面を覆うように設けられた第1の防湿シートと、前記枠体の他方の面を覆うように設けられた第2の防湿シートと、を有する断熱ユニットを準備する断熱ユニット準備ステップと、柱の建造物の外側に向く面よりも外側の位置に外壁パネルを設ける外壁パネル設置ステップと、前記第1の防湿シートが前記外壁パネルの内側となるように前記断熱ユニットを設ける断熱ユニット設置ステップと、を有し、前記断熱ユニット準備ステップにおいて、前記断熱材とともに前記第1の防湿シートを挟むように設けられた、前記断熱材よりも硬質の補助断熱材をさらに有する柱間断熱ユニットを準備し、前記断熱ユニット設置ステップにおいて、前記柱以外の領域に前記柱間断熱ユニットを設ける。
【0019】
上記の建造物の施工方法によれば、第1の防湿シート、断熱材および第2の防湿シートを保持した枠体を断熱ユニットとして移動させることにより、所定の順序を維持した状態でこれらの部材を容易に配置することができる。そのため、外壁パネル側から順に、第1の防湿シート、断熱材および第2の防湿シートを施工する場合に比べて、上記の建造物を容易に得ることができる。また、完成後の建造物では、建造物の室内および外部の温度によらず、第1の防湿シートおよび第2の防湿シートの表面における結露の発生が抑制される。
【0020】
本発明では、前記断熱ユニット準備ステップにおいて、前記断熱材とともに前記第1の防湿シートを挟むように設けられた、前記断熱材よりも硬質の補助断熱材をさらに有する柱間断熱ユニットを準備し、前記断熱ユニット設置ステップにおいて、前記柱以外の領域に前記柱間断熱ユニットを設ける。
【0021】
これにより、柱以外の領域において、補助断熱材を有する柱間断熱ユニットを準備することで、外壁パネルと第1の防湿シートの間に別個に補助断熱材を設けるステップを省略することができる。
【0022】
本発明の他の一局面に係る建造物の施工方法は、枠体と、前記枠体内に充填された断熱材と、前記枠体の一方の面を覆うように設けられた第1の防湿シートと、前記枠体の他方の面を覆うように設けられた第2の防湿シートと、を有する断熱ユニットを準備する断熱ユニット準備ステップと、柱の建造物の外側に向く面よりも外側の位置に外壁パネルを設ける外壁パネル設置ステップと、前記第1の防湿シートが前記外壁パネルの内側となるように前記断熱ユニットを設ける断熱ユニット設置ステップと、前記断熱ユニット設置ステップの前に、前記柱の周囲に前記断熱材よりも軟質の補助断熱材を設けるステップと、を有し、前記断熱ユニット設置ステップにおいて、前記柱の前記建造物の内側に向く面に対向するように前記断熱ユニットを設ける。
【0023】
これにより、硬質の断熱材を配置することが難しい柱の周囲には、軟質の補助断熱材を設けておいて、その後補助断熱材よりも硬質の断熱材を有する断熱ユニットを柱の建造物の内側に向く面に対向するように設けることにより、柱の配置される部分における断熱性が確保された建造物を容易に得ることができる。
【0024】
本発明の他の一局面に係る建造物は、柱と、前記柱の前記建造物の外側に向く面よりも外側に設けられた外壁パネルと、前記柱以外の領域で、前記柱の前記建造物の内側に向く面よりも内側の位置で横方向に延びる断熱材と、前記断熱材の前記建造物の外側に向く面を覆うように配置された第1の防湿シートと、前記断熱材の前記建造物の内側に向く面を覆うように配置された第2の防湿シートと、前記外壁パネルと前記断熱材との間に、前記断熱材とともに前記第1の防湿シートを挟むように設けられた第1の補助断熱材と、を備えている。
【0025】
本発明の他の一局面に係る建造物は、柱と、前記柱の前記建造物の外側に向く面よりも外側に設けられた外壁パネルと、前記柱の前記建造物の内側に向く面よりも内側の位置で横方向に延びる断熱材と、前記断熱材の前記建造物の外側に向く面を覆うように配置された第1の防湿シートと、前記断熱材の前記建造物の内側に向く面を覆うように配置された第2の防湿シートと、を備えており、前記建造物は、前記柱の周囲において前記外壁パネルと前記断熱材との間に、前記断熱材とともに前記第1の防湿シートを挟むように設けられた第2の補助断熱材を有し、前記断熱材は、前記柱以外の領域に設けられた第1の断熱材と、前記柱に対向する位置に設けられた第2の断熱材と、を有する。
【0026】
上記の建造物は、前記第1の断熱材と、前記第2の断熱材とは、同じ厚みを有してもよい。
【0027】
本発明の他の一局面に係る建造物の施工方法は、枠体と、前記枠体内に充填された断熱材と、前記枠体の一方の面を覆うように設けられた第1の防湿シートと、前記枠体の他方の面を覆うように設けられた第2の防湿シートと、を有する断熱ユニットを準備する断熱ユニット準備ステップと、柱の建造物の外側に向く面よりも外側の位置に外壁パネルを設ける外壁パネル設置ステップと、前記第1の防湿シートが前記外壁パネルの内側となるように前記断熱ユニットを設ける断熱ユニット設置ステップと、を有し、前記断熱ユニット準備ステップにおいて、前記断熱材とともに前記第1の防湿シートを挟むように設けられた、補助断熱材をさらに有する柱間断熱ユニットを準備し、前記断熱ユニット設置ステップにおいて、前記柱以外の領域に前記柱間断熱ユニットを設ける。
【0028】
本発明の他の一局面に係る建造物の施工方法は、第1の断熱ユニットおよび第2の断熱ユニットを準備する断熱ユニット準備ステップと、柱の建造物の外側に向く面よりも外側の位置に外壁パネルを設ける外壁パネル設置ステップと、前記第1の断熱ユニットおよび前記第2の断熱ユニットを設ける断熱ユニット設置ステップと、前記断熱ユニット設置ステップの前に、前記柱の周囲に補助断熱材を設けるステップと、を有し、前記第1の断熱ユニットは、第1の枠体と、前記第1の枠体内に充填された第1の断熱材と、前記第1の枠体の一方の面を覆うように設けられた第1一方面防湿シートと、前記第1の枠体の他方の面を覆うように設けられた第1他方面防湿シートと、を有し、前記第2の断熱ユニットは、第2の枠体と、前記第2の枠体内に充填された第2の断熱材と、前記第2の枠体の一方の面を覆うように設けられた第2一方面防湿シートと、前記第2の枠体の他方の面を覆うように設けられた第2他方面防湿シートと、を有し、前記断熱ユニット設置ステップにおいて、前記補助断熱材と前記第2の断熱材との間で第2一方面防湿シートが挟まれた状態となるように前記第2の断熱ユニットを設け、さらに、前記第1一方面防湿シートが前記外壁パネルの内側となり、かつ、前記第1の断熱ユニットの前記第1の枠体が前記第2の断熱ユニットの第2の枠体に横方向に隣接するように前記柱以外の領域に前記第1の断熱ユニットを設ける。
【0029】
前記施工方法において、前記断熱ユニット準備ステップでは、同じ厚みを有する前記第1の断熱材および前記第2の断熱材を備えた前記第1の断熱ユニットおよび前記第2の断熱ユニットを準備することが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、建造物の外壁パネルの内側に設けられた断熱材の室内側の面に設けられた防湿シートでの結露の発生を抑制することが可能な建造物を提供することができる。また、本発明によれば、このような建造物を容易に施工することが可能な建造物の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る建造物の外壁周辺の部分縦断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る第1の防湿シートを設ける位置を説明するための模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る第1の断熱ユニットの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る第2の断熱ユニットの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態に係る建造物および建造物の施工方法について図面に基づいて説明する。
【0033】
(建造物の構成)
図1は、本実施形態に係る建造物の外壁周辺の部分縦断面図であり、
図2は、本実施形態に係る第1の防湿シートを設ける位置を説明するための模式図である。
図3は、本実施形態に係る第1の断熱ユニットの分解斜視図であり、
図4は、本実施形態に係る第2の断熱ユニットの分解斜視図である。
【0034】
本実施形態に係る建造物1は、建造物1の躯体を構成する柱2と、柱2の建造物1の外側に向く面よりも外側に設けられた外壁パネル3と、柱2の建造物1の内側に向く面よりも内側の位置で横方向に延びる断熱材4と、断熱材4の建造物1の外側に向く面を覆うように配置された第1の防湿シート5と、断熱材4の建造物1の内側に向く面を覆うように配置された第2の防湿シート6と、断熱材4とともに第1の防湿シート5を挟むように設けられた補助断熱材7と、横方向に隣接する補助断熱材7の間に介在する突出部16と、第2の防湿シート6の建造物1の内側に向く面を覆うように配置された、石膏ボードからなる内装パネル8と、を有している。内装パネル8の外壁パネル3と反対側の空間は、建造物1の室内である。
【0035】
柱2は、H形鋼からなる柱本体2aと、パネル間に介在する柱本体2aのウェブの両側においてフランジの間に設けられたグラスウール等からなる軟質の断熱材2bと、柱本体2aの両方のフランジの外側に設けられたケイ酸カルシウムからなる不燃性板材2cと、柱本体2aと断熱材2bと不燃性板材2cとを覆う軟質の耐火材からなる耐火シート2dと、を有する。
図1では、柱2は1本だけ記載されているが、建造物1は、横方向に並んで複数の柱2を有している。
【0036】
外壁パネル3は、柱2の建造物1の外側に向く面よりも外側に設けられている。
【0037】
補助断熱材7は、柱2以外の領域で外壁パネル3と断熱材4との間に設けられた第1の補助断熱材15と、柱2の周囲において外壁パネル3と断熱材4との間に設けられた第2の補助断熱材25と、を有している。
【0038】
第1の補助断熱材15は、成型されたポリウレタンフォーム等からなる硬質の板状の断熱材である。第1の補助断熱材15は、第1層15aと、第1層15aに対し外壁パネル3側に設けられた第2層15bと、を有する。第1層15aと第2層15bとは、第1の固定部材17によって互いに固定されている。
【0039】
第2の補助断熱材25は、グラスウール等からなる軟質の断熱材であり、柱2の建造物1の外側に向く面および両側面の三方を覆うように設けられている。
【0040】
突出部16は、横方向に隣接する補助断熱材7の間に介在する。より具体的には、突出部16は、第1の補助断熱材15の両側面に設けられている。第1の補助断熱材15の両側面は、建造物1の室内側から外部に向かう方向に見て、後述する第1の枠体11の両側面よりも横方向内側に位置している。また、突出部16は、第1の補助断熱材15の両側面に、建造物1の室内側から外部に向かう方向に見て、第1の枠体11の両側面よりも横方向外側に突出するように設けられている。隣り合う第1の枠体11は互いに接触するように設けられており、かつ突出部16は第1の補助断熱材15よりも軟質の断熱材からなるため、隣り合う第1の補助断熱材15に設けられた突出部16は互いに接触して横方向に圧縮され、第1の補助断熱材15同士の隙間を塞いでいる(
図1参照)。
【0041】
断熱材4は、第1の補助断熱材15に対向する位置に設けられた第1の断熱材12と、柱2に対向する位置に設けられた第2の断熱材22と、を有する。第1の断熱材12は、グラスウール等からなる断熱材であり、第1の補助断熱材15よりも軟質の断熱材である。第2の断熱材22は、成型されたポリウレタンフォーム等からなる板状の断熱材であり、第2の補助断熱材25よりも硬質の断熱材である。
【0042】
第1の防湿シート5は、防湿性を有するフィルムからなる。第1の防湿シート5は、第1の断熱材12の建造物1の外側に向く面を覆うように配置された第3の防湿シート13と、第2の断熱材22の建造物1の外側に向く面を覆うように配置された第5の防湿シート23と、を有する。第3の防湿シート13は、別の第3の防湿シート13または第5の防湿シート23と横方向に隣接して設けられている。
【0043】
第2の防湿シート6は、防湿性を有するフィルムからなる。第2の防湿シート6は、第1の断熱材12の建造物1の内側に向く面を覆うように配置された第4の防湿シート14と、第2の断熱材22の建造物1の内側に向く面を覆うように配置された第6の防湿シート24と、を有する。第4の防湿シート14は、別の第4の防湿シート14または第6の防湿シート24と横方向に隣接して設けられている。隣接するこれらのシートの間には、シートを跨ぐように粘着テープ9が貼り付けられており、シート同士の隙間が塞がれている。
【0044】
ここで、内装パネル8と外壁パネル3との間の温度勾配について説明したうえで、第1の防湿シート5および第2の防湿シート6を設ける位置について説明する。
【0045】
図2の模式図に示すように、冬季のように建造物1の室内の温度が外気の温度よりも高い場合には、内装パネル8から外壁パネル3に向かって低下するように温度勾配が生じる。第1の防湿シート5および第2の防湿シート6が設けられていない場合、この温度勾配により、内装パネル8と外壁パネル3との間の位置A1において、内装パネル8の外壁パネル3との間の空気の温度は露点となり、位置A1から外壁パネル3までの領域では温度が露点以下となるため結露が生じる。
【0046】
一方、夏季のように建造物1の室内の温度が外気の温度よりも低い場合には、外壁パネル3から内装パネル8に向かって低下するように温度勾配が生じる。第1の防湿シート5および第2の防湿シート6が設けられていない場合、この温度勾配により、内装パネル8と外壁パネル3との間の位置A2において、内装パネル8と外壁パネル3との間の空気の温度は露点となり、位置A2から内装パネル8までの領域では温度が露点以下となるため結露が生じる。
【0047】
内装パネル8と外壁パネル3との間の空気は、夏季には室内の空気によって冷却され、冬季には外気によって冷却されるため、夏季に露点となる位置A2は、冬季に露点となる位置A1よりも室内側、すなわち内装パネル8側に位置する。
【0048】
第2の防湿シート6は、冬季に露点となる位置A1よりも内装パネル8側に配置すればよい。これにより、冬季において、外壁パネル3側、ひいては位置A1よりも外壁パネル3側への湿度の高い空気の流入を抑制することができ、位置A1から外壁パネル3までの領域における結露の発生を抑制することができる。
【0049】
第1の防湿シート5は、夏季に露点となる位置A2よりも外壁パネル3側に配置すればよい。これにより、夏季において、第1の防湿シート5よりも内装パネル8側への湿度の高い空気の流入を抑制することができ、位置A2から内装パネル8までの領域における結露の発生を抑制することができる。
【0050】
さらに、第1の防湿シート5を、冬季に露点となる位置A1よりも内装パネル8側に配置すれば、冬季において、第2の防湿シート6に加えて第1の防湿シート5によっても位置A1よりも外壁パネル3側への湿度の高い空気の流入を抑制することができる。これにより、位置A1から外壁パネル3までの領域における結露の発生をより抑制することができる。
【0051】
第1の防湿シート5および第2の防湿シート6の位置の調整は、内装パネル8、断熱材4および補助断熱材7の厚さを調整することにより行うことができる。
【0052】
本実施形態に係る建造物1では、断熱材4と第1の防湿シート5と第2の防湿シート6は、施工を容易とするため断熱ユニットとしてユニット化されている。補助断熱材7もユニット化することが好ましいが、柱2以外の領域と柱2の周囲とで補助断熱材7の配置方法が異なるため、柱2以外の領域と柱2の周囲とで断熱ユニットの構成を異なるものとしている。
【0053】
本実施形態に係る建造物1は、柱2以外の領域、より具体的には柱2の間に設けられている第1の断熱ユニット10(柱間断熱ユニット)と、柱2の建造物1の内側に向く面に対向するように設けられている第2の断熱ユニット20(柱部断熱ユニット)と、を有している。
【0054】
第1の断熱ユニット10は、
図3に示すように、複数の開口を有する第1の枠体11と、第1の断熱材12と、第3の防湿シート13と、第4の防湿シート14と、第1の補助断熱材15と、を備えている。第1の断熱材12は、第1の枠体11の各開口内に充填されている。第3の防湿シート13は、第1の枠体11の建造物1の外側に向く面に設けられ、第4の防湿シート14は、第1の枠体11の建造物1の内側に向く面に設けられている。第3の防湿シート13および第4の防湿シート14は、例えば粘着剤で貼り付けることによって第1の枠体11に固定されている。第1の補助断熱材15の第1層15aは、第2の固定部材18によって、第3の防湿シート13を介して第1の枠体11の建造物1の外側に向く面に固定されている。
【0055】
また、第2の断熱ユニット20は、
図4に示すように、第2の枠体21と、第2の断熱材22と、第5の防湿シート23と、第6の防湿シート24と、を備えている。第2の断熱材22は、第2の枠体21内に充填されている。第5の防湿シート23は、第2の枠体21の建造物1の外側に向く面に設けられ、第6の防湿シート24は、第2の枠体21の建造物1の内側に向く面に設けられている。第5の防湿シート23および第6の防湿シート24は、例えば粘着剤で貼り付けることによって第2の枠体21に固定されている。
【0056】
第1の枠体11は、第1の断熱材12と、第3の防湿シート13と、第4の防湿シート14と、第1の補助断熱材15と、を所定の形状および所定の順序を維持した状態で保持するためのものである。また、第2の枠体21は、第2の断熱材22と、第5の防湿シート23と、第6の防湿シート24と、を所定の形状および所定の順序を維持した状態で保持するためのものである。
【0057】
第1の断熱ユニット10は、第2の断熱ユニット20または別の第1の断熱ユニット10と横方向に隣接して設けられており、隣り合う第1の枠体11同士、または隣り合う第1の枠体11と第2の枠体21とが互いに接するように設けられている。また、本実施形態に係る建造物1では、横方向の長さの異なる複数の第1の断熱ユニット10が設けられている。
【0058】
第1の枠体11は、
図3に示すように、上下方向に延びる2本の縦桟11Tと、2本の縦桟11Tを接続し、横方向に延びる複数の横桟11Yと、を有している。また、第1の枠体11は、2本の縦桟11Tと互いに隣接する横桟11Yに囲まれた複数の開口を有している。
【0059】
第2の枠体21は、
図4に示すように、上下方向に延びる2本の縦桟21Tと、2本の縦桟21Tを接続し、横方向に延びる複数の横桟21Yと、を有している。また、第2の枠体21は、2本の縦桟21Tと互いに隣接する横桟21Yに囲まれた複数の開口を有している。
【0060】
(建造物の施工方法)
本実施形態に係る建造物の施工方法について、
図1、
図3および
図4を参照して説明する。
【0061】
本実施形態に係る建造物の施工方法は、枠体(第1の枠体11または第2の枠体21)と、枠体内に充填された断熱材4と、枠体の一方の面を覆うように設けられた第1の防湿シート5と、枠体の他方の面を覆うように設けられた第2の防湿シート6と、を有する断熱ユニット(第1の断熱ユニット10または第2の断熱ユニット20)を準備する断熱ユニット準備ステップと、柱2の建造物1の外側に向く面よりも外側の位置に外壁パネル3を設ける外壁パネル設置ステップと、第1の防湿シート5が、外壁パネル3の内側となるように断熱ユニットを設ける断熱ユニット設置ステップと、を有する。より具体的には、本実施形態の断熱ユニット設置ステップでは、断熱材4と外壁パネル3の内側に配置された補助断熱材7との間で挟まれた状態となるように断熱ユニットを設ける。断熱ユニット準備ステップおよび外壁パネル設置ステップは、どちらを先に行ってもよい。
【0062】
断熱ユニット準備ステップでは、第1の断熱ユニット10および第2の断熱ユニット20を準備する。まず、第1の断熱ユニット10の準備方法について、
図3を参照して説明する。第1の枠体11に第1の断熱材12を充填する。第1の枠体11および第1の断熱材12の一方の面(建造物1の外側に向く面)を覆うように第3の防湿シート13を設ける。第1の枠体11および第1の断熱材12の他方の面(建造物1の内側に向く面)を覆うように第4の防湿シート14を設ける。なお、第1の枠体11に対する、第1の断熱材12の充填、第3の防湿シート13の設置、および第4の防湿シート14の設置の順序は問わない。
【0063】
さらに、第1の断熱材12とともに第3の防湿シート13を挟むように第1の補助断熱材15の第1層15aを配置し、第2の固定部材18によって第1層15aを第1の枠体11に固定する。第1の枠体11に固定された第1層15aに第2層15bを重ね、第1の固定部材17によって第2層15bを第1層15aに固定する。第1層15aと第2層15bとが固定された第1の補助断熱材15の両側面に、突出部16を設けることにより、第1の断熱ユニット10が完成する。
【0064】
次に、第2の断熱ユニット20の準備方法について、
図3を参照して説明する。第2の枠体21に第2の断熱材22を充填する。第2の枠体21および第2の断熱材22の一方の面(建造物1の外側に向く面)を覆うように第5の防湿シート23を設ける。第2の枠体21および第2の断熱材22の他方の面(建造物1の内側に向く面)を覆うように第6の防湿シート24を設ける。これにより、第2の断熱ユニット20が完成する。なお、第2の枠体21に対する、第2の断熱材22の充填、第5の防湿シート23の設置、および第6の防湿シート24の設置の順序は問わない。
【0065】
本実施形態に係る建造物の施工方法は、断熱ユニット設置ステップの前に、さらに、柱2の周囲に第2の補助断熱材25を設けるステップを有する。このステップでは、柱2の周囲に軟質の断熱材からなる第2の補助断熱材25を、柱2の建造物1の外側に向く面および両側面の三方を覆うように設ける。
【0066】
断熱ユニット設置ステップでは、第2の断熱ユニット20を、第5の防湿シート23が柱2を介して第2の断熱材22と外壁パネル3の内側に配置された第2の補助断熱材25との間で挟まれた状態となるように設ける。本実施形態では、第2の断熱ユニット20の第5の防湿シート23と柱2の建造物1の内側に向く面とが接触するように、第2の断熱ユニット20を設ける。
【0067】
また、断熱ユニット設置ステップでは、第1の断熱ユニット10を柱2以外の領域に設ける。本実施形態では、第1の断熱ユニット10の第1の枠体11が、先に設けられた第2の断熱ユニット20の第2の枠体21および他の第1の断熱ユニット10の第1の枠体11と横方向に隣接するように第1の断熱ユニット10を設ける。このとき、第3の防湿シート13は、第1の断熱材12と外壁パネル3の内側に配置された第1の補助断熱材15との間で挟まれた状態となる。
【0068】
その後、隣接する第4の防湿シート14および第6の防湿シート24、ならびに隣接する第4の防湿シート14同士を跨ぐように粘着テープ9を貼り付け、第4の防湿シート14および第6の防湿シート24、すなわち第2の防湿シート6の建造物1の内側に向く面を覆うように内装パネル8を設け、建造物1の壁の施工が完了する。
【0069】
(作用、効果)
本実施形態に係る建造物1では、夏季のように建造物1の外部の温度および湿度が建造物1の室内の温度および湿度よりも高い場合には、第1の防湿シート5により、建造物1の外部から断熱材4、第1の枠体11、第2の枠体21、第2の防湿シート6および内装パネル8への湿度の高い空気の流入が抑制される。内装パネル8については、第2の防湿シート6によっても湿度の高い空気の流入が抑制される。
【0070】
これにより、夏季において、室内の温度の影響によって断熱材4、第1の枠体11、第2の枠体21、第2の防湿シート6および内装パネル8が冷却されても、第1の防湿シート5によってこれらの部材の周囲での湿度の上昇が抑制されている。そのため、断熱材4、第1の枠体11、第2の枠体21、第2の防湿シート6および内装パネル8における結露の発生が抑制される。内装パネル8については、第2の防湿シート6によっても結露の発生が抑制される。
【0071】
一方、冬季のように建造物1の室内の温度および湿度が建造物1の外部の温度および湿度よりも高い場合には、第2の防湿シート6により、建造物1の室内から断熱材4、第1の枠体11、第2の枠体21、第1の防湿シート5および補助断熱材7への湿度の高い空気の流入が抑制される。補助断熱材7については、第1の防湿シート5によっても室内からの湿度の高い空気の流入が抑制される。
【0072】
これにより、冬季において、外部の温度の影響によって断熱材4、第1の枠体11、第2の枠体21、第1の防湿シート5および補助断熱材7が冷却されても、第2の防湿シート6によってこれらの部材の周囲での湿度の上昇が抑制されている。そのため、断熱材4、第1の枠体11、第2の枠体21、第1の防湿シート5および補助断熱材7における結露の発生が抑制される。補助断熱材7については、第1の防湿シート5によっても結露の発生が抑制される。
【0073】
第2の防湿シート6は、断熱材4および補助断熱材7によって外部から断熱されている。そのため、冬季において、外部の温度の影響による第2の防湿シート6の冷却が抑制されることによっても、第2の防湿シート6の表面における結露の発生が抑制される。
【0074】
さらに、建造物1では、第1の防湿シート5は、断熱材4および補助断熱材7によって挟まれており、冬季、夏季を問わず、建造物1の室内および外部の温度の影響による第1の防湿シート5の冷却が抑制される。これによっても、第1の防湿シート5の表面における結露の発生が抑制される。
【0075】
また、建造物1では、第1の防湿シート5および第2の防湿シート6によって、結露の発生が抑制されるだけでなく、建造物1の気密性を向上させることができる。
【0076】
本実施形態に係る建造物1では、補助断熱材7は、柱2以外の領域で外壁パネル3と断熱材4との間に設けられた第1の補助断熱材15を有し、断熱材4は、第1の補助断熱材15に対向する位置に設けられた第1の断熱材12を有し、第1の断熱材12は、硬質の第1の補助断熱材15よりも軟質の断熱材である。これにより、柱2以外の領域の部分において、硬質の第1の補助断熱材15によって断熱性を向上させることができる。その一方で、硬質の第1の補助断熱材15の設けられた領域には配線等の設備を設けることが難しくなるが、軟質の第1の断熱材12の内部に配線等の設備を配置することが可能である。
【0077】
本実施形態に係る建造物1では、補助断熱材7は、柱2の周囲において外壁パネル3と断熱材4との間に設けられた軟質の第2の補助断熱材25を有し、断熱材4は、柱2に対向する位置に設けられた第2の断熱材22を有し、第2の断熱材22は、第2の補助断熱材25よりも硬質の断熱材である。
【0078】
本実施形態に係る建造物1では、硬質の断熱材を配置することが難しい柱2の周囲には、軟質の断熱材を第2の補助断熱材25として配置する。さらに、第2の補助断熱材25に対向する位置にこれよりも硬質の断熱材からなる第2の断熱材22を配置することにより、柱2の配置される部分における断熱性を確保することが可能である。
【0079】
本実施形態に係る建造物の施工方法によれば、第1の防湿シート5、断熱材4および第2の防湿シート6を保持した第1の枠体11および第2の枠体21を第1の断熱ユニット10および第2の断熱ユニット20として移動させることにより、所定の順序を維持した状態でこれらの部材を容易に配置することができる。そのため、外壁パネル3側から順に、第1の防湿シート5、断熱材4および第2の防湿シート6を施工する場合に比べて、建造物1を容易に得ることができる。また、完成後の建造物1では、建造物1の室内および外部の温度によらず、第1の防湿シート5および第2の防湿シート6の表面における結露の発生が抑制される。
【0080】
柱2以外の領域では、第1の補助断熱材15を有する第1の断熱ユニット10を準備することで、外壁パネル3と第1の防湿シート5(第3の防湿シート13)との間に別個に補助断熱材7(第1の補助断熱材15)を設けるステップを省略することができる。
【0081】
硬質の断熱材を配置することが難しい柱2の周囲には、軟質の第2の補助断熱材25を設けておいて、その後第2の補助断熱材25よりも硬質の第2の断熱材22を有する第2の断熱ユニット20を柱2の建造物1の内側に向く面に対向するように設けることにより、柱2の配置される部分における断熱性が確保された建造物1を容易に得ることができる。
【0082】
(変型例)
本実施形態に係る建造物1は、補助断熱材7(第1の補助断熱材15、第2の補助断熱材25)を有する構成としたが、補助断熱材7は省略することができる。
【0083】
本実施形態に係る建造物1において、柱2は、耐火シート2dを有する構成としたが、耐火シート2dを有しない構成としてもよい。
【0084】
本実施形態に係る建造物1において、第1の補助断熱材15は、第1層15aと第2層15bとを有し、第1層15aと第2層15bとは第1の固定部材17によって互いに固定されている構成としたが、第1層15aと第2層15bとを一体に形成してもよい。
【0085】
本実施形態に係る建造物の施工方法において、柱2の周囲に第2の補助断熱材25を設けるステップは、第1の断熱ユニット10を設ける前であれば、第2の断熱ユニット20を設けた後に行ってもよい。また、柱2の周囲に第2の補助断熱材25を設けるステップを外壁パネル設置ステップの前に行ってもよい。これにより、より容易に柱2の周囲に第2の補助断熱材25を設けることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 建造物
2 柱
3 外壁パネル
4 断熱材
5 第1の防湿シート
6 第2の防湿シート
7 補助断熱材
10 第1の断熱ユニット(柱間断熱ユニット)
11 第1の枠体
12 第1の断熱材
13 第3の防湿シート
14 第4の防湿シート
15 第1の補助断熱材
20 第2の断熱ユニット(柱部断熱ユニット)
21 第2の枠体
22 第2の断熱材
23 第5の防湿シート
24 第6の防湿シート
25 第2の補助断熱材