(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/337 20060101AFI20231121BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20231121BHJP
H01L 29/808 20060101ALI20231121BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20231121BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20231121BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20231121BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01L29/80 V
H01L29/80 C
H01L29/78 652T
H01L29/78 652A
H01L29/78 652C
H01L29/78 658E
(21)【出願番号】P 2020017335
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健太
(72)【発明者】
【氏名】大川 峰司
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-009989(JP,A)
【文献】国際公開第2011/004535(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110416295(CN,A)
【文献】特開2018-056297(JP,A)
【文献】特開2009-283692(JP,A)
【文献】特表2013-507789(JP,A)
【文献】特開2009-038200(JP,A)
【文献】特開2001-320042(JP,A)
【文献】特開2007-273856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/337
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体装置であって、
n型のドリフト領域と、
前記ドリフト領域上に設けられており、第1ボディ部分と第2ボディ部分とゲート絶縁膜とゲート電極が
この順で積層したチャネル部
と、
前記ドリフト領域上に設けられており、前記チャネル部の前記第1ボディ部分と前記第2ボディ部分に隣接しているn型のJFET領域と、を備えており、
前記第1ボディ部分は、p型の窒化物半導体であり、
前記第2ボディ部分は、前記第1ボディ部分よりもバンドギャップが広いp型の窒化物
半導体である、窒化物半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、窒化物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、p型GaNとn型AlGaNとゲート絶縁膜とゲート電極が積層したチャネル部を備える窒化物半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の窒化物半導体装置は、p型GaNとn型AlGaNの間の界面近傍に生成される2次元電子ガス層をチャネルとして利用することができる。よりオン抵抗の低い窒化物半導体装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する窒化物半導体装置は、第1ボディ部分と第2ボディ部分とゲート絶縁膜とゲート電極が積層したチャネル部を備えることができる。前記第1ボディ部分は、p型の窒化物半導体である。前記第2ボディ部分は、前記第1ボディ部分よりもバンドギャップが広いp型の窒化物半導体である。
【0006】
上記窒化物半導体装置は、前記第1ボディ部分と前記第2ボディ部分の間の界面近傍に生成される2次元電子ガス層をチャネルとして利用することができる。さらに、上記窒化物半導体装置は、前記第2ボディ部分と前記ゲート絶縁膜の間の界面近傍に生成される反転層もチャネルとして利用することができる。このように、上記窒化物半導体装置は、2次元電子ガス層と反転層のダブルチャネル構造を有している。この結果、上記窒化物半導体装置は、低いオン抵抗という特性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】窒化物半導体装置の一実施形態の要部断面図を模式的に示す。
【
図2】チャネル部の要部拡大断面図を模式的に示す。
【
図3】
図1の窒化物半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図4】
図1の窒化物半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図5】
図1の窒化物半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図6】
図1の窒化物半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本実施形態の半導体装置を説明する。各図面において、図示明瞭化を目的とし、共通する構成要素についてはそれらの1つの構成要素にのみ符号を付すことがある。
【0009】
図1に、窒化物半導体装置1の要部断面図を示す。窒化物半導体装置1は、窒化物半導体層20、窒化物半導体層20の裏面を被覆するように設けられているドレイン電極32、窒化物半導体層20の表面を被覆するように設けられているソース電極34、及び、窒化物半導体層20の表面上の一部に設けられている絶縁ゲート部36を備えている。窒化物半導体層20は、GaN基板12とGaNエピ層14とAlGaNエピ層16が積層して構成された半導体層であり、n型のドレイン領域21、n型のドリフト領域22、n型のJFET領域23、p型のボディ領域24、n型のソース領域25、及び、p型のボディコンタクト領域26を有している。GaN基板12とGaNエピ層14は、窒化ガリウム(GaN)を材料としている。AlGaNエピ層16は、窒化アルミニウムガリウム(Al
XGa
1-XN(0<X<1))を材料としている。
【0010】
ドレイン領域21は、窒化物半導体層20の裏面に露出する位置に設けられており、ドレイン電極32にオーミック接触している。後述するように、ドレイン領域21は、GaNエピ層14とAlGaNエピ層16をエピタキシャル成長させるための基板として準備された部分である。
【0011】
ドリフト領域22は、ドレイン領域21上に設けられており、ドレイン領域21とJFET領域23の間、且つ、ドレイン領域21とボディ領域24の間に配置されている。ドリフト領域22のn型不純物の濃度は、ドレイン領域21よりも薄い。ドリフト領域22は、GaNエピ層14に設けられている。
【0012】
JFET領域23は、ドリフト領域22上に設けられており、ドリフト領域22の表面から窒化物半導体層20の表面、即ちAlGaNエピ層16の表面まで厚み方向に延びており、ドリフト領域22の表面から突出した形態を有している。換言すると、JFET領域23は、窒化物半導体層20の表面からボディ領域24を貫通してドリフト領域22まで延びている。この例では、JFET領域23の不純物濃度は、ドリフト領域22の不純物濃度と等しく、ドリフト領域22の一部と言うことができる。JFET領域23は、GaNエピ層14とAlGaNエピ層16に跨って設けられている。
【0013】
ボディ領域24は、ドリフト領域22上に設けられており、JFET領域23の側面に隣接している。ボディ領域24は、GaNエピ層14とAlGaNエピ層16に跨って設けられている。
【0014】
ソース領域25は、ボディ領域24上に設けられており、ボディ領域24によってドリフト領域22及びJFET領域23から隔てられている。ソース領域25は、GaNエピ層14とAlGaNエピ層16に跨って設けられている。換言すると、ソース領域25は、AlGaNエピ層16の表面からGaNエピ層14とAlGaNエピ層16の界面を超えて形成されており、AlGaNエピ層16の膜厚よりも厚く形成されている。ソース領域25は、ソース電極34にオーミック接触している。
【0015】
ボディコンタクト領域26は、ボディ領域24上に設けられている。ボディコンタクト領域26は、GaNエピ層14とAlGaNエピ層16に跨って設けられている。換言すると、ボディコンタクト領域26は、AlGaNエピ層16の表面からGaNエピ層14とAlGaNエピ層16の界面を超えて形成されており、AlGaNエピ層16の膜厚よりも厚く形成されている。ボディコンタクト領域26は、ソース電極34にオーミック接触している。
【0016】
絶縁ゲート部36は、窒化物半導体層20の表面上の一部、すなわち、AlGaNエピ層16の表面上の一部に設けられており、酸化シリコンのゲート絶縁膜36a及びポリシリコンのゲート電極36bを有する。ゲート電極36bは、JFET領域23とソース領域25を隔てる部分のボディ領域24、及び、JFET領域23にゲート絶縁膜36aを介して対向している。
【0017】
図2に、JFET領域23とソース領域25の間に位置するチャネル部の要部拡大断面図を示す。
図2に示されるように、JFET領域23とソース領域25の間に位置するボディ領域24の部分は、GaNエピ層14で構成される第1ボディ部分24aとAlGaNエピ層16で構成される第2ボディ部分24bを有している。このように、チャネル部は、第1ボディ部分24aと第2ボディ部分24bとゲート絶縁膜36aとゲート電極36bが積層して構成されている。
【0018】
次に、窒化物半導体装置1の動作を説明する。使用時には、ドレイン電極32に正電圧が印加され、ソース電極34が接地される。ゲート電極36bにゲート閾値電圧よりも高い正電圧が印加されると、
図2に示されるように、第2ボディ部分24bとゲート絶縁膜36aの間の界面近傍に反転層が形成される。さらに、窒化物半導体装置1では、GaNエピ層14で構成される第1ボディ部分24aとAlGaNエピ層16で構成される第2ボディ部分24bがヘテロ接合を形成していることから、第1ボディ部分24aと第2ボディ部分24bの間の界面近傍に2次元電子ガス層が生成される。これら反転層と2次元電子ガス層を介してソース領域25からJFET領域23に電子が流入する。JFET領域23に流入した電子は、そのJFET領域23を縦方向に流れてドレイン電極32に向かう。これにより、ドレイン電極32とソース電極34が導通し、窒化物半導体装置1がターンオンする。ゲート電極36bが接地されると、反転層及び2次元電子ガス層が消失し、窒化物半導体装置1がターンオフする。このように、窒化物半導体装置1は、ゲート電極36bに印加する電圧に基づいてドレイン電極32とソース電極34の間のオンとオフを切り換えるスイッチング動作を実行することができる。
【0019】
図2を参照して説明したように、窒化物半導体装置1では、第2ボディ部分24bがp型で構成されていることから、第2ボディ部分24bとゲート絶縁膜36aの間の界面近傍に反転層が形成される。さらに、第1ボディ部分24aと第2ボディ部分24bの間のヘテロ接合の界面近傍に2次元電子ガス層が生成される。このように、窒化物半導体装置1は、反転層と2次元電子ガス層のダブルチャネル構造を有していることから、低いオン抵抗という特性を有することができる。
【0020】
また、窒化物半導体装置1の閾値電圧の大きさは、反転層のチャネル生成に依存する。即ち、ゲート電極36bに印加される正電圧が増加する過程では、反転層のチャネルが生じた後に、2次元電子ガス層が生成される。AlGaNエピ層16がp型であり、且つ、AlGaNエピ層16の膜厚が3nmよりも大きく、50nmよりも小さい(3nm<AlGaNエピ層16の膜厚<50nm)であると、窒化物半導体装置1の閾値電圧の大きさが反転層のチャネル生成に依存することができる。ここで、窒化物半導体装置1では、窒化物半導体層20の最表面がAlGaNエピ層16であり、AlGaNエピ層16とゲート絶縁膜36aが接触している。AlGaNはGaNよりも熱的に安定な材料である。このため、製造プロセスに起因した熱負荷等が加わっても、AlGaNエピ層16とゲート絶縁膜36aの界面に界面準位が形成されることが抑えられる。この結果、窒化物半導体装置1では、反転層が形成される界面、即ち、AlGaNエピ層16とゲート絶縁膜36aの界面の界面準位の形成が抑えられているので、閾値電圧の変動が抑えられ、閾値電圧の制御性が高いという特徴を有することができる。
【0021】
(窒化物半導体装置の製造方法)
まず、
図3に示されるように、エピタキシャル成長技術を利用して、GaN基板12の表面からn型GaNのGaNエピ層14及びn型AlGaNのAlGaNエピ層16をこの順で積層し、窒化物半導体層20を形成する。
【0022】
次に、
図4に示されるように、イオン注入技術を利用して、ボディ領域24、ボディコンタクト領域26及びソース領域25を形成する。次に、窒化物半導体層20の表面と裏面に例えば窒化アルミニウム(AlN)の保護膜(図示省略)を成膜し、ボディ領域24、ボディコンタクト領域26及びソース領域25を活性化するためのアニール処理を実施する。アニール温度は、1300℃以上であってもよい。アニール処理後に、保護膜(図示省略)を除去する。
【0023】
次に、
図5に示されるように、蒸着技術を利用して、窒化物半導体層20の表面を被覆するように窒化物半導体層20の表面上にゲート絶縁膜36aを成膜する。蒸着技術としては、原子層堆積法又はプラズマCVD法が利用される。次に、アニール処理を実施してゲート絶縁膜36aの膜質を改善する。アニール温度は、800℃以上であってもよい。
【0024】
次に、
図6に示されるように、蒸着技術を利用して、ゲート絶縁膜36aの表面上にゲート電極36bを成膜する。さらに、エッチング技術を利用して、ゲート絶縁膜36a及びゲート電極36bを加工し、絶縁ゲート部36を形成する。この後、既知の製造技術を利用して、ドレイン電極32及びソース電極34を形成することで、
図1に示す窒化物半導体装置1を製造することができる。
【0025】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0026】
1 :窒化物半導体装置
20 :窒化物半導体層
21 :ドレイン領域
22 :ドリフト領域
23 :JFET領域
24 :ボディ領域
24a :第1ボディ部分
24b :第2ボディ部分
25 :ソース領域
26 :ボディコンタクト領域
32 :ドレイン電極
34 :ソース電極
36 :絶縁ゲート部
36a :ゲート絶縁膜
36b :ゲート電極