(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】電気光学装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20231121BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20231121BHJP
G02F 1/1339 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G09F9/30 320
G02F1/1335 520
G02F1/1339 500
(21)【出願番号】P 2020018472
(22)【出願日】2020-02-06
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0010496(US,A1)
【文献】特開2001-215517(JP,A)
【文献】特開2006-039476(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0013582(KR,A)
【文献】米国特許第04820611(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0054611(US,A1)
【文献】国際公開第2020/012859(WO,A1)
【文献】特開2010-096993(JP,A)
【文献】特開平04-226424(JP,A)
【文献】特開2001-027762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/133-1/1335
1/13363-1/135
1/15-1/19
G09F9/30-9/46
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極と、平面視で前記画素電極と重ならない領域に設けられた凹部内に一部が埋め込まれ、金属材料からなるスペーサーと、前記スペーサーを覆う絶縁膜と、を有する第1基板と、
前記第1基板に対向する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置された電気光学層と、を備え、
前記第1基板は、平面視で前記スペーサーと重なる領域において、前記凹部の外縁に沿うように前記スペーサーと前記画素電極との間に設けられる第1部分と、前記スペーサーの側面に沿うように前記第1部分から前記第2基板側へ突出する第2部分と、を有する絶縁性保護膜を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置において、
前記スペーサーは、少なくとも表面が低反射材料からなることを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電気光学装置において、
前記スペーサーは、窒化チタンからなることを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電気光学装置において、
前記スペーサーは、第1金属材料からなる芯部と、前記第1金属材料より反射率が低く、前記芯部の表面を覆う第2金属材料の層と、からなることを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電気光学装置において、
前記第1金属材料はアルミニウムまたはアルミニウム合金であり、
前記第2金属材料は、窒化チタンであることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の電気光学装置において、
前記第1基板は、前記スペーサーに前記絶縁膜を介して重なる配向膜を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項
1に記載の電気光学装置において、
前記スペーサーは、前記画素電極の一部と平面視で
重なることを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
請求項
1に記載の電気光学装置において、
前記スペーサーは、前記第1基板において定電位が設けられた配線と電気的に接続されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項9】
第1基板と、
前記第1基板に対向し、共通電極と、平面視で前記共通電極と重ならない領域に設けられた凹部内に一部が埋め込まれ、金属材料からなるスペーサーと、前記スペーサーを覆う絶縁膜と、を有する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置された電気光学層と、を備え、
前記第2基板は、平面視で前記スペーサーと重なる領域において、前記凹部の外縁に沿うように前記スペーサーと前記共通電極との間に設けられる第1部分と、前記スペーサーの側面に沿うように前記第1部分から前記第1基板側へ突出する第2部分と、を有する絶縁性保護膜を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項10】
請求項
9に記載の電気光学装置において、
前記スペーサーは、前記第2基板に設けられた共通電極の一部と平面視で
重なることを特徴とする電気光学装置。
【請求項11】
請求項1から
10までの何れか一項に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投射型表示装置のライトバルブ等として用いられる透過型の電気光学装置では、画素電極を有する第1基板と、共通電極を有する第2基板と、第1基板と第2基板との間に配置された液晶層とを備える。かかる電気光学装置において、第1基板と第2基板との間隔の均一化を図るため、第1基板と第2基板との間に樹脂製のスペーサーを配置することが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、樹脂製のスペーサーを用いた場合、スペーサーから樹脂成分が溶出して液晶層を劣化させる等の問題がある。
【0003】
一方、第1基板と第2基板との間において、画素電極と重ならないように、無機絶縁膜によってスペーサーを配置することが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-84290号公報
【文献】特開2006-301476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無機絶縁膜は透光性を有するため、無機絶縁膜を用いてスペーサーを構成した場合、無機絶縁膜の内部に進入した光が無機絶縁膜の側面と液晶層との界面で反射し、特定の角度に向けて出射される結果、画像のコントラストを低下させるという問題点がある。それ故、特許文献2に記載の構成では、無機材料を用いてスペーサーを構成した場合、スペーサーの内部に進入した光が画像に影響を及ぼすことを回避することのできないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る電気光学装置の一態様は、画素電極と、平面視で前記画素電極と重ならない領域に設けられた凹部内に一部が埋め込まれ、金属材料からなるスペーサーと、前記スペーサーを覆う絶縁膜と、を有する第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置された電気光学層と、を備え、前記第1基板は、平面視で前記スペーサーと重なる領域において、前記凹部の外縁に沿うように前記スペーサーと前記画素電極との間に設けられる第1部分と、前記スペーサーの側面に沿うように前記第1部分から前記第2基板側へ突出する第2部分と、を有する絶縁性保護膜を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る電気光学装置は、各種電子機器に用いることができる。電子機器が投射型表示装置である場合、電子機器には、前記電気光学装置に入射する照明光を出射する照明光学系と、前記電気光学装置から出射された変調光を投射する投射光学系と、が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明を適用した電気光学装置の一態様を示す平面図。
【
図2】本発明の実施形態1に係る電気光学装置の断面を模式的に示す説明図。
【
図3】
図1に示す電気光学装置の電気的な構成を示す説明図。
【
図4】
図1に示す電気光学装置において隣り合う複数の画素の平面図。
【
図5】
図2に示す断面の一部を拡大して模式的に示す説明図。
【
図6】
図5に示すスペーサーを拡大して示す説明図。
【
図7】
図6に示すスペーサーの製造方法を示す工程断面図。
【
図8】本発明の実施形態2に係る電気光学装置の説明図。
【
図9】本発明の実施形態3に係る電気光学装置の説明図。
【
図10】本発明の実施形態4に係る電気光学装置の説明図。
【
図11】電子機器の一例であるパーソナルコンピューターを示す斜視図。
【
図12】電子機器の一例であるスマートフォンを示す平面図。
【
図13】電子機器の一例であるプロジェクターを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。また、以下の説明において、第1基板10に形成される層を説明する際、上層側あるいは表面側とは基板本体19が位置する側とは反対側(第2基板20が位置する側)を意味し、下層側とは基板本体19が位置する側を意味する。
【0010】
[実施形態1]
1.全体構成
図1は、本発明を適用した電気光学装置1の一態様を示す平面図であり、電気光学装置1を第2基板20側からみた様子を示してある。
図2は、本発明の実施形態1に係る電気光学装置1の断面を模式的に示す説明図である。
【0011】
図1および
図2に示すように、電気光学装置1では、第1基板10と第2基板20とが所定の隙間を介してシール材107によって貼り合わされており、第1基板10と第2基板20とは対向している。シール材107は第2基板20の外縁に沿うように枠状に設けられており、第1基板10と第2基板20との間でシール材107によって囲まれた領域に液晶層からなる電気光学層80が配置されている。シール材107は、光硬化性を備えた接着剤、あるいは光硬化性および熱硬化性を備えた接着剤である。第1基板10および第2基板20はいずれも四角形であり、電気光学装置1の略中央には、表示領域10aが四角形の領域として設けられている。かかる形状に対応して、シール材107も略四角形に設けられている。
【0012】
第1基板10は、基板本体として、石英基板やガラス基板等からなる基板本体19を有している。基板本体19の第2基板20側の一方面19s側において、表示領域10aの外側には、第1基板10の一辺に沿ってデータ線駆動回路101および複数の端子102が形成され、この一辺に隣接する他の辺に沿って走査線駆動回路104が形成されている。端子102には、フレキシブル配線基板105が接続されており、第1基板10には、フレキシブル配線基板を介して各種電位や各種信号が入力される。また、基板本体19の一方面19sにおいて、表示領域10aには、ITO(Indium Tin Oxide)膜等からなる透光性の複数の画素電極9a、および複数の画素電極9aの各々に電気的に接続するスイッチング素子(
図2には図示せず)がマトリクス状に形成されている。画素電極9aに対して第2基板20側には第1配向膜16が形成されており、画素電極9aは、第1配向膜16によって覆われている。従って、基板本体19から第1配向膜16までが第1基板10に相当する。
【0013】
第2基板20は、基板本体として、石英基板やガラス基板等からなる基板本体29を有している。基板本体29において第1基板10と対向する一方面29s側には、ITO膜等からなる透光性の共通電極21が形成されており、共通電極21に対して第1基板10側には第2配向膜26が形成されている。共通電極21は、基板本体29の略全面に形成されており、第2配向膜26によって覆われている。従って、基板本体29から第2配向膜26までが第2基板20に相当する。
【0014】
基板本体29と共通電極21との間には、樹脂、金属または金属化合物からなる遮光部材27aが形成されている。遮光部材27aは、表示領域10aの外縁に沿って延在する見切りである。遮光部材27aと共通電極21との間には保護膜22が形成されている。第1基板10には、遮光部材27aと平面視で重なる領域に、画素電極9aと同時形成されたダミー画素電極9bが形成されている。
【0015】
第1基板10には、シール材107より外側において第2基板20の角部分と重なる領域に、第1基板10と第2基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通用電極109が形成されている。基板間導通用電極109には、導電粒子を含んだ基板間導通材109aが配置されており、第2基板20の共通電極21は、基板間導通材109aおよび基板間導通用電極109を介して、第1基板10側に電気的に接続されている。このため、共通電極21は、第1基板10の側から共通電位が印加されている。
【0016】
第1配向膜16および第2配向膜26は、SiOx(x≦2)、TiO2、MgO、Al2O3等の斜方蒸着膜からなる無機配向膜である。従って、第1配向膜16および第2配向膜26は、カラムと称せられる柱状体が第1基板10および第2基板20に対して斜めに形成された柱状構造体層からなる。それ故、第1配向膜16および第2配向膜26は、電気光学層80に用いた負の誘電率異方性を備えた液晶分子80aを第1基板10および第2基板20に対して斜め傾斜配向させ、液晶分子80aにプレチルトを付している。画素電極9aと共通電極21との間に電圧を印加しない状態で、第1基板10および第2基板20に対して垂直な方向と液晶分子80aの長軸方向(配向方向)とがなす角度がプレチルト角である。本形態において、プレチルト角は、例えば5°である。
【0017】
このようにして、電気光学装置1は、VA(Vertical Alignment)モードの電気光学装置として構成されている。かかる電気光学装置1では、画素電極9aと共通電極21との間に電圧が印加されると、液晶分子80aは、プレチルトの方向において、第1基板10および第2基板20に対する傾き角が小さくなる方向に変位する。かかる変位の方向がいわゆる明視方向である。本形態においては、
図1に示すように、フレキシブル配線基板が接続されている側を時計の6時の方向としたとき、液晶分子80aの配向方向(明視方向)は、矢印Eで示すように、平面視において、時計の4時30分の方向から10時30分に向かう方向である。
【0018】
本形態の電気光学装置1において、画素電極9aおよび共通電極21がITO膜等の透光性導電膜により形成されており、電気光学装置1は、透過型電気光学装置として構成されている。透過型の電気光学装置1では、第1基板10および第2基板20のうちの一方の基板側から電気光学層80に入射した光が他方の基板側を透過して出射される間に変調されて画像を表示する。本実施形態では、矢印Lで示すように、第1基板10の側から電気光学層80に入射した光が第2基板20を透過して出射される間に変調されて画像を表示する。従って、第1基板10は光の入射側に設けられ、第2基板20は、第1基板10に対して光の出射側で対向している。
【0019】
このように構成した電気光学装置1において、第1基板10および第2基板20のうちの少なくも一方には、画素電極9aと対向するようにレンズが構成されることがある。本形態では、第2基板20にレンズが構成されている。より具体的には、第2基板20において、基板本体29の一方面29sの側には、画素電極9aと平面視で重なる位置に、電気光学層80と反対側に凹んだ曲面290が設けられている。曲面290は、レンズ層23で覆われている。基板本体29は石英基板であり、基板本体29の屈折率は1.48である。レンズ層23は酸窒化シリコン(SiON)であり、レンズ層23の屈折率は1.58~1.68である。従って、曲面290は、正のパワーを有するレンズを構成している。
【0020】
2.電気的な構成
図3は、
図1に示す電気光学装置1の電気的な構成を示す説明図である。
図3に示すように、電気光学装置1は、少なくとも表示領域10aにおいてX軸方向に延在する複数の走査線3aと、Y軸方向に延在する複数のデータ線6aとを有しており、走査線3aとデータ線6aとは、第1基板10において、互いに絶縁された状態にある。本実施形態において、第1基板10は、走査線3aおよびデータ線6aに沿って延在する容量線5aを有している。また、複数の走査線3aと複数のデータ線6aとの各交差に対応して画素Pが設けられている。複数の画素Pは各々、画素電極9a、スイッチング素子30、および蓄積容量50を備えている。走査線3aはスイッチング素子30のゲートに電気的に接続され、データ線6aはスイッチング素子30のソースに電気的に接続されている。画素電極9aはスイッチング素子30のドレインに電気的に接続されている。
【0021】
データ線6aは、
図1に示すデータ線駆動回路101に接続されており、データ線駆動回路101から供給される画像信号D1、D2、…、Dnを各画素Pに供給する。走査線3aは、
図1に示す走査線駆動回路104に接続されており、走査線駆動回路104から供給される走査信号SC1、SC2、…、SCmを順次、各画素Pに供給する。データ線駆動回路101からデータ線6aに供給される画像信号D1~Dnは、この順に線順次で供給してもよく、互いに隣り合う複数のデータ線6a同士に対してグループ毎に供給してもよい。走査線駆動回路104は、走査線3aに対して、走査信号SC1~SCmを所定のタイミングで線順次で供給する。
【0022】
電気光学装置1では、スイッチング素子30が走査信号SC1~SCmの入力によりオン状態とされる期間、データ線6aから供給される画像信号D1~Dnが所定のタイミングで画素電極9aに書き込まれる。画素電極9aを介して電気光学層80に書き込まれた所定レベルの画像信号D1~Dnは、画素電極9aと電気光学層80を介して対向配置された共通電極21との間で一定期間保持される。画像信号D1~Dnの周波数は例えば60Hzである。本実施形態においては、画素電極9aと電気光学層80との間に保持された画像信号D1~Dnがリークするのを防止するため、画素電極9aと共通電極21との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量50が接続されている。蓄積容量50は、スイッチング素子30のドレインと容量線5aとの間に設けられている。
【0023】
3.画素の具体的構成例
図4は、
図1に示す電気光学装置1において隣り合う複数の画素の平面図である。
図5は、
図2に示す断面の一部を拡大して示す説明図である。なお、
図4には、スイッチング素子30の半導体層30a、遮光層7a、8a、走査線3a、データ線6a、容量線5a、および画素電極9aのみを以下の線で示してあり、中継電極、容量電極、およびコンタクトホールの図示を省略してある。また、
図4では、互いの端部が平面視で重なり合う層については、層の形状等が分かりやすいように、端部の位置をずらしてある。
遮光層8a=細くて長い破線
半導体層30a=細くて短い点線
走査線3a=太い実線
データ線6a=細い一点鎖線
容量線5a=太い一点鎖線
遮光層7a=細い二点鎖線
画素電極9a=太い破線
【0024】
図4および
図5に示すように、第1基板10において第2基板20と対向する面には、複数の画素の各々に画素電極9aが形成されており、隣り合う画素電極9aにより挟まれた画素間領域12に沿ってデータ線6aおよび走査線3aが形成されている。画素間領域12は縦横に延在しており、走査線3aは画素間領域12のうち、X方向に延在する第1画素間領域に沿って直線的に延在し、データ線6aは、Y方向に延在する第2画素間領域に沿って直線的に延在している。データ線6aと走査線3aとの交差に対応してスイッチング素子30が形成されており、本形態において、スイッチング素子30は、データ線6aと走査線3aとの交差領域13およびその付近を利用して形成されている。第1基板10には容量線5aが形成されており、容量線5aには定電位として共通電位が印加されている。容量線5aは、走査線3aおよびデータ線6aに重なるように延在して格子状に形成されている。スイッチング素子30の下層側には遮光層8aが形成されており、遮光層8aは、走査線3aおよびデータ線6aと重なるように格子状に延在している。スイッチング素子30の上層側には遮光層7aが形成されており、遮光層7aは、データ線6aと重なるように延在している。遮光層7aには定電位として共通電位が印加されている。
【0025】
基板本体19の電気光学層80側に位置する一方面19sには、層間絶縁膜41、42、43、44、45が順に積層されている。基板本体19と層間絶縁膜41との間に遮光層8aが形成されている。遮光層8aは、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属化合物膜等の遮光性の導電膜からなる。遮光層8aは、基板本体19とスイッチング素子30との間において、走査線3aおよびデータ線6aに沿うように延在しており、画素電極9aと平面視で重なる領域が開口部になっている。遮光層8aは、タングステンシリサイド(WSi)、タングステン、窒化チタン等からなり、第1基板10に入射した光が、後述する半導体層30aに入射してスイッチング素子30で光電流に起因する誤動作が発生することを防止する。遮光層8aを走査線として構成する場合もあり、この場合、後述するゲート電極31aと遮光層8aを導通させた構成とする。
【0026】
層間絶縁膜41と層間絶縁膜42との間には、スイッチング素子30が形成されている。スイッチング素子30は、半導体層30aと、半導体層30aの長さ方向と直交する方向に延在して半導体層30aの長さ方向の中央部分に重なるゲート電極31aとを備えている。本形態において、ゲート電極31aは走査線3aの一部からなる。ゲート電極31aおよび走査線3aは、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属化合物膜等を含む遮光性の導電膜からなる。
【0027】
層間絶縁膜42と層間絶縁膜43との間には、容量線5aが設けられており、容量線5aには、ドレイン電極(図示せず)が誘電体層を介して対向し、蓄積容量50を構成している。容量線5aは、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属化合物膜等を含む遮光性の導電膜からなる。
【0028】
層間絶縁膜43と層間絶縁膜44との間にはデータ線6aが形成されており、データ線6aは、層間絶縁膜42、43を貫通するコンタクトホール(図示せず)を介して半導体層30aのソースに導通している。データ線6aは、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属化合物膜等を含む遮光性の導電膜からなる。
【0029】
層間絶縁膜44と層間絶縁膜45との間には遮光層7aが形成されている。遮光層7aは、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属化合物膜等を含む遮光性の導電膜からなる。遮光層7aは、定電位として共通電位が印加されており、シールド層としても機能する。なお、遮光層7aを容量線として構成することもある。
【0030】
層間絶縁膜45の上層側にはITO膜等からなる画素電極9aが形成されており、画素電極9aは、ドレイン電極(図示せず)に導通している。層間絶縁膜45の表面は平坦化されている。画素電極9aの表面側には第1配向膜16が形成されている。なお、層間絶縁膜45と画素電極9aとの間に、ボロンドープドシリケートガラス(BSG膜)からなる保護層が形成されることがある。
【0031】
4.柱状のスペーサー14の構成
図6は、
図4のA-A′断面を模式的に示す説明図である。
図5に示すスペーサー14を拡大して示す説明図である。
図4および
図5に示すように、第1基板10および第2基板20の一方の基板において、隣り合う画素電極9aに挟まれた画素間領域と重なる位置には、他方の基板に向けて突出した金属材料からなる柱状のスペーサー14とが形成されている。本形態において、スペーサー14は、第1基板10において、画素間領域12のうち、交差領域13に相当する位置に形成されている。従って、
図2に示す複数の曲面290のうち、4つの曲面290で囲まれた領域と対向している。本形態において、スペーサー14の側面141は、根元側が先端側より太くなるようなテーパ面になっている。
【0032】
スペーサー14は、金属材料からなる。このため、
図6に示すように、第1基板10には、スペーサー14の表面を覆う酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁膜17が形成されており、第1配向膜16は、スペーサー14に絶縁膜17を介して重なっている。絶縁膜17は、例えば、酸化シリコン等を第1基板10に対して垂直な法線V方向から蒸着された膜である。このため、絶縁膜17は、スペーサー14を覆うとともに、画素電極9aの表面にも形成されている。これに対して、第1配向膜16は、矢印Dに示すように、第1基板10に対する法線Vに対して斜めに傾いた方向から、
図1に矢印Eに沿う方位から斜方蒸着することによって形成される。従って、スペーサー14の側面のうち、蒸着方向とは反対側、およびスペーサー14の陰になる部分には、第1配向膜16が薄く形成されるか、全く形成されない場合もある。本形態において、スペーサー14は、少なくとも表面が低反射材料からなる。例えば、スペーサー14は、窒化チタンからなり、窒化チタンは、反射率が低い。
【0033】
第1基板10には、スペーサー14と平面視で重なる位置に、基板本体19に向けて凹んだ凹部45sが形成されており、スペーサー14の根元部分142は、凹部45sに埋まっている。本形態において、スペーサー14は、画素電極9aと縁同士が平面視で重なるように形成されている。但し、スペーサー14は、画素電極9aの端部と重なるように形成される場合もある。このような場合、スペーサー14と画素電極9aとの間には、酸化アルミニウム等の絶縁性保護膜11が設けられる。本形態において、スペーサー14は、凹部45sの内側に位置する根元部分142に対して先端側で隣り合う部分は、根元部分142より太くなっている。このため、根元部分142と先端側で隣り合う部分との間には、根元部分142から2段に張り出した段部143、144が形成されており、段部143、144と画素電極9aとの間を埋めるように絶縁性保護膜11が設けられている。
【0034】
5.柱状のスペーサー14の製造方法
図7は、
図6に示すスペーサー14の製造方法を示す工程断面図である。
図6に示すように、第1基板10にスペーサー14を製造するには、画素電極9aを形成した後、
図7に示す工程ST1において、酸化アルミニウム等の絶縁性保護膜11を形成する。次に、
図7に示す工程ST2において、エッチングマスクを形成した状態で絶縁性保護膜11および層間絶縁膜45にエッチングを行い、凹部45sを形成する。その際、絶縁性保護膜11はエッチングストッパーとして機能し、画素電極9aを保護する。次に、
図7に示す工程ST3において、金属膜を形成した後、金属膜をパターニングし、スペーサー14を形成する。次に、絶縁性保護膜11のうち、スペーサー14から張り出している部分をフッ化水素酸等を含むエッチング液で除去する。しかる後には、
図6に示すように、絶縁膜17および第1配向膜16を順次、蒸着により形成する。
【0035】
6.本形態の主な効果
以上説明したように、本形態において、スペーサー14は、金属材料からなるため、樹脂製のスペーサーと違って、スペーサーから樹脂成分が溶出して電気光学層80を劣化させる等の問題が発生しない。また、スペーサー14は、金属材料からなるため、スペーサー14の内部に進入した光がスペーサー14の側面と電気光学層80との界面で反射し、特定の角度に向けて出射されるという事態が発生しない。それ故、スペーサー14から出射される光に起因する画像のコントラストの低下が発生しない。また、スペーサー14は、少なくとも表面が低反射材料からなるため、スペーサー14の側面141での反射によって、画像のコントラストが低下するという事態が発生しにくい。
【0036】
また、スペーサー14の表面が絶縁膜17で覆われているため、スペーサー14が電気光学層80に対して電気的な影響を及ぼしにくい。また、スペーサー14と画素電極9aとの間には、絶縁性保護膜11が設けられているため、スペーサー14が金属材料からなる場合でも、隣り合う画素電極9aがスペーサー14を介して短絡するという事態が発生しにくい。
【0037】
また、スペーサー14は、金属材料からなるため、強度が高い。また、第1基板10には、スペーサー14と平面視で重なる位置に、基板本体19に向けて凹んだ凹部45sが形成されており、スペーサー14の根元部分142は、凹部45sに埋まっている。このため、スペーサー14を過度に太くしなくても、スペーサー14の変形や倒壊等が発生しにくい。それ故、スペーサー14を第1基板10において遮光部材18を構成するデータ線6aや走査線3a等の配線に幅より細くすることができるので、スペーサー14によって画素開口率が低下するという事態が発生しにくい。
【0038】
[実施形態2]
図8は、本発明の実施形態2に係る電気光学装置1の説明図である。なお、本形態および後述する実施形態3、4の基本的な構成は実施形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0039】
実施形態1では、スペーサー14が電気的にフロート状態であったが、本形態では、
図8に示すように、スペーサー14が凹部45sで、定電位としての共通電位が印加された遮光層7aと電気的に接続されている。このため、スペーサー14は、共通電位が印加される。このため、データ線6aと走査線3aとの交差領域13付近では、画素電極9aとスペーサー14との間の電気力線によって液晶分子80aの姿勢を制御できるので、ドメインの発生を抑制することができる。
【0040】
[実施形態3]
図9は、本発明の実施形態3に係る電気光学装置1の説明図である。実施形態1では、スペーサー14が単一の金属材料によって構成されていたが、本形態では、
図9に示すように、スペーサー14は、第1金属材料からなる芯部14aと、芯部の表面を覆う第2金属材料の層14bとを備え、第2金属材料は、第1金属材料より反射率が低い。このため、芯部14aについては、反射率は高いが成膜速度が速い金属材料によって構成し、層14bについては、成膜速度は遅いが、反射率が低い金属材料によって構成することができる。例えば、芯部14aについては、アルミニウムまたはアルミニウム合金とし、層14bについては窒化チタンとすることができる。
【0041】
かかる態様によれば、表面での反射率が低いスペーサー14を効率よく形成できる。なお、本形態に係る構成は、実施形態2に係る電気光学装置1に適用してもよい。
【0042】
[実施形態4]
図10は、本発明の実施形態4に係る電気光学装置1の説明図である。実施形態1、2、3では、第1基板10にスペーサー14を設けたが、本形態では、
図10に示すように、第2基板20にスペーサー14が設けられている。かかる態様は、例えば、共通電極21を形成した後、スペーサー14を配置する領域から共通電極21を除去し、その後、
図7に示す工程ST1、ST2、ST3、ST4を順に行うことによって実現することができる。この場合、スペーサー14の根元部分142は、保護膜22に形成された凹部22sの内側に位置する。
【0043】
なお、第2基板20にスペーサー14を設ける場合に実施形態2、3で説明した構成を採用してもよい。
【0044】
[他の実施形態]
上記実施形態では、スペーサー14が角柱状であったが、スペーサー14が円柱状であってもよい。また、上記実施形態ではスペーサー14が柱状であったが、画素電極9aの外縁に沿って延在する壁状にあってもよい。
【0045】
上記実施形態では、VAモードの電気光学装置に本発明を適用したが、TNモード、IPSモード、FFSモード、OCBモードの電気光学装置に本発明を適用してもよい。上記の実施形態では、電気光学装置の一例として液晶装置について説明したが、本発明の電気光学装置はこれに限定されない。例えば、本発明の電気光学装置は、イメージセンサー等にも適用することができる。また、例えば、有機EL(Electro Luminescence)、無機ELまたは発光ポリマー等の発光素子を用いた電気光学装置に本発明を適用してもよい。また、着色された液体と、当該液体に分散された白色の粒子とを含むマイクロカプセルを用いた電気泳動表示パネルに対して本発明を適用してもよい。
【0046】
[電子機器]
電気光学装置1は、以下に説明する各種電子機器に用いることができる。
図11は、電子機器の一例であるパーソナルコンピューター2000を示す斜視図である。パーソナルコンピューター2000は、各種の画像を表示する電気光学装置と、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設置される本体部2010と、制御部2003とを有する。制御部2003は、例えばプロセッサーおよびメモリーを含み、電気光学装置1の動作を制御する。
【0047】
図12は、電子機器の一例であるスマートフォン3000を示す平面図である。スマートフォン3000は、操作ボタン3001と、各種の画像を表示する電気光学装置1と、制御部3002と、を有する。操作ボタン3001の操作に応じて電気光学装置1に表示される画面内容が変更される。制御部3002は、例えばプロセッサーおよびメモリーを含み、電気光学装置1の動作を制御する。
【0048】
図13は、電子機器の一例であるプロジェクターを示す模式図である。投射型表示装置4000は、例えば、3板式のプロジェクターである。電気光学装置1rは、赤色の表示色に対応する電気光学装置1であり、電気光学装置1gは、緑の表示色に対応する電気光学装置1であり、電気光学装置1bは、青色の表示色に対応する電気光学装置1である。すなわち、投射型表示装置4000は、赤、緑および青の表示色に各々対応する3個の電気光学装置1r、1g、1bを有する。制御部4005は、例えばプロセッサーおよびメモリーを含み、電気光学装置1の動作を制御する。
【0049】
照明光学系4001は、光源である照明装置4002からの出射光のうち赤色成分rを電気光学装置1rに供給し、緑色成分gを電気光学装置1gに供給し、青色成分bを電気光学装置1bに供給する。各電気光学装置1r、1g、1bは、照明光学系4001から供給される各単色光を表示画像に応じて変調するライトバルブ等の光変調器として機能する。投射光学系4003は、各電気光学装置1r、1g、1bからの出射光を合成して投射面4004に投射する。
【0050】
なお、本発明の電気光学装置が適用される電子機器としては、例示した機器に限定されず、例えば、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、PDA(Personal Digital Assistants)、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、車載用の表示器、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、およびPOS(Point of sale)端末等が挙げられる。さらに、本発明が適用される電子機器としては、プリター、スキャナー、複写機、ビデオプレーヤー、またはタッチパネルを備えた機器等が挙げられる。
【0051】
以上、好適な実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は前述の実施形態に限定されない。また、本発明の各部の構成は、前述の実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成に置換でき、また、任意の構成を付加できる。
【符号の説明】
【0052】
1、1b、1g、1r…電気光学装置、3a…走査線、5a…容量線、6a…データ線、7a、8a…遮光層、9a…画素電極、10…第1基板、10a…表示領域、11…絶縁性保護膜、12…画素間領域、13…交差領域、14…スペーサー、14a…芯部、14b…層、16…第1配向膜、17…絶縁膜、19、29…基板本体、20…第2基板、21…共通電極、22s、45s…凹部、26…第2配向膜、30…スイッチング素子、45s…凹部、80…電気光学層、80a…液晶分子、141…側面、142…根元部分、2000…パーソナルコンピューター、3000…スマートフォン、4000…投射型表示装置、4001…照明光学系、4003…投射光学系。