(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ピッキング設備
(51)【国際特許分類】
B65G 1/137 20060101AFI20231121BHJP
B65G 47/52 20060101ALI20231121BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B65G1/137 A
B65G47/52 B
B65G1/00 501B
(21)【出願番号】P 2020021777
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2022-02-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】清川 渉
(72)【発明者】
【氏名】味生 淳
(72)【発明者】
【氏名】楠部 浩幸
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/045181(WO,A1)
【文献】特開2015-040118(JP,A)
【文献】特開平06-298216(JP,A)
【文献】特開2015-040123(JP,A)
【文献】特開2011-032031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/137
B65G 1/00
B65G 47/52
B65G 43/08
B65G 47/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口部を有するとともに内部に物品を収容可能な容器を搬送する第1コンベヤと、
ピッキング対象の物品である対象物品を単体で搬送する第2コンベヤと、を備え、
前記第1コンベヤの搬送面の高さが、前記第2コンベヤの搬送面の高さよりも低く設定され、
前記第2コンベヤは、端部が前記第1コンベヤに隣接する状態で前記第1コンベヤの搬送方向に交差する方向に沿って配置されているとともに、前記第1コンベヤ側の端部に、当該第2コンベヤの搬送面よりも上方に突出するストッパーを有しており、
前記第2コンベヤの搬送面の高さと前記第1コンベヤの搬送面の高さとの差が、前記容器の高さから前記ストッパーの高さを差し引いた値に合わせて設定されているピッキング設備。
【請求項2】
前記容器から前記対象物品を取り出すピッキング装置を更に備え、
前記ピッキング装置は、前記対象物品を保持可能な保持部と、前記保持部を前記第1コンベヤの搬送面に沿う方向に移動させる移動機構と、前記保持部を上下方向に移動させる昇降機構と、を備える、請求項
1に記載のピッキング設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピッキング設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動倉庫を備えた物流設備において、要求された物品をピッキングするピッキング設備が利用されている。このようなピッキング設備として、内部に対象物品を収容可能な上方開放型の容器を搬送する第1コンベヤと、対象物品を単体で搬送する第2コンベヤとを備えたものが、特開2017-30974号公報(特許文献1)に開示されている。この特許文献1のピッキング設備では、ピッキング位置において、作業者は、第1コンベヤ(ピッキングコンベヤ32)上を搬送されてくる容器(元梱ケースCm)内から必要な対象物品を取り出して、第2コンベヤ(ピック品送りコンベヤ36)に移載する。その後、第2コンベヤ上を搬送された対象物品は、出荷先毎に出荷用容器(集品ケースCs)に収容されて出荷されていく。
【0003】
ここで、特許文献1のピッキング設備では、第1コンベヤの搬送面の高さが第2コンベヤの搬送面の高さよりも高く設定されている。しかし、このような構成では、容器内から対象物品を取り出して第2コンベヤ上に載置する際の対象物品の上下方向の移動ストロークは、容器の側壁を乗り越えるための上方移動分と、その上昇位置から第2コンベヤの搬送面までの下方移動分との合計分となる。第2コンベヤの搬送面の高さは第1コンベヤの搬送面の高さよりも低いため、上記移動ストロークは、必然的に上記上方移動分の2倍以上となる。すなわち、ピッキングの際の個々の対象物品の移動ストロークが大きく、このため、作業効率の点で改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、作業効率に優れたピッキング設備の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るピッキング設備は、
上方に開口部を有するとともに内部に物品を収容可能な容器を搬送する第1コンベヤと、
ピッキング対象の物品である対象物品を単体で搬送する第2コンベヤと、を備え、
前記第1コンベヤの搬送面の高さが、前記第2コンベヤの搬送面の高さよりも低く設定され、
前記第2コンベヤの搬送面の高さと前記第1コンベヤの搬送面の高さとの差が、前記容器の高さに基づいて設定されている。
【0007】
この構成によれば、例えば第1コンベヤ上にある容器の上端部付近の位置に第2コンベヤの搬送面を配置する等、第1コンベヤ上にある容器の高さに合わせた適切な高さに第2コンベヤの搬送面を配置することができる。このため、容器内から対象物品を取り出して第2コンベヤ上に載置する場合の対象物品の上下方向の移動ストロークを、容器の側壁を乗り越えるための上方移動分に近づけることができる。すなわち、対象物品の上下方向の移動ストロークを小さく抑えることができる。なお、第2コンベヤ上を搬送されてくる対象物品を第1コンベヤ上にある容器に収容する場合にも同様のことが言える。従って、作業効率に優れたピッキング設備を実現することができる。
【0008】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】ピッキング用コンベヤと集品コンベヤとの上下方向の位置関係の説明図
【
図6】ピッキング用コンベヤと集品コンベヤとの上下方向の他の位置関係の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
ピッキング設備の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、ピッキング設備の平面図を示す
図1の左右方向を「X方向」とし、同図の上下方向を「Y方向」とする。また、ピッキング設備の側面図を示す
図2の上下方向を「Z方向」とする。本実施形態では、Z方向が現実の上下方向に一致している。X方向、Y方向、及びZ方向は、互いに交差(本例では直交)している。
【0011】
ピッキング設備1は、例えば自動倉庫90(
図4を参照)を備えた物流設備において、要求された物品をピッキングするための設備である。本実施形態のピッキング設備1は、容器Cに収容されている同種の複数の物品Aから1つ以上の対象物品Asを取り出し、これを複数種類の物品A(対象物品As)について行い、それらを組み合わせて集品用の別の容器に移載するために用いられる。
【0012】
容器Cは、上方に開口部Coを有する箱状に形成されている。また、容器Cは、直方体状に形成されており、周囲(四方)を取り囲む側壁Cwを有している。側壁Cwによって区画された空間により容器Cの内部空間が形成されており、当該空間に物品Aが収容可能となっている。自動倉庫90には、それぞれに同種の物品Aを収容した容器Cが複数種保管されている。それらのうちの1つ以上の容器Cが、本実施形態のピッキング設備1に供給されてくる。なお、ピッキング設備1で必要な対象物品Asが取り出された後の容器Cは、再度、自動倉庫90に戻される。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のピッキング設備1は、出庫コンベヤ10と、ピッキング用コンベヤ20と、入庫コンベヤ30と、集品コンベヤ40と、ピッキング装置50と、作業スペース60とを備えている。ピッキング用コンベヤ20は、X方向に沿って配置されている。出庫コンベヤ10、入庫コンベヤ30、及び集品コンベヤ40は、ピッキング用コンベヤ20に対して同じ側(
図1における上側)において、Y方向に沿って互いに平行に配置されている。本実施形態では、ピッキング用コンベヤ20が「第1コンベヤ」に相当し、集品コンベヤ40が「第2コンベヤ」に相当する。
【0014】
出庫コンベヤ10は、自動倉庫90から供給されてくる、物品Aを収容した容器Cを搬送する。本実施形態の出庫コンベヤ10は、直列に接続された第1出庫コンベヤ10Aと第2出庫コンベヤ10Bとを有する。出庫コンベヤ10は、第1出庫コンベヤ10Aの上流側が自動倉庫90に接続されているとともに、第2出庫コンベヤ10Bの下流側端部がピッキング用コンベヤ20の上流側端部20uに接続されている。出庫コンベヤ10は、自動倉庫90から受け取った容器Cを、Y方向に沿って、ピッキング用コンベヤ20へと搬送する。本実施形態では、
図2に示すように、第2出庫コンベヤ10BはXY平面に平行に配置されており、第1出庫コンベヤ10Aは上流側(自動倉庫90側)が高くなるように傾斜して配置されている。出庫コンベヤ10としては、例えばローラコンベヤ、ベルトコンベヤ、及びスラットコンベヤ等、各種の公知のコンベヤを用いることができる。
【0015】
ピッキング用コンベヤ20は、出庫コンベヤ10から受け取った、物品Aを収容した容器Cを搬送する。ピッキング用コンベヤ20は、X方向に沿って容器Cを搬送する。ピッキング用コンベヤ20のX方向における中央領域がピッキング位置Pとなっており、このピッキング位置Pにおいて、ピッキングオーダーによって要求された物品のピッキングが行われる。この、ピッキングオーダーによって要求された物品が、ピッキング対象の物品Aであり、これを本実施形態において「対象物品As」と言う。ピッキング用コンベヤ20の下流側端部20dは、入庫コンベヤ30の上流側端部に接続されている。ピッキング用コンベヤ20は、XY平面に平行に配置されている。ピッキング用コンベヤ20としては、例えばローラコンベヤ、ベルトコンベヤ、及びスラットコンベヤ等、各種の公知のコンベヤを用いることができる。
【0016】
入庫コンベヤ30は、ピッキング用コンベヤ20から受け取った、対象物品As以外の物品A(非対象物品)を収容した容器C又は空の容器Cを搬送する。本実施形態の出庫コンベヤ10は、直列に接続された第1入庫コンベヤ30Aと第2入庫コンベヤ30Bとを有する。入庫コンベヤ30は、第1入庫コンベヤ30Aの上流側端部がピッキング用コンベヤ20の下流側端部20dに接続されているとともに、第2入庫コンベヤ30Bの下流側が自動倉庫90に接続されている。入庫コンベヤ30は、ピッキング用コンベヤ20から受け取った、ピッキング後の容器Cを、Y方向に沿って、自動倉庫90側へと搬送する。本実施形態では、
図2に示すように、第1入庫コンベヤ30AはXY平面に平行に配置されており、第2入庫コンベヤ30Bは下流側(自動倉庫90側)が高くなるように傾斜して配置されている。入庫コンベヤ30としては、例えばローラコンベヤ、ベルトコンベヤ、及びスラットコンベヤ等、各種の公知のコンベヤを用いることができる。
【0017】
出庫コンベヤ10、ピッキング用コンベヤ20、及び入庫コンベヤ30は、平面視(Z方向に見た状態)で、全体として角張ったU字状(「コ」の字状)に配置されている。
【0018】
集品コンベヤ40は、ピッキング位置Pにおいて容器Cから取り出された対象物品Asを搬送する。本実施形態では、集品コンベヤ40は、対象物品Asが直接載置された状態で、当該対象物品Asを単体で搬送する。集品コンベヤ40は、端部(ここでは上流側端部)がピッキング用コンベヤ20に隣接する状態で、Y方向に沿って配置されている。こうして、集品コンベヤ40は、個々の対象物品Asを、ピッキング用コンベヤ20から離間する方向(
図1における上側)へ搬送する。集品コンベヤ40には、要求された対象物品Asが全て取り出されたかどうかを確認する等の目的で、ロードセルが内蔵されていることが好ましい。
【0019】
集品コンベヤ40の個数は特に限定されないが、本実施形態では、複数の集品コンベヤ40が設けられている。具体的には、第1集品コンベヤ40A、第2集品コンベヤ40B、及び第3集品コンベヤ40Cの、互いに独立した3つの集品コンベヤ40が設けられている。これら3つの集品コンベヤ40A~40Cは、X方向に一定の隙間を隔てつつ並列配置されている。そして、X方向において、3つの集品コンベヤ40A~40Cの両側に分かれて、それらを間に挟むように出庫コンベヤ10と入庫コンベヤ30とが配置されている。言い換えれば、角張ったU字状に配置された出庫コンベヤ10、ピッキング用コンベヤ20、及び入庫コンベヤ30の内側領域に、複数の集品コンベヤ40の少なくとも一部が配置されている。このような配置構成とすることで、スペースの有効活用を図ることができ、ピッキング設備1の小型化を図ることができる。
【0020】
集品コンベヤ40の下流側には、集品用の別の容器(集品用容器)が供給され、出荷先毎に対象物品Asが集品用容器に収容されて出荷されていく。本実施形態のように複数の集品コンベヤ40が設けられている場合には、集品コンベヤ40の個数に対応する出荷先分のピッキングを同時に行うことができる。よって、全体としてのピッキング効率を向上させることができる。
【0021】
図2及び
図3に示すように、本実施形態のピッキング設備1では、集品コンベヤ40がピッキング用コンベヤ20よりも上方に配置されている。これにより、ピッキング用コンベヤ20の搬送面20aの高さH1は、集品コンベヤ40の搬送面40aの高さH2よりも低くなっている。なお、ピッキング用コンベヤ20の搬送面20aは、ピッキング用コンベヤ20がローラコンベヤである場合には各ローラに共通に接する仮想平面であり、ベルトコンベヤやスラットコンベヤである場合にはベルト又はスラットの表面である。集品コンベヤ40の搬送面40aに関しても同様である。
【0022】
集品コンベヤ40の搬送面40aの高さH2とピッキング用コンベヤ20の搬送面20aの高さH1との差(以下、「コンベヤ間高低差」と言う場合がある。)ΔHは、容器Cの高さH3に基づいて設定されている。すなわち、このコンベヤ間高低差ΔHは、容器Cの高さH3に基づいた高さに設定される。ここで、「容器Cの高さH3に基づいた高さ」とは、容器Cの高さH3を基準として定まる高さであり、容器Cの高さH3そのものだけでなく、容器Cの高さH3に対して所定量だけ高い高さ又は低い高さを含む概念である。この場合の「所定量」は、ピッキング設備1の構造、ピッキング設備1の設置環境や制御性、容器Cや対象物品Asの取扱性等を考慮して適宜設定されて良い。
【0023】
本実施形態では、
図3に示すように、集品コンベヤ40の搬送面40aの高さH2とピッキング用コンベヤ20の搬送面20aの高さH1との差ΔHが、容器Cの高さH3に合わせて設定されている。より具体的には、コンベヤ間高低差ΔHが容器Cの高さH3に等しくなる(ΔH=H2-H1=H3)ように、ピッキング用コンベヤ20及び集品コンベヤ40のZ方向(上下方向)の位置が定められている。
【0024】
このような構成では、ピッキング用コンベヤ20上に載置された容器Cの上端の高さ(=H1+H3)が、集品コンベヤ40の搬送面40aの高さH2に等しくなる。このため、ピッキング時、容器Cから対象物品Asを取り出して集品コンベヤ40上に載置するための対象物品AsのZ方向(上下方向)の移動ストロークは、実質的に、容器Cの側壁Cwを乗り越えるための上方移動分(所定のマージン分を含む。)だけとなる。すなわち、容器Cの開口部Coから取り出された個々の対象物品Asを、その後、ほぼ水平移動させるだけ(具体的には水平移動とマージン分のわずかな昇降移動だけ)で集品コンベヤ40上に移載することができる。よって、個々の対象物品Asのピッキングに要する時間を短縮することができ、全体としてもピッキング効率を向上させることができる。
【0025】
ピッキング装置50は、ピッキング位置Pにある容器Cに収容されている物品Aの中から対象物品Asを取り出して、集品コンベヤ40に移載する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態のピッキング装置50は、対象物品Asを保持可能な保持部51と、保持部51をZ方向(上下方向)に沿って移動させる昇降機構52と、保持部51をXY平面に沿って移動させる移動機構53とを備えている。また、移動機構53は、保持部51をX方向に沿って移動させる第1移動機構54と、保持部51をY方向に沿って移動させる第2移動機構55とを含んでいる。すなわち、ピッキング装置50は、保持部51、昇降機構52、第1移動機構54、及び第2移動機構55を備えている。
【0026】
保持部51は、対象物品Asを保持可能に構成されている。本実施形態では、保持部51は、吸着ノズルを備えており、真空吸着することによって対象物品Asを保持することができるとともに、大気解放することで対象物品Asの保持を解除することができる。昇降機構52は、下端部に保持部51が固定された昇降本体部52Aを備えている。昇降本体部52Aは、第2移動機構55の第2スライダ55Bに対して、Z方向(上下方向)にスライド可能な状態で支持されている。
【0027】
第1移動機構54は、X方向に沿って設けられた第1案内レール54Aと、第1案内レール54Aに沿ってスライド自在な第1スライダ54Bとを有する。なお、第1案内レール54Aは、支持部材や吊下部材等によって設置面又は天井面に対して固定されているが、
図2ではその表示を省略している。第1スライダ54Bには、第2移動機構55の第2案内レール55Aが固定されている。第2移動機構55は、Y方向に沿って設けられた第2案内レール55Aと、第2案内レール55Aに沿ってスライド自在な第2スライダ55Bとを有する。第2スライダ55Bには、昇降機構52(昇降本体部52A)がスライド可能な状態で支持されている。
【0028】
第1案内レール54Aに沿って第1スライダ54Bがスライドすることで、第2移動機構55及び昇降機構52を介して保持部51がX方向に沿って移動する。第2案内レール55Aに沿って第2スライダ55Bがスライドすることで、昇降機構52を介して保持部51がY方向に沿って移動する。第2スライダ55Bに対して昇降本体部52AがZ方向(上下方向)にスライドすることで、その下端部に固定された保持部51が昇降する。こうして、ピッキング装置50は、保持部51を3次元的に自在に移動させることができ、保持部51による対象物品Asの保持機能との協働によって対象物品Asの移載を自動で行うことができる(自動ピッキング)。
【0029】
なお、
図2に示すように、ピッキング装置50にはカメラ58が付設されている。カメラ58は、ピッキング位置Pにある容器Cの中の様子を上方から撮影できるように、ピッキング位置Pの上方に下向きで設置されている。
【0030】
ピッキング装置50は、平面視で、ピッキング用コンベヤ20及び集品コンベヤ40の少なくとも一方と重複する位置に配置される。なお、2つの部材が「平面視で重複する」とは、平面視において一方の部材の少なくとも一部と他方の部材の少なくとも一部とが互いに重なることを意味する。本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、ピッキング装置50は、ピッキング用コンベヤ20及び集品コンベヤ40よりも上方において、平面視でピッキング用コンベヤ20及び集品コンベヤ40の両方と重複する位置に配置されている。より具体的には、ピッキング装置50は、第1移動機構54が平面視で集品コンベヤ40と重複し、かつ、第2移動機構55が平面視で少なくともピッキング用コンベヤ20と重複するように配置されている。
【0031】
なお、第2移動機構55は、X方向における第1スライダ54Bの位置次第では、平面視で集品コンベヤ40とも重複するように配置される。また、昇降機構52は、Y方向における第2スライダ55Bの位置次第では、平面視でピッキング用コンベヤ20と重複するように配置される。
【0032】
このように、ピッキング装置50を、ピッキング用コンベヤ20及び集品コンベヤ40よりも上方において、平面視でそれらと重複して配置することで、ピッキング装置50のための専用の設置領域が不要となっている。そして、上述した出庫コンベヤ10、ピッキング用コンベヤ20、入庫コンベヤ30、及び集品コンベヤ40のコンパクトな配置構成とも相俟って、ピッキング設備1の全体が効果的に小型化されている。
【0033】
作業スペース60は、作業者Wがピッキング作業を行うためのスペースである。本実施形態のピッキング設備1は、作業スペース60を備えていることで、ピッキング装置50による自動ピッキングとは別に、作業者Wの手による手動ピッキングが可能となっている(
図5を参照)。本実施形態では、作業スペース60には、作業者Wがその上に立って作業を行うための作業台61が設置されている。作業台61は、高さ調整が可能なようにリフタ機能を備えていることが好ましい。
【0034】
作業スペース60は、ピッキング用コンベヤ20を挟んで、出庫コンベヤ10、入庫コンベヤ30、及び集品コンベヤ40が配置された側とは反対側(
図5における下側)に配置されている。また、作業スペース60は、ピッキング用コンベヤ20を挟んで、ピッキング装置50が配置された側とは反対側に配置されている。このように、本実施形態では、ピッキング用コンベヤ20を挟んでその両側にピッキング装置50と作業スペース60とが分かれて配置されており、ピッキング装置50と作業スペース60とは平面視で重複していない。このような配置構成とすることで、例えばピッキング装置50の故障等による停止中に、自動ピッキングから手動ピッキングに切り替えても、作業スペース60で作業を行う作業者Wにとって、ピッキング装置50が障害物とはならない。よって、手動ピッキングを円滑に行うことができる。
【0035】
ピッキング設備1は、当該ピッキング設備1の各部を制御するための制御部70を備えている。制御部70は、例えば中央処理装置とハードディスク等の記憶装置とを備えたパーソナルコンピュータやサーバコンピュータ等の汎用コンピュータで構成されている。
図4に示すように、制御部70には、ラックコントローラ71と、コンベヤコントローラ72と、ピッキングコントローラ73とが、相互に通信可能に接続されている。
【0036】
ラックコントローラ71は、自動倉庫90の動作を制御するように構成されている。通常、自動倉庫90には移載装置を備えた搬送車が備えられている。ラックコントローラ71は、搬送車の走行動作や移載装置の移載動作を制御することで、自動倉庫90からの容器Cの出庫処理や自動倉庫90への容器Cの入庫処理を司る。
【0037】
コンベヤコントローラ72は、出庫コンベヤ10、ピッキング用コンベヤ20、入庫コンベヤ30、及び集品コンベヤ40の動作を制御するように構成されている。通常、出庫コンベヤ10、ピッキング用コンベヤ20、入庫コンベヤ30、及び集品コンベヤ40には、それぞれの搬送方向に沿って被搬送物(ここでは容器C)を搬送するための駆動モータが備えられている。コンベヤコントローラ72は、これらの駆動モータの回転動作を制御することで、自動倉庫90から出庫されてきて再度自動倉庫90に戻される容器Cの搬送処理や、ピッキング位置Pで取り出された対象物品Asのその後の出荷のための搬送処理を司る。
【0038】
ピッキングコントローラ73は、ピッキング装置50の動作を制御するように構成されている。上述したように、ピッキング装置50は昇降機構52、第1移動機構54、及び第2移動機構55を備えており、通常、昇降本体部52AをZ方向に、第1スライダ54BをX方向に、及び第2スライダ55BをY方向にスライド移動させるための駆動モータが備えられている。ピッキングコントローラ73は、これらの駆動モータの回転動作を制御することで、ピッキング装置50による自動ピッキング処理を司る。
【0039】
なお、ピッキングコントローラ73は、カメラ58で撮影された画像の画像処理を行うことで、容器C内の対象物品Asの位置や姿勢等を認識することができるように構成されている。ピッキングコントローラ73は、その認識結果に基づいて、ピッキング装置50による自動ピッキングが適正に行われるように制御する。
【0040】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、出庫コンベヤ10、ピッキング用コンベヤ20、及び入庫コンベヤ30が平面視で角張ったU字状に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ピッキング用コンベヤ20に対する出庫コンベヤ10及び入庫コンベヤ30の平面視の位置関係は適宜変更可能である。例えば、出庫コンベヤ10及び入庫コンベヤ30の少なくとも一方が、ピッキング用コンベヤ20に対して鈍角又は鋭角に接続されていても良い。この場合において、出庫コンベヤ10と入庫コンベヤ30とが平面視で交差するように配置されても良い。
【0041】
(2)上記の実施形態では、出庫コンベヤ10及び入庫コンベヤ30が、ピッキング用コンベヤ20に対して集品コンベヤ40が配置された側と同じ側に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、出庫コンベヤ10及び入庫コンベヤ30が、ピッキング用コンベヤ20に対して集品コンベヤ40が配置された側とは反対側に配置されても良い。この場合において、出庫コンベヤ10と入庫コンベヤ30とが、X方向(第1搬送方向)に沿う方向において、作業スペース60を間に挟むように配置されていても良い。或いは、出庫コンベヤ10及び入庫コンベヤ30が、ピッキング用コンベヤ20と一直線上に配置されていても良い。
【0042】
(3)上記の実施形態では、ピッキング用コンベヤ20が1つだけ設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、互いに独立した複数のピッキング用コンベヤ20が、Y方向に一定の隙間を隔てつつ並列配置された状態で設けられても良い。
【0043】
(4)上記の実施形態では、互いに独立した3つの集品コンベヤ40が設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば集品コンベヤ40の個数は2つであっても良いし、4つ以上であっても良い。或いは、1つの集品コンベヤ40だけが設けられた構成であっても良い。
【0044】
(5)上記の実施形態では、3つの集品コンベヤ40が、互いに平行に配置されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、複数の集品コンベヤ40が、それぞれの延在方向が平面視で放射状をなし或いは交差するように配置されても良い。
【0045】
(6)上記の実施形態では、ピッキング装置50の保持部51が、吸着ノズルを備えて真空吸着によって対象物品Asを保持可能となっている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、保持部51が、対象物品Asを保持可能な、例えばロボットハンドや把持爪等を備えて構成されても良い。
【0046】
(7)上記の実施形態では、ピッキング装置50が、保持部51と、保持部51をZ方向に移動させる昇降機構52と、保持部51をX方向に移動させる第1移動機構54と、保持部51をY方向に移動させる第2移動機構55とを備えている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ピッキング装置50が、例えば多関節のロボットアーム等で構成されても良い。
【0047】
(8)上記の実施形態において、例えば
図6に示すように、集品コンベヤ40が、ピッキング用コンベヤ20側の端部にストッパー45を有していても良い。ストッパー45は、集品コンベヤ40の搬送面40aよりも上方に突出している。このようなストッパー45を有することで、例えば対象物品Asが球状等の転がりやすい外形形状を有している場合でも、集品コンベヤ40上に移載された対象物品Asがピッキング用コンベヤ20側に転落することを回避できる。このような構成では、容器Cの高さH3に加え、ストッパー45の高さH4も考慮に入れて、ピッキング用コンベヤ20及び集品コンベヤ40の位置関係が定められることが好ましい。
図6の例では、集品コンベヤ40の搬送面40aの高さH2とピッキング用コンベヤ20の搬送面20aの高さH1との差ΔHが、容器Cの高さH3からストッパー45の高さH4を差し引いた値に合わせて設定されている。より具体的には、コンベヤ間高低差ΔHが容器Cの高さH3とストッパー45の高さH4との差に等しくなる(ΔH=H2-H1=H3-H4)ように、ピッキング用コンベヤ20及び集品コンベヤ40のZ方向(上下方向)の位置が定められている。
【0048】
(9)上記の実施形態では、ピッキング装置50が、平面視で、ピッキング用コンベヤ20及び集品コンベヤ40と重複し、かつ、作業スペース60とは重複しない位置に配置されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ピッキング装置50が、例えばピッキング用コンベヤ20を挟んで集品コンベヤ40等が配置された側とは反対側に配置され、平面視で集品コンベヤ40とは重複しないように配置されても良い。また、ピッキング装置50が、平面視で作業スペース60と重複して配置されても良い。
【0049】
(10)上記の実施形態では、ピッキング設備1が、通常はピッキング装置50による自動ピッキングを行い、ピッキング装置50の故障等による停止中にのみ作業者Wの手による手動ピッキングを行う構成を主に想定して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ピッキング設備1が、自動ピッキングを行うオートモードと、手動ピッキングを行うマニュアルモードとを、積極的に切替可能に構成されていても良い。
【0050】
(11)上記の実施形態では、ピッキング設備1がピッキング装置50を備えている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ピッキング設備1にピッキング装置50が設けられず、専ら手動ピッキングが行われても良い。
【0051】
(12)上記の実施形態では、ピッキング設備1が作業スペース60を備えている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ピッキング設備1に作業スペース60が設けられず、専ら自動ピッキングが行われても良い。
【0052】
(13)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0053】
〔実施形態の概要〕
以上をまとめると、本開示に係るピッキング設備は、好適には、以下の各構成を備える。
【0054】
ピッキング設備であって、
上方に開口部を有するとともに内部に物品を収容可能な容器を搬送する第1コンベヤと、
ピッキング対象の物品である対象物品を単体で搬送する第2コンベヤと、を備え、
前記第1コンベヤの搬送面の高さが、前記第2コンベヤの搬送面の高さよりも低く設定され、
前記第2コンベヤの搬送面の高さと前記第1コンベヤの搬送面の高さとの差が、前記容器の高さに基づいて設定されている。
【0055】
この構成によれば、例えば第1コンベヤ上にある容器の上端部付近の位置に第2コンベヤの搬送面を配置する等、第1コンベヤ上にある容器の高さに合わせた適切な高さに第2コンベヤの搬送面を配置することができる。このため、容器内から対象物品を取り出して第2コンベヤ上に載置する場合の対象物品の上下方向の移動ストロークを、容器の側壁を乗り越えるための上方移動分に近づけることができる。すなわち、対象物品の上下方向の移動ストロークを小さく抑えることができる。なお、第2コンベヤ上を搬送されてくる対象物品を第1コンベヤ上にある容器に収容する場合にも同様のことが言える。従って、作業効率に優れたピッキング設備を実現することができる。
【0056】
一態様として、
前記第2コンベヤの搬送面の高さと前記第1コンベヤの搬送面の高さとの差が、前記容器の高さに合わせて設定されていることが好ましい。
【0057】
この構成によれば、容器内から対象物品を取り出して第2コンベヤ上に載置する場合の対象物品の上下方向の移動ストロークを最小限に抑えることができる。これにより、容器から取り出された個々の対象物品を、その後、水平移動とわずかな昇降移動だけで第2コンベヤ上に移載することができる。よって、作業効率をさらに向上させることができる。
【0058】
一態様として、
前記第2コンベヤは、端部が前記第1コンベヤに隣接する状態で前記第1コンベヤの搬送方向に交差する方向に沿って配置されているとともに、前記第1コンベヤ側の端部に、当該第2コンベヤの搬送面よりも上方に突出するストッパーを有しており、
前記第2コンベヤの搬送面の高さと前記第1コンベヤの搬送面の高さとの差が、前記容器の高さから前記ストッパーの高さを差し引いた値に合わせて設定されていることが好ましい。
【0059】
この構成によれば、第2コンベヤがストッパーを有することで、第2コンベヤ上に移載された対象物品が第1コンベヤ側に転落するのを回避することができる。また、第2コンベヤがそのようなストッパーを有する構成において、容器内から対象物品を取り出して第2コンベヤ上に載置する場合の対象物品の上下方向の移動ストロークを最小限に抑えることができる。よって、これら両方の観点から、作業効率をさらに向上させることができる。
【0060】
一態様として、
前記容器から前記対象物品を取り出すピッキング装置を更に備え、
前記ピッキング装置は、前記対象物品を保持可能な保持部と、前記保持部を前記第1コンベヤの搬送面に沿う方向に移動させる移動機構と、前記保持部を上下方向に移動させる昇降機構と、を備えることが好ましい。
【0061】
この構成によれば、保持部が対象物品を保持した状態で、対象物品を3次元的に自在に移動させることができ、ピッキング装置による自動ピッキングを適切に行うことができる。そのような自動ピッキングでは、ピッキング装置が対象物品を移載する際の保持部の移動ストロークの大小が作業効率に直結する。この点、本開示の技術では保持部の上下方向の移動ストロークを小さく抑えることができるので、自動ピッキングそれ自体による効率化とも合わせ、作業効率を大きく向上させることができる。
【0062】
本開示に係るピッキング設備は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができれば良い。
【符号の説明】
【0063】
1 ピッキング設備
10 出庫コンベヤ
20 ピッキング用コンベヤ(第1コンベヤ)
20a 搬送面
20u 上流側端部
20d 下流側端部
30 入庫コンベヤ
40 集品コンベヤ(第2コンベヤ)
40a 搬送面
45 ストッパー
50 ピッキング装置
51 保持部
52 昇降機構
53 移動機構
54 第1移動機構
55 第2移動機構
60 作業スペース
C 容器
Co 開口部
A 物品
As 対象物品
W 作業者
H1 第1コンベヤの搬送面の高さ
H2 第2コンベヤの搬送面の高さ
H3 容器の高さ
H4 ストッパーの高さ
ΔH コンベヤ間高低差