(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】チャージポンプ回路、PLL回路および発振器
(51)【国際特許分類】
H03L 7/089 20060101AFI20231121BHJP
H03L 7/08 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H03L7/089 110
H03L7/08 102
(21)【出願番号】P 2020031348
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】堤 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】市川 遼
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 久浩
(72)【発明者】
【氏名】降矢 安成
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-327425(JP,A)
【文献】特開平8-195675(JP,A)
【文献】特開平10-200382(JP,A)
【文献】特開2002-43935(JP,A)
【文献】特開2005-260866(JP,A)
【文献】特開2011-130518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03L1/00-H03L9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相差電流を第1のノードに出力するチャージポンプ回路であって、
高電位電源ノードと前記第1のノードとの間に接続された第1の電流源と、
低電位電源ノードと前記第1のノードとの間に接続された第2の電流源と、
前記第1の電流源と前記第1のノードとの間に接続された第1のスイッチと、
前記第2の電流源と前記第1のノードとの間に接続された第2のスイッチと、
前記第1の電流源と第2のノードとの間に接続された第3のスイッチと、
前記第2の電流源と前記第2のノードとの間に接続された第4のスイッチと、
前記第1のノードに負のオフセット電流を供給する第3の電流源と、
前記第1のノードに入力側が接続され、前記第2のノードに出力側が接続されるプッシュ型差動増幅回路と、
を備えるチャージポンプ回路。
【請求項2】
前記プッシュ型差動増幅回路は、差動段と出力段とを含み、
前記出力段は、
前記高電位電源ノードと前記第2のノードとの間に設けられ、前記差動段の出力電圧により駆動されるPMOSトランジスターと、
前記第2のノードと前記低電位電源ノードとの間に設けられた第4の電流源と、
を含む、
請求項1に記載のチャージポンプ回路。
【請求項3】
前記第4の電流源は、
前記第1の電流源および前記第2の電流源より電流供給能力が小さい、
請求項2に記載のチャージポンプ回路。
【請求項4】
前記第2のノードと前記低電位電源ノードとの間に直列に接続された第5のスイッチおよび第5の電流源をさらに備え、
前記第5のスイッチは、前記第4のスイッチと相補的にオンおよびオフが制御される、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のチャージポンプ回路。
【請求項5】
前記第2の電流源と前記第2のノードとの間において、前記第4のスイッチと直列になるように接続された第6のスイッチをさらに備え、
前記第6のスイッチは、前記第1のスイッチと相補的にオンおよびオフが制御される、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のチャージポンプ回路。
【請求項6】
位相差電流を第1のノードに出力するチャージポンプ回路であって、
高電位電源ノードと前記第1のノードとの間に接続された第1の電流源と、
低電位電源ノードと前記第1のノードとの間に接続された第2の電流源と、
前記第1の電流源と前記第1のノードとの間に接続された第1のスイッチと、
前記第2の電流源と前記第1のノードとの間に接続された第2のスイッチと、
前記第1の電流源と第2のノードとの間に接続された第3のスイッチと、
前記第2の電流源と前記第2のノードとの間に接続された第4のスイッチと、
前記第1のノードに正のオフセット電流を供給する第3の電流源と、
前記第1のノードに入力側が接続され、前記第2のノードに出力側が接続されるプル型差動増幅回路と、
を備えるチャージポンプ回路。
【請求項7】
前記プル型差動増幅回路は、差動段と出力段とを含み、
前記出力段は、
前記低電位電源ノードと前記第2のノードとの間に設けられ、前記差動段の出力電圧により駆動されるNMOSトランジスターと、
前記第2のノードと前記高電位電源ノードとの間に設けられた第4の電流源と、
を含む、
請求項6に記載のチャージポンプ回路。
【請求項8】
前記第4の電流源は、
前記第1の電流源および前記第2の電流源より電流供給能力が小さい、
請求項7に記載のチャージポンプ回路。
【請求項9】
前記第2のノードと前記高電位電源ノードとの間に直列に接続された第5のスイッチおよび第5の電流源をさらに備え、
前記第5のスイッチは、前記第3のスイッチと相補的にオンおよびオフが制御される、
請求項6~請求項8のいずれか一項に記載のチャージポンプ回路。
【請求項10】
前記第1の電流源と前記第2のノードとの間において、前記第3のスイッチと直列になるように接続された第6のスイッチをさらに備え、
前記第6のスイッチは、前記第2のスイッチと相補的にオンおよびオフが制御される、
請求項6~請求項9のいずれか一項に記載のチャージポンプ回路。
【請求項11】
基準信号の位相とフィードバック信号の位相とを比較し、位相遅れ制御信号または位相進み制御信号を位相差信号として出力する位相比較器と、
前記位相差信号を前記位相差電流に変換する請求項1~請求項10のいずれか一項に記載のチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ回路が出力する前記位相差電流を平滑化された電圧に変換するローパスフィルターと、
前記ローパスフィルターの出力電圧を制御電圧として、前記制御電圧に応じて周波数が変化する出力信号を出力する電圧制御発振回路と、
前記電圧制御発振回路の出力から前記位相比較器の入力に至る信号経路上に設けられ、前記フィードバック信号を出力する分周回路と、
を備えるPLL回路。
【請求項12】
請求項11に記載のPLL回路と、
振動子を発振させ、前記PLL回路に前記基準信号を供給する発振回路と、
を備える発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャージポンプ回路、PLL回路および発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基準信号とフィードバック信号との位相差に応じて、後段のローパスフィルターから電流を引き込み、または、ローパスフィルターに電流を供給できるように、スイッチによって状態を切り替えるチャージポンプ回路が知られている。このような電流の引き込みと電流の供給を切り替える際に生じる電流誤差を低減するため、演算増幅回路が利用されている。例えば、特許文献1においては、ローパスフィルターに接続されている端子と、接続されていない端子との間にボルテージフォロア回路を挿入することにより、電流の引き込みと供給との切替における電流誤差を低減する回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、ボルテージフォロア回路で定電流源(I1,I2)と同じ電流を流し、また、引き込む必要がある。このため、設計によって消費電力を選択する自由度が小さかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのチャージポンプ回路は、位相差電流を第1のノードに出力するチャージポンプ回路であって、高電位電源ノードと第1のノードとの間に接続された第1の電流源と、低電位電源ノードと第1のノードとの間に接続された第2の電流源と、第1の電流源と第1のノードとの間に接続された第1のスイッチと、第2の電流源と第1のノードとの間に接続された第2のスイッチと、第1の電流源と第2のノードとの間に接続された第3のスイッチと、第2の電流源と第2のノードとの間に接続された第4のスイッチと、第1のノードに負のオフセット電流を供給する第3の電流源と、第1のノードに入力側が接続され、第2のノードに出力側が接続されるプッシュ型差動増幅回路と、を備える。
【0006】
また、基準信号の位相とフィードバック信号の位相とを比較し、位相遅れ制御信号または位相進み制御信号を位相差信号として出力する位相比較器と、位相差信号を位相差電流に変換する上述のチャージポンプ回路と、チャージポンプ回路が出力する位相差電流を平滑化された電圧に変換するローパスフィルターと、ローパスフィルターの出力電圧を制御電圧として、制御電圧に応じて周波数が変化する出力信号を出力する電圧制御発振回路と、電圧制御発振回路の出力から位相比較器の入力に至る信号経路上に設けられ、フィードバック信号を出力する分周回路と、を備えるPLL回路が構成されても良い。さらに、当該PLL回路と、振動子を発振させ、PLL回路に基準信号を供給する発振回路と、を備える発振器が構成されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる発振器の構成図である。
【
図2】フラクショナルN-PLL回路を示す図である。
【
図4】チャージポンプ回路に関連する信号のタイミングチャートを示す図である。
【
図9】チャージポンプ回路に関連する信号のタイミングチャートを示す図である。
【
図16】チャージポンプ回路に関連する信号のタイミングチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)発振器の構成:
(1-1)フラクショナルN-PLL回路の構成:
(1-2)チャージポンプ回路の構成:
(1-3)プッシュ型差動増幅回路の具体例:
(1-4)変形例:
(2)第2実施形態:
(3)他の実施形態:
【0009】
(1)発振器の構成:
図1は本発明の一実施形態にかかる発振器の構成図である。発振器1は、発振回路2と振動子3とを含む発振器であり、発振回路2と振動子3は不図示のパッケージに収容されている。本実施形態では、振動子3は、基板材料として水晶を用いた水晶振動子であり、例えば、ATカットやSCカットの水晶振動子が用いられる。振動子3は、SAW(Surface Acoustic Wave)共振子やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動子であってもよい。また、振動子3の基板材料としては、水晶の他、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電単結晶や、ジルコン酸チタン酸鉛等の圧電セラミックス等の圧電材料、又はシリコン半導体材料等を用いることができる。振動子3の励振手段としては、圧電効果によるものを用いてもよいし、クーロン力による静電駆動を用いてもよい。
【0010】
発振回路2は、電源端子であるVcc端子、接地端子であるGND端子、差動出力端子であるOUT_P端子及びOUT_N端子、外部インターフェース用のSDA端子及びSCL端子、振動子3との接続端子であるXI端子及びXO端子が設けられている。Vcc端子、GND端子、OUT_P端子、OUT_N端子、SDA端子及びSCL端子は、発振器1の外部端子(不図示)にも接続される。
【0011】
本実施形態では、発振回路2は、発振用回路10、フラクショナルN-PLL回路20、分周回路30、出力回路40、レギュレーター50、レギュレーター60、制御回路70、シリアルインターフェース(I/F)回路80及び不揮発メモリー90を含んで構成される。なお、本実施形態の発振回路2は、これらの要素の一部を省略又は変更し、あるいは他の要素を追加した構成としてもよい。発振回路2は、1チップ化された半導体集積回路(IC:integrated circuit)であってもよいし、複数チップのICで構成されていてもよいし、一部がディスクリート部品で構成されていてもよい。
【0012】
発振用回路10は、振動子3を発振させるための回路であり、振動子3の出力信号を増幅して振動子3にフィードバックする。発振用回路10は、振動子3の発振に基づくクロック信号(発振信号)REFCLKを出力する。例えば、振動子3と発振用回路10により構成される発振回路は、ピアース発振回路、インバーター型発振回路、コルピッツ発振回路、ハートレー発振回路などの種々のタイプの発振回路であってもよい。
【0013】
フラクショナルN-PLL回路20は、制御回路70から入力される分周比に応じて、クロック信号REFCLKの周波数(リファレンス周波数)を整数倍または(整数+分数)倍したクロック信号PLLCLKを生成する。ここで、分周比の整数部分(整数分周比)をN、分数部分(分数分周比)をF/Mとすると、クロック信号REFCLKの周波数f
REFCLKとクロック信号PLLCLKの周波数f
PLLCLKとの間には、次式(1)の関係が成り立つ。
【数1】
【0014】
分周回路30は、フラクショナルN-PLL回路20が出力するクロック信号PLLCLKを、制御回路70から入力される出力分周比P(Pは1以上の整数)で分周し、クロック信号CLKOを生成する。ここで、クロック信号PLLCLKの周波数f
PLLCLKとクロック信号CLKOの周波数f
CLKOとの間には、次式(2)の関係が成り立つ。
【数2】
【0015】
従って、式(1)と式(2)より、クロック信号REFCLKの周波数f
REFCLKとクロック信号CLKOの周波数f
CLKOとの間には、次式(3)の関係が成り立つ。
【数3】
【0016】
出力回路40は、分周回路30が出力するクロック信号CLKOを、非反転信号CKPと反転信号CKNとから成る差動信号に変換する。この非反転信号CKPは出力端子OUT_Pから外部に出力され、反転信号CKNは出力端子OUT_Nから外部に出力される。出力回路40は、例えば、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)回路、PECL(Positive Emitter Coupled Logic)回路、LVPECL(Low Voltage PECL)回路等の差動出力回路であってもよい。ただし、出力回路40は、シングルエンドの出力回路であってもよい。
【0017】
レギュレーター50は、Vcc端子から供給される電源電圧Vccに基づき、Vccよりも低い一定電圧Vreg1を生成する。この一定電圧Vreg1は、発振用回路10の電源電圧及びフラクショナルN-PLL回路20の一部の回路の電源電圧として供給される。
【0018】
レギュレーター60は、Vcc端子から供給される電源電圧Vccに基づき、Vccよりも低い一定電圧Vreg2を生成する。この一定電圧Vreg2は、フラクショナルN-PLL回路20の一部の回路及び分周回路30の電源電圧として供給される。
【0019】
本実施形態では、一定電圧Vreg1と一定電圧Vreg2は同じ電圧であるが、Vreg1を電源電圧とする回路とVreg2を電源電圧とする回路とのインターフェース部分で誤動作が生じない限りにおいて、Vreg1とVreg2が異なっていてもよい。
【0020】
本実施形態では、シリアルインターフェース回路80は、I
2C規格のデジタルインターフェース回路であり、SDA端子からシリアルデータ信号が入出力され、SCLからクロック信号が入力される。このSDA端子とSCL端子及びシリアルインターフェース回路80を介して、外部装置から、制御回路70が有する不図示の制御レジスターや不揮発メモリー90に対するリード/ライトが可能に構成される。なお、シリアルインターフェース回路80は、I
2C以外の通信規格のインターフェース回路であってもよい。また、発振器1は、インターフェース専用の外部端子(
図1では、SDA端子及びSCL端子)を備えていなくてもよく、例えば、外部からモードを切り替えることで、OUT_P端子やOUT_N端子、あるいは不図示の機能端子がインターフェース用の外部端子に兼用される構成であってもよい。
【0021】
制御回路70は、不図示の制御レジスターを有し、制御レジスターの設定値に応じて、発振用回路10、フラクショナルN-PLL回路20及び分周回路30の各動作を制御する。制御レジスターには、発振用回路10の周波数調整値等の設定、フラクショナルN-PLL回路20の整数分周比Nや分数分周比F/Mの設定、分周回路30の出力分周比Pの設定などが可能である。本実施形態では、外部装置が、シリアルインターフェース回路80を介して、整数分周比N、分数分周比F/M、出力分周比Pを設定してフラクショナルN-PLL回路20に供給する。そして、分周回路30は、出力分周比Pに応じてクロック信号PLLCLKを分周し、OUT_P端子及びOUT_N端子から式(3)により決まる周波数のクロック信号が出力される。
【0022】
不揮発メモリー90は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等で実現され、発振器1の起動時(電源投入時)に必要なデータなどが記憶される。例えば、不揮発メモリー90には、発振制御用回路の周波数調整等の制御データ、整数分周比N、分数分周比F/M及び出力分周比Pの各初期値などが記憶されていてもよい。制御回路70は、発振器1の起動時(電源投入時)などに、不揮発メモリー90に記憶されているデータを読み出して制御レジスターに設定し、各種の制御を行う。
【0023】
(1-1)フラクショナルN-PLL回路の構成:
図2は、第1実施形態におけるフラクショナルN-PLL回路20の構成例を示す図である。
図2に示すように、フラクショナルN-PLL回路20は、位相比較器(PFD:Phase Frequency Detector)21、チャージポンプ回路(CP:Charge Pump)22、ローパスフィルター(LPF:Lowpass Filter)23、電圧制御発振回路(VCO)24、分周回路25、分周設定回路27及びクロック生成回路28を含んで構成される。
【0024】
位相比較器21は、発振用回路10が出力するクロック信号REFCLKの位相と分周回路25が出力するフィードバック信号であるクロック信号FBCLKの位相とを比較し、比較結果をパルス電圧として出力する。
【0025】
チャージポンプ回路22は、位相比較器21が出力するパルス電圧を電流に変換する。ローパスフィルター23は、チャージポンプ回路22が出力する電流を平滑化し、電圧に変換する。電圧制御発振回路24は、ローパスフィルター23の出力電圧を制御電圧として、制御電圧に応じて周波数が変化するクロック信号PLLCLKを出力する。電圧制御発振回路24は、制御電圧範囲に対して複数の出力周波数範囲を設定可能であってもよい。
【0026】
分周回路25は、電圧制御発振回路24の出力から電圧制御発振回路24の入力に至る信号経路上に設けられ、分周設定回路27の出力信号を分周比として、電圧制御発振回路24が出力するクロック信号PLLCLKを分周したクロック信号FBCLKを出力する。分周設定回路27の出力信号の時間平均値は、制御回路70から入力される整数分周比Nと分数分周比F/Mとの和(N+F/M)と一致する。そして、クロック信号REFCLKの位相とクロック信号FBCLKの位相が同期した定常状態では、式(1)で計算されるクロック信号PLLCLKの周波数がクロック信号REFCLKの周波数と一致し、これによりクロック信号CLKOは式(3)で表される所望の周波数(目標周波数)となる。
【0027】
分周設定回路27は、分数分周比F/Mを用いてデルタシグマ変調を行い、分周回路25の分周比を設定する。本実施形態では、分周設定回路27は、デルタシグマ変調回路120と加減算回路130を含んで構成される。デルタシグマ変調回路120は、クロック生成回路28が出力するクロック信号DSMCLKに同期して、分数分周比F/Mを積分して量子化するデルタシグマ変調を行う。加減算回路130は、デルタシグマ変調回路120が出力するデルタシグマ変調信号と整数分周比Nとを加減算する。この加減算回路130の出力信号は、分周設定回路27の出力信号として分周回路25に入力される。分周設定回路27の出力信号は、整数分周比Nの付近の範囲の複数の整数分周比が時系列に変化し、その時間平均値はN+F/Mと一致する。
【0028】
例えば、クロック信号REFCLKの周波数を100MHz、クロック信号PLLCLKの目標周波数を3425MHzとすると、分周設定回路27の出力信号の時間平均値、すなわち分周回路25の分周比の時間平均値は34.25となる必要がある。そこで、整数分周比Nを34に、分数分周比F/Mを0.25に設定すべきである。
【0029】
34.25は非整数であるため、デルタシグマ変調回路120によるデルタシグマ変調により分周回路25の分周比(整数値)を時系列的に変化させることにより近似的に34.25の分周比を実現する。例えば、ある所定期間を複数の期間に分割し、分割した複数の期間の3/4では分周回路25の分周比を34とし、残りの1/4の期間では分周回路25の分周比を35とすれば、当該所定期間内のクロック信号FBCLKのパルス数で考えると34.25分周に近似することができる。
【0030】
(1-2)チャージポンプ回路の構成:
以上のように、本実施形態にかかる発振器1は、チャージポンプ回路22を備えている。チャージポンプ回路22は、位相比較器21が出力するパルス電圧を電流に変換し、変換された電流がローパスフィルター23で平滑化されて電圧に変換される。チャージポンプ回路22に関しては、従来技術のように、電圧フォロア回路を備える構成が知られている。しかし、従来の構成においては、電圧フォロア回路を利用して流すべき電流値に制約があり、この結果、電圧フォロア回路における消費電量を選択する自由度が小さかった。
【0031】
図3は、本実施形態にかかるチャージポンプ回路22の従来技術であるチャージポンプ回路220の回路を示す図である。チャージポンプ回路220は、
図2に示されるチャージポンプ回路22を置換することによって用いられる回路である。具体的には、チャージポンプ回路220は、
図3に示すように、第1の電流源I1と、第2の電流源I2と、第1のスイッチS1~第4のスイッチS4と、演算増幅回路A1とを備えている。
【0032】
チャージポンプ回路220は、電源電圧が供給される電源端子と、GND端子との間の回路として構成される。電源端子には、例えば、上述のレギュレーター50が生成した電源電圧Vreg1が供給される。チャージポンプ回路220においては、当該電源端子が高電位電源ノードNv、GND端子が低電位電源ノードNgである。
【0033】
第1の電流源I1は、高電位電源ノードNvと第1のノードN1との間に接続され、第2の電流源I2は、低電位電源ノードNgと第1のノードN1との間に接続される。また、第1のスイッチS1は、第1の電流源I1と第1のノードN1との間に接続され、第2のスイッチS2は、第2の電流源I2と第1のノードN1との間に接続される。さらに、第3のスイッチS3は、第1の電流源I1と第2のノードN2との間に接続され、第4のスイッチS4は、第2の電流源I2と第2のノードN2との間に接続される。
【0034】
演算増幅回路A1の出力端子は、第2のノードN2に接続され、演算増幅回路A1の非反転入力端子は第1のノードN1に接続される。演算増幅回路A1の反転入力端子は演算増幅回路A1の出力端子に接続され、電圧フォロア回路が構成されている。なお、演算増幅回路A1の非反転入力端子は
図3において+と表記され、反転入力端子は
図3において-と表記されている。なお、第1のノードN1は、位相差電流が出力されるノードVcであり、後段のローパスフィルター23の入力ノードである。
【0035】
第1のスイッチS1~第4のスイッチS4は、位相比較器21が出力する位相遅れ制御信号および位相進み制御信号に応じて動作するスイッチである。なお、本実施形態においては、クロック信号REFCLKが、フィードバックされたクロック信号FBCLKよりも進んでいる場合に位相進み制御信号が出力される。また、クロック信号REFCLKが、フィードバックされたクロック信号FBCLKよりも遅れている場合に位相遅れ制御信号が出力される。本実施形態においては、位相進み制御信号をUP信号、位相遅れ制御信号をDOWN信号と呼ぶ。
【0036】
そして、第1のスイッチS1は、UP信号がハイレベルの場合にオン、ローレベルの場合にオフになる。第2のスイッチS2は、DOWN信号がハイレベルの場合にオン、ローレベルの場合にオフになる。第3のスイッチS3は、UP信号がハイレベルの場合にオフ、ローレベルの場合のオンになる。第4のスイッチS4は、DOWN信号がハイレベルの場合にオフ、ローレベルの場合にオンになる。
【0037】
チャージポンプ回路220は、これらのUP信号、DOWN信号に応じてクロック信号FBCLKの位相を進め、または遅らせるように第1のノードN1からローパスフィルター23に出力される電流を制御する。
図4は、クロック信号REFCLK、クロック信号FBCLK、UP信号、DOWN信号の関係を示す図である。
図4においては、クロック信号REFCLKに対してクロック信号FBCLKが遅れている例を示している。この場合、クロック信号REFCLKがハイレベルであるがクロック信号FBCLKがローレベルである期間にUP信号が出力される。この例においてクロック信号REFCLKは進んでいるため、DOWN信号は出力されない。この状態をUP=1,DOWN=0と呼ぶ。
【0038】
一方、クロック信号REFCLKに対してクロック信号FBCLKが進んでいる場合、クロック信号FBCLKがハイレベルであるがクロック信号REFCLKがローレベルである期間にDOWN信号が出力される。この場合クロック信号REFCLKは遅れているため、UP信号は出力されない。この状態をUP=0,DOWN=1と呼ぶ。また、クロック信号REFCLKとクロック信号FBCLKの位相が一致している場合、UP信号もDOWN信号も出力されない。この状態は、フラクショナルN-PLL回路20がロックした状態である。この状態をUP=0,DOWN=0と呼ぶ。
【0039】
以上のように、チャージポンプ回路220においては、UP信号およびDOWN信号の組み合わせが異なる3個の状態が想定され、各状態に応じた電流を出力すれば、クロック信号FBCLKがクロック信号REFCLKに一致するように制御することができる。
【0040】
例えば、UP=1,DOWN=0の場合、チャージポンプ回路220が第1のノードN1に供給する電流を増加させれば、クロック信号FBCLKの位相を進めることができる。従って、UP=1,DOWN=0の場合に、
図3に示すように、第1のスイッチS1,第2のスイッチS2,第3のスイッチS3,第4のスイッチS4のそれぞれを、オン,オフ,オフ,オンとすれば、第1の電流源I1によって第1のノードN1からローパスフィルター23側に電流を供給することができる。また、この状態においては、第3のスイッチS3がオフ、第4のスイッチS4がオンであるため、演算増幅回路A1の出力端子から第2のノードN2、第4のスイッチS4、第2の電流源I2を経て低電位電源ノードNgに電流が流れる。
図3においては、これらの電流を破線の矢印によって示している。
【0041】
UP=0,DOWN=1の場合、チャージポンプ回路220が第1のノードN1に供給する電流を減少させれば、クロック信号FBCLKの位相を遅らせることができる。従って、UP=0,DOWN=1の場合に、
図5に示すように、第1のスイッチS1,第2のスイッチS2,第3のスイッチS3,第4のスイッチS4のそれぞれを、オフ,オン,オン,オフとすれば、第2の電流源I2によって第1のノードN1から低電位電源ノードNg側に電流を引き抜くことができる。また、この状態においては、第3のスイッチS3がオン、第4のスイッチS4がオフであるため、第1の電流源I1から演算増幅回路A1の出力端子側に電流が流れる。
図5においては、これらの電流を破線の矢印によって示している。
【0042】
さらに、UP=0,DOWN=0の場合、チャージポンプ回路220から第1のノードN1に電流を供給する必要はないし、第1のノードN1から電流を引き抜く必要はない。従って、UP=0,DOWN=0の場合に、
図6に示すように、第1のスイッチS1,第2のスイッチS2,第3のスイッチS3,第4のスイッチS4のそれぞれを、オフ,オフ,オン,オンとすれば、第1のノードN1に電流を供給せず、引き抜きもしない状態になる。この際、電流は、第1の電流源I1および第2の電流源I2を経て低電位電源ノードNgに流れる。
図6においては、これらの電流を破線の矢印によって示している。なお、チャージポンプ回路220においては、この状態において第1の電流源I1から出力された電流が第2の電流源I2を流れるため、第1の電流源I1、第2の電流源によって供給され、また、引き抜かれる電流値が同一になるように設計されている。
【0043】
以上のように、チャージポンプ回路220においては、UP信号とDOWN信号との組み合わせに応じて状態が切り替わるため、電圧フォロア回路として機能する演算増幅回路A1が存在しなければ、第1のノードN1や第2のノードN2の電圧がスイッチの切り替えに応じて大きく変動し得る。例えば、
図3に示す状態において演算増幅回路A1が存在しない場合、第3のスイッチS3がオフ、第4のスイッチS4がオンであるため、ノードNyの電圧は低電位電源ノードNgに近づく。
【0044】
ローパスフィルター23の入力端子に接続されている第1のノードN1の電圧は、低電位電源ノードNgの電圧と異なるが、
図3に示す状態から
図5に示す状態に切り替わると、ノードNyが第1のノードN1に接続されるため、第1のノードN1において急激に電圧が変動し得る。ノードNxについても同様であり、演算増幅回路A1が存在しなければ、ノードNxの電圧が高電位電源ノードNvの電圧に近づき、
図5に示す状態から
図3に示す状態に切り替わった場合に、第1のノードN1の電圧が急激に変動する。
【0045】
しかし、第1のノードN1と第2のノードN2との間に電圧フォロア回路として機能する演算増幅回路A1が接続されていると、第1のノードN1と第2のノードN2の電圧が同一になるように制御される。従って、スイッチの切り替えにともなう第1のノードN1の電圧変動が抑制され、ローパスフィルター23および電圧制御発振回路24における動作を安定化することができる。
【0046】
このように電圧フォロア回路として機能する演算増幅回路A1は、
図3に示されるように第2の電流源I2側への電流の供給が可能であると共に、
図5に示されるように第1の電流源I1から供給される電流を引き込む必要がある。このための構成としては、例えば、プッシュプル型の演算増幅回路が挙げられる。しかし、プッシュプル型の演算増幅回路はトランジスターの数が比較的多く、ノイズが多くなるという問題がある。
【0047】
そこで、
図7に示されるようなプル型の演算増幅回路A1における出力段に第2の電流源I2と同等の電流供給能力を有する電流源を設ける構成が採用され得る。すなわち、演算増幅回路A1によってプッシュプルの一方であるプル動作を行う構成とし、かつ、プッシュ側については、第1の電流源I1や第2の電流源I2と同一の電流供給能力を有する電流源Icpで補う構成が採用され得る。
【0048】
具体的には
図7に示す演算増幅回路A1は、オペアンプA11を備えており、非反転入力端子は第1のノードN1(チャージポンプ回路220の出力ノードVc)に接続され、出力端子にはNMOSトランジスターT1のゲートが接続される。オペアンプA11の反転入力端子は、第2のノードN2に接続される。また、第2のノードN2と高電位電源ノードNvとの間には、電流源Icpが接続される。さらに、NMOSトランジスターT1のドレインは第2のノードN2に接続され、NMOSトランジスターT1のソースは低電位電源ノードNgに接続される。
【0049】
このような演算増幅回路A1が利用されたチャージポンプ回路220において、
図3に示すようにUP=1,DOWN=0の状態が実現される場合、
図7に示す破線のように演算増幅回路A1から第2の電流源I2に向けて電流が流れる必要がある。従って、電流源Icpの電流供給能力は第2の電流源I2と同一である必要があり、第2の電流源I2と同一の電流値の電流が演算増幅回路A1を流れる。チャージポンプ回路220において、
図5に示すようにUP=0,DOWN=1の状態が実現される場合、
図7に示す一点鎖線のように演算増幅回路A1に対して第1の電流源I1から電流が供給される。
【0050】
一方、チャージポンプ回路220において、
図6に示すようにUP=0,DOWN=0の状態が実現される場合、演算増幅回路A1に対して第2のノードN2から電流を供給する必要はなく、第2のノードN2から電流を引き抜く必要もない。しかし、演算増幅回路A1においては、電流源Icpを備えているため、この場合でも第2の電流源I2による電流と同等の電流がNMOSトランジスターT1を通って流れる。
【0051】
すなわち、従来のチャージポンプ回路220においては、電流の供給、引き抜きを行わない状態であっても常に第2の電流源I2による電流と同等の電流が、演算増幅回路A1を流れる。そして、UP=0,DOWN=0の状態は、フラクショナルN-PLL回路20がロックしている状態であるため、通常は当該ロックしている状態が他の状態より長い。従って、従来のチャージポンプ回路220にかかる演算増幅回路A1においては、電流の供給、引き抜きに関与しない電流が長期間にわたって流れ続け、消費電力が増えてしまう。
【0052】
しかしながら、従来のチャージポンプ回路220において、演算増幅回路A1を構成する電流源Icpは、第2の電流源I2と同等の電流を流す電流供給能力が必要であり、電流値を抑制するように設計変更することができない。そこで、本実施形態にかかるチャージポンプ回路22においては、上述の3個の状態のうちの一つ、UP=0,DOWN=1が発生しない(または、ほぼ発生しない)ようにした。
【0053】
具体的には、チャージポンプ回路22においては、従来のチャージポンプ回路220における演算増幅回路A1の代わりにプッシュ型差動増幅回路Apが用いられ、さらに、第1のノードN1と低電位電源ノードNgとの間に第3の電流源I3が接続される。
図8は、本実施形態にかかるチャージポンプ回路22の構成を示す図である。なお、プッシュ型差動増幅回路Apの具体例は後述する。
【0054】
図8において、チャージポンプ回路220と同一の構成については、同一の符号を付して示している。第3の電流源I3は、第1のノードN1に負のオフセット電流を供給する電流源である。すなわち、第3の電流源I3は、第1のノードN1から、常時電流を引き抜く電流源として機能する。
図9は、チャージポンプ回路22を利用した場合のクロック信号REFCLK、クロック信号FBCLK、UP信号、DOWN信号の関係を説明するための図である。
図9においては、フラクショナルN-PLL回路20がロックしている状態を示している。すなわち、本実施形態にかかるチャージポンプ回路22においては、第3の電流源I3で、常に第1のノードN1から電流を引き抜いている。このため、当該第3の電流源I3によって引き抜かれる電流によって、クロック信号FBCLKの位相には、常に位相量を遅らせる方向(図面右方向)への一定のオフセットdfが与えられる。
【0055】
図9に示す例においては、クロック信号REFCLKよりもクロック信号FBCLKがオフセットdfだけ遅れているため、当該オフセットdfに相当する期間だけUP=1,DOWN=0の状態になる。この場合、
図8に示すように、第1のスイッチS1~第4のスイッチS4のそれぞれが、オン,オフ,オフ,オンになる。このため、第1の電流源I1から第1のノードN1に対して電流が供給される。本実施形態においては、クロック信号REFCLKに対するクロック信号FBCLKの遅れが、位相のオフセットdfと一致した場合に、クロック信号FBCLKの位相が変化せず、ロックした状態になる。すなわち、UP=1,DOWN=0の期間に当該第1の電流源I1から供給される電流と、第3の電流源I3で引き抜かれる電流とが釣り合う状態がロック状態である。
図9に示す例であれば、位相のオフセットdf,第1の電流源から供給される電流Ic
1,第3の電流源で引き抜かれる電流Ic
3の間に、(df×Ic
1=2π×Ic
3)の関係が成り立つ場合にロック状態になる。
【0056】
本実施形態においては、以上の構成によってクロック信号FBCLKの位相がクロック信号REFCLKよりも遅れるようにオフセットされるため、DOWN=1の状態が発生しない(または、ほぼ発生しない)。従って、本実施形態におけるプッシュ型差動増幅回路Apにおいては、UP=0,DOWN=1における動作を想定する必要がなくなる。
【0057】
そこで、本実施形態にかかるチャージポンプ回路22において、第2のノードN2からプッシュ型差動増幅回路Apに引き込む電流を引き込む必要はない。このためにチャージポンプ回路22が備えるボルテージフォロア回路は、プッシュ型差動増幅回路Apとなっている。
【0058】
図10は、プッシュ型差動増幅回路Apの構成例を示す図である。
図10に示すプッシュ型差動増幅回路Apは、出力段Osと差動段Dsとを含む。出力段Osは、PMOSトランジスターTp1と第4の電流源I4とを備える。PMOSトランジスターTp1は、高電位電源ノードNvと第2のノードN2との間に設けられ、PMOSトランジスターTp1のソースが高電位電源ノードNv、ドレインが第2のノードN2に接続される。第4の電流源I4は、第2のノードN2と低電位電源ノードNgとの間に設けられる。
【0059】
差動段DsはオペアンプAp1を備えており、非反転入力端子は第1のノードN1(チャージポンプ回路22の出力ノードVc)に接続され、出力端子にはPMOSトランジスターTp1のゲートが接続される。オペアンプAp1の反転入力端子は、第2のノードN2に接続される。
【0060】
このようなプッシュ型差動増幅回路Apが利用されたチャージポンプ回路22において、
図3に示すようにUP=1,DOWN=0の状態が実現される場合、
図10に示す破線のようにプッシュ型差動増幅回路Apから第2のノードN2側に電流が流れる必要がある。この電流は、オペアンプAp1の制御に応じてPMOSトランジスターTp1が動作することにより、高電位電源ノードNv側から供給される。一方、チャージポンプ回路22においてはUP=0,DOWN=1の状態が実現されないように構成されている。従って、プッシュ型差動増幅回路Apは第2のノードN2から第1の電流源I1による電流のような大電流を引き込む必要はない。
【0061】
さらに、チャージポンプ回路22において、
図11に示すようにUP=0,DOWN=0の状態が実現される場合、プッシュ型差動増幅回路Apに対して第2のノードN2から電流を供給必要はなく、第2のノードN2から電流を引き抜く必要もない。従って、この状態においてプッシュ型差動増幅回路Apには、一点鎖線に示すように、高電位電源ノードNvからPMOSトランジスターTp1、第4の電流源I4を経て低電位電源ノードNgに電流が流れればよい。この電流の電流値は、定電流源である第4の電流源I4によって流れる電流値であるが、第4の電流源I4は、第1の電流源I1から電流を引き込む必要がなく、第2の電流源I2に電流を供給する必要もない。
【0062】
従って、第4の電流源I4の電流供給能力は、第1の電流源I1、第2の電流源I2に依存しない。このため、第4の電流源I4は、プッシュ型差動増幅回路Apを動作させるために充分な電流を供給できる程度の電流供給能力があれば良い。例えば、第4の電流源I4の電流供給能力を、第1の電流源I1および第2の電流源I2よりも小さくすれば、従来のチャージポンプ回路220よりも消費電力を低減することができる。具体的には、多くの場合、第4の電流源I4によって流れる電流Ibは、第1の電流源I1および第2の電流源I2によって流れる電流Icに対してIb<<Icとすることが可能である。例えば、Ibが20~30μA、Icが400~800μAというオーダーで設計することが容易になる。
【0063】
また、第4の電流源I4の電流供給能力が、第1の電流源I1、第2の電流源I2に依存しないため、フラクショナルN-PLL回路20におけるクロック信号REFCLKの周波数に応じた設計を行う自由度も向上する。具体的には、PMOSトランジスターTp1に流れる電流は、第4の電流源I4に依存する。また、第4の電流源I4の電流供給能力が大きくなるほど、PMOSトランジスターTp1に流れ得る電流の最大値も大きくなる。そして、PMOSトランジスターTp1に流れ得る電流量の最大値が大きくなることは、オペアンプAp1のゲインが大きくなることを意味する。
【0064】
オペアンプAp1のゲインが大きくなると、第1のノードN1の電圧と第2のノードN2の電圧とを一致させるための電圧フォロア回路としての動作の即応性が高くなる。クロック信号REFCLKの周波数が高くなる場合、電圧フォロア回路の即応性を高める必要が生じる場合がある。本実施形態にかかるチャージポンプ回路22であれば、第4の電流源I4の電流供給能力を変化させることができるため、クロック信号REFCLKの周波数が高い場合に応じた設計を行うことも容易である。
【0065】
本実施形態にかかるチャージポンプ回路22において、第3の電流源I3は、クロック信号FBCLKの位相にオフセットdfが与えられることにより、実質的にUP=0,DOWN=1の状態が発生しないように構成されていれば良い。従って、定電流源としての第3の電流源I3における電流供給能力は、第1の電流源I1および第2の電流源I2よりも小さくてよい。
【0066】
また、第3の電流源I3によってクロック信号FBCLKの位相にオフセットdfを与える構成によれば、位相比較器の不感帯による位相設定精度の低下を防止することができる。具体的には、位相比較器においては、一般的に、クロック信号FBCLKとクロック信号REFCLKとの位相差に応じてUP信号やDOWN信号を出力し、チャージポンプ回路や電圧制御発振回路等で位相差を調整する。しかし、UP信号やDOWN信号が過度に短いパルスになると、位相差があっても検出されなくなるという問題がある。
【0067】
すなわち、位相比較器21においては、クロック信号FBCLKの位相が遅れている場合、進んでいる場合の双方に関し、位相のずれを検出できない不感帯が存在する。
図4および
図9においては、破線によって不感帯Zを示している。
図4に示す例は、UP信号が不感帯に含まれる例である。従って、この例に示すようなクロック信号REFCLKとクロック信号FBCLKとにおける位相の微小なずれは位相比較器21において検出されない。
【0068】
一方、本実施形態にかかるチャージポンプ回路22においては、第3の電流源I3で常にクロック信号FBCLKの位相をオフセットさせる。この結果、上述のように、チャージポンプ回路22を利用した位相比較器21においては、クロック信号REFCLKに対するクロック信号FBCLKの遅れが位相のオフセットdfと一致した場合にロックした状態になる。すなわち、チャージポンプ回路22が第3の電流源I3を備えることにより、ロックした状態におけるUP信号のパルス幅が
図9に示すように、
図4と比較して大きくなる。このため、ロックする前のUP信号のパルス幅が不感帯に含まれるような状況は発生しない。従って、本実施形態にかかるチャージポンプ回路22を利用すれば、位相比較器の不感帯による位相設定精度の低下を防止することができる。
【0069】
以上のように、第3の電流源I3による位相のオフセットdfで位相設定精度の低下を防止するためには、ロックした状態のUP信号のパルス幅が不感帯に含まれない程度に広くなるように第3の電流源I3の電流値が設計されていればよい。なお、第1の電流源I1,第2の電流源I2,第3の電流源I3,第4の電流源I4は定電流源であり、種々の回路で構成されて良く、カレントミラー回路によって構成されても良いし、自己バイアスされたデプレション型MOSトランジスター等によって構成されても良い。
【0070】
(1-3)プッシュ型差動増幅回路の具体例:
図12は、プッシュ型差動増幅回路Apの具体例を示す図である。プッシュ型差動増幅回路Apは差動段Dsと出力段Osとを備えている。本例において、出力段Osは、高電位電源ノードNvと第2のノードN2との間に接続された上述のPMOSトランジスターTp1を備える。また、第2のノードN2と低電位電源ノードNgとの間には第4の電流源I4として機能するNMOSトランジスターが接続される。なお、本例において、PMOSトランジスターTp1のゲートとドレインとの間にはコンデンサーC1が接続される。
【0071】
差動段Dsは、PMOSトランジスターTp2,Tp3、NMOSトランジスターTn1,Tn2,Tn3によって構成された差動増幅回路を備える。具体的には、PMOSトランジスターTp2のソースは高電位電源ノードNvに接続され、ドレインはNMOSトランジスターTn2のドレインに接続される。NMOSトランジスターTn2のソースは、ノードNd1に接続される。NMOSトランジスターTn1は、ドレインがノードNd1に接続され、ソースが低電位電源ノードNgに接続される。
【0072】
さらに、PMOSトランジスターTp3のソースは高電位電源ノードNvに接続され、ドレインはNMOSトランジスターTn3のドレインに接続される。NMOSトランジスターTn3のソースは、ノードNd1に接続される。そして、PMOSトランジスターTp2,Tp3のゲート同士が接続され、さらにこれらのゲートはPMOSトランジスターTp3のドレインに接続される。また、NMOSトランジスターTn2のドレインはPMOSトランジスターTp1のゲートに接続され、NMOSトランジスターTn2のゲートは、第1のノードN1に接続される。さらに、NMOSトランジスターTn3のゲートは第2のノードN2に接続される。
【0073】
以上の構成により、プッシュ型差動増幅回路Apは、差動増幅回路によって制御されるPMOSトランジスターTp1と、第4の電流源I4とを備えた電圧フォロア回路として機能する。例えば、第1のノードN1における電圧が上がるとNMOSトランジスターTn2のドレインの電圧が下がる。この結果、PMOSトランジスターTp1のゲートに作用する電圧が下がることで、PMOSトランジスターTp1に流れる電流が増加し、第2のノードN2の電圧が上がる。このように、プッシュ型差動増幅回路Apは、第1のノードN1と第2のノードN2の電圧を一致させるように機能する。むろん、
図12に示すプッシュ型差動増幅回路Apの構成は一例であり、他にも種々の構成が採用されてよい。
【0074】
(1-4)変形例:
上述の実施形態は一例であり、各種の付加的な回路が設けられてもよい。
図13は、チャージポンプ回路22においてUP=0,DOWN=1の状態の発生を許容した回路を示している。具体的には、
図13に示すチャージポンプ回路22aは、
図8に示すチャージポンプ回路22に対して第5のスイッチS5および第5の電流源I5が追加された構成である。すなわち、第2のノードN2と低電位電源ノードNgとの間には、第5のスイッチS5と第5の電流源I5とが直列に接続されている。
【0075】
第5のスイッチS5は第2のスイッチS2と同一のタイミングでオン、オフする。すなわち、第4のスイッチS4と相補的にオンおよびオフが制御される。このため、
図13に示されるように、UP=0,DOWN=1の状態において第5の電流源I5はオンになる。この状態においては第3のスイッチS3もオンになるため、第1の電流源I1から供給された電流は第5のスイッチS5を経て第5の電流源I5を通る。第5の電流源I5の電流供給能力は、第1の電流源I1と同一である。従って、第1の電流源I1から供給された電流は、第2のノードN2からプッシュ型差動増幅回路Ap側に流れることはなく、第5の電流源I5側に流れる。
【0076】
このため、UP=0,DOWN=1の状態が発生したとしても、プッシュ型差動増幅回路Apは、
図8と同一の構成によって実現可能である。なお、チャージポンプ回路22aにおいても第3の電流源I3を備えるため、クロック信号FBCLKの位相にオフセットdfを与えることができる。従って、UP=0,DOWN=1の状態があり得ることはほぼ想定しなくてもよいが、フラクショナルN-PLL回路20の動作を開始した初期においては、クロック信号REFCLKとクロック信号FBCLKとの位相差が大きく異なる場合がある。
【0077】
このように、位相差が大きく、クロック信号FBCLKがクロック信号REFCLKの位相より遅れることがあり得る構成であるならば、
図13に示すチャージポンプ回路22aが好ましい。この構成によれば、UP=0,DOWN=1の状態によってクロック信号FBCLKの位相を進めることが可能である。従って、クロック信号FBCLKとクロック信号REFCLKの位相が大きくずれたとしても両者を一致させることができる。
【0078】
なお、第5の電流源I5は第5のスイッチS5がオンにならなければ電流が流れないため、第5の電流源I5を設けることによって継続的な消費電力が増大することはない。また、第5の電流源I5は、定電流源であれば良く、例えば、カレントミラー回路や自己バイアスされたデプレション型MOSトランジスター等によって構成可能である。
【0079】
図14は、チャージポンプ回路22の消費電力を抑制する構成を備えた回路を示している。具体的には、
図14に示すチャージポンプ回路22bは、
図8に示すチャージポンプ回路に対して第6のスイッチS6が追加された回路である。すなわち、第2の電流源I2と第2のノードN2との間において、第4のスイッチS4と直列になるように第6のスイッチS6が接続される。また、第6のスイッチS6は、第1のスイッチS1と相補的にオンおよびオフが制御される。
【0080】
このため、
図14に示されるように、UP=1,DOWN=0の状態において第6のスイッチS6がオフになり、この状態において、一点鎖線で示す電流は流れない。
図14においては、電流が流れないことを×によって示している。以上の構成によれば、UP=1,DOWN=0の状態においてプッシュ型差動増幅回路Apは、
図10に示された破線のように電流を第2のノードN2に供給する必要はない。従って、UP=1,DOWN=0の状態においてプッシュ型差動増幅回路Apが消費する電力を抑制することができる。
【0081】
(2)第2実施形態:
上述の実施形態にかかるチャージポンプ回路2200においては、上述の3個の状態のうちの一つ、UP=0,DOWN=1が発生しない構成としたが、UP=1,DOWN=0が発生しないように構成されても良い。
【0082】
具体的には、このような構成は、従来のチャージポンプ回路220における演算増幅回路A1がプル型差動増幅回路Aplに置換され、さらに、第1のノードN1と高電位電源ノードNvとの間に第3の電流源Il3が接続されことで実現される。
図15は、本実施形態にかかるチャージポンプ回路2200の構成を示す図である。以後、チャージポンプ回路22,220と同一の構成については、同一の符号を付して示している。
【0083】
第3の電流源Il3は、第1のノードN1に正のオフセット電流を供給する電流源である。すなわち、第3の電流源Il3は、第1のノードN1に対して、常時電流を供給する電流源として機能する。
図16は、チャージポンプ回路2200を利用した場合のクロック信号REFCLK、クロック信号FBCLK、UP信号、DOWN信号の関係を説明するための図である。本実施形態においては、第3の電流源Il3によって第1のノードN1に供給される電流によって、クロック信号FBCLKの位相には、常に位相量を進ませる方向(図面左方向)への一定のオフセットdfが与えられる。
【0084】
本実施形態においては、当該オフセットdfにより、フラクショナルN-PLL回路20がロックした状態でオフセットdfに相当する期間にDOWN信号が出力されてUP=0,DOWN=1となる。そして、本実施形態においては、クロック信号FBCLKの位相がクロック信号REFCLKよりも進むようにオフセットされるため、UP=1の状態が発生しない(または、ほぼ発生しない)。従って、本実施形態におけるプル型差動増幅回路Aplにおいては、UP=1,DOWN=0における動作を想定する必要がなくなる。
【0085】
そこで、本実施形態にかかるチャージポンプ回路2200において、プル型差動増幅回路Aplから第2のノードN2に電流を供給する必要はない。このためにチャージポンプ回路2200が備えるボルテージフォロア回路は、プル型差動増幅回路Aplとなっている。
【0086】
図17は、プル型差動増幅回路Aplの構成例を示す図である。
図17に示すプル型差動増幅回路Aplは、出力段Osと差動段Dsとを含む。出力段Osは、NMOSトランジスターTln1と第4の電流源Il4とを備える。NMOSトランジスターTln1は、低電位電源ノードNgと第2のノードN2との間に設けられ、NMOSトランジスターTln1のソースが低電位電源ノードNg、ドレインが第2のノードN2に接続される。第4の電流源Il4は、第2のノードN2と高電位電源ノードNvとの間に設けられる。
【0087】
差動段DsはオペアンプApl1を備えており、非反転入力端子は第1のノードN1(チャージポンプ回路2200の出力ノードVc)に接続され、出力端子にはNMOSトランジスターTln1のゲートが接続される。オペアンプApl1の反転入力端子は、第2のノードN2に接続される。
【0088】
このようなプル型差動増幅回路Aplが利用されたチャージポンプ回路2200において、UP=0,DOWN=1の状態が実現される場合、
図17に示す破線のように第2のノードN2からプル型差動増幅回路Aplに向けて電流が引き込まれる必要がある。この電流は、オペアンプApl1の制御に応じてNMOSトランジスターTln1が動作することにより、低電位電源ノードNg側に引き込まれる。一方、チャージポンプ回路2200においてはUP=1,DOWN=0の状態が実現されないように構成されている。従って、プル型差動増幅回路Aplから第2のノードN2に対して第2の電流源I2による電流のような大電流を出力する必要はない。
【0089】
さらに、チャージポンプ回路2200において、UP=0,DOWN=0の状態が実現される場合、プル型差動増幅回路Aplに対して第2のノードN2から電流を供給する必要はなく、第2のノードN2から電流を引き抜く必要もない。従って、この状態においてプル型差動増幅回路Aplには、一点鎖線に示すように、高電位電源ノードNvから第4の電流源Il4、NMOSトランジスターTln1を経て低電位電源ノードNgに電流が流れればよい。この電流の電流値は、定電流源である第4の電流源Il4によって流れる電流値であるが、第4の電流源Il4は、第1の電流源I1から電流を引き込む必要がなく、第2の電流源I2に電流を供給する必要もない。
【0090】
従って、第4の電流源Il4の電流供給能力は、第1の電流源I1、第2の電流源I2に依存しない。このため、第4の電流源Il4は、プル型差動増幅回路Aplを動作させるために充分な電流を供給できる程度の電流供給能力があれば良い。例えば、第4の電流源Il4の電流供給能力を、第1の電流源I1および第2の電流源I2よりも小さくすれば、従来のチャージポンプ回路220よりも消費電力を低減することができる。
【0091】
また、第4の電流源Il4の電流供給能力が、第1の電流源I1、第2の電流源I2に依存しないため、フラクショナルN-PLL回路20におけるクロック信号REFCLKの周波数に応じた設計を行う自由度も向上する。また、本実施形態にかかるチャージポンプ回路2200であれば、第4の電流源Il4の電流供給能力を変化させることができるため、クロック信号REFCLKの周波数が高い場合に応じた設計を行うことも容易である。
【0092】
さらに、本実施形態においても第3の電流源Il3によってクロック信号FBCLKの位相にオフセットdfを与えるため、位相比較器の不感帯による位相設定精度の低下を防止することができる。本実施形態においても、第1の電流源I1,第2の電流源I2,第3の電流源Il3,第4の電流源Il4は定電流源であり、種々の回路で構成されて良く、カレントミラー回路によって構成されても良いし、自己バイアスされたデプレション型MOSトランジスター等によって構成されても良い。また、プル型差動増幅回路Aplも種々の構成によって実現可能である。
【0093】
本実施形態においても各種の付加的な回路が設けられてよい。
図18は、チャージポンプ回路2200においてUP=1,DOWN=0の状態の発生を許容した回路を示している。具体的には、
図18に示すチャージポンプ回路2200aは、
図15に示すチャージポンプ回路2200に対して第5のスイッチSl5および第5の電流源Il5が追加された構成である。すなわち、第2のノードN2と高電位電源ノードNvとの間には、第5のスイッチSl5と第5の電流源Il5とが直列に接続されている。
【0094】
第5のスイッチSl5は第1のスイッチS1と同一のタイミングでオン、オフする。すなわち、第3のスイッチS3と相補的にオンおよびオフが制御される。このため、
図18に示されるように、UP=1,DOWN=0の状態において第5の電流源Il5はオンになる。この状態においては第4のスイッチS4もオンになるため、第5の電流源Il5から供給された電流は第2の電流源I2を通る。第5の電流源Il5の電流供給能力は、第2の電流源I2と同一である。従って、第5の電流源Il5から供給された電流は、第2のノードN2からプル型差動増幅回路Apl側に流れることはなく、第2の電流源I2側に流れる。
【0095】
このため、UP=1,DOWN=0の状態が発生したとしても、プル型差動増幅回路Aplは、
図15と同一の構成によって実現可能である。クロック信号FBCLKの位相がクロック信号REFCLKに対して遅れ、UP=1,DOWN=0の状態が発生したとしても、両者を一致させることができる。
【0096】
図19は、チャージポンプ回路2200の消費電力を抑制する構成を備えた回路を示している。具体的には、
図19に示すチャージポンプ回路2200bは、
図15に示すチャージポンプ回路に対して第6のスイッチSl6が追加された回路である。すなわち、第1の電流源I1と第2のノードN2との間において、第3のスイッチS3と直列になるように第6のスイッチSl6が接続される。また、第6のスイッチSl6は、第2のスイッチS2と相補的にオンおよびオフが制御される。
【0097】
このため、
図19に示されるように、UP=0,DOWN=1の状態において第6のスイッチSl6がオフになり、この状態において、一点鎖線で示す電流は流れない。
図19においては、電流が流れないことを×によって示している。以上の構成によれば、UP=0,DOWN=1の状態においてプル型差動増幅回路Aplは、
図17に示された破線のように電流を第2のノードN2に供給する必要はない。従って、UP=1,DOWN=0の状態においてプル型差動増幅回路Aplが消費する電力を抑制することができる。
【0098】
(3)他の実施形態:
上述の実施形態は本発明を実施するための例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、PLL回路はフラクショナルN-PLL回路ではなく、デルタシグマ変調回路120を備えないPLL回路、すなわち、クロック信号PLLCLKを整数倍するPLL回路であってもよい。本発明の一実施形態にかかるPLL回路の適用対象は限定されず種々の対象、例えば、各種の電子機器、車両の電装品等に使用可能である。
【0099】
チャージポンプ回路は、位相差電流を第1ノードに出力する回路であれば良い。すなわち、チャージポンプ回路は、位相比較器による比較結果に応じて、第1ノードからの電流の引き込みと、第1ノードに対する電流の供給の少なくとも一方を実施する回路であれば良い。位相差電流に応じたチャージポンプ回路の動作は、種々の動作であってよい。すなわち、チャージポンプ回路の動作は、フィードバック信号の位相を基準信号の位相に近づけるための位相差電流を第1ノードに出力することができればよい。
【0100】
位相差電流は、ローパスフィルターを介して電圧制御発振回路に供給され、フィードバック信号の位相が基準信号の位相と異なる場合に、両者を近づけるための電流であれば良い。従って、位相差電流の第1ノードに対する出力とは、第1ノードに対して電流が供給される状態と、第1ノードから電流が引き込まれる状態との少なくとも一方を含む。
【0101】
第1の電流源は、高電位電源ノードと第1のノードとの間に接続され、かつ、高電位電源ノードと第2のノードとの間に接続されていればよい。すなわち、第1の電流源は、第1のノードまたは第2のノードに対して既定の電流を供給し得る。高電位電源ノードは、低電位電源ノードと比較して高電位となるノードであり、例えば、プラス側電源である。第1の電流源は、当該高電位電源ノードから電力供給を受けて第1のノードまたは第2のノードに電流を供給することができればよい。
【0102】
第2の電流源は低電位電源ノードと第1のノードとの間に接続され、かつ、低電位電源ノードと第2のノードとの間に接続されていればよい。すなわち、第2の電流源は、第1のノードまたは第2のノードから電流を引き抜き得る。低電位電源ノードは、高電位電源ノードと比較して低電位となるノードであり、例えば、例えば、グラウンドやマイナス側電源である。なお、第2の電流源によって流れる電流と第1の電流源によって流れる電流とは、同一であることが好ましく、両電流源の電流供給能力が同一であることが好ましい。
【0103】
第1~第4のスイッチや、第5、第6のスイッチは、2端子間に電流が流れる状態と流れない状態とを切り替えることができればよく、位相比較器の比較結果に応じて動作することができればよい。スイッチは、位相比較器からの信号に基づいて状態を切り替えることができればよく、この限りにおいてスイッチの数は任意である。また、信号に応じて状態を切り替えるための構成は、種々の構成を採用可能であり、例えばMOSトランジスター、バイポーラトランジスター等のトランジスターであってもよいし、他にも、各種のスイッチが利用されて良い。
【0104】
位相比較器からの信号は、位相比較器における比較結果を示していればよい。従って、位相比較器に対するクロック信号REFCLKの位相がフィードバック信号であるクロック信号FBCLKの位相よりも進んでいることを示すUP信号と、遅れていることを示すDOWN信号と、の双方または一方であってよい。
【0105】
第3の電流源は、第1のノードに負のオフセット電流または正のオフセット電流を供給することができればよい。すなわち、第3の電流源は、第1のノードから常に電流を引き抜くか、第1のノードに対して常に電流を供給するか、いずれかであればよい。オフセット電流は、常時電流を引き抜くか、または、常時電流を供給することで、フィードバック信号の位相をオフセットすることができればよい。すなわち、オフセットされた位相差が生じた状態でPLL回路がロックするように構成することで、PLL回路の不感帯の影響を受けない位相差でPLL回路がロックするように構成されていれば良い。なお、第3の電流源においては、フィードバック信号の位相をオフセットすることができればよい、従って、第3の電流源によって流れる電流は第1の電流源および第2の電流源より小さくてよく、第3の電流源の電流供給能力は第1の電流源および第2の電流源より低くてよい。
【0106】
プッシュ型差動増幅回路およびプル型差動増幅回路は、第1のノードに入力側が接続され、第2のノードに出力側が接続されればよい。すなわち、プッシュ型差動増幅回路およびプル型差動増幅回路は、差動増幅回路の入力側と出力側とを同一の電位にさせるボルテージフォロアとして機能すればよい。
【0107】
ただし、第3の電流源による電流が負のオフセット電流、正のオフセット電流のいずれであるのかに応じてプッシュ型、プル型のいずれかが選択される。すなわち、負のオフセット電流によって、フィードバック信号の位相が常時遅れるようにオフセットされる場合、DOWN信号が出力されない(またはほぼ出力されない)ように構成することができる。このため、第2のノードに接続された差動増幅回路から電流が出力されるように、プッシュ型差動増幅回路が採用されればよい。
【0108】
一方、正のオフセット電流によって、フィードバック信号の位相が常時進むようにオフセットされる場合、UP信号が出力されない(またはほぼ出力されない)ように構成することができる。このため、差動増幅回路が第2のノードから電流を引き抜くように、プル型差動増幅回路が採用されればよい。
【符号の説明】
【0109】
1…発振器、2…発振回路、3…振動子、10…発振用回路、20…フラクショナルN-PLL回路、21…位相比較器、22,22a,22b,220,2200,2200a,2200b…チャージポンプ回路、23…ローパスフィルター、24…電圧制御発振回路、25…分周回路、27…分周設定回路、28…クロック生成回路、30…分周回路、40…出力回路、50…レギュレーター、60…レギュレーター、70…制御回路、80…シリアルインターフェース回路、90…不揮発メモリー、120…デルタシグマ変調回路、130…加減算回路