(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】眼科観察装置、および眼科観察プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
A61B3/10
(21)【出願番号】P 2020036837
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】竹内 大輔
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-246904(JP,A)
【文献】特開2002-125937(JP,A)
【文献】特開2010-220771(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0238403(US,A1)
【文献】特開2005-130928(JP,A)
【文献】特開2017-225835(JP,A)
【文献】特開2013-172941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科撮影装置によって取得された被検眼画像を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記被検眼画像を表示するモニタと、検者によって操作入力される操作入力部と、を備える眼科観察装置であって、
前記記憶手段に記憶された右眼の前記被検眼画像である右眼画像、および左眼の前記被検眼画像である左眼画像が前記モニタ上に並列して表示された状態において、前記操作入力部からの操作信号に基づいて、前記右眼画像および前記左眼画像の
表示領域の変更を、上下方向に関して順方向に同期させて行い、左右方向に関して逆方向に同期させて行う表示制御手段を備えることを特徴とする眼科観察装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記被検眼画像が右眼画像か左眼画像かを判定し、前記モニタ上に前記右眼画像と前記左眼画像とが並列して表示されていると判定した場合、前記表示領域の変更を左右方向に関して逆方向に同期させることを特徴とする請求項1の眼科観察装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記被検眼画像の画像サイズ情報に基づいて、前記表示領域の変更を同期させたときの変更量を算出することを特徴とする請求項1または2の眼科撮影装置。
【請求項4】
眼科撮影装置によって取得された被検眼画像を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された被検眼画像を表示するモニタと、検者によって操作入力される操作入力部と、を備える眼科観察装置において実行される眼科観察プログラムであって、前記眼科観察装置のプロセッサによって実行されることで、
前記記憶手段に記憶された右眼の被検眼画像である右眼画像と、左眼の被検眼画像である左眼画像が前記モニタ上に並列して表示された状態において、前記操作入力部からの操作信号に基づいて、前記右眼画像および前記左眼画像の表示領域の変更を、上下方向に関して順方向に同期させて行い、左右方向に関して逆方向に同期させて行う表示制御ステップを前記眼科撮影装置に実行させることを特徴とする眼科観察プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科撮影装置によって撮影された被検眼の画像を観察するための眼科観察装置、および眼科観察プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科用光干渉断層計(OCT:optical coherence tomography)、眼底カメラ、レーザ走査検眼鏡(SLO:scanning laser ophthalmoscope)、等の眼科撮影装置において、被検眼の同一部位における画像を複数枚取得し、それらの画像を比較する場合がある。例えば、左右眼の画像、または異なる検査日時に撮影された画像などが表示部の画面上に表示され、左右眼の対称性または病変部の経時変化などが観察される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の装置において、複数の画像を比較する際に、一方の画像の表示領域を変更すると、連動してもう一方の画像の表示領域も変更されていた。しかしながら、比較する画像によっては、ユーザーの意図しない状態に表示領域が変更されることがあった。
【0005】
本開示は、従来の問題点に鑑み、複数の画像の表示領域を効率よく変更できる眼科観察装置、および眼科撮影プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 眼科撮影装置によって取得された被検眼画像を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記被検眼画像を表示するモニタと、検者によって操作入力される操作入力部と、を備える眼科観察装置であって、前記記憶手段に記憶された右眼の前記被検眼画像である右眼画像、および左眼の前記被検眼画像である左眼画像が前記モニタ上に並列して表示された状態において、前記操作入力部からの操作信号に基づいて、前記右眼画像および前記左眼画像の表示領域の変更を、上下方向に関して順方向に同期させて行い、左右方向に関して逆方向に同期させて行う表示制御手段を備えることを特徴とする。
(2) 眼科撮影装置によって取得された被検眼画像を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された被検眼画像を表示するモニタと、検者によって操作入力される操作入力部と、を備える眼科観察装置において実行される眼科観察プログラムであって、前記眼科観察装置のプロセッサによって実行されることで、前記記憶手段に記憶された右眼の被検眼画像である右眼画像と、左眼の被検眼画像である左眼画像が前記モニタ上に並列して表示された状態において、前記操作入力部からの操作信号に基づいて、前記右眼画像および前記左眼画像の表示領域の変更を、上下方向に関して順方向に同期させて行い、左右方向に関して逆方向に同期させて行う表示制御ステップを前記眼科撮影装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複数の画像の表示領域を効率よく変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施例に係る眼科観察装置の構成について説明するブロック図である。
【
図2】モニタに表示される表示画面(左右眼比較画面)の一例である。
【
図3】モニタに表示される正面画像の表示倍率及び表示領域の変更について説明するための模式図である。
【
図4】左右眼の異なる2つの正面画像における表示領域の変更を同期させる場合の一例である。
【
図5】左右眼の異なる2つの正面画像における表示領域の変更を同期させる場合の一例である。
【
図6】画像サイズの異なる2つの正面画像における表示領域の変更を同期させる場合の一例である。
【
図7】左右眼の異なる2つの断層画像における表示領域の変更を同期させる場合の一例である。
【
図8】左右眼の異なる2つの断層画像における表示領域の変更を同期させる場合の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本実施例に係る眼科観察装置の構成について説明するブロック図である。
【0011】
眼科撮影装置10によって撮影された眼底画像をモニタ上で観察するための眼科観察装置1は、CPU(演算制御部)70と、マウス(操作入力部)76と、メモリ(記憶部)72と、モニタ75と、から構成され、各部はバス等を介してCPU70と電気的に接続されている。
【0012】
CPU70は、メモリ72に記憶されている眼科観察プログラム及び各種制御プログラムに基づいて各部の動作を制御する。この眼科観察プログラムをコンピュータ上で実行させることによって眼科観察装置1を使用することが可能となる。ここで、CPU70は、眼科観察プログラムにしたがってモニタ75の表示画面を制御する。つまり、CPU70は、表示制御手段として機能する。
【0013】
本実施例におけるマウス76には、検者の手によってマウス76本体が2次元的に移動されたときの移動信号を検出するセンサと、検者の手によって押圧されたことを検知するための左右2つのマウスボタンと、左右2つのマウスボタンの間に前後方向に回転可能なホイール機構と、が設けられている。なお、CPU70、マウス76、メモリ72、モニタ75として、市販のPC(パーソナルコンピュータ)が持つ演算処理部、入力部、記憶部、表示部を用い、市販のPCに眼科観察プログラムをインストールするようにしてもよい。
【0014】
なお、眼科観察装置1には、被検眼の所定部位における画像を撮影するための眼科撮影装置10が接続されている。
図1において、眼科撮影装置10は、被検眼眼底の断層画像を得るための干渉光学系(OCT光学系)200と、被検眼眼底の正面画像を得るための正面観察光学系300と、制御部400と、を有し、被検眼の眼底部位を撮影できる。なお、眼科撮影装置10の詳しい構成については、特開2008-29467号公報を参考にされたい。
【0015】
干渉光学系200は、第1の光源から発せられた第1の測定光を被検眼眼底上で走査させる第1走査部(光スキャナ)と、第1の光源から発せられた光によって生成される参照光と被検眼眼底に照射された第1測定光の反射光との合成により得られる干渉光を受光する第1の受光素子と、を備え、いわゆる眼科用光断層干渉計(OCT)の装置構成を持つ。なお、干渉光学系200の構成としては、スペクトルメータを用いるSpectral-domain OCT(SD-OCT)、波長可変光源を用いるSwept-source OCT(SS-OCT)、Time-domain OCT(TD-OCT)、等が考えられる。
【0016】
正面観察光学系300は、第2の光源から発せられた第2の測定光を被検眼眼底上で二次元的に走査させる第2走査部(光スキャナ)と、眼底と略共役位置に配置された共焦点開口を介して眼底反射光を受光する第2の受光素子と、を備え、いわゆる眼科用走査型レーザ検眼鏡(SLO)の装置構成を持つ。なお、観察光学系300の構成としては、いわゆる眼底カメラタイプの構成であってもよい。
【0017】
制御部400は、眼科撮影装置10の各部材を制御し、干渉光学系200が持つ第1の受光素子から出力される受光信号に基づいて断層画像(OCT画像)を取得する。また、正面観察光学系300が持つ第2の受光素子から出力される受光信号に基づいて正面画像(SLO画像または眼底カメラ画像)を取得する。
【0018】
眼科観察装置1と眼科撮影装置10とは、LAN等で接続されており、眼科撮影装置10で取得された各種データ(例えば、断層画像データ、正面画像データ、画像取得時における各種撮影条件(例えば、測定光の走査位置、検査日時)、等)は、データベースとしてのメモリ72に転送される。
【0019】
図2は、モニタ75に表示される表示画面(比較用画面)の一例である。モニタ75の画面には、マウス76の移動操作によりモニタ75上の画面全体を移動可能なカーソル100と、正面画像表示領域310と、正面画像表示領域310に表示された画像の表示条件を調整するための表示条件設定領域410と、各画像に対する表示条件/表示領域の変更を各画像同士で同期させるか否かを選択するための同期ボタン510と、が設けられている。
【0020】
CPU70は、検者によってマウス76が操作されたときにマウス76から出力される操作信号に基づいてモニタ75の画面上でカーソル100を移動させる。また、モニタ75上の所望の位置にカーソル100を合わせた状態で、クリック操作又はドラッグ操作が行われると、各種表示条件/表示領域が設定される。カーソル100は、モニタ75上における任意の位置を指定するために用いられる。
【0021】
正面画像表示領域310には、同一被検者の右眼および左眼にて各々取得されメモリ72に記憶された右眼の正面画像320と左眼の正面画像330とがそれぞれ所定の表示範囲に並列して表示された状態となっている。この場合、右眼の正面画像320と左眼の正面画像330は、メモリ72に記憶された正面画像データの少なくとも一部が表示される。
【0022】
なお、CPU70は、各画像データに付されている左右眼情報を元に、右眼の正面画像320をモニタ75の左部分に表示し、左眼の正面画像330をモニタ75の右部分に表示する。
【0023】
なお、正面画像320と正面画像330をモニタ75に表示させる場合、検者は、図示無き所定の画像選択画面において、メモリ72に記憶された同一被検者の同一部位(例えば眼底の黄斑部付近等)における画像データから、左右眼の異なる任意の正面画像を予め選択しておき、観察画面を呼び出す操作を行うことによって選択された左右眼の異なる2つの画像を一画面に表示させる。なお、正面画像の撮影部位は、画像取得と同時にメモリ72に記憶された測定光の走査位置情報、固視位置情報等から特定できる。
【0024】
表示条件設定領域410には、正面画像の明るさを調整するための明るさ調整部420と、正面画像のコントラストを調整するためのコントラスト調整部430と、正面画像のズーム倍率(表示倍率)を調整するためのズーム倍率調整部440と、が表示されている。なお、初期設定として、明るさ50%、コントラスト50%、ズーム倍率100%に設定されている。ここで、マウス76の操作を介して、各調整部に設けられたスライダの表示位置が変更されると、CPU70は、各正面画像の各種表示条件を変更する。
【0025】
また、設定領域410の他、正面画像320又は正面画像330の上にカーソル100が置かれた状態で、マウス76のホイールが回転されると、CPU70は、その操作信号に基づいて正面画像のズーム倍率を変化させる。また、正面画像320又は正面画像330上にカーソル100が置かれた状態で、マウス76によるドラッグ操作がなされると、CPU70は、その操作信号に基づいて正面画像においてモニタ75上に表示される領域(表示領域)を変更する。
【0026】
図3はモニタ75に表示される正面画像の表示倍率及び表示領域の変更について説明するための模式図である。点線上の矩形領域は、メモリ72に記憶された正面画像データAを表す。そして、画像データAはズーム倍率に応じて拡大・縮小される。太線(実線)の矩形領域は、この大きさの画像データAにおいてモニタ75に実際に表示される領域(表示領域)Bを表す。表示領域Bは、正面画像表示領域310において正面画像毎に設定された所定の表示範囲に対応しており、画像データAの中で表示領域Bに囲まれた領域が正面画像320又は正面画像330としてモニタ75に表示されることとなる。
【0027】
ここで、ズーム倍率の変更を指示する操作信号が出力されると、CPU70は、表示領域Bに対する画像データAの倍率を変化させる(
図3はズーム倍率が200%のときのものである)。これにより、モニタ75に表示される正面画像のズーム倍率が変化される。
【0028】
また、表示領域の変更を指示する操作信号が出力されると、CPU70は、所定の倍率に設定された画像データAに対して表示領域Bを上下左右方向に移動させる。これにより、モニタ75に表示される正面画像の表示領域が変更される。具体的には、CPU70は、マウス76のドラッグを開始した点を始点とし、ドラッグが終了した点を終点とするベクトル量(ΔX、ΔY)を随時検出し、検出されたベクトル量に応じて表示領域Bを移動させる。そして、CPU70は、移動された表示領域Bに対応する正面画像データをモニタ75の所定範囲に出力する。これにより、モニタ75上の正面画像が上下左右方向にスクロールされる。これにより、検者は、正面画像における任意の眼底部位を容易に観察できる。
【0029】
なお、ズーム倍率が100%より大きい場合、正面画像の表示領域が変更されると、モニタ75上に表示される眼底部位が上下方向及び/又は左右方向に関して変更される。また、ズーム倍率が100%以下の場合、正面画像の表示領域が変更されると、モニタ75上に表示される眼底部位が上下方向及び/又は左右方向に関して移動される。
【0030】
なお、表示領域を変更する場合、上記ドラッグ操作に限るものはなく、上下左右方向に関連する操作信号に基づいてモニタ75を表示制御するものであれば、これに限るものではない。例えば、モニタ75に表示されるスクロールバーを移動させる構成であってもよい。また、上下左右方向に関連する操作信号を出力するためのポインティングデバイスとしては、マウス76の他、トラックボール、キーボードの十字キー、タッチパネル、等を用いた構成が考えられる。
【0031】
同期ボタン510は、2つの正面画像のどちらか一方に対する表示条件/表示領域の変更と他方の正面画像の表示条件/表示領域の変更を同期させる同期モードと、これを同期させない非同期モードと、を選択的に切換えるためのモード切換部として用いられる。
図2の場合、同期ボタン510がチェックされると同期モードに設定され、同期ボタン510のチェックが外されると非同期モードに設定される。
【0032】
上記のような比較用の表示画面において、検者が左右眼比較を行う場合について説明する。左右眼比較の対象となる2枚の正面画像が選択されてモニタ75上に表示されると、検者は正面画像320、330を観察できる。なお、本実施例では、初期設定として同期モードに設定されている。
【0033】
同期モードに設定された場合において、2つの正面画像のどちらか一方に対して表示条件/表示領域の変更が行われると、CPU70は、この変更に同期して、他方の正面画像に対して表示条件/表示領域の変更を行う。
【0034】
より具体的には、同期モードにおいて表示倍率を変更する場合、CPU70は、ズーム倍率調整部440のスライダ操作又はホイールの回転操作によって設定されるズーム倍率に応じて、正面画像320と正面画像330とを同じズーム倍率で表示する(
図4参照)。ここで、ズーム倍率が変更されると、正面画像320と正面画像330の両方のズーム倍率が同期して変更される。なお、非同期モードにおいて正面画像320と正面画像330のズーム倍率が異なっていた場合、同期モードに設定されると、いずれか一方の正面画像のズーム倍率に合わせて他方のズーム倍率が調整される。
【0035】
また、正面画像の輝度及びコントラストの調整においても、CPU70は、ズーム倍率の調整と同様に、明るさ調整部420又はコントラスト調整部430のスライダ操作に応じて、正面画像320と正面画像330を同じ明るさ又は同じコントラスト設定にて表示する。
【0036】
また、CPU70は、正面画像320又は正面画像330の一方に対するドラッグ操作によって検出されるベクトル量(ΔX、ΔY)に応じて正面画像320の表示領域及び正面画像330の表示領域を逐次変更する。そして、CPU70は、変更された表示領域に対応する各正面画像をそれぞれモニタ75上の所定範囲に出力する。
【0037】
なお、
図4に示すように、右眼の正面画像320と左眼の正面画像330が表示されている場合、正面画像320及び正面画像330の表示領域の移動量(変更量)は同じで、移動方向は左右逆になるように設定されている。例えば、一方の正面画像がマウス76によってベクトル量(ΔX,ΔY)だけ移動されると、他方の正面画像はベクトル量(-ΔX,ΔY)だけ移動される。例えば、
図4に示すように、正面画像320が左下方向に移動され、黄斑Mが表示されていた状態から視神経乳頭Nが表示された状態になるのと連動して、CPU70は正面画像330を正面画像320と同じ移動量だけ右下方向に移動させ、正面画像330においても黄斑Mが表示されていた状態から視神経乳頭Nが表示される状態とする(
図4がドラッグ操作前、
図5がドラック操作後である)。
【0038】
以上のように、右眼と左眼の被検眼画像が並列して表示されている場合、一方の被検眼画像の表示領域が変更されたときに、他方の被検眼画像の表示領域が上下方向に関しては順(正)方向に同期(連動)され、左右方向に関しては逆方向に同期されるように変更されることによって、左右眼比較を行うのに適した状態で表示領域を同期させることができる。例えば、左右眼の黄斑と視神経乳頭の各々を拡大表示させて順次比較する場合であっても、一方の表示領域を黄斑から視神経乳頭に合わせれば、他方の表示領域も黄斑から視神経乳頭に合うため、効率的に左右眼を比較することができる。
【0039】
なお、CPU70は、被検眼画像が左右どちらの画像かを判定し、その判定結果に基づいて表示領域の変更を制御してもよい。例えば、CPU70は、被検眼画像に写る特徴部位(黄斑、視神経乳頭など)に基づいて被検眼画像が左右どちらかの画像かを判定してもよい。例えば、CPU70は、被検眼画像に写る黄斑と乳頭を検出し、それらの特徴部位の位置関係に基づいて被検眼画像が右眼の画像か左眼の画像かを判定してもよい。この場合、CPU70は、黄斑が左側で乳頭が右側にある画像を右眼の画像だと判定し、黄斑が右側で乳頭が左側にある画像を左眼の画像だと判定してもよい。この場合、CPU70は、2つの被検眼画像がともに右眼の画像または左眼の画像だった場合は表示領域の変更を上下左右方向において順方向に同期させ、2つの被検眼画像が左右眼で異なる場合は表示領域の変更を上下方向において順方向に同期させ、左右方向においてが逆方向に同期させる。もちろん、CPU70は、画像のタグ情報等に基づいて、被検眼画像が左右眼のどちらの画像なのかを判定してもよい。
【0040】
なお、画像のサイズが異なる場合、CPU70は画像サイズ情報に基づいて、表示領域を同期させるときの移動量を算出してもよい。例えば、
図6(a)に示すように、第1の被検眼画像320のサイズDに対して第2の被検眼画像340の画像サイズが半分である場合、かつ、第1と第2の被検眼画像の両方とも同じサイズの表示領域にフィットして表示される場合、CPU70は、第1の被検眼画像320をΔXだけ移動させるときに、第2の被検眼画像340はΔX/2で移動させる(
図6(b)参照)。これによって、画像サイズの違う場合であっても表示領域を適切な移動量で同期させることができる。
【0041】
なお、同期ボタン510によって非同期モードに設定された場合、2つの正面画像のどちらか一方に対して表示条件/表示領域の変更が行われると、CPU70は、その正面画像に対してのみ表示条件/表示領域の変更を行う。
【0042】
より具体的には、正面画像320がカーソル100によって指定された状態で、そのズーム倍率が所定のズーム倍率に変更される場合、CPU70は、正面画像320を設定されたズーム倍率に変更する。ここで、正面画像330のズーム倍率は変更されない。なお、画像の明るさ及びコントラストの調整においても、同様である。
【0043】
また、正面画像、20に対してドラッグ操作がなされると、CPU70は、マウス76によって検出されるベクトル量に応じて正面画像320の表示領域を逐次変更する。そして、CPU70は、変更された表示領域に対応する正面画像320をモニタ75上の所定範囲上に出力する。ここで、正面画像330の表示領域は変更されない。
【0044】
上記のような非同期モードの用途としては、同期モードによる表示領域の変更の前に、各正面画像取得時の撮影位置のずれによる正面画像320と正面画像330との表示部位及び表示位置のずれを修正する場合が考えられる。この場合、検者は、正面画像320と正面画像330上における眼底の同一部位がほぼ同じ表示位置にて表示されるように、前述のドラッグ操作により各正面画像の表示領域を変更すればよい。
【0045】
このようにすれば、前述の同期モードにて正面画像の表示領域が変更される場合に、各正面画像間で撮影位置のずれがあっても、検者は、同一部位での画像同士を容易に比較可能となる。これは、正面画像のズーム倍率が高いとき(撮影位置のズレによる影響が大きい)に特に有効である。
【0046】
なお、非同期モードの他の用途としては、検者が一方の画像のみに注目して正面画像を観察したい場合、検者の注目位置が正面画像毎に異なる場合、等が考えられる。
【0047】
なお、上記において、CPU70は、マウス76から出力される操作信号に基づいて正面画像320と正面画像330の少なくとも一方の表示領域を変更し、正面画像320と正面画像330の位置ずれを補正したが、これに限るものではない。すなわち、眼科撮影装置10によって取得された正面画像320と正面画像330が処理され、正面画像320と正面画像330の位置ずれが補正される手法であればよい。
【0048】
例えば、CPU70は、正面画像320と正面画像330の位置ずれ情報を画像処理により検出し、検出された位置ずれ情報に基づいて正面画像320と正面画像330の少なくとも一方の表示領域を変更し、正面画像320と正面画像330の位置ずれを補正してもよい。
【0049】
この場合、例えば、2つの画像間の位置ずれが検出され、このずれが補正されるように処理される。また、各画像に対し基準位置に対するずれが検出され、各画像の同一部位がある基準位置に補正されるように処理されてもよい。また、位置ずれ補正が行われるタイミングとしては、特に限定されず、例えば、各画像が取得された段階で随時処理されてもよいし、両画像が並列表示される段階で処理されてもよい。
【0050】
なお、正面画像320と正面画像330の位置ずれ情報を検出する手法としては、種々の画像処理手法(各種相関関数を用いる方法、フーリエ変換を利用する方法、特徴点のマッチングに基づく方法、所定方向における輝度分布のピーク位置のずれを検出する方法)を用いることが可能である。
【0051】
また、以上の説明においては、左右の異なる1組の正面画像をモニタ75に並列して表示する構成としたが、左右の異なる2組以上の正面画像をモニタ75に並列して表示するようにしてもよい。
【0052】
なお、以上の説明においては、眼底の正面画像を例にとって説明したが、これに限るものではなく、同一被検者における左右の異なる2つ以上の眼底断層画像(OCTによって取得された眼底断層画像)がモニタ上で並列して表示される構成においても、本開示の適用は可能である。例えば、
図7に示すように、モニタ75の断層画像表示領域210に右眼の断層画像220と左眼の断層画像230が表示されている場合、CPU70は、一方の断層画像220の表示領域の変更に応じて、他方の断層画像230の表示領域の変更を上下方向に関して順方向に同期させ、左右方向に関しては逆方向に同期させる(
図7が表示領域の変更前、
図8が表示領域の変更後)。なお、
図7,8のように、被検眼の正面画像と断層画像が両方表示されている場合、右眼の正面画像320および断層画像220の表示領域を同期させてもよい。また、左眼の正面画像330および断層画像230の表示領域を同期させてもよい。例えば、
図7,8のように、右眼の断層画像220を右方向に移動させた場合、正面画像320を右方向に同期して移動させるとともに、左眼の断層画像230と正面画像330を左方向(逆方向)に同期して移動させてもよい。このように、CPU70は、モニタ75に表示された複数の画像のうち、いずれかの表示領域が変更される場合、左右眼の共通する画像は左右方向に関して順方向に同期させ、左右眼の相違する画像は左右方向に関して逆方向に同期させて表示領域を変更させる。これによって複数の画像を比較する場合であっても効率的に表示領域を変更することができる。
【0053】
また、眼底画像に限るものではなく、左右眼の異なる2つ以上の被検眼画像(被検眼の所定部位における画像)がモニタ上で並列して表示される構成であればよい。例えば、前眼部の断面画像又は正面画像がモニタ上で表示される構成においても、本開示の適用は可能である。
【0054】
なお、本開示は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施例の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 眼科観察装置
70 CPU
72 メモリ
75 モニタ
76 マウス
100 カーソル
220 第1の断層画像
230 第2の断層画像
440 ズーム倍率調整部
510 同期ボタン