(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】光書込装置の製造方法、光書込装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/447 20060101AFI20231121BHJP
B41J 2/45 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B41J2/447 101C
B41J2/447 101P
B41J2/45
(21)【出願番号】P 2020038354
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 義弘
(72)【発明者】
【氏名】大木 誠
(72)【発明者】
【氏名】ヌルナビラ ムハマドマクタ
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-029048(JP,A)
【文献】特開2019-181784(JP,A)
【文献】特開2019-217717(JP,A)
【文献】特開2019-209586(JP,A)
【文献】特開2019-159170(JP,A)
【文献】特開2014-172257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/43 - 2/465
H04N 1/024 - 1/036
G02B 26/10 - 26/12
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光点が2次元に配列された発光点群を複数配置した発光基板が少なくとも3つ配置された発光基板ユニットと、
前記発光点群から出射された光束を感光体上の異なる位置に結像させる結像光学系と、
を備え、
前記結像光学系は、
複数の前記発光点群の各々に対向して配置された複数の結像レンズを有する複数のレンズアレイと、
絞り板と、
を備え、
前記発光基板ユニットは、
前記少なくとも3つの発光基板が、平行に配置されるとともに、光軸方向に積層され、
前記少なくとも3つの発光基板の各々が有する発光点群が、それぞれ副方向でずれており、
隣接する前記発光基板間の光軸方向の間隔の各々が、等間隔ではなく、
前記発光基板の前記発光点群が配置された平面の法線と、前記感光体受光面に対する法線とが、平行ではなく、
前記発光点群の各々から出射された光束が、前記感光体受光面上に集光されている光書込装置の製造方法であって、
前記感光体と最も距離が近い第1発光基板に相対する前記結像レンズから射出された光束を第1光束とし、
前記感光体と最も距離が遠い第2発光基板に相対する前記結像レンズから射出された光束を第2光束としたとき、
前記発光基板ユニット全体を前記光軸方向にシフトさせ、前記第1光束及び前記第2光束が前記感光体受光面上に集光するように調整する第1工程と、
前記発光基板の各々から出射された光束の焦点を結んだ線が直線となるように、前記第1発光基板又は前記第2発光基板を前記光軸方向にシフトさせる第2工程と、
前記第2工程で前記光軸方向にシフトさせていない前記第1発光基板又は前記第2発光基板の前記発光点群の重心を軸として前記発光基板ユニット全体を回転させ、全ての前記光束の焦点が前記感光体受光面上に集光するように調整する第3工程と、
を含むことを特徴とする光書込装置の製造方法。
【請求項2】
前記絞り板は、前記複数のレンズアレイの間に存在することを特徴とする請求項1に記載の光書込装置の製造方法。
【請求項3】
前記結像光学系の前記結像レンズごとの結像倍率は、全て等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載の光書込装置の製造方法。
【請求項4】
前記結像光学系の前記結像レンズごとの結像倍率は、1.0以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の光書込装置の製造方法。
【請求項5】
前記発光点は、ランバーシアンの配光特性を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の光書込装置の製造方法。
【請求項6】
隣接する前記発光基板間には、前記光軸方向の間隔を調整可能な間隔調整部が設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の光書込装置の製造方法。
【請求項7】
前記発光点は、有機ELで構成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の光書込装置の製造方法。
【請求項8】
全ての前記光束の焦点が前記感光体受光面上から±25μmの範囲に存在することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の光書込装置の製造方法。
【請求項9】
前記感光体受光面上に投影された光束の断面プロファイルのピークの1/e
2で切ったときの幅をBDとし、前記発光点の直径をLD、前記結像光学系の前記結像レンズごとの結像倍率の絶対値をβとしたとき、前記感光体受光面上に投影された全ての光束が、「BD/(LD×β)≦1.25」を満たすことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の光書込装置の製造方法。
【請求項10】
複数の発光点が2次元に配列された発光点群を複数配置した発光基板が少なくとも3つ配置された発光基板ユニットと、
前記発光点群から出射された光束を感光体上の異なる位置に結像させる結像光学系と、
を備え、
前記結像光学系は、
複数の前記発光点群の各々に対向して配置された複数の結像レンズを有する複数のレンズアレイと、
絞り板と、
を備え、
前記発光基板ユニットは、
前記少なくとも3つの発光基板が、平行に配置されるとともに、光軸方向に積層され、
前記少なくとも3つの発光基板の各々が有する発光点群が、それぞれ副方向でずれており、
隣接する前記発光基板間の光軸方向の間隔の各々が、等間隔ではなく、
前記発光基板の前記発光点群が配置された平面の法線と、前記光束を受光する前記感光体受光面に対する法線とが、平行ではなく、
前記発光点群の各々から出射された光束が、前記感光体受光面上に集光されていることを特徴とする光書込装置。
【請求項11】
前記絞り板は、前記複数のレンズアレイの間に存在することを特徴とする請求項10に記載の光書込装置。
【請求項12】
前記結像光学系の前記結像レンズごとの結像倍率は、全て等しいことを特徴とする請求項10又は11に記載の光書込装置。
【請求項13】
前記結像光学系の前記結像レンズごとの結像倍率は、1.0以下であることを特徴とする請求項10~12のいずれか一項に記載の光書込装置。
【請求項14】
前記発光点は、ランバーシアンの配光特性を有することを特徴とする請求項10~13のいずれか一項に記載の光書込装置。
【請求項15】
隣接する前記発光基板間には、前記光軸方向の間隔を調整可能な間隔調整部が設けられていることを特徴とする請求項10~14のいずれか一項に記載の光書込装置。
【請求項16】
前記発光点は、有機ELで構成されていることを特徴とする請求項10~15のいずれか一項に記載の光書込装置。
【請求項17】
全ての前記光束の焦点が前記感光体受光面上から±25μmの範囲に存在することを特徴とする請求項10~16のいずれか一項に記載の光書込装置。
【請求項18】
前記感光体受光面上に投影された光束の断面プロファイルのピークの1/e
2で切ったときの幅をBDとし、前記発光点の直径をLD、前記結像光学系の前記結像レンズごとの結像倍率の絶対値をβとしたとき、前記感光体受光面上に投影された全ての光束が、「BD/(LD×β)≦1.25」を満たすことを特徴とする請求項10~17のいずれか一項に記載の光書込装置。
【請求項19】
感光体と、
前記感光体を帯電させる帯電部と、
前記帯電部により帯電された前記感光体に対して光を照射することで前記感光体上に静電潜像を形成する請求項10~18のいずれか一項に記載の光書込装置と、
前記光を照射された前記感光体に現像剤を供給することで前記静電潜像を現像剤による像に顕像化する現像部と、
前記現像剤による像を用紙に転写する転写部と、
前記転写部により転写された前記現像剤による像を前記用紙に定着する定着部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光書込装置の製造方法、光書込装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙上に画像を形成するプリンターや複写機が知られている。これらプリンターや複写機に代表される画像形成装置は、光書込装置を用いて静電潜像を形成し、形成された静電潜像によりトナー画像を作成し、そのトナー画像を定着器により加熱及び加圧して用紙上に定着させることで、用紙上に画像を形成する。
【0003】
光書込装置は、複数の発光点(例えば、LED、OLED)からなる発光点群を主方向及び副方向に2次元的に複数配置した発光基板と、発光点群に対して1対1で対向配置された結像レンズを有するレンズアレイユニットと、を備えて構成されている。
例えば、感光体の曲率に合わせて、1枚の発光基板上に、各発光素子(発光点)を光軸方向の位置が異なるように配置した構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、1枚の発光基板上に、各発光素子(発光点)を隣接する発光素子列に積層されている発光素子の数が異なるように配置した構成が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
このような光書込装置においては、通常、発光点から射出された光束が結像レンズを通過し、感光体受光面上でビームが形成される。この際、ビームの結像状態に応じて、画像品質が変化してしまうため、ビーム結像状態が良好であることが重要となる。例えば、発光素子として円形のOLEDを用いている場合、理想的なビーム結像状態は、ビーム直径が「発光素子の円の直径」×「結像光学系の倍率」に相当し、ビーム形状がフラットトップな形状であることが望ましい。もし、レンズアレイユニットと発光基板とが不適切な位置・角度で配置されていた場合、ビームが崩れてしまうため、画像品質の劣化につながってしまう。光書込装置においては、高い画像品質を得るためにも良好なビーム結像状態を実現するのが必要不可欠であるため、感光体、発光基板及びレンズアレイユニットの配置が重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-221707号公報
【文献】特開2014-172257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、レンズアレイユニットに用いるレンズアレイは、熱プレスによる成形にて製造されることが多いため、成形時の温度分布ムラが生じてしまい、成形品であるレンズアレイには二次曲線に近い形のたわみが発生してしまう。このレンズアレイのたわみは、レンズアレイユニット化する際に矯正されるが、それでもある程度のたわみは残存してしまう。残存たわみを有するレンズアレイユニットを設計値通りに配置しても、残存たわみの影響で良好なビーム結像状態が得られないため、結果として画像品質が低下してしまう。
【0007】
もし、特許文献1、2記載の構成のように、発光基板が1枚で構成されていれば、発光基板の位置を光軸方向前後に動かすことで、レンズアレイユニットの残存たわみの影響を吸収することができる。具体的には、まず、発光基板内の発光素子を発光させ、残存たわみを有するレンズアレイユニットを通過して得られたビームを観測できる状態を実現する。その状態で発光基板を光軸方向の前後に動かし、デフォーカス量とビーム結像状態の変化の挙動を見極め、ビーム直径が最小近傍となる位置に発光基板を配置する。このような調整をすることで、残存たわみがあるレンズアレイユニットでも良好なビーム結像状態を得ることができる。
【0008】
しかしながら、近年では、特に、発光基板の配線制約やサイズ制約から、複数の発光基板が光軸方向に階段状に積層された構成が用いられている。複数の発光基板が積層されている構成の場合、レンズアレイユニットが有する残存たわみの影響を吸収するためには、発光基板を1枚ずつ光軸方向前後に動かす必要がある。しかしながら、発光基板間には光軸方向に隙間が存在しないため、発光基板を1枚ずつ光軸方向前後に動かそうとすると、発光基板同士が衝突してしまい、発光基板が破損してしまう。したがって、複数の発光基板が積層されている構成の場合、良好なビーム結像状態を得ることは非常に難しい。
【0009】
本発明は、残存たわみを有するレンズアレイを用いる場合であっても、積層された発光基板を破損することなく良好なビーム結像状態を実現して、画像品質を向上させることが可能な光書込装置の製造方法、光書込装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、
複数の発光点が2次元に配列された発光点群を複数配置した発光基板が少なくとも3つ配置された発光基板ユニットと、
前記発光点群から出射された光束を感光体上の異なる位置に結像させる結像光学系と、
を備え、
前記結像光学系は、
複数の前記発光点群の各々に対向して配置された複数の結像レンズを有する複数のレンズアレイと、
絞り板と、
を備え、
前記発光基板ユニットは、
前記少なくとも3つの発光基板が、平行に配置されるとともに、光軸方向に積層され、
前記少なくとも3つの発光基板の各々が有する発光点群が、それぞれ副方向でずれており、
隣接する前記発光基板間の光軸方向の間隔の各々が、等間隔ではなく、
前記発光基板の前記発光点群が配置された平面の法線と、前記感光体受光面に対する法線とが、平行ではなく、
前記発光点群の各々から出射された光束が、前記感光体受光面上に集光されている光書込装置の製造方法であって、
前記感光体と最も距離が近い第1発光基板に相対する前記結像レンズから射出された光束を第1光束とし、
前記感光体と最も距離が遠い第2発光基板に相対する前記結像レンズから射出された光束を第2光束としたとき、
前記発光基板ユニット全体を前記光軸方向にシフトさせ、前記第1光束及び前記第2光束が前記感光体受光面上に集光するように調整する第1工程と、
前記発光基板の各々から出射された光束の焦点を結んだ線が直線となるように、前記第1発光基板又は前記第2発光基板を前記光軸方向にシフトさせる第2工程と、
前記第2工程で前記光軸方向にシフトさせていない前記第1発光基板又は前記第2発光基板の前記発光点群の重心を軸として前記発光基板ユニット全体を回転させ、全ての前記光束の焦点が前記感光体受光面上に集光するように調整する第3工程と、
を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光書込装置の製造方法において、
前記絞り板は、前記複数のレンズアレイの間に存在することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光書込装置の製造方法において、
前記結像光学系の前記結像レンズごとの結像倍率は、全て等しいことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の光書込装置の製造方法において、
前記結像光学系の前記結像レンズごとの結像倍率は、1.0以下であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載の光書込装置の製造方法において、
前記発光点は、ランバーシアンの配光特性を有することを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の光書込装置の製造方法において、
隣接する前記発光基板間には、前記光軸方向の間隔を調整可能な間隔調整部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載の光書込装置の製造方法において、
前記発光点は、有機ELで構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項1~7のいずれか一項に記載の光書込装置の製造方法において、
全ての前記光束の焦点が前記感光体受光面上から±25μmの範囲に存在することを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項1~8のいずれか一項に記載の光書込装置の製造方法において、
前記感光体受光面上に投影された光束の断面プロファイルのピークの1/e2で切ったときの幅をBDとし、前記発光点の直径をLD、前記結像光学系の前記結像レンズごとの結像倍率の絶対値をβとしたとき、前記感光体受光面上に投影された全ての光束が、「BD/(LD×β)≦1.25」を満たすことを特徴とする。
【0019】
請求項10に記載の発明は、
光書込装置において、
複数の発光点が2次元に配列された発光点群を複数配置した発光基板が少なくとも3つ配置された発光基板ユニットと、
前記発光点群から出射された光束を感光体上の異なる位置に結像させる結像光学系と、
を備え、
前記結像光学系は、
複数の前記発光点群の各々に対向して配置された複数の結像レンズを有する複数のレンズアレイと、
絞り板と、
を備え、
前記発光基板ユニットは、
前記少なくとも3つの発光基板が、平行に配置されるとともに、光軸方向に積層され、
前記少なくとも3つの発光基板の各々が有する発光点群が、それぞれ副方向でずれており、
隣接する前記発光基板間の光軸方向の間隔の各々が、等間隔ではなく、
前記発光基板の前記発光点群が配置された平面の法線と、前記光束を受光する前記感光体受光面に対する法線とが、平行ではなく、
前記発光点群の各々から出射された光束が、前記感光体受光面上に集光されていることを特徴とする。
【0020】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の光書込装置において、
前記絞り板は、前記複数のレンズアレイの間に存在することを特徴とする。
【0021】
請求項12に記載の発明は、請求項10又は11に記載の光書込装置において、
前記結像光学系の前記結像レンズごとの結像倍率は、全て等しいことを特徴とする。
【0022】
請求項13に記載の発明は、請求項10~12のいずれか一項に記載の光書込装置において、
前記結像光学系の前記結像レンズごとの結像倍率は、1.0以下であることを特徴とする。
【0023】
請求項14に記載の発明は、請求項10~13のいずれか一項に記載の光書込装置において、
前記発光点は、ランバーシアンの配光特性を有することを特徴とする。
【0024】
請求項15に記載の発明は、請求項10~14のいずれか一項に記載の光書込装置において、
隣接する前記発光基板間には、前記光軸方向の間隔を調整可能な間隔調整部が設けられていることを特徴とする。
【0025】
請求項16に記載の発明は、請求項10~15のいずれか一項に記載の光書込装置において、
前記発光点は、有機ELで構成されていることを特徴とする。
【0026】
請求項17に記載の発明は、請求項10~16のいずれか一項に記載の光書込装置において、
全ての前記光束の焦点が前記感光体受光面上から±25μmの範囲に存在することを特徴とする。
【0027】
請求項18に記載の発明は、請求項10~17のいずれか一項に記載の光書込装置において、
前記感光体受光面上に投影された光束の断面プロファイルのピークの1/e2で切ったときの幅をBDとし、前記発光点の直径をLD、前記結像光学系の前記結像レンズごとの結像倍率の絶対値をβとしたとき、前記感光体受光面上に投影された全ての光束が、「BD/(LD×β)≦1.25」を満たすことを特徴とする。
【0028】
請求項19に記載の発明は、
画像形成装置において、
感光体と、
前記感光体を帯電させる帯電部と、
前記帯電部により帯電された前記感光体に対して光を照射することで前記感光体上に静電潜像を形成する請求項10~18のいずれか一項に記載の光書込装置と、
前記光を照射された前記感光体に現像剤を供給することで前記静電潜像を現像剤による像に顕像化する現像部と、
前記現像剤による像を用紙に転写する転写部と、
前記転写部により転写された前記現像剤による像を前記用紙に定着する定着部と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、残存たわみを有するレンズアレイを用いる場合であっても、積層された発光基板を破損することなく良好なビーム結像状態を実現して、画像品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【
図2】たわみなどの誤差がない理想状態のレンズアレイが配置された光書込装置の構成を示す側面図である。
【
図3】たわみなどの誤差があるレンズアレイが配置された光書込装置の構成を示す側面図である。
【
図6】光書込装置製造時の調整前の初期状態を説明する図である。
【
図7】
図6の状態から発光基板ユニット全体を光軸方向にシフトさせた状態を説明する図である。
【
図8】
図7の状態から下部結像光学系の発光基板を光軸方向にシフトさせた状態を説明する図である。
【
図9】
図8の状態から発光基板ユニット全体を主方向の軸を中心に回転させた状態を説明する図である。
【
図10】光書込装置製造時の他の調整方法を説明する図である。
【
図11】デフォーカス量とビーム結像状態の変化の挙動の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
[画像形成装置の構成]
本実施形態に係る画像形成装置1000は、例えば、プリンターやデジタル複写機等として用いられ、
図1に示すように、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの色ごとに設けられた複数の光書込装置100と、光書込装置100に対応して設けられた感光体ドラム等の感光体200と、感光体200を帯電させる帯電部210と、光を照射された感光体200に現像剤を供給することで静電潜像を現像剤による像に顕像化する現像部220と、中間転写ベルト300と、現像剤による像を用紙Pに転写する転写ローラー(転写部)400と、転写ローラー400により転写された現像剤による像を用紙Pに定着する定着部500と、を備えて構成されている。
【0033】
画像形成装置1000は、光書込装置100より照射される光によって感光された感光体200でトナー像を形成し、中間転写ベルト300上に当該トナー像を転写させる。次に、画像形成装置1000は、中間転写ベルト300に転写されたトナー像を転写ローラー400によって用紙Pに押圧して転写させ、定着部500によって当該用紙Pを加熱及び加圧することで、トナー像を用紙P上に定着する。そして、画像形成装置1000は、用紙Pを排紙ローラー(図示省略)等により搬送してトレイ(図示省略)に排紙することで画像形成処理を行う。
【0034】
[光書込装置の構成]
図2に、たわみなどの誤差がない理想状態のレンズアレイ12が配置された光書込装置100の構成を示す。また、
図3に、たわみなどの誤差があるレンズアレイ12が配置された光書込装置100の構成を示す。
光書込装置100は、
図1~
図4に示すように、帯電部210により帯電された感光体200に対して光(光束)Hを照射することで、感光体200上に静電潜像を形成する装置である。光書込装置100は、光Hを出射させる複数の発光点111が2次元に配列された発光点群112を複数配置した発光基板11a~11cが少なくとも3つ(本実施形態では3つ)配置された発光基板ユニット11と、複数の発光点群112の各々に対向して配置された複数の結像レンズ121を有し、複数の発光点111から出射された光Hを感光体200上に集光させる複数のレンズアレイ12(第1レンズアレイ12A(光軸に沿って発光点群112に最も近いレンズアレイ12)、第2レンズアレイ12B(光軸に沿って感光体200に最も近いレンズアレイ12))と、第1レンズアレイ12Aと第2レンズアレイ12Bとの間に配置された絞り板13と、を備えて構成されている。レンズアレイ12(第1レンズアレイ12A、第2レンズアレイ12B)及び絞り板13は、発光点群112から出射された光Hを感光体200上の異なる位置に結像させて倒立像を形成させる本発明の結像光学系として機能する。
【0035】
以下の説明では、
図2に示す発光基板11a~11cの短手方向(副方向)をX方向、長手方向(主方向)をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向(光Hの光軸方向)とする。
【0036】
発光基板ユニット11は、
図4(a)に示すように、X方向の長さが異なる3つの略矩形状に形成された発光基板11a~11cが平行に配置されるとともに、X方向の一端を合わせた状態でZ方向に積層され、各発光基板11a~11cにおいて、複数の発光点群112がY方向に沿って略直線上に並べられて配置されている。すなわち、感光体200から発光点群112までの距離をL(
図2参照)としたとき、X方向に配列されている発光点群112において距離Lの水準は2つ以上(本実施形態では3つ)あり、Y方向に配列されている発光点群112においては距離Lが同一となるように配置されている。つまり、発光基板11a~11cの各々が有する発光点群112は、それぞれX方向でずれている。発光基板11a~11cは、線膨張係数の小さいガラス(例えば、無アルカリガラス)により形成されている。本実施形態において、発光点111は、ランバーシアンの配光特性(どの角度でも均一な輝度を発する特性)又はランバーシアンに近しい配光特性を有している。具体的には、発光点111は、ボトムエミッション型の有機EL(OLED)であり、発光基板11a~11cの上に発光点111が2次元配列されている(
図4(b)参照)。各発光点111の直径は30μmであり、Y方向については2400dpiの1ドットに相当する10.6μmピッチで配置されている。1行あたり26個の発光点111があり、全体としては128個の発光点111が平行四辺形に並んでいる。
【0037】
隣接する発光基板11a~11c間には、
図2~
図4に示すように、光軸方向(Z方向)の間隔を調整可能なスペーサー(間隔調整部)113が設けられている。
図2に示す例では、隣接する発光基板11a~11c間にスペーサー113が1層ずつ設けられているため、発光基板11a及び発光基板11bの間隔と発光基板11b及び発光基板11cの間隔とが均等になっている。一方、
図3に示す例では、発光基板11a及び発光基板11b間に1層、発光基板11b及び発光基板11c間に2層、スペーサー113が設けられているため、発光基板11a及び発光基板11bの間隔L1と発光基板11b及び発光基板11cの間隔L2とが異なっている(L1<L2)。すなわち、
図3に示す例では、隣接する発光基板11a~11c間の光軸方向の間隔の各々が、等間隔ではない。
なお、本発明の間隔調整部は、光軸方向の間隔を調整可能な構成であればいかなる構成であってもよく、スペーサー113の代わりに、保持ホルダーや厚肉の接着剤などを用いるようにしても構わない。
【0038】
レンズアレイ12は、
図2及び
図3に示すように、発光基板ユニット11と感光体200との間に配置され、複数の結像レンズ121が発光基板11a~11c上の複数の発光点群112と対向する位置、すなわち、光軸方向(Z方向)で重なり合う位置に並べられて配置されている。すなわち、発光点群112の各々は、それぞれ対応する結像レンズ121と正対するように配置されている。複数の結像レンズ121の各々は、中心軸、すなわち、光軸での屈折率が低く、中心軸から離れるほど屈折率が高くなるように形成されている。発光基板11a~11cの複数の発光点111から出射された光は、レンズアレイ12の複数の結像レンズ121を透過し、感光体200の表面上に微小なスポットとして結像される。レンズアレイ12は、ガラス基板及び樹脂で形成されたレンズ面から構成されている。
図2及び
図3に示す例では、X方向に3つの結像レンズ121が配置されている。また、実際には、Y方向にも繰り返し結像レンズ121が配置されており、全体としては約287個の結像レンズ121が配置されている。
【0039】
図2及び
図3に示した光書込装置100の構成は、両側テレセントリックの構成を実現するための構成であり、発光基板ユニット11及び感光体200を光軸方向の前後に動かし場合でも、感光体200での面内の焦点位置(フォーカス位置)は変動しない。ここで、面内とは、X方向とY方向で形成される面(XY平面)のことである。通常であれば、発光基板ユニット11を光軸方向の前後に動かすと、感光体200に照射されるビームの結像位置は、X方向及びY方向でずれるが、両側テレセントリックの構成にすれば、発光基板ユニット11及び感光体200が光軸方向の前後に動いても、ビームの結像位置(X、Y)は、ずれることがない。これにより、調整が容易となり、より良好なビーム結像状態を実現することができる。
【0040】
両側テレセントリック構成の結像光学系において、
図3に示すように、第1レンズアレイ12A及び第2レンズアレイ12Bのたわみ方がそれぞれ反する場合、設計と異なる位置にビームがフォーカスされてしまう。また、フォーカス(焦点)の光軸方向のズレ量は、各結像光学系で異なるため、単純に発光基板ユニット11を光軸方向の前後に動かしても、全ての結像光学系の焦点位置が光束を受光する感光体受光面付近とはならない。すなわち、一方の結像光学系の焦点が感光体受光面付近に合わさったとしても、他の結像光学系の焦点がずれてしまうという現象が生じてしまう。したがって、本実施形態では、
図3に示すように、隣接する発光基板11a~11c間の間隔L1(発光基板11a及び発光基板11bの間隔)、L2(発光基板11b及び発光基板11cの間隔)が異なる値となるように設定しつつ、発光基板ユニット11全体が傾いている状態を作り出している。これにより、発光点群112の各々から出射された光束が、感光体受光面上付近に集光されている。
ここで、発光基板ユニット11全体が傾いている状態とは、発光点群112の法線N1と結像光学系の光軸OAとが平行ではないことを示している。なお、発光点群112の法線N1とは、対象となる発光点群112が存在する発光基板11a~11cにて複数の発光点群112を結んで形成される面(複数の発光点群112が配置された平面)に対する法線である。また、結像光学系の光軸OAとは、感光体受光面に対する法線である。なお、感光体200は、非常に大きなものを想定しており、受光面をほぼ平面(XY平面)と見做している。すなわち、本実施形態において、感光体受光面に対する法線は、XY平面に対する法線(Z方向に平行な線)である。
【0041】
図5に、結像光学系の光路図(感光体200の回転軸であるY方向から見た図)を示す。
図5の左側(発光点111側)が物体側であり、右側(感光体200側)が像側である。上記のように、感光体200は、非常に大きなものを想定しており、受光面をほぼ平面(XY平面)と見做している。
図5に示す例では、X方向の3箇所に発光点群112が配置され、発光点群112のそれぞれに対応する結像光学系がある。それぞれの結像光学系は、2つの凸レンズ(結像レンズ121)からなる。結像レンズ121は、ガラス板122の上に樹脂を積層する方法で作成されている。各結像レンズ121は、一枚の共通のガラス板122上に形成されている。なお、図示は省略しているが、感光体200と結像レンズ121との間に、透明な平板ガラス板を配置するようにしてもよい。この平板ガラス板と外装とによって、結像レンズ121が積層された2枚のガラス板122(レンズアレイ12)が覆われており、結像レンズ121にごみが付着しないように構成されている。
図5に示されている各結像光学系の光軸は、感光体受光面に対して垂直である。
【0042】
なお、
図5に示すように、結像光学系のうち、X方向上部の結像光学系を上部結像光学系K1、X方向中央の結像光学系を中央結像光学系K2、X方向下部の結像光学系を下部結像光学系K3とする。また、各結像光学系K1~K3にて発光基板11a~11cのシフト量・回転量に対する焦点位置のズレ量を等しくするために、各結像光学系K1~K3の結像レンズ121ごとの結像倍率を揃えている。ここで、各結像光学系K1~K3の結像レンズ121ごとの結像倍率は、1.0以下であることが好ましい。
【0043】
[光書込装置の製造方法]
次に、本実施形態に係る光書込装置100の製造方法(製造時の調整方法)について、
図6~
図9を参照して説明する。なお、
図6~
図9の(a)は光書込装置100の側面断面図であり、(b)は各結像光学系のビーム径(図中の二次曲線:縦軸はビーム径の長さ)とデフォーカス量(横軸)の関係を示す図であり、(c)は感光体受光面S1上のビームプロファイルを示す図である。
【0044】
まず、
図6を参照して、調整前の初期状態を説明する。
図6には、レンズアレイ12成形時の温度分布ムラによりレンズアレイ12にたわみが発生し、レンズアレイ12をユニット化する際の矯正後もたわみが残存した場合が示されている。
図6に示す例では、第1レンズアレイ12A及び第2レンズアレイ12Bのたわみ方が逆方向となっているため、感光体受光面S1上にて各結像光学系の焦点位置(上部結像光学系K1の焦点位置F1、中央結像光学系K2の焦点位置F2、下部結像光学系K3の焦点位置F3)が光軸方向でばらついてしまっている(
図6(a)参照)。
図6(a)及び
図6(b)に示すように、残存たわみに沿うような二次曲線状にビームの焦点位置がずれてしまっているため、結果として全ての結像光学系の結像状態が悪くなってしまっている(
図6(c)参照)。
以下、
図7~
図9を参照して、全ての結像光学系で結像状態を良好にするための調整手順を説明する。なお、本実施形態では、たわみによる二次曲線状の焦点位置ズレを想定している。すなわち、中央結像光学系K2を中心とした二次曲線に近いたわみにより、上部結像光学系K1及び下部結像光学系K3で誤差量は等しいと想定している。
【0045】
まず、
図7に示すように、発光基板ユニット11全体を光軸方向の前後(
図7では感光体200から遠ざかる方向)にシフトさせる。これにより、
図7(a)~
図7(c)に示すように、中央結像光学系K2のみ焦点が合わず、上部結像光学系K1及び下部結像光学系K3で焦点が合う状態を作り出す。すなわち、感光体200と最も距離が近い発光基板(第1発光基板)11aに相対する結像レンズ121から射出された光束を第1光束H1とし、感光体200と最も距離が遠い発光基板(第2発光基板)11cに相対する結像レンズ121から射出された光束を第2光束H2としたとき、発光基板ユニット11全体を光軸方向にシフトさせ、第1光束H1及び第2光束H2が感光体受光面S1上に集光するように調整する(第1工程)。
【0046】
次に、
図8に示すように、上部結像光学系K1の発光基板11a又は下部結像光学系K3の発光基板11cのいずれか(
図8では発光基板11c)を光軸方向の前後(
図8では感光体200から遠ざかる方向)にシフトさせる。このとき、
図8(a)~
図8(c)に示すように、全ての結像光学系の焦点位置F1~F3を結ぶと直線D1になるようにシフト対象の発光基板11a又は11cをシフトさせる。すなわち、発光基板11a~11cの各々から出射された光束の焦点を結んだ線が直線となるように、シフト対象の発光基板11a又は11cを光軸方向にシフトさせる(第2工程)。
なお、シフト対象の発光基板11a又は11cは、中央の発光基板11bとの間隔が広くなるようにシフトさせる。これにより、シフト対象の発光基板11a又は11cと中央の発光基板11bとの衝突を避けることができるので、発光素子(発光点111)の破損や劣化を防ぐことができる。
【0047】
最後に、
図9に示すように、発光基板ユニット11全体をY方向の軸を中心に回転させる。これにより、
図9(a)~
図9(c)に示すように、全ての結像光学系にて感光体受光面S1上に焦点を合わせることができる。なお、発光基板ユニット11全体を回転させるときのY方向の軸は、上記の第2工程(
図8参照)でシフトさせていない発光基板11a又は11c、すなわち、感光体受光面S1に焦点位置がある発光基板11a又は11c(
図8では発光基板11a)の発光点群112の重心位置としている。すなわち、第2工程で光軸方向にシフトさせていない11a又は11cの発光点群112の重心(又は中心)を軸として発光基板ユニット11全体を回転させ、全ての光束の焦点が感光体受光面S1上に集光するように調整する(第3工程)。
以上のように、
図6~
図9に示す調整を実施することで、レンズアレイ12にたわみが生じている場合であっても、全ての結像光学系にて感光体受光面S1上に焦点を合わせることができるので、良好なビーム結像状態を実現することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、上記したように、各結像光学系K1~K3にて発光基板11a~11cのシフト量・回転量に対する焦点位置のズレ量を等しくするために、各結像光学系K1~K3の結像レンズ121ごとの結像倍率を揃えている。これにより、人の手でも調整可能なレベルに、調整を簡易化することができる。
【0049】
図11に、デフォーカス量とビーム結像状態の変化の挙動の一例を示す。なお、
図11に示す例では、結像光学系の結像レンズ121ごとの結像倍率=1.0としている。
本実施形態では、所望の画像品質を得るために、下記の方法で、上記した製造時の調整により達成したいデフォーカス量(焦点位置が感光体等価面上からいずれの範囲にあるか)を決定している。具体的には、感光体受光面上に投影された光束(ビーム)の断面プロファイルのピークの1/e
2(13.5%)で切ったときの幅(ビーム径)をBDとし、発光点111の直径をLD、結像光学系の結像レンズ121ごとの結像倍率の絶対値をβとしたとき、感光体受光面上に投影された全ての光束が、「BD/(LD×β)≦1.25」を満たす条件となるように、デフォーカス量を決定している。
図11に示す例では、結像光学系の結像レンズ121ごとの結像倍率の絶対値β=1.0であるので、「BD/LD≦1.25」を満たす条件となるように、デフォーカス量を決定している。
例えば、
図11に示す例では、「デフォーカス量が-50μm」のときの「BD/LD=1.43」であり、「デフォーカス量が50μm」のときの「BD/LD=1.51」であるため、「デフォーカス量が±50μm」のときには、「BD/LD≦1.25」を満たさない。一方、「デフォーカス量が-25μm」のときの「BD/LD=1.23」であり、「デフォーカス量が0μm」のときの「BD/LD=1.04」であり、「デフォーカス量が25μm」のときの「BD/LD=1.24」であるため、「デフォーカス量が±25μm」の範囲にあるときには、「BD/LD≦1.25」を満たす。したがって、全ての光束の焦点が感光体受光面上から±25μmの範囲に存在することが好ましい。すなわち、本実施形態の第3工程において、「全ての光束の焦点が感光体受光面S1上に集光する」とは、全ての光束の焦点が感光体受光面上から±25μmの範囲に存在する状況を含んだ表現である。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る光書込装置100は、複数の発光点111が2次元に配列された発光点群112を複数配置した発光基板11a~11cが少なくとも3つ配置された発光基板ユニット11と、発光点群112から出射された光束を感光体200上の異なる位置に結像させる結像光学系と、を備える。結像光学系は、複数の発光点群112の各々に対向して配置された複数の結像レンズ121を有する複数のレンズアレイ12と、絞り板13と、を備える。発光基板ユニット11は、少なくとも3つの発光基板11a~11cが、平行に配置されるとともに、光軸方向に積層され、少なくとも3つの発光基板11a~11cの各々が有する発光点群112が、それぞれ副方向でずれており、隣接する発光基板11a~11c間の光軸方向の間隔の各々が、等間隔ではなく、発光基板11a~11cの発光点群112が配置された平面の法線と、感光体受光面に対する法線とが、平行ではなく、発光点群112の各々から出射された光束が、感光体受光面上に集光されている。また、本実施形態に係る光書込装置100の製造方法は、感光体200と最も距離が近い第1発光基板に相対する結像レンズ121から射出された光束を第1光束とし、感光体200と最も距離が遠い第2発光基板に相対する結像レンズ121から射出された光束を第2光束としたとき、発光基板ユニット11全体を光軸方向にシフトさせ、第1光束及び第2光束が感光体受光面上に集光するように調整する第1工程と、発光基板11a~11cの各々から出射された光束の焦点を結んだ線が直線となるように、第1発光基板又は第2発光基板を光軸方向にシフトさせる第2工程と、第2工程で光軸方向にシフトさせていない第1発光基板又は第2発光基板の発光点群112の重心を軸として発光基板ユニット11全体を回転させ、全ての光束の焦点が感光体受光面上に集光するように調整する第3工程と、を含む。
したがって、本実施形態に係る光書込装置100によれば、成形時の温度分布ムラなどの要因によってたわみなどの設計値との形状誤差を有するレンズアレイを用いる場合であっても、積層された発光基板11a~11cを破損することなく良好なビーム結像状態を実現することができるので、画像品質を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る光書込装置100によれば、絞り板13は、複数のレンズアレイ12の間に存在する。
したがって、本実施形態に係る光書込装置100によれば、結像光学系にて両側テレセントリックの構成を実現することができるので、発光基板ユニット11を光軸方向の前後に動かした際に焦点位置も光軸方向の前後にしか動かないようにすることが可能となり、調整を簡易化することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る光書込装置100によれば、結像光学系の結像レンズ121ごとの結像倍率は、全て等しい。
したがって、本実施形態に係る光書込装置100によれば、発光基板ユニット11を移動及び回転させた際に各結像光学系の焦点位置のズレ量を等しくすることができるので、調整を簡易化することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る光書込装置100によれば、結像光学系の結像レンズ121ごとの結像倍率は、1.0以下である。
したがって、本実施形態に係る光書込装置100によれば、被写界深度が浅く、マイクロメートルオーダーの焦点位置調整が要求される明るい光学系を採用した場合であっても、焦点位置ズレ量を小さくすることができるので、調整を容易化することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る光書込装置100によれば、発光点111は、ランバーシアンの配光特性を有する。
したがって、本実施形態に係る光書込装置100によれば、発光基板ユニット11全体を回転させたときの光量の減少を抑制することができるので、画像品質の劣化を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る光書込装置100によれば、隣接する発光基板11a~11c間には、光軸方向の間隔を調整可能な間隔調整部(スペーサー113)が設けられている。
したがって、本実施形態に係る光書込装置100によれば、発光基板11a~11c間の間隔の調整を容易にしつつ、間隔の保持性を高めることができるので、発光点111を光らせた際の発熱による間隔の変化を最低限に抑えることが可能となり、ビームの結像状態を保持して画像品質を安定化することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る光書込装置100によれば、発光点111は、有機ELで構成されている。
したがって、本実施形態に係る光書込装置100によれば、ランバーシアンの配光特性を実現することができるので、画像品質の劣化を抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る光書込装置100によれば、全ての光束の焦点が感光体受光面上から±25μmの範囲に存在する。
したがって、本実施形態に係る光書込装置100によれば、良好なビーム結像状態を実現することができるので、画像品質を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態に係る光書込装置100によれば、感光体受光面上に投影された光束の断面プロファイルのピークの1/e2で切ったときの幅をBDとし、発光点111の直径をLD、結像光学系の結像レンズ121ごとの結像倍率の絶対値をβとしたとき、感光体受光面上に投影された全ての光束が、「BD/(LD×β)≦1.25」を満たす。
したがって、本実施形態に係る光書込装置100によれば、フラットトップビームにおけるデフォーカスに対する変化の感度が高い方法で画像品質を測定することができるので、良好なビーム結像状態を実現して画像品質を向上させることができる。
【0059】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態では、
図7~
図9に示すように、まず、中央結像光学系K2のみ焦点が合わず、上部結像光学系K1及び下部結像光学系K3で焦点が合う状態となるよう発光基板ユニット11全体を光軸方向にシフトさせ、次に、全ての結像光学系の焦点位置F1~F3を結ぶと直線D1になるように発光基板11cを光軸方向にシフトさせ、最後に、発光基板11aの発光点群112の重心位置を軸として発光基板ユニット11全体を回転させるようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、
図10(a)~
図10(c)に示すように、まず、中央結像光学系K2のみ焦点が合わず、上部結像光学系K1及び下部結像光学系K3で焦点が合う状態となるよう発光基板ユニット11全体を光軸方向(感光体200に近づく方向)にシフトさせ(
図10(a)参照)、次に、全ての結像光学系の焦点位置F1~F3を結ぶと直線D2になるように発光基板11aを光軸方向(感光体200に近づく方向)にシフトさせ(
図10(b)参照)、最後に、発光基板11cの発光点群112の重心位置を軸として発光基板ユニット11全体を回転させる(
図10(c)参照)ようにしてもよい。
【0061】
その他、画像形成装置を構成する各装置の細部構成及び各装置の細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0062】
1000 画像形成装置
100 光書込装置
11 発光基板ユニット
11a~11c 発光基板
111 発光点
112 発光点群
113 スペーサー(間隔調整部)
12 レンズアレイ(結像光学系)
12A 第1レンズアレイ
12B 第2レンズアレイ
121 結像レンズ
122 ガラス板
13 絞り板(結像光学系)
200 感光体
210 帯電部
220 現像部
300 中間転写ベルト
400 転写ローラー(転写部)
500 定着部
K1 上部結像光学系
K2 中央結像光学系
K3 下部結像光学系