(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】解除ハンドル
(51)【国際特許分類】
B60N 2/08 20060101AFI20231121BHJP
B60N 2/427 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B60N2/08
B60N2/427
(21)【出願番号】P 2020044271
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】永谷 優樹
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-082789(JP,A)
【文献】特開2019-048505(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0205512(US,A1)
【文献】特開2009-113696(JP,A)
【文献】特開2007-290437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/08
B60N 2/427
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートをスライド可能に支持するスライド装置に適用され、スライドが規制されたロック状態を解除する際に操作される解除ハンドルにおいて、
スライド装置に装着可能な装着部であって、装着時に当該スライド装置の長手方向と略平行な装着部と、
操作力を受けるハンドル部であって、前記装着部の長手方向と交差する方向に延びる把持部を有するとともに、当該操作力を前記装着部に伝達可能なハンドル部と、
前記ハンドル部のうち前記装着部側に設けられた脆弱部であって、前記ハンドル部又は前記装着部に比べて剛性が小さい脆弱部とを備え
、
前記脆弱部の断面であって、前記装着部の長手方向及び前記把持部の長手方向と交差する仮想面と平行な断面を脆弱部断面とし、当該脆弱部断面における第1の中立軸周りの断面係数を第1断面係数とし、当該脆弱部断面における第2の中立軸周りの断面係数を第2断面係数とし、
前記装着部の先端側を中心とし、当該中心から前記脆弱部断面の中立点に至る距離に基づく長さを半径とする仮想円、及び当該中立点を接点とする当該仮想円の接線の方向を接線方向としたとき、
前記第1断面係数は前記第2断面係数より大きく、
前記脆弱部と前記装着部との間には、当該装着部の長手方向及び前記把持部の延び方向と交差する方向に延びて前記脆弱部と前記装着部とを連結する連結部が設けられており、
前記第1の中立軸は、前記接線方向と直交する中立軸であり、
前記接線方向と前記第2の中立軸とのなす角は、前記接線方向と前記第1の中立軸とのなす角より大きく、
前記第2の中立軸と前記第1の中立軸とのなす角は20°以上、90°以下であり、
さらに、前記装着部と前記連結部とのなす角は、90度以上である解除ハンドル。
【請求項2】
前記脆弱部の断面中心線は湾曲しており、前記脆弱部の曲率中心側を内側とし、当該脆弱部を挟んで当該内側と反対側を外側としたとき、
前記脆弱部の内側は、前記ハンドル部のうち当該脆弱部以外の部位に比べて外側に向けて凹んでいる請求項1に記載の解除ハンドル。
【請求項3】
第2のスライド装置に装着可能な第2の装着部であって、装着時に当該第2のスライド装置の長手方向と略平行な第2の装着部を備え、
前記ハンドル部の延び方向一端側に前記装着部が設けられ、前記ハンドル部の延び方向他端側に前記第2の装着部が設けられており、
前記操作力が前記ハンドル部から前記第2の装着部に伝達可能であり、
さらに、前記ハンドル部のうち前記第2の装着部側には、前記ハンドル部又は前記第2の装着部に比べて剛性が小さい第2の脆弱部が設けられている請求項1
又は2に記載の解除ハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、解除ハンドルに関する。解除ハンドルは、乗物用シートをスライド可能に支持するスライド装置に適用され、スライドが規制されたロック状態を解除する際に操作される部材である。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の解除ハンドルは、車両が側面衝突した際に、解除ハンドルが損傷して、意図せずロック状態が解除されてしまうことを抑制することを目的とした解除ハンドルである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、解除ハンドルのハンドル部(利用者が操作する部位)に大きな外力が作用したときに、スライド装置のロック状態が解除されてしまうことを抑制可能な解除ハンドルの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
乗物用シートをスライド可能に支持するスライド装置に適用され、スライドが規制されたロック状態を解除する際に操作される解除ハンドルは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0006】
すなわち、当該構成要件は、スライド装置に装着可能な装着部(15)であって、装着時に当該スライド装置の長手方向と略平行な装着部(15)と、操作力(Hf)を受けるハンドル部(16)であって、装着部(15)の長手方向と交差する方向に延びる把持部(17)を有するとともに、当該操作力(Hf)を装着部(15)に伝達可能なハンドル部(16)と、ハンドル部(16)のうち装着部(15)側に設けられた脆弱部(19)であって、ハンドル部(16)又は装着部(15)に比べて剛性が小さい脆弱部(19)とである。
【0007】
これにより、当該解除ハンドルでは、ハンドル部(16)に大きな外力が作用したときには脆弱部(19)が他の部位に比べて優先的に大きく変形するので、当該解除ハンドルに入力されたエネルギーが脆弱部(19)により吸収される。
【0008】
これにより、スライド装置に入力するエネルギーが減少する。したがって、スライド装置が損傷することが抑制されるので、ロック状態が意図せず解除されてしまうことが抑制され得る。
【0009】
なお、当該解除ハンドルは、以下の構成であってもよい。
【0010】
すなわち、脆弱部(19)の断面であって、装着部(15)の長手方向及び把持部(17)の長手方向と交差する仮想面と平行な断面を脆弱部断面(Cs)とし、当該脆弱部断面(Cs)における第1の中立軸(Na1)周りの断面係数を第1断面係数(Z1)とし、当該脆弱部断面(Cs)における第2の中立軸(Na2)周りの断面係数を第2断面係数(Z2)としたとき、第1断面係数(Z1)は第2断面係数(Z2)より大きく、かつ、第1の中立軸(Na1)と操作力(Hf)とのなす角は第2の中立軸(Na2)と操作力(Hf)とのなす角と異なる角度であることが望ましい。
【0011】
これにより、例えば、次の構成が成立し得る。すなわち、当該構成とは、通常使用時においては、第1の中立軸(Na1)と略直交する方向に操作力が作用し、衝突時等の大きな外力がハンドル部(16)に作用したときにおいては、第2の中立軸(Na2)と略直交する方向に当該外力が作用するような構成である。
【0012】
そして、当該構成であれば、通常使用時において、解除ハンドル(脆弱部(19))が変形してしまうことが抑制され、かつ、衝突時等の大きな外力がハンドル部(16)に作用したときには、脆弱部(19)が確実に変形し得る。
【0013】
なお、脆弱部(19)は、把持部(17)の延び方向端部側に設けられており、脆弱部(19)と装着部(15)との間には、当該装着部(15)の長手方向及び把持部(17)の延び方向と交差する方向に延びて脆弱部(19)と装着部(15)とを連結する連結部(18)が設けられており、第1の中立軸(Na1)は、予め決められた接線方向と直交する中立軸であり、第2の中立軸(Na2)は、予め決められた外力の方向と直交する中立軸であり、接線方向は、装着部(15)の先端側を中心とし、当該中心から脆弱部断面(Cs)の中立点(Go)に至る距離に基づく長さを半径とする仮想円(So)、及び当該中立点(Go)を接点とする当該仮想円の接線方向に基づいて決定され、さらに、外力の方向は、少なくとも装着部(15)と連結部(18)とのなす角(θ4)に基づいて決定されることが望ましい。
【0014】
装着部(15)と連結部(18)とのなす角(θ4)は、90度以上であることが望ましい。さらに、脆弱部(19)の断面中心線は湾曲しており、脆弱部(19)の曲率中心側を内側とし、当該脆弱部(19)を挟んで当該内側と反対側を外側としたとき、脆弱部(19)の内側は、ハンドル部(16)のうち当該脆弱部(19)以外の部位に比べて外側に向けて凹んでいることが望ましい。
【0015】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る乗物用シートを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るスライド装置を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るスライド装置の構造を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る解除ハンドルを示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る解除ハンドルの脆弱部を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る脆弱部の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0018】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係るスライド装置が適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載したものである。
【0019】
したがって、当該スライド装置は、各図に付された方向に限定されない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示さない。
【0020】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示されたスライド装置及び解除ハンドルは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素を備える。
【0021】
(第1実施形態)
<1.乗物用シートの概要>
本実施形態は、
図1に示される乗物用シート1に本開示に係るスライド装置10が適用されたものである。乗物用シート1は、シート本体2及びスライド装置10等を少なくとも備える。シート本体2は、シートクッション3及びシートバック5等を有する。
【0022】
シートクッション3は着席者の臀部を支持するための部位である。シートバック5は着席者の背部を支持するための部位である。スライド装置10は、シート本体2をスライド可能に支持するための装置である。
【0023】
<2.スライド装置>
<2.1 基本構成>
シート本体2は、2つのスライド装置10により支持される。
図2に示されるように、2つのスライド装置10のうち第1のスライド装置10は、シート幅方向一端側に配置される。2つのスライド装置10のうち第2のスライド装置10は、シート幅方向他端側に配置される。
【0024】
第1のスライド装置10と第2のスライド装置10とは、略左右対称な構成である。各スライド装置10は、
図3に示されるように、固定レール11、可動レール12、ロック機構13及び解除ハンドル14等を少なくとも備える。
【0025】
各固定レール11は、乗物に対して直接的又は間接的に固定される金属製のレール部材である。各可動レール12はシート本体2が固定される部材である。それら可動レール12は、各固定レール11に対してスライド可能である。
【0026】
各ロック機構13は、可動レール12のスライドを規制するロック状態と当該規制が解除された非ロック状態とを切り替えるための機構である。各解除ハンドル14は、ロック機構13を非ロック状態とするための操作レバーである。
【0027】
なお、各ロック機構13は、解除ハンドル14に操作力が作用していない状態(
図3に示す状態)では、ロック状態となっている。そして、各ロック機構13は、矢印の向きの操作力Hfが解除ハンドル14に作用したときに、非ロック状態となる。
【0028】
<2.2 解除ハンドル>
本実施形態では、
図2に示されるように、第1のスライド装置10の解除ハンドル14と第2のスライド装置10の解除ハンドル14とは、一体化されて1本の解除ハンドルとなっている。以下、当該1本の解除ハンドルを解除ハンドル14という。
【0029】
このため、解除ハンドル14は、第1のスライド装置10と第2のスライド装置10との中点に対して対称な構造となっている。以下の説明は、解除ハンドル14のうち、主に、第1のスライド装置10側の部分の説明である。
【0030】
<解除ハンドルの構成>
解除ハンドル14は、
図4に示されるように、装着部15、ハンドル部16及び脆弱部19等を少なくとも備える。装着部15は、
図3に示されるように、スライド装置10に装着可能な部位であって、装着時に当該スライド装置10の長手方向と略平行となる部位である。
【0031】
ハンドル部16は、
図4に示されるように、把持部17及び連結部18等を少なくとも有するとともに、操作力Hfを受けることが可能な部位である。当該操作力Hfは、ハンドル部16を介して装着部15に伝達される。
【0032】
把持部17は装着部15の長手方向と交差(本実施形態では、略直交)する方向に延びる部位である。なお、当該把持部17は丸パイプ状である。連結部18は、脆弱部19と装着部15との間に位置し、脆弱部19と装着部15とを連結する部位である。
【0033】
そして、連結部18は、装着部15の長手方向(本実施形態では、スライド方向)及び把持部17の延び方向(本実施形態では、左右方向)と交差する方向に延びている。具体的には、
図3に示されるように、連結部18は、脆弱部19が装着部15より上方に位置するように、水平面に対して傾いている。
【0034】
脆弱部19は、
図4に示されるように、ハンドル部16又は装着部15に比べて剛性が小さい部分である。当該脆弱部19は、ハンドル部16のうち装着部15側に設けられている。具体的には、本実施形態に係る脆弱部19は、把持部17の延び方向端部側(
図4では、把持部17の右端側)に設けられている。
【0035】
<脆弱部の概要>
脆弱部19の断面中心線L1は、
図5に示されるように、湾曲している。そして、脆弱部19の内側は、ハンドル部16のうち当該脆弱部19以外の部位に比べて外側に向けて凹んだ形状となっている。
【0036】
なお、脆弱部19の内側とは、断面中心線L1に対して脆弱部19の曲率中心O1側をいう。脆弱部19の外側とは、当該脆弱部19を挟んで内側と反対側をいう。脆弱部19の断面中心線L1とは、脆弱部断面Cs1~Cs4等の図心を通る仮想線である。
【0037】
脆弱部断面Cs1~Cs4等(以下、総称する際には、脆弱部断面Csと記す。)は、脆弱部19の断面のうち装着部15の長手方向及び把持部17の長手方向と交差する仮想面と平行な断面いう。
【0038】
換言すれば、脆弱部断面Csは、脆弱部19の曲率中心O1を含む任意の仮想面における断面をいう。そして、任意(無数)の脆弱部断面Csの図心を連ねた仮想線が断面中心線L1となる。つまり、断面中心線L1は、任意(無数)の脆弱部断面Csと直交する曲線となる。
【0039】
なお、脆弱部19は、断面係数に関して以下の要件(脆弱部の詳細の記載内容)を満たす構造であれば、(a)曲率一定で湾曲した形状、(b)曲率が変化しながら湾曲した形状、(c)曲率中心が1つである形状、及び(d)複数の曲率中心を有する形状等のうちいずれの形状、又は(a)~(d)のいずれかが組み合わされた形状で湾曲していてもよい。
【0040】
<脆弱部の詳細>
脆弱部断面Csにおいては、
図6に示されるように、第1中立軸Na1周りの第1断面係数Z1は、第2中立軸Na2周りの第2断面係数Z2より大きい。そして、第1中立軸Na1とハンドル部16に作用する操作力Hfとのなす角θ1は、第2中立軸Na2と操作力Hfとのなす角θ2と異なる角度である。
【0041】
<第1中立軸>
第1中立軸Na1は、予め決められた接線方向と直交する中立軸である。当該接線方向は、
図3に示されるように、脆弱部断面Csの中立点Goを接点とする当該仮想円Soの接線方向に基づいて決定される。
【0042】
仮想円Soは、装着部15の先端側を中心とし、当該中心から脆弱部断面Csの中立点Goに至る距離に基づく長さを半径とする仮想の円である。なお、本実施形態では、上記の接線方向は、操作力Hfと平行な方向である。
【0043】
つまり、本実施形態では、「中立点Goにおいて接線方向と平行な方向に操作力Hfが作用する」として、第1中立軸Na1が選定されている。このため、本実施形態では、第1中立軸Na1と操作力Hfとのなす角θ1は90度である。
【0044】
<第2中立軸>
第2中立軸Na2は、
図6に示されるように、予め決められた外力Efの方向と直交する中立軸である。本実施形態に係る外力Efの方向は、少なくとも装着部15と連結部18とのなす角θ4(
図3参照)に基づいて決定されている。
【0045】
すなわち、本実施形態に係る外力Efは、操作力Hf以外の力である。具体的には、当該外力Efは、例えは、車両衝突時にハンドル部16に作用する力である。このため、外力Efの方向、つまり第2中立軸Na2は、スライド装置10が搭載される乗物毎に異なる。
【0046】
しかし、発明者は、多数回の試験検討を実施したところ、外力Efが発生する原因の多くは、車両衝突時に着席者の脚部が把持部17に衝突することである点を発見した。つまり、ハンドル部16に作用する外力Efの源となる力は、水平方向成分が大きい力である。
【0047】
このため、ハンドル部16に作用する外力Efと装着部15の長手方向とのなす角θ5(
図3参照)は、装着部15と連結部18とのなす角θ4(
図3参照)の影響を強く受ける。具体的には、角θ4が大きくなると、角θ5は小さくなり、角θ4が小さくなると、角θ5は大きくなる傾向がある。
【0048】
このため、本実施形態では、外力Efの方向、つまり第2中立軸Na2は、少なくとも装着部15と連結部18とのなす角θ4に基づいて決定されている。そして、第2中立軸Na2と外力Efの方向とは直交することが望ましい。
【0049】
なお、角θ4は90度以上であることが望ましい。角θ2は角θ1より大きく、かつ、角θ1と角θ2との差は、20°以上、90°以下が望ましい。そして、脆弱部19(凹状の部位)全域で、第1断面係数Z1が第2断面係数Z2より大きくなる構成が望ましい。
【0050】
なお、上記の角θ1~角θ5は、脆弱部断面Csの図心(中立点)Goより後方(可動レール12側)から前方(把持部17側)に向かう向きの角度である(
図3及び
図6参照)。因みに、
図6は、装着部15の長手方向及び把持部17の長手方向それぞれと約45度で交差する脆弱部断面Csを示している。
【0051】
<3.本実施形態に係るスライド装置(特に、解除ハンドル)の特徴
ハンドル部16のうち装着部15側には、ハンドル部16又は装着部15に比べて剛性が小さい脆弱部19が設けられている。
【0052】
これにより、本実施形態に係る解除ハンドル14では、ハンドル部16に大きな外力が作用したときには、脆弱部19が他の部位に比べて優先的に大きく変形するので、解除ハンドル14に入力されたエネルギーが脆弱部19により吸収される。
【0053】
これにより、スライド装置10に入力するエネルギーが減少する。したがって、スライド装置10が損傷することが抑制されるので、ロック状態が意図せず解除されてしまうことが抑制され得る。
【0054】
第1断面係数Z1は第2断面係数Z2より大きく、かつ、第1中立軸Na1と操作力Hfとのなす角は第2中立軸Na2と操作力Hfとのなす角と異なる角度である。
【0055】
そして、本実施形態では、第1中立軸Na1と略直交する方向に操作力Hfが作用し、衝突時等の大きな外力Efがハンドル部16に作用したときにおいては、第2中立軸Na2と略直交する方向に当該外力Efが作用するような構成となっている。
【0056】
換言すれば、本実施形態に係る解除ハンドル14の脆弱部19は、「操作力Hfと略直交する方向に第1中立軸Na1を選定し、かつ、外力Efと略直交する方向に第2中立軸Na2を選定した上で、第1断面係数Z1が第2断面係数Z2より大きくなるよう脆弱部断面Csの形状を決定する」という技術的思想(設計方法)に基づいている。
【0057】
これにより、通常使用時において、解除ハンドル14(脆弱部19)が変形してしまうことが抑制され、かつ、衝突時等の大きな外力がハンドル部16に作用したときには、脆弱部19が確実に変形し得る。
【0058】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に解除ハンドル14は左右対称な構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、シート幅方向一方側の装着部15及び連結部18を備えていない解除ハンドル14であってもよい。
【0059】
上述の実施形態に係る第1中立軸Na1及び第2中立軸Na2の位置、及び脆弱部断面Csの具体的な形状は一例であって、本開示はこれに限定されない。
【0060】
すなわち、当該開示は、例えば、第1中立軸Na1と略直交する方向に操作力Hfが作用し、第2中立軸Na2と略直交する方向に大きな外力Efが作用するような構成であって、第1断面係数Z1が第2断面係数Z2より大きくなる構成であればよい。
【0061】
上述の施形態に係る脆弱部19は、把持部17の延び方向端部側に設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、脆弱部19は、ハンドル部16のうち装着部15側に設けられていればよいので、当該開示は、連結部18に脆弱部19が設けられた構成であってもよい。
【0062】
上述の実施形態に係るハンドル部16は、把持部17及び連結部18を有して構成されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、連結部18が廃止された構成であってもよい。
【0063】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0064】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1… 乗物用シート
3… シートクッション
5… シートバック
10… スライド装置
11… 固定レール
12… 可動レール
13… ロック機構
14… 解除ハンドル
15… 装着部
16… ハンドル部
17… 把持部
18… 連結部
19… 脆弱部