(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ケーブル制振装置
(51)【国際特許分類】
E01D 1/00 20060101AFI20231121BHJP
E01D 11/00 20060101ALI20231121BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
E01D1/00 Z
E01D11/00
F16F15/02 L
(21)【出願番号】P 2020044523
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】越智 淳
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 貞義
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大
(72)【発明者】
【氏名】高原 涼
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-147992(JP,A)
【文献】特開2013-245536(JP,A)
【文献】特開平06-136718(JP,A)
【文献】国際公開第02/029276(WO,A1)
【文献】特開2012-149678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00
E01D 11/00
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの端部を
ケーブル橋の橋桁に固定する固定部に取り付けられた固定フランジと、
ケーブルに取り付けられ、かつ、前記固定フランジに対向するように配置されたケーブルフランジと、
前記固定フランジと前記ケーブルフランジとの間に配置され、前記固定フランジと前記ケーブルフランジとにそれぞれ固定された粘弾性体と、
上ストッパと
を備え、
前記上ストッパは、
ケーブルの外周面に装着されるとともに、前記ケーブルフランジが、前記固定フランジから離れる方向にケーブルに対して動くのを規制する部材である、
ケーブル制振装置。
【請求項2】
前記ケーブルフランジは、
ケーブルに装着されるボスを有し、
前記ボスの上端部に、
ボスの軸方向に沿って徐々に外径が小さくなったテーパ面を有しており、
前記上ストッパは、
前記ケーブルフランジの上方において、ケーブルの外周面に装着されるとともに、前記テーパ面よりも底部の内径が小さいテーパ状の窪みを備えている、
請求項1に記載されたケーブル制振装置。
【請求項3】
前記上ストッパとケーブルフランジとの接触を検知する第1検出部を備えた、請求項1または2に記載されたケーブル制振装置。
【請求項4】
下ストッパをさらに備え、
前記下ストッパは、
ケーブルの外周面に装着されるとともに、前記ケーブルフランジが
、前記固定フランジを構成する調芯フランジに近づく方向にケーブルに対して動くのを規制する部材である、
請求項1から3までの何れか一項に記載されたケーブル制振装置。
【請求項5】
前記ケーブルフランジは、
ケーブルに装着されるボスを有し、
前記ボスの下端部に、
ボスの軸方向に沿って徐々に外径が小さくなったテーパ面を有しており、
前記下ストッパは、
前記ケーブルフランジの下方において、前記ケーブルの外周面に装着されるとともに、前記テーパ面よりも底部の内径が小さいテーパ状の窪みを備えている、
請求項4に記載されたケーブル制振装置。
【請求項6】
前記下ストッパとケーブルフランジとの接触を検知する第2検出部を備えた、請求項4または5に記載されたケーブル制振装置。
【請求項7】
前記ケーブルフランジは、
ケーブルに装着されるボスを有し、
前記ボスの内径は、
固定フランジ側から徐々に広くなっており、
当該ケーブルフランジのボスと、前記ケーブルとの間に、固定フランジ側から反対側に向けて徐々に厚くなったゴムシートが装着されている、
請求項1から6までの何れか一項に記載されたケーブル制振装置。
【請求項8】
前記ゴムシートは、周方向に分割可能に構成されている、請求項7に記載されたケーブル制振装置。
【請求項9】
前記ケーブルフランジのボスは、徐々に広くなった側の開口端部に内径側に突出した、蓋を備えている、請求項7または8に記載されたケーブル制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル制振装置に関する。かかるケーブル制振装置は、例えば、エクストラドーズド橋、斜張橋、吊り橋などのケーブル橋に用いられる。ここで、ケーブル橋は、ケーブルによって橋桁が支持される構造を有する橋を意味する。
【背景技術】
【0002】
ケーブル制振装置は、例えば、特開2013-245536号公報に開示されている。ここで、斜張橋では、主塔と橋桁との間にケーブルが斜めに張り渡されている。ケーブルの端部は、橋桁に取り付けられた定着管に固定されている。
【0003】
同公報に開示されたケーブル制振装置は、固定フランジと、ケーブルフランジと、ゴムダンパーとを備えている。ここで、固定フランジは、橋桁に取り付けられた定着管に固定されている。固定フランジは、略円板形状で、中央部にケーブルが挿通される穴が形成されている。ケーブルフランジは、固定フランジと同様に、略円板形状で、中央部にケーブルが挿通される穴が形成されている。かかるケーブルフランジは、ケーブルに取り付けられ、固定フランジに対向するように配置されている。
【0004】
ゴムダンパーは、固定フランジとケーブルフランジとの間に配置され、固定フランジとケーブルフランジとにそれぞれ取り付けられている。かかるケーブル制振装置によれば、橋桁に取り付けられた定着管に対して、ケーブルが振れ動く際に、ケーブルフランジが固定フランジに対して相対的に変位する。この際、ケーブルフランジと固定フランジとの相対的な変位に応じて、ゴムダンパーに相当の変形(せん断変形)が入力される。この際、ゴムダンパーの変形に応じて抗力が生じ、ケーブルの振動を減衰させるエネルギが得られる。特開2013-245536号公報では、固定フランジとケーブルフランジとのせん断方向の相対的な変位を規制するストッパを設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本発明者は、実際にケーブル橋に取付けられたケーブル制振装置について、想定外の新たな事象が生じている。つまり、近年、温暖化の進展に伴い、台風の風速が過去に例を見ないほど速くなっている。台風の風速が速くなればなるほど、斜張橋などのケーブル橋においてケーブルの挙動が大きくなる。ケーブル橋のケーブルのうち、特に挙動が大きいケーブルでは、ケーブルフランジと固定フランジとの間隔が広がり、ゴムダンパーを破損させるというような事象が生じることが分かった。ケーブル制振装置の改修は、高所作業を伴うため、ケーブル制振装置の破損を少なくしたい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るケーブル制振装置は、ケーブルの端部を固定する固定部に取り付けられた固定フランジと、ケーブルに取り付けられ、かつ、固定フランジに対向するように配置されたケーブルフランジと、固定フランジとケーブルフランジとの間に配置され、固定フランジとケーブルフランジとにそれぞれ固定された粘弾性体と、上ストッパとを備えている。上ストッパは、ケーブルの外周面に装着されるとともに、ケーブルフランジが、固定フランジから離れる方向にケーブルに対して動くのを規制する部材である。
【0008】
上ストッパが設けられていることによって、ケーブルフランジが、ケーブルに沿って上方(固定フランジから離れる方向)にずれるのが規制される。これにより、ケーブル制振装置の破損が少なく抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図2は、かかる斜張橋10に取り付けられたケーブル制振装置100を示す部分断面図である。
【
図4】
図4は、ケーブルフランジ102の平面図である。
【
図5】
図5は、ケーブルフランジ102のV-V側面に沿った側面図である。
【
図6】
図6は、粘弾性体111~114の平面図である。
【
図7】
図7は、粘弾性体111~114の側面図である。
【
図8】
図8は、ケーブル制振装置100の側面図である。
【
図9】
図9は、ケーブル制振装置100の側面図である。
【
図11】
図11は、ケーブル制振装置100Aの側面図である。
【
図12】
図12は、ケーブル制振装置100Bの側面図である。
【
図13】
図13は、ケーブル制振装置100Cの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係るケーブル制振装置を図面に基づいて説明する。ここでは、斜張橋に取り付けられたケーブル制振装置が例示されている。なお、本発明は、特に言及されない限りにおいて、ここで説明される実施形態に限定されない。また、同じ作用を奏する部材又は部位には、適宜に同じ符号を付している。また、図面は、発明の理解を助けるべく概略的に描かれており、必ずしも実物を表すものではない。
【0011】
《斜張橋10(ケーブル橋)》
ここで、
図1は、斜張橋10の模式図である。
図1は、斜張橋10(ケーブル橋)に対するケーブル制振装置100の配置を図示するものであり、ケーブル制振装置100の厳密な図示を省略している。
【0012】
斜張橋10は、
図1に示されているように、主塔11と、主塔11に架け渡らせた橋桁12と、主塔11と橋桁12との間に斜めに張られたケーブル13とを備えている。橋桁12には、ケーブル13の端部を固定する固定部12aが設けられている。この実施形態では、固定部12aは、ケーブル13が挿通され、ケーブル13の端部を保護するための定着管14(保護管)を備えている。定着管14は、橋桁12の構造部材に溶接されている。ケーブル13の端部は、定着管14に挿通された状態で、定着管14に固定されている。図示は省略するが、定着管14は、ケーブル13の一端を締結する締結部を有している。
【0013】
図2は、かかる斜張橋10に取り付けられたケーブル制振装置100を示す部分断面図である。
図2では、長さ方向が縦方向に設定された状態で、ケーブル13が図示されている。このため、定着管14の管軸も縦方向に設定されている。実際には、ケーブル13の長さ方向は、斜めに向けられており、定着管14の管軸も斜めに設定されている。
【0014】
《ケーブル制振装置100》
ケーブル制振装置100は、
図1および
図2に示されているように、ケーブル13の振動を小さく抑える装置であり、定着管14とケーブル13との間に設けられている。ケーブル制振装置100は、
図2に示すように、固定フランジ101と、ケーブルフランジ102と、粘弾性体111~114と、上ストッパ121と、カバー150とを備えている。
【0015】
《固定フランジ101》
固定フランジ101は、
図2に示すように、ケーブル13の端部を固定する固定部12aに取り付けられている。この実施形態では、固定フランジ101は、固定部12aに設けられた定着管14の頂部に固定されている。また、この実施形態では、固定フランジ101は、定着フランジ131と、調芯フランジ132とを備えている。
【0016】
《定着フランジ131》
定着フランジ131は、定着管14の頂部に取り付けられる部材である。この実施形態では、定着フランジ131は、短い管状の部材である。この定着フランジ131は、中心軸を通る面に沿って凡そ半分に割ることができる。つまり、定着フランジ131は、2つの半円弧状の部材に分離できる。定着フランジ131は、ケーブル13が固定された定着管14の頂部に対して、ケーブル13の側方から定着管14の頂部を覆うように取り付けることができる。
【0017】
定着フランジ131は、管部201と、タブ202と、フランジ部203と、ボルト204とを備えている。管部201は、定着管14の側面に被せられる環状の部位である。タブ202は、2つの半円弧状の定着フランジ131の合わせ面に沿って延在した突出片である。定着フランジ131を定着管14の頂部に対して側方から取り付けられる際に、2つの定着フランジ131のタブ202は重なり合う。かかるタブ202をボルトナット(図示省略)で締結することによって、2つの半円弧状の定着フランジ131を定着管14に固定できる。この際、定着フランジ131は、定着管14に対して回転させ、周方向に任意の向きに固定することができる。
【0018】
フランジ部203は、かかる定着フランジ131の頂部に設けられている。フランジ部203は、定着管14の端部を覆うとともに、中央にケーブル13が挿通する穴205(換言すれば、開口)が形成されている。中央に形成された穴205は、ケーブル13の外径に対して十分に大きく、当該穴205内でケーブル13が干渉せずに振動するのを許容しうる。かかるフランジ部203には、複数のボルト204が植設され(換言すれば、立った状態で設けられ)ている。かかる複数のボルト204には、調芯フランジ132が取り付けられる。このように、この定着フランジ131は、中央に穴205が形成された略円板状(換言すれば、リング状)の部材で構成できる。
【0019】
《調芯フランジ132》
次に、調芯フランジ132を説明する。
図3は、調芯フランジ132の平面図である。
図3では、調芯フランジ132について
図2のIII-III断面矢視図が示されている。ここでは、
図3には、調芯フランジ132に対して、ケーブル13と、粘弾性体111~114の位置が示されている。
【0020】
調芯フランジ132は、
図2および
図3に示すように、略円板状の板材である。調芯フランジ132の中央には、ケーブル13が挿通される穴210が形成されている。この実施形態では、調芯フランジ132は、半円状の2つの板材で構成されており、中心軸Osを通る面Lに沿って2つに分離され得る。
【0021】
分離される2つの調芯フランジ132には、それぞれ定着フランジ131に設けられたボルト204が挿通されるように長穴211が形成されている。この実施形態では、
図3に示すように、定着フランジ131に6つのボルト204が設けられている。これに合わせて、調芯フランジ132には合計6つの長穴211が形成されている。かかる長穴211の適当な位置に定着フランジ131のボルト204を取り付けることができる。このように、調芯フランジ132は、定着フランジ131に対して径方向にずらすことができる。定着フランジ131は、定着管14との関係で周方向に向きを調整できる。さらに、調芯フランジ132は定着管14に対して適当な径方向に適当な量ずらして取り付けられる。これによって、調芯フランジ132の中央に形成された穴210の中心Osが、ケーブル13の中心Ocに合わせられている。つまり、定着管14の頂部において、調芯フランジ132はケーブル13に合わせて適当にずらされている。
【0022】
つまり、斜張橋10(
図1参照)において、ケーブル13は、橋桁12に設けられた定着フランジ131の中心軸に沿って挿通されるとは限らない。この実施形態では、定着管14に対して調芯フランジ132の位置を調整することができる。このため、ケーブル13が定着管14の所定の位置からずれている場合でも、ケーブル13の中心Ocが調芯フランジ132の中央に形成された穴210の中心Osを通るように、調芯フランジ132の位置が調整される。調芯フランジ132の中央に形成された穴210は、
図3に示すように、ケーブル13の外径に対して十分に大きい。ケーブル13は、調芯フランジ132の穴210内で振動することが許容される。
【0023】
この実施形態では、定着フランジ131および調芯フランジ132は、それぞれ2つに分離できる。このため、ケーブル13を定着管14に取り付け、ケーブル13を張った後で、定着管14に取り付けるとよい。この際、ケーブル13の中心Ocが調芯フランジ132の中心Osを通るように、定着フランジ131および調芯フランジ132を定着管14に取り付けるとよい。このように、定着フランジ131および調芯フランジ132は、それぞれ2つ(あるいは複数)に分離できるとよい。
【0024】
なお、この実施形態では、
図3に示すように、定着フランジ131に設けられたボルト204は、定着フランジ131の中心(
図3に示す例は、定着フランジ131は調芯フランジ132と同軸に配置されている)に対して等距離に配置されていない。つまり、定着フランジ131に設けられた6つのボルト204の中心は、定着フランジ131の中心から径方向に所定量ずれている。これに対して、調芯フランジ132に形成された6つの長穴211は、調芯フランジ132の中心Osから凡そ等距離に配置され、かつ、同じ方向に向けて長穴が形成されている。
図3に示す例では、ケーブル13の中心軸(図示例では、定着管14と定着フランジ131の中心軸と同軸)に、調芯フランジ132の中心Osが合わせられた状態において、定着フランジ131のボルト204が調芯フランジ132の長穴211の端に位置している。これにより、定着フランジ131に対して、調芯フランジ132を長穴211の幅に応じて径方向に大きくずらすことができる。なお、ここでは、調芯フランジ132が6つのボルトで、定着フランジ131に取り付けられた構造を例示したが、調芯フランジ132を定着フランジ131に取り付ける構造はこれに限定されず、種々変更が可能である。
【0025】
また、この実施形態では、ケーブル制振装置100は、
図3に示すように、4つの粘弾性体111~114を備えている。4つの粘弾性体111~114は、ケーブル13が挿通される穴210の周りに均等に配置されている。調芯フランジ132は、かかる粘弾性体111~114を取付けるための取付部が設けられているとよい。この実施形態では、調芯フランジ132には、粘弾性体111~114が取付けられる位置に合わせてスタッドボルト221が設けられている。なお、ケーブル制振装置100に取付けられる粘弾性体の数や配置は、ここで例示される形態に限定されない。
【0026】
《ケーブルフランジ102》
ケーブルフランジ102は、ケーブル13に取り付けられたフランジ部材である。ケーブルフランジ102は、固定フランジ101としての調芯フランジ132に対向するようにケーブル13に取付けられる。
図4は、ケーブルフランジ102の平面図である。
図4には、調芯フランジ132に対向する面が図示されている。
図5は、ケーブルフランジ102のV-V側面に沿った側面図である。ここで、
図5では、半円弧状のケーブルフランジ102は、リブ311とタブ312を上に向けられた状態で図示されている。
【0027】
ケーブルフランジ102は、
図4および
図5示すように、フランジ部300と、ボス310と、リブ311と、タブ312とを備えている。フランジ部300は、略円板状の部材である。ボス310は、フランジ部300の中心部に設けられており、ケーブル13を取り付ける部位である。この実施形態では、ケーブルフランジ102は、半円状の2つの板材で構成されており、中心軸を通る面に沿って2つに分離され得る。また、ボス310の内径は、ケーブル13の外径よりも少し大きい又はケーブルの外形と概ね同じにしている。この実施形態では、ボス310の内径は、ケーブル13の外径よりも少し大きい。
【0028】
リブ311は、ケーブルフランジ102の調芯フランジ132とは反対側の面に設けられている。リブ311は、ボス310とフランジ部300との間に立った状態で溶接されている。タブ312は、2つの半円弧状のケーブルフランジ102の合わせ面に沿って延在した突出片である。タブ312は、リブ311と同様に、ボス310とフランジ部300との間に立った状態で溶接されている。タブ312は、ケーブルフランジ102をケーブル13に対して側方から取り付けられた際に重なり合う。2つの半円弧状のケーブルフランジ102は、かかるタブ312をボルトナット(図示省略)で締結することによって、ケーブル13にボス310が食い込む。これによって、ケーブルフランジ102は、ケーブル13に固定される。ケーブルフランジ102には、
図4に示すように、粘弾性体111~114を取り付けるための取付穴321が形成されている。
【0029】
《粘弾性体111~114》
粘弾性体111~114は、
図2に示すように、固定フランジ101としての調芯フランジ132とケーブルフランジ102との間に配置されており、調芯フランジ132とケーブルフランジ102とにそれぞれ固定されている。
図6は、粘弾性体111~114の平面図である。
図7は粘弾性体111~114の側面図である。ここでは、
図7には、
図6のVII-VII部分断面矢視図が示されている。
【0030】
この実施形態では、粘弾性体111~114は、
図6および
図7に示すように、円筒形状に成形された粘弾性成形体330と、粘弾性成形体330を挟む板材331,332とを備えている。かかる粘弾性体111~114は、粘弾性成形体330を成形しうる成形金型に板材331,332を対向させて配置する。そして、当該板材331,332の間に、粘弾性成形体330となる粘弾性材料を配置し、加硫成形するとよい。これにより、金型に応じた所定の形状の粘弾性成形体330を成形すると同時に、板材331,332と粘弾性成形体330とを加硫接着することができる。粘弾性体111~114の粘弾性成形体330は、せん断変位に対して、十分な強度を有するように設計されているとよい。粘弾性成形体330に用いられる粘弾性材料には、天然ゴムや合成ゴムをベースにし、適当な添加剤を添加した種々の高減衰ゴムを採用することができる。かかる粘弾性材料には、例えば、公知の高減衰ゴムを適宜に採用することができる。
【0031】
この実施形態では、板材332には、粘弾性成形体330の両側に、調芯フランジ132に取り付けるためのボルト穴334(
図7参照)が形成されている。他方、板材331にも、同様に、粘弾性成形体330の両側に、ケーブルフランジ102に取り付けるためのボルト穴335(
図6参照)が形成されている。
【0032】
《ケーブル制振装置100の組み付け》
このケーブル制振装置100は、ケーブル13を橋桁12の固定部12a(
図1参照)に取り付けた後で取り付けられる。この実施形態では、固定部12aに、ケーブル13の端部を保護する定着管14(
図2参照)が設けられている。この場合、ケーブル13は、定着管14を挿通させて橋桁12の固定部12aに固定される。固定フランジ101は、
図2に示すように、固定部12aに設けられた定着管14の頂部に取り付けられる。この実施形態では、固定フランジ101として定着フランジ131と調芯フランジ132とを備えている。定着フランジ131は、定着管14の頂部に取り付けられる。そして、所定位置(例えば、中心)にケーブル13が配置されるように、位置を調整しつつ定着フランジ131に調芯フランジ132が取り付けられる。
【0033】
次に、調芯フランジ132に粘弾性体111~114を取り付ける。この実施形態では、調芯フランジ132のスタッドボルト221、222に、粘弾性体111~114の板材332のボルト穴334(
図7参照)を装着し、スタッドボルト221、222に取り付けたナット231、232で固定する。さらに、調芯フランジ132に取り付けられた粘弾性体111~114をケーブルフランジ102に取り付ける。この際、粘弾性体111~114の板材331のボルト穴335(
図7参照)と、ケーブルフランジ102の取付穴321、322とを合わせて、ボルトナット234で固定する。そして、粘弾性体111~114を取り付けたケーブルフランジ102をケーブル13に取り付ける。ケーブルフランジ102のボス310と、ケーブル13との間には、所要の厚さのゴムシート340(
図8参照)が干渉材として巻かれている。ゴムシート340は、所要の厚さを有しているとよい。ゴムシート340の厚さは、例えば、大凡3mm~10mm、例えば、大凡5mm~8mm程度であるとよい。
【0034】
《粘弾性体111~114の動作》
図8と
図9は、ケーブル制振装置100の側面図である。
図8は、ケーブル13の中心Ocと、調芯フランジ132の穴210の中心Osとを一致させた基準の状態が示されている。
図9では、調芯フランジ132に対してケーブルフランジ102がせん断方向に変位した状態が示されている。基準の状態では、
図8に示されているように、ケーブル13の中心Ocは、調芯フランジ132の穴210(
図2および
図3参照)の中心Osに概ね一致している。ケーブル13が振動すると、
図9に示すように、ケーブル13が調芯フランジ132に対して相対的に変位し、ケーブル13の中心Ocは、調芯フランジ132の穴210の中心Osからずれる。
【0035】
ケーブル13が調芯フランジ132に対して相対的に変位すると、
図9に示すように、ケーブルフランジ102と調芯フランジ132との間に設けられた粘弾性体111~114にせん断変位が入力される。かかるせん断変形に対して粘弾性体111~114は抗力を発揮する。ケーブル制振装置100は、かかる粘弾性体111~114の抗力によって、ケーブル13の振動を早期に減衰させることができる。このケーブル制振装置100では、粘弾性体111~114にせん断変位を生じさせ、せん断変位に対する抗力によって、ケーブル13の振幅が小さく抑えられるとともに、ケーブル13の振動を早期に減衰させることができる。
【0036】
また、かかる粘弾性体111~114が用いられたケーブル制振装置100は、ケーブル13の軸を横断する横断面において断面が円形である。このため、ケーブルフランジ102が調芯フランジ132に対して径方向のどの方向に変位しても、粘弾性体111,112は同様にケーブル13に対して抗力を生じさせ得る。
【0037】
ケーブル橋では、ケーブル13は、橋桁12を支えるため、主塔11と橋桁12との間で所要のテンションが掛けられている。このため、通常では、ケーブル13は大きく振れ動くことなく細かく振動するように揺れる。この場合、かかるケーブル制振装置100は、
図2に矢印Aで示されるように、ケーブル13が調芯フランジ132に対して相対的に定着管14に対して左右に変位すると想定されている。この場合、ケーブルフランジ102は、調芯フランジ132に対してせん断方向に変位する。このため、ケーブルフランジ102と調芯フランジ132との間に設けられた粘弾性体111~114にせん断変位が入力される。
【0038】
ところが、近年、台風が大型化しており、ケーブル橋により大きな風速の風が作用するようになった。ケーブル橋は、主塔11や橋桁12やケーブル13も含めて風の影響で揺れる量が大きくなる。このとき、
図2に矢印Bで示されるように、ケーブル橋に設けられたケーブル13の一部は、大きく揺れ動く場合がある。本発明者が得た知見として、このとき、ケーブル制振装置100では、調芯フランジ132に対してケーブルフランジ102が傾くほどに、ケーブル13が想定以上に大きく振れ動く事象が生じうる。ケーブル13には、相当に大きなテンションが掛けられているため、ケーブルフランジ102がケーブル13に対してずれたり、傾いたりするほどに、ケーブル13が大きく振れ動くことは、これまで全く想定されていなかった。
【0039】
ケーブル13に対してケーブルフランジ102がずれたり、傾いたりすると、ケーブル13に対してケーブルフランジ102が動くことがある。その結果、調芯フランジ132とケーブルフランジ102との間隔が広がると、周方向に配置された粘弾性体111~114のうち何れかにおいて高さ方向(換言すると、厚さ方向)に引っ張られる場合がある。粘弾性体111~114は、高さ方向に大きく変形することが許容されるように設計されていない。ケーブル橋に取付けられるケーブル制振装置100の設置や改修作業は、高所作業を伴う。このため、このような破損は少なくしたい。
【0040】
《上ストッパ121》
ケーブル制振装置100は、
図8に示されているように、ケーブル13に上ストッパ121が取付けられている。上ストッパ121は、ケーブルフランジ102の上方において、ケーブル13の外周面に装着されている。上ストッパ121は、ケーブルフランジ102が、調芯フランジ132から離れる方向にケーブル13に対して動くのを規制する部材である。
【0041】
図10は、上ストッパ121の平面図である。上ストッパ121は、
図10に示されているように、ケーブル13に装着可能な環状の部材である。上ストッパ121は、半円弧状に分割された2部材401,402で構成されている。上ストッパ121の合わせ面はボルトナット403で締め付けられる。上ストッパ121は、ケーブル13の外周面を半円弧状の2部材401,402で挟み、ボルトナット403で締め付けることによって、ケーブル13に固定されている。
【0042】
上ストッパ121は、
図8に示されているように、ケーブルフランジ102の上縁に対して少し間隔を空けて、ケーブル13に取付けられる。上ストッパ121とケーブルフランジ102の上縁との隙間A1は、粘弾性体111~114の高さ方向(厚さ方向)に許容される引っ張り変位以下に設定されているとよい。例えば、粘弾性体111~114の高さ方向(厚さ方向)に許容される引っ張り歪みが5%程度であれば、粘弾性体111~114の高さ方向(厚さ方向)の歪みが5%未満になるように、上ストッパ121とケーブルフランジ102の上縁との隙間A1が設定されているとよい。
【0043】
かかる上ストッパ121が設けられていることによって、ケーブルフランジ102が、ケーブル13に沿って上方(調芯フランジ132から離れる方向)にずれるのが規制される。このため、調芯フランジ132とケーブルフランジ102との間隔が広がりすぎないように維持され、粘弾性体111~114が引っ張られる方向において粘弾性体111~114の許容される引っ張り変位以下に抑えられる。これにより、ケーブル制振装置100の破損が少なく抑えられる。
【0044】
《楔部313》
次に、他の形態に係るケーブル制振装置100Aを説明する。
図11は、ケーブル制振装置100Aの側面図である。
図11に示されているように、ケーブル制振装置100Aでは、ケーブルフランジ102のボス310の上端部に、ボス310の軸方向に沿って徐々に外径が小さくなったテーパ面313aを有する楔部313が設けられている。
【0045】
楔部313は、ボス310の上縁部に設けられた、環状の部位であり、上方に向けて外径が徐々に小さくなったテーパ面を有している。楔部313は、例えば、半円弧状に分割されるケーブルフランジ102のボス310の上縁部に、半円弧状にそれぞれ形成されているとよい。楔部313は、ケーブルフランジ102のボス310の上縁部において、周方向に部分的に設けられていてもよい。
【0046】
当該楔部313には、上ストッパ121が取付けられる。上ストッパ121は、ケーブル13の外周面に装着される。上ストッパ121には、楔部313のテーパ面313aよりも底部の内径が小さいテーパ状の窪み121aを備えている。上ストッパ121は、楔部313のテーパ面313aに窪み121aを被せられるように、ケーブルフランジ102の上縁の少し上において楔部313に対して離間してケーブル13に取付けられている。
【0047】
このケーブル制振装置100Aでは、上ストッパ121は、ケーブルフランジ102が、調芯フランジ132から離れる方向にケーブル13に対して動くのを規制する。特に、ケーブルフランジ102が、調芯フランジ132から離れる方向にケーブル13に対して動くと、ケーブルフランジ102のボス310の上縁部に設けられた楔部313が、上ストッパ121の窪み121aに嵌まっていく。上ストッパ121の窪み121aは、徐々に内径が狭くなっているので、ケーブルフランジ102が、調芯フランジ132から離れる方向にケーブル13に対して動けば動くほど、上ストッパ121によって動きが規制される。このため、ケーブルフランジ102が、ケーブル13に沿って上方(調芯フランジ132から離れる方向)にずれるのが、徐々に強固に規制される。このため、調芯フランジ132とケーブルフランジ102との間隔が広がりすぎないように維持され、粘弾性体111~114が引っ張られる方向において粘弾性体111~114の許容される変位以下に抑えられる。これにより、ケーブル制振装置100の破損が少なく抑えられる。
【0048】
《下ストッパ122》
図12は、他の形態に係るケーブル制振装置100Bを示す側面図である。なお、
図12では、説明の便宜上、粘弾性体111~114など、調芯フランジ132とケーブルフランジ102との間に配置される部材は、適宜に省略されている。ケーブル制振装置100Bは、
図12に示されているように、下ストッパ122が取り付けられていてもよい。下ストッパ122は、ケーブルフランジ102の下方において、ケーブル13の外周面に装着されている。下ストッパ122は、ケーブルフランジ102が、調芯フランジ132に近づく方向にケーブル13に対して動くのを規制する部材である。ここで、下ストッパ122は、上ストッパ121と概ね同様の構造であるから、構造説明は、適宜に省略する。
【0049】
下ストッパ122は、
図12に示されているように、ケーブルフランジ102の下縁に対して少し間隔を空けて、ケーブル13に取付けられている。下ストッパ122とケーブルフランジ102の下縁との隙間A2は、粘弾性体111~114の高さ方向(厚さ方向)に許容される圧縮変位以下に設定されているとよい。例えば、粘弾性体111~114の高さ方向(厚さ方向)に許容される圧縮歪みが5%程度であれば、粘弾性体111~114の高さ方向(厚さ方向)の圧縮歪みが5%未満になるように、下ストッパ122とケーブルフランジ102の下縁との隙間A2が設定されているとよい。
【0050】
かかる下ストッパ122が設けられていることによって、ケーブルフランジ102が、ケーブル13に沿って下方(調芯フランジ132に近づく方向)にずれるのが規制される。このため、調芯フランジ132とケーブルフランジ102との間隔が狭くなりすぎないように維持され、粘弾性体111~114が引っ張られる方向において粘弾性体111~114の許容される圧縮変位以下に抑えられる。これにより、ケーブル制振装置100の破損が少なく抑えられる。
【0051】
なお、ケーブルフランジ102のボス310の下縁部には、楔部314が設けられており、下ストッパ122には、楔部314が嵌まる窪み122aが設けられていてもよい。つまり、ケーブルフランジ102のボス310の下端部に、ボス310の軸方向に沿って徐々に外径が小さくなったテーパ面314aを有していてもよい。下ストッパ122は、ケーブルフランジ102の下方において、ケーブル13の外周面に装着されるとともに、テーパ面314aよりも底部の内径が小さいテーパ状の窪みを備えている。下ストッパ122は、楔部314のテーパ面314aに窪み122aを被せられるように、ケーブルフランジ102の下縁の少し下においてケーブル13に取付けられている。
【0052】
この場合、ケーブルフランジ102が、ケーブル13に対して下方にずれればずれるほど、楔部314のテーパ面314aに窪み122aに嵌まっていく。このため、ケーブルフランジ102が、ケーブル13に沿って下方(調芯フランジ132に近づく方向)にずれるのが、徐々に強固に規制される。このため、調芯フランジ132とケーブルフランジ102との間隔が狭くなりすぎないように維持され、粘弾性体111~114が圧縮される方向において粘弾性体111~114の許容される変位以下に抑えられる。これにより、ケーブル制振装置100の破損が少なく抑えられる。
【0053】
《カバー150》
このケーブル制振装置100は、
図2に示すように、カバー150で覆われている。この実施形態では、カバー150の上端151は、ケーブルフランジ102よりも上部においてケーブル13に取り付けられて、ベルト161によって固定されている。また、カバー150の下端152は、定着フランジ131の管部201の外周面に取り付けられており、ベルト162によって固定されている。カバー150は、耐候性を有し、雨などが入り込むのを防止できるとともに、所要の伸縮性や耐久性を備えた素材を用いるとよい。カバー150には、入り込んだ雨水を排出するためのドレン孔154が形成されているとよい。ドレン孔154は、ケーブル制振装置100に設置された際に、カバー150の外周の最も低くなる位置などにカバー150を貫通するように形成されているとよい。
【0054】
ケーブル制振装置100が、カバー150で覆われている場合には、ケーブル制振装置100の破損は、カバー150を外さないと確認できない。また、ケーブル橋に取付けられるケーブル制振装置100の設置や改修作業は、高所作業を伴う。このため、カバー150を外すことを要する作業は、最小限に留めたい。本発明者は、粘弾性体111~114を破損させるような事象について、遠隔で監視可能にしたいと考えている。
【0055】
例えば、ケーブル制振装置100Bは、
図12に示されているように、上ストッパ121とケーブルフランジ102との接触を検知する第1検出部171を備えていてもよい。また、ケーブル制振装置100Bは、下ストッパ122とケーブルフランジ102ケーブルフランジとの接触を検知する第2検出部172を備えていてもよい。第1検出部171は、例えば、上ストッパ121とケーブルフランジ102をそれぞれ金属とし、上ストッパ121とケーブルフランジ102との接触を、上ストッパ121とケーブルフランジ102との電気的な導通によって検知するように構成されていてもよい。第2検出部172は、例えば、下ストッパ122とケーブルフランジ102をそれぞれ金属とし、下ストッパ122とケーブルフランジ102との接触を、下ストッパ122とケーブルフランジ102との電気的な導通によって検知するように構成されていてもよい。第1検出部171としては、
図12に示されているように、第1配線k1と第2配線k2とを備えている。第1配線k1は、ケーブルフランジ102に電気的に導通するように取付けられている。第2配線k2は、上ストッパ121に電気的に導通するように取付けられている。第2検出部172としては、さらに、第3配線k3を備えていてもよい。第3配線k3は、下ストッパ122に電気的に導通するように取付けられている。
【0056】
第1配線k1と第2配線k2と第3配線k3とは、検出器(図示省略)に接続されているとよい。検出器は、例えば、第1配線k1と第2配線k2とに所定の電圧を印加していてもよい。また、検出器は、例えば、第1配線k1と第3配線k3とに所定の電圧を印加していてもよい。
【0057】
ケーブル13に対するケーブルフランジ102のずれが、上ストッパ121で規制される変位量に達すると、ケーブルフランジ102が上ストッパ121に接触する。このとき、ケーブルフランジ102に取付けられた第1配線k1と、上ストッパ121に取り付けられた第2配線k2とが電気的に導通する。そして、第1配線k1と第2配線k2とが電気的に導通したことによる信号が、検出器によって検知される。かかる第1検出部171によれば、ケーブルフランジ102の上方へのずれが、上ストッパ121で規制される変位量に達したことが、検知される。
【0058】
ケーブル13に対するケーブルフランジ102のずれが、下ストッパ122で規制される変位量に達すると、ケーブルフランジ102が下ストッパ122に接触する。このとき、ケーブルフランジ102に取付けられた第1配線k1と、下ストッパ122に取り付けられた第3配線k3とが電気的に導通する。そして、第1配線k1と第3配線k3とが電気的に導通したことによる信号が、検出器によって検知される。かかる第2検出部172によれば、ケーブルフランジ102の下方へのずれが、下ストッパ122で規制される変位量に達したことが、検知される。
【0059】
ここで、第1配線k1と第2配線k2と第3配線k3とは、それぞれカバー150の外に引き出されているとよい。例えば、第1配線k1と第2配線k2と第3配線k3とは、カバー150のドレン孔154(
図2参照)などを通じて、カバー150の外に出されるとよい。なお、第1配線k1と第2配線k2と第3配線k3とは、ドレン孔154とは別に設けられた配線用の孔を通じて、カバー150の外に出されてもよい。第1配線k1と第2配線k2と第3配線k3とは、それぞれカバー150の外に引き出されていることによって、第1検出部171と第2検出部172とで検知された信号が、カバー150の外で検出されるようになる。つまり、ケーブル13に対するケーブルフランジ102のずれが、上ストッパ121または下ストッパ122で規制される変位量に達したことが、カバー150を外すことなく検知できる。
【0060】
また、カバー150の外に、インジケータを設けられていてもよい。インジケータは、例えば、表示ランプでもよい。第1検出部171と第2検出部172とで検知された信号に基づいて、ケーブル13に対するケーブルフランジ102のずれが、上ストッパ121または下ストッパ122で規制される変位量に達したこと判定された場合に、カバー150の外に設けられたインジケータにより表示されてもよい。また、カバー150の外に、通信端末を設けられていてもよい。通信端末は、例えば、携帯電話の電波やケーブルなどを通じて通信される装置であるとよい。通信端末は、いわゆるインターネットを介して外部装置に通信するものでもよい。通信端末は、例えば、第1検出部171と第2検出部172とで検知された信号に基づいて、ケーブル13に対するケーブルフランジ102のずれが、上ストッパ121または下ストッパ122で規制される変位量に達したことが、カバー150の外の予め定められた端末に表示されるように構成されていてもよい。
【0061】
また、ケーブルフランジ102と、上ストッパ121や下ストッパ122が接触しうる部位には、それぞれ導電シートが貼り付けられていてもよい。当該導電シートに、第1配線k1や第2配線k2や第3配線k3が取り付けられてもよい。導電シートには、公知の導電性に優れたシートが用いられうる。導電シートには、例えば、金属シートや、導電ゴムシートなどが用いられてもよい。このうち導電ゴムシートは、緩衝材としても機能しうる。また、第1検出部171や第2検出部172には、それぞれ圧電素子などが用いられていてもよい。この場合、ケーブルフランジ102が上ストッパ121や下ストッパ122に当たる強さなどが観測されうる。
【0062】
図13は、他の形態に係るケーブル制振装置100Cの側面図である。ケーブル制振装置100Cのケーブルフランジ102は、
図13に示されているように、ケーブル13に装着されるボス310Aを有している。この実施形態では、ボス310Aの内径は、調芯フランジ132側から反対側に向けて徐々に広くなっている。ケーブルフランジ102のボス310Aと、ケーブル13との間に、調芯フランジ132側から反対側に向けて徐々に厚くなったゴムシート340Aが装着されている。ここで、ゴムシート340Aは、周方向に分割可能に構成されていてもよい。さらにこの実施形態では、ケーブルフランジ102のボス310Aは、内径が徐々に広くなった側の開口端部に、ボス310Aの内径側に突出した蓋342が設けられている。
【0063】
この場合、ケーブルフランジ102のボス310Aの内径は、調芯フランジ132側から反対側に向けて徐々に広くなっている。さらに、ケーブルフランジ102のボス310Aと、ケーブル13との間に、調芯フランジ132側から反対側に向けて徐々に厚くなったゴムシート340Aが装着されている。このため、
図2に矢印Bで示されているように、ケーブル13が、ケーブルフランジ102のボス310Aに対して大きく振れ動くような場合には、ケーブル13が振れ動く方向に対して、調芯フランジ132側から反対側に向けて徐々に厚くなったゴムシート340Aがボス310Aとの間で強く圧縮され、その反力をケーブル13に作用させる。このため、ケーブル13が振れ動くのに対して、所要の反力を生じさせる。これにより、ケーブルフランジ102が調芯フランジ132に対して傾くのが小さく抑えられる。また、ゴムシート340Aは、ケーブル13に対して大きな摺動抵抗を作用させるので、ケーブルフランジ102のボス310Aに対して、ケーブル13がずれにくい。このため、ケーブルフランジ102と調芯フランジ132との間隔が広がったり、狭くなったりするのが小さく抑えられる。かかるケーブル制振装置100Cによれば、例えば、大型の台風時などで、ケーブル橋に大きな風速の風が作用した場合でも破損が少なく抑えられる。
【0064】
また、図示は省略するが、ゴムシート340Aは、周方向に分割可能に構成されていてもよい。この場合、ゴムシート340Aをケーブル13とケーブルフランジ102のボス310Aとの間に装着することが容易になる。また、
図13に示されているように、ケーブルフランジ102のボス310Aは、内径が徐々に広くなった側の開口端部に、ボス310Aの内径側に突出した蓋342が設けられている。かかる蓋342が設けられていることによって、ゴムシート340Aがケーブル13とケーブルフランジ102のボス310Aとの間から飛び出すのが防止される。蓋342は、ボス310Aの周方向の一部に設けられていてもよい。また、蓋342は、ボス310Aの周方向の間欠的な位置に設けられていてもよい。
【0065】
図13に示されているように、ケーブルフランジ102のボス310Aの内径が、調芯フランジ132側から反対側に向けて徐々に広くなっており、さらに、ケーブルフランジ102のボス310Aと、ケーブル13との間に、調芯フランジ132側から反対側に向けて徐々に厚くなったゴムシート340Aが装着された構成は、上述した上ストッパ121や下ストッパ122と合わせて適宜に用いられてもよい。
【0066】
以上、ここで開示されるケーブル制振装置について、種々説明した。特に言及されない限りにおいて、ここで挙げられたケーブル制振装置の実施形態などは、本発明を限定しない。また、ここで提案されるケーブル制振装置は、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされうる。
【0067】
例えば、ケーブル制振装置の各部材は、所要の強度や性能が得られるように、所定の材料が選択されればよい。また、各部材の形状や構造についても、特に言及されない限りにおいて上述した実施形態に限定されない。
【0068】
また、ここでは、各部材の組み付け手順について、一例を挙げた。各部材の組み付け手順は、適切に順番を入替えてもよい。また、ここに挙げていない手順は、適宜に省いてもよいし、他の手順に置換してもよいし、また、他の手続を追加してもよい。また、調芯フランジ132と粘弾性体111~114、および、粘弾性体111~114とケーブルフランジ102の取り付け構造などは、適当な締結手段(或いは、接着や溶接などの固定手段)に適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 斜張橋(ケーブル橋)
11 主塔
12 橋桁
12a 固定部
13 ケーブル
14 定着管
100,100A,100B,100C ケーブル制振装置
101 固定フランジ
102 ケーブルフランジ
121 上ストッパ
121a 窪み
122 下ストッパ
122a 窪み
131 定着フランジ
132 調芯フランジ
150 カバー
154 ドレン孔
171 第1検出部
172 第2検出部
201 管部
202 タブ
203 フランジ部
204 ボルト
205 穴(定着フランジ131の穴)
210 穴(調芯フランジ132の穴)
310,310A ボス
313 楔部
313a テーパ面
314 楔部
314a テーパ面
330 粘弾性成形体
340,340A ゴムシート
342 蓋
Oc ケーブルの中心
Os 調芯フランジの穴の中心