(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】作業車、及び、無線通信システム
(51)【国際特許分類】
B66C 13/40 20060101AFI20231121BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B66C13/40 D
H04Q9/00 311J
(21)【出願番号】P 2020047757
(22)【出願日】2020-03-18
(62)【分割の表示】P 2019556379の分割
【原出願日】2019-01-25
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2018011077
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 一寿
(72)【発明者】
【氏名】篠原 大亮
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/150454(WO,A1)
【文献】特開2016-097853(JP,A)
【文献】特開2018-036745(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0229988(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
H04Q 9/00
B60R 16/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームを支持する車両を含む作業車本体と、無線通信機と、を備えた作業車であって、
前記作業車本体は、
前記ブームの状態に関する情報が流れる第1車載ネットワーク、及び、前記車両の状態に関する情報が流れる第2車載ネットワークを含む車載ネットワークと、
前記第1車載ネットワーク及び前記第2車載ネットワークの両方に接続され、過負荷防止装置を構成し、過負荷防止装置に関する情報を前記車載ネットワークに出力する制御器と、を有し、
前記第1車載ネットワークと前記第2車載ネットワークとは、前記作業車本体における制御系統ごとに設けられた、互いに異なるネットワークにより構成され、
前記無線通信機は、
前記第1車載ネットワーク及び前記第2車載ネットワークに接続された信号処理部を有し、
前記信号処理部が取得した、前記ブームの状態に関する情報、前記車両の状態に関する情報、及び前記過負荷防止装置に関する情
報を携帯端末に送信する、
作業車。
【請求項2】
前記ブームの状態に関する情報は、前記ブームの起伏角、前記ブームの長さ、及び前記ブームの旋回角を含み、
前記車両の状態に関する情報は、エンジン回転数、車速、及びミッション状態を含み、
前記過負荷防止装置に関する情報は、前記ブームの起伏角、前記ブームの長さ、前記ブームの旋回角、及び作業半径に関する情報を含み、
前記無線通信機は、
前記車載ネットワークから、前記ブームの状態に関する情報、前記車両の状態に関する情報、及び前記過負荷防止装置に関する情報を取得する
前記信号処理部と、
前記作業車本体と携帯端末との無線通信を制御し、取得した前記ブームの状態に関する情報、前記車両の状態に関する情報、及び前記過負荷防止装置に関する情報を前記携帯端末に送信する制御部と、を有する、請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
移動式クレーン又は高所作業車である、請求項1又は2に記載の作業車。
【請求項4】
請求項1に記載の作業車と、
前記無線通信機を介して、前記作業車本体に無線接続される携帯端末と、を備える作業車の無線通信システム。
【請求項5】
前記作業車は、作業車側表示部を有し、
前記携帯端末は、端末側表示部を有し、
前記携帯端末は、前記作業車から受信した前記ブームの状態に関する情報及び前記車両の状態に関する情報を、前記作業車側表示部の表示態様と同じ態様で、前記端末側表示部に表示する、請求項4に記載の作業車の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機、作業車、及び、作業車の無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業車としての移動式クレーンが開示されている。このような作業車のメンテナンスを行う際、メンテナンスの作業員は、作業車の外部で作業を行いつつ、作業車の状態を確認することがある。ところが、従来の作業車の場合、メータなどの表示器は、運転室にしか設けられていない。このような従来の作業車の場合、一人の作業員が作業車の外部で作業を行いながら、表示器を見て作業車の状態を確認することができない。そこで、一人の作業員が運転室の内外を往復して作業と確認とを繰り返し行ったり、二人の作業員が作業車の外部での作業と運転室での確認とを分担して行ったりしていた。そのため、メンテナンス作業が非効率であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、作業車の外部において、作業員が作業車の状態を確認できる無線通信機、作業車、及び、無線通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る無線通信機の一態様は、作業車の車載ネットワークから、車載ネットワークを流れる車内信号を取得する取得部と、作業車と携帯端末との無線通信を制御し、取得された車内信号を携帯端末に送信する制御部と、を備える。
【0006】
また、本発明に係る作業車の一態様は、
ブームを支持する車両を含む作業車本体と、無線通信機と、を備えた作業車であって、
前記作業車本体は、
前記ブームの状態に関する情報が流れる第1車載ネットワーク、及び、前記車両の状態に関する情報が流れる第2車載ネットワークを含む車載ネットワークと、
前記第1車載ネットワーク及び前記第2車載ネットワークの両方に接続され、過負荷防止装置を構成し、過負荷防止装置に関する情報を前記車載ネットワークに出力する制御器と、を有し、
前記無線通信機は、前記車載ネットワークから取得した、前記ブームの状態に関する情報、前記車両の状態に関する情報、及び前記過負荷防止装置に関する情報を携帯端末に送信する。
上述のような作業車を実施する場合に、好ましくは、第1車載ネットワークと第2車載ネットワークとは、作業車本体における制御系統ごとに設けられた、互いに異なるネットワークにより構成されてよい。
又、無線通信機は、第1車載ネットワーク及び第2車載ネットワークに接続された信号処理部を有してよい。
そして、無線通信機は、信号処理部が取得した、ブームの状態に関する情報、車両の状態に関する情報、及び過負荷防止装置に関する情報を携帯端末に送信してよい。
【0007】
また、本発明に係る作業車の無線通信システムは、上述の作業車と、無線通信機を介して、作業車に無線接続される携帯端末と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業員は携帯端末により作業車の外部において作業車の状態を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る無線通信システムAは作業車1と携帯端末3との間で無線通信を行うシステムである。作業車1として移動式クレーン、高所作業車、軌陸車、油圧ショベルなどの建設機械が挙げられる。
【0011】
(作業車)
まず、作業車1の構成を説明する。
作業車1は、少なくとも1つの車載ネットワークを有する。本実施形態の作業車1は、2つの車載ネットワーク、すなわち第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bを有する。なお、作業車1が有する車載ネットワークの数は特に限定されず、1つでもよいし複数でもよい。なお、作業車1における、後述の無線通信機2のエレメント以外の部分は、作業車本体の一例に該当すると捉えてもよい。
【0012】
第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bにはそれぞれ、作業車1に搭載された種々の車載機器が接続されている。第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bはそれぞれ、複数の車載機器を相互に接続する通信線などで構成されている。第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bの通信プロトコルはそれぞれ、特に限定されないが、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、FlexRayなどが挙げられる。
【0013】
第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bに接続される車載機器として、制御器12a~12c、操作器13a、13b、及び、表示器14a、14bなどが挙げられる。このほかの車載機器として、各種のセンサなども挙げられる。
【0014】
制御器12a~12cはそれぞれ、CPU及びメモリなどで構成された車載コンピュータである。制御器12a~12cはそれぞれ、作業車1に搭載された装置などを制御する機能を有する。作業車1に搭載される制御器の数は特に限定されず、1つでもよいし複数でもよい。また、1つの車載ネットワークに接続される制御器の数も特に限定されない。
【0015】
操作器13a、13bはそれぞれ、作業車1に搭載された装置などを操作するのに用いられるスイッチ、レバー、又は、ペダルなどである。操作器13a、13bはそれぞれ、例えば、作業車1の運転室などに設けられる。作業車1に搭載される操作器の数は、特に限定されず、1つでもよいし複数でもよい。また、1つの車載ネットワークに接続される操作器の数も特に限定されない。
【0016】
表示器14a、14bはそれぞれ、液晶ディスプレイなどで構成される。表示器14a、14bはそれぞれ、作業車1の運転室などに設けられる。作業車1に搭載される表示器の数は、特に限定されず、1つでもよいし複数でもよい。また、1つの車載ネットワークに接続される表示器の数も特に限定されない。
【0017】
操作器13a、13bはそれぞれ、車載ネットワーク11a、11bを介して制御器12a~12cと接続されている。作業員が操作器13a、13bを操作すると、操作器13a、13bから特定の操作信号が車載ネットワーク11a、11bに出力される。操作信号は車載ネットワーク11a、11bを介して制御器12a~12cに入力される。制御器12a~12cは操作信号に基づき作業車1に搭載された装置などを制御する。これにより、作業員が操作器13a、13bを用いて作業車1を操作できる。
【0018】
表示器14a、14bはそれぞれ、車載ネットワーク11a、11bを介して制御器12a~12cと接続されている。制御器12a~12cはそれぞれ、作業車1の各種情報を示す情報信号を車載ネットワーク11a、11bに出力する。情報信号は車載ネットワーク11a、11bを介して表示器14a、14bに入力される。表示器14a、14bはそれぞれ、情報信号に基づき作業車1の各種情報を表示する。これにより、作業員が表示器14a、14bを通じて作業車1の状態を把握できる。
【0019】
このように、車載ネットワーク11a、11bに接続された複数の車載機器は、相互に信号を送受信して各種の制御、処理を行う。以下、車載ネットワーク11a、11bを介して送受信される信号を「車内信号」と称する。車内信号には、前記の操作信号、情報信号、及び、その他の信号が含まれてよい。車内信号は、制御器12a~12cと、操作器13a、13bまたは表示器14a、14bとの間を流れる信号と捉えてもよい。
【0020】
作業車1が移動式クレーンである場合、車載ネットワーク11a、11bは、例えば、次のように構成される。
【0021】
一般に、車載ネットワーク11a、11bは、制御系統ごとに設けられる。第1車載ネットワーク11aは、クレーン装置の制御系を構成する。また、第2車載ネットワーク11bは、車両の制御系を構成する。
【0022】
クレーン制御系の第1車載ネットワーク11aには、第1制御器12a、第1操作器13a、及び、第1表示器14aが接続されている。第1制御器12aは、クレーン装置を制御する機能を有する。第1操作器13aは、クレーン装置の操作に用いられるレバーなどである。第1表示器14aは、クレーン装置の操作状態を表示する。
【0023】
車両制御系の第2車載ネットワーク11bには、第2制御器12b、第2操作器13b、及び、第2表示器14bが接続されている。第2制御器12bは、車両駆動用のエンジンなどを制御する。第2操作器13bは、アクセルペダル、ブレーキペダル、及び、車両系スイッチなどである。車両系スイッチには、サスペンションレベルの設定スイッチ、駆動の切り換えスイッチ、及び、ステアリングモードの切り換えスイッチなどが含まれてよい。第2表示器14bは、コンビネーションメータなどである。
【0024】
作業車1は、第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bの両方に接続される第3制御器12cを有してもよい。第3制御器12cは、例えば過負荷防止装置を構成する。過負荷防止装置から出力される情報は、例えば第1表示器14aに表示されてよい。
【0025】
(無線通信機)
次に、作業車1に設けられる無線通信機2の構成を説明する。
無線通信機2は、作業車1の第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bに接続されている。作業車1が複数の車載ネットワークを有する場合、無線通信機2を複数の車載ネットワークに接続してもよい。なお、無線通信機2を作業車1が有する全ての車載ネットワークに接続する必要はない。作業車1が有する複数の車載ネットワークの一部の車載ネットワーク(本実施形態の場合、第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bの何れか一方の車載ネットワーク)に無線通信機2を接続してもよい。
【0026】
無線通信機2は第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bに対して物理的に着脱可能であり、必要時にのみ第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bに接続されてよい。例えば、無線通信機2はコネクタを有してよい。無線通信機2は、無線通信機2側のコネクタと第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11b側のコネクタとを着脱することで、無線通信機2を着脱できる無線ユニットであってよい。なお、無線通信機2を着脱不可能とし、第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bに常に接続してもよい。つまり、無線通信機2は、作業車1に組み込まれた構成であってよい。
【0027】
無線通信機2は、信号処理部21、通信制御部22、及び、記憶部23を有する。信号処理部21、通信制御部22、及び、記憶部23はそれぞれ、電子回路などのハードウエアで構成されてもよいし、その機能の一部をソフトウエアにより構成されてもよい。
【0028】
信号処理部21は、第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bに接続されている。信号処理部21は、第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bから車内信号を取得する。一例として、信号処理部21は、車載ネットワーク(本実施形態の場合、第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bのうちの少なくとも一方の車載ネットワーク)を流れる車内信号を、リアルタイムで取得してよい。信号処理部21は、取得した車内信号をそのまま、又は車内信号に所定の処理を施して、通信制御部22及び記憶部23に出力する。信号処理部21は、取得部の一例に該当する。
【0029】
通信制御部22は、携帯端末3との無線通信を制御する。通信制御部22は、無線LAN(Local Area Network)におけるアクセスポイントとしての機能を有する。通信制御部22には、無線通信に用いられるネットワーク名(SSID:Service Set Identifier)、及び、暗号化キー(ネットワークキー)などが設定されている。通信制御部22は、制御部の一例に該当する。
【0030】
通信制御部22と携帯端末3との間で通信を確立することで、無線通信機2と携帯端末3とが無線接続される。以下、無線通信機2と携帯端末3との間に確立されるネットワークを無線ネットワーク4と称する。なお、無線通信機2と携帯端末3の接続方式は、例えば、WIFI(登録商標)又はBluetooth(登録商標)などの無線通信が挙げられる。また、本実施形態の場合、無線通信機2と携帯端末3とは、インターネットを介することなく無線接続される。ただし、無線通信機2と携帯端末3とは、インターネットを介して接続されてもよい。
【0031】
通信制御部22は、携帯端末3との間で信号の送受信を行う。例えば、通信制御部22は、信号処理部21が第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク12bから取得した車内信号を携帯端末3に送信する。この際、通信制御部22は、第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bの通信プロトコルと無線ネットワーク4の通信プロトコルとの変換処理などを行う。通信制御部22が送信する車内信号は、カメラなどで外部から取得した目に見える情報ではなく、車載ネットワークを流れる目に見えない情報と捉えてよい。本実施形態に係る無線通信システムは、このような車載ネットワークを流れる目に見えない情報を、携帯端末の表示部に表示して可視化するものである。
【0032】
記憶部23は、信号処理部21が第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bから取得した車内信号を記憶する。記憶部23には、車内信号の履歴が蓄積される。
【0033】
なお、信号処理部21、通信制御部22、及び、記憶部23の機能は、作業車1が備えるエレメントにより構成されてもよい。
【0034】
(携帯端末)
次に、携帯端末3の構成を説明する。
携帯端末3は、CPU及びメモリなどで構成された汎用コンピュータである。携帯端末3は、無線通信の機能を有する。携帯端末3は、例えばパーソナルコンピュータ、タブレット端末、又は、高機能携帯電話(スマートフォン)であってよい。携帯端末3は、作業車1の運転室の外部に配置できる。
【0035】
携帯端末3は、表示部31を有している。表示部31は、液晶ディスプレイなどである。携帯端末3には、受信した車内信号に基づいて作業車1の情報を表示する表示アプリケーションがインストールされている。作業車1の情報は、表示部31に表示される。
【0036】
なお、携帯端末3は、無線通信機2からリアルタイムで順次送信される車内信号を、受信してよい。携帯端末3は、車内信号を受信したい場合に、無線通信機2に向けてリクエスト信号を送信してもよい。リクエスト信号には、携帯端末3が受信したい車内信号の種類に関する情報が含まれてもよい。このようなリクエスト信号を受信した無線通信機2は、リクエスト信号に含まれる情報に対応した車内信号を、携帯端末3に向けて送信してよい。無線通信機2は、停止指示を含む情報を携帯端末3から受信した場合に、車内信号の送信を停止してよい。
【0037】
(無線通信システムの動作)
次に、無線通信システムAの動作を説明する。
無線通信システムAは、作業車1の第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11b上を流れる車内信号を携帯端末3に送信し、携帯端末3に作業車1の情報を表示するよう動作する。以下、その詳細を説明する。
【0038】
先ず、通信制御部22と携帯端末3との間で通信を確立する。通信の確立には通信制御部22に設定されたネットワーク名及び暗号化キーなどが用いられる。通信が確立すると、無線通信機2と携帯端末3との間で信号の送受信を行うことができる。
【0039】
第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bには、各種の車内信号が流れている。車内信号には操作器13a、13bが出力した操作信号、制御器12a~12cが出力した情報信号、及び、その他の信号などが含まれる。信号処理部21は第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bから車内信号を取得する。
【0040】
ここで、信号処理部21は、第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11b上を流れる全ての車内信号を取得してもよいし、必要な車内信号のみを選択して取得してもよい。例えば、信号処理部21は、車内信号のうち情報信号のみを取得する。なお、情報信号は、一例として、各制御器の入出力情報(デジタル信号、アナログ信号、及び、パルス信号に関する情報)を含んでよい。また、情報信号は、一例として、制御器で計算されたクレーン状態に関する情報(ブーム角度、ブーム長さ、及び、旋回角度など)、及び、車両状態に関する情報(エンジン回転数、車速、及び、ミッション状態など)を含んでよい。
【0041】
次に、信号処理部21は取得した車内信号を通信制御部22に出力する。通信制御部22は、入力された車内信号を、無線ネットワーク4を介して携帯端末3に送信する。以上のように、無線通信機2は、第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bから車内信号を取得し、取得した車内信号を携帯端末3に送信する。
【0042】
携帯端末3は、受信した車内信号に基づいて作業車1の情報を表示部31に表示する。具体的には、携帯端末3は、表示アプリケーションを動作させている。表示アプリケーションは、受信した車内信号に処理を施して、画像化するなどして表示部31に表示する。携帯端末3の表示部には、作業車1の表示部に表示されている情報と同じ情報がリアルタイムで表示されてよい。この場合、携帯端末3が受信した車内信号は、作業車1の車載ネットワークにおいて、制御器から表示部に送られる表示情報と捉えてよい。携帯端末3の表示部には、作業車1の表示部の表示態様と同じ態様で情報が表示されてよい。なお、携帯端末3の表示部に表示される情報は、作業車1の表示部に表示されている情報の一部であってもよいし、全部であってもよい。
【0043】
例えば、過負荷防止装置を構成する第3制御器12cから出力された車内信号を携帯端末3に送信すれば、携帯端末3に過負荷防止に関する情報を表示できる。例えば、過負荷防止装置に関する情報には、クレーン装置を構成するブームの長さ及び起伏角などの作業車の姿勢に関する情報、並びに、作業半径などの作業に関する情報が含まれる。なお、姿勢に関する情報は、旋回角度及びアタッチメント状態などを含んでよい。また、作業に関する情報は、負荷率及び荷重情報などを含んでよい。
【0044】
以上のように、携帯端末3が車内信号に基づいて作業車1の情報を表示するので、作業員は、携帯端末3により作業車1の外部において作業車1の状態を確認できる。すなわち、携帯端末3を表示器14a、14bの代替手段として用いることができる。例えば、作業車1のメンテナンスの際には、一人の作業員が作業車1の外部で作業を行いながら、携帯端末3を見て作業車1の状態を確認できる。そのため、作業員は、メンテナンス作業を効率よく行える。
【0045】
なお、作業員は、携帯端末3を操作して、メンテナンス情報の送信指示を含むリクエストを、携帯端末3から無線通信機2に送信してもよい。このリクエストを受信した無線通信機2は、メンテナンス情報に関する車内信号を作業車1から取得し、携帯端末3に送信してよい。メンテナンス情報は、記憶部23に記憶された情報であってもよい。メンテナンス情報は、一例として、作業車1の制御器12a~12cの入出力情報(アナログ信号、デジタル信号、又は、パルス信号など)、及び、作業車1の状態(クレーンの状態及び車両の状態)などの状態情報のうちの少なくとも一つの情報を含んでよい。
【0046】
また、作業員は、携帯端末3を操作して、作業車1で過去に発生したエラーの履歴情報を無線通信機2にリクエストしてもよい。このリクエストを受信した無線通信機2は、エラーの履歴情報に関する車内信号を作業車1から取得し、携帯端末3に送信してよい。エラーの履歴情報は、記憶部23に記憶された情報であってよい。
【0047】
ところで、信号処理部21は、複数の車載ネットワーク(本実施形態の場合、第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11b)に接続されている。そして、信号処理部21は、複数の車載ネットワーク(第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11b)のそれぞれから車内信号を取得する。通信制御部22は、信号処理部21が取得した車内信号を携帯端末3に送信する。すなわち、無線通信機2は、複数の車載ネットワーク(第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11b)のそれぞれから取得した車内信号を携帯端末3に送信する。
【0048】
したがって、作業車1が複数の車載ネットワーク(本実施形態の場合、第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11b)を有する場合、携帯端末3は、それぞれの車載ネットワークの車内信号に基づいて作業車1の情報を表示する。そのため、作業員は作業車1の種々の情報を確認できる。
【0049】
例えば、第1車載ネットワーク11a上にはクレーン装置関係の車内信号が流れる。また、第2車載ネットワーク11b上には車両関係の車内信号が流れる。携帯端末3は、これらの車内信号に基づいて情報の表示を行う。これにより、作業員は、クレーン装置の情報と車両の情報とを確認できる。
【0050】
なお、複数の車載ネットワーク(本実施形態の場合、第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11b)のそれぞれから取得した車内信号に、車載ネットワークを識別する識別子を付加することが好ましい。車内信号に識別子を付加する処理は信号処理部21が行う。通信制御部22は、車内信号に識別子を付加したデータを携帯端末3に送信する。車内信号に識別子を付加することで、携帯端末3側で第1車載ネットワーク11aと第2車載ネットワーク11bとを識別ができ、車内信号の種類を識別できる。
【0051】
無線通信機2の記憶部23には車内信号が記憶されている。記憶部23は、作業車1の車載ネットワーク(本実施形態の場合、第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11b)を流れる総ての信号を記憶してよい。また、記憶部23は、作業車1の車載ネットワークを流れる特定の信号のみを記憶してもよい。記憶部23から車内信号を取得すれば、車内信号を用いて分析などを行うことができる。具体的には、作業員は、記憶部23に記憶された車内信号を用いて、発生頻度の低い不具合の原因解析や状況解析を行うことができる。記憶部23からの車内信号の取得は、通信制御部22を介して行ってもよいし、無線通信機2に設けた他のインターフェースを介して行ってもよい。
【0052】
携帯端末3から作業車1に何らかの信号を送信してもよい。携帯端末3から送信された信号は、通信制御部22により受信される。通信制御部22は、受信した信号を信号処理部21に入力する。信号処理部21は、信号を車載ネットワーク(本実施形態の場合、第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11b)に出力する。
【0053】
携帯端末3から送信する信号として、例えば、操作対象を操作するための操作信号が挙げられる。作業員が携帯端末3を操作すると、携帯端末3から操作信号が送信される。無線通信機2は、操作信号を第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bのうち、操作対象に対応する車載ネットワークに出力する。第1車載ネットワーク11a及び第2車載ネットワーク11bに接続された車載機器(操作対象)は、その操作信号に基づいて処理を行う。これにより、携帯端末3を用いて作業車1を遠隔操作できる。
【0054】
2018年1月26日出願の特願2018-011077の日本出願に含まれる明細書、図面及び要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【符号の説明】
【0055】
A 無線通信システム
1 作業車
11a、11b 車載ネットワーク
12a~12c 制御器
13a、13b 操作器
14a、14b 表示器
2 無線通信機
21 信号処理部
22 通信制御部
23 記憶部
3 携帯端末
31 表示部