(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】インジケータ材料、および、使用方法
(51)【国際特許分類】
G01N 31/22 20060101AFI20231121BHJP
C01B 37/00 20060101ALI20231121BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20231121BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20231121BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20231121BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20231121BHJP
G01N 21/78 20060101ALI20231121BHJP
C01B 33/18 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G01N31/22 121A
C01B37/00
A61L9/01 E
B01J20/34 F
A61L9/00 Z
B01J20/10 A
B01J20/10 C
G01N21/78 Z
C01B33/18 Z
(21)【出願番号】P 2020063956
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 真梨子
(72)【発明者】
【氏名】大橋 和彰
(72)【発明者】
【氏名】生田目 大輔
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-187712(JP,A)
【文献】特開2004-093469(JP,A)
【文献】特開2020-015640(JP,A)
【文献】特開2004-251647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B
A61L 9/00
B01J 20/00
G01N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサン結合中にCu又はMnを導入したメソポーラスシリカからなるインジケータ材料。
【請求項2】
前記インジケータ材料が臭気と反応して呈色を示す請求項1に記載のインジケータ材料。
【請求項3】
硫黄系臭気を化学的に結合させた前記メソポーラスシリカであり、前記インジケータの呈色反応によりオゾン濃度又は量を測定する請求項1又は2に記載のインジケータ材料。
【請求項4】
硫黄系臭気を化学的に結合させた前記メソポーラスシリカであり、前記インジケータの呈色反応により硫黄系臭気濃度を測定する請求項1又は2に記載のインジケータ材料。
【請求項5】
シロキサン結合中にCu又はMnを導入したメソポーラスシリカであり、Cu又はMnと硫黄系臭気とが吸着し、硫黄系臭気と活性種を共存させることにより、硫黄系臭気をCuから離脱させ、繰り返し吸着性能を発現させるインジケータ材料の使用方法。
【請求項6】
前記メソポーラスシリカが硫黄系臭気と反応して呈色を示したのち、前記メソポーラスシリカと活性種を共存させながら色味を計測し、測定結果によって活性種処理を終了する、請求項5の記載のインジケータ材料の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰り返し使用可能なインジケータ材料、および、使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メソポーラスシリカ(mesoporous silica)とは、二酸化ケイ素を基質として、均一で規則的な細孔を持つ物質のことである。メソポーラスシリカの粉末は、触媒、吸着剤、抗菌剤やガスセンサー、分離膜などとして、新しい応用が期待される。
【0003】
特許文献1には、水分またはタンパク質の吸着性と脱着性を兼ね備え、且つ、繰り返し使用可能なメソポーラスシリカが提案されている。また、本発明者らは、特許文献2において、Mn又はCuである金属Xがドープされた多孔質シリカを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-17930号公報
【文献】特願2020-15640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでに、脱着可能で、且つ、繰り返し使用可能なメソポーラスシリカ材料が提案されているが、その呈色性や使用環境において、未だ十分に満足するものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、シロキサン結合中にCu又はMnを導入したメソポーラスシリカからなるインジケータ材料が提供される。
また、本発明によれば、シロキサン結合中にCu又はMnを導入したメソポーラスシリカであり、Cu又はMnと硫黄系臭気とが吸着し、硫黄系臭気と活性種を共存させることにより、硫黄系臭気をCu又はMnから離脱させ、繰り返し吸着性能を発現させるインジケータ材料の使用方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、繰り返し使用可能なインジケータが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の最大の特徴は、優れた呈色反応を示すことにある。即ち、臭気成分が細孔内に侵入し、該細孔内に侵入とほぼ同時に金属に結合するため、素早く呈色反応を示すことにある。また、呈色反応を目視で確認することができると共に、繰り返し使用しても所望の性能を発現することにある。
【0009】
(メソポーラスシリカ)
本発明のメソポーラスシリカの比表面積は、500m2/g以上、好ましくは800~2000m2/g、特に好ましくは800~1600m2/gの範囲であるものを好適に使用することができる。
本発明のメソポーラスシリカの細孔は、2~50nmの範囲であるものを好適に使用することができる。
本発明のメソポーラスシリカの比表面積は500m2/g以上が好適に使用することできる。
本発明のメソポーラスシリカは、細孔内に成形されたシロキサン結合中にCuが導入されている。
本発明のメソポーラスシリカにおいて、シリカ細孔壁のシロキサン結合中に金属が導入されている。その金属の含有率は、0.01~10質量%、好ましくは0.1~5質量%の範囲であることが好適である。Cuの含有量が0.01質量%未満であると所望の性能を十分に発揮することができず、10質量%を超えると、生産性や経済的に劣るからである。
【0010】
(呈色反応)
呈色反応の機構は、臭気成分が化学吸着および脱離により可逆な色変化を起こすことにより呈色反応を示すものと考えられる。臭気成分としては、アンモニア、トリメチルアミンなどの窒素系や、硫化水素、メチルメルカプタンなどの硫黄系の臭気物質が挙げられる。
本実施形態で用いるメソポーラスシリカは、Cuの場合、通常、白色又は薄水色又であるが、シリカ細孔壁のシロキサン結合中に導入された金属がCuである場合には、吸着される臭気物質がアンモニアである場合、青みを帯びた色に変化し、吸着される臭気物質が硫化水素である場合、褐色に変化する。
【0011】
本実施形態のメソポーラス構造により優れた呈色反応を示す。このことは、後述する実施例からも明らかである。シロキサン結合中にCuを導入した実施例1は、臭気成分に対して呈色反応を示すのに対して、Alを導入した比較例1は、呈色反応を示さなかった。また、実施例1で得られた試料に硫黄系臭気を化学的に吸着させたのち、活性種を与えると、元の白色に戻った。再生処理後の消臭容量を確認したところ90%以上回復していることを確認した。
なお、酸性塩基性臭気(シラノール基による水素結合)は水洗いにより性能が回復することが知られていたが、化学結合により強固に消臭している硫黄系臭気に関してもオゾン処理により元の色に戻ることがわかった。
【0012】
呈色反応したインジケータを元の色に戻す方法としては、ヒドロキシラジカル(・OH)、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカル等のラジカル、これらのラジカルの少なくとも一種を含むマイナスに帯電している帯電微粒子水、オゾン(O3)などの活性種と共存させることにより臭気物質との化学結合を切断することで、金属から臭気物質を離脱させることができる。
なお、オゾンはインジゴとの反応、硫化水素は酢酸鉛との反応がそれぞれ知られているが、この2つを呈色検知できる材料はあまり知られていない。
【0013】
本発明のインジケータ材料の生成方法は、以下に制限されないがが、例えば、溶媒に、金属成分の供給源を溶解し、シリカの供給源を加えて50~150℃で30分~12時間で加熱してゲル状の生成物を得て、さらにゲル状の生成物を200~550℃で1~10時間焼成することによって得られる。
【0014】
溶媒としては、例えば、水を用いることができる。水以外にエタノール、トルエンなどの有機溶媒を含んでいてもよい。
シリカ源としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、ケイ酸ナトリウムなどが挙げられるが、より好ましくはテトラエトキシシランが挙げられる。これらのシリカ源は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
界面活性剤と金属塩とを溶媒に添加して、界面活性剤溶液を調製する。界面活性剤溶液は、室温以上200℃以下で、30分以上10時間以下、攪拌される。これにより、界面活性剤がミセルを形成する。
そして、ミセルが形成された界面活性剤溶液に、シリカ源を添加する。
【0016】
界面活性剤の添加量は、好ましくは50~400mmol/L、より好ましくは50~150mmol/Lである。
また、界面活性剤が形成するミセルは、ミセル表面にシリカ源を静電気的に集積させる分子鋳型として機能する。このことに鑑みると、シリカ源1モルに対して、0.01~5.0モルの界面活性剤を添加するのが好ましく、より好ましくは0.05~1.0モルである。
【0017】
界面活性剤としては、特に限定されない。陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性のいずれの界面活性剤を用いてもよいが、陰イオン性又は両性の界面活性剤が好ましく、より好ましくはアルキルアンモニウム塩である。アルキルアンモニウム塩は、炭素数が8以上のものであるのが好ましく、工業的な入手の容易さを鑑みると、炭素数が12から18のものがより好ましい。アルキルアンモニウム塩としては、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
金属成分としては、シリカ細孔壁のシロキサン結合中に導入する金属の供給源として添加される。金属成分としては、塩化銅、硝酸銅、硫酸銅などの水溶性の銅塩又は塩化マンガン、硝酸マンガンなどの水溶性のマンガン塩を単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その他の金属成分としては、塩化鉄、塩化アルミニウムなどの水溶性の金属塩を用いることができる。これらの金属成分の添加量は、シリカ源1モルに対して、0.01~5.0モルであるのが好ましく、より好ましくは0.05~1.0モルである。シリカ骨格の加水分解の抑制を目的にCuの他にAlを併用することが好ましい。
【0019】
シリカ源の添加量は、好ましくは0.2~1.8mol/Lであり、より好ましくは0.2~0.9mol/Lである。溶媒が水を含む場合、水1モルに対して、0.001~0.05モルのシリカ源を添加するのが好ましい。
【0020】
本発明のインジケータ材料は、臭気成分に反応して呈色を示すことから視覚的に確認が容易である。用途としては、繊維、フィルター、検知管、テープ、ターラベル、樹脂シートなどの形態として用いることができる。また、スポーツウエア、介護衣類、被服、寝具、靴、ブーツに直接貼付して使用することもできる。例えば、消臭成分を配合したものと配合しなかったものとを比較することで消臭能力を体感でき、販売促進等で使用することができる。また、余剰性能の目安となるために、オゾン処理などの再生処理時間やインジケータ材料の交換時期の目安として使用することができる。
また、本発明のインジケータ材料は、元の色に戻る性質を利用することで、活性種濃度や量を呈色検知可能である。呈色変化の程度は、センサーや画像にて測定できる。即ち、臭気成分を化学吸着させた、呈色反応後のインジケータを所定の場所に配置することで、空間内に存在するオゾン濃度や量を測定することが可能である。
【実施例】
【0021】
以下に本実施例を示すがこれに限定されるものではない。
【0022】
(比表面積測定)
マイクロトラック・ベル社製高精度ガス/蒸気吸着量測定装置BERSORP-maxIIを使用し、窒素による吸着脱離等温線を測定し、BET法により比表面積を算出した。
【0023】
(分光測色)
スガ試験機株式会社製SMカラーコンピューター(SM-4)を用いてL*値、a*値、b*値を測定した。明度はL*値、彩度は√(a*2+b*2)で算出した。明度は数値が大きいほど白色であることを示す。彩度は数字が小さいほど無彩色であることを示す。
【0024】
(メソポーラスシリカ中の金属量測定)
試料約50mgを精確に量りとり、4mlの塩酸で溶解した後に、水溶液中の銅、マンガン、及びアルミニウム濃度をThermo Scientific社製のICP-OESにて測定した。塩酸で処理することにより、メソポーラスシリカに含まれる銅及びアルミニウムは、シリカの骨格内に取り込まれている成分の全て塩酸に溶解するものと考えられる。そこで、測定結果に基づき、メソポーラスシリカ中に存在する銅の全含有量及びアルミニウムの全含有量を、それぞれ「銅含有量」及び「アルミニウム含有量」として算出した。
【0025】
(硫化水素の吸着試験及び消臭容量の算出)
直径10mmのテフロン(登録商標)チューブ内部に各消臭剤20mgを担持させたシリカウールを充填して消臭剤サンプルチューブを作成した。パーミエーターを使用して14ppmの濃度の硫化水素を連続的に発生させ、パーミエーターの硫化水素ガス発生口に作製した消臭剤サンプルチューブを転結して試験を開始した。消臭剤サンプルチューブ出口から排出されるガスを3分後に500ml採取して、検知管にて硫化水素濃度を計測した。この計測は硫化水素濃度が7ppm未満になった時点で試験終了とした、7ppm以上になるまでの試験時間と硫化水素量を用いて、消臭剤1gあたりの消臭容量mg/gを算出した。
【0026】
(アンモニアの吸着試験及び消臭容量の算出)
直径10mmのテフロン(登録商標)チューブ内部に各消臭剤40mgを担持させたシリカウールを充填して消臭剤サンプルチューブを作成した。パーミエーターを使用して100ppmの濃度のアンモニアを連続的に発生させ、パーミエーターのアンモニアガス発生口に作製した消臭剤サンプルチューブを転結して試験を開始した。消臭剤サンプルチューブ出口から排出されるガスを3分後に500ml採取して、検知管にて硫化水素濃度を計測した。この計測はアンモニア濃度が50ppm以上になった時点で試験終了とした、50ppm以上になるまでの試験時間とアンモニア量を用いて、消臭剤1gあたりの消臭容量mg/gを算出した。
【0027】
(硫化水素での破過処理)
パーミエーターを使用して14ppmの濃度の硫化水素を連続的に発生させ、各消臭剤を0.5g~1g充填したナスフラスコに流量1L/分で硫化水素を48時間以上吹き付けて破過させた。この処理を「硫化水素破過処理」とした。硫化水素破過処理の程度は、硫化水素吸着試験にて、破過直後の消臭剤の消臭容量が破過前の消臭剤の消臭容量に対して80%以上減少していることを確認した。足りない場合は、上記破過処理をもう一度実施することとした。
【0028】
(アンモニアでの破過処理)
パーミエーターを使用して100ppmの濃度のアンモニアを連続的に発生させ、各消臭剤を0.5g~1g充填したナスフラスコに流量1L/分でアンモニアを48時間以上吹き付けて破過させた。この処理を「アンモニア破過処理」とした。アンモニア破過処理の程度は、アンモニア吸着試験にて、破過直後の消臭剤の消臭容量が破過前の消臭剤の消臭容量に対して80%以上減少していることを確認した。足りない場合は、上記破過処理をもう一度実施することとした。
【0029】
(オゾンによる処理及び処理後の消臭容量)
未処理、硫化水素破過処理後、及びアンモニア破過処理後の各消臭剤をプレシャーレに広げて、オゾン発生装置(岩崎電気株式会社製:OC-250615-D-A)を用いて、166ppmのオゾンと各消臭剤を60分間共存させて、オゾンによる処理を実施した。処理後の各消臭剤を硫化水素の吸着試験を実施し、「オゾンによる処理後の消臭容量」を得た。
【0030】
(ヒドロキシラジカルによる処理及び処理後の消臭容量)
未処理、硫化水素破過処理後、及びアンモニア破過処理後の各消臭剤を不織布製の小袋に収容し、各消臭剤を含む小袋とヒドロキシラジカル発生装置(パナソニック株式会社製:MS-DM10-M)から発生したヒドロキシラジカルとを共存させて、ヒドロキシラジカルによる処理を実施した。処理後の各消臭剤を硫化水素の吸着試験を実施し、「ヒドロキシラジカルによる処理後の消臭容量」を得た。
【0031】
(製造例1)
溶媒としての水に、界面活性剤としてヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、銅塩として塩化銅、アルミニウム塩として塩化アルミニウムを加え、100℃で1時間攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、ミセルが形成された溶液に、シリカ源としてテトラエトキシシランを加え、均一になるまで攪拌した。次に、添加直後のpHが9となるように、縮合触媒として水酸化ナトリウムを加え、室温で20時間攪拌した。各化合物の添加量は、テトラエトキシシラン1モルに対して、それぞれ以下の量とした。
・ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド:0.225モル
・塩化銅:0.0204モル
・塩化アルミニウム:0.0482モル
・水:125モル
・水酸化ナトリウム:0.195モル
【0032】
次いで、溶液中のミセルを前駆体として回収し、50℃で24時間乾燥した後、前駆体を570℃で5時間焼成して有機成分を除去することによって、メソポーラスシリカ(実施番号「TB-2」)を作製した。作製したメソポーラスシリカの比表面積は1100m2/gであり、細孔径は2.51nmであった。比表面積と細孔径は液体窒素温度における窒素ガス吸着等温線からBJH法により求めた。
メソポーラスシリカの比表面積測定、分光測色、金属含有量の結果を表1に示した。
【0033】
(製造例2)
溶媒としての水に、界面活性剤としてヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、マンガン塩として塩化マンガン、アルミニウム塩として塩化アルミニウムを加え、100℃で1時間攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、ミセルが形成された溶液に、シリカ源としてテトラエトキシシランを加え、均一になるまで攪拌した。次に、添加直後のpHが9となるように、縮合触媒として水酸化ナトリウムを加え、室温で20時間攪拌した。各化合物の添加量は、テトラエトキシシラン1モルに対して、それぞれ以下の量とした。
・ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド:0.225モル
・塩化マンガン:0.0102モル
・塩化アルミニウム:0.0241モル
・水:125モル
・水酸化ナトリウム:0.195モル
次いで、溶液中のミセルを前駆体として回収し、50℃で24時間乾燥した後、前駆体を570℃で5時間焼成して有機成分を除去することによって、メソポーラスシリカ(実施番号「CB-16」)を作製した。
(製造例3)
溶媒としての水に、界面活性剤としてヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、アルミニウム塩として塩化アルミニウムを加え、100℃で1時間攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、ミセルが形成された溶液に、シリカ源としてテトラエトキシシランを加え、均一になるまで攪拌した。次に、添加直後のpHが9となるように、縮合触媒として水酸化ナトリウムを加え、室温で20時間攪拌した。各化合物の添加量は、テトラエトキシシラン1モルに対して、それぞれ以下の量とした。
・ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド:0.225モル
・塩化アルミニウム:0.0482モル
・水:125モル
・水酸化ナトリウム:0.195モル
【0034】
次いで、溶液中のミセルを前駆体として回収し、50℃で24時間乾燥した後、前駆体を570℃で5時間焼成して有機成分を除去することによって、メソポーラスシリカ(実施番号「TCB-1」)を作製した。
【0035】
(実施例1)オゾン処理
製造例1で得たメソポーラスシリカ「TB-2」を用いて、硫化水素での吸着試験を実施し、「初期の消臭容量」を得た。次に、硫化水素での破化処理を実施し、吸着試験にて破過処理の程度を確認した。更に、オゾン処理を行った後、硫化水素での吸着試験を実施し、「再生処理後の消臭容量」を得た。結果を表2に示した。
また、破過処理後及びオゾン処理後の分光測色を行い、呈色変化を確認した。結果を表3に示した。
【0036】
(実施例2)ヒドロキシラジカル処理
製造例1で得たメソポーラスシリカ「TB-2」を用いて、硫化水素での吸着試験を実施し、「初期の消臭容量」を得た。次に、硫化水素での破化処理を実施し、吸着試験にて破過処理の程度を確認した。更に、ヒドロキシラジカル処理を行った後、硫化水素での吸着試験を実施し、「再生処理後の消臭容量」を得た。結果を表2に示した。
また、破過処理後及びヒドロキシラジカル処理後の分光測色を行い、呈色変化を確認した。結果を表3に示した。
【0037】
(実施例3)2回繰り返し処理
製造例1で得たメソポーラスシリカ「TB-2」を用いて、硫化水素での破過処理とオゾン処理の処理を2回繰り返して実施した。2回繰り返し処理後に硫化水素での吸着試験を行い、「2回繰り返し再生処理後の消臭容量」を得た。結果を表2に示す。
また、破過処理後及び2回繰り返し再生処理後の分光測色を行い、呈色変化を確認した。結果を表3に示した。
【0038】
(実施例4)マンガン
製造例2で得たメソポーラスシリカ「CB-16」を用いて、硫化水素での吸着試験を実施し、「初期の消臭容量」を得た。次に、硫化水素での破化処理を実施し、吸着試験にて破過処理の程度を確認した。更に、オゾン処理を行った後、硫化水素での吸着試験を実施し、「再生処理後の消臭容量」を得た。結果を表2に示した。
また、破過処理後及びオゾン処理後の分光測色を行い、呈色変化を確認した。結果を表3に示した。
【0039】
(参考例1)破過処理なしでオゾン処理
製造例1で得たメソポーラスシリカ「TB-2」を用いて、硫化水素での吸着試験を実施し、「初期の消臭容量」を得た。次に、硫化水素での破化処理を実施せずに、オゾン処理を行った後、硫化水素での吸着試験を実施し、「再生処理後の消臭容量」を得た。結果を表2に示した。
また、オゾン処理後の分光測色を行い、呈色変化を確認した。結果を表3に示した。
【0040】
(比較例1)水洗い処理
製造例1で得たメソポーラスシリカ「TB-2」を用いて、硫化水素での吸着試験を実施し、「初期の消臭容量」を得た。次に、硫化水素での破化処理を実施し、吸着試験にて破過処理の程度を確認した。更に、破過処理後のメソポーラスシリカを0.1重量%になるように水で調整し、マグネチックスターラーにて300rpm2時間攪拌して水洗い処理を実施し、吸引ろ過にてメソポーラスシリカを回収し、65℃2時間乾燥を行った。水洗い処理後のメソポーラスシリカを用いて、硫化水素での吸着試験を実施し、「再生処理後の消臭容量」を得た。結果を表2に示した。
また、破過処理後及びオゾン処理後の分光測色を行い、呈色変化を確認した。結果を表3に示した。
【0041】
(実施例5)オゾン処理
臭気をアンモニアに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表4と表5に示した。
【0042】
(実施例6)ヒドロキシラジカル処理
臭気をアンモニアに変更した以外は、実施例2と同様に実施した。結果を表4と表5に示した。
【0043】
(実施例7)2回繰り返し処理
製造例1で得たメソポーラスシリカ「TB-2」を用いて、アンモニアでの破過処理とオゾン処理の処理を2回繰り返して実施した。2回繰り返し処理後にアンモニアでの吸着試験を行い、「2回繰り返し再生処理後の消臭容量」を得た。結果を表4と表5に示した。
【0044】
(参考例2)破過処理なしでオゾン処理
臭気をアンモニアに変更した以外は、参考例1と同様に実施した。結果を表4と表5に示した。
【0045】
(比較例2)水洗い処理
臭気をアンモニアに変更した以外は、比較例1と同様に実施した。結果を表4と表5に示した。
【0046】
(比較例3)アルミニウムドープメソポーラスシリカのオゾン処理
製造例3で得たメソポーラスシリカ「TCB-1」を用いた以外は、実施例4と同様に実施した。結果を表4と表5に示した。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
表2及び表3から明らかなように、シリカ細孔壁のシロキサン結合中に、金属原子として銅を導入したメソポーラスシリカからなる消臭剤は、硫化水素と銅との化学吸着が飽和状態、いわゆる破過点まで達した後、オゾン処理又はヒドロキラジカルによる処理を実施することで、初期の消臭容量まで回復及び再生させることが可能となった。比較例1の従来の水洗いによる処理と比較して、回復性能は大幅に向上した。
【0053】
本発明により、化学吸着による消臭速度を得ると同時に化学吸着の課題であった消臭寿命に対して、消臭剤とオゾン処理などでの活性種と共存させることにより、繰り返し消臭性能を発現させることを見出した。
【0054】
また、前記消臭剤は、硫化水素と化学吸着することで薄水色から褐色に呈色した。その後、オゾン処理またはヒドロキシラジカル処理を実施することで、褐色から薄水色又は薄緑色に呈色変化した。本発明では消臭の破過点までの到達と再生処理の進行を消臭剤の呈色変化により目視で確認できることを見出した。
【0055】
表4及び表5から明らかなように、アンモニアに対しても同様に消臭剤とオゾン処理などの活性種と共存させることにより、繰り返し消臭性能を発現させること、消臭の破過点までの到達と再生処理の進行を消臭剤の呈色変化により目視で確認することもできることを見出した。また、呈色反応を示す金属原子と示さない金属原子があることから必要に応じて適宜選択することが可能である。
【0056】
(比較例4)
シグマアルドリッチ製のメソポーラスシリカMCM-41(CAS RN:7631-86-9)を比較例4として用意した。この粉末サンプルの比表面積は894m2/gで、細孔径は2.61nmであった。比表面積と細孔径は液体窒素温度における窒素ガス吸着等温線からBJH法により求めた。
【0057】
(消臭速度)
500mLの三角フラスコを2つ用意し、それぞれの三角フラスコにパーミエーターを用いて、初期濃度が19ppmとなるように硫化水素ガスを調製した。実施例1、比較例4のメソポーラスシリカ10mgを、別々の三角フラスコに加えた。5分後の三角フラスコ中の硫化水素量を、ガス検知管(ガステック製)を用いて測定した。
結果を下記表に示す。
【0058】
【0059】
実施例1は、比較例4より消臭速度が速い。実施例1と比較例4とでは比表面積と細孔径に大きな違いがないことから、実施例1の粉末の消臭速度が速いのは金属ドープによる効果であると考えられる。