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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】温調機能付きターボ分子ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
F04D19/04 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020074012
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2021169810
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】田中 晋悟
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-017089(JP,A)
【文献】特開2016-160917(JP,A)
【文献】特開2010-190047(JP,A)
【文献】特開2019-218876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより回転駆動され、複数段のロータ翼とロータ円筒部とを備えるポンプロータと、
複数段のステータ翼と、
前記ロータ円筒部に対して同心配置されるステータ円筒部と、
前記ステータ円筒部を加熱する加熱部、ステータ円筒部を冷却する冷却部、および前記ステータ円筒部の温度を計測する温度センサを有して、前記ステータ円筒部を所定温度に温調制御する温調装置と、
前記加熱部による前記ステータ円筒部の加熱が停止するとの前記温調装置の異常を判定する判定部と、を備え、
前記判定部により異常と判定されると、前記ポンプロータの回転駆動を停止し、前記加熱部による加熱および前記冷却部による冷却をそれぞれ停止することにより、前記ステータ円筒部の温度低下を抑制して前記ステータ円筒部と前記ロータ円筒部との間のギャップ寸法が狭くなることを抑制する、温調機能付きターボ分子ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の温調機能付きターボ分子ポンプにおいて、
ポンプ制御設定を設定するためのポンプ設定指令が入力される入力部を備え、
前記入力部により受け入れ可能な前記ポンプ設定指令には、前記所定温度の変更を指示する指令および前記温調制御の停止を指示する指令の少なくとも一方が含まれない、温調機能付きターボ分子ポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載の温調機能付きターボ分子ポンプにおいて、
ポンプ設定状態の設定確認または設定変更に関する表示画面が表示される表示部を備え、
前記温調制御の有効/無効の設定および前記所定温度の設定については、設定確認に関する表示画面が表示される、温調機能付きターボ分子ポンプ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の温調機能付きターボ分子ポンプにおいて、
前記判定部により異常と判定されると異常情報を出力する、温調機能付きターボ分子ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温調機能付きターボ分子ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子ポンプにおいて、反応生成物の堆積を抑制するために、ターボ分子ポンプのベースを温調装置で昇温する技術がある(例えば、特許文献1参照)。ベースを昇温すると、ネジステータが熱膨張してロータとネジステータとのギャップ寸法が大きくなり、排気性能低下という問題が生じる。そのような温調時の排気性低下を防止する方法として、例えば、昇温して膨張した状態においてギャップ寸法が最適寸法となるように、ロータおよびネジステータの寸法を設定することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-168732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、温調系のエラー発生によって温調動作が停止した場合、継続して真空ポンプを使用すると、ネジステータ温度が低下することによってロータとネジステータとのギャップ寸法が最適寸法よりも狭くなる。ギャップ寸法が最適寸法よりも狭くなる事で、通常の運転でも回転しているロータがネジステータと接触するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様による温調機能付きターボ分子ポンプは、モータにより回転駆動され、複数段のロータ翼とロータ円筒部とを備えるポンプロータと、複数段のステータ翼と、前記ロータ円筒部に対して同心配置されるステータ円筒部と、前記ステータ円筒部を加熱する加熱部、ステータ円筒部を冷却する冷却部、および前記ステータ円筒部の温度を計測する温度センサを有して、前記ステータ円筒部を所定温度に温調制御する温調装置と、前記温調装置の異常を判定する判定部と、を備え、前記判定部により異常と判定されると、前記ポンプロータの回転駆動を停止し、前記加熱部による加熱および前記冷却部による冷却をそれぞれ停止する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、温調系異常保護動作時におけるロータ円筒部とネジステータ(ステータ円筒部)との接触を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、温調機能付きターボ分子ポンプの概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、ポンプ本体の構成を示す断面図である。
図3図3は、設定方法A,Bを説明する図である。
図4図4は、本実施の形態における温調動作設定を比較例と比較して示す図である。
図5図5は、温調設定確認時における表示・操作部の表示例を示す図である。
図6図6は、温調設定状態を確認する際の、表示切替操作を説明する図である。
図7図7は、ポンプ設定における変更可能な設定項目の一例を示す図である。
図8図8は、比較例の場合の温調ON/OFF設定の表示を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、温調機能付きターボ分子ポンプ100の概略構成を示すブロック図である。ターボ分子ポンプ100は、真空排気を行うポンプ本体1と、ポンプ本体1を駆動制御するポンプコントローラとを備えている。ポンプ本体1には、温調ヒータ38と、温度センサ39と、冷却水パイプ30とが設けられている。冷却水パイプ30に供給される冷却水の通水、非通水は、冷却水バルブ44により制御される。
【0009】
図2は、ポンプ本体1の構成を示す断面図である。ポンプ本体1は、ロータ翼41とステータ翼31とで構成されるターボポンプ(TP)段と、ロータ円筒部42とステータ円筒部32とで構成されるドラッグポンプ(DP)段とを有している。複数段のステータ翼31は、複数段のロータ翼41に対して軸方向に交互に配置されている。各ステータ翼31は、スペーサリング33を介してベース3上に載置される。ターボポンプ段は、ベース上に固定される円筒状ケーシング51内に収容される。ステータ円筒部32にはネジ溝が形成されている。ロータ翼41およびロータ円筒部42が形成されたポンプロータ4は、シャフト5に締結されている。
【0010】
シャフト5は、磁気軸受34、35および36によって磁気浮上支持されている。なお、磁気軸受34~36が作動していない時には、シャフト5は非常用のメカニカルベアリング37a,37bによって支持される。磁気浮上支持されたシャフト5は、モータ10によって回転駆動される。詳細な図示は省略したが、各磁気軸受34~36は電磁石と変位センサとを備えており、変位センサによりシャフト5の浮上位置が検出される。シャフト5の回転数(1秒当たりの回転数)は、回転センサ43によって検出される。
【0011】
本実施の形態のターボ分子ポンプ100は温調機能付きのポンプであって、ベース3の外周には、加熱用の温調ヒータ38と冷却用の冷却水パイプ30とが設けられている。ベース3にボルト固定されたステータ円筒部32の温度は、ベース3のステータ円筒部32の固定部近辺に設けられた温度センサ39によって検出される。図2に示す例では、温度センサ39をベース3に設けたが、ステータ円筒部32に設けても良い。
【0012】
図1に示すポンプコントローラ2は、CPU2a、記憶部2b、電源部21、モータ駆動部22、軸受駆動部23、表示・操作部25および通信部26等を備えている。CPU2aは、記憶部2bに格納されている制御プログラムに従い各種機能を実現する制御部20と温調部24とを有する。制御部20は、モータ駆動部22および軸受駆動部23の制御を行う。温調部24は、センタ39からの温度信号などに基づいて、ヒータ30と冷却水バルブ44とを制御する。記憶部2bはRAM、ROM等のメモリを備えており、制御プログラムはROM等に記録されている。電源部21には外部電源から交流電力が供給される。電源部21は、供給された交流電力を直流電力に変換し、その直流電力をCPU2a、モータ駆動部22、軸受駆動部23等に供給する。
【0013】
モータ駆動部22は、ポンプ本体1のモータ10に駆動電力を供給する。軸受駆動部23は、磁気軸受34~36に励磁電流を供給する。制御部20は、回転センサ43で検出された回転数に基づいてモータ駆動部22を制御し、モータ10の回転を制御する。また、制御部20は、磁気軸受34~36に設けられた変位センサからの変位信号に基づいて軸受駆動部23を制御し、磁気軸受34~36の励磁電流を供給してシャフト5を所望の位置に磁気浮上させる。
【0014】
温調部24は、温度センサ39の検出温度に基づいて、ヒータ電源から温調ヒータ38に供給される電力のオンオフを制御すると共に、冷却水パイプ30への冷却水ラインに設けられた冷却水バルブ44をオンオフ制御し、ステータ円筒部32の温度を所望の目標温度に制御する。ヒータ電源からは、ヒータ38に印加される交流電力、例えば、電圧200Vの交流電力が供給される。また、冷却水バルブ44にはノーマルオープンの電磁バルブが用いられ、オフ動作時は通水状態となり、オン動作時は非通水状態となる。なお、オンオフ弁に代えて、冷却水の流量を制御する流量制御弁を用いて用いてもよい。
【0015】
表示・操作部25には、タッチパネル式の表示装置が用いられている。ユーザは、表示装置上に表示された操作ボタンを操作することで、ポンプ動作指令や、ポンプ設定状態(例えば、モータ動作設定、軸受動作設定、温調動作設定等)の変更や確認を行うことができる。ポンプコントローラ2は、通信部26を介して、ポンプ本体1が装着される装置のコントローラ(上位コントローラ)と情報の授受を行うことができる。例えば、上位コントローラから、上記設定状態の変更や確認を行うことも可能である。
【0016】
本実施の形態のターボ分子ポンプでは、温調動作によりステータ円筒部32の温度を高温(所定目標温度)に維持することにより、堆積物の生成を抑制するようにしている。所定目標温度は、堆積物の生成を抑制する観点で定めた、比較的高い温度、たとえば80℃から100℃の範囲の温度である。ステータ円筒温度が上昇すると、ステータ円筒部32の熱膨張によりステータ円筒部32とロータ円筒部42との隙間寸法が大きくなる。この隙間寸法は排気性に影響を及ぼすパラメータであり、隙間寸法が大きくなると排気性能が低下する。一般的に、温調機能付きターボ分子ポンプでは、温調時に隙間寸法が大きくなるが、特定の用途において温調時に隙間寸法が最適寸法となるように設定される場合がある。
【0017】
温調時に隙間寸法が最適寸法となるように設定する方法としては、例えば、以下のような設定方法A,Bがある。図3は、設定方法A,Bを説明する図である。図3(a)は、非温調時に隙間寸法が最適寸法G1に設定されている場合を示したものである。すなわち、非温調時のステータ円筒部32は二点鎖線で示す位置にあり、そのときの隙間寸法はG1である。ハッチングを施した温調時におけるステータ円筒部32は、熱膨張により内周面の半径がΔr1だけ増加し、隙間寸法はG2=G1+Δr1となる。
【0018】
図3(b)は設定方法Aの場合の各隙間寸法を示したものであり、非温調時におけるロータ円筒部42とステータ円筒部32との隙間寸法G3は、最適寸法G1よりも小さな値に設定される。温調時は、熱膨張によりステータ円筒部32の内周面の半径はΔr2だけ増加し、隙間寸法は最適寸法G1となる。すなわち、非温調時の隙間寸法G3はG3=G1-Δr2のように設定され、温調時には最適寸法G1となる。
【0019】
図3(c)は、設定方法Bの場合に各隙間寸法を示したものである。図3(a),(b)に示した例では、ロータ回転数は基準回転数N0に設定されているが、図3(c)の設定方法Bの場合には基準回転数N0よりも大きな回転数N1に設定される。一点鎖線は回転数N0の場合のロータ円筒部42を示しており、非温調および回転数N0の場合には、ロータ円筒部42とステータ円筒部32との隙間寸法は最適寸法G1に設定されている。設定方法Bでは温調時の回転数がN1に設定されるので、熱膨張によりステータ円筒部32の内周面の半径がΔr1だけ増加すると共に、遠心力増加によりロータ円筒部42の外周面の半径がΔr1だけ増加する。その結果、温調時の隙間寸法は最適寸法G1となる。
【0020】
図4は、本実施の形態における温調動作設定と、比較例としての従来の一般的な温調動作設定とを示したものである。温調動作の設定項目として、ここでは、温調機能のON/OFF設定と、温調温度の設定と、温調系異常時の保護動作とを示した。温調系異常とは、例えば、温調ヒータ38、温度センサ39および冷却水バルブ44の断線や異常動作であり、温調系異常の判断は温調部24によって行われる。
【0021】
(比較例)
まず、比較例について説明する。温調機能付きターボ分子ポンプは、基本的に温調機能を使用することを前提としており、上述した設定方法A,Bのように、ステータ円筒部32とロータ円筒部42との隙間寸法は温調時に最適寸法G1となるように設定されている。しかしながら、従来は、温調機能のON/OFF設定をユーザが変更できるような構成となっているのが一般的であった。例えば、温調を必要としない排気条件で使用することも考慮して、このような設定としている。
【0022】
温調温度設定については、プロセス条件によって最適な温調温度が異なることを考慮し、所定の温度範囲内においてユーザにより変更可能な構成とされている。温調系異常時の保護動作については、温調ヒータ38をオフすると共に冷却水バルブ44をオフして温調動作をオフにし、警告信号(ウォーニング信号)を上位コントローラに対して出力する。ポンプ本体1に関しては、ポンプロータ4の回転は定格回転数に維持するようにしている。
【0023】
比較例における課題について説明する。上述したように、温調機能付きターボ分子ポンプは温調機能を使用することを前提としているので、温調時の隙間寸法は最適寸法G1であるが、非温調時の隙間寸法は最適寸法G1よりも狭くなる。そのため、非温調時はステータ円筒部32とロータ円筒部42との接触のリスクが高くなり、温調機能オンで使用するのが好ましい。
【0024】
また、温調時の最適寸法G1は所定の温調温度を前提に設定されているので、ユーザによる温調温度設定が所定の温調温度よりも低い場合には、非温調の場合と同様に接触のリスクが高くなる。逆に、ユーザによる温調温度設定が所定の温調温度よりも高い場合には、ロータ円筒部42のクリープ変形への影響が問題となる。高速回転するポンプロータ4においては、遠心力と温度の影響によりクリープ変形が発生する。クリープ変形により隙間寸法が時間の経過とともに狭くなり、隙間寸法が許容範囲よりも小さくなった時点で、ポンプロータ4の寿命と判断される。そのため、ユーザによる温調温度設定が所定の温調温度よりも高い場合には、ポンプロータ4の寿命が短くなるという問題がある。さらに、非温調に設定されたときの接触のリスクもより高まる。
【0025】
温調系異常時の保護動作においては、温調ヒータ38がオフされ、かつ、冷却水が通水状態とされるので、ステータ円筒部32の温度が温調温度から急速に低下する。ステータ円筒部32の温度が低下すると隙間寸法が最適寸法G1よりも狭くなり、ステータ円筒部32と定格回転数で回転しているロータ円筒部42との接触のリスクが高くなる。
【0026】
(実施の形態)
実施の形態では、温調ON/OFF設定および温調温度設定に関しては、ユーザによる変更を不可とした。そのため、温調機能を動作させずにターボ分子ポンプ100を使用することはできない。さらに、所定の温調温度でしか使用が許されない。すなわち、温調制御ソフトウェアにおける温調温度は、ユーザの使用条件(プロセス条件)に応じた温度に固定されていて、ユーザによる温度設定の変更はできない。そのため、比較例のように、非温調で使用されてステータ円筒部32とロータ円筒部42との接触のリスクが高くなったり、所定の温調温度よりも高い温調温度で使用されてポンプロータ4の寿命が短くなったりするのを、防止することができる。
【0027】
温調系異常時の保護動作に関しては、温調ヒータ38をオフとすることは比較例と同じだが、冷却水バルブ44をオン動作させて非通水状態とすることで、ステータ円筒部32の温度低下を比較例の場合よりも抑えるようにした。また、ポンプロータ4の回転制御に関しては減速制御を行い、ポンプ回転を停止させ、異常信号(エラー信号)を上位コントローラに対して出力する。その結果、保護動作により温調動作が停止されても、ポンプロータ4の回転が停止するまでのステータ円筒部32の温度低下を小さく抑えることができ、回転状態のロータ円筒部42とステータ円筒部32との接触を防止することができる。
【0028】
次いで、図5~7を用いて、表示・操作部25を用いた上記設定状態の変更や確認の一例について説明する。図5は、設定状態の変更や確認を行う際に表示・操作部25の表示画面25aに表示される、各種表示例を示したものである。図6は、温調設定状態を確認する際の、表示切替操作を説明する図である。
【0029】
表示aは、ポンプコントローラ2を起動したときに表示される起動時表示である。表示画面25aには、ポンプ回転および停止を指示するための操作ボタン250、251と、ターボ分子ポンプ100の設定状態を表示する設定画面を表示させるための操作ボタン252とが表示されている。図6に示すように、表示aにおいて操作ボタン252をタッチ操作すると、表示画面25aには設定に関する表示bが表示される。
【0030】
図5に示すように、表示bにおいては、表示画面25aに、操作ボタン253~256と、「ポンプ設定」という文字表示C1と、「温調設定」という文字表示C2とが表示されている。文字表示C1には、文字表示C1が選択状態であることを示す矩形の選択枠258が表示されている。操作ボタン253、254をタッチ操作すると、選択枠258を上下に移動させることができる。図6に示すように、表示bの状態で操作ボタン254をタッチ操作すると、表示画面25aには表示b’が表示される。ここでは表示b’の具体的表示は省略するが、表示bにおいて選択枠258を文字表示C2へ移動させたものが、表示b’である。表示b’において操作ボタン253をタッチ操作すると、表示画面25aは表示bに切り替わる。また、表示bまたは表示b’において操作ボタン255をタッチ操作すると、表示aに戻る。
【0031】
操作ボタン256は、選択枠258による選択を確定する操作ボタンである。例えば、表示bのように文字表示C1に選択枠258が表示されている状態で操作ボタン256をタッチ操作すると、選択が確定されて表示bからポンプ設定画面の表示に切り替わる(後述する、図7を参照)。図6に示すように、文字表示C2に選択枠258が表示されている表示b’において操作ボタン256をタッチ操作すると、表示画面25aは表示b’から表示cに切り替わる。また、表示b’において操作ボタン253をタッチ操作すると、表示画面25aは表示b’から表示bに切り替わる。
【0032】
図5の表示cは、温調機能のON/OFF設定状態を確認する表示画面である。表示画面25aには、操作ボタン253~256と、「温調ON/OFF設定」という文字表示C3と、「ON」という文字表示C4と、「1/2」という文字表示C5とが表示されている。文字表示C3,C4は、温調機能のON/OFF設定状態がON状態であることを示している。また、文字表示C5は温調設定画面のページ数を表す文字表示であり、総ページ数は2で、表示cは1ページ目であることを示している。図6に示すように、表示cにおいて、操作ボタン253をタッチ操作すると2ページ目の表示である表示dに切り替わり、操作ボタン255をタッチ操作すると表示b’に切り替わる。
【0033】
図5の表示dは、上述のように温調設定画面の2ページ目を示す表示である。表示画面25aには、操作ボタン253~256と、「温調温度設定」という文字表示C6と、「75℃」という文字表示C7と、「2/2」という文字表示C5とが表示されている。文字表示C6,C7は、温調温度が75℃に設定されていることを示している。図6に示すように、表示dにおいて、操作ボタン255をタッチ操作すると1ページ目の表示cに戻り、操作ボタン255をタッチ操作すると表示b’に切り替わる。
【0034】
図4に示したように、温調機能のON/OFF設定および温調温度設定に関しては、ユーザによる変更が不可であって、図5の表示c、dのように設定状態の確認のみが可能である。なお、ポンプ設定に関しては、確認だけではなく変更可能な設定項目もある。
【0035】
図7は、ポンプ設定における変更可能な設定項目の一例を示す図であり、ロータ回転数表示における回転数表示の変更例を示したものである。図5の表示bにおいて操作ボタン256をタッチ操作してポンプ設定の選択を確定すると、図7の表示eに切り替わる。表示eでは、表示画面25aに、操作ボタン253,254,256,257と、「回転数表示」という文字表示C8と、「表示設定=%」という文字表示C9とが表示されている。
【0036】
文字表示C9は、回転数の表示が、「%」、「rpm」および「rps」のいずれの単位で表示されているかを示すものである。表示eでは、回転数が%で表示されていることを示している。表示eにおいて、操作ボタン253、254を操作すると、回転数表示以外の他の設定項目の画面に移動する。一方、操作ボタン256を操作して回転数表示を選択すると、表示eから表示fに切り替わる。
【0037】
表示fは、表示設定を変更するための画面である。表示画面25aには、操作ボタン253,254,256,257と、「表示設定=%」という文字表示C9と、「( % )」という文字表示C10とが表示されている。文字表示C10は、変更前の設定を示している。操作ボタン253を操作する毎に、文字表示C9の「%」の文字が、「rpm」→「rps」→「%」→「rpm」・・・のように切り替わる。また、操作ボタン254を操作する毎に、「rps」→「rpm」→「%」→「rps」・・・のように逆順に切り替わる。操作ボタン253,254のいずれかを操作して表示設定を「rpm」に切り替えると、表示gのようになる。表示gにおいて、操作ボタン257をタッチ操作して表示設定を「rpm」に確定すると、表示e’に示すように文字表示C9が「表示設定=rpm」に変更される。
【0038】
図4の比較例の場合には、温調ON/OFF設定および温調温度設定が、図7の回転数表示の場合と同様に変更が可能である。例えば、図5の表示cにおいて操作ボタン256をタッチ操作すると、図8の表示c1に示すような温調ON/OFF設定に関する設定画面が表示される。表示c1における表示画面25aには、文字表示C3と,変更前の設定を示す文字表示C4aと、操作ボタン253~254,257とが表示されている。
【0039】
表示c1において操作ボタン253または254をタッチ操作すると、表示c2に切り替わり文字表示C4がOFFとなる。さらに操作ボタン257をタッチ操作することで、温調ON/OFF設定がONからOFFに変更され、表示画面25aの表示は、図8の表示cとなる。図5の表示cでは温調ON/OFF設定を示す文字表示C4が「ON」であったが、図8の表示cの場合には文字表示C4が「OFF」となっており、温調ON/OFF設定がOFFに変更されたことが確認できる。
【0040】
なお、上記設定状態の変更や確認は、通信により上位コントローラから行うことも可能である。例えば、比較例の場合に、上位コントローラから温調ON/OFF設定をOFFに変更するOFF指令情報がポンプコントローラ2に送信されると、ポンプコントローラ2はOFF指令情報に従って温調ON/OFF設定をOFFに設定変更し、変更後の温調ON/OFF設定情報を上位コントローラに返信する。一方、本実施の形態の場合には、ポンプコントローラ2からOFF指令情報が入力されても設定変更を拒絶し、設定変更が拒絶されて温調ON/OFF設定がONであることを示す情報を上位コントローラに返信する。
【0041】
なお、図1に示す例では、温調動作を制御する温調部24をポンプコントローラ2内に一体に設けたが、温調部24をポンプコントローラ2とは別の筐体に設けて、独立した別体の温調コントローラとしても構わない。
【0042】
上述した例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0043】
[1]一態様に係るターボ分子ポンプは、モータにより回転駆動され、複数段のロータ翼とロータ円筒部とを備えるポンプロータと、複数段のステータ翼と、前記ロータ円筒部に対して同心配置されるステータ円筒部と、前記ステータ円筒部を加熱する加熱部、ステータ円筒部を冷却する冷却部、および前記ステータ円筒部の温度を計測する温度センサを有して、前記ステータ円筒部を所定温度に温調制御する温調装置と、前記温調装置の異常を判定する判定部と、を備え、前記判定部により異常と判定されると、前記ポンプロータの回転駆動を停止動作させ、前記加熱部による加熱および前記冷却部による冷却をそれぞれ停止させる。
【0044】
図1において、温調部24は、温調装置に含まれる温調ヒータ38、温度センサ39および冷却水バルブ44等に異常が発生すると、温調装置の異常と判断する。そして、制御部20は、温調装置の異常と判断されると、図4に示す保護動作を実行する。すなわち、ポンプ本体1を減速停止させ、温調ヒータ38をオフし、冷却水バルブ44を閉動作(ON動作)させて非通水状態とする。その結果、保護動作により温調動作が停止されても、ポンプロータ4の回転が停止するまでのステータ円筒部32の温度低下を従来よりも小さく抑えることができ、回転状態のロータ円筒部42とステータ円筒部32との接触を防止することができる。
【0045】
[2]上記[1]に記載のターボ分子ポンプにおいて、ポンプ制御設定を設定するためのポンプ設定指令が入力される入力部を備え、前記入力部により受け入れ可能な前記ポンプ設定指令には、前記所定温度の変更を指示する指令および前記温調制御の停止を指示する指令の少なくとも一方が含まれない。すなわち、温調温度設定および温調ON/OFF設定の少なくとも一方は、ユーザによる設定変更が不可とされている。
【0046】
例えば、図1に示すように、ターボ分子ポンプ100は、表示・操作部25によりポンプ設定(例えば、ロータ回転数表示の設定)を設定することができ、また、通信部26を介して上位コントローラから設定指令を入力することができる。しかし、表示・操作部25による設定では、図5の表示c、dのように温調ON/OFF設定および温調温度の確認はできるが、温調ON/OFF設定および温調温度の変更はできない構成となっている。
【0047】
すなわち、受け入れ可能なポンプ設定には温調に関する設定(温調温度設定、温調ON/OFF設定)が含まれず、温調制御は予め設定されている所定の温調温度に基づいて行われ、温調制御(すなわち、温調機能)を動作させずにターボ分子ポンプ100を使用することはできない。そのため、所定の温調温度よりも高い温調温度で使用されてポンプロータ4の寿命が短くなるというリスクを、避けることができる。また、非温調使用時におけるステータ円筒部32とロータ円筒部42との接触というリスクを、避けることができる。
【0048】
なお、図4、5に示す例では、温調ON/OFF設定および温調温度の両方が変更できない構成となっているが、少なくとも一方が変更できない構成であっても良い。
【0049】
[3]上記[1]に記載のターボ分子ポンプにおいて、
ポンプ設定状態の設定確認または設定変更に関する表示画面が表示される表示部を備え、前記温調制御の有効/無効の設定および前記所定温度の設定については、設定確認に関する表示画面が表示される。例えば、図5に示すように、表示・操作部25には、温調ON/OFF設定が有効(ON)であることを示す表示画面(表示c)と、設定されている温調温度の値を示す表示画面(表示d)とが表示されるのみで、それらの設定変更に関する表示画面は表示されない。
【0050】
[4]上記[1]から[3]の一に記載のターボ分子ポンプにおいて、前記判定部により異常と判定されると異常情報を出力する。判定部により異常と判定されると、前ポンプロータの回転駆動が停止動作されてターボ分子ポンプによる真空排気が行われなくなるので、異常情報を出力する。異常情報を出力されることにより、ユーザはポンプ停止に対する適切な対応が可能となる。
【0051】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。例えば、上述した実施の形態では、温調時の隙間寸法が最適寸法G1に設定されている場合について説明したが、本発明は、そのような隙間設定のターボ分子ポンプに限らず適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…ポンプ本体、2…ポンプコントローラ、4…ポンプロータ、10…モータ、20…制御部、24…温調部、25…表示・操作部、26…通信部、31…ステータ翼、32…ステータ円筒部、38…温調ヒータ、39…温度センサ、41…ロータ翼、42…ロータ円筒部、44…冷却水バルブ、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8