(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフおよび液体クロマトグラフの制御方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/02 20060101AFI20231121BHJP
G01N 30/32 20060101ALI20231121BHJP
G01N 30/86 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G01N30/02 Z
G01N30/32 C
G01N30/86 V
G01N30/86 Q
(21)【出願番号】P 2020074414
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】柴田 成章
(72)【発明者】
【氏名】田鶴 洋
(72)【発明者】
【氏名】田邑 知也
(72)【発明者】
【氏名】成松 道正
(72)【発明者】
【氏名】林 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】中尾 孝
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/058433(WO,A1)
【文献】特開2013-024603(JP,A)
【文献】特開2014-029270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0327692(US,A1)
【文献】特開2011-117815(JP,A)
【文献】特開2014-002153(JP,A)
【文献】特開2014-098672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動相の残量を監視するとともに、当該移動相についての情報が移動相情報として登録される移動相モニタと、
移動相を供給するポンプと、
試料の分析条件が記述されたメソッドファイルを取得するメソッドファイル取得部と、
前記移動相モニタから移動相情報を取得する移動相情報取得部と、
前記メソッドファイル取得部により取得されたメソッドファイルと移動相情報取得部により取得された移動相情報とに基づいて前記ポンプを制御するための制御情報を生成する制御情報生成部とを備え
、
前記移動相モニタは、複数種類の移動相にそれぞれ対応するように複数設けられ、
前記ポンプは複数設けられ、
各移動相モニタに登録される移動相情報は、当該移動相モニタについての移動相と、当該移動相を供給するポンプとの対応関係をさらに含み、
前記制御情報生成部は、前記移動相情報取得部により取得された対応関係にさらに基づいて制御情報を生成する、液体クロマトグラフ。
【請求項2】
前記移動相モニタに登録される移動相情報は、移動相の圧縮率を含み、
前記制御情報生成部は、前記メソッドファイル取得部により取得されたメソッドファイルと前記移動相情報取得部により取得された移動相の圧縮率とに基づいて制御情報を生成する、請求項1記載の液体クロマトグラフ。
【請求項3】
前記制御情報生成部により生成された制御情報に基づいて前記ポンプの動作を制御する装置制御部と、
前記ポンプにより供給された移動相を用いた試料の分析結果を取得する分析結果取得部とをさらに備える、請求項1
または2記載の液体クロマトグラフ。
【請求項4】
前記移動相モニタに登録された移動相情報と、前記分析結果取得部により取得された分析結果とが記載された報告書を作成する報告書作成部をさらに備える、請求項
3記載の液体クロマトグラフ。
【請求項5】
試料の分析条件が記述されたメソッドファイルを取得するステップと、
移動相の残量を監視しかつ当該移動相についての情報が移動相情報として登録された移動相モニタから移動相情報を取得するステップと、
取得されたメソッドファイルと取得された移動相情報とに基づいて移動相を供給するポンプを制御するための制御情報を生成するステップとを含
み、
前記移動相モニタは、複数種類の移動相にそれぞれ対応するように複数設けられ、
前記ポンプは複数設けられ、
各移動相モニタに登録される移動相情報は、当該移動相モニタについての移動相と、当該移動相を供給するポンプとの対応関係をさらに含み、
前記制御情報を生成するステップは、取得された対応関係にさらに基づいて制御情報を生成することを含む、液体クロマトグラフの制御方法。
【請求項6】
移動相の残量を監視するとともに、当該移動相についての情報が移動相情報として登録される移動相モニタと、
移動相を供給するポンプと、
試料の分析条件が記述されたメソッドファイルを取得するメソッドファイル取得部と、
前記移動相モニタから移動相情報を取得する移動相情報取得部と、
前記メソッドファイル取得部により取得されたメソッドファイルと移動相情報取得部により取得された移動相情報とに基づいて前記ポンプを制御するための制御情報を生成する制御情報生成部とを備え、
前記移動相モニタは、複数種類の移動相にそれぞれ対応するように複数設けられ、
各移動相モニタには、対応する移動相についての移動相情報が登録される、液体クロマトグラフ。
【請求項7】
前記移動相モニタに登録される移動相情報は、移動相の名称および/または圧縮率を含む、請求項6記載の液体クロマトグラフ。
【請求項8】
試料の分析条件が記述されたメソッドファイルを取得するステップと、
移動相の残量を監視しかつ当該移動相についての情報が移動相情報として登録された移動相モニタから移動相情報を取得するステップと、
取得されたメソッドファイルと取得された移動相情報とに基づいて移動相を供給するポンプを制御するための制御情報を生成するステップとを含み、
前記移動相モニタは、複数種類の移動相にそれぞれ対応するように複数設けられ、
各移動相モニタには、対応する移動相についての移動相情報が登録される、液体クロマトグラフの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフおよび液体クロマトグラフの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる物質を異なる成分ごとに分離する分析装置として、液体クロマトグラフが知られている。液体クロマトグラフにおいては、試料の分析条件等が記述されたメソッドファイルが作成される。作成されたメソッドファイルに基づいてポンプ等の液体クロマトグラフの種々の構成要素が制御される。
【0003】
特許文献1には、液体クロマトグラフまたは超臨界流体クロマトグラフを制御可能なメソッドファイルを作成するクロマトグラフ装置制御装置が記載されている。このクロマトグラフ装置制御装置においては、ユーザが表示部に表示された所定の画面上で、移動相およびカラムについての設定を行う。また、ユーザは、予め標準的な分析条件が記述されたベースメソッドファイルを指定する。設定された移動相およびカラムならびに指定されたベースメソッドファイルに基づいてメソッドファイルが作成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体クロマトグラフにおいては、分析対象の試料に応じて使用される移動相が頻繁に交換される。そのため、移動相が交換されるごとに当該移動相に対応したメソッドファイルを作成する必要がある。しかしながら、特許文献1のクロマトグラフ装置制御装置においては、メソッドファイルの作成作業の際にユーザがミスすることがある。この場合、試料の適切な分析を行うことができない。
【0006】
本発明の目的は、容易に試料の適切な分析を行うことが可能な液体クロマトグラフおよび液体クロマトグラフの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、移動相の残量を監視するとともに、当該移動相についての情報が移動相情報として登録される移動相モニタと、移動相を供給するポンプと、試料の分析条件が記述されたメソッドファイルを取得するメソッドファイル取得部と、前記移動相モニタから移動相情報を取得する移動相情報取得部と、前記メソッドファイル取得部により取得されたメソッドファイルと移動相情報取得部により取得された移動相情報とに基づいて前記ポンプを制御するための制御情報を生成する制御情報生成部とを備え、前記移動相モニタは、複数種類の移動相にそれぞれ対応するように複数設けられ、前記ポンプは複数設けられ、各移動相モニタに登録される移動相情報は、当該移動相モニタについての移動相と、当該移動相を供給するポンプとの対応関係をさらに含み、前記制御情報生成部は、前記移動相情報取得部により取得された対応関係にさらに基づいて制御情報を生成する、液体クロマトグラフに関する。
【0008】
本発明の他の態様は、試料の分析条件が記述されたメソッドファイルを取得するステップと、移動相の残量を監視しかつ当該移動相についての情報が移動相情報として登録された移動相モニタから移動相情報を取得するステップと、取得されたメソッドファイルと取得された移動相情報とに基づいて移動相を供給するポンプを制御するための制御情報を生成するステップとを含み、前記移動相モニタは、複数種類の移動相にそれぞれ対応するように複数設けられ、前記ポンプは複数設けられ、各移動相モニタに登録される移動相情報は、当該移動相モニタについての移動相と、当該移動相を供給するポンプとの対応関係をさらに含み、前記制御情報を生成するステップは、取得された対応関係にさらに基づいて制御情報を生成することを含む、液体クロマトグラフの制御方法に関する。
本発明のさらに他の態様は、移動相の残量を監視するとともに、当該移動相についての情報が移動相情報として登録される移動相モニタと、移動相を供給するポンプと、試料の分析条件が記述されたメソッドファイルを取得するメソッドファイル取得部と、前記移動相モニタから移動相情報を取得する移動相情報取得部と、前記メソッドファイル取得部により取得されたメソッドファイルと移動相情報取得部により取得された移動相情報とに基づいて前記ポンプを制御するための制御情報を生成する制御情報生成部とを備え、前記移動相モニタは、複数種類の移動相にそれぞれ対応するように複数設けられ、各移動相モニタには、対応する移動相についての移動相情報が登録される、液体クロマトグラフに関する。
本発明のさらに他の態様は、試料の分析条件が記述されたメソッドファイルを取得するステップと、移動相の残量を監視しかつ当該移動相についての情報が移動相情報として登録された移動相モニタから移動相情報を取得するステップと、取得されたメソッドファイルと取得された移動相情報とに基づいて移動相を供給するポンプを制御するための制御情報を生成するステップとを含み、前記移動相モニタは、複数種類の移動相にそれぞれ対応するように複数設けられ、各移動相モニタには、対応する移動相についての移動相情報が登録される、液体クロマトグラフの制御方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容易に試料の適切な分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る液体クロマトグラフの構成を示す図である。
【
図6】
図3の制御装置により実行される制御処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)液体クロマトグラフの構成
以下、本発明の実施の形態に係る液体クロマトグラフおよび液体クロマトグラフの制御方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る液体クロマトグラフの構成を示す図である。
図1に示すように、液体クロマトグラフ100は、移動相供給部10、試料供給部20、カラムオーブン30、検出器40および制御装置50を備える。
【0012】
移動相供給部10は、1個以上のボトル11、1個以上のポンプ12、1個以上の移動相モニタ13およびミキサ14を含む。移動相供給部10がポンプ12を1個のみ含む場合には、移動相供給部10はミキサ14を含まなくてもよい。本例では、移動相供給部10は、4個のボトル11、4個のポンプ12、4個の移動相モニタ13およびミキサ14を含む。
【0013】
以下、4個のボトル11を区別する場合には、4個のボトル11をそれぞれボトル11A~11Dと呼ぶ。4個のポンプ12を区別する場合には、4個のポンプ12をそれぞれポンプ12A~12Dと呼ぶ。4個の移動相モニタ13を区別する場合には、4個の移動相モニタ13をそれぞれ移動相モニタ13A~13Dと呼ぶ。
【0014】
ボトル11A~11Dは、異なる種類の水溶液または有機溶媒をそれぞれ移動相として貯留する。本例では、ポンプ12A~12Dは、ボトル11A~11Dにそれぞれ接続される。なお、ポンプ12とボトル11との対応関係は本例に限定されない。1個のポンプ12が2個以上のボトル11に接続されてもよいし、2個以上のポンプ12が1個のボトル11に接続されてもよい。各ポンプ12は、対応するボトル11に貯留された移動相を下流に供給する。
【0015】
移動相モニタ13A~13Dは、ボトル11A~11Dにそれぞれ対応する。各移動相モニタ13は、対応するボトル11に貯留された移動相の残量を計測する。移動相の残量が所定値以下まで減少した場合には、制御装置50により使用者への警告または液体クロマトグラフ100の動作停止等が行われる。また、各移動相モニタ13には、対応するボトル11に貯留された移動相についての情報(以下、移動相情報と呼ぶ。)が登録される。移動相情報の詳細については後述する。ミキサ14は、ポンプ12A~12Dからの移動相を混合して下流に供給する。
【0016】
試料供給部20は、例えばオートインジェクタを含み、移動相供給部10からの移動相に分析対象の試料を混合する。カラムオーブン30は、1以上の分離カラム31を収容し、分離カラム31を所定の温度に調整する。試料供給部20により試料が混合された移動相は、いずれかの分離カラム31に導入される。分離カラム31は、導入された移動相中の試料の各成分と、当該分離カラム31および移動相との親和性に依存して異なる時間だけ試料の成分を保持する。
【0017】
検出器40は、例えば吸光度検出器またはRI(Refractive Index)検出器を含み、分離カラム31による保持時間の経過後、分離カラム31から溶出される試料の成分を順次検出する。制御装置50は、CPU(中央演算処理装置)および記憶部を含み、移動相供給部10、試料供給部20、カラムオーブン30および検出器40の動作を制御する。また、制御装置50は、液体クロマトグラフ100の外部のデータベース記憶装置200に接続される。制御装置50の詳細については後述する。
【0018】
データベース記憶装置200は、試料の分析条件が記述された複数のメソッドファイルを予め記憶する。
図2は、メソッドファイルの一例を示す図である。
図2の例では試料の分析条件として、ポンプによる総流量、カラムオーブン30の温度および試料供給部20による試料の注入量がメソッドファイルに記述される。試料のグラジエント分析が行われる場合には、複数のポンプによる流量比がメソッドファイルにさらに記述される。分離カラム31の識別情報または分析結果の出力形式等がメソッドファイルにさらに記述されてもよい。
【0019】
(2)制御装置
図3は、
図1の制御装置50の構成を示す図である。
図3に示すように、制御装置50は、機能部として、メソッドファイル取得部51、移動相情報取得部52、制御情報生成部53、装置制御部54、分析結果取得部55および報告書作成部56を含む。制御装置50のCPUが記憶部に記憶された制御プログラムを実行することにより、制御装置50の機能部が実現される。制御装置50の機能部の一部または全部が電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0020】
メソッドファイル取得部51は、データベース記憶装置200からいずれかのメソッドファイルを取得する。使用者は、メソッドファイル取得部51に取得されるべき所望のメソッドファイルを指定することができる。制御装置50の記憶部に複数のメソッドファイルが予め記憶されている場合には、メソッドファイル取得部51は、当該記憶部からメソッドファイルを取得してもよい。
【0021】
移動相情報取得部52は、各移動相モニタ13に登録された移動相情報を取得する。移動相情報は、移動相モニタ13に対応するボトル11に貯留された移動相の名称、移動相の圧縮率、移動相の残量および移動相に対応するポンプ12の識別情報を含む。使用者は、ボトル11を交換等することにより移動相を変更した場合には、当該ボトル11に対応する移動相モニタ13に変更後の移動相の名称、移動相の圧縮率および移動相に対応するポンプ12の識別情報を入力する。この場合、移動相モニタ13に登録された移動相情報が更新される。
【0022】
制御情報生成部53は、メソッドファイル取得部51により取得されたメソッドファイルにおける分析条件と、移動相情報取得部52により取得された移動相情報における移動相の圧縮率とに基づいて制御情報を生成する。制御情報は、所定の分析条件および移動相の圧縮率で試料を分析するようにポンプ12、ミキサ14、試料供給部20、カラムオーブン30および検出器40の動作を制御するための情報である。
【0023】
装置制御部54は、制御情報生成部53により生成された制御情報に従ってポンプ12、ミキサ14、試料供給部20、カラムオーブン30および検出器40の動作を制御する。分析結果取得部55は、検出器40による検出結果を処理することにより分析結果を取得する。分析結果は、分離カラム31による試料の各成分の保持時間と検出強度との関係を示す液体クロマトグラムを含む。
【0024】
報告書作成部56は、使用された移動相の名称、分析条件および分析結果取得部55による分析結果が記載された報告書を作成する。報告書には、移動相の圧縮率および移動相の残量がさらに記載されてもよい。
【0025】
図4は、移動相情報の一例を示す図である。
図4の例では、第1の移動相モニタ13Aに対応する移動相の名称、移動相の圧縮率、移動相の残量およびポンプの識別情報は、それぞれ「移動相A」、「A[/GPa]」、「A[mL]」および「ポンプA」である。第2の移動相モニタ13Bに対応する移動相の名称、移動相の圧縮率、移動相の残量およびポンプの識別情報は、それぞれ「移動相B」、「B[/GPa]」、「B[mL]」および「ポンプB」である。
【0026】
第3の移動相モニタ13Cに対応する移動相の名称、移動相の圧縮率、移動相の残量およびポンプの識別情報は、それぞれ「移動相C」、「C[/GPa]」、「C[mL]」および「ポンプC」である。第4の移動相モニタ13Dに対応する移動相の名称、移動相の圧縮率、移動相の残量およびポンプの識別情報は、それぞれ「移動相D」、「D[/GPa]」、「D[mL]」および「ポンプD」である。なお、「ポンプA」~「ポンプD」は、それぞれ第1~第4のポンプ12A~12D(
図1)の識別情報である。
【0027】
図1の例では、第1~第4のポンプ12A~12Dが第1~第4のボトル11A~11Dに接続されるが、実施の形態はこれに限定されない。
図5は、移動相情報の他の例を示す図である。
図5の例では、第1~第3のポンプ12A~12Cが、第1~第3のボトル11A~11Cにそれぞれ接続される。第4のポンプ12Dおよび図示しない第5のポンプ(識別情報「ポンプE」)が、第4のボトル11Dに接続される。この場合、
図5に示すように、第4の移動相モニタ13Dに対応するポンプの識別情報は、「ポンプD」および「ポンプE」となる。
【0028】
(3)制御処理
図6は、
図3の制御装置50により実行される制御処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。まず、メソッドファイル取得部51は、メソッドファイルが指定されたか否かを判定する(ステップS1)。使用者は、データベース記憶装置200または制御装置50の記憶部に記憶された複数のメソッドファイルから所望のメソッドファイルを指定する。メソッドファイルが指定されていない場合、メソッドファイル取得部51は、メソッドファイルが指定されるまで待機する。
【0029】
メソッドファイルが指定された場合、メソッドファイル取得部51は、指定されたメソッドファイルをデータベース記憶装置200または制御装置50の記憶部から取得する(ステップS2)。移動相情報取得部52は、各移動相モニタ13から登録された移動相情報を取得する(ステップS3)。本例では、ステップS2が実行されることに応答してステップS3が実行されるが、ステップS3はステップS4よりも前のいずれの時点で実行されてもよい。
【0030】
制御情報生成部53は、ステップS2で取得されたメソッドファイルと、ステップS3で取得された移動相情報とに基づいて制御情報を生成する(ステップS4)。その後、装置制御部54は、分析開始が指令されたか否かを判定する(ステップS5)。使用者は、装置制御部54に分析開始を指令することができる。分析開始が指令されない場合(例えば、別のメソッドファイルが指定された場合)、装置制御部54はステップS1に戻る。分析開始が指令されるまで、ステップS1~S5が繰り返される。
【0031】
分析開始が指令された場合、装置制御部54は、ステップS4で生成された制御情報に基づいてポンプ12、ミキサ14、試料供給部20、カラムオーブン30および検出器40の動作を制御することにより、分析を実行する(ステップS6)。分析結果取得部55は、検出器40による検出結果を処理することにより分析結果を取得する(ステップS7)。
【0032】
報告書作成部56は、ステップS2で取得されたメソッドファイルの分析条件、ステップS3で取得された移動相情報およびステップS7で取得された分析結果が記載された報告書を作成する(ステップS8)。これにより、制御処理が終了される。
【0033】
図6の例では、制御処理はステップS5の処理を含むが、実施の形態はこれに限定されない。制御処理は、ステップS5の処理を含まなくてもよい。この場合、ステップS4で制御情報が生成された後、当該制御情報に基づいて分析が開始される。あるいは、ステップS4で制御情報が生成された後、分析が開始されることなく制御処理が終了されてもよい。この場合、使用者は、生成された制御情報に基づく分析の開始を所望の時点で指令することができる。
【0034】
(4)効果
本実施の形態に係る液体クロマトグラフ100においては、移動相の残量を監視する移動相モニタ13に当該移動相についての情報が移動相情報として登録される。試料の分析条件が記述されたメソッドファイルがメソッドファイル取得部51により取得される。移動相モニタ13から移動相情報が移動相情報取得部52により取得される。メソッドファイル取得部51により取得されたメソッドファイルと、移動相情報取得部52により取得された移動相情報とに基づいて、移動相を供給するポンプ12を制御するための制御情報が制御情報生成部53により生成される。
【0035】
仮に、移動相の名称および移動相の圧縮率を液体クロマトグラフ100の環境情報として制御装置50に登録する場合、制御装置50に登録された環境情報を用いてポンプ12を制御するための制御情報を生成することが可能である。しかしながら、この場合、移動相が別の移動相に交換されるごとに、フィールドエンジニア等の技師により液体クロマトグラフ100の据付および環境情報の登録が再度行われる必要がある。そのため、費用が高額になるとともに、液体クロマトグラフ100の利便性が低下する。
【0036】
これに対して、本実施の形態によれば、移動相モニタ13から移動相の圧縮率が取得される。これにより、ポンプ12を制御するための制御情報が自動的に生成される。そのため、使用者は、制御情報の生成の際に、移動相の圧縮率の入力操作を行う必要がない。したがって、使用者による情報の入力ミスまたは操作ミスが発生することを防止しつつ移動相の圧縮率を含む制御情報を生成することができる。その結果、容易に試料の適切な分析を行うことができる。また、費用の高額化および液体クロマトグラフ100の利便性の低下を防止することができる。
【0037】
移動相情報には、移動相と、当該移動相を供給するポンプ12との対応関係がさらに含まれる。そのため、液体クロマトグラフ100に複数のポンプ12が設けられ、複数種類の移動相が分析に用いられる場合でも、制御情報を容易に生成することができる。
【0038】
また、報告書には、分析結果が記載されるとともに、移動相モニタ13に登録された移動相情報も記載される。そのため、使用者は、報告書の作成の際に、移動相情報の入力操作を行う必要がない。したがって、使用者による情報の入力ミスまたは操作ミスが発生することを防止しつつ報告書を作成することができる。これにより、分析に使用された移動相についての情報が正確に記録される。その結果、分析結果の信頼性を損なうことなく液体クロマトグラフ100の利便性をより向上させることができる。
【0039】
(5)他の実施の形態
制御装置50は装置制御部54、分析結果取得部55および報告書作成部56を含むが、実施の形態はこれに限定されない。制御情報が生成された後、制御処理が終了する場合には、制御装置50は、装置制御部54、分析結果取得部55および報告書作成部56を含まなくてもよい。また、報告書に移動相情報が記載されない場合には、制御装置50は、報告書作成部56を含まなくてもよい。
【0040】
(6)態様
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0041】
(第1項)一態様に係る液体クロマトグラフは、
移動相の残量を監視するとともに、当該移動相についての情報が移動相情報として登録される移動相モニタと、
移動相を供給するポンプと、
試料の分析条件が記述されたメソッドファイルを取得するメソッドファイル取得部と、
前記移動相モニタから移動相情報を取得する移動相情報取得部と、
前記メソッドファイル取得部により取得されたメソッドファイルと移動相情報取得部により取得された移動相情報とに基づいて前記ポンプを制御するための制御情報を生成する制御情報生成部とを備えてもよい。
【0042】
この液体クロマトグラフにおいては、移動相の残量を監視する移動相モニタに当該移動相についての情報が移動相情報として登録される。試料の分析条件が記述されたメソッドファイルがメソッドファイル取得部により取得される。移動相モニタから移動相情報が移動相情報取得部により取得される。メソッドファイル取得部により取得されたメソッドファイルと、移動相情報取得部により取得された移動相情報とに基づいて、移動相を供給するポンプを制御するための制御情報が制御情報生成部により生成される。
【0043】
この構成によれば、移動相モニタから移動相情報が取得されることにより、ポンプを制御するための制御情報が自動的に生成される。そのため、使用者は、制御情報の生成の際に、移動相情報の入力操作を行う必要がない。したがって、使用者による情報の入力ミスまたは操作ミスが発生することを防止しつつ移動相情報を含む制御情報を生成することができる。その結果、容易に試料の適切な分析を行うことができる。
【0044】
(第2項)第1項に記載の液体クロマトグラフにおいて、
前記移動相モニタに登録される移動相情報は、移動相の圧縮率を含み、
前記制御情報生成部は、前記メソッドファイル取得部により取得されたメソッドファイルと前記移動相情報取得部により取得された移動相の圧縮率とに基づいて制御情報を生成してもよい。
【0045】
この場合、使用者による情報の入力ミスまたは操作ミスが発生することを防止しつつ移動相の圧縮率を含む制御情報を生成することができる。これにより、容易に試料の適切な分析を行うことができる。
【0046】
(第3項)第1項または第2項に記載の液体クロマトグラフにおいて、
前記移動相モニタは、複数種類の移動相にそれぞれ対応するように複数設けられ、
前記ポンプは複数設けられ、
各移動相モニタに登録される移動相情報は、当該移動相モニタについての移動相と、当該移動相を供給するポンプとの対応関係をさらに含み、
前記制御情報生成部は、前記移動相情報取得部により取得された対応関係にさらに基づいて制御情報を生成してもよい。
【0047】
この構成によれば、液体クロマトグラフに複数のポンプが設けられ、複数種類の移動相が分析に用いられる場合でも、制御情報を容易に生成することができる。
【0048】
(第4項)第1項~第3項のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフは、
前記制御情報生成部により生成された制御情報に基づいて前記ポンプの動作を制御する装置制御部と、
前記ポンプにより供給された移動相を用いた試料の分析結果を取得する分析結果取得部とをさらに備えてもよい。
【0049】
この場合、生成された制御情報に基づいて、ポンプにより供給された移動相を用いた試料の分析を行うとともに、分析結果を取得することができる。
【0050】
(第5項)第4項に記載の液体クロマトグラフは、
前記移動相モニタに登録された移動相情報と、前記分析結果取得部により取得された分析結果とが記載された報告書を作成する報告書作成部をさらに備えてもよい。
【0051】
この場合、報告書には、分析結果が記載されるとともに、移動相モニタに登録された移動相情報も記載される。そのため、使用者は、報告書の作成の際に、移動相情報の入力操作を行う必要がない。したがって、使用者による情報の入力ミスまたは操作ミスが発生することを防止しつつ報告書を作成することができる。これにより、分析に使用された移動相についての情報が正確に記録される。その結果、分析結果の信頼性を損なうことなく液体クロマトグラフの利便性を向上させることができる。
【0052】
(第6項)他の態様に係る液体クロマトグラフの制御方法は、
試料の分析条件が記述されたメソッドファイルを取得するステップと、
移動相の残量を監視しかつ当該移動相についての情報が移動相情報として登録された移動相モニタから移動相情報を取得するステップと、
取得されたメソッドファイルと取得された移動相情報とに基づいて移動相を供給するポンプを制御するための制御情報を生成するステップとを含んでもよい。
【0053】
この液体クロマトグラフの制御方法によれば、移動相モニタから移動相情報が取得されることにより、ポンプを制御するための制御情報が自動的に生成される。そのため、使用者は、制御情報の生成の際に、移動相情報の入力操作を行う必要がない。したがって、使用者による情報の入力ミスまたは操作ミスが発生することを防止しつつ移動相情報を含む制御情報を生成することができる。その結果、容易に試料の適切な分析を行うことができる。
【符号の説明】
【0054】
10…移動相供給部,11,11A~11D…ボトル,12,12A~12D…ポンプ,13,13A~13D…移動相モニタ,14…ミキサ,20…試料供給部,30…カラムオーブン,31…分離カラム,40…検出器,50…制御装置,51…メソッドファイル取得部,52…移動相情報取得部,53…制御情報生成部,54…装置制御部,55…処理部,56…報告書作成部,100…液体クロマトグラフ,200…データベース記憶装置