(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】無人搬送用昇降・傾斜装置
(51)【国際特許分類】
B61D 47/00 20060101AFI20231121BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20231121BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20231121BHJP
【FI】
B61D47/00 A
B61B13/00 A
G05D1/02 H
(21)【出願番号】P 2020074703
(22)【出願日】2020-04-20
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】安部 義隆
(72)【発明者】
【氏名】野村 昌克
(72)【発明者】
【氏名】久保 肇
(72)【発明者】
【氏名】米野 敬祐
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-115899(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181627(WO,A1)
【文献】実開平03-061487(JP,U)
【文献】特開平05-116895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 47/00
B61B 13/00
G05D 1/02
B65G 47/52
B62B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な走行体に搭載された基台と、
前記基台上の四隅に各々設置されたアクチュエータであり、出力軸が、前記アクチュエータの基台に対する設置面に対して垂直方向に運動自在に構成された第1~第4のアクチュエータと、
前記第1~第4のアクチュエータの各出力軸の先端部によって支持されるように配設された天板と、
前記第1~第4のアクチュエータの各出力軸の位置を制御する位置制御部
と、を備え、
前記位置制御部は、
次の(2)式、(3)式、(4)式、(5)式を用いて、前記天板の中心高さ指令および天板の傾斜指令を第1~第4のアクチュエータの各出力軸の長さ指令に変換する指令値生成部と、
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
(ただし、x
1~x
4は天板における第1~第4のアクチュエータの各出力軸の先端部の位置、X
1は天板の昇降に対応するモード変数でありX
1=(x
1+x
2+x
3+x
4)/4で定義され、X
2は天板のロール方向(x軸を回転軸とする回転方向)の傾斜に対応するモード変数でありX
2=(x
1-x
2+x
3-x
4)/4で定義され、ロール方向の傾斜S
xと比例関係X
2=(d
12/2)S
x(d
12は第1のアクチュエータの出力軸の先端部と第2のアクチュエータの出力軸の先端部の間の距離)にあり、X
3は天板のピッチ方向(y軸を回転軸とする回転方向)の傾斜に対応するモード変数でありX
3=(x
1+x
2-x
3-x
4)/4で定義され、ピッチ方向の傾斜S
yと比例関係X
3=(d
13/2)S
y(d
13は第1のアクチュエータの出力軸の先端部と第3のアクチュエータの出力軸の先端部の間の距離)にあり、X
4は天板の歪みに対応するモード変数であり、H
cmdは天板の中心高さ指令、S
x
cmdは天板のロール方向の傾斜指令、S
y
cmdは天板のピッチ方向の傾斜指令、x
1
cmd~x
4
cmdは第1~第4のアクチュエータの長さ指令)、
前記指令値生成部により変換された第1~第4のアクチュエータの各出力軸の長さ指令と、第1~第4のアクチュエータに対して位置制御を行ったことによる各アクチュエータの出力軸の長さの応答値とに基づいて、第1~第4のアクチュエータの位置制御量を求める位置制御器と、
備えていることを特徴とする無人搬送用昇降・傾斜装置。
【請求項2】
前記基台に設置された傾斜センサを備え、
前記位置制御部は、次の(6)式を演算することによって基台座標系での傾斜指令を求める座標変換部を備え、前記求められた基台座標系での傾斜指令を、前記指令値生成部における天板の傾斜指令とすることを特徴とする請求項1に記載の無人搬送用昇降・傾斜装置。
【数6】
(ただし、S
Bx
cmdは基台座標系での天板のロール方向の傾斜指令、S
By
cmdは基台座標系での天板のピッチ方向の傾斜指令、S
Wx
cmdは世界座標系での天板のロール方向の傾斜指令、S
Wy
cmdは世界座標系での天板のピッチ方向の傾斜指令、S
Wx
Bは前記傾斜センサにより検出された世界座標系での天板のロール方向の傾斜、S
Wy
Bは前記傾斜センサにより検出された世界座標系での天板のピッチ方向の傾斜)
【請求項3】
前記第1~第4のアクチュエータの各出力軸の先端部に各々設けられた球面座ナットと、
前記各球面座ナットと天板の間に各々配設された球面座受と、
一端が、前記各球面座ナット、球面座受、球面座受の配設位置に対向する天板の部位に各々挿入されたねじと、
前記各ねじの他端に各々設けられた天板離脱防止具と、を備えたことを特徴とする
請求項1又は2に記載の無人搬送用昇降・傾斜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車(Automated Guided Vehicle;AGV)による荷物の搬送に係り、特に荷物の昇降・傾斜の制御を可能とする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1をはじめとする無人搬送車では、駆動用のモータに加えて、荷物の昇降用のモータを搭載している。特許文献2の台部安定化装置では、サーボモータを用いた2つの昇降軸により天板(台部)の傾斜(進行方向および横方向)を制御する。
【0003】
特許文献3では、無人搬送用ではなくステージ用であるが、複数の直動アクチュエータを用いて天板を駆動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-204538号公報
【文献】特開2019-093981号公報
【文献】特開2005-150615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無人搬送車は(1)荷物の持ち上げ、(2)搬送、(3)荷下ろしという流れでタスクを行う。持ち上げおよび荷下ろしの際に昇降動作が必要であり、斜面や不整地等の水平でない床上での搬送の際に天板の傾斜制御が必要である。
【0006】
特許文献1をはじめとする無人搬送車では、昇降動作を行うことができるが傾斜の制御は行うことができない。特許文献2の台部安定化装置では、天板の傾斜を制御することができるが、天板の昇降を行うことはできない。
【0007】
特許文献3では複数の直動アクチュエータを用いて天板を駆動しているが、アプリケーションが異なり、天板の崩れ防止の手法が異なる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的は、昇降と傾斜の両方を制御することができる無人搬送用昇降・傾斜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の無人搬送用昇降・傾斜装置は、
移動可能な走行体に搭載された基台と、
前記基台上の四隅に各々設置されたアクチュエータであり、出力軸が、前記アクチュエータの基台に対する設置面に対して垂直方向に運動自在に構成された第1~第4のアクチュエータと、
前記第1~第4のアクチュエータの各出力軸の先端部によって支持されるように配設された天板と、
前記第1~第4のアクチュエータの各出力軸の位置を制御する位置制御部
と、を備え、
前記位置制御部は、
次の(2)式、(3)式、(4)式、(5)式を用いて、前記天板の中心高さ指令および天板の傾斜指令を第1~第4のアクチュエータの各出力軸の長さ指令に変換する指令値生成部と、
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
(ただし、x
1
~x
4
は天板における第1~第4のアクチュエータの各出力軸の先端部の位置、X
1
は天板の昇降に対応するモード変数でありX
1
=(x
1
+x
2
+x
3
+x
4
)/4で定義され、X
2
は天板のロール方向(x軸を回転軸とする回転方向)の傾斜に対応するモード変数でありX
2
=(x
1
-x
2
+x
3
-x
4
)/4で定義され、ロール方向の傾斜S
x
と比例関係X
2
=(d
12
/2)S
x
(d
12
は第1のアクチュエータの出力軸の先端部と第2のアクチュエータの出力軸の先端部の間の距離)にあり、X
3
は天板のピッチ方向(y軸を回転軸とする回転方向)の傾斜に対応するモード変数でありX
3
=(x
1
+x
2
-x
3
-x
4
)/4で定義され、ピッチ方向の傾斜S
y
と比例関係X
3
=(d
13
/2)S
y
(d
13
は第1のアクチュエータの出力軸の先端部と第3のアクチュエータの出力軸の先端部の間の距離)にあり、X
4
は天板の歪みに対応するモード変数であり、H
cmd
は天板の中心高さ指令、S
x
cmd
は天板のロール方向の傾斜指令、S
y
cmd
は天板のピッチ方向の傾斜指令、x
1
cmd
~x
4
cmd
は第1~第4のアクチュエータの長さ指令)、
前記指令値生成部により変換された第1~第4のアクチュエータの各出力軸の長さ指令と、第1~第4のアクチュエータに対して位置制御を行ったことによる各アクチュエータの出力軸の長さの応答値とに基づいて、第1~第4のアクチュエータの位置制御量を求める位置制御器と、
備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の無人搬送用昇降・傾斜装置は、請求項1において、
前記基台に設置された傾斜センサを備え、
前記位置制御部は、次の(6)式を演算することによって基台座標系での傾斜指令を求める座標変換部を備え、前記求められた基台座標系での傾斜指令を、前記指令値生成部における天板の傾斜指令とすることを特徴とする。
【数6】
(ただし、S
Bx
cmd
は基台座標系での天板のロール方向の傾斜指令、S
By
cmd
は基台座標系での天板のピッチ方向の傾斜指令、S
Wx
cmd
は世界座標系での天板のロール方向の傾斜指令、S
Wy
cmd
は世界座標系での天板のピッチ方向の傾斜指令、S
Wx
B
は前記傾斜センサにより検出された世界座標系での天板のロール方向の傾斜、S
Wy
B
は前記傾斜センサにより検出された世界座標系での天板のピッチ方向の傾斜)
【0011】
請求項3に記載の無人搬送用昇降・傾斜装置は、請求項1又は2において、
前記第1~第4のアクチュエータの各出力軸の先端部に各々設けられた球面座ナットと、
前記各球面座ナットと天板の間に各々配設された球面座受と、
一端が、前記各球面座ナット、球面座受、球面座受の配設位置に対向する天板の部位に各々挿入されたねじと、
前記各ねじの他端に各々設けられた天板離脱防止具と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
(1)請求項1~3に記載の発明によれば、第1~第4のアクチュエータの各出力軸の位置を制御することによって、天板の昇降と傾き(進行方向および横方向)の両方の運動が可能となり、それらを制御することができる。また、天板の中心高さ・傾斜・歪の指令からアクチュエータ長さ指令を算出する指令値生成部を有するため、一般的なアクチュエータの位置制御を用いて所望の天板の中心高さ・傾斜・歪を実現することが可能である。
(2)請求項2に記載の発明によれば、傾斜センサによる傾きの情報を用いることで、走行体に搭載された基台が傾く場合であっても天板の傾きの制御が可能となる。例えば斜面上の走行などで基台が傾く際にも天板の傾きを水平に保つことができる。尚、傾斜はゼロ(水平)のみならず、カーブ時に天板上の荷がずれないよう一定の傾きにすることも可能である。
(3)請求項3に記載の発明によれば、天板離脱防止具を設けたので、天板が装置から外れることはない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態例による昇降・傾斜装置の概要図。
【
図2】本発明の実施例1による昇降・傾斜装置の要部斜視図。
【
図3】本発明の実施例1におけるアクチュエータ出力軸と天板の接続例を示す説明図。
【
図4】本発明の実施例1による昇降・傾斜装置の基台およびアクチュエータの構成を表し、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は平面図、(d)側面図。
【
図8】本発明の実施例1における無人搬送車(AGV)とアクチュエータの番号の対応を示す説明図。
【
図9】本発明の実施例1の制御性能を実験した結果を示す説明図。
【
図10】本発明の実施例2のシステム全体の構成図。
【
図11】本発明の実施例2のコントローラの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
図1に、本発明の昇降・傾斜装置(以下4軸テーブルと称することもある)の概要を示す。
図1において、無人搬送車(移動可能な走行体)10には基台20が搭載され、固定され、基台20上の四隅には第1~第4のアクチュエータ31~34の各固定子が固定されている。
【0025】
第1~第4のアクチュエータ31~34の各出力軸は、それぞれの垂直方向の運動の自由度を有しており、各出力軸の先端部には、該先端部によって支持されるように、荷物搭載用の天板40が配設されている。
【0026】
尚、無人搬送車10は走行駆動用のモータ、天板40の昇降・傾斜用のモータ(アクチュエータ31~34駆動用のモータ)等を備えているが、それらは図示省略している。また、本実施例のアクチュエータ31~34は、一例としてボールねじ機構を採用した。
【0027】
図1の無人搬送車10上に搭載される基台20、第1~第4のアクチュエータ31~34、天板40から成る4軸テーブルの全体の斜視図を
図2に示し、各部の詳細を
図3、
図4に示す。
【0028】
第1のアクチュエータ31の出力軸31aと天板40の接続例を示す
図3において、出力軸31aの先端部には球面座ナット51-1が取り付けられている。
【0029】
球面座ナット51-1と天板40の間には球面座受52-1が配設されている。
【0030】
球面座ナット51-1、球面座受52-1、球面座受52-1の配設位置に対向する天板40の部位には、全ねじ(ねじ)53-1の一端が挿通され、球面座ナット51-1、球面座受52-1、天板40を接続している。
【0031】
前記、球面座ナット51-1、球面座受52-1に代えて球面ジョイントを用いてもよい。
【0032】
図3の接続構成により、天板40が傾く場合でもアクチュエータの出力軸と天板40が接することができ、天板の傾斜を機構的に許容することができる。
【0033】
また、全ねじ53-1によって天板40が崩れ落ちないようになっており、また全ねじ53-1の他端には袋ナット54-1(天板離脱防止具)が被せられており、これによって天板40が全ねじ53-1から外れることは防止される。
【0034】
第2~第4のアクチュエータ32~34についても
図3と同様の接続構成となる。
【0035】
図4は、
図2における天板40と、天板40と各アクチュエータの出力軸との接続部品を除去した構成を示している。
【0036】
図4において、21a,21bは基台20の下方側に互いに所定間隔を隔てて平行に配設された長辺フレーム(アルミフレーム)であり、22aは長辺フレーム21a,21bの一端どうしを結ぶ短辺フレーム、22bは長辺フレーム21a,21bの他端どうしを結ぶ短辺フレームである。
【0037】
これら長辺フレーム21a,21b、短辺フレーム22a,22bによって長方形の枠が形成され、該長方形枠にアルミ板の底板23が配設されている。
【0038】
短辺フレーム22aの両端には、垂直フレーム24a,24bが垂直に立設され、短辺フレーム22bの両端には、垂直フレーム24c,24dが垂直に立設されている。
【0039】
垂直フレーム24a~24dの各上端部を結んで、前記同様に長辺フレーム21c,21d、短辺フレーム22c,22dが配設されて基台20の上方側の長方形枠が形成されている。
【0040】
前記短辺フレーム22a,22cおよび垂直フレーム24a,24bにより形成される枠にはアルミ板の側板25Lが配設され、短辺フレーム22b,22dおよび垂直フレーム24c,24dにより形成される枠にはアルミ板の側板25Rが配設されている。
【0041】
前記底板23の四隅に相当する部位には第1~第4のアクチュエータ31~34が各々配設され、第1~第4のアクチュエータ31~34の各固定子は図示省略のボルトによって底板23に固定されている。
【0042】
第1~第4のアクチュエータ31~34の各出力軸31a~34aの先端側は、基台20の上方側の長辺フレーム21c,21d、短辺フレーム22c,22dで形成される枠から上方に突出されている。
【0043】
次に、本発明の位置制御部を含めた昇降・傾斜装置のシステムの全体の構成を
図5に示す。
図5の太線部分は機械的な接続を示している。
図5において、61は位置制御部の機能を備えたコントローラである。コントローラ61はアクチュエータ31~34に推力を与え、推力の値はアクチュエータ長さの情報をフィードバックすることで定める。
【0044】
コントローラ61の構成を
図6に示す。
図6において65は指令値生成部であり、天板40の中心高さおよび傾斜の指令値を、運動学に基づいて変数変換し、アクチュエータ長さ指令x
cmdを算出する。
【0045】
アクチュエータ長さの応答値xresは、ダイレクトドライブのリニアモータの場合、位置センサで直接計測する。ダイレクトドライブではなくボールねじ等の伝動機構を用いる場合は、リード等の定数を用いてアクチュエータ長さを計算する。アクチュエータ長さの指令値xcmdと応答値xresを基に位置制御器70によって位置制御系を構築し、ダイレクトドライブのリニアモータの場合は推力指令frefをアクチュエータ31~34に加える。
【0046】
また、ボールねじ等の伝動機構を用いる場合は、リード等の定数を用いてモータトルクの指令を計算し、モータに与える。
【0047】
制御系を構成する上で最もシンプルな手法は、各軸のアクチュエータ31~34の各出力軸31a~34aの位置を独立に制御することである。本制御系における推力参照値frefは、一般的な位置制御系として(1)式のように計算される。
【0048】
【0049】
ただし、f
refは推力参照値、C
p(s)は位置制御ゲイン、x
cmdは位置指令値、x
resは位置応答値である。実施例1の制御系のブロック図を
図7に示す。
図7において、コントローラ61内の81はアクチュエータの出力軸の位置指令値x
cmdと出力軸の位置応答値x
resの偏差をとる減算器であり、C
p(s)は位置制御器70の位置制御ゲインである。
【0050】
82は各アクチュエータのモータドライバであり、fa
refはアクチュエータの出力軸の推力を表している。前記推力fa
refと、プラント(天板40および天板上の荷物等)の外乱fextとの偏差が減算器83によってとられ、その偏差には係数付与部84の力-位置変換係数1/Ms2が付与されることで出力軸の位置応答値xresが出力される。
【0051】
図8は天板40における各アクチュエータの位置関係を表し、図中のActuatur1~4は、第1~第4のアクチュエータ31~34の位置を示している。
【0052】
次に、
図8のアクチュエータの番号を用いて、
図6の指令値生成部65および位置制御器70の動作を具体的に説明する。アクチュエータの位置と傾斜を変換する式は(2)式、(3)式として表すことができる。
【0053】
【0054】
【0055】
ただし、モード変数X1は昇降、X2はロール方向(x軸を回転軸とする回転方向)の傾斜、X3はピッチ方向(y軸を回転軸とする回転方向)の傾斜に対応する。
【0056】
モード変数X1=(x1+x2+x3+x4)/4であるが、これは4つのアクチュエータの出力軸の位置の平均となり、天板40の中心の位置に対応する。よってX1を制御することで天板の中心の位置を制御でき、昇降の機能を持たせることができる。
【0057】
モード変数X
2=(x
1-x
2+x
3-x
4)/4はロール方向の傾斜S
xと比例関係X
2=(d
12/2)S
xを満たす。ただしd
12は
図8のアクチュエータ1と2の(各出力軸の)間の距離である。同様にして、モード変数X
3=(x
1+x
2-x
3-x
4)/4はピッチ方向の傾斜S
yと比例関係X
3=(d
13/2)S
yを満たす。ただしd
13は
図8のアクチュエータ1と3の(各出力軸の)間の距離である。
【0058】
モード変数Xから出力軸の位置xの変換については、逆行列T-1をXにかけることでxへ逆変換することができる。
【0059】
これらの関係を用いて
図6における指令値生成部65が実施する中心高さ・傾斜指令[H
cmd,S
x
cmd,S
y
cmd]からアクチュエータ長さ指令x
cmd=[x
1
cmd,x
2
cmd,x
3
cmd,x
4
cmd]までの変数変換は最終的に(4)式、(5)式として表すことができる。
【0060】
【0061】
【0062】
実施例1における位置制御の実験結果を
図9に示す。
図9の実験では、0-4sで昇降、4-8sでロール方向(x軸まわり)傾斜、8-12sでピッチ方向(y軸まわり)傾斜、12-16sで昇降+ロール方向傾斜、16-20sで昇降+ピッチ方向傾斜の制御を行っている。それぞれの区間において所望の機能のみが変動し、かつその応答が指令値に追従している(指令値曲線と応答曲線が一致している)。これらより、所望の機能が独立かつ同時に達成されることが確認できた。
【実施例2】
【0063】
実施例2では、無人搬送車10が傾斜する場合でも天板40を水平に保つ等、無人搬送車10の傾斜がある場合でも傾斜を制御する機能を付加した。実施例2では実施例1のシステムに加え、
図10のように基台20に傾斜センサ90を設置し、傾斜の計測値をコントローラ62にフィードバックする。
【0064】
コントローラ62の構成を
図11に示す。
図11において
図6と同一部分は同一符号をもって示している。実施例1のコントローラ61では水平面上の走行を想定しているため、基台座標系(基台を原点とする直交座標系)の傾斜と世界座標系(地面を原点とする直交座標系)の傾斜が等しいことを仮定している。実施例2ではこれらが異なる場合があるため、指令の計算において世界座標系と基台座標系の座標変換のブロックを加えている。基台20に設置した傾斜センサ90から世界座標系での基台の傾斜を計測することができ、座標変換の計算が可能となる。
【0065】
実施例2(
図11)において実施例1(
図6)と異なる点は、世界座標系の傾斜指令[S
Wx
cmd,S
Wy
cmd]から基台座標系の傾斜指令[S
Bx
cmd,S
By
cmd]へ変換する座標変換部91を追加したことにある。
【0066】
「(世界座標系での天板の傾斜指令[SWx
cmd,SWy
cmd])=(世界座標系での基台の傾斜[SWx
B,SWy
B])+(基台座標系での天板の傾斜指令[SBx
cmd,SBy
cmd])」が成り立つが、これを変形した「(基台座標系での天板の傾斜指令[SBx
cmd,SBy
cmd])=(世界座標系での天板の傾斜指令[SWx
cmd,SWy
cmd])-(世界座標系での基台の傾斜[SWx
B,SWy
B])という式を用いて「基台座標系での天板の傾斜指令[SBx
cmd,SBy
cmd]」を算出する。傾斜は角度に変換してから差をとる必要があるため、具体的には
【0067】
【0068】
として基台座標系での傾斜指令を求めることができる。
【0069】
ただし、(6)式において、SBx
cmdは基台座標系での天板のロール方向の傾斜指令、SBy
cmdは基台座標系での天板のピッチ方向の傾斜指令、SWx
cmdは世界座標系での天板のロール方向の傾斜指令、SWy
cmdは世界座標系での天板のピッチ方向の傾斜指令、SWx
Bは前記傾斜センサにより検出された世界座標系での天板のロール方向の傾斜、SWy
Bは前記傾斜センサにより検出された世界座標系での天板のピッチ方向の傾斜である。
【符号の説明】
【0070】
10…無人搬送車
20…基台
21a~21d…長辺フレーム
22a~22d…短辺フレーム
23…底板
24a~24d…垂直フレーム
25R,25L…側板
31~34…第1~第4のアクチュエータ
31a~34a…出力軸
40…天板
51-1~51-4…球面座ナット
52-1~52-4…球面座受
53-1~53-4…全ねじ
54-1~54-4…袋ナット
61、62…コントローラ
65…指令値生成部
70…位置制御器
81,83…減算器
82…モータドライバ
84…係数付与部
91…座標変換部