(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】産業用制御装置の出力モジュール
(51)【国際特許分類】
G05B 19/05 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
G05B19/05 L
(21)【出願番号】P 2020086672
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】森下 猛
【審査官】仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-257602(JP,A)
【文献】国際公開第95/14304(WO,A1)
【文献】実開昭54-166553(JP,U)
【文献】特開平10-231947(JP,A)
【文献】特開2010-108129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 9/00 ー 9/05
19/04 ー 19/05
H01H 1/00 ー 87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧が与えられる電源端子と外部の負荷に接続される出力端子との間を開閉する出力回路と、前記出力回路の動作を制御する制御部と、を備える産業用制御装置の出力モジュールであって、
前記出力回路は、
前記電源端子および前記出力端子の間に直列接続された複数のスイッチと、
複数の前記スイッチのうち最も前記電源端子側に設けられた前記スイッチであるハイサイドスイッチの端子間を短絡し且つ前記短絡した経路を通じて予め規定されたオフ電流以下の制限電流を流す動作を実行可能な電流出力部と、
を備え、
前記制御部は、
複数の前記スイッチのそれぞれに対応して設けられ、対応する前記スイッチのオンオフを制御する開閉制御部と、
前記電流出力部の動作を制御する動作制御部と、
複数の前記スイッチのそれぞれに対応して設けられ、対応する前記スイッチの低電位側端子の信号である診断信号に基づいて前記スイッチの短絡故障を診断する診断部と、
を備える産業用制御装置の出力モジュール。
【請求項2】
前記診断部は、前記開閉制御部により前記ハイサイドスイッチがオフするように制御されるとともに前記動作制御部により前記電流出力部の動作が停止されるように制御される第1期間と、前記開閉制御部により全ての前記スイッチがオフするように制御されるとともに前記動作制御部により前記電流出力部の動作が実行されるように制御される第2期間と、における前記ハイサイドスイッチに対応する前記診断信号に基づいて、前記ハイサイドスイッチの短絡故障を診断する請求項1に記載の産業用制御装置の出力モジュール。
【請求項3】
前記診断部は、前記開閉制御部により前記ハイサイドスイッチがオフするように且つ前記ハイサイドスイッチよりも前記出力端子側に設けられた前記スイッチであるロウサイドスイッチがオンするように制御されるとともに前記動作制御部により前記電流出力部の動作が実行されるように制御される第3期間と、前記開閉制御部により前記ハイサイドスイッチおよび前記ロウサイドスイッチがオフするように制御されるとともに前記動作制御部により前記電流出力部の動作が実行されるように制御される第4期間と、における前記ロウサイドスイッチに対応する前記診断信号に基づいて、前記ロウサイドスイッチの短絡故障を診断する請求項1または2に記載の産業用制御装置の出力モジュール。
【請求項4】
前記制御部は、2つの制御装置を備え、
2つの前記制御装置のうち一方には、所定の前記スイッチに対応する前記開閉制御部および所定の前記スイッチとは異なる別の前記スイッチに対応する前記診断部が設けられ、
2つの前記制御装置のうち他方には、別の前記スイッチに対応する前記開閉制御部および所定の前記スイッチに対応する前記診断部が設けられる請求項1または2に記載の産業用制御装置の出力モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源電圧が与えられる電源端子と外部の負荷に接続される出力端子との間を開閉する出力回路を備えた産業用制御装置の出力モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、プログラマブルロジックコントローラなどの産業用制御装置では、その産業用制御装置の動作全般を制御するCPUモジュールから与えられる指令に基づいて所定の出力制御を行う出力モジュールが設けられている。なお、本明細書では、プログラマブルロジックコントローラのことをPLCと省略することがある。
【0003】
上記出力制御としては、外部に接続される負荷に対する動力の供給の制御を挙げることができる。このような出力制御を行う出力モジュールは、電源電圧が与えられる電源端子と外部の負荷に接続される出力端子との間を開閉する出力回路を備えている。そして、その出力回路としては、出力制御の多重化を図るため、電源端子と出力端子の間に直列接続され且つ互いに同様にオンオフされる2つのFETなどのスイッチを備えた構成が採用されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PLCの出力モジュールでは、機能安全の観点から、出力回路が負荷に対する動力を遮断するための能力、つまり出力回路をオフするための能力が適切に機能しているかどうかを定期的に検証するといった自己診断の機能が必要となる。そして、上記構成の出力モジュールでは、2つのスイッチが独立してオフできること、言い換えると、2つのスイッチのそれぞれに短絡故障が生じていないこと、を検証しなければならない。そこで、従来では、2つのスイッチのそれぞれを独立して順番にオフすることで上記した診断が行われていた。以下、このような診断の手法を従来技術と称する。
【0006】
従来技術では、各スイッチの低電位側端子の信号を診断信号とし、各スイッチを独立してオフした際に、そのスイッチに対応する診断信号に基づいて短絡故障の発生の有無を診断するようになっている。具体的には、従来技術では、所定のスイッチをオフした際、そのスイッチに対応する診断信号がロウレベルである場合には短絡故障が発生していないと診断される。
【0007】
このような従来技術においては、例えば出力端子側のスイッチであるロウサイドスイッチの短絡故障を診断する際、電源端子側のスイッチであるハイサイドスイッチをオンする必要がある。このとき、ロウサイドスイッチが実際に短絡故障していた場合、ハイサイドスイッチをオンしている期間中に電源端子から出力端子へと至る通電経路が形成されて負荷に対する動力が供給されてしまい、その結果、意図せずに負荷が動作するおそれがある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、出力回路の診断の際に負荷に対して動力が供給されることを防止できる産業用制御装置の出力モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の産業用制御装置の出力モジュールは、電源電圧が与えられる電源端子と外部の負荷に接続される出力端子との間を開閉する出力回路と、出力回路の動作を制御する制御部と、を備える。出力回路は、電源端子および出力端子の間に直列接続された複数のスイッチと、複数のスイッチのうち最も電源端子側に設けられたスイッチであるハイサイドスイッチの端子間を短絡し且つ短絡した経路を通じて予め規定されたオフ電流以下の制限電流を流す動作を実行可能な電流出力部と、を備える。制御部は、複数のスイッチのそれぞれに対応して設けられ、対応するスイッチのオンオフを制御する開閉制御部と、電流出力部の動作を制御する動作制御部と、複数のスイッチのそれぞれに対応して設けられ、対応するスイッチの低電位側端子の信号である診断信号に基づいてスイッチの短絡故障を診断する診断部と、を備える。
【0010】
上記構成において、電流出力部の動作が実行されると、ハイサイドスイッチの端子間が短絡されるため、出力回路は、ハイサイドスイッチがオンされているときと同様の回路状態となる。したがって、上記構成によれば、従来技術においてハイサイドスイッチをオンする必要がある診断、例えば出力端子側のスイッチの短絡故障の診断が行われる際、「ハイサイドスイッチをオンすること」に代えて、「電流出力部の動作を実行すること」を行うようにすることができる。
【0011】
このようにすれば、仮に出力端子側のスイッチに短絡故障が生じていたとしても、電源端子から出力端子へと至る経路に流れる電流は、電流出力部により流される電流、つまりオフ電流以下の制限電流となる。この場合、オフ電流は、負荷が動作可能となる電流の下限値未満の電流として規定すればよい。このような構成によれば、従来技術と同等の出力回路の診断を行うことができるとともに、出力回路の診断の際に負荷に対して動力が供給されること、ひいては負荷が意図せずに動作することを確実に防止することができる。
【0012】
請求項2に記載の産業用制御装置の出力モジュールにおいて、診断部は、第1期間および第2期間におけるハイサイドスイッチに対応する診断信号に基づいて、ハイサイドスイッチの短絡故障を診断する。第1期間は、開閉制御部によりハイサイドスイッチがオフするように制御されるとともに動作制御部により電流出力部の動作が停止されるように制御される期間である。第1期間では、ハイサイドスイッチに対応する診断信号は、ハイサイドスイッチの低電位側端子から診断部へと至る信号経路が電源電圧などが供給される個所に短絡する、いわゆる天絡などの異常が生じておらず且つハイサイドスイッチに短絡故障が生じていなければ、ロウレベルの信号になる。
【0013】
第2期間は、開閉制御部により全てのスイッチがオフするように制御されるとともに動作制御部により電流出力部の動作が実行されるように制御される期間である。第2期間では、ハイサイドスイッチに対応する診断信号は、ハイサイドスイッチの低電位側端子から診断部へと至る信号経路がグランド電位などになっている箇所に短絡する、いわゆる地絡などの異常が生じていなければ、ハイレベルの信号となる。このようなことから、診断部は、第1期間におけるハイサイドスイッチに対応する診断信号がロウレベルであるとともに第2期間におけるハイサイドスイッチに対応する診断信号がハイレベルである場合、ハイサイドスイッチに短絡故障が生じていないと診断することができる。
【0014】
請求項3に記載の産業用制御装置の出力モジュールにおいて、診断部は、第3期間および第4期間におけるロウサイドスイッチに対応する診断信号に基づいて、ロウサイドスイッチの短絡故障を診断する。ロウサイドスイッチは、ハイサイドスイッチよりも出力端子側に設けられたスイッチである。第3期間は、開閉制御部によりハイサイドスイッチがオフするように且つロウサイドスイッチがオンするように制御されるとともに動作制御部により電流出力部の動作が実行されるように制御される期間である。第3期間では、ロウサイドスイッチに対応する診断信号は、ロウサイドスイッチの低電位側端子から診断部へと至る信号経路に地絡などの異常が生じていなければ、ハイレベルの信号になる。
【0015】
第4期間は、開閉制御部によりハイサイドスイッチおよびロウサイドスイッチがオフするように制御されるとともに動作制御部により電流出力部の動作が実行されるように制御される期間である。第4期間では、ロウサイドスイッチに対応する診断信号は、ロウサイドスイッチの低電位側端子から診断部へと至る信号経路に天絡などの異常が生じておらず且つロウサイドスイッチに短絡故障が生じていなければ、ロウレベルの信号となる。このようなことから、診断部は、第3期間におけるロウサイドスイッチに対応する診断信号がハイレベルであるとともに第4期間におけるロウサイドスイッチに対応する診断信号がロウレベルである場合、ロウサイドスイッチに短絡故障が生じていないと診断することができる。
【0016】
請求項4に記載の産業用制御装置の出力モジュールにおいて、制御部は、2つの制御装置を備える。これら2つの制御装置のうち一方には、所定のスイッチに対応する開閉制御部および所定のスイッチとは異なる別のスイッチに対応する診断部が設けられる。また、2つの制御装置のうち他方には、別のスイッチに対応する開閉制御部および所定のスイッチに対応する診断部が設けられる。このような構成によれば、次のような効果が得られる。
【0017】
すなわち、所定のスイッチが故障しておらず正常であれば、その所定のスイッチに対応する診断信号は、その所定のスイッチを開閉制御するために開閉制御部から出力される制御信号と同じ論理を表す信号になる。そのため、所定のスイッチに対応する開閉制御部および診断部を同一の制御装置に設ける構成とした場合、制御信号を出力する端子と診断信号を入力する端子とが近接した配置となる可能性がある。そして、それらの端子間が短絡するショート故障が発生した場合、所定のスイッチの故障有無にかかわらず、制御信号と診断信号とが同じ論理を表すようになってしまい、所定のスイッチに故障が生じた場合でも正常であると誤診断されるおそれがある。
【0018】
これに対し、上記した構成では、各スイッチに対応する開閉制御部および診断部が互いに別々の制御装置に設けられるようになっているため、所定のスイッチまたは別のスイッチに対応する制御信号を出力する端子と所定のスイッチに対応する診断信号を入力する端子とが近接した配置になることはなく、それらの端子間がショート故障する可能性が極めて低くなり、上述した誤診断の発生を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係るPLCの構成を模式的に示す図
【
図2】第1実施形態に係る故障診断に関する具体的な処理内容を模式的に示す図その1
【
図3】第1実施形態に係る故障診断に関する具体的な処理内容を模式的に示す図その2
【
図4】第1実施形態に係る第1期間における出力回路の状態を説明するための図
【
図5】第1実施形態に係る第2期間における出力回路の状態を説明するための図
【
図6】第1実施形態に係る第3期間における出力回路の状態を説明するための図
【
図7】第1実施形態に係る第4期間における出力回路の状態を説明するための図
【
図8】第2実施形態に係るPLCの構成を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について
図1~
図7を参照して説明する。
【0021】
図1に示すように、産業用制御装置であるPLC1は、その動作全般を制御するCPUモジュール2、出力モジュール3、図示しない入力モジュールなどを備えている。PLC1は、例えば産業用のロボットなどに設けられたモータMの動作を制御する。CPUモジュール2および出力モジュール3を含めたPLC1を構成する各モジュールは、バス通信ラインを介して、それぞれの間で通信可能に構成されている。
【0022】
出力モジュール3は、CPUモジュール2から与えられる指令に基づいて負荷であるソレノイド4に対する動力、より具体的には電源電圧Vaの供給を制御する。ソレノイド4は、後述する出力端子P2と0Vであるグランドとの間に接続されたコイル4aと、コイル4aに通電されることで閉じられる接点4bと、を備えている。接点4bは、モータMに対する給電経路を開閉するように設けられている。
【0023】
出力モジュール3は、例えば+24Vの電源電圧Vaが与えられる電源端子P1、外部のソレノイド4に接続される出力端子P2、出力回路5および制御部6を備えるデジタル出力モジュールである。出力回路5は、電源端子P1と出力端子P2との間を開閉するものであり、2つのスイッチSWH、SWLおよび電流出力部7を備えている。スイッチSWH、SWLは、電源端子P1および出力端子P2の間に直列接続されている。
【0024】
スイッチSWHは、2つのスイッチSWH、SWLのうち最も電源端子P1側に設けられたスイッチであり、ハイサイドスイッチに相当する。また、スイッチSWLは、2つのスイッチSWH、SWLのうちハイサイドスイッチよりも出力端子P2側に設けられたスイッチであり、ロウサイドスイッチに相当する。本実施形態では、スイッチSWH、SWLは、例えばMOSFETなどの半導体スイッチング素子である。なお、スイッチSWH、SWLは、例えば機械式のリレーなどであってもよい。
【0025】
スイッチSWHは、制御部6から与えられる2値の制御信号Saに従って開閉される、つまりオンオフされる。具体的には、スイッチSWHは、制御信号Saがハイレベルのときにオンされるとともにロウレベルのときにオフされる。スイッチSWLは、制御部6から与えられる制御信号Sbに従って開閉される、つまりオンオフされる。具体的には、スイッチSWLは、制御信号Sbがハイレベルのときにオンされるとともにロウレベルのときにオフされる。出力モジュール3が通常の動作を実行する通常時、制御信号Sa、Sbは同様の信号となっており、これによりスイッチSWH、SWLは、互いに同様にオンオフされる。
【0026】
電流出力部7は、一定の電流を出力する定電流源であり、電源端子P1とスイッチSWH、SWLの相互接続ノードであるノードN1との間に接続されている。つまり、電流出力部7は、スイッチSWHに並列接続されている。電流出力部7は、電流を出力する動作の実行および停止を切り替えること、つまりその動作をオンオフすることができる構成となっている。電流出力部7の動作は、制御部6から与えられる制御信号Scにより制御される。具体的には、電流出力部7は、制御信号Scがハイレベルのときに電流の出力動作を実行するとともに、制御信号Scがロウレベルのときに電流の出力動作を停止する。
【0027】
電流出力部7が動作を実行している期間、スイッチSWHの端子間が短絡されることになる。電流出力部7により出力される電流は、予め規定されたオフ電流以下の制限電流に設定されている。オフ電流は、接点4bが閉じてソレノイド4が動作可能となる電流の下限値未満の電流として予め規定されている。なお、上記電流の下限値は、例えば0.5mA程度の値となる。上記構成の電流出力部7は、スイッチSWHの端子間を短絡し且つ短絡した経路を通じてオフ電流以下の制限電流を流す動作を実行可能であると言える。
【0028】
上記構成の出力回路5において、ノードN1、つまりスイッチSWHの低電位側端子の信号は、出力回路5の故障診断のためのリードバック信号である診断信号Sdとして制御部6に与えられる。また、上記構成の出力回路5において、出力端子P2、つまりスイッチSWLの低電位側端子の信号は、出力回路5の故障診断のためのリードバック信号である診断信号Seとして制御部6に与えられる。
【0029】
制御部6は、出力回路5の動作を制御するものであり、MCU11、12を備えている。なお、MCUは、Micro Controller Unitの略称である。MCU11、12は、制御装置に相当するものであり、例えばICとして構成されている。なお、ICは、Integrated Circuitの略称である。この場合、2つのスイッチSWH、SWLのそれぞれに対応するように2つのMCU11、12が設けられている。つまり、この場合、機能安全の観点から、2つのスイッチSWH、SWLは、2つのMCU11、12により独立して制御されるようになっている。
【0030】
MCU11は、開閉制御部13、動作制御部14および診断部15を備えている。開閉制御部13、動作制御部14および診断部15は、MCU11のCPUがROMに格納されているコンピュータプログラムを実行してコンピュータプログラムに対応する処理を実行することにより実現されている、つまりソフトウェアにより実現されている。なお、開閉制御部13、動作制御部14および診断部15は、ハードウェア、または、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現することもできる。
【0031】
開閉制御部13は、スイッチSWHのオンオフを制御するものであり、前述した制御信号Saを生成する。制御信号Saは、MCU11が備える出力端子を介してスイッチSWHへと出力される。動作制御部14は、電流出力部7の動作を制御するものであり、前述した制御信号Scを生成する。制御信号Scは、MCU11が備える出力端子を介して電流出力部7へと出力される。
【0032】
診断部15は、診断信号Seに基づいてスイッチSWLの短絡故障を診断する。診断信号Seは、MCU11が備える入力端子を介して診断部15へと入力される。この場合、診断信号Seの入力端子には、グランドに接続されるプルダウン抵抗が設けられている。具体的には、診断部15は、MCU11に内蔵されるA/D変換器を介して入力される診断信号Seのレベルを検出し、その検出結果に基づいてスイッチSWLの短絡故障を診断する。
【0033】
MCU12は、開閉制御部16および診断部17を備えている。開閉制御部16および診断部17は、MCU12のCPUがROMに格納されているコンピュータプログラムを実行してコンピュータプログラムに対応する処理を実行することにより実現されている、つまりソフトウェアにより実現されている。なお、開閉制御部16および診断部17は、ハードウェア、または、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現することもできる。
【0034】
開閉制御部16は、スイッチSWLのオンオフを制御するものであり、前述した制御信号Sbを生成する。制御信号Sbは、MCU12が備える出力端子を介してスイッチSWLへと出力される。診断部17は、診断信号Sdに基づいてスイッチSWHの短絡故障を診断する。診断信号Sdは、MCU12が備える入力端子を介して診断部17へと入力される。この場合、診断信号Sdの入力端子には、グランドに接続されるプルダウン抵抗が設けられている。具体的には、診断部17は、MCU12に内蔵されるA/D変換器を介して入力される診断信号Sdのレベルを検出し、その検出結果に基づいてスイッチSWHの短絡故障を診断する。
【0035】
このように、制御部6は、スイッチSWH、SWLのそれぞれに対応して設けられた開閉制御部13、16およびスイッチSWH、SWLのそれぞれに対応して設けられた診断部15、17を備えている。この場合、MCU11、12のうち一方であるMCU11には、スイッチSWHに対応する開閉制御部13およびスイッチSWHとは異なる別のスイッチであるスイッチSWLに対応する診断部15が設けられている。また、この場合、MCU11、12のうち他方であるMCU12には、スイッチSWLに対応する開閉制御部16およびスイッチSWHに対応する診断部17が設けられている。
【0036】
診断部17は、第1期間に相当する期間T1における診断信号Sdおよび第2期間に相当する期間T2における診断信号Sdに基づいてスイッチSWHの短絡故障を診断する。期間T1は、開閉制御部13、16によりスイッチSWH、SWLがオフするように制御されるとともに動作制御部14により電流出力部7の動作が停止されるように制御される期間である。なお、期間T1では、開閉制御部16によりスイッチSWLがオンするように制御されてもよい。期間T2は、開閉制御部13、16により全てのスイッチSWH、SWLがオフするように制御されるとともに動作制御部14により電流出力部7の動作が実行されるように制御される期間である。
【0037】
診断部15は、第3期間に相当する期間T3における診断信号Seおよび第4期間に相当する期間T4における診断信号Seに基づいてスイッチSWLの短絡故障を診断する。期間T3は、開閉制御部13によりスイッチSWHがオフするように且つ開閉制御部16によりスイッチSWLがオンするように制御されるとともに動作制御部14により電流出力部7の動作が実行されるように制御される期間である。期間T4は、開閉制御部13、16によりスイッチSWH、SWLがオフするように制御されるとともに動作制御部14により電流出力部7の動作が実行されるように制御される期間である。本実施形態では、診断部15によるスイッチSWLの短絡故障の診断に先立って、診断部17によるスイッチSWHの短絡故障の診断が行われるようになっている。
【0038】
次に、本実施形態の診断部15、17によるスイッチSWH、SWLの故障診断に関する具体的な処理内容について、
図2~
図7を参照して説明する。なお、
図2~
図7では、制御信号Sa、Sb、Scおよび診断信号Sd、Seについて、ハイレベルを「H」と表すとともにロウレベルを「L」と表している。また、
図2および
図3の間は、結合子Aを通じて処理が継続するようになっている。
【0039】
本診断に関する処理が開始されると、まずステップS101が実行される。ステップS101では、制御信号Sa、Sb、Scがいずれもロウレベルとされる。ステップS101が実行されることにより、
図4に示すように、スイッチSWH、SWLがオフするように制御されるとともに、電流出力部7の動作が停止されるように制御される。このようにスイッチSWH、SWLの開閉および電流出力部7の動作が制御される期間は、前述した期間T1に対応する。
【0040】
このような期間T1では、診断部17により検出される診断信号Sdは、スイッチSWHの低電位側端子からMCU12の診断部17へと至る信号経路が電源電圧Vaなどが供給される個所に短絡する、いわゆる天絡などの異常が生じておらず且つスイッチSWHに短絡故障が生じていなければ、ロウレベルになるはずである。ここでは、このような点を踏まえて次のように診断が進められる。すなわち、ステップS101の実行後はステップS102が実行される。ステップS102では、診断信号Sdがロウレベルであるか否かが判断される。
【0041】
ここで、診断信号Sdがロウレベルではない場合、つまり診断信号Sdがハイレベルである場合、ステップS102で「NO」となり、ステップS103に進む。この場合、診断信号Sdの信号経路に天絡などが生じているか、またはスイッチSWHに短絡故障が生じていることから、診断信号Sdが正常にロウレベルにならず、ひいては診断部17が診断信号Sdのロウレベルを検出することができない異常が生じていると考えられる。そのため、ステップS103では、診断信号Sdに基づいた診断を正常に行うことができない、つまり診断部17による診断機能に異常があると判断される。ステップS103の実行後、本診断に関する処理が終了となる。
【0042】
一方、診断信号Sdがロウレベルである場合、ステップS102で「YES」となり、ステップS104に進む。ステップS104では、期間T1において診断信号Sdが正常にロウレベルになり、ひいては診断部17が診断信号Sdのロウレベルを検出することができると判断される。ステップS104の実行後はステップS105が実行される。ステップS105では、制御信号Sa、Sbがいずれもロウレベルとされるとともに、制御信号Scがハイレベルとされる。
【0043】
ステップS105が実行されることにより、
図5に示すように、スイッチSWH、SWLがオフするように制御されるとともに、電流出力部7の動作が実行されるように制御される。このようにスイッチSWH、SWLの開閉および電流出力部7の動作が制御される期間は、前述した期間T2に対応する。このような期間T2では、診断部17により検出される診断信号Sdは、スイッチSWHの低電位側端子からMCU12の診断部17へと至る信号経路がグランド電位などになっている箇所に短絡する、いわゆる地絡などの異常が生じていなければ、電流出力部7から出力される制限電流がプルダウン抵抗に流れることによりハイレベルになるはずである。ここでは、このような点を踏まえて次のように診断が進められる。
【0044】
すなわち、ステップS105の実行後はステップS106が実行される。ステップS106では、診断信号Sdがハイレベルであるか否かが判断される。ここで、診断信号Sdがハイレベルではない場合、つまり診断信号Sdがロウレベルである場合、ステップS106で「NO」となり、ステップS103に進む。この場合、診断信号Sdの信号経路に地絡などが生じていることから、診断信号Sdが正常にハイレベルにならず、ひいては診断部17が診断信号Sdのハイレベルを検出することができない異常が生じていると考えられる。そのため、ステップS103では、診断信号Sdに基づいた診断を正常に行うことができない、つまり診断部17による診断機能に異常があると判断される。
【0045】
一方、診断信号Sdがハイレベルである場合、ステップS106で「YES」となり、ステップS107に進む。ステップS107では、期間T2において診断信号Sdが正常にハイレベルになり、ひいては診断部17が診断信号Sdのハイレベルを検出することができると判断される。ステップS107の実行後はステップS108が実行される。ステップS108では、ステップS101と同様、制御信号Sa、Sb、Scがいずれもロウレベルとされる。
【0046】
そのため、ステップS108が実行されることにより、スイッチSWH、SWLの開閉および電流出力部の動作は、
図4に示した期間T1と同様に制御される。ステップS108の実行後はステップS109が実行される。ステップS109では、診断信号Sdがロウレベルであるか否かが判断される。ここで、診断信号Sdがロウレベルではない場合、つまり診断信号Sdがハイレベルである場合、ステップS109で「NO」となり、ステップS110に進む。
【0047】
この場合、ステップS102で「YES」となっていることから、診断信号Sdの信号経路に天絡などが生じている可能性が排除されることになる。そのため、ステップS110では、スイッチSWHに短絡故障、つまり閉固着が生じていると判断される。ステップS110の実行後、本診断に関する処理が終了となる。一方、診断信号Sdがロウレベルである場合、ステップS109で「YES」となり、ステップS111に進む。ステップS111では、スイッチSWHに短絡故障が生じておらず、スイッチSWHを正常にオンする、つまり正常に開くことができると判断される。
【0048】
期間T1では、診断部15により検出される診断信号Seは、スイッチSWLの低電位側端子からMCU11の診断部15へと至る信号経路が電源電圧Vaなどが供給される個所に短絡する、いわゆる天絡などの異常が生じておらず且つスイッチSWLに短絡故障が生じていなければ、ロウレベルになるはずである。ここでは、このような点を踏まえて次のように診断が進められる。すなわち、ステップS111の実行後は、
図3に示すステップS112が実行される。ステップS112では、診断信号Seがロウレベルであるか否かが判断される。
【0049】
ここで、診断信号Seがロウレベルではない場合、つまり診断信号Seがハイレベルである場合、ステップS112で「NO」となり、ステップS113に進む。この場合、診断信号Seの信号経路に天絡などが生じているか、またはスイッチSWLに短絡故障が生じていることから、診断信号Seが正常にロウレベルにならず、ひいては診断部15が診断信号Seのロウレベルを検出することができない異常が生じていると考えられる。そのため、ステップS113では、診断信号Seに基づいた診断を正常に行うことができない、つまり診断部15による診断機能に異常があると判断される。ステップS113の実行後、本診断に関する処理が終了となる。
【0050】
一方、診断信号Seがロウレベルである場合、ステップS112で「YES」となり、ステップS114に進む。ステップS114では、期間T1において診断信号Seが正常にロウレベルになり、ひいては診断部15が診断信号Seのロウレベルを検出することができると判断される。ステップS114の実行後はステップS115が実行される。ステップS115では、制御信号Saがロウレベルとされるとともに、制御信号Sb、Scがいずれもハイレベルとされる。
【0051】
ステップS115が実行されることにより、
図6に示すように、スイッチSWHがオフするとともにスイッチSWLがオンするように制御され、また、電流出力部7の動作が実行されるように制御される。このようにスイッチSWH、SWLの開閉および電流出力部7の動作が制御される期間は、前述した期間T3に対応する。このような期間T3では、診断部15により検出される診断信号Seは、スイッチSWLの低電位側端子からMCU11の診断部15へと至る信号経路に地絡などが生じていなければ、電流出力部7から出力される制限電流がプルダウン抵抗に流れることによりハイレベルになるはずである。ここでは、このような点を踏まえて次のように診断が進められる。
【0052】
すなわち、ステップS115の実行後はステップS116が実行される。ステップS116では、診断信号Seがハイレベルであるか否かが判断される。ここで、診断信号Seがハイレベルではない場合、つまり診断信号Seがロウレベルである場合、ステップS116で「NO」となり、ステップS113に進む。この場合、診断信号Seの信号経路に地絡などが生じていることから、診断信号Seが正常にハイレベルにならず、ひいては診断部15が診断信号Seのハイレベルを検出することができない異常が生じていると考えられる。そのため、ステップS113では、診断信号Seに基づいた診断を正常に行うことができない、つまり診断部15による診断機能に異常があると判断される。
【0053】
なお、期間T3では、電流出力部7の動作に伴い、電源端子P1から出力端子P2を経由してソレノイド4に向けてリーク電流が流れる。このリーク電流は、電流出力部7が出力する制限電流に対応した電流となる。前述したように、電流出力部7により出力される電流は、ソレノイド4が動作可能となる電流の下限値未満のオフ電流以下の制限電流に設定されている。そのため、期間T3において、ソレノイド4が動作することはない。一方、診断信号Seがハイレベルである場合、ステップS116で「YES」となり、ステップS117に進む。
【0054】
ステップS117では、期間T3において診断信号Seが正常にハイレベルになり、ひいては診断部15が診断信号Seのハイレベルを検出することができると判断される。ステップS117の実行後はステップS118が実行される。ステップS118では、制御信号Sa、Sbがいずれもロウレベルとされるとともに、制御信号Scがハイレベルとされる。ステップS118が実行されることにより、
図7に示すように、スイッチSWH、SWLがオフするように制御されるとともに、電流出力部7の動作が実行されるように制御される。
【0055】
このようにスイッチSWH、SWLの開閉および電流出力部7の動作が制御される期間は、前述した期間T4に対応する。このような期間T4では、診断部15により検出される診断信号Seは、スイッチSWLの低電位側端子から診断部15へと至る信号経路に天絡などが生じておらず且つスイッチSWLに短絡故障が生じていなければ、ロウレベルになるはずである。ここでは、このような点を踏まえて次のように診断が進められる。
【0056】
すなわち、ステップS118の実行後はステップS119が実行される。ステップS119では、診断信号Seがロウレベルであるか否かが判断される。ここで、診断信号Seがロウレベルではない場合、つまり診断信号Seがハイレベルである場合、ステップS119で「NO」となり、ステップS120に進む。この場合、ステップS112で「YES」となっていることから、診断信号Seの信号経路に天絡などが生じている可能性が排除されることになる。
【0057】
そのため、ステップS120では、スイッチSWLに短絡故障、つまり閉固着が生じていると判断される。ステップS120の実行後、本診断に関する処理が終了となる。一方、診断信号Seがロウレベルである場合、ステップS119で「YES」となり、ステップS121に進む。ステップS121では、スイッチSWLに短絡故障が生じておらず、スイッチSWLを正常にオンする、つまり正常に開くことができると判断される。ステップS121の実行後、本診断に関する処理が終了となる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の構成によれば、電流出力部7の動作が実行されると、ハイサイドスイッチであるスイッチSWHの端子間が短絡されるため、出力回路5は、スイッチSWHがオンされているときと同様の回路状態となる。したがって、上記構成によれば、従来技術においてハイサイドスイッチをオンする必要がある診断、例えばロウサイドスイッチの短絡故障の診断が行われる際、「ハイサイドスイッチであるスイッチSWHをオンすること」に代えて、「電流出力部7の動作を実行すること」を行うようにすることができる。
【0059】
このようにすれば、仮にロウサイドスイッチであるスイッチSWLに短絡故障が生じていたとしても、電源端子P1から出力端子P2へと至る経路に流れる電流は、電流出力部7により流される電流、つまりオフ電流以下の制限電流となる。この場合、オフ電流は、ソレノイド4が動作可能となる電流の下限値未満の電流として規定されている。このような構成によれば、従来技術と同等の出力回路5の診断を行うことができるとともに、出力回路5の診断の際にソレノイド4に対して動力が供給されること、ひいてはソレノイド4が意図せずに動作することを確実に防止することができる。
【0060】
診断部17は、期間T1および期間T2におけるスイッチSWHに対応する診断信号Sdに基づいてスイッチSWHの短絡故障を診断する。期間T1は、スイッチSWHがオフするように制御されるとともに電流出力部7の動作が停止されるように制御される期間である。期間T1では、診断信号Sdは、スイッチSWHの低電位側端子から診断部17へと至る信号経路に天絡などの異常が生じておらず且つスイッチSWHに短絡故障が生じていなければ、ロウレベルの信号になる。
【0061】
期間T2は、スイッチSWH、SWLがオフするように制御されるとともに電流出力部7の動作が実行されるように制御される期間である。期間T2では、診断信号Sdは、スイッチSWHの低電位側端子から診断部17へと至る信号経路に地絡などの異常が生じていなければ、ハイレベルの信号となる。このようなことから、診断部17は、期間T1における診断信号Sdがロウレベルであるとともに期間T2における診断信号Sdがハイレベルである場合、スイッチSWHに短絡故障が生じていないと診断することができる。
【0062】
診断部15は、期間T3および期間T4におけるスイッチSWLに対応する診断信号Seに基づいてスイッチSWLの短絡故障を診断する。期間T3は、スイッチSWHがオフするように且つスイッチSWLがオンするように制御されるとともに電流出力部7の動作が実行されるように制御される期間である。期間T3では、診断信号Seは、スイッチSWLの低電位側端子から診断部15へと至る信号経路に地絡などの異常が生じていなければ、ハイレベルの信号になる。
【0063】
期間T4は、スイッチSWH、SWLがオフするように制御されるとともに電流出力部7の動作が実行されるように制御される期間である。期間T4では、診断信号Seは、スイッチSWLの低電位側端子から診断部15へと至る信号経路に天絡などの異常が生じておらず且つスイッチSWLに短絡故障が生じていなければ、ロウレベルの信号となる。このようなことから、診断部15は、期間T3における診断信号Seがハイレベルであるとともに期間T4における診断信号Seがロウレベルである場合、スイッチSWLに短絡故障が生じていないと診断することができる。
【0064】
上記構成において、診断信号Sd、Seは、その信号経路に含まれる配線などの断線や短絡、それらを出力するためのMCU11、12の出力端子での短絡、それらを出力するためのMCU11、12の内部回路の故障などにより、正常なレベルを表すことができなくなるおそれがある。このような診断信号Sd、Seの異常としては、そのレベルがハイレベルに固定されるハイ固着、ロウレベルに固定されるロウ固着などが挙げられる。
【0065】
このように診断信号Sd、Seに異常が生じていると、それらに基づいて行われる診断部15、17による診断を正常に行うことができなくなり、その結果、スイッチSWH、SWLの短絡故障について誤診断をしてしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、最初に診断信号Sd、Seに異常が無いこと、言い換えると最初に診断部15、17による診断機能に異常が無いことを確認したうえで、スイッチSWH、SWLの短絡故障を診断するようになっている。このようにすれば、診断信号Sd、Seの異常に起因する誤診断の発生を確実に防止することができる。
【0066】
上記構成において、スイッチSWHの短絡故障の診断は、スイッチSWLに短絡故障が生じているか否かとは無関係に行うことが可能であるものの、スイッチSWLの短絡故障の診断は、スイッチSWHに短絡故障が生じている場合には、その故障の影響を受けて、診断精度が低下するおそれがある。そこで、本実施形態では、診断部15によるロウサイドスイッチであるスイッチSWLの短絡故障の診断に先立って、診断部17によるハイサイドスイッチであるスイッチSWHの短絡故障の診断が行われるようになっている。このようにすれば、スイッチSWLの短絡故障の診断が行われるときには、既にスイッチSWHに短絡故障が生じていないことが確認されていることになり、その診断精度を良好に維持することができる。
【0067】
上記構成において、制御部6は、2つのMCU11、12を備えている。そして、MCU11には、スイッチSWHに対応する開閉制御部13およびスイッチSWLに対応する診断部15が設けられる。また、MCU12には、スイッチSWLに対応する開閉制御部16およびスイッチSWHに対応する診断部17が設けられる。このような構成によれば、次のような効果が得られる。
【0068】
すなわち、例えばスイッチSWHが故障しておらず正常であれば、そのスイッチSWHに対応する診断信号Sdは、そのスイッチSWHを開閉制御するために開閉制御部13から出力される制御信号Saと同じ論理を表す信号になる。ここで、仮にスイッチSWHに対応する開閉制御部13および診断部17を同一のMCUに設ける構成とした場合、制御信号Saを出力する出力端子と診断信号Sdを入力する入力端子とが近接した配置となる可能性がある。
【0069】
そうすると、それらの端子間が短絡するショート故障が発生する可能性が高くなり、実際にショート故障が発生した場合には、スイッチSWHに故障が生じているか否かにかかわらず、制御信号Saと診断信号Sdとが同じ論理を表すようになってしまい、スイッチSWHに故障が生じた場合でも正常であると誤診断されるおそれがある。これに対し、本実施形態の構成では、スイッチSWHに対応する開閉制御部13および診断部17が互いに別々のMCU11、12に設けられるようになっているため、スイッチSWHに対応する制御信号Saを出力する出力端子とスイッチSWHに対応する診断信号Sdを入力する入力端子とが近接した配置になることはない。
【0070】
また、本実施形態の構成では、スイッチSWLに対応する開閉制御部16および診断部15が互いに別々のMCU11、12に設けられるようになっているため、スイッチSWLに対応する制御信号Sbを出力する出力端子とスイッチSWLに対応する診断信号Seを入力する入力端子とが近接した配置になることはない。したがって、本実施形態の構成によれば、制御信号Saの出力端子と診断信号Sdの入力端子との間でのショート故障および制御信号Sbの出力端子と診断信号Seの入力端子との間でのショート故障が発生し難くなり、その結果、上述した誤診断の発生を低く抑えることができる。
【0071】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について
図8を参照して説明する。
図8に示すように、本実施形態のPLC21の出力モジュール22は、第1実施形態の出力モジュール3に対し、出力回路5に代えて出力回路23を備えている点、制御部6に代えて制御部24を備えている点などが異なる。
【0072】
出力回路23は、出力回路5に対し、スイッチSWMが追加されている点などが異なる。この場合、スイッチSWH、SWM、SWLは、電源端子P1および出力端子P2の間に、この順で直列接続されている。スイッチSWMは、ハイサイドスイッチに相当するスイッチSWHよりも出力端子P2側に設けられたスイッチであり、ロウサイドスイッチに相当する。
【0073】
スイッチSWHは、第1実施形態と同様、制御部24から与えられる2値の制御信号Saに従ってオンオフされる。スイッチSWMは、制御部24から与えらえる2値の制御信号Sfに従ってオンオフされる。具体的には、スイッチSWMは、制御信号Sfがハイレベルのときにオンされるとともにロウレベルのときにオフされる。スイッチSWLは、第1実施形態と同様、制御部24から与えられる2値の制御信号Sbに従ってオンオフされる。出力モジュール22が通常の動作を実行する通常時、制御信号Sa、Sb、Sfは同様の信号となっており、これによりスイッチSWH、SWM、SWLは、互いに同様にオンオフされる。
【0074】
この場合、電流出力部7は、電源端子P1とスイッチSWH、SWMの相互接続ノードであるノードN21との間に接続されている。つまり、この場合も、電流出力部7は、スイッチSWHに並列接続されている。上記構成の出力回路23において、ノードN21、つまりスイッチSWHの低電位側端子の信号は、第1実施形態と同様の診断信号Sdとして制御部24に与えられる。
【0075】
また、上記構成の出力回路23において、スイッチSWM、SWLの相互接続ノードであるノードN22、つまりスイッチSWMの低電位側端子の信号は、出力回路23の故障診断のためのリードバック信号である診断信号Sgとして制御部24に与えられる。さらに、上記構成の出力回路23において、出力端子P2、つまりスイッチSWLの低電位側端子の信号は、第1実施形態と同様の診断信号Seとして制御部24に与えられる。
【0076】
制御部24は、制御部6に対し、MCU11、12に代えてMCU25、26を備えている点などが異なる。MCU25は、MCU11に対し、開閉制御部13に代えて開閉制御部27を備える点などが異なる。開閉制御部27は、開閉制御部13と同様、スイッチSWHのオンオフを制御する。この場合、開閉制御部27は、スイッチSWLの動作も制御するようになっており、制御信号Sbを生成する。制御信号Sbは、MCU25が備える出力端子を介してスイッチSWLへと出力される。
【0077】
MCU26は、MCU12に対し、開閉制御部16に代えて開閉制御部28を備える点、診断部17に代えて診断部29を備える点などが異なる。開閉制御部28は、スイッチSWMのオンオフを制御するものであり、前述した制御信号Sfを生成する。制御信号Sfは、MCU26が備える出力端子を介してスイッチSWMへと出力される。診断部29は、診断部17と同様、診断信号Sdに基づいてスイッチSWHの短絡故障を診断する。また、診断部29は、診断信号Sgに基づいてスイッチSWMの短絡故障を診断する。
【0078】
診断信号Sgは、MCU26が備える入力端子を介して診断部29へと入力される。この場合、診断信号Sgの入力端子には、グランドに接続されるプルダウン抵抗が設けられている。具体的には、診断部29は、MCU26に内蔵されるA/D変換器を介して入力される診断信号Sgのレベルを検出し、その検出結果に基づいてスイッチSWMの短絡故障を診断する。
【0079】
診断部29は、第1期間に相当する期間T21における診断信号Sdおよび第2期間に相当する期間T22における診断信号Sdに基づいてスイッチSWHの短絡故障を診断する。期間T21は、開閉制御部27、28によりスイッチSWH、SWM、SWLがオフするように制御されるとともに動作制御部14により電流出力部7の動作が停止されるように制御される期間である。期間T22は、開閉制御部27、28によりスイッチSWH、SWM、SWLがオフするように制御されるとともに動作制御部14により電流出力部7の動作が実行されるように制御される期間である。
【0080】
また、診断部29は、第3期間に相当する期間T23における診断信号Sgおよび第4期間に相当する期間T24における診断信号Sgに基づいてスイッチSWMの短絡故障を診断する。期間T23は、開閉制御部27、28によりスイッチSWH、SWLがオフするように且つスイッチSWMがオンするように制御されるとともに動作制御部14により電流出力部7の動作が実行されるように制御される期間である。期間T24は、開閉制御部27、28によりスイッチSWH、SWM、SWLがオフするように制御されるとともに動作制御部14により電流出力部7の動作が実行されるように制御される期間である。
【0081】
診断部15は、第3期間に相当する期間T25における診断信号Seおよび第4期間に相当する期間T26における診断信号Seに基づいてスイッチSWLの短絡故障を診断する。期間T25は、開閉制御部27、28によりスイッチSWHがオフするように且つスイッチSWM、SWLがオンするように制御されるとともに動作制御部14により電流出力部7の動作が実行されるように制御される期間である。期間T26は、開閉制御部27、28によりスイッチSWH、SWM、SWLがオフするように制御されるとともに動作制御部14により電流出力部7の動作が実行されるように制御される期間である。
【0082】
本実施形態では、診断部29によるスイッチSWMの短絡故障の診断に先立って、診断部29によるスイッチSWHの短絡故障の診断が行われるようになっている。また、本実施形態では、診断部15によるスイッチSWLの短絡故障の診断に先立って、診断部29によるスイッチSWMの短絡故障の診断が行われるようになっている。
【0083】
このような診断部15、29によるスイッチSWH、SWM、SWLの故障診断に関する具体的な処理内容は、
図2および
図3に示した第1実施形態の診断部15、17による処理内容に対し、スイッチSWMに対応する処理を加えたものとなる。スイッチSWMに対応する処理は、
図3に示したスイッチSWLに対応する処理と同様の内容の処理とすることができる。スイッチSWMに対応する処理は、
図2に示した処理、つまりスイッチSWHに対応する処理に続いて実行するようにすればよい。
【0084】
以上説明した本実施形態の構成によれば、第1実施形態の構成に対し、電源端子P1と出力端子P2との間を開閉するスイッチの数が2つから3つに増えているものの、このようなスイッチの増加に合わせる形で短絡故障を診断するための機能に変更が加えられている。したがって、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の診断手法を採用することが可能となり、その結果、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0085】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記各実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
【0086】
MCU11が備える各機能ブロックのうち少なくとも一部をMCU12に設けてもよい。MCU12が備える各機能ブロックのうち少なくとも一部をMCU11に設けてもよい。例えば、MCU11が開閉制御部13および診断部17を備えるとともに、MCU12が開閉制御部16、動作制御部14および診断部17を備える構成としてもよい。
【0087】
MCU25が備える各機能ブロックのうち少なくとも一部をMCU26に設けてもよい。MCU26が備える各機能ブロックのうち少なくとも一部をMCU25に設けてもよい。例えば、MCU25が開閉制御部28および診断部29を備えるとともに、MCU26が開閉制御部27、動作制御部14および診断部15を備える構成としてもよい。
【0088】
第1実施形態における診断部15、17による故障診断および第2実施形態における診断部15、29による故障診断に関する具体的な処理内容については、
図2および
図3に示すものに限らず、適宜変更することができる。例えば、診断部15、17による故障診断について、スイッチSWHの短絡故障の診断に先立ってスイッチSWLの短絡故障の診断を行うように変更してもよい。
【0089】
電源端子P1と出力端子P2との間を開閉するスイッチの数は、2つまたは3つに限らず、4つ以上であってもよい。その場合、スイッチの数に合わせる形で短絡故障を診断するための機能に変更を加えればよい。
本発明は、PLC1、21の出力モジュール3、22などに限らず、電源電圧が与えられる電源端子と外部の負荷に接続される出力端子との間を開閉する出力回路を備えた産業用制御装置の出力モジュール全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1、21…PLC、3、22…出力モジュール、4…ソレノイド、5、23…出力回路、6、24…制御部、7…電流出力部、11、12、25、26…MCU、13、16、27、28…開閉制御部、14…動作制御部、15、17、29…診断部、P1…電源端子、P2…出力端子、SWH、SWL、SWM…スイッチ。