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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】二次電池の活性化装置及び活性化方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20231121BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20231121BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20231121BHJP
   B65G 1/04 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H02J7/02 E
H01M10/44 P
B65G1/04 501
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020087986
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021182525
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】松浦 康寿
(72)【発明者】
【氏名】山本 克哉
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-320013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/48
H01M50/20-50/298
H01G11/00-11/86
H02J 7/00- 7/12
H02J 7/34- 7/36
B65G 1/00- 1/133
B65G 1/14- 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池を活性化させる活性化装置であって、
前記二次電池が収容される第1収容部と、前記第1収容部に収容された前記二次電池に接続して当該二次電池の充放電を行う第1の充放電装置と、を備える第1の載置棚と、
前記二次電池が収容される第2収容部と、前記第2収容部に収容された前記二次電池に接続して当該二次電池の充放電を行う第2の充放電装置と、を備える第2の載置棚と、
前記第1の載置棚と前記第2の載置棚との間で前記二次電池を移載可能な移載装置と、を備え、
前記第1の充放電装置は、充放電回路と、第1の電力レベルの電力を最大の投入電力として行われる第1処理に対応可能な第1の定格電力を有する第1の電源とを含んでおり、
前記第2の充放電装置は、充放電回路と、前記第1の電力レベルよりも大きな第2の電力レベルの電力を最大の投入電力として行われる第2処理に対応可能な前記第1の電源の定格電力よりも大きい第2の定格電力を有する第2の電源とを含んでおり、
前記第1の載置棚に収容されて前記第1処理が実行された前記二次電池を前記移載装置により前記第2の載置棚に移載して前記第2処理を実行することで、前記二次電池の活性化処理が行われる、二次電池の活性化装置。
【請求項2】
前記第1処理が施された前記二次電池を一時保管するための一時保管棚をさらに備え、
前記移載装置は、前記第1の載置棚と前記一時保管棚との間、及び、前記一時保管棚と前記第2の載置棚との間で前記二次電池を移載可能に構成されている、請求項1に記載の二次電池の活性化装置。
【請求項3】
前記移載装置は、前記第2の載置棚に前記二次電池を移載する空きがないと判定された場合に、前記第1の載置棚に収容されて前記第1処理が実行された前記二次電池を前記一時保管棚に移載する、請求項2に記載の二次電池の活性化装置。
【請求項4】
前記第1処理は第1の時間にわたって実行され、
前記第2処理は第2の時間にわたって実行され、
前記第1の載置棚の数と前記第2の載置棚の数との関係は、
(第1の載置棚の数/第1の時間)≒(第2の載置棚の数/第2の時間)
となっている、請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池の活性化装置。
【請求項5】
二次電池を活性化させる活性化方法であって、
第1の載置棚において、第1の定格電力を有する第1の電源を用いて、第1の電力レベルの電力を最大の投入電力として二次電池の活性化処理を行う第1工程と、
前記第1工程が終了した前記二次電池を前記第1の載置棚とは別の第2の載置棚に移載する第2工程と、
前記第1の定格電力とは異なる第2の定格電力を有する第2の電源を用いて、前記第1の電力レベルよりも大きな第2の電力レベルの電力を最大の投入電力として、前記第2の載置棚に移載された前記二次電池の活性化処理を行う第3工程と、を備え
注液が終了した前記二次電池を前記第1の載置棚に搬送する工程をさらに含み、
前記二次電池が注液の終了から所定時間経過後に前記第1工程に移行できないと予測される場合に、前記二次電池を前記第2の載置棚に移載して前記第2の電源を用いて前記第1の電力レベルの電力を最大の投入電力として前記第1工程と同様に活性化処理を実行する、二次電池の活性化方法。
【請求項6】
前記第1工程が終了した場合において、前記第2の載置棚に空きがなかったときには、前記二次電池に接続される電源を有さない一時保管棚に前記第1工程が終了した前記二次電池を移載する、請求項5に記載の二次電池の活性化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、二次電池の活性化装置及び活性化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二次電池(蓄電池)の充放電装置が記載されている。二次電池の製造工程では、通常、所望の電池特性を得るために、このような充放電装置を用いて組み立てられた二次電池に対して所定の条件で充放電を行う、いわゆる活性化処理が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-299135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次電池の製造工程において実行される活性化処理では、例えば、最初に小さい第1の電力によって二次電池の初期充電を行う第1処理と、第1処理に続いて、より大きい第2の電力によって、所定の回数、二次電池の充放電を繰り返し行う第2処理とが実行される場合がある。この時、1つの充放電装置を用いて、第1処理及び第2処理を行おうとすると、二次電池に電力を供給するための電源装置としては、後段の第2処理に適応した定格電力を有する電源装置を準備する必要がある。ところで、二次電池の製造においては、電池の生産性を向上させるために、活性化処理の効率化が求められており、例えば、多数の充放電装置を準備して、多数の二次電池に対して活性化処理を同時並行で実行することが考えられている。しかしながら、多数の充放電装置のそれぞれが、第2処理に対応した定格電力の大きな電源装置を有するとした場合には、充放電装置全体に掛かる費用が高くなってしまう。
【0005】
本発明の一側面は、製造費用が増大すること抑制しながら、複数の二次電池に対して同時並列に活性化処理を実行することのできる活性化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る活性化装置は、二次電池を活性化させる活性化装置であって、二次電池が収容される第1収容部と、第1収容部に収容された二次電池に接続して当該二次電池の充放電を行う第1の充放電装置と、を備える第1の載置棚と、二次電池が収容される第2収容部と、第2収容部に収容された二次電池に接続して当該二次電池の充放電を行う第2の充放電装置と、を備える第2の載置棚と、第1の載置棚と第2の載置棚との間で二次電池を移載可能な移載装置と、を備え、第1の充放電装置は、充放電回路と、第1の電力レベルの電力を最大の投入電力として行われる第1処理に対応可能な第1の定格電力を有する第1の電源とを含んでおり、第2の充放電装置は、充放電回路と、第1の電力レベルよりも大きな第2の電力レベルの電力を最大の投入電力として行われる第2処理に対応可能な第1の電源の定格電力よりも大きい第2の定格電力を有する第2の電源とを含んでおり、第1の載置棚に収容されて第1処理が実行された二次電池を移載装置により第2の載置棚に移載して第2処理を実行することで、二次電池の活性化処理が行われる。
【0007】
上記の活性化装置によれば、第1の載置棚で第1処理が行われた二次電池を第2の載置棚に移載して、第2の載置棚で第2処理を行うことができる。すなわち、第1の電力レベルの電力を最大の投入電力とする第1処理と第1の電力レベルよりも大きい第2の電力レベルの電力を最大の投入電力とする第2処理とによって活性化が行われる場合に、第1処理を第1の電源が担い、第2処理を第2の電源が担うことができる。この場合、第1の電源と第2の電源は、それぞれの処理に応じた定格電力の電源とすればよく、全ての電源を第1処理と第2処理のどちらも実行できるような定格電力の大きい電源とする必要がない。したがって、大きい第2の電力レベルに対応した電源装置の数を減らすことができ、複数の二次電池に対して同時並列に活性化処理を実行する場合であっても、装置全体に掛かる費用を抑制することができる。
【0008】
活性化装置は、第1処理が施された二次電池を一時保管するための一時保管棚をさらに備えてもよい。この場合、移載装置は、第1の載置棚と一時保管棚との間、及び、一時保管棚と第2の載置棚との間で二次電池を移載可能に構成されていてよい。この構成では、第1の載置棚における所定の工程が終了した二次電池を一時保管棚において一時的に保管することができる。また、移載装置は、第2の載置棚に二次電池を移載する空きがないと判定された場合に、第1の載置棚に収容されて第1処理が実行された二次電池を一時保管棚に移載してもよい。
【0009】
第1処理は第1の時間にわたって実行され、第2処理は第2の時間にわたって実行され、第1の載置棚の数と第2の載置棚の数との関係は、(第1の載置棚の数/第1の時間)≒(第2の載置棚の数/第2の時間)となっていてもよい。この構成では、二次電池の活性化処理の第1処理の時間と第2処理の時間とが異なる場合において、装置の稼働率を落とさずに、装置の製造費用が増大することを抑制できる。すなわち、第1処理が完了した二次電池の第1載置棚での待機時間が長くなることを抑制しつつ、使用頻度の少ない載置棚の数を減らすことができる。
【0010】
本発明の一側面に係る活性化方法は、充放電を繰り返すことによって二次電池を活性化させる方法であって、第1の載置棚において、第1の定格電力を有する第1の電源を用いて、第1の電力レベルの電力を最大の投入電力として二次電池の活性化処理を行う第1工程と、第1工程が終了した二次電池を第1の載置棚とは別の第2の載置棚に移載する第2工程と、第1の定格電力とは異なる第2の定格電力を有する第2の電源を用いて、第1の電力レベルよりも大きな第2の電力レベルの電力を最大の投入電力として、第2の載置棚に移載された二次電池の活性化処理を行う第3工程と、を備える。
【0011】
上記の活性化方法によれば、第1の電力レベルの電力を最大の投入電力とする処理を第1の電源が担い、第2の電力レベルの電力を最大の投入電力とする処理を第2の電源が担うことができる。この場合、第1の電源の定格電力を第2の電源の定格電力よりも小さくすることができる。すなわち、全ての電源を第2の電力レベルに対応する定格電力の大きい電源とする必要がない。したがって、大きい第2の電力レベルに対応した電源装置の数を減らすことができるため、活性化装置全体に係る費用を抑制することができる。
【0012】
第1工程が終了した場合において、第2の載置棚に空きがなかったときには、二次電池に接続される電源を有さない一時保管棚に第1工程が終了した二次電池を移載してもよい。この構成では、第1工程が終了した第1の載置棚を速やかに空にすることができる。すなわち、第1工程が終了した第1の載置棚に速やかに新たな二次電池を受け入れることができる。
【0013】
活性化方法は、注液が終了した二次電池を第1の載置棚に搬送する工程をさらに含む。この場合、活性化方法では、二次電池が注液の終了から所定時間経過後に第1工程に移行できないと予測される場合に、二次電池を第2の載置棚に移載して第2の電源を用いて第1の電力レベルの電力を最大の投入電力として第1工程と同じ工程を実行してもよい。二次電池は、注液の終了から所定時間経過後に第1工程を終了していない場合に、電池性能が低下することがあるが、第1工程が優先して実行されることで、電池性能の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、製造費用が増大すること抑制しながら、複数の二次電池に対して同時並列に活性化処理を実行することのできる活性化装置が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】活性化装置を示すブロック図である。
図2】活性化装置を説明するための模式図である。
図3】活性化工程の一例を説明するための図である。
図4】活性化工程を説明するためのフローチャートである。
図5】他の例に係る活性化装置を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、一例の活性化装置1を説明するための概略ブロック図である。図2は、活性化装置1を説明するための模式図である。活性化装置1は、電解液が注入された二次電池の充放電を繰り返すことによって、当該二次電池の活性化(初期充電)を行うための装置である。二次電池は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池である。本実施形態では、二次電池は、ニッケル水素二次電池である。
【0018】
活性化装置1は、二次電池の活性化処理を行うための装置であって、第1の電源を備える第1の載置棚と、第1の電源の定格電力よりも大きな定格電力を有する第2の電源を備える第2の載置棚と、第1の載置棚と第2の載置棚との間で二次電池を移載可能に構成された移載装置と、を備える。一例の活性化装置1は、載置棚10(第1の載置棚の一例)、載置棚20(第2の載置棚の一例)、載置棚30、移載装置40及び制御装置50を備えている。一例の二次電池の活性化処理は、第1の電力レベルの電力を最大の投入電力として第1の時間にわたって実行される第1の活性化処理と、第1の電力レベルよりも大きな第2の電力レベルの電力を最大の投入電力として第2の時間にわたって実行される第2の活性化処理とを含む。
【0019】
載置棚10には、充放電回路と第1の電源とを含む充放電装置11(第1の充放電装置の一例)が設けられている。載置棚10は、搬送される二次電池5を収容するための空間10S(第1収容部の一例)を有している。例えば、載置棚10の側面(前面)には、空間10Sに繋がる開口が設けられている。1つの載置棚10に対して、1つの充放電装置11が設けられている。充放電装置11は、載置棚10の空間10Sにおいて二次電池5に接続される端子に、電気的に接続されている。一例の充放電装置11が備える第1の電源は、例えば、可変電源であり、二次電池の活性化処理における第1の活性化処理に対応した所定の定格電力(第1の定格電力)を有している。
【0020】
載置棚20には、充放電回路と第2の電源とを含む充放電装置21(第2の充放電装置の一例)が設けられている。載置棚20は、搬送される二次電池5を収容するための空間20S(第2収容部の一例)を有している。例えば、載置棚20の側面(前面)には、空間20Sに繋がる開口が設けられている。1つの載置棚20に対して、1つの充放電装置21が設けられている。充放電装置21は、載置棚20の空間20Sにおいて二次電池5に接続される端子に、電気的に接続されている。一例の充放電装置21が備える第2の電源は、例えば、可変電源であり、二次電池の活性化処理における第2の活性化処理に対応した定格電力を有している。一例では、第2の電源は、充放電装置11が備える第1の電源の定格電力よりも大きな定格電力(第2の定格電力)を有している。
【0021】
載置棚30には、充放電回路と第3の電源とを含む充放電装置31が設けられている。載置棚30は、搬送される二次電池5を収容するための空間30Sを有している。例えば、載置棚30の側面(前面)には、空間30Sに繋がる開口が設けられている。1つの載置棚30に対して、1つの充放電装置31が設けられている。充放電装置31は、載置棚30の空間30Sにおいて二次電池5に接続される端子に、電気的に接続されている。充放電装置31の第3の電源は、例えば、可変電源であり、二次電池の活性化処理における第2の活性化処理に対応した定格電力を有している。一例では、第3の電源は、充放電装置21が備える第2の電源の定格電力よりも大きな定格電力(第3の定格電力)を有している。
【0022】
移載装置40は、載置棚10と載置棚20と載置棚30とのそれぞれの間で二次電池5を移載可能に構成されている。また、移載装置40は、製造工程の前工程から搬送される二次電池5を受け取ることが可能であってよい。さらに、移載装置40は、二次電池5を製造工程の後工程に搬出可能であってよい。一例において、移載装置40は、走行機能及び昇降機能を有するいわゆるスタッカークレーンであってよい。例えば図2では、二次電池5が載置棚10から載置棚20及び載置棚30へ順番に移載される様子が示されている。
【0023】
制御装置50は、充放電装置11、充放電装置21、充放電装置31及び移載装置40の動作を制御するための装置である。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)及び入出力インターフェース等から構成されている。制御装置50は、例えば、入力される前工程の製造状況の情報に応じて、ROMに保存されたプログラムに基づき制御内容を決定する。制御装置50は、後述する各工程を制御するためのプログラムを実行することができる。
【0024】
図3は、二次電池の活性化処理が行われる一例の活性化工程を説明するための図である。図3では、二次電池への投入電力に応じて、活性化工程を前期工程(第1の活性化処理)、中期工程(第2の活性化処理の前半部分)及び後期工程(第2の活性化処理の後半部分)の3つの工程に分けて説明することができる。
【0025】
前期工程は、電解液が注入されて組み立てが完了した二次電池5に対して最初に充電を行う工程である。前期工程では、組み立てられた二次電池5に対して、充電電流を十分に小さくして長時間かけて充電が行われる。このため、前期工程における投入電力の最大の電力レベルは、その後に実行される中期工程及び後期工程における投入電力の最大の電力レベルよりも小さくなっている。
【0026】
中期工程は、前期工程が終了した二次電池5に対して、数サイクルの充放電を繰り返す工程である。中期工程では、組み立てられた二次電池5に対して、前期工程における充電サイクルよりも短いサイクルで充放電が繰り返し行われる。図3の例における中期工程では、予め設定された所定の充電レートおよび所定の放電レートにて、前期工程で充電された二次電池5の放電とその後の数サイクル(例えば、2~3サイクル)の二次電池5の充放電が実行される。中期工程における投入電力の最大の電力レベルは、前期工程における投入電力の最大の電力レベルよりも大きくなっている。
【0027】
後期工程は、中期工程が終了した二次電池5に対して、数サイクルの充放電を繰り返す工程である。後期工程では、組み立てられた二次電池5に対して、中期工程における充放電サイクルよりも短いサイクルで充放電が繰り返し行われる。図3の例における後期工程では、あらかじめ設定された所定の充電レートおよび所定の放電レートにて、数サイクル(例えば、7~8サイクル)の二次電池5の充放電が実行される。後期工程における投入電力の最大の電力レベルは、中期工程における投入電力の最大の電力レベルよりも大きくなっている。
【0028】
一例として、前期工程における投入電力の最大の電力レベルは1.5kW程度であり、中期工程における投入電力の最大の電力レベルは3.0kW程度であり、後期工程における投入電力の最大の電力レベルは6.0kW程度である。また、前期工程における作業開始から終了までの時間は3~9時間であり、中期工程における作業開始から終了までの時間は3~9時間であり、後期工程における作業開始から終了までの時間は5~12時間である。
【0029】
引き続き活性化装置1について説明する。上述のとおり、一例の活性化工程は、それぞれ投入電力の最大の電力レベルの異なる、前期工程、中期工程及び後期工程に分かれている。活性化装置1では、原則として、充放電装置11を有する載置棚10が前期工程を担い、充放電装置21を有する載置棚20が中期工程を担い、充放電装置31を有する載置棚30が後期工程を担い、工程毎に移載装置40が二次電池5をこれら3つの載置棚に載せ替えることで、一連の活性化処理が完了するように設定されている。そのため、充放電装置11が備える第1の電源の定格電力は、前期工程における投入電力の最大の電力レベルに対応可能であればよい。本実施形態では、第1の電源は、中期工程における投入電力の最大の電力レベルに対応可能な定格電力を有する電源よりも小さい定格電力を有する電源となっている。また、充放電装置21が備える第2の電源の定格電力は、中期工程における投入電力の最大の電力レベルに対応可能であればよい。本実施形態では、第2の電源は、後期工程における投入電力の最大の電力レベルに対応可能な定格電力を有する電源よりも小さい定格電力を有する電源となっている。また、充放電装置31が備える第3の電源の定格電力は、後期工程における投入電力の最大の電力レベルに対応可能であればよい。第3の電源は、後期工程における投入電力の最大の電力レベルをはるかに超えた大きな定格電力を有する必要はない。一例として、充放電装置11の定格電力は、2.0kWであり、充放電装置21の定格電力は、5.0kWであり、充放電装置11の定格電力は、8.0kWである。
【0030】
図1及び図2においては、載置棚10,20,30がそれぞれ1つずつ示されているが、載置棚10,20,30はそれぞれ複数設けられていてよい。例えば、活性化処理が、第1の電力レベルの電力を最大の投入電力とする二次電池5の充電が第1の時間にわたって実行される前期工程と、第1の電力レベルよりも大きな第2の電力レベルの電力を最大の投入電力とする二次電池5の繰り返し充放電が第2の時間にわたって実行される中期工程と、第2の電力レベルよりも大きな第3の電力レベルの電力を最大の投入電力とする二次電池5の繰り返し充放電が第3の時間にわたって実行される後期工程と、を含む場合、前期工程が実行される載置棚の数と中期工程が実行される載置棚の数と後期工程が実行される載置棚の数との関係は、
(第1の載置棚の数/第1の時間)≒(第2の載置棚の数/第2の時間)≒(第3の載置棚の数/第3の時間)
となるように決められてもよい。なお、記号「≒」は、許容できる誤差の範囲を含んで概ね同等であることを示す。一例として、上記の式において許容できる誤差の範囲は30%であってよく、より好ましくは20%であり、さらに好ましくは10%であってよい。
【0031】
すなわち、図示例の活性化装置では、前期工程と中期工程と後期工程とからなる一連の活性化工程が遅滞なく進むように、載置棚10の数と載置棚20の数と載置棚30の数が、前期工程と中期工程と後期工程のそれぞれの処理時間に基づいて設定されている。このように載置棚10、20、30の数を決めることで、工程間の手待時間(待機時間)が長くなることを抑制しつつ、使用頻度の低い載置棚の数を減らすことができる。よって、活性化装置の製造コストの増大が抑制される。
【0032】
続いて、活性化装置1によって二次電池を活性化する活性化方法について説明する。図4は、活性化方法(活性化工程)を説明するためのフロー図である。活性化装置1は、制御装置50の制御に基づいて、前工程から搬送された二次電池5に活性化処理を実行して、活性化処理がなされた二次電池5を後工程に搬出する。活性化装置1では、前工程から搬送された二次電池5を移載装置40が載置棚10に移載する(ステップS1)。載置棚10に二次電池5が移載されると、当該載置棚10に設けられた充放電装置11によって、活性化処理の前期工程が実行される(ステップS2:第1工程)。前期工程が終了すると、二次電池5は移載装置40によって載置棚20に移載される(ステップS3:第2工程)。載置棚20に二次電池5が移載されると、当該載置棚20に設けられた充放電装置21によって、活性化処理の中期工程が実行される(ステップS4:第3工程)。中期工程が終了すると、二次電池5は移載装置40によって載置棚30に移載される(ステップS5)。載置棚30に二次電池5が移載されると、当該載置棚30に設けられた充放電装置31によって、活性化処理の後期工程が実行される(ステップS6)。後期工程が終了すると、二次電池5は移載装置40によって後工程に向かうように搬送される。例えば、移載装置40は、後工程に向かうコンベア等に二次電池5を移載してもよい。
【0033】
以上説明した活性化装置1によれば、移載装置40によって、載置棚10と載置棚20と載置棚30との間で二次電池5を移載しながら活性化処理を行うことができる。この場合、載置棚10において二次電池の活性化処理における前期工程を実行し、載置棚20において二次電池の活性化処理における中期工程を実行し、載置棚30において二次電池の活性化処理における後期工程を実行することができる。すなわち、前期工程における第1の電力レベルの電力を最大の投入電力とする二次電池5の充電を充放電装置11が担い、中期工程における第2の電力レベルの電力を最大の投入電力とする二次電池5の繰り返し充放電を充放電装置21が担い、後期工程における第3の電力レベル電力を最大の投入電力とする二次電池5の繰り返し充放電を充放電装置31が担うことができる。この場合、充放電装置11が備える第1の電源の定格電力を充放電装置21が備える第2の電源の定格電力よりも小さくすることができる。また、充放電装置21が備える第2の電源の定格電力を充放電装置31が備える第3の電源の定格電力よりも小さくすることができる。
【0034】
例えば、1種類の電源を備える複数の充放電装置のみによって活性化装置が構成される場合、1つの充放電装置によって前期工程、中期工程及び後期工程の全工程が実行される。そのため、充放電装置が備える電源は、後期工程における最大の投入電力である第3の電力レベルに対応可能な定格電力を有している必要がある。定格電力の大きな電源は、定格電力の小さい電源に比べて高価であるため、全ての充放電装置が定格電力の大きな電源を備える場合には、活性化装置の製造コストが大きくなる。一例の活性化装置1では、定格電力の大きな電源を備える充放電装置21,31の数を減らすことができるため、活性化装置の製造コストを抑制することができる。
【0035】
一例において、第1の載置棚の数と第2の載置棚の数との関係は、(第1の載置棚の数/第2の載置棚の数)≒(第1の時間/第2の時間)となっていてもよい。例えば、載置棚10の数と載置棚20の数と載置棚30の数との割合は、前期工程の処理時間と中期工程の処理時間と後期工程の処理時間との割合と略同じであってもよい。この構成では、二次電池の活性化処理の前期工程の時間と中期工程の時間と後期工程の時間が互いに異なる場合において、装置の稼働率を落とさずに、装置の製造費用が増大することを抑制できる。例えば、前期工程が完了した二次電池の載置棚10での待機時間が長くなることを抑制しつつ、使用頻度の少ない載置棚の数を減らすことができる。なお、載置棚20の数及び載置棚30の数に対する載置棚10の数の割合が、中期工程の処理時間及び後期工程の処理時間に対する前期工程の処理時間の割合よりも多くなっている場合には、載置棚10における前期工程が遅滞なく進行し得る。
【0036】
(第2実施形態)
図5は他の例に係る活性化装置を説明するための模式図である。図5に示す活性化装置101は、上述の活性化装置1の構成に加えて、さらに一時保管棚160を備える。すなわち、活性化装置101は、載置棚10、載置棚20、載置棚30、一時保管棚160(第3の載置棚)、移載装置40及び制御装置50を備えている。活性化装置101において、活性化装置1と重複する構成については説明を省略する。
【0037】
一時保管棚160は、二次電池5を一時保管するために利用される。一時保管棚160は、搬送される二次電池5を収容するための空間160Sを有している。例えば、一時保管棚160の側面(前面)には、空間160Sに繋がる開口が設けられている。他の棚である載置棚10,20,30と異なり、一時保管棚160には充放電装置が設けられていない。活性化装置101において、移載装置40は、図5に矢印で示すように、載置棚10と載置棚20と載置棚30と一時保管棚160とのそれぞれの間で二次電池5を移載可能に構成されている。
【0038】
続いて、活性化装置101の動作について説明する。活性化装置101においても、基本的な活性化工程の流れは、上述した図4に示す活性化工程の流れと同じである。そのため、基本的な活性化工程の流れについては説明を省略する。
【0039】
本願発明者らは、二次電池に電解液が注入されて二次電池の組み立てが完了してから所定の時間が経過するよりも前に、組み立てられた二次電池に対して一連の活性化処理のうち少なくとも前期工程を実行することで、その後に活性化処理が一時中断されたとしても、二次電池の電池性能の低下を抑制できることを発見した。そこで、活性化装置101は、組み立てが完了した二次電池5の電池性能が低下しないように、組み立て完了から所定時間が経過する前に、二次電池5に対して、一連の活性化処理における前期工程が完了するように、二次電池5の活性化処理を制御している。
【0040】
(動作例1)
例えば、載置棚10において前期工程が終了した場合において、載置棚20に空きがないと判定されたときには、前期工程が終了した二次電池5は、移載装置40によって載置棚10から一時保管棚160に移載されてもよい。この場合、前期工程が終了した載置棚10が速やかに空になることによって、新たに二次電池5を受け入れることができる。一時保管棚160に移載された二次電池5は、載置棚20に空きができた後に、移載装置40によって一時保管棚160から載置棚20に移載されてもよい。
【0041】
(動作例2)
例えば、前工程において、電解液の注入された二次電池5が過剰に製造された場合、載置棚10に空きがなくなることが考えられる。この場合、前工程における二次電池の製造状況と載置棚10における処理能力との関係に基づいて、注液の終了した二次電池5を所定時間経過前に載置棚10に移載できるか否かの予測が可能である。例えば、載置棚10に空きがなく、注液の終了した二次電池5を所定時間経過前に載置棚10に移載できないことが見込まれる場合、電解液が注入された二次電池5を載置棚20に移載して充放電装置21を用いて前期工程を実行することができる。この場合、前期工程が優先して実行されることで、組み立て完了から所定時間が経過する前に前期工程を完了することができ、二次電池の電池性能の低下を抑制できる。
【0042】
このように載置棚20においても前期工程を実行する必要がある場合には、載置棚10において前期工程が終了した二次電池5が載置棚20に移載されないように、又は、載置棚20において前期工程が終了した二次電池5が中期工程に移行しないように、前期工程が終了した二次電池5を一時保管棚160に移載してもよい。また、載置棚30においても前期工程を実行する必要がある場合には、載置棚20において中期工程が終了した二次電池5を一時保管棚160に移載してもよい。このように、活性化装置101では、一時保管棚160を備えていることによって、状況に応じて自由に二次電池5を移載することができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0044】
例えば、活性化装置では、移載装置によって較正装置を移載できてもよい。較正装置は、例えば充放電装置11,21,31の較正に利用される装置であり、二次電池5と同様に移載装置による移載が可能であってよい。前工程から活性化装置に搬送される二次電池の数が少ない場合など、いずれかの載置棚10,20,30が空いているとき、空いている載置棚に較正装置を移載して、充放電装置の電源の較正を実行してもよい。この場合、効率よく充放電装置を較正することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…活性化装置、5…二次電池、10…載置棚(第1の載置棚)、11…充放電装置(第1の電源)、20…載置棚(第2の載置棚)、21…充放電装置(第2の電源)、30…載置棚(第2の載置棚)、31…充放電装置(第2の電源)、40…移載装置。
図1
図2
図3
図4
図5