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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】異常検出システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 41/00 20220101AFI20231121BHJP
【FI】
H04L41/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020116173
(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2022014039
(43)【公開日】2022-01-19
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】西尾 聡志
(72)【発明者】
【氏名】古谷 哲也
【審査官】大石 博見
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-018735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
H04L 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信の異常を検出する異常検出システムであって、
第1のECUと、
前記第1のECUと通信可能な複数の第2のECUと、
前記第1のECUと複数の前記第2のECUとの通信経路上に複数のコネクタ接続部と、
を備え、
前記第1のECUおよび前記第2のECUの少なくとも一方は、当該第1のECUと当該第2のECUとの通信に異常が生じた履歴を記憶するメモリを含み、
複数の前記コネクタ接続部は、それぞれ、通信経路上の前記第1のECUの側である第1のコネクタ部と、前記第2のECUの側である第2のコネクタ部とを有し、
前記メモリに記憶された前記履歴の確認の結果、通信異常が発生した場合に、前記第2のコネクタ部の側に接続されたすべての前記第2のECUとの通信に異常がある前記コネクタ接続部のうち、接続された前記第2のECUの数が最も多い前記コネクタ接続部に異常があると判定する診断部をさらに備える、異常検出システム。
【請求項2】
前記診断部は、前記第1のECUと前記第2のECUとの通信が正常であることを判定する、請求項1に記載の異常検出システム。
【請求項3】
前記第1のECUは、当該第1のECUと前記第2のECUとの通信が正常であるか異常であるかを診断し、
前記診断部は、前記第1のECUにより当該第1のECUと前記第2のECUとの通信が正常であると診断された場合に、前記第1のECUと前記第2のECUとの通信が正常であると判定する、請求項2に記載の異常検出システム。
【請求項4】
前記診断部は、前記第1のECUと前記第2のECUとの通信が正常であると判定していない場合、前記コネクタ接続部に異常があるかの判定結果に関わらず、前記第1のECUと前記第2のECUとの通信が異常であると判定する、請求項2または請求項3に記載の異常検出システム。
【請求項5】
前記診断部は、前記第1のECUと前記第2のECUとの通信が異常であると判定した場合は、前記コネクタ接続部の異常を判定しない、請求項4に記載の異常検出システム。
【請求項6】
前記第1のECUは、当該第1のECUと前記第2のECUのいずれかとの通信が所定時間以上、途絶した場合に、当該通信が異常であると判定する、請求項1から請求項5のいずれかに記載の異常検出システム。
【請求項7】
前記第1のECUおよび前記第2のECUの少なくとも一方は、前記メモリに加えて、他のECUとの通信の異常の診断の結果を前記履歴として前記メモリに記憶させる自己診断機能を有する、請求項1から請求項6のいずれかに記載の異常検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、異常検出システムに関し、特に、通信の異常を検出する異常検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信バスに複数のECU(Electronic Control Unit)が接続された通信ネットワークの故障を検知する方法があった(たとえば、特許文献1参照)。この方法によれば、通信エラーが検出された後、複数のECUによる通信バスへの送信を1つずつ、順に停止させる送信停止要求が行われ、ECUが1つずつ、順に停止させられるごとに、通信バスに通信エラーが生ずるか否かが判別されることで、故障個所が特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-302783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の方法によれば、複数のECUが接続されている通信経路に異常があることで異常な信号が検出されている場合(たとえば、通信経路の途中のコネクタが半嵌合の状態になっているような場合)、いずれのECUを停止しても異常な信号が検出されるため、異常個所の特定はできないといった問題があった。
【0005】
この開示は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、通信の異常個所を的確に特定することが可能な異常検出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示に係る異常検出システムは、通信の異常を検出するシステムであって、第1のECUと、第1のECUと通信可能な複数の第2のECUと、第1のECUと複数の第2のECUとの通信経路上に複数のコネクタ接続部とを備える。複数のコネクタ接続部は、それぞれ、通信経路上の第1のECUの側である第1のコネクタ部と、第2のECUの側である第2のコネクタ部とを有する。通信異常が発生した場合に、第2のコネクタ部の側に接続されたすべての第2のECUとの通信に異常があるコネクタ接続部のうち、接続された第2のECUの数が最も多いコネクタ接続部に異常があると判定する診断部をさらに備える。
【0007】
このような構成によれば、通信異常が発生した場合に、コネクタ接続部の第1のECUと反対側に接続された第2のECUのすべてとの通信に異常があるコネクタ接続部のうち、接続された第2のECUの数が最も多いコネクタ接続部に異常があると判定される。このため、通信経路のいずれのコネクタ接続部に異常があるかを的確に特定することができる。その結果、通信の異常個所を的確に特定することができる。
【0008】
診断部は、第1のECUの通信が正常であることを判定してもよい。このような構成によれば、第1のECUの通信が正常であるか否かを適切に判定することができる。
【0009】
第1のECUは、自己の通信が正常であるか異常であるかを診断し、診断部は、第1のECUにより自己の通信が正常であると診断された場合に、第1のECUの通信が正常であると判定してもよい。
【0010】
このような構成によれば、第1のECUの自己の診断結果に基づいて第1のECUの通信が正常であるか否かを適切に判定することができる。
【0011】
診断部は、第1のECUの通信が正常であると判定していない場合、コネクタ接続部に異常があるかの判定結果に関わらず、第1のECUの通信が異常であると判定してもよい。
【0012】
このような構成によれば、第1のECUの通信が正常であると判定しない場合、第1のECUの通信が異常である可能性が高いため、第1のECUの異常を優先して判定することができる。
【0013】
診断部は、第1のECUの通信が異常であると判定した場合は、コネクタ接続部の異常を判定しないようにしてもよい。
【0014】
このような構成によれば、第1のECUの通信が異常である場合に、コネクタ接続部の異常を判定することは無駄となる可能性があるところ、コネクタ接続部の異常を判定しないようにするため、無駄な判定を実行しないようにできる。
【0015】
第1のECUは、第2のECUのいずれかとの通信が所定時間以上、途絶した場合に、当該通信が異常であると判定してもよい。
【0016】
このような構成によれば、通信経路のいずれのコネクタ接続部に異常があるかを明確に判定することができる。
【発明の効果】
【0017】
この開示によれば、通信の異常個所を的確に特定することが可能な異常検出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この実施の形態に係る車両の概略構成を示す図である。
図2】この実施の形態に係る車両におけるネットワーク構成の一例を示す図である。
図3】この実施の形態の通信異常検出処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、この開示の実施の形態は説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返されない。
【0020】
図1は、この実施の形態に係る車両10の概略構成を示す図である。図1を参照して、車両10は、ハイブリッド自動車である。車両10は、概略的な構成として、シフトレバー132と、アクセルペダル133と、HV-ECU160と、MG-ECU170と、PCU(Power Control Unit)171と、第1MG172と、第2MG173と、エンジンECU180と、エンジン181と、エンジン回転速度センサ134とを備える。
【0021】
シフトレバー132は、ユーザによるシフト操作に応じて複数のシフトレンジを切替えるためのレバーであり、レバーが切替えられた位置を検出するセンサを含む。シフトレバー132で切替え可能なシフトレンジとしては、たとえば、N(ニュートラル)レンジ、R(リバース)レンジ、D(ドライブ)レンジ、および、B(ブレーキ)レンジが含まれる。シフトレバー132は、センサによって検出された位置に対応するシフトレンジを示す信号を、HV-ECU160に送信する。
【0022】
アクセルペダル133は、ユーザによるアクセル操作を受付けるためのペダルであり、ペダルの踏み込み量を検出するセンサを含む。アクセルペダル133は、センサによって検出された踏み込み量を示す信号を、HV-ECU160に送信する。
【0023】
HV-ECU160は、車両10の駆動を制御するためのECUであり、車載通信ネットワーク(たとえば、CAN(Controller Area Network))を介して、MG-ECU170およびエンジンECU180と互いに通信可能である。
【0024】
以下の各ECUは、CPU(Central Processing Unit)およびメモリを含む。メモリは、プログラムおよびデータを記憶可能である。CPUは、メモリに記憶されたプログラムにしたがって、メモリに記憶されたデータおよびその他の部分から受信したデータを処理して、処理結果をメモリに記憶させたり、その他の部分に送信したりする。
【0025】
HV-ECU160は、シフトレバー132およびアクセルペダル133からの信号に応じて、第1MG172および第2MG173を制御するための制御信号をMG-ECU170に出力するとともに、エンジン181を制御するための制御信号をエンジンECU180に出力する。
【0026】
MG-ECU170は、車両10の第1MG172および第2MG173を制御するためのECUであり、HV-ECU160からの制御信号およびPCU171からの信号に応じて、第1MG172および第2MG173を制御するための制御信号をPCU171に送信する。
【0027】
PCU171は、第1MG172用と第2MG173用との2つのインバータと、電圧を変換するコンバータとを含み、MG-ECU170からの制御信号に応じて、バッテリと第1MG172および第2MG173との間で双方向の電力変換を実行する。具体的には、PCU171は、バッテリの電力を第1MG172および第2MG173を駆動するための電力として供給したり、第1MG172および第2MG173で回生された電力をバッテリに充電するために供給したりする。
【0028】
第1MG172および第2MG173は、交流回転電機であり、たとえば、ロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機であり、PCU171からの電力で駆動力を発生したり、PCU171に回生電力を供給したりする。
【0029】
エンジンECU180は、車両10のエンジン181を制御するためのECUであり、HV-ECU160からの制御信号およびエンジン181の各センサからの信号に応じてエンジン181の各部を制御する。エンジン181は、たとえば、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンであり、エンジンECU180からの制御信号に応じて、燃料を燃焼させ、駆動力を発生する。エンジン回転速度センサ134は、エンジン181の回転速度を検出し、検出した回転速度を示す信号を、HV-ECU160に送信する。
【0030】
この実施の形態の車両10においては、第1MG172、第2MG173およびエンジン181は、遊星歯車機構で互いに動力の伝達が可能なように接続され、第2MG173が接続された軸が車両10の駆動輪に接続される。第1MG172は、主にエンジン181からの駆動力によって発電を行う。第2MG173は、駆動輪を駆動したり、駆動輪からの運動エネルギーを回生したりする。エンジン181は、第1MG172を駆動したり、駆動輪を駆動したりする。
【0031】
従来、通信バスに複数のECUが接続された通信ネットワークの故障を検知する方法があった。この方法によれば、通信エラーが検出された後、複数のECUによる通信バスへの送信を1つずつ、順に停止させる送信停止要求が行われ、ECUが1つずつ、順に停止させられるごとに、通信バスに通信エラーが生ずるか否かが判別されることで、故障個所が特定される。
【0032】
しかし、従来の方法によれば、複数のECUが接続されている通信経路に異常があることで異常な信号が検出されている場合(たとえば、通信経路の途中のコネクタが半嵌合の状態になっているような場合)、いずれのECUを停止しても異常な信号が検出されるため、異常個所の特定はできないといった問題があった。
【0033】
そこで、この開示に係る異常検出システムにおいて、通信経路の途中の複数のコネクタ接続部が、それぞれ、通信経路上の第1のECU(たとえば、HV-ECU160)の側である第1のコネクタ部と、第1のECUと異なる第2のECUの側である第2のコネクタ部とを有する場合、通信異常が発生した場合に、第2のコネクタ部の側に接続されたすべての第2のECUとの通信に異常があるコネクタ接続部のうち、接続された第2のECUの数が最も多いコネクタ接続部に異常があると判定する診断部を備える。これにより、通信の異常個所を的確に特定することができる。
【0034】
以下、この実施の形態の特徴点について説明する。図2は、この実施の形態に係る車両10におけるネットワーク構成の一例を示す図である。図2を参照して、車両10は、HV-ECU160に加えて、他の機能を制御するためのECUとして、A-ECU151、B-ECU152、C-ECU153、D-ECU154、および、セントラルゲートウェイ140を備える。
【0035】
セントラルゲートウェイ140は、複数のCANのバスを互いに接続するためのゲートウェイとしてのECUである。A-ECU151からD-ECU154は、それぞれ、MG-ECU170およびエンジンECU180などの、車両10の特定の機能を制御するためのECUである。
【0036】
各ECUは、CANのバス等の通信線にノードとして接続される。たとえば、HV-ECU160、セントラルゲートウェイ140およびA-ECU151は、CANのバス191にノードとして接続される。セントラルゲートウェイ140、C-ECU153およびD-ECU154は、CANのバス192にノードとして接続される。HV-ECU160およびB-ECU152は、専用通信線193で接続される。
【0037】
セントラルゲートウェイ140は、コネクタ141によって、バス191に接続される。コネクタ141は、セントラルゲートウェイ140の側のメスコネクタ(ソケット、ジャック、レセプタクル)142と、バス191の側のオスコネクタ(プラグ)143との組合せである。コネクタ141は、バス191をセントラルゲートウェイ140に接続するための電線対基板コネクタである。
【0038】
また、セントラルゲートウェイ140は、コネクタ144によって、バス192に接続される。コネクタ144は、セントラルゲートウェイ140の側のメスコネクタ(ソケット、ジャック、レセプタクル)145と、バス192の側のオスコネクタ(プラグ)146との組合せである。コネクタ144は、バス192をセントラルゲートウェイ140に接続するための電線対基板コネクタである。
【0039】
HV-ECU160は、コネクタ163にCANケーブル169で接続されたコネクタ166によって、バス191に接続される。コネクタ166は、HV-ECU160側のメスコネクタ167と、バス191の側のオスコネクタ168との組合せである。コネクタ166は、バス191とCANケーブル169とを接続するための電線対電線コネクタである。
【0040】
また、HV-ECU160は、コネクタ163に接続された専用通信線193で、B-ECU152と接続される。コネクタ163は、HV-ECU160側のメスコネクタ164と、CANケーブル169および専用通信線193の側のオスコネクタ165との組合せである。コネクタ163は、CANケーブル169および専用通信線193をHV-ECU160に接続するための電線対基板コネクタである。
【0041】
スキャンツール200は、車両10に接続されて、車両10の各ECUおよびセントラルゲートウェイ140の故障などを診断して、その診断内容をディスプレイに表示するための機器である。この実施の形態の車両10では、スキャンツール200は、コネクタ147によって、セントラルゲートウェイ140に接続されるが、これに限定されず、スキャンツール200を接続するための専用のコネクタが車両10に設けられるようにしてもよい。コネクタ147は、セントラルゲートウェイ140の側のメスコネクタ148と、スキャンツール200の側のオスコネクタ149との組合せである。コネクタ147は、スキャンツール200をセントラルゲートウェイ140に接続するための電線対基板コネクタである。スキャンツール200は、各種処理を実行するためのCPUと、CPUによって実行されるプログラムを記憶したり、プログラムの実行のためのワークメモリとして用いられたりするメモリとを含む。
【0042】
図3は、この実施の形態の通信異常検出処理の流れを示すフローチャートである。通信異常検出処理は、スキャンツール200が車両10のセントラルゲートウェイ140に接続された後に、スキャンツール200のCPUによって、上位の処理から呼出されて実行される。
【0043】
図3を参照して、スキャンツール200のCPUは、車両10の各ECUと通信し、通信異常があった旨の履歴が各ECUのメモリに記憶されているか否かを判断する(ステップS111)。通信異常の履歴が記憶されていない(ステップS111でNO)と判断した場合、スキャンツール200のCPUは、実行する処理をこの通信異常検出処理の呼出元の上位の処理に戻す。
【0044】
一方、通信異常の履歴が記憶されている(ステップS111でYES)と判断した場合、スキャンツール200のCPUは、HV-ECU160のメモリに記憶されている自己診断履歴を確認する(ステップS112)。
【0045】
この実施の形態においては、HV-ECU160は、自己診断機能を有する。他のECUが自己診断機能を有するようにしてもよい。自己診断機能は、車両10の各種のセンサおよびアクチュエータ、ならびに、ECU間の通信等の車両10における通信のための構成などの、車両10の構成に異常が発生した場合に、発生した異常に関する情報を自己診断履歴として記憶したり、発生した異常を示す警告ランプを点灯して運転者に知らせたりする機能である。この実施の形態においては、自己診断履歴として、各ECUとの通信異常などの異常の履歴だけでなく、正常な履歴も記憶する。
【0046】
次に、スキャンツール200のCPUは、ステップS112で確認した自己診断履歴に、通信が正常であったことを示す履歴が有るか否かを判断する(ステップS113)。正常履歴が無い(ステップS113でNO)と判断した場合、スキャンツール200のCPUは、HV-ECU160の内部異常と判定する(ステップS114)。その後、スキャンツール200のCPUは、実行する処理をこの通信異常検出処理の呼出元の上位の処理に戻す。
【0047】
一方、正常履歴が有る(ステップS113でYES)と判断した場合、スキャンツール200のCPUは、自己診断機能による自己診断結果(ここでは「ダイアグ」と呼ぶ。)としてHV-ECU160との通信異常を検出したECUと、HV-ECU160の自己診断結果の内部履歴のうち通信異常があったECUとを確認する(ステップS121)。
【0048】
ここで、たとえば、HV-ECU160などの自己診断機能を有するECUは、いずれかのECUとの通信途絶の時間が所定時間以上となった場合に、自己診断機能により、当該通信途絶を検出し、当該通信途絶に関する情報を自己診断結果の内部履歴としてメモリに記憶する。
【0049】
スキャンツール200のCPUは、ステップS121での確認の結果、A-ECU151からD-ECU154に異常があったか否かを判断する(ステップS122)。A-ECU151からD-ECU154に異常があった(ステップS122でYES)と判断した場合、スキャンツール200のCPUは、HV-ECU160のコネクタ163の異常(半嵌合または断線)であると判定する(ステップS123)。その後、スキャンツール200のCPUは、実行する処理をこの通信異常検出処理の呼出元の上位の処理に戻す。
【0050】
A-ECU151からD-ECU154の異常でない(ステップS122でNO)と判断した場合、スキャンツール200のCPUは、ステップS121での確認の結果、A-ECU151、C-ECU153およびD-ECU154に異常があったか否かを判断する(ステップS124)。A-ECU151、C-ECU153およびD-ECU154に異常があった(ステップS124でYES)と判断した場合、スキャンツール200のCPUは、電線対電線コネクタであるコネクタ166の異常(半嵌合または断線)であると判定する(ステップS125)。その後、スキャンツール200のCPUは、実行する処理をこの通信異常検出処理の呼出元の上位の処理に戻す。
【0051】
A-ECU151、C-ECU153およびD-ECU154の異常でない(ステップS124でNO)と判断した場合、スキャンツール200のCPUは、ステップS121での確認の結果、C-ECU153およびD-ECU154に異常があったか否かを判断する(ステップS126)。C-ECU153およびD-ECU154に異常があった(ステップS126でYES)と判断した場合、スキャンツール200のCPUは、セントラルゲートウェイ140のコネクタ141,144の異常(半嵌合または断線)であると判定する(ステップS127)。その後、スキャンツール200のCPUは、実行する処理をこの通信異常検出処理の呼出元の上位の処理に戻す。
【0052】
C-ECU153およびD-ECU154の異常でない(ステップS126でNO)と判断した場合、スキャンツール200のCPUは、ステップS121での確認の結果、その他の組合せのECUの異常があったか否かを判断する(ステップS128)。その他の組合せのECUの異常があった(ステップS128でYES)と判断した場合、スキャンツール200のCPUは、その組合せに含まれるECUの内部異常であると判定する(ステップS129)。その後、スキャンツール200のCPUは、実行する処理をこの通信異常検出処理の呼出元の上位の処理に戻す。
【0053】
その他の組合せのECUの異常でない(ステップS128でNO)と判断した場合、スキャンツール200のCPUは、実行する処理をこの通信異常検出処理の呼出元の上位の処理に戻す。
【0054】
上位の処理においては、スキャンツール200は、通信異常検出処理において検出した異常を表示するようにしてもよいし、内部のメモリに記憶するようにしてもよいし、外部のコンピュータに送信するようにしてもよい。
【0055】
本来、CAN通信において、通信途絶時間が十分に長ければ、HV-ECU160と他のECUとの双方で通信途絶の自己診断結果を確定する。しかし、HV-ECU160以外の他のECUは、HV-ECU160と比較して、自己診断結果の確定時間が早いことが多い。
【0056】
これは、通信異常の自己診断結果の確定時間が、通信データの送信周期によって決まるからである。HV-ECU160以外の他のECUが各々の制御で使用する情報(たとえば、車速,アクセル開度,シフト位置情報)を、HV-ECU160は早い周期で送信している。一方、HV-ECU160の受信周期は、送信周期より遅い。このため、他のECUがHV-ECU160との通信途絶の自己診断結果を確定する時間が、HV-ECU160が他のECUとの通信途絶の自己診断結果を確定する時間より早くなる。
【0057】
このため、通信途絶が短時間で正常に復帰した場合、他のECUが通信途絶の自己診断結果を履歴として記憶する一方、HV-ECU160が通信途絶の自己診断結果を履歴として記憶しないこととなるため、HV-ECU160以外の要因であっても、自己診断結果の履歴に基づいて、HV-ECU160が異常であると誤判断されて、異常でないHV-ECU160が正常品に交換されてしまう。
【0058】
また、通信途絶の自己診断結果を検出するECUの組合せによって、異常個所の絞り込みが可能である。しかし、HV-ECU160のコネクタ163の半嵌合などのコネクタ異常と、ECUの内部異常(たとえば、マイコン異常)との区別が、自己診断結果を検出したECUの組合せではできない。これは、HV-ECU160の内外の異常の切り分けのための情報がないためである。このため、コネクタ異常の場合であっても、HV-ECU160が異常であると誤判断されて、異常でないHV-ECU160が正常品に交換されてしまう。
【0059】
この開示によれば、上述したように、自己診断機能を有する各ECUが、通信途絶した相手のECUの情報を内部履歴として記憶する。また、HV-ECU160が通信が正常である履歴を残す。これにより、HV-ECU160の内部異常および外部異常を特定することが可能となり、外部異常の場合、HV-ECU160と他のECUとの間の異常部位の特定が可能となる。
【0060】
このため、HV-ECU160が正常であるのに交換されてしまわないようにすることができる。車両10の整備士は、この異常検出結果を確認することによって、異常個所を正しく修理することができる。
【0061】
[変形例]
(1) 前述した実施の形態においては、車両10がハイブリッド自動車であることとした。しかし、これに限定されず、車両10が、どのような車両であってもよく、たとえば、MGを備えずエンジンを備える車両であってもよいし、エンジンを備えずMGを備える電気自動車であってもよいし、MGと燃料電池とを備える燃料電池自動車であってもよい。
【0062】
(2) 前述した実施の形態におけるコネクタにおいて、メスコネクタとオスコネクタが、前述した構成と逆であってもよい。
【0063】
(3) 前述した実施の形態においては、図3の通信異常検出処理が、スキャンツール200によって実行されるようにした。しかし、これに限定されず、車両10のいずれかのECU、たとえば、HV-ECU160によって実行されるようにしてもよい。
【0064】
(4) 前述した実施の形態において、車両10およびスキャンツール200を含む異常検出システムの開示と捉えることができるし、車両10の開示と捉えることができるし、スキャンツール200の開示と捉えることができるし、異常検出システム、車両10またはスキャンツール200によって実行される異常検出方法の開示と捉えることができる。
【0065】
[まとめ]
(1) 図1から図3で示したように、この開示に係る異常検出システムは、通信の異常を検出するシステムである。図1および図2で示したように、異常検出システムは、第1のECU(たとえば、HV-ECU160)と、第1のECUと通信可能な複数の第2のECU(たとえば、A-ECU151からD-ECU154)と、第1のECUと複数の第2のECUとの通信経路上に複数のコネクタ接続部(たとえば、コネクタ141,144,163,166)とを備える。
【0066】
図2で示したように、複数のコネクタ接続部は、それぞれ、通信経路上の第1のECUの側である第1のコネクタ部(たとえば、メスコネクタ164,167,145、オスコネクタ143)と、第2のECUの側である第2のコネクタ部(たとえば、オスコネクタ165,168,146、メスコネクタ142)とを有する。図3で示したように、通信異常が発生した場合に、第2のコネクタ部の側に接続されたすべての第2のECUとの通信に異常があるコネクタ接続部のうち、接続された第2のECUの数が最も多いコネクタ接続部に異常があると判定する診断部(たとえば、スキャンツール200であってもよいし、HV-ECU160などの車両10のECUであってもよい。たとえば、ステップS122からステップS127)をさらに備える。
【0067】
これにより、通信異常が発生した場合に、コネクタ接続部の第1のECUと反対側に接続された第2のECUのすべてとの通信に異常があるコネクタ接続部のうち、接続された第2のECUの数が最も多いコネクタ接続部に異常があると判定される。このため、通信経路のいずれのコネクタ接続部に異常があるかを的確に特定することができる。その結果、通信の異常個所を的確に特定することができる。
【0068】
(2) 図3で示したように、診断部は、第1のECUの通信が正常であることを判定してもよい(たとえば、ステップS113)。これにより、第1のECUの通信が正常であるか否かを適切に判定することができる。
【0069】
(3) 図3で示したように、第1のECUは、自己の通信が正常であるか異常であるかを診断し(たとえば、HV-ECU160が自己診断機能を有し)、診断部は、第1のECUにより自己の通信が正常であると診断された場合に、第1のECUの通信が正常であると判定してもよい(たとえば、ステップS113)。
【0070】
これにより、第1のECUの自己の診断結果に基づいて第1のECUの通信が正常であるか否かを適切に判定することができる。
【0071】
(4) 図3で示したように、診断部は、第1のECUの通信が正常であると判定していない場合(たとえば、ステップS113でNOと判断した場合)、コネクタ接続部に異常があるかの判定結果に関わらず(たとえば、ステップS121からステップS127の処理の結果に関わらず)、第1のECUの通信が異常であると判定してもよい(たとえば、ステップS114)。
【0072】
これにより、第1のECUの通信が正常であると判定しない場合、第1のECUの通信が異常である可能性が高いため、第1のECUの異常を優先して判定することができる。
【0073】
(5) 図3で示したように、診断部は、第1のECUの通信が異常であると判定した場合(たとえば、ステップS113でNOと判断した場合)は、コネクタ接続部の異常を判定しない(たとえば、ステップS121からステップS127の処理を実行しない)ようにしてもよい。
【0074】
これにより、第1のECUの通信が異常である場合に、コネクタ接続部の異常を判定することは無駄となる可能性があるところ、コネクタ接続部の異常を判定しないようにするため、無駄な判定を実行しないようにできる。
【0075】
(6) 図3のステップS121の説明で示したように、第1のECUは、第2のECUのいずれかとの通信が所定時間以上、途絶した場合に、当該通信が異常であると判定してもよい。これにより、通信経路のいずれのコネクタ接続部に異常があるかを明確に判定することができる。
【0076】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
10 車両、132 シフトレバー、133 アクセルペダル、134 エンジン回転速度センサ、140 セントラルゲートウェイ、141,144,147,163,166 コネクタ、142,145,148,164,167 メスコネクタ、143,146,149,165,168 オスコネクタ、151 A-ECU、152 B-ECU、153 C-ECU、154 D-ECU、160 HV-ECU、169 ケーブル、170 MG-ECU、171 PCU、172 第1MG、173 第2MG、180 エンジンECU、181 エンジン、191,192 バス、193 専用通信線、200 スキャンツール。
図1
図2
図3