(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】変速装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
F16H 61/02 20060101AFI20231121BHJP
F16H 61/22 20060101ALI20231121BHJP
F16H 61/682 20060101ALI20231121BHJP
F16H 63/42 20060101ALI20231121BHJP
F16H 59/08 20060101ALI20231121BHJP
B60K 20/02 20060101ALI20231121BHJP
F16H 59/68 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H61/22
F16H61/682
F16H63/42
F16H59/08
B60K20/02 E
F16H59/68
(21)【出願番号】P 2020125253
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 秀人
(72)【発明者】
【氏名】小泉 槙吾
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-187964(JP,A)
【文献】特開2008-232200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00-61/12
F16H 61/16-61/24
F16H 61/66-61/70
F16H 63/40-63/50
B60K 20/00-20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンジのうちいずれかのレンジを選択するよう運転者によって操作されるセレクタを有するセレクタモジュールと、
歯数の異なる複数のギヤの組み合わせによって複数のギヤ段を形成可能な変速機と、
前記複数のギヤ段のうちいずれかのギヤ段を形成するギヤイン状態といずれのギヤ段も形成しないニュートラル状態とを切替可能なアクチュエータと、
を備えた変速装置の制御装置であって、
前記セレクタモジュールは、
一のレンジから他のレンジに変更する前記セレクタの操作を阻止するシフトロックを行うシフトロック部と、
前記一のレンジから前記他のレンジに変更する、前記運転者による前記セレクタの操作意図を検知する検知部と、
を有し、
前記セレクタの操作意図が検知された場合に、前記シフトロック部によって前記シフトロックを行い、かつ、前記他のレンジに対応する前記ギヤ段が前記ギヤイン状態となるよう前記アクチュエータを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記他のレンジに対応する前記ギヤ段が前記ギヤイン状態となった場合に、前記シフトロック部による前記シフトロックを解除することを特徴とする変速装置の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記他のレンジに対応する前記ギヤ段が前記ギヤイン状態となるよう前記アクチュエータを制御した際に前記ギヤイン状態とならないギヤブロックが発生した場合には、前記ニュートラル状態に切り替えた後に再度、前記他のレンジに対応する前記ギヤ段が前記ギヤイン状態となるよう前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項1に記載の変速装置の制御装置。
【請求項3】
前記制御部には、前記セレクタによって選択されたレンジを表示する表示部が接続されており、
前記制御部は、前記シフトロックが解除された後に前記セレクタが前記一のレンジから前記他のレンジに変更されたタイミングで、前記表示部に前記他のレンジを表示させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の変速装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シフトバイワイヤ機構の電源のOFF時、イグニッションスイッチのOFF時、つまりシフトバイワイヤ機構を駆動できないときに、レンジ選択手段で選択したレンジと変速機内部のレンジとが不一致となってしまう不具合を解消することを目的とした自動変速装置の制御装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の自動変速装置の制御装置は、上記不具合を解消することを目的として、シフトバイワイヤ機構の電源のOFF時に、現在のレンジ選択手段の選択位置に関わらずレンジ選択手段の変位を規制するシフトロック機構を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の自動変速装置の制御装置にあっては、イグニッションスイッチのON時に、変速機においてギヤ段が成立しないギヤブロックが発生すると、シフトレバーで選択したレンジと変速機内部のレンジとが不一致となってしまう。このような不一致が生ずると、運転者に違和感や混乱を与えるおそれがある。
【0006】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、変速機においてギヤブロックが発生した場合であっても、セレクタにより選択されるレンジと変速機で成立しているギヤ段とを一致させることができ、運転者に違和感や混乱を与えないようにすることができる変速装置の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、複数のレンジのうちいずれかのレンジを選択するよう運転者によって操作されるセレクタを有するセレクタモジュールと、歯数の異なる複数のギヤの組み合わせによって複数のギヤ段を形成可能な変速機と、前記複数のギヤ段のうちいずれかのギヤ段を形成するギヤイン状態といずれのギヤ段も形成しないニュートラル状態とを切替可能なアクチュエータと、を備えた変速装置の制御装置であって、前記セレクタモジュールは、一のレンジから他のレンジに変更する前記セレクタの操作を阻止するシフトロックを行うシフトロック部と、前記一のレンジから前記他のレンジに変更する、前記運転者による前記セレクタの操作意図を検知する検知部と、を有し、前記セレクタの操作意図が検知された場合に、前記シフトロック部によって前記シフトロックを行い、かつ、前記他のレンジに対応する前記ギヤ段が前記ギヤイン状態となるよう前記アクチュエータを制御する制御部を備え、前記制御部は、前記他のレンジに対応する前記ギヤ段が前記ギヤイン状態となった場合に、前記シフトロック部による前記シフトロックを解除する構成を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、変速機においてギヤブロックが発生した場合であっても、セレクタにより選択されるレンジと変速機で成立しているギヤ段とを一致させることができ、運転者に違和感や混乱を与えないようにすることができる変速装置の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る変速装置の制御装置を搭載した車両の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る変速装置の制御装置を搭載した車両に設けられたセレクタのレンジパターンを示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る変速装置の制御装置によって実行される、セレクタ操作時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る変速装置の制御装置を搭載した車両におけるセレクタ操作時のタイミングチャートの一例であって、ニュートラルレンジからリバースレンジにセレクタを操作したときの例である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係る変速装置の制御装置を搭載した車両に設けられたセレクタのレンジパターンの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る変速装置の制御装置は、複数のレンジのうちいずれかのレンジを選択するよう運転者によって操作されるセレクタを有するセレクタモジュールと、歯数の異なる複数のギヤの組み合わせによって複数のギヤ段を形成可能な変速機と、複数のギヤ段のうちいずれかのギヤ段を形成するギヤイン状態といずれのギヤ段も形成しないニュートラル状態とを切替可能なアクチュエータと、を備えた変速装置の制御装置であって、セレクタモジュールは、一のレンジから他のレンジに変更するセレクタの操作を阻止するシフトロックを行うシフトロック部と、一のレンジから他のレンジに変更する、運転者によるセレクタの操作意図を検知する検知部と、を有し、セレクタの操作意図が検知された場合に、シフトロック部によってシフトロックを行い、かつ、他のレンジに対応するギヤ段がギヤイン状態となるようアクチュエータを制御する制御部を備え、制御部は、他のレンジに対応するギヤ段がギヤイン状態となった場合に、シフトロック部によるシフトロックを解除することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る変速装置の制御装置は、変速機においてギヤブロックが発生した場合であっても、セレクタにより選択されるレンジと変速機で成立しているギヤ段とを一致させることができ、運転者に違和感や混乱を与えないようにすることができる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の一実施例に係る変速装置の制御装置について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る変速装置の制御装置を搭載した車両1の概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、車両1は、エンジン2と、変速機3と、クラッチ4と、駆動輪5と、セレクタモジュール6と、制御部としての自動変速機コントローラ10とを含んで構成されている。本実施例において、変速機3及びセレクタモジュール6は、変速装置を構成する。
【0013】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行うように構成されている。
【0014】
変速機3は、エンジン2から出力された回転を変速してドライブシャフト51を介して駆動輪5に伝達し、当該駆動輪5を駆動するようになっている。本実施例の変速機3は、例えば、平行軸歯車機構からなる常時噛合式、又は、選択したギヤを軸上でスライドさせて対応するギヤに噛み合わせる選択摺動式の変速機によって構成されている。
【0015】
変速機3は、歯数の異なる複数のギヤの組み合わせによって変速比の異なる複数のギヤ段を形成可能である。本実施例におけるギヤ段としては、後述するRレンジに対応する後進ギヤ段、後述するDレンジに対応する前進ギヤ段がある。前進ギヤ段には、さらに変速比の異なる変速段が複数ある。
【0016】
変速機3は、アクチュエータとしての変速機アクチュエータ31を有している。変速機アクチュエータ31は、変速機3の複数のギヤ段のうちいずれかのギヤ段を形成するギヤイン状態と、いずれのギヤ段も形成しないニュートラル状態と、を切替可能なアクチュエータである。ギヤイン状態では、形成されたギヤ段を構成する複数のギヤの間で動力伝達が可能となる。
【0017】
変速機アクチュエータ31は、自動変速機コントローラ10に接続されており、自動変速機コントローラ10からの指令に基づき、図示しない変速部材を作動してギヤイン状態とニュートラル状態とを切り替える。
【0018】
本実施例における変速機3は、変速機アクチュエータ31及び図示しないクラッチアクチュエータによってギヤ段の切替操作及びクラッチ操作が行われる、いわゆるAMT(Automated Manual Transmission)によって構成されている。
【0019】
クラッチ4は、エンジン2と変速機3との間に設けられ、締結又は非締結が切り換えられることにより、駆動輪5とエンジン2との間の動力伝達経路を遮断又は接続するものである。クラッチ4は、図示しないクラッチアクチュエータによって締結又は非締結が切り換えられる。
【0020】
セレクタモジュール6は、セレクタ61と、シフトロック部としてのシフトロック装置62と、検知部としてのセンサ63とを含んで構成されている。セレクタモジュール6は、車両1の運転席の近傍に設けられ、自動変速機コントローラ10に電気的に接続されている。
【0021】
セレクタモジュール6は、セレクタ61によって選択されたレンジを示す信号を自動変速機コントローラ10に出力する。自動変速機コントローラ10は、セレクタモジュール6から入力されたレンジを示す信号に基づき、変速機アクチュエータ31を駆動して変速機3をギヤイン状態又はニュートラル状態に制御する。さらに、変速機3がギヤイン状態に制御される場合には、後進ギヤ段、又は、変速比の異なる複数の前進ギヤ段のいずれかに制御される。
【0022】
このように、本実施例のセレクタモジュール6は、電気的な信号に基づき変速機アクチュエータ31によって変速機3におけるレンジの切替を行う、シフトバイワイヤ式のセレクタモジュールによって構成されている。
【0023】
セレクタ61は、複数のレンジのうちいずれかのレンジを選択するよう運転者によって操作されるシフトレバーによって構成されている。具体的には、
図2に示すように、セレクタ61は、セレクタモジュール6に設けられたストレートタイプのシフトパターン60に沿って操作される。
【0024】
本実施例における複数のレンジとしては、
図2中、「P」で示されるパーキングレンジ(以下、「Pレンジ」という)、
図2中、「R」で示されるリヤレンジ(以下、「Rレンジ」という)、
図2中、「N」で示されるニュートラルレンジ(以下、「Nレンジ」という)、
図2中、「D」で示されるドライブレンジ(以下、「Dレンジ」という)、
図2中、「M」で示されるマニュアルレンジ(以下、「Mレンジ」という)が設けられている。
図2では、セレクタ61がNレンジに位置している状態を示している。
【0025】
セレクタ61によってRレンジが選択されると、変速機3におけるレンジとして後進ギヤ段が形成される。セレクタ61によってDレンジが選択されると、変速機3におけるレンジとして複数の前進ギヤ段のうちいずれかが形成される。セレクタ61によってNレンジが選択されると、変速機3におけるレンジとしてニュートラル状態に制御される。
【0026】
シフトロック装置62は、セレクタモジュール6におけるレンジを一のレンジから他のレンジに変更するセレクタ61の操作を阻止する、すなわちセレクタ61の他のレンジへの移動を制限するシフトロックを行うものである。
【0027】
シフトロック装置62としては、例えば次のような構成の装置を用いることができる。すなわち、シフトロック装置62は、セレクタモジュール6のシフトパターン60において、PレンジとRレンジとの間(以下、「P-R間」という)、RレンジとNレンジとの間(以下、「R-N間」という)、及びNレンジとDレンジとの間(以下、「N-D間」という)のセレクタ61の移動経路上に突出可能なロックピンを有し、各ロックピンを図示しないアクチュエータによって作動させて前述の各レンジ間のセレクタ61の移動経路上に突出させることによりセレクタ61の移動を制限する。
【0028】
シフトロック装置62としては、上述した構成の装置に限らず、セレクタモジュール6のシフトパターン60においてセレクタ61の移動を制限可能なものであれば、どのような構成の装置を用いてもよい。
【0029】
センサ63は、セレクタモジュール6におけるレンジを一のレンジから他のレンジに変更する、運転者によるセレクタ61の操作意図を検知するようになっている。
【0030】
具体的には、
図2に示すように、シフトパターン60には、PレンジとRレンジとの境界PR(
図2中、破線Aで示す)を挟んでPレンジ側のR検知領域60a及びRレンジ側のP検知領域60bと、RレンジとNレンジとの境界RN(
図2中、破線Bで示す)を挟んでRレンジ側のN検知領域60c及びNレンジ側のR検知領域60dと、NレンジとDレンジとの境界ND(
図2中、破線Cで示す)を挟んでNレンジ側のD検知領域60e及びDレンジ側のN検知領域60fと、が設けられている。
【0031】
セレクタ61は、Pレンジ、Rレンジ、Nレンジ及びDレンジのいずれかが選択されている場合には、前述した各検知領域と重ならない位置に位置している。
【0032】
センサ63は、上述した各検知領域のそれぞれに配置されており、セレクタ61が各検知領域のいずれかに移動したことを検知する、例えばフォトセンサによって構成されている。なお、センサ63は、フォトセンサに限らず、例えばスイッチ式のセンサ等であってもよい。
【0033】
例えば、
図2において、一のレンジとしてNレンジが選択されている状態で、運転者によりセレクタ61がDレンジ側に操作されると、D検知領域60eに設けられたセンサ63によってセレクタ61が検知される。これにより、D検知領域60eに設けられたセンサ63は、NレンジからDレンジへの運転者によるセレクタ61の操作意図を検知することができる。
【0034】
このように、本実施例においては、いずれの検知領域のセンサ63によってセレクタ61が検知されたかによって、運転者が一のレンジから他のレンジとしていずれのレンジにセレクタ61を操作しようとしているのかを検知することができる。
【0035】
セレクタ61は、シフトロック装置62によって移動が制限されている場合であっても、各検知領域分は移動可能に構成されている。このため、センサ63は、シフトロック装置62によってセレクタ61の移動が制限されている場合であっても、運転者によりセレクタ61の操作意図を検知可能である。上述したシフトロック装置62のロックピンは、例えば各境界に位置している。
【0036】
自動変速機コントローラ10は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0037】
コンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを自動変速機コントローラ10として機能させるためのプログラムが格納されている。
【0038】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、本実施例における自動変速機コントローラ10として機能する。
【0039】
自動変速機コントローラ10には、変速機アクチュエータ31、図示しないクラッチアクチュエータ及びセレクタモジュール6等の各種装置が電気的に接続されている。
【0040】
自動変速機コントローラ10は、一のレンジから他のレンジへのセレクタ61の操作意図がセンサ63によって検知された場合に、シフトロック装置62によってシフトロックを行い、かつ、当該他のレンジに対応するギヤ段(以下、「他ギヤ段」という)がギヤイン状態となるように、すなわち他ギヤ段が形成されるように変速機アクチュエータ31を制御する。
【0041】
自動変速機コントローラ10は、シフトロック装置62によるシフトロック中に、他ギヤ段がギヤイン状態となった場合に、シフトロック装置62によるシフトロックを解除する。
【0042】
自動変速機コントローラ10は、例えば、シフトフォーク又は同期装置のスリーブの位置を検出する図示しないセンサからの入力に基づき、他ギヤ段がギヤイン状態となったか否かを判定することができる。他ギヤ段がギヤイン状態となったか否かは、前述した判定方法に限定されず、他の方法によって判定してもよい。
【0043】
自動変速機コントローラ10は、他ギヤ段がギヤイン状態となるように変速機アクチュエータ31を制御した際にギヤブロックが発生した場合には、変速機3をニュートラル状態に切り替えた後に再度、他ギヤ段がギヤイン状態となるように変速機アクチュエータ31を制御するリトライ動作を実行する。
【0044】
ギヤブロックとは、変速機3が常時噛合式である場合は同期装置の係合に失敗してギヤイン状態とならないことであり、変速機3が選択摺動式である場合はギヤ同士が噛み合わずギヤイン状態とならないことである。
【0045】
自動変速機コントローラ10は、例えば、変速機アクチュエータ31に駆動信号を送信した後、所定時間経過してもギヤイン状態となったと判定されない場合に、ギヤブロックが発生した、と判定することができる。
【0046】
また、自動変速機コントローラ10には、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内LAN(Local Area Network)を形成するためのCAN通信線70を介してメータ7が接続されている。
【0047】
メータ7には、スピードメータ等の各種計器類やランプ類の他、セレクタ61によって選択されたレンジを表示する表示部としてレンジ表示部71が設けられている。
【0048】
自動変速機コントローラ10は、シフトロック装置62によるシフトロックが解除された後にセレクタ61が一のレンジから他のレンジに変更されたタイミングで、レンジ表示部71に当該他のレンジを表示させる。
【0049】
次に、
図3を参照して、本実施例の自動変速機コントローラ10によって実行されるセレクタ操作時の処理の流れについて説明する。
【0050】
図3に示すように、自動変速機コントローラ10は、セレクタモジュール6におけるレンジを一のレンジから他のレンジに変更するセレクタ61の操作意図を、センサ63によって検知したか否かを判定する(ステップS1)。
【0051】
自動変速機コントローラ10は、ステップS1において一のレンジから他のレンジに変更するセレクタ61の操作意図を検知していないと判定した場合には、ステップS1の処理を繰り返す。
【0052】
自動変速機コントローラ10は、ステップS1において一のレンジから他のレンジに変更するセレクタ61の操作意図を検知したと判定した場合には、変速機3におけるギヤ段の変更を指示する(ステップS2)。具体的には、自動変速機コントローラ10は、他ギヤ段が形成されるように変速機アクチュエータ31を制御する駆動信号を変速機アクチュエータ31に送信する。また、このとき、自動変速機コントローラ10は、シフトロック装置62によってシフトロックを行う。
【0053】
次いで、自動変速機コントローラ10は、他ギヤ段がギヤイン状態か否かを判定する(ステップS3)。自動変速機コントローラ10は、ステップS3において他ギヤ段がギヤイン状態でないと判定した場合、ステップS3の処理を繰り返す。
【0054】
自動変速機コントローラ10は、ステップS3でギヤイン状態と判定されるまでステップS3の処理を繰り返し、所定時間経過してもギヤイン状態と判定されない場合にはギヤブロックが発生したものと判断してリトライ動作を実行する。
【0055】
自動変速機コントローラ10は、ステップS3において他ギヤ段がギヤイン状態であると判定した場合、シフトロック装置62によるシフトロックを解除する(ステップS4)。
【0056】
その後、自動変速機コントローラ10は、メータ7のレンジ表示部71に、他のレンジすなわち変更後のレンジを表示して(ステップS5)、セレクタ操作時の処理を終了する。
【0057】
次に、
図4を参照して、セレクタ操作時のセレクタ61、指示ギヤ段及び変速機3のギヤ段の各状態の遷移について説明する。
図4は、NレンジからRレンジにセレクタ61を操作したときの例である。
【0058】
図4に示すように、セレクタ61により一のレンジとしてNレンジが選択されている状態で、時刻t1において他のレンジとしてRレンジへのセレクタ61の操作意図が検知されると、シフトロック装置62によってシフトロックが行われ、セレクタ61のRレンジへの移動が制限される。
【0059】
その後、時刻t2において自動変速機コントローラ10によって変速機3に対してRレンジに対応するギヤ段が指示される。具体的には、Rレンジに対応するギヤ段が形成されるよう、自動変速機コントローラ10から変速機アクチュエータ31に駆動信号が送信される。
【0060】
その後、時刻t3において、変速機3においてRレンジに対応するギヤ段が形成されると、シフトロックが解除されてセレクタ61がRレンジに移動される。これにより、NレンジからRレンジへのセレクタ61の操作が完了する。
【0061】
以上のように、本実施例に係る変速装置の制御装置は、一のレンジから他のレンジへのセレクタ61の操作意図がセンサ63によって検知された場合に、シフトロック装置62によってシフトロックを行い、かつ、当該他のレンジに対応する他ギヤ段がギヤイン状態となるように変速機アクチュエータ31を制御するよう構成されている。
【0062】
また、本実施例に係る変速装置の制御装置は、シフトロック装置62によるシフトロック中に、他ギヤ段がギヤイン状態となった場合に、シフトロック装置62によるシフトロックを解除するよう構成されている。
【0063】
これら構成により、本実施例に係る変速装置の制御装置は、変速機3においてギヤブロックが発生した場合であっても、セレクタ61により選択されるレンジと変速機3で成立しているギヤ段とを一致させることができ、運転者に違和感や混乱を与えないようにすることができる。
【0064】
また、本実施例に係る変速装置の制御装置は、他ギヤ段がギヤイン状態となるように変速機アクチュエータ31を制御した際にギヤブロックが発生した場合には、変速機3をニュートラル状態に切り替えた後に再度、他ギヤ段がギヤイン状態となるように変速機アクチュエータ31を制御するリトライ動作を実行するよう構成されている。
【0065】
この構成により、本実施例に係る変速装置の制御装置は、ギヤブロックが発生した場合であってもリトライ動作によって他ギヤ段をギヤイン状態とすることができる。これにより、ギヤブロックが発生した場合であっても、セレクタ61により選択されるレンジと変速機3で成立しているギヤ段とを一致させることができる。
【0066】
また、本実施例に係る変速装置の制御装置は、シフトロック装置62によるシフトロックが解除された後にセレクタ61が一のレンジから他のレンジに変更されたタイミングで、レンジ表示部71に当該他のレンジを表示させるよう構成されている。
【0067】
この構成により、本実施例に係る変速装置の制御装置は、セレクタ61の操作完了のタイミングと、レンジ表示部71でのレンジの表示変更のタイミングと、を同期させることができ、レンジ表示部71におけるレンジ表示とセレクタ61で選択したレンジとの不一致による違和感を運転者に与えてしまうことを防止することができる。
【0068】
なお、本実施例においては、セレクタモジュール6に設けられたシフトパターンとしてストレートタイプのシフトパターン60を例示したが、これに限らず、例えば
図5に示すようなゲートタイプのシフトパターン160を用いてもよい。
図5に示すシフトパターン160では、Pレンジはシフトパターン160とは別に設けられたパーキング用ボタンの押下によって選択される。
【0069】
また、本実施例のセレクタモジュール6においては、レバー式のセレクタ61を用いたが、これに限らず、例えばダイヤル式やボタン式又はスイッチ式のセレクタを用いてもよい。
【0070】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0071】
1 車両
2 エンジン
3 変速機(変速装置)
4 クラッチ
6 セレクタモジュール(変速装置)
7 メータ
10 自動変速機コントローラ(制御部)
31 変速機アクチュエータ(アクチュエータ)
60、160 シフトパターン
61 セレクタ
62 シフトロック装置(シフトロック部)
63 センサ(検知部)
71 レンジ表示部(表示部)