(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20231121BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20231121BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20231121BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20231121BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01M10/48 301
B60L1/00 L
B60L58/10
B60L3/00 S
H02J7/00 S
(21)【出願番号】P 2020147638
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 裕也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 耕巳
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/026499(WO,A1)
【文献】特開2019-092335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1バッテリと、
前記第1バッテリに取り付けられた複数の第1温度センサと、
前記第1バッテリに隣接して配置された第2バッテリと、
前記第2バッテリに取り付けられた複数の第2温度センサと、
前記第1バッテリと前記第2バッテリとを管理する制御装置と、
を備える電源装置であって、
前記制御装置は、前記複数の第1温度センサからの温度に基づいて第1の異常診断手法により前記第1バッテリに高温異常が検出されたときには、前記複数の第2温度センサからの温度に基づいて前記第1の異常診断手法とは異なる第2の異常診断手法により前記第2バッテリの高温異常を診断する
装置であり、
前記第1の異常診断手法は、前記複数の第1温度センサのうちいずれかの温度センサからの温度が第1閾値以上のときに前記第1バッテリに高温異常が生じていると診断する手法であり、
前記第2の異常診断手法は、前記複数の第2温度センサの全ての温度センサからの温度が第2閾値以上のときに前記第2バッテリに高温異常が生じていると診断する手法である、
電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の電源装置であって、
前記制御装置は、前記第1バッテリに高温異常が検出されている状態で前記第2の異常診断手法では前記第2バッテリに高温異常が生じているとは診断されないときに、前記複数の第2温度センサのうち前記第1バッテリに最も近くに配置された温度センサを除くいずれかの温度センサからの所定時間当たりの温度変化量が所定変化量以上のときには、前記第2バッテリへの充電を制限する、
電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関し、詳しくは第1バッテリと第1バッテリとを備える電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電源装置としては、第1バッテリと第1バッテリの充放電を制御する第1制御部と第1バッテリを監視する第1監視部とを有する第1電源装置と、第2バッテリと第2バッテリの充放電を制御する第2制御部と第2バッテリを監視する第2監視部とを有する第2電源装置と、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、第2電源装置の第2監視部で第2バッテリに異常を検出したときには、第1電源装置の第1監視部は、第2電源装置の第2監視部から第2バッテリの状態を取得し、第1バッテリの状態と第2バッテリの状態とに基づいて第2バッテリの利用可否を表わす利用可否情報を生成する。第2電源装置の第2制御部は、第1電源装置が生成した利用可否情報を取得し、この情報に基づいて第2バッテリの充放電を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1バッテリと第2バッテリとを有する電源装置では、第1バッテリに取り付けられた複数の温度センサのいずれかの温度が閾値以上であるか否かにより第1バッテリの高温異常を診断し、第2バッテリに取り付けられた複数の温度センサのいずれかの温度が閾値以上であるか否かにより第2バッテリの高温異常を診断することが多い。第1バッテリと第2バッテリとを隣接して配置した電源装置では、第1バッテリに高温異常が検出されたときには、第2バッテリに高温異常が生じていないときでも、第2バッテリに取り付けられた複数の温度センサのうち第1バッテリに最も近くに取り付けられた温度センサからの温度が第1バッテリの高温に伴って閾値を超えると、第2バッテリに高温異常が生じていると診断する場合が生じる。
【0005】
本発明の電源装置は、第1バッテリと第2バッテリとを隣接して配置した電源装置において、第1バッテリに高温異常が診断されているときに第2バッテリの高温異常をより適正に診断することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電源装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の電源装置は、
第1バッテリと、
前記第1バッテリに取り付けられた複数の第1温度センサと、
前記第1バッテリに隣接して配置された第2バッテリと、
前記第2バッテリに取り付けられた複数の第2温度センサと、
前記第1バッテリと前記第2バッテリとを管理する制御装置と、
を備える電源装置であって、
前記制御装置は、前記複数の第1温度センサからの温度に基づいて第1の異常診断手法により前記第1バッテリに高温異常が検出されたときには、前記複数の第2温度センサからの温度に基づいて前記第1の異常診断手法とは異なる第2の異常診断手法により前記第2バッテリの高温異常を診断する、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の電源装置では、第1バッテリに取り付けられた複数の第1温度センサからの温度に基づいて第1の異常診断手法により第1バッテリに高温異常が検出されたときには、第2バッテリに取り付けられた複数の第2温度センサからの温度に基づいて第1の異常診断手法とは異なる第2の異常診断手法により第2バッテリの高温異常を診断する。これにより、第1バッテリに高温異常が診断されているときに第2バッテリの高温異常をより適正に診断することができる。
【0009】
本発明の電源装置において、前記第1の異常診断手法は、前記複数の第1温度センサのうちいずれかの温度センサからの温度が第1閾値以上のときに前記第1バッテリに高温異常が生じていると診断する手法であり、前記第2の異常診断手法は、前記複数の第2温度センサの全ての温度センサからの温度が第2閾値以上のときに前記第2バッテリに高温異常が生じていると診断する手法であるものとしてもよい。こうすれば、複数の第2温度センサのうち第1バッテリに最も近くに配置された温度センサからの温度だけが第2閾値以上となっても第2バッテリの高温異常は診断されないから、第1バッテリに高温異常が診断されているときに第2バッテリの高温異常をより適正に行なうことができる。ここで、第2閾値は、第1閾値と同じ値であってもよいし、異なる値であっても構わない。なお、第1閾値は、第1バッテリに変形など異常を生じさる温度より低い温度が用いられ、第2閾値は第2バッテリに変形などの異常を生じさせる温度より低い温度が用いられる。
【0010】
本発明の電源装置において、前記制御装置は、前記第1バッテリに高温異常が検出されている状態で前記第2の異常診断手法で前記第2バッテリに高温異常が生じているとは診断されないときに、前記複数の第2温度センサのうち前記第1バッテリに最も近くに配置された温度センサを除くいずれかの温度センサからの所定時間当たりの温度変化量が所定変化量以上のときには、前記第2バッテリへの充電を制限するものとしてもよい。第2バッテリへの充電の制限としては、第2バッテリへの充電の禁止が含まれる。こうすれば、第2バッテリの温度上昇を抑制することができ、第1バッテリに高温異常が検出されているときに同時に第2バッテリに高温異常が検出されるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例としての電源装置を搭載するハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【
図2】HVECU70により実行される異常診断処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例としての電源装置を搭載するハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、モータ30と、インバータ32と、クラッチ36と、自動変速装置40と、高電圧バッテリ60と、低電圧バッテリ67と、DC/DCコンバータ68と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「HVECU」という)70とを備える。
【0014】
エンジン22は、燃料タンクから燃料供給系を介して供給されるガソリンや軽油などを燃料として用いて吸気、圧縮、膨張(爆発燃焼)、排気の各行程により動力を出力する多気筒(4気筒や6気筒など)の内燃機関として構成されている。エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24により運転制御される。
【0015】
エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポート、通信ポートを備える。エンジンECU24には、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されており、エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。
【0016】
エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト23には、エンジン22をクランキングするためのスタータモータ25が接続されている。また、エンジン22のクランクシャフト23には、ねじれ要素としてのダンパ28の入力側も接続されている。
【0017】
モータ30は、例えば同期発電電動機として構成されている。インバータ32は、モータ30の駆動に用いられると共に高電圧側電力ライン61に接続されている。モータ30は、HVECU70によってインバータ32の複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。クラッチ36は、例えば油圧駆動の摩擦クラッチとして構成されており、ダンパ28の出力側とモータ30の回転軸との接続および接続の解除を行なう。
【0018】
自動変速装置40は、トルクコンバータ43と、6段変速の自動変速機45と、図示しない油圧回路とを備える。トルクコンバータ43は、一般的な流体式の伝導装置として構成されており、モータ30の回転軸に接続された入力軸41の動力を自動変速機45の入力軸である中間回転軸44にトルクを増幅して伝達したり、トルクを増幅することなくそのまま伝達したりする。自動変速機45は、中間回転軸44に接続されると共に駆動軸46に接続された出力軸42に接続され、複数の遊星歯車と、油圧駆動の複数の摩擦係合要素(クラッチ,ブレーキ)とを有する。なお、駆動軸46は、後輪55a、55bに車軸56およびリヤデファレンシャルギヤ57を介して連結されている。この自動変速機45は、例えば、複数の摩擦係合要素の係脱により第1速から第6速までの前進段や後進段を形成して中間回転軸44と出力軸42との間で動力を伝達する。
【0019】
高電圧バッテリ60は、例えばリチウムイオン二次電池として構成されており、インバータ32と共に高電圧側電力ライン61に接続されている。高電圧バッテリ60には、複数の温度センサ60a~60cが取り付けられている。低電圧バッテリ67は、定格電圧が高電圧バッテリ60よりも低い例えば鉛蓄電池として構成されており、スタータモータ25などの補機に接続された低電圧側電力ライン66に接続されている。停電亜圧バッテリには、複数の温度センサ67a~67cが取り付けられている。高電圧バッテリ60と低電圧バッテリ67は、配置台62に隣接して配置されている。DC/DCコンバータ68は、高電圧側電力ライン61と低電圧側電力ライン66とに接続されている。このDC/DCコンバータ68は、HVECU70によって制御されることにより、高電圧側電力ライン61の電力を低電圧側電力ライン66に電圧の降圧を伴って供給する。
【0020】
HVECU70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポート、通信ポートを備える。HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。HVECU70に入力される信号としては、例えば、モータ30の回転子の回転位置を検出する回転位置センサ(例えばレゾルバ)30aからのモータ30の回転子の回転位置φm、駆動軸46に取り付けられた回転数センサ46aからの駆動軸46の回転数Npなどを挙げることができる。また、高電圧バッテリ60の端子間に取り付けられた電圧センサからの高電圧バッテリ60の電圧Vhや、高電圧バッテリ60の出力端子に取り付けられた電流センサからの高電圧バッテリ60の電流Ih、低電圧バッテリ67の端子間に取り付けられた電圧センサ67aからの低電圧バッテリ67の電圧Vbも挙げることができる。さらに、高電圧バッテリ60に取り付けられた複数の温度センサ60a~60cからの温度や、低電圧バッテリ67に取り付けられた複数の温度センサ67a~67cからの温度も挙げることができる。加えて、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号や、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ88からの車速Vも挙げることができる。
【0021】
HVECU70からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。HVECU70から出力される信号としては、例えば、スタータモータ25への制御信号や、インバータ32への制御信号や、クラッチ36への制御信号、自動変速装置40への制御信号、DC/DCコンバータ68への制御信号も挙げることができる。HVECU70は、エンジンECU24と通信ポートを介して接続されている。
【0022】
なお、電源装置としては、高電圧バッテリ60、低電圧バッテリ67、複数の温度センサ60s~60c、67a~67c、HVECU70等が相当する。
【0023】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20に搭載された電源装置の動作、特に高電圧バッテリ60に高温異常が診断されているときに低電圧バッテリ67の高温異常を診断する際の動作について説明する。高電圧バッテリ60の高温異常は、例えば、高電圧バッテリ60に取り付けられた複数の温度センサ60a~60cのうちのいずれかの温度センサからの温度が第1閾値Tref1以上に至ったときに診断される。なお、第1閾値Tref1は、高電圧バッテリ60のセルに変形が生じるなどの異常が生じる温度より低い温度として予め定められており、例えば65℃や70℃,75℃などを用いることができる。
図2は、低電圧バッテリ67の高温異常を診断する際にHVECU70により実行される異常診断処理の一例を示すフローチャートである。この異常診断処理は所定時間毎(例えば数十msec毎)に繰り返し実行される。
【0024】
異常診断処理が実行されると、HVECU70は、まず、低電圧バッテリ67に取り付けられた温度センサ67a~67cにより検出される温度TLa~TLcを入力する処理を実行する(ステップS100)。続いて、高電圧バッテリ60に高温異常が診断されている(高温異常が生じている)か否かを判定する(ステップS110)。高電圧バッテリ60の高温異常の診断については上述した。高電圧バッテリ60に高温異常は診断されていない(高温異常が生じていない)と判定したときには、通常の診断手法により低電圧バッテリ67の高温異常を診断して(ステップS120)、本処理を終了する。通常の診断手法としては、高電圧バッテリ60の高温異常の診断手法と同様に、温度センサ67a~67cにより検出された温度TLa~TLcのいずれかが第2閾値Tref2以上のときに低電圧バッテリ67に高温以上が生じていると診断するものを用いることができる。第2閾値Tref2は、低電圧バッテリ67に変形が生じるなどの異常が生じる温度より低い温度として予め定められており、例えば65℃や70℃,75℃などを用いることができる。なお、第2閾値Tref2は、第1閾値Tref1と同一の温度であってもよいし、異なる温度であっても構わない。
【0025】
ステップS110で高電圧バッテリ60に高温異常が診断されている(高温異常が生じている)と判定したときには、低電圧バッテリ67に取り付けられた温度センサ67a~67cにより検出された温度TLa~TLcのすべてが第2閾値Tref2以上であるか否かを判定する(ステップS130)。温度TLa~TLcのすべてが第2閾値Tref2以上であると判定したときには、低電圧バッテリ67に高温異常が生じていると診断し(ステップS140)、低電圧バッテリ67の充放電を禁止して(ステップS150)、本処理を終了する。この場合の低電圧バッテリ67の高温異常の診断手法は、ステップS120で説明した通常時の低電圧バッテリ67の高温異常の診断手法(高電圧バッテリ60の高温異常の診断手法と同一の手法)とは異なる診断手法となる。なお、低電圧バッテリ67に高温異常が診断されたときに低電圧バッテリ67の充放電を禁止するのは、低電圧バッテリ67の破損等を抑止するためである。
【0026】
ステップS130で温度TLa~TLcのいずれかが第2閾値Tref2未満である(低電圧バッテリ67に高温異常が診断されていない)と判定したときには、低電圧バッテリ67に取り付けられた複数の温度センサ67a~67cのうち高電圧バッテリ67に最も近い温度センサ67aを除く温度センサ67b,67cにより検出された温度TLb,TLcの温度変化量ΔTLb,ΔTLcを計算する(ステップS160)。具体的には、温度センサ67b,67cにより検出された温度TLb,TLcから前回この異常診断処理を実行したときに入力した温度センサ67b,67cにより検出された温度TLb,TLcを減じることにより温度変化量ΔTLb,ΔTLcを計算する。この場合、温度変化量ΔTLb,ΔTLcは、異常診断処理の起動時間間隔当たりの温度変化量となる。なお、温度変化量ΔTLb,ΔTLcとしては、異常診断処理の起動時間間隔で除したものとしても構わない。こうすれば単位時間当たりの温度変化量となる。
【0027】
次に、温度変化量ΔTLb,ΔTLcのいずれかが第3閾値Tref3以上であるか否かを判定する(ステップS170)。第3閾値Tref3は、低電圧バッテリ67に高温異常が生じるときの異常診断処理の起動時間間隔当たりの温度変化量より小さい値を用いることができ、実験などにより予め定めることができる。温度変化量ΔTLb,ΔTLcのいずれかが第3閾値Tref3以上であると判定したときには、低電圧バッテリ67に高温異常は生じていないが高温異常が生じる可能性があると判断し、低電圧バッテリ67の放電は制限しないが充電を禁止するよう低電圧バッテリ67の充放電を制限し(ステップS180)、本処理を終了する。これにより、低電圧バッテリ67の温度上昇を抑制することができ、高電圧バッテリ60に高温異常が検出されているときに同時に低電圧バッテリ67に高温異常が検出されるのを抑制することができる。
【0028】
ステップS170で温度変化量ΔTLb,ΔTLcのいずれも第3閾値Tref3未満であると判定したときには、低電圧バッテリ67に高温異常が生じる恐れはないと判断し、低電圧バッテリ67の充放電を通常使用として(ステップS190)、本処理を終了する。
【0029】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20が搭載する電源装置では、高電圧バッテリ60に高温異常が診断されている(高温異常が生じている)と判定したときには、低電圧バッテリ67に取り付けられた温度センサ67a~67cにより検出された温度TLa~TLcのすべてが第2閾値Tref2以上であるか否かにより(高電圧バッテリ60の高温異常の診断手法とは異なる診断手法により)、低電圧バッテリ67の高温異常を診断する。即ち、低電圧バッテリ67に取り付けられた温度センサ67a~67cのうち高電圧バッテリ60に最も近い温度センサ67aを除く温度センサ67b,67cにより検出された温度TLb,TLcが第2閾値Tref2未満であっても温度センサ67aにより検出された温度TLaが第2閾値Tref2以上であることによって低電圧バッテリ67の高温異常を診断するものに比して、高電圧バッテリ60に高温異常が診断されているときに低電圧バッテリ67の高温異常をより適正に診断することができる。
【0030】
実施例のハイブリッド自動車20が搭載する電源装置では、高電圧バッテリ60に高温異常が診断されている状態で低電圧バッテリ67の高温異常が診断されない(高温異常が生じていない)ときに、低電圧バッテリ67に取り付けられた温度センサ67a~67cのうち高電圧バッテリ60に最も近い温度センサ67aを除く温度センサ67b,67cにより検出された温度TLb,TLcの異常診断処理の起動時間間隔当たりの温度変化量ΔTLb,ΔTLcのいずれかが第3閾値Tref3以上のときには、低電圧バッテリ67の放電は制限しないが充電を禁止するよう低電圧バッテリ67の充放電を制限する。これにより、低電圧バッテリ67の温度上昇を抑制することができ、高電圧バッテリ60に高温異常が検出されているときに同時に低電圧バッテリ67に高温異常が検出されるのを抑制することができる。
【0031】
実施例のハイブリッド自動車20が搭載する電源装置では、高電圧バッテリ60に高温異常が診断されている状態で低電圧バッテリ67の高温異常が診断されないときに、低電圧バッテリ67に取り付けられた温度センサ67a~67cのうち高電圧バッテリ60に最も近い温度センサ67aを除く温度センサ67b,67cにより検出された温度TLb,TLcの温度変化量ΔTLb,ΔTLcのいずれかが第3閾値Tref3以上のときには、低電圧バッテリ67の放電は制限しないが充電を禁止するよう低電圧バッテリ67の充放電を制限するものとした。しかし、低電圧バッテリ67の充電を禁止せずにある程度制限するものとしてもよいし、低電圧バッテリ67の充電を制限するだけでなく放電についても若干制限を課すものとしても構わない。
【0032】
実施例のハイブリッド自動車20に搭載された電源装置では、エンジン22のクランクシャフト23にスタータモータ25が接続されていると共にクランクシャフト23にクラッチ36を介してモータ30が接続されているハイブリッド自動車20に搭載されているものとした。しかし、駆動用のモータに電力供給する高電圧バッテリ60と補機等に電力供給する低電圧バッテリ67とを備えるものであれば、各種のハード構成のハイブリッド自動車や電気自動車に搭載された電源装置としてもよい。また、駆動用のモータに電力供給する2つの高電圧バッテリを備える各種のハード構成のハイブリッド自動車や電気自動車に搭載された電源装置としても構わない。さらに、2つのバッテリを備えるものであれば自動車以外の車両や移動体などに搭載される電源装置としてもよいし、建設設備などに組み込まれる電源装置としても差し支えない。
【0033】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、高電圧バッテリ60が「第1バッテリ」に相当し、複数の温度センサ60a~60cが「複数の第1温度センサ」に相当し、低電圧バッテリ67が「第2バッテリ」に相当し、複数の温度センサ67a~67cが「複数の第2温度センサ」に相当し、HVECU70が「制御装置」に相当する。
【0034】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0035】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、電源装置の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、23 クランクシャフト、24 エンジンECU、25 スタータモータ、28 ダンパ、30 モータ、30a 回転位置センサ、32 インバータ、36 クラッチ、40 自動変速装置、41 入力軸、46a 回転数センサ、42 出力軸、43 トルクコンバータ、44 中間回転軸、45 自動変速機、46 駆動軸、55a 後輪、56 車軸、57 リヤデファレンシャルギヤ、60 高電圧バッテリ、61 高電圧側電力ライン、62 配置台、66 低電圧側電力ライン、67 低電圧バッテリ、67a 電圧センサ、68 DC/DCコンバータ、70 HVECU、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ。