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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】車両用ルーフダクトの取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20231121BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B60H1/00 102S
B60R13/02 A
B60H1/00 102L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020161838
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054674
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中丸 和樹
(72)【発明者】
【氏名】正田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】林 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】久野 仁史
(72)【発明者】
【氏名】藤舛 章広
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-002251(JP,A)
【文献】実開平01-068909(JP,U)
【文献】実開平05-078607(JP,U)
【文献】特開2004-196066(JP,A)
【文献】特開2012-254680(JP,A)
【文献】実開平04-078012(JP,U)
【文献】特開2019-188856(JP,A)
【文献】特開2016-147636(JP,A)
【文献】特開2018-054274(JP,A)
【文献】米国特許第06508076(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
F24F 1/00-13/32
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の天井成形体にルーフダクトを取り付ける、車両用ルーフダクトの取付構造であって、
上記天井成形体及び上記ルーフダクトのいずれか一方に設けられた開口部の開口縁部と、
上記天井成形体及び上記ルーフダクトのいずれか他方に設けられ、上記開口縁部の差し込みが可能な保持隙間を隔てて互いに対向する第1対向部及び第2対向部と、
を備え、
上記天井成形体に対する上記ルーフダクトのスライド動作により上記開口縁部が上記保持隙間に差し込まれることによって上記開口縁部を上記第1対向部と上記第2対向部との間に保持する、車両用ルーフダクトの取付構造。
【請求項2】
上記開口縁部と上記第1対向部及び上記第2対向部との間にガスシールのための弾性シール部材が設けられており、上記弾性シール部材は、上記保持隙間への上記開口縁部の差し込み時に受ける荷重により押し潰されるように構成されている、請求項1に記載の、車両用ルーフダクトの取付構造。
【請求項3】
上記天井成形体には、空調風吹出口を有するレジスターがブラケット部材を介して取り付けられており、
上記開口部は上記ルーフダクトに設けられ、上記第1対向部は上記天井成形体の本体部によって構成され、上記第2対向部は上記ブラケット部材から延出した係合片部によって構成されている、請求項1または2に記載の、車両用ルーフダクトの取付構造。
【請求項4】
上記係合片部には、上記本体部との間の間隔を上記保持隙間への差込口に向かうにつれて段階的に拡開させるように傾斜した傾斜面が設けられている、請求項3に記載の、車両用ルーフダクトの取付構造。
【請求項5】
上記ルーフダクトには、上記開口縁部が差し込み開始位置から差し込み完了位置に向かうときの上記係合片部の動きをガイドするガイド溝が設けられている、請求項3または4に記載の、車両用ルーフダクトの取付構造。
【請求項6】
上記ガイド溝は、その溝幅が上記開口縁部の差し込み方向と逆方向に漸減するように傾斜した傾斜壁を有し、上記係合片部は、上記ガイド溝の上記傾斜壁に沿って傾斜した被ガイド面を有する、請求項5に記載の、車両用ルーフダクトの取付構造。
【請求項7】
上記天井成形体に対する上記ルーフダクトのスライド位置が上記開口縁部の上記差し込み開始位置と上記差し込み完了位置とのそれぞれにあることを視認するためのマーキング部を備える、請求項5または6に記載の、車両用ルーフダクトの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ルーフダクトの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両において、空調風が流れる流路を形成するルーフダクトを天井成形体に取り付ける取付構造が知られている。この種の取付構造が、下記の特許文献1,2に開示されている。
【0003】
引用文献1には、天井成形体であるヘッドライニングにルーフダクトであるエアコンダクトを取り付ける技術が開示されている。この技術によれば、ヘッドライニングに固定されたレインフォースの係止爪がエアコンダクトの係止穴に挿通されて折り曲げられた後、ヘッドライニングとエアコンダクトのそれぞれの位置決用穴にロケートピンが挿入された位置決め状態でヘッドライニングとエアコンダクトがタッカ止めされる。
【0004】
引用文献2には、天井成形体であるルーフトリムにルーフダクトを取り付ける技術が開示されている。この技術によれば、ルーフトリムの背面側がルーフダクトの周縁フランジにホットメルト系の接着剤を介して接着固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-312235号公報
【文献】特開2008-44422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1に開示の取付構造は、ルーフダクトの取り付けに係る固定箇所や部品の数が多いことから、構造が複雑でありコストが高くなるという問題を抱えている。これに対して、引用文献2に開示の取付構造は、構造を簡素化できる一方で、接着剤の塗布量をコントロールするのが難しく余分な接着剤が発生することで材料費がかさむうえ、大型で高価な塗布装置を準備する必要があるという問題が生じ得る。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、ルーフダクトを低コストで簡単に天井成形体に取り付けるのに有効な、車両用ルーフダクトの取付構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
車両の天井成形体にルーフダクトを取り付ける、車両用ルーフダクトの取付構造であって、
上記天井成形体及び上記ルーフダクトのいずれか一方に設けられた開口部の開口縁部と、
上記天井成形体及び上記ルーフダクトのいずれか他方に設けられ、上記開口縁部の差し込みが可能な保持隙間を隔てて互いに対向する第1対向部及び第2対向部と、
を備え、
上記天井成形体に対する上記ルーフダクトのスライド動作により上記開口縁部が差込口を通じて上記保持隙間に差し込まれることによって上記開口縁部を上記第1対向部と上記第2対向部との間に保持する、車両用ルーフダクトの取付構造、
にある。
【発明の効果】
【0009】
上記の、車両用ルーフダクトの取付構造によれば、天井成形体に対するルーフダクトのスライド動作を利用して、天井成形体及びルーフダクトのいずれか一方側の開口縁部を、天井成形体及びルーフダクトのいずれか他方側の第1対向部及び第2対向部との間の保持隙間に差し込むことによって、開口縁部を保持できる。これにより、天井成形体にルーフダクトを取り付けることが可能になる。
【0010】
このような取付構造の場合、ルーフダクトの取り付けに係る固定箇所や部品の数が少なくて済み、接着剤や接着剤用の塗布装置を使用する必要もないため、簡単な構造でコストを低く抑えることができる。
【0011】
以上のごとく、上記の態様によれば、ルーフダクトを低コストで簡単に天井成形体に取り付けるのに有効な、車両用ルーフダクトの取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1の、車両用ルーフダクトの取付構造の平面図。
図2図1中のブラケット部材の斜視図。
図3図2のブラケット部材の係合片部の平面図。
図4図3のIV-IV線矢視断面図。
図5】実施形態1の、車両用ルーフダクトの取付構造をルーフダクトが取り付け開始位置にあるときの状態にて示す斜視図。
図6図5の平面図。
図7図6のVII-VII線矢視断面図。
図8】実施形態1の、車両用ルーフダクトの取付構造をルーフダクトが取り付け完了位置にあるときの状態にて示す斜視図。
図9図8の平面図。
図10図9のX-X線矢視断面図。
図11】実施形態2の、車両用ルーフダクトの取付構造について図5に対応した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述の態様の好ましい実施形態について説明する。
【0014】
上記の、車両用ルーフダクトの取付構造において、上記開口縁部と上記第1対向部及び上記第2対向部との間にガスシールのための弾性シール部材が設けられており、上記弾性シール部材は、上記保持隙間への上記開口縁部の差し込み時に受ける荷重により押し潰されるように構成されているのが好ましい。
【0015】
この取付構造によれば、弾性シール部材は、開口縁部が第1対向部と第2対向部との間の保持隙間に差し込まれたときに受ける荷重によって押し潰される。このとき、弾性シール部材の弾性的な復元力により開口縁部の保持力が高くなるため、ルーフダクトの取り付けに関する信頼性を向上させることができる。ガスシール用の弾性シール部材を開口縁部の保持力を高めるための部材に兼用することによって、部品点数が増えるのを防ぐことができる。
【0016】
上記の、車両用ルーフダクトの取付構造において、上記天井成形体には、空調風吹出口を有するレジスターがブラケット部材を介して取り付けられており、上記開口部は上記ルーフダクトに設けられ、上記第1対向部は上記天井成形体の本体部によって構成され、上記第2対向部は上記ブラケット部材から延出した係合片部によって構成されているのが好ましい。
【0017】
この取付構造によれば、ルーフダクトに設けられた開口部の開口縁部を、天井成形体側の本体部とブラケット部材の係合片部との間の保持隙間に差し込むことによって、天井成形体にルーフダクトを取り付けることが可能になる。
【0018】
上記の、車両用ルーフダクトの取付構造において、上記係合片部には、上記本体部との間の間隔を上記保持隙間への差込口に向かうにつれて段階的に拡開させるように傾斜した傾斜面が設けられているのが好ましい。
【0019】
この取付構造によれば、開口縁部は保持隙間への差し込み時に、係合片部の傾斜面にしたがって天井成形体の本体部との間の間隔が段階的に狭くなることによって、保持隙間まで段階的にガイドされる。これにより、保持隙間への開口縁部の差し込み不良を抑制できるとともに、係合片部に一定の角度で傾斜した傾斜面を設ける場合に比べると、係合片部の延出方向の寸法を小さく抑えたうえで開口縁部の所望のガイド機能を得ることが可能になる。
【0020】
上記の、車両用ルーフダクトの取付構造において、上記ルーフダクトには、上記開口縁部が差し込み開始位置から差し込み完了位置に向かうときの上記係合片部の動きをガイドするガイド溝が設けられているのが好ましい。
【0021】
この取付構造によれば、天井成形体に対するルーフダクトのスライド動作の際に、ルーフダクトに設けられているガイド溝に係合片部が挿入されることによって、開口縁部を差し込み開始位置から差し込み完了位置に向けてガイドすることができる。これにより、ガイド溝と係合片部を利用して開口縁部の差し込み動作の円滑化を図ることができる。
【0022】
上記の、車両用ルーフダクトの取付構造において、上記ガイド溝は、その溝幅が上記開口縁部の差し込み方向と逆方向に漸減するように傾斜した傾斜壁を有し、上記係合片部は、上記ガイド溝の上記傾斜壁に沿って傾斜した被ガイド面を有するのが好ましい。
【0023】
この取付構造によれば、係合片部は被ガイド面をガイド溝の傾斜壁と係合させることによってガイド溝に誘い込まれる。係合片部をガイド溝に誘い込むときに、ガイド溝に対する係合片部の溝幅方向の多少の位置ズレが傾斜壁によって許容される。このため、ガイド溝に対する係合片部の厳密な位置合わせを要することなく、開口縁部を差し込み開始位置から差し込み完了位置に向けてガイドすることができる。
【0024】
上記の、車両用ルーフダクトの取付構造は、上記天井成形体に対する上記ルーフダクトのスライド位置が上記開口縁部の上記差し込み開始位置と上記差し込み完了位置とのそれぞれにあることを視認するためのマーキング部を備えるのが好ましい。
【0025】
この取付構造によれば、作業者は天井成形体に対するルーフダクトのスライド位置が開口縁部の差し込み開始位置にあること、また開口縁部の差し込み完了位置にあることをマーキング部によって容易に視認できる。マーキング部を利用することにより、作業者の勘やコツのみに頼ることなく、天井成形体にルーフダクトを取り付ける作業を行うことが可能になる。
【0026】
(実施形態1)
以下、実施形態1の、車両用ルーフダクトの取付構造(以下、単に「取付構造」ともいう。)について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
なお、本明細書の説明で参照する図面では、特に断わらない限り、車両前方を矢印FRで示し、車両外方を矢印OUTで示し、車両上方を矢印UPで示している。また、ルーフダクトの長手方向である第1方向を矢印Xで示し、その短手方向である第2方向を矢印Yで示し、その厚み方向である第3方向を矢印Zで示している。
【0028】
図1に示されるように、実施形態1の取付構造101は、車両の天井成形体1にルーフダクト10を車両前後方向の二箇所で取り付けるためのものである。これにより、ルーフダクト10は、2つの取付構造101を介して天井成形体1に取り付けられる。なお、取付構造101の数は特に限定されるものではなく、その数を必要に応じて適宜に設定することができる。
【0029】
天井成形体1は、ルーフダクト10の車室内側を覆うためのものである。天井成形体1には、空調風吹出口20aを有するレジスター20(図1中の二点鎖線を参照)がブラケット部材21を介して取り付けられている。このため、レジスター20及びブラケット部材21が天井成形体1に対して固定されている。レジスター20には、空調風吹出口20aの開度を調整可能な複数のフィン(図示省略)が配設されている。
【0030】
ルーフダクト10は、天井成形体1の両面のうちの取付面1aに取り付けられる。取付面1aは、ルーフパネル(図示省略)に対向する、車室内とは反対側の面である。ルーフダクト10には、空調風が流れる空調風流路10aと、開口部11と、が設けられている。開口部11は、空調風流路10aをレジスター20の空調風吹出口20aに連通させるための開口部分である。このため、空調風流路10aを流れる空調風を、レジスター20の空調風吹出口20aを通じて車室内に吹き出し可能になっている。また、ルーフダクト10には、ブラケット部材21との固定に用いられる固定穴13が設けられている。
【0031】
なお、ルーフダクト10、レジスター20、ブラケット部材21のそれぞれの材質や構造は特に限定されないが、成形性や軽量化を考慮した場合、樹脂材料からなる一体成形品として構成されるのが好ましい。
【0032】
取付構造101は、ルーフダクト10に設けられている開口部11の開口縁部12と、天井成形体1の本体部2によって構成された第1対向部と、ブラケット部材21から延出した係合片部22によって構成された第2対向部と、を備えている。本体部2と係合片部22は、いずれも天井成形体1側に設けられており、開口縁部12の差し込みが可能な保持隙間3(図2を参照)を隔てて互いに対向している。
【0033】
この取付構造101によれば、天井成形体1に対するルーフダクト10の第1方向Xのスライド動作により開口縁部12が保持隙間3に差し込まれることによって開口縁部12を本体部2と係合片部22との間に保持する機能を果たす。
【0034】
取付構造101は、天井成形体1に対するルーフダクト10のスライド位置を視認するためのマーキング部40を備えている。このマーキング部40は、天井成形体1の取付面1aに設けられた第1マーキング41及び第2マーキング42と、ルーフダクト10の表面に設けられた基準マーキング43と、によって構成されている。
【0035】
マーキング部40は、基準マーキング43が第1マーキング41に合致したときに、開口縁部12が差し込み開始位置(後述の差し込み開始位置P1)にあることを作業者が視認することができるようになっている。また、マーキング部40は、天井成形体1に対するルーフダクト10のスライド動作時に基準マーキング43が第2マーキング42に合致したときに、開口縁部12が差し込み完了位置(後述の差し込み完了位置P2)にあることを作業者が視認することができるようになっている。このマーキング部40によれば、天井成形体1に対してルーフダクト10を第1方向X及び第2方向Yについて位置合わせすることができる。
【0036】
図2に示されるように、ブラケット部材21は、第3方向Zを板厚方向とする板状部材であり、その本体部分に開口部21aを有する。ブラケット部材21は、開口部21aがレジスター20の空調風吹出口20aに連通するように天井成形体1に取り付けられている。
【0037】
ブラケット部材21には、天井成形体1との固定に使用される2つの第1固定穴21bと、ルーフダクト10との固定に使用される1つの第2固定穴21cと、が設けられている。ルーフダクト10が天井成形体1に対する取付完了位置にあるとき、ルーフダクト10側の固定穴13とブラケット部材21側の第2固定穴21cにクリップ留め用のクリップ部材(図示省略)が挿通可能になる。
【0038】
ブラケット部材21は、第1方向Xの一端部から第1方向Xに遠ざかるように延出した係合片部22を有する。係合片部22は、第2方向Yを板幅方向とし、第3方向Zを板厚方向とする板状部である。この係合片部22は、板厚が一様であり、第2方向Yと第3方向Zとによって定まる切断面についての断面形状が略長方形をなすように構成されている。
【0039】
なお、必要に応じて、係合片部22の断面形状が略正方形、略円形、略楕円形などの別形状になるように形状変更することもできる。また、係合片部22を複数に分割するようにしてもよい。
【0040】
図3及び図4に示されるように、ブラケット部材21は、係合片部22との間に第3方向Zに段差状に立設した立設壁部21dを有する。係合片部22には、立設壁部21d側から順に、水平部22aと、第1傾斜部22bと、第2傾斜部22cと、が設けられている。
【0041】
図3に示されるように、係合片部22の第2方向Yの両側の面は、天井成形体1に対するルーフダクト10のスライド動作の際に、ルーフダクト10の後述のガイド溝14(図5を参照)によってガイドされる被ガイド面23となる。
【0042】
図4に示されるように、第1傾斜部22bは、水平部22aに対して鋭角である角度θaで傾斜している。第2傾斜部22cは、水平部22aに対して角度θaを上回る鋭角である角度θbで傾斜している。このため、係合片部22には、天井成形体1の本体部2との間の間隔Gを保持隙間3への差込口4に向かうにつれて段階的に拡開させるように傾斜した傾斜面24が設けられている。本実施形態では、傾斜面24が二段階で傾斜しているが、必要に応じて、傾斜面24を三段階以上で傾斜させてもよい。
【0043】
次に、図5及び図6を参照しながら、ルーフダクト10の内部の構造について説明する。実際の製品ではルーフダクト10の内部が遮蔽されているため、これらの図面では、説明の便宜上、ルーフダクト10の外表面を部分的にくり抜いた状態で示している。
【0044】
図5に示されるように、ルーフダクト10には、開口縁部12が差し込み開始位置P1から差し込み完了位置P2(図8を参照)に向かうときの係合片部22の動きをガイドするガイド溝14が設けられている。
【0045】
図6に示されるように、ガイド溝14は、その第2方向Yの溝幅Dが開口縁部12の差し込み方向と逆方向に漸減するように、即ち徐々に狭くなるように傾斜した2つの傾斜壁15を有する。これに対して、係合片部22の2つの被ガイド面23は、ガイド溝14の2つの傾斜壁15に沿って傾斜している。なお、必要に応じて、ガイド溝14の構造を2つの傾斜壁15が互いに平行となるように変更してもよい。
【0046】
ルーフダクト10には、開口縁部12と天井成形体1の本体部2との間のガスシールのための弾性シール部材30が設けられている。弾性シール部材30は、開口縁部12に沿って環状に形成されている。ルーフダクト10の空調風流路10aから空調風が漏れるのがこの弾性シール部材30によって防止される。弾性シール部材30は、保持隙間3への開口縁部12の差し込み時に受ける荷重により押し潰されるように構成されている。弾性シール部材30は、典型的には、ウレタン等の樹脂材料や、ゴム材料のような弾性変形可能な素材からなるのが好ましい。
【0047】
図5図7には、ルーフダクト10の開口縁部12が差し込み開始位置P1にあるときの状態について示されている。作業者は、基準マーキング43が第1マーキング41に合致するように天井成形体1に対するルーフダクト10の位置を調整することによって、開口縁部12を差し込み開始位置P1に設定できる。この差し込み開始位置P1は、天井成形体1に対するルーフダクト10の取付開始位置に相当する。
【0048】
開口縁部12が差し込み開始位置P1に設定されたとき、ルーフダクト10のガイド溝14とブラケット部材21の係合片部22との間で第2方向Yについての概ねの位置合わせがなされる(図5及び図6を参照)。また、開口縁部12と差込口4との間で第3方向Zについての概ねの位置合わせがなされる(図7を参照)。
【0049】
その後、天井成形体1とルーフダクト10の少なくとも一方を第1方向Xに互いに近づくようにスライドさせることによって、開口縁部12を天井成形体1の本体部2とブラケット部材21の係合片部22との間の保持隙間3に差し込むことができる。このとき、作業者は、基準マーキング43が第2マーキング42に合致するように天井成形体1に対するルーフダクト10のスライド位置を調整することによって、開口縁部12を差し込み完了位置P2に設定できる。
【0050】
図8図10には、ルーフダクト10の開口縁部12が差し込み完了位置P2にあるときの状態について示されている。この差し込み完了位置P2は、天井成形体1に対するルーフダクト10の取付完了位置に相当する。
【0051】
開口縁部12が差し込み完了位置P2に設定されたき、ブラケット部材21の係合片部22は、その被ガイド面23がガイド溝14の傾斜壁15と係合することによってガイド溝14に誘い込まれた状態にある。(図8及び図9を参照)。開口縁部12は、差込口4を通じて保持隙間3に差し込まれ、ブラケット部材21に設けられたストッパとしての立設壁部21dによりその差し込み方向の動きが阻止された状態にある(図10を参照)。
【0052】
また、弾性シール部材30は、保持隙間3への開口縁部12の差し込み時に受ける荷重により第3方向Zに押し潰された状態にある(図10を参照)。これにより、開口縁部12は、その第3方向Zの両面が弾性シール部材30を介して天井成形体1の本体部2と係合片部22によって強固に挟み込まれた状態にある。
【0053】
その後、ルーフダクト10側の固定穴13(図1を参照)とブラケット部材21側の第2固定穴21c(図2を参照)とクリップ部材(図示省略)を利用して、ルーフダクト10を天井成形体1にクリップ留めすることができる。
【0054】
次に、実施形態1の作用効果について説明する。
【0055】
実施形態1の取付構造101によれば、天井成形体1に対するルーフダクト10のスライド動作を利用して、ルーフダクト10側の開口縁部12を、天井成形体1の本体部2とブラケット部材21の係合片部22との間の保持隙間3に差し込むことによって、開口縁部12を保持できる。これにより、天井成形体1にルーフダクト10を取り付けることが可能になる。
【0056】
このような取付構造101の場合、ルーフダクト10の取り付けに係る固定箇所や部品の数が少なくて済み、接着剤や接着剤用の塗布装置を使用する必要もないため、簡単な構造でコストを低く抑えることができる。
【0057】
従って、実施形態1によれば、ルーフダクト10を低コストで簡単に天井成形体1に取り付けるのに有効な、車両用ルーフダクトの取付構造101を提供することができる。
【0058】
実施形態1の取付構造101によれば、弾性シール部材30は、開口縁部12が天井成形体1の本体部2とブラケット部材21の係合片部22との間の保持隙間3に差し込まれたときに受ける荷重によって押し潰される。このとき、弾性シール部材30の弾性的な復元力により開口縁部12の保持力が高くなるため、ルーフダクト10の取り付けに関する信頼性を向上させることができる。ガスシール用の弾性シール部材30を開口縁部12の保持力を高めるための部材に兼用することによって、部品点数が増えるのを防ぐことができる。
【0059】
実施形態1の取付構造101によれば、開口縁部12は保持隙間3への差し込み時に、係合片部22の傾斜面24にしたがって天井成形体1の本体部2との間の間隔Gが段階的に狭くなることによって、保持隙間3まで段階的にガイドされる。これにより、保持隙間3への開口縁部12の差し込み不良を抑制できるとともに、係合片部22に一定の角度で傾斜した傾斜面を設ける場合に比べると、係合片部22の延出方向である第1方向Xの寸法を小さく抑えたうえで開口縁部12の所望のガイド機能を得ることが可能になる。
【0060】
実施形態1の取付構造101によれば、天井成形体1に対するルーフダクト10のスライド動作の際に、ルーフダクト10に設けられているガイド溝14に係合片部22が挿入されることによって、開口縁部12を差し込み開始位置P1から差し込み完了位置P2に向けてガイドすることができる。これにより、ガイド溝14と係合片部22を利用して開口縁部12の差し込み動作の円滑化を図ることができる。
【0061】
実施形態1の取付構造101によれば、係合片部22は被ガイド面23をガイド溝14の傾斜壁15と係合させることによってガイド溝14に誘い込まれる。係合片部22をガイド溝14に誘い込むときに、ガイド溝14に対する係合片部22の溝幅方向である第2方向Yの多少の位置ズレが傾斜壁15によって許容される。このため、ガイド溝14に対する係合片部22の厳密な位置合わせを要することなく、開口縁部12を差し込み開始位置P1から差し込み完了位置P2に向けてガイドすることができる。
【0062】
実施形態1の取付構造101によれば、作業者は天井成形体1に対するルーフダクト10のスライド位置が開口縁部12の差し込み開始位置P1にあること、また開口縁部12の差し込み完了位置P2にあることをマーキング部40によって容易に視認できる。マーキング部40を利用することにより、作業者の勘やコツのみに頼ることなく、天井成形体1にルーフダクト10を取り付ける作業を行うことが可能になる。
【0063】
以下、実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0064】
(実施形態2)
図11に示されるように、実施形態2の取付構造201は、第1対向部としての本体部2に対する第2対向部を、ブラケット部材21とは別に設ける点で、実施形態1の取付構造101と相違している。
【0065】
この取付構造201において、第2対向部としての係合片部5が天井成形体1に直接固定されている。このため、天井成形体1に対するルーフダクト10の第1方向Xのスライド動作により開口縁部12が天井成形体1の本体部2と係合片部5との間の保持隙間3に差し込まれるように構成されている。
【0066】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0067】
実施形態2の取付構造201によれば、取付構造101におけるブラケット部材21の係合片部22を省略することができる。
【0068】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0069】
本発明は、上述の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0070】
上述の実施形態では、ルーフダクト10側に設けられた開口部11の開口縁部12を、天井成形体側に設けられた2つの対向部の間の保持隙間に差し込む場合について例示したが、これに代えて、天井成形体側に開口縁部12に相当する要素を設け、ルーフダクト10側に2つの対向部に相当する要素を設ける取付構造を採用することもできる。
【0071】
上述の実施形態では、ガイド溝14とマーキング部40の両方を備える取付構造101,201について例示したが、これに代えて、ガイド溝14とマーキング部40の少なくとも一方が省略された取付構造を採用することもできる。
【符号の説明】
【0072】
1 天井成形体
2 本体部(第1対向部)
3 保持隙間
4 差込口
5 係合片部(第2対向部)
10 ルーフダクト
11 開口部
12 開口縁部
14 ガイド溝
15 傾斜壁
20 レジスター
20a 空調風吹出口
21 ブラケット部材
22 係合片部(第2対向部)
23 被ガイド面
24 傾斜面
30 弾性シール部材
40 マーキング部
101,201 車両用ルーフダクトの取付構造
D 溝幅
P1 差し込み開始位置
P2 差し込み完了位置
G 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11