(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
B60W 20/12 20160101AFI20231121BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20231121BHJP
B60W 20/20 20160101ALI20231121BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20231121BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20231121BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20231121BHJP
B60L 58/14 20190101ALI20231121BHJP
【FI】
B60W20/12 ZHV
B60K6/445
B60W20/20
B60W20/00 900
B60L50/61
B60L3/00 S
B60L58/14
(21)【出願番号】P 2020179461
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 友希
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-097697(JP,A)
【文献】特開2020-069896(JP,A)
【文献】特開2015-157557(JP,A)
【文献】特開2004-098726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-20/50
B60K 6/20- 6/547
B60L 1/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に駆動力を発生させる電動機と、
前記電動機に電力を供給する蓄電装置と、
前記蓄電装置を充電する発電電力を発生させるエンジンと、
前記エンジンと前記電動機とを複数の制御モードのうちのいずれかの制御モードに従って制御する制御装置とを備え、
前記複数の制御モードは、CD(Charge Depleting)モードと、CS(Charge Sustaining)モードとを含み、
前記制御装置は、
予め定められた条件が成立後に
支援条件が成立する場合に、前記車両の外部から取得される外部情報を用いて前記車両の目的地までの走行経路を構成する複数の区間の各々に前記CDモードと前記CSモードとのうちのいずれかを割り当てた走行計画に従って、前記制御モードを切り替える切替制御を実行し、
前記予め定められた条件が成立する前に実行履歴がある場合には、前記実行履歴を用いて、前記切替制御を実行しない場合の前記エンジンを停止させた状態での前記蓄電装置の電力を用いた電動走行による第1走行距離と、前記切替制御を実行する場合の前記エンジンを停止させた状態での前記電動走行による第2走行距離とを算出し、
前記予め定められた条件が成立してから前記切替制御が開始するまでの期間における前記エンジンを停止させた状態での前記電動走行による走行距離を加算して前記第2走行距離を算出
し、
前記切替制御の実行中に前記切替制御を一時的に中断する場合、前記切替制御が中断されるまでの前記第1走行距離および前記第2走行距離を含む情報を前記実行履歴として記憶する、ハイブリッド車両。
【請求項2】
前記予め定められた条件は、前記車両の制御システムが起動するという条件を含む、請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記予め定められた条件は、
前記切替制御を一時的
に中断状態
にする制御中断条件が不成立になるという条件を含む、請求項1または2に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記制御装置は、前記蓄電装置の温度異常が発生する場合、前記蓄電装置の電力枯渇が発生する場合、前記車両の前記走行経路からの離脱が発生する場合、および、前記CDモード中における前記エンジンの始動が行なわれる場合のうちの少なくともいずれかの場合に、前記切替制御が実行中であると、前記切替制御を一時的な中断状態にする、請求項3に記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
前記実行履歴は、前記予め定められた条件が成立する前の期間における前記第1走行距離と前記第2走行距離とに関する情報を含む、請求項1~4のいずれかに記載のハイブリッド車両。
【請求項6】
前記車両は、外部の携帯端末と通信可能な通信装置と、予め定められた情報を報知する報知装置とのうちの少なくともいずれかをさらに備え、
前記制御装置は、前記報知装置および前記通信装置を経由した前記携帯端末のうちの少なくともいずれかを用いて前記切替制御の実行による効果に関する情報を報知する、請求項1~5のいずれかに記載のハイブリッド車両。
【請求項7】
前記車両は、外部のサーバを経由して携帯端末と通信可能な通信装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記切替制御の実行による効果に関する情報を前記携帯端末に送信する、請求項1~5のいずれかに記載のハイブリッド車両。
【請求項8】
前記制御装置は、前記実行履歴がない場合には、前記予め定められた条件が成立してから前記切替制御が開始するまでの期間における前記エンジンを停止させた状態での前記電
動走行による走行距離を加算して前記第2走行距離を算出する処理を実行しない、請求項1に記載のハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイブリッド車両の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源となるモータジェネレータと発電源となるエンジンとを搭載するハイブリッド車両においては、複数の制御モードのうちのいずれかを選択して、選択された制御モードにしたがって車両が制御される。複数の制御モードは、たとえば、可能な限りエンジンを停止させた状態で電動走行を継続して、車載電池に蓄電された電力を消費するCD(Charge Depleting)モードと、CDモードよりもエンジンを起動しやすくして、エンジンとモータジェネレータとを用いて車載電池の残量を一定の範囲で維持しつつ車両を走行させるCS(Charge Sustaining)モードとを含む。
【0003】
このようなハイブリッド車両において、ユーザによって設定された目的地まで走行する場合に、走行経路の状況に応じて制御モードを適宜切り替える切替制御が行なわれる。
【0004】
たとえば、特開2014-151760号公報(特許文献1)には、目的地までの走行経路を設定し、設定された走行経路の複数の区間のうちの目的地手前の一以上の区間を除いた区間の各々に対して電動走行を行なうEVモードと、エンジンとモータジェネレータとを用いるHVモードとのうちのいずれかを選択する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような構成を有するハイブリッド車両において、走行状況に応じた切替制御を実行する場合の車載電池の電力を用いた電動走行による走行距離が当該切替制御を実行しない場合と比較してどのように変化するかについての効果をユーザに報知する場合がある。そのため、双方の場合における車載電池の電力を用いた電動走行による走行距離を精度高く算出することが求められる。
【0007】
しかしながら、目的地に到着するまでの間にIGオフされ、IGオン後に切替制御が再開されるまでの期間に車両において電動走行が行なわれると、IGオフされていなければ切替制御を実行する場合の走行距離として算出されていた当該期間の電動走行による走行距離が切替制御を実行する場合の走行距離として加味されない場合がある。そのため、走行状況に応じた切替制御を実行する場合および実行しない場合における車載電池の電力を用いた電動走行による走行距離を精度高く算出できない場合がある。
【0008】
本開示は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、走行状況に応じた切替制御を実行する場合と実行しない場合とにおける車載電池の電力を用いた電動走行による走行距離を精度高く算出するハイブリッド車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のある局面に係るハイブリッド車両は、車両に駆動力を発生させる電動機と、電動機に電力を供給する蓄電装置と、蓄電装置を充電する発電電力を発生させるエンジンと、エンジンと電動機とを複数の制御モードのうちのいずれかの制御モードに従って制御する制御装置とを備える。複数の制御モードは、CD(Charge Depleting)モードと、CS(Charge Sustaining)モードとを含む。制御装置は、予め定められた条件が成立後に車両の外部から取得される外部情報を用いて車両の目的地までの走行経路を構成する複数の区間の各々にCDモードとCSモードとのうちのいずれかを割り当てた走行計画に従って、制御モードを切り替える切替制御を実行する。制御装置は、予め定められた条件が成立する前に切替制御の実行履歴がある場合には、実行履歴を用いて、切替制御を実行しない場合のエンジンを停止させた状態での蓄電装置の電力を用いた電動走行による第1走行距離と、切替制御を実行する場合のエンジンを停止させた状態での電動走行による第2走行距離とを算出する。制御装置は、予め定められた条件が成立してから切替制御が開始するまでの期間におけるエンジンを停止させた状態での電動走行による走行距離を加算して第2走行距離を算出する。
【0010】
このようにすると、実行履歴を用いて第1走行距離と第2走行距離とが算出されるとともに、予め定められた条件が成立してから切替制御が開始するまでの期間におけるエンジンを停止させた状態での電動走行による走行距離を加算して第2走行距離が算出される。そのため、第1走行距離と第2走行距離とを精度高く算出することができる。
【0011】
ある実施の形態において、予め定められた条件は、車両の制御システムが起動するという条件を含む。
【0012】
このようにすると、車両の制御システムが起動した後に、切替制御の実行履歴がある場合に、実行履歴を用いて第1走行距離と第2走行距離とが算出されるとともに、制御システムが起動してから切替制御が開始するまでの期間におけるエンジンを停止させた状態での電動走行による走行距離が加算されて第2走行距離が算出される。そのため、第1走行距離と第2走行距離とを精度高く算出することができる。
【0013】
さらにある実施の形態において、予め定められた条件は、一時的な中断状態から切替制御が復帰するという条件を含む。
【0014】
このようにすると、一時的な中断状態から切替制御が復帰した後に、切替制御の実行履歴を用いて第1走行距離と第2走行距離とが算出されるとともに、復帰してから切替制御が開始するまでの期間におけるエンジンを停止させた状態での電動走行による走行距離が加算されて第2走行距離が算出される。そのため、第1走行距離と第2走行距離とを精度高く算出することができる。
【0015】
さらにある実施の形態において、制御装置は、蓄電装置の温度異常が発生する場合、蓄電装置の電力枯渇が発生する場合、車両の走行経路からの離脱が発生する場合、および、CDモード中におけるエンジンの始動が行なわれる場合のうちの少なくともいずれかの場合に、切替制御が実行中であると、切替制御を一時的な中断状態にする。
【0016】
このようにすると、蓄電装置の温度異常が発生する場合、蓄電装置の電力枯渇が発生する場合、車両の走行経路からの離脱が発生する場合、および、CDモード中におけるエンジンの始動が行なわれる場合のうちの少なくともいずれかの場合に一時的な中断状態となる切替制御が復帰するときでも第1走行距離および第2走行距離を精度高く算出することができる。
【0017】
さらにある実施の形態において、実行履歴は、予め定められた条件が成立する前の期間における第1走行距離と第2走行距離とに関する情報を含む。
【0018】
このようにすると、実行履歴を用いて目的地までの第1走行距離および第2走行距離を精度高く算出することができる。
【0019】
さらにある実施の形態において、車両は、外部の携帯端末と通信可能な通信装置と、予め定められた情報を報知する報知装置とのうちの少なくともいずれかをさらに備える。制御装置は、報知装置および通信装置を経由した携帯端末のうちの少なくともいずれかを用いて切替制御の実行による効果に関する情報を報知する。
【0020】
このようにすると、切替制御の実行による効果に関する情報をユーザに認識させることができる。
【0021】
さらにある実施の形態において、車両は、外部のサーバを経由して携帯端末と通信可能な通信装置をさらに備える。制御装置は、切替制御の実行による効果に関する情報を携帯端末に送信する。
【0022】
このようにすると、切替制御の実行による効果に関する情報をユーザに認識させることができる。
【0023】
さらにある実施の形態において、制御装置は、実行履歴がない場合には、予め定められた条件が成立してから切替制御が開始するまでの期間におけるエンジンを停止させた状態での電動走行による走行距離を加算して第2走行距離を算出する処理を実行しない。
【0024】
このようにすると、実行履歴の有無に応じて適切に第2走行距離を算出することができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示によると、走行状況に応じた切替制御を実行する場合と実行しない場合とにおける車載電池の電力を用いた電動走行による走行距離を精度高く算出するハイブリッド車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】ハイブリッド車両の構成の一例を示す図である。
【
図2】走行計画に応じて制御モードを適宜切り替える制御を実行したことよる効果をユーザに報知する場合の表示例を示す図である。
【
図3】IGオフ期間がある場合の蓄電装置の電力を用いた電動走行による走行距離について説明するための図である。
【
図4】HV-ECUで実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】支援無EV走行距離および支援有EV走行距離を算出する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】変形例におけるハイブリッド車両の構成の一例を示す図である。
【
図7】変形例においてHV-ECUで実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0028】
以下では、本開示の実施の形態に係るハイブリッド車両の構成の一例について説明する。
図1は、ハイブリッド車両1(以下、車両1と記載する)の構成の一例を示す図である。車両1は、たとえば、シリーズパラレル方式のハイブリッド車両であるものとして説明する。
【0029】
図1に示すように、車両1は、第1モータジェネレータ(以下、第1MGと記載する)10と、第2モータジェネレータ(以下、第2MGと記載する)12と、エンジン14と、動力分割装置16と、駆動輪28と、パワーコントロールユニット(PCU:Power Control Unit)40と、システムメインリレー(SMR:System Main Relay)50と、充電リレー60と、充電装置70と、インレット80と、蓄電装置100と、監視ユニット200と、HV-ECU(Electronic Control Unit)300と、IGスイッチ310と、センサ群320と、HMI(Human Machine Interface)装置330と、ナビECU350と、位置検出装置360と、交通情報受信装置370と、エアコンディショナECU(以下、AC-ECUと記載する)372と、空調装置374と、モード選択スイッチ380とを含む。
【0030】
第1MG10および第2MG12の各々は、三相交流回転電機であって、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。第1MG10および第2MG12は、いずれも電動機(モータ)としての機能と発電機(ジェネレータ)としての機能とを有する。第1MG10および第2MG12は、PCU40を介して蓄電装置100と接続される。
【0031】
第1MG10は、たとえば、エンジン14の始動時においては、PCU40に含まれるインバータによって駆動され、エンジン14の出力軸を回転させる。また、第1MG10は、発電時においては、エンジン14の動力を受けて発電する。第1MG10によって発電された電力は、PCU40を介して蓄電装置100に蓄えられる。
【0032】
第2MG12は、たとえば、車両1の走行時においては、PCU40に含まれるインバータによって駆動される。第2MG12の動力は、ディファレンシャルギヤや減速ギヤ等の動力伝達ギヤ(図示せず)を介して駆動輪28に伝達される。また、第2MG12は、たとえば、車両1の制動時においては、駆動輪28により第2MG12が駆動され、第2MG12が発電機として動作して、回生制動を行なう。第2MG12によって発電された電力は、PCU40を介して蓄電装置100に蓄えられる。
【0033】
エンジン14は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃料(ガソリンや軽油)を燃焼させて動力を出力する公知の内燃機関であって、スロットル開度(吸気量)や燃料供給量、点火時期などの運転状態をHV-ECU300によって電気的に制御できるように構成されている。HV-ECU300は、車両1の状態に基づいて設定される目標回転数および目標トルクでエンジン14が動作するように、エンジン14の燃料噴射量、点火時期および吸入空気量等を制御する。
【0034】
動力分割装置16は、エンジン14の動力を駆動輪28に伝達される経路と第1MG10へ伝達される経路とに分割する。動力分割装置16は、たとえば、サンギヤと、リングギヤと、ピニオンギヤと、キャリアとを有する遊星歯車機構によって構成される。
【0035】
PCU40は、HV-ECU300からの制御信号に従って、蓄電装置100と第1MG10との間で電力変換を行なったり、蓄電装置100と第2MG12との間で電力変換を行なったりする電力変換装置である。PCU40は、蓄電装置100から直流電力を交流電力に変換して第1MG10または第2MG12を駆動するインバータと、蓄電装置100からインバータに供給される直流電力の電圧レベルを調整するコンバータ(いずれも図示せず)等とを含んで構成される。
【0036】
SMR50は、蓄電装置100とPCU40との間に電気的に接続されている。SMR50の閉成/開放は、HV-ECU300からの制御信号に従って制御される。SMR50は、たとえば、制御システムの起動操作が行なわれてIGスイッチ310がオン状態になると閉成するように制御される。
【0037】
蓄電装置100は、再充電が可能に構成された直流電源であって、たとえば、ニッケル水素電池や固体または液体の電解質を含むリチウムイオン電池等の二次電池である。蓄電装置100として電気二重層キャパシタ等のキャパシタも採用可能である。蓄電装置100は、車両1の走行駆動力を生成するための電力をPCU40へ供給する。また、蓄電装置100は、第1MG10とエンジン14とを用いた発電動作によって発電された電力により充電されたり、第2MG12の回生制動により発電された電力により充電されたり、第1MG10または第2MG12の駆動動作により放電されたりする。
【0038】
監視ユニット200は、蓄電装置100の状態を監視する。監視ユニット200は、たとえば、電圧検出部210と、電流検出部220と、温度検出部230とを含む。電圧検出部210は、蓄電装置100の端子間の電圧VBを検出する。電流検出部220は、蓄電装置100に入出力される電流IBを検出する。温度検出部230は、蓄電装置100の温度TBを検出する。各検出部は、その検出結果をHV-ECU300に出力する。
【0039】
充電リレー60は、SMR50と充電装置70との間に電気的に接続されている。充電リレー60の閉成/開放は、HV-ECU300からの制御信号に従って制御される。
【0040】
充電装置70は、充電リレー60とインレット80との間に電気的に接続されている。充電装置70は、たとえば、AC/DCコンバータ(インバータ)である。充電装置70は、外部電源92から後述するコネクタ90およびインレット80を介して供給された交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を充電リレー60に出力する。充電装置70は、HV-ECU300からの制御信号によって制御される。
【0041】
なお、充電装置70は、AC/DC変換動作を行なうことに特に限定されるものではなく、インレット80から充電装置70に直流電力が供給される場合には、充電装置70は、DC/DCコンバータとして動作するように構成されてもよい。
【0042】
インレット80は、嵌合等の機械的な連結を伴ってコネクタ90を挿入することが可能に構成されている。インレット80へのコネクタ90の挿入に伴い、車両1と外部電源92との間の電気的な接続が確保される。このとき、SMR50および充電リレー60が閉成状態になると、外部電源92の電力が充電装置70および充電リレー60を経由して蓄電装置100に供給可能になる。以下の説明においては、外部電源92の電力を用いた蓄電装置100の充電をプラグイン充電と記載する。
【0043】
HV-ECU300は、CPU(Central Processing Unit)301と、メモリ(たとえば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のIGオフ後においても記憶状態を維持可能な不揮発性メモリを含む)302とを含む。HV-ECU300は、監視ユニット200やIGスイッチ310やセンサ群320やモード選択スイッチ380から受ける信号、メモリ302に記憶されたマップおよびプログラム等の情報に基づいて、車両1が所望の状態となるように車両1内の各機器(エンジン14、PCU40、SMR50、充電リレー60、充電装置70およびHMI装置330など)を制御する。HV-ECU300により実行される各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0044】
HV-ECU300は、たとえば、車両1の運転中に、監視ユニット200による検出結果を用いて蓄電装置100の残容量を示すSOC(State Of Charge)を算出する。SOCは、蓄電装置100の満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を百分率で表したものである。なお、SOCの算出方法としては、たとえば、電流値積算(クーロンカウント)による手法、または、開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)の推定による手法など、種々の公知の手法を採用できる。
【0045】
IGスイッチ310は、車両1の制御システムの起動操作が行なわれるとオン状態になり、車両1の制御システムの停止操作が行なわれるとオフ状態になるスイッチである。
【0046】
HV-ECU300は、通信バス340を介してセンサ群320と、HMI装置330と、ナビECU350と接続される。ナビECU350には、位置検出装置360と、交通情報受信装置370とが接続される。
【0047】
センサ群320は、たとえば、アクセルペダルセンサ、車速センサ、およびブレーキペダルセンサを含む。アクセルペダルセンサは、ユーザによるアクセルペダル操作量を検出する。車速センサは、車両1の車速を検出する。ブレーキペダルセンサは、ユーザによるブレーキペダル操作量を検出する。各センサは、検出結果をHV-ECU300へ出力する。
【0048】
HMI装置330は、車両1の運転を支援するための情報をユーザに提供する装置である。HMI装置330は、たとえば、車両1の室内に設けられたタッチパネルディスプレイであり、スピーカ等も含む。HMI装置330は、視覚情報(図形情報、文字情報)や聴覚情報(音声情報、音情報)等を出力することによって様々な情報をユーザに提供(報知)する。
【0049】
HMI装置330は、ディスプレイとして機能し、車両1の現在位置、並びにその周辺の地図情報および渋滞情報等をナビECU350から通信バス340を通じて受信し、車両1の現在位置をその周辺の地図情報および渋滞情報とともに表示する。
【0050】
また、HMI装置330は、ユーザが操作可能なタッチパネルとしても機能し、ユーザはタッチパネルを触れることによって、表示されている地図の縮尺を変更したり、車両1の目的地を入力したりすることができる。HMI装置330において目的地が入力されると、その目的地の情報が通信バス340を通じてナビECU350へ送信される。
【0051】
通信バス340に接続される各機器は、CAN(Controller Area Network)通信により通信バス340を通じて互いに通信可能に構成されてもよいし、あるいは、通信バス340に代えてまたは加えて無線通信により互いに通信可能に構成されてもよい。
【0052】
ナビECU350は、図示しないCPUと、メモリとを含む。メモリには、地図情報データベース(DB)が構成される。ナビECU350は、地図情報DBに記憶される各種情報、位置検出装置360によって検出される各種情報および交通情報受信装置370から受信する各種情報に基づいて、車両1の現在位置、並びにその周辺の地図情報および渋滞情報等をHMI装置330およびHV-ECU300へ出力する。
【0053】
さらに、ナビECU350は、所定のタイミング毎に(たとえば、数十秒間隔毎に)、車両1の現在位置から目的地までの走行経路における地図情報および道路交通情報(以下、総称して「先読み情報」と記載する)をHV-ECU300へ出力する。
【0054】
地図情報DBには、地図情報が記憶されている。地図情報は、交差点や行き止まり等を示す「ノード」、ノード同士を接続して構成される「リンク」、およびリンク沿いにある「施設」(建物や駐車場等)に関するデータを含む。また、地図情報は、各ノードの位置情報、各リンクの距離情報、各リンクに含まれる道路種別情報(市街地、高速道路、一般道などの情報)、各リンクの勾配情報等を含む。なお、地図情報は、地図情報DBから読み出すことで取得される情報に限定されるものではなく、地図情報DBから取得される情報に加えてまたは代えて、外部データベースとの通信により、逐次、取得されるものであってもよい。
【0055】
位置検出装置360は、たとえば、GPS(Global Positioning System)衛星からの信号(電波)に基づいて車両1の現在位置を取得し、車両1の現在位置を示す信号をナビECU350へ出力する。なお、車両1の現在位置を取得する方法としては、GPS衛星以外で位置検出が可能な衛星等を利用して現在位置を取得する方法であってもよいし、あるいは、携帯基地局や無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイントとの所定情報の授受により現在位置を取得する方法であってもよい。
【0056】
交通情報受信装置370は、所定の道路交通情報を受信する。所定の道路交通情報は、たとえば、FM多重放送等によって提供されている道路交通情報、および、プローブ車両あるいはプローブセンターから収集した道路交通情報を含む。この道路交通情報は、少なくとも渋滞情報を含み、その他道路規制情報や駐車情報等も含み得る。この道路交通情報は、たとえば、数分おきに更新される。
【0057】
AC-ECU372は、後述する空調装置374の動作を制御する。AC-ECU372は、図示しないCPUと、メモリとを含む。AC-ECU372は、空調装置374の作動状態に関する情報(たとえば、消費エネルギー等の情報)を取得し、HV-ECU300に送信可能に構成される。また、AC-ECU372は、たとえば、車両1の室内の設定温度を目標値とした空調装置374の制御指令値を生成し、空調装置374に対して制御信号として送信可能に構成される。
【0058】
空調装置374は、コンプレッサ等の車両1の室内の温度調整が可能な電気機器を用いて、車両1に設けられる送風口から温度調整された空気が排出されるように構成される。
【0059】
モード選択スイッチ380は、複数の制御モードのうちのいずれかの制御モードの選択が可能に構成される。複数の制御モードについては、後述する。モード選択スイッチ380は、ユーザに操作を受け付けると、操作されたことを示す信号をHV-ECU300に送信する。
【0060】
本実施の形態において、車両1は、複数の制御モードのうちのいずれかの制御モードに従ってHV-ECU300により制御される。複数の制御モードは、CD(Charge Depleting)モードとCS(Charge Sustaining)モードとを含む。CDモードは、可能な限りエンジン14を停止させた状態で蓄電装置100の放電電力を用いて車両1の電動走行を継続して、蓄電装置100に蓄電された電力を消費する制御モードである。CSモードは、CDモードよりもエンジン14を起動しやすくして、エンジン14と第1MG10と第2MG12とを用いて蓄電装置100を充放電することにより蓄電装置100の残量(SOC)を一定の範囲で維持しつつ車両1を走行させる制御モードである。
【0061】
HV-ECU300は、たとえば、制御モードとしてCDモードおよびCSモードのうちのいずれかが設定される場合には、設定された制御モードに応じてエンジン14、第1MG10および第2MG12を制御する。
【0062】
HV-ECU300は、たとえば、走行経路が設定されていない場合(すなわち、目的地が設定されていない場合)には、蓄電装置100のSOCが所定値を下回るまではCDモードにしたがってエンジン14、第1MG10および第2MG12を制御する。すなわち、HV-ECU300は、エンジン14を停止した状態で第2MG12を用いて電動走行を行なう。なお、HV-ECU300は、CDモードの選択中でも、たとえば、アクセルペダルの踏込量が増加するなどして車両1に要求される駆動力が増加する場合には、第1MG10を用いてエンジン14を始動させて、エンジン14と第2MG12とを用いて車両1を走行させる。
【0063】
HV-ECU300は、蓄電装置100のSOCが所定値を下回ると、CDモードからCSモードに切り替えて、CSモードにしたがってエンジン14、第1MG10および第2MG12を制御する。すなわち、HV-ECU300は、制御モードの切替時の蓄電装置100のSOCを基準として蓄電装置100のSOCが所定の範囲内に収まるようにエンジン14の動力を用いて第1MG10により発電しつつ、第2MG12を用いて車両1を走行させる。なお、HV-ECU300は、CSモードの選択中でも、たとえば、蓄電装置100のSOCが所定の範囲を超える場合には、エンジン14を停止状態にして第2MG12を用いて電動走行を行なう場合がある。
【0064】
また、HV-ECU300は、たとえば、モード選択スイッチ380に対してCSモードを要求する操作が行なわれたときには、制御モードとしてCSモードを設定する。さらに、HV-ECU300は、たとえば、モード選択スイッチ380に対してCDモードを要求する操作が行なわれる場合には、蓄電装置100のSOCが所定値以上であることを条件として、制御モードとしてCDモードを設定する。また、HV-ECU300は、モード選択スイッチ380の操作によってCDモードが選択されているときでも、蓄電装置100のSOCが所定値を下回る場合にCDモードからCSモードに切り替える。以下の説明において、CDモードからCSモードに切替えるSOCの所定値を切替しきい値と記載する場合がある。
【0065】
本実施の形態において、制御モードとしては、CDモードと、CSモードとに加えて、他の制御モードが含まれる。他の制御モードとしては、たとえば、エンジン14の作動が禁止されるモード等が含まれる。モード選択スイッチ380の操作によって、複数の制御モードのうちのいずれかの制御モードが選択され得る。
【0066】
さらに、HV-ECU300は、走行経路が設定されている場合(目的地が設定されている場合)には、走行計画に従ってCDモードとCSモードとを切り替える走行支援制御を実行する。以下の説明において、走行支援制御を切替制御と記載する場合がある。
【0067】
具体的には、HV-ECU300は、目的地が設定されると、車両1の現在位置から目的地までの走行経路を設定する。HV-ECU300は、たとえば、走行距離や高速道路の利用の有無や渋滞の有無等の条件に対応した走行経路を設定する。HV-ECU300は、走行経路が設定されると、車両1の現在位置から目的地までの走行経路を複数の走行区間に分け、複数の走行区間の各々に対してCDモードとCSモードとのうちのいずれかを割り当てることによって走行計画を設定する。本実施の形態において、HV-ECU300は、たとえば、走行経路上の上述のノードを走行区間の区切りとし、上述のリンクを走行区間として走行経路を複数の走行区間に区分するものとする。
【0068】
HV-ECU300は、ナビECU350において更新された先読み情報を取得し、取得された先読み情報に基づいて走行経路を構成する複数の走行区間の各々の消費エネルギーEnを算出する。HV-ECU300は、先読み情報に含まれる勾配情報、道路種別情報、制限速度等の車速に関する情報、渋滞の有無についての情報あるいは走行距離等を用いて複数の走行区間の各々の消費エネルギーEnを算出する。HV-ECU300は、先読み情報に加えて車両1の乗員数に基づく車両重量等を用いて消費エネルギーEnを算出してもよい。消費エネルギーEnは、たとえば、車両1が制限速度相当の車速あるいは渋滞時の速度相当の車速で対象となる走行区間を走破するのに必要となるエネルギーを示す。
【0069】
HV-ECU300は、たとえば、車両1が目的地に到達する時点で蓄電装置100のSOCが所定の範囲内に収まるように複数の走行区間の各々に対してCDモードおよびCSモードのうちのいずれかを割り当てる。所定の範囲は、たとえば、蓄電装置100の電力を使い切ったと判定できるSOCの範囲であって、たとえば、CDモードからCSモードに切り替えるためのSOCのしきい値を上限値としてもよいし、あるいは、当該しきい値よりも高い予め定められた値を上限値としてもよいし、当該しきい値よりも低い予め定められた値を上限値としてもよい。所定の範囲の下限値は、たとえば、蓄電装置100の劣化が促進しない程度に設定される予め定められた値である。
【0070】
HV-ECU300は、たとえば、各走行区間の消費エネルギーEnの総和(以下、総消費エネルギーと記載する)Esumが蓄電装置100の現在のSOCから所定の範囲内になるまでの電力量に相当するエネルギー(以下、残存エネルギーErと記載する)よりも小さい場合には、複数の走行区間の各々に対してCDモードを割り当てる。しきい値は、車両1が目的地に到着したときに予測されるSOCの所定の範囲内の値を示す。
【0071】
一方、HV-ECU300は、総消費エネルギーEsumが残存エネルギーErよりも大きい場合には、複数の走行区間の少なくともいずれかの走行区間に対して優先的にCDモードを割り当て、CDモードが割り当てられなかった走行区間に対してCSモードを割り当てる。
【0072】
HV-ECU300は、たとえば、複数の走行区間のうちのCDモードが優先的に割り当てられる走行区間をCDモード優先区間として特定し、特定された走行区間にCDモードを割り当てる。CDモード優先区間は、たとえば、市街地、住宅地あるいは細街路等の走行音を比較的低く抑制することが求められる走行区間を含む。走行区間が市街地であるか、住宅地であるか、あるいは、細街路であるかについての情報は、地図情報DBに予め記憶される。
【0073】
HV-ECU300は、CDモード優先区間に対してCDモードを割り当てた後のその他の走行区間に対して、消費エネルギーEnが低い順にCDモードを割り当てるとともに割り当てた走行区間における消費エネルギーを積算していく。HV-ECU300は、CDモード優先区間に対応する走行区間の消費エネルギーの総和と積算した消費エネルギーとを加算した値(CDモードでの消費エネルギーの総和)が残存エネルギーErを上回るまで走行区間に対してCDモードを割り当てる。HV-ECU300は、CDモードでの消費エネルギーの総和が残存エネルギーErよりも上回った時点においてCDモードの割り当てを停止し、CDモードが割り当てられなかった走行区間に対してCSモードを割り当てる。
【0074】
このようにして複数の走行区間の各々に制御モードを割り当てることによって車両1が目的地に到達する時点で蓄電装置100のSOCが所定の範囲内に収まるようにすることができる。HV-ECU300は、走行計画が設定された後においては、設定された走行計画にしたがって制御モードを切り替える切替制御を実行する。そのため、HV-ECU300は、車両1の運転が開始されると、走行経路上のノードを通過するときにノード通過後の走行区間に設定された制御モードに切り替える。
【0075】
上述のような構成を有する車両1において、走行計画に応じて制御モードを適宜切り替える切替制御を実行する場合の車載電池である蓄電装置100の電力を用いた電動走行による走行距離が、走行計画に応じた切替制御を実行しない場合と比較してどのように変化するかについてユーザに報知する場合がある。
【0076】
図2は、走行計画に応じて制御モードを適宜切り替える制御を実行したことよる効果をユーザに報知する場合の表示例を示す図である。
【0077】
ナビECU350は、たとえば、車両1が走行しているときや目的地に到着したときに走行計画に応じて制御モードを適宜切り替える制御の実行による効果として、蓄電装置100の電力を用いた電動走行の走行距離がどの程度向上したかを示す情報をHV-ECU300からの要求に応じてHMI装置330のディスプレイに表示させる。
図2には、たとえば、制御モードをルート案内と連動したことにより(すなわち、走行計画に応じて制御モードを適宜切り替える制御の実行により)、ΔDkmだけ蓄電装置100の電力を用いた電動走行の走行距離が向上したことを示す文字情報がナビ画面に表示される例が示されている。このような文字情報がHMI装置330に表示されることにより、ユーザは、走行計画に応じて制御モードを適宜切り替える切替制御の実行による効果を認識することができる。そのため、このような情報をユーザに報知する際には、当該切替制御を実行する場合と実行しない場合の双方における走行距離を精度高く算出することが求められる。
【0078】
しかしながら、車両1が目的地に到着するまでの間にIGオフされ、IGオン後に切替制御が再開されるまでの期間に車両1において電動走行が行なわれると、IGオフされていなければ切替制御を実行する場合の走行距離として算出されていた当該期間の電動走行による走行距離が切替制御を実行する場合の走行距離として加味されない場合がある。
【0079】
図3は、IGオフ期間がある場合の蓄電装置100の電力を用いた電動走行による走行距離について説明するための図である。
図3のLN1は、切替制御が実行される場合における蓄電装置100のSOCの変化を示す。走行状況に応じた切替制御が実行されることによって、車両1の走行区間の境界を示すノードを通過すると、通過後の走行区間に対応した制御モードが選択されることになる。そのため、CDモードからノードを通過する毎にCSモードおよびCDモードにそれぞれ切替えられることになる。その後、給油あるいはユーザの休憩等により車両1においてIGオフされると、IGオフ後においては、切替制御が非実行の状態となる。そして、再度出発するためにIGオンされると、先読み情報が取得されたときに切替制御が再開されることになる。しかしながら、先読み情報は、数分毎に取得されるため、IGオンの時点と切替制御の再開時点とにはずれが生じる場合がある。そのため、IGオンの直後からCDモードが選択されることによって蓄電装置100の電力を用いた電動走行を開始する場合には、切替制御が再開されるまでの間に走行した区間の距離Aが切替制御を実行する場合の電動走行による走行距離として加味されないこととなる。そのため、走行状況に応じた切替制御を実行する場合および実行しない場合における蓄電装置100の電力を用いた電動走行による走行距離を精度高く算出できない場合がある。
【0080】
そこで、本実施の形態においては、HV-ECU300が、以下のように動作するものとする。すなわち、HV-ECU300は、予め定められた条件(たとえば、IGオンという条件)の成立後に車両1の外部から取得される外部情報(先読み情報)を用いて切替制御を実行する。HV-ECU300は、切替制御を実行しない場合のエンジン14を停止させた状態での蓄電装置100の電力を用いた電動走行による走行距離(以下、支援無EV走行距離と記載する)と、切替制御を実行する場合のエンジン14を停止させた状態での電動走行による走行距離(以下、支援有EV走行距離と記載する)とを算出する。HV-ECU300は、予め定められた条件が成立する前に切替制御の実行履歴がある場合には、実行履歴を用いて支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とを算出する。さらに、HV-ECU300は、予め定められた条件が成立してから切替制御を開始するまでの期間におけるエンジン14を停止させた状態での電動走行による走行距離を加算して支援有EV走行距離を算出する。
【0081】
このようにすると、実行履歴を用いて支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とが算出されるとともに、予め定められた条件が成立してから切替制御を開始するまでの期間におけるエンジン14を停止させた状態での電動走行による走行距離が加算されて支援有EV走行距離が算出される。そのため、支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とを精度高く算出することができる。
【0082】
以下、
図4を参照して、HV-ECU300で実行される制御処理の一例について説明する。
図4は、HV-ECU300で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、HV-ECU300により、所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0083】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、HV-ECU300は、IGオン中であるか否かを判定する。HV-ECU300は、たとえば、ユーザによって車両1の制御システムの起動操作が行なわれてIGスイッチ310がオン状態になるとIGフラグをオン状態にする。HV-ECU300は、IGフラグがオン状態である場合にIGオン中であると判定する。あるいは、HV-ECU300は、たとえば、SMR50が閉成状態である場合に、IGオン中であると判定してもよい。IGオン中であると判定される場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。なお、IGオン中でないと判定される場合(S100にてNO)、この処理は終了される。
【0084】
S102にて、HV-ECU300は、走行計画に応じた切替制御が実施されていることを示す履歴情報(以下、支援実施履歴と記載する)があるか否かを判定する。HV-ECU300は、たとえば、支援実施履歴に対応するフラグ(以下、履歴フラグと記載する)がオン状態である場合に、支援実施履歴があると判定する。支援実施履歴があると判定される場合(S102にてYES)、処理はS104に移される。なお、支援実施履歴がないと判定される場合(S102にてNO)、処理はS108に移される。
【0085】
S104にて、HV-ECU300は、メモリ302に記憶されるIGオフ直前(以下、IGオフ前と記載する)の支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とIGオフ前の支援無電池残量を参照する。このとき、HV-ECU300は、IGオフ前の支援無EV走行距離を支援無EV走行距離(前回値)の初期値として設定し、IGオフ前の支援有EV走行距離を支援有EV走行距離(前回値)の初期値として設定し、IGオフ前の支援無電池残量を示す値を支援無電池残量(前回値)の初期値として設定する。
【0086】
S106にて、HV-ECU300は、支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とを算出する。HV-ECU300は、たとえば、支援無電池残量がゼロよりも大きい場合には、IGオフ前の支援無EV走行距離に直近のIGオンされた時点から現時点までの車両1の蓄電装置100の電力を用いた電動走行による走行距離を加算した値を支援無EV走行距離として算出する。また、HV-ECU300は、たとえば、支援無電池残量がゼロ以下の場合には、IGオフ前の支援無EV走行距離に直近のIGオンされた時点から支援無電池残量がゼロ以下になる時点までの車両1の蓄電装置100の電力を用いた電動走行による走行距離を加算した値を支援無EV走行距離として算出する。HV-ECU300は、たとえば、IGオフ前の支援有EV走行距離に直近のIGオンされた時点から現時点までの車両1の蓄電装置100の電力を用いた電動走行による走行距離を加算した値を支援有EV走行距離として算出する。さらに、HV-ECU300は、IGオフ前の支援無電池残量から直近のIGオンされた時点から現時点までの車両1における走行消費分と補機消費分とを減算して支援無電池残量を算出する。
【0087】
S108にて、HV-ECU300は、支援条件が成立するか否かを判定する。支援条件は、たとえば、目的地が設定されて、目的地までの走行経路が設定されているという条件を含む。なお、支援条件は、上記の条件に加えて、車両1にシステム異常が発生していないという条件と、車両1が走行経路上を走行しているという条件と、蓄電装置100のSOCがしきい値よりも高いという条件とのうちの少なくともいずれかの条件を含むようにしてもよい。支援条件が成立したと判定される場合(S108にてYES)、処理はS110に移される。支援条件が成立していないと判定される場合(S108にてNO)、この処理は終了される。
【0088】
S110にて、HV-ECU300は、ナビECU350から受信した先読み情報に更新があるか否かを判定する。HV-ECU300は、たとえば、所定の道路交通情報等の先読み情報に関する各種情報を受信した場合に、先読み情報に更新があると判定する。先読み情報に更新があると判定される場合(S110にてYES)、処理はS112に移される。なお、先読み情報に更新がないと判定される場合(S110にてNO)、処理はS108に戻され、先読み情報に更新があると判定されるまで処理が待機される。
【0089】
S112にて、HV-ECU300は、先読み情報に含まれる各走行区間の勾配情報、道路種別情報、および、道路交通情報等に基づいて、各走行区間の消費エネルギーEnを算出する。算出方法については上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。また、HV-ECU300は、各走行区間の消費エネルギーEnの合計(総和)を総消費エネルギーEsumとして算出する。
【0090】
S114にて、HV-ECU300は、総消費エネルギーEsumが蓄電装置100の残存エネルギーErよりも大きいか、または、支援実施履歴があるか否かを判定する。残存エネルギーErおよび支援実施履歴については、いずれも上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。総消費エネルギーEsumが残存エネルギーErよりも大きいと判定される場合、または、支援実施履歴があると判定される場合(S114にてYES)、処理はS116に移される。なお、総消費エネルギーEsumが残存エネルギーEr以下であって、かつ、支援実施履歴がないと判定される場合には(S114にてNO)、処理はS128に移される。
【0091】
S116にて、HV-ECU300は、走行計画を生成する。より具体的には、HV-ECU300は、CDモード優先区間に指定されている走行区間にCDモードを割り当てる。CDモード優先区間は、たとえば、先読み情報に含まれる道路種別情報(市街地、高速道路、一般道などの情報)の種別によって予め設定される。たとえば、市街地や細街路を含む走行区間がCDモード優先区間として予めHV-ECU300やナビECU350に記憶されたり、あるいは、道路交通情報としてCDモード優先区間に対応する走行区間を受信したりする。
【0092】
さらに、HV-ECU300は、CDモード優先区間外の走行区間に対してCDモードを割り当てる。HV-ECU300は、CDモード優先区間に指定されていない走行区間を消費エネルギーEnが小さい順に並び替え、並び替えた走行区間に対して消費エネルギーEnが小さい順にCDモードを割り当てる。HV-ECU300は、CDモードを割り当てた走行区間の消費エネルギーの総和が残存エネルギーを超えるまでCDモードを割り当てる。HV-ECU300は、CDモードを割り当てた走行区間の消費エネルギーの総和が残存エネルギーを超えた時点でCDモードの割り当てを停止する。
【0093】
さらに、HV-ECU300は、CDモードの非割り当て区間に対してCSモードを割り当てる。HV-ECU300は、CDモードが割り当てられなかった走行区間に対してCSモードを割り当てる。複数の走行区間にCDモードとCSモードとのうちのいずれかを割り当てることによって、走行計画が生成される。この走行計画に従って制御モードが切り替えられることによって、車両1が目的地に到着したときに蓄電装置100のSOCを所定の範囲内に収めることができ、蓄電装置100の蓄電量を過不足なく使い切ることができる。
【0094】
S118にて、HV-ECU300は、生成された走行計画に従った制御モードの切替制御を実行する。このとき、HV-ECU300は、たとえば、走行計画に従った切替制御が実行中であることを示す情報をHMI装置330に表示してもよい。HV-ECU300は、切替制御を実行すると、処理をS120に移す。
【0095】
S120にて、HV-ECU300は、支援実施履歴なしであるか否かを判定する。HV-ECU300は、たとえば、履歴フラグがオフ状態である場合に、支援実施履歴なしであると判定する。支援実施履歴なしであると判定される場合(S120にてYES)、処理はS124に移される。
【0096】
S122にて、HV-ECU300は、支援無電池残量を設定する。支援無電池残量は、走行計画に従ったモードの切替制御を実行しなかった場合にCSモードの選択中に蓄電装置100において利用可能な電力量を示す。HV-ECU300は、たとえば、蓄電装置100のSOCを用いて支援無電池残量を設定する。蓄電装置100のSOCの算出方法については上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。HV-ECU300は、たとえば、蓄電装置100の現在のSOCを示す値から所定値を減算した値に相当する電力量を支援無電池残量として設定する。所定値は、たとえば、CDモードからCSモードに切替えるSOCの切替しきい値であってもよいし、切替しきい値に予め定められた値を加算あるいは減算した値であってもよい。HV-ECU300は、支援無電池残量を設定すると、処理をS124に移す。
【0097】
S124にて、HV-ECU300は、履歴フラグをオン状態に設定する。HV-ECU300は、履歴フラグをオン状態に設定すると、処理をS126に移す。なお、S120にて、支援実施履歴ありであると判定される場合(S122にてNO)、処理はS126に移される。
【0098】
S126にて、HV-ECU300は、支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とを算出する。具体的な支援無EV走行距離と支援有EV走行距離との算出方法については、
図5を用いて後述する。
【0099】
S128にて、HV-ECU300は、制御終了条件が成立するか否かを判定する。制御終了条件は、たとえば、車両1が目的地に到着したという条件を含む。HV-ECU300は、たとえば、ナビECU350から受信する車両1の現在位置が目的地を含む所定の範囲内である場合に、車両1が目的地に到着したと判定する。さらに、制御終了条件は、IGオフされたという条件を含む。なお、制御終了条件は、たとえば、車両1に異常が発生したという条件をさらに含むようにしてもよい。制御終了条件が成立すると判定される場合(S128にてYES)、処理はS130に移される。なお、制御終了条件が成立しないと判定される場合(S128にてNO)、処理はS108に戻される。
【0100】
S130にて、HV-ECU300は、走行計画に従った切替制御を終了する。HV-ECU300は、たとえば、車両1が目的地に到着したという条件が成立することによって、制御終了条件が成立した場合には、履歴フラグをオフ状態に設定する。なお、支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とは、たとえば、
図2に示す切替制御の実行による効果に関する情報がHMI装置330に表示された後に、初期値にリセットされる。
【0101】
また、HV-ECU300は、目的地に到着しておらず、かつ、IGオフされたことにより制御終了条件が成立した場合には、直近の支援無EV走行距離を示す値をIGオフ前の支援無EV走行距離としてメモリ302に記憶させるとともに、直近の支援有EV走行距離を示す値をIGオフ前の支援有EV走行距離としてメモリ302に記憶させる。
【0102】
次に、
図5を参照して、
図4のS126の処理において実施される支援無EV走行距離および支援有EV走行距離を算出する処理の一例について詳細に説明する。
図5は、支援無EV走行距離および支援有EV走行距離を算出する処理の一例を示すフローチャートである。
【0103】
S200にて、HV-ECU300は、支援電池残量がゼロよりも大きいか否かを判定する。支援無電池残量がゼロよりも大きいと判定される場合(S200にてYES)、処理はS202に移される。なお、支援無電池残量がゼロ以下であると判定される場合(S200にてNO)、処理はS206に移される。
【0104】
S202にて、HV-ECU300は、支援無EV走行距離(今回値)を算出する。具体的には、HV-ECU300は、支援無EV走行距離(前回値)に前回値の算出時点からの移動距離を加算して、支援無EV走行距離(今回値)を算出する。支援無EV走行距離(前回値)は、直近に算出された支援無EV走行距離であって、初期値はゼロである。HV-ECU300は、たとえは、前回値の算出時点からの経過時間と車速とを用いて前回の算出時点からの移動距離を算出する。HV-ECU300は、車速センサによって検出される現在の車速を用いて前回値の算出時点からの移動距離を算出するようにしてもよいし、あるいは、前回値の算出時点から今回値の算出時点までの期間における車速の平均値を用いて前回値の算出時点からの移動距離を算出するようにしてもよい。
【0105】
S204にて、HV-ECU300は、支援無電池残量(今回値)を算出する。HV-ECU300は、前回値の算出時点から切替制御を実行しなかった場合に蓄電装置100の電力を用いた電動走行によって電力が消費された後の蓄電装置100の電池残量を支援無電池残量(今回値)として推定する。
【0106】
具体的には、HV-ECU300は、支援無電池残量(前回値)から前回値の算出時点から今回値の算出時点までの期間における走行消費分に相当する電力量と、当該期間における補機消費分に相当する電力量とを減算して支援無電池残量(今回値)を算出する。HV-ECU300は、算出した支援無電池残量(今回値)を用いてメモリ302に記憶される支援無電池残量の値を更新する。
【0107】
HV-ECU300は、たとえば、前回値の算出時点から今回値の算出時点までの期間において第2MG12において実際に消費したエネルギー(走行消費エネルギー)を走行消費分として算出する。HV-ECU300は、たとえば、第2MG12に供給される電流や電圧等に基づく走行消費エネルギーを走行消費分として算出してもよい。なお、HV-ECU300は、第2MG12の出力エネルギーの最大値を走行消費エネルギーの最大値として走行消費エネルギーを算出する。
【0108】
HV-ECU300は、たとえば、前回値の算出時点から今回値の算出時点までの期間において車両1の補機において実際に消費したエネルギー(補機消費エネルギー)を補機消費分として算出する。車両1の補機は、たとえば、空調装置374と、各種冷却ファン(たとえば、蓄電装置100の冷却装置等の電気機器)と、DCDCコンバータなどの各種電力変換装置とのうちのいずれかを含む。HV-ECU300は、補機に流れる電流および電圧等に基づき補機消費エネルギーを補機消費分として算出してもよい。支援無電池残量(前回値)は、直近に算出された支援無電池残量である。HV-ECU300は、支援無電池残量(今回値)を算出すると、処理をS206に移す。
【0109】
S206にて、HV-ECU300は、制御モードがCDモードであるか否かを判定する。HV-ECU300は、設定された制御モードについて情報をメモリ302から読み出して、読み出された情報を用いて制御モードがCDモードであるか否かを判定する。制御モードがCDモードであると判定される場合(S206にてYES)、処理はS208に移される。なお、制御モードがCDモードでないと判定される場合(S206にてNO)、この処理は終了される。
【0110】
S208にて、HV-ECU300は、支援有EV走行距離(今回値)を算出する。具体的には、HV-ECU300は、支援有EV走行距離(前回値)に前回値の算出時点から移動距離を加算して、支援有EV走行距離(今回値)を算出する。支援有EV走行距離(前回値)は、直近に算出された支援有EV走行距離であって、初期値はゼロである。HV-ECU300は、たとえば、前回値の算出時点からの経過時間と車速とを用いて前回値の算出時点からの移動距離を算出する。移動距離の算出方法については上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0111】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態における車両1に搭載されるHV-ECU300の動作について説明する。
【0112】
たとえば、ユーザの起動操作により車両1の制御システムを起動させた場合には、IGフラグがオン状態になるため(S100にてYES)、支援実施履歴があるか否かが判定される(S102)。履歴フラグがオフ状態であることによって支援実施履歴がないと判定される場合には(S102にてNO)、支援条件が成立するか否かが判定される(S108)。
【0113】
車両1の目的地および走行経路が設定されると支援条件が成立していると判定され(S108にてYES)、先読み情報が更新されるか否かが判定される(S110)。ナビECU350において道路交通情報の受信によって設定された走行経路に対応した先読み情報が生成され、HV-ECU300がナビECU350から生成された先読み情報を受信すると、先読み情報が更新されたと判定される(S110にてYES)。そのため、先読み情報に基づいて走行経路を構成する複数の走行区間における消費エネルギーEnが算出されるとともに、それらの総和が総消費エネルギーEsumとして算出される(S112)。
【0114】
支援実施履歴なし(すなわち、履歴フラグがオフ状態)であっても、総消費エネルギーEsumが残存エネルギーErよりも大きい場合には(S114にてYES)、走行計画が生成される(S116)。走行計画の生成において、まず走行経路を構成する複数の走行区間のうちのCDモード優先区間に対してCDモードが割り当てられる。そして、CDモードに割り当てられた走行区間の総消費エネルギーが蓄電装置100の残存エネルギーを超えるまでCDモード優先区間以外の走行区間のうちの消費エネルギーが低い順にCDモードが割り当てられる。そして、CDモードが割り当てられなかった走行区間に対してCSモードが割り当てられる。
【0115】
全ての走行区間に制御モードが割り当てられた走行経路に対応した走行計画が生成されると、走行計画に従って制御モードの切替制御が実行される(S118)。
【0116】
このとき、支援実施履歴なしであるため(S120にてYES)、支援無電池残量が設定されるとともに(S122)、履歴フラグがオン状態に設定され(S124)、支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とが算出される(S126)。
【0117】
すなわち、支援無電池残量がゼロよりも大きい場合(S200にてYES)、支援無EV走行距離(前回値)に前回値の算出時点からの移動距離が加算されて支援無EV走行距離(今回値)が算出される(S202)。
【0118】
そして、支援無電池残量(前回値)から前回値の算出時点からの走行消費分と補機消費分とが減算されて支援無電池残量(今回値)が算出される(S204)。
【0119】
さらに、制御モードとしてCDモードが維持される場合には(S206にてYES)、支援有EV走行距離(前回値)に前回値の算出時点からの移動距離が加算されて支援有EV走行距離(今回値)が算出される(S208)。そして、目的地に到着していない場合など、制御終了条件が成立していない限り(S128にてNO)、切替制御が継続して実施される。
【0120】
目的地に到着する前に、給油やユーザの休憩等によりIGオフされるなどして制御終了条件が成立する場合には(S128にてYES)、切替制御が終了される(S130)。このとき、目的地に到着する前のIGオフによって制御終了条件が成立したため、履歴フラグのオン状態が維持される。そのため、その後にIGオンされると(S100にてYES)、支援実施履歴があると判定されるため(S102にてYES)、メモリ302に記憶されるIGオフ前の支援無EV走行距離とIGオフ前の支援有EV走行距離とIGオフ前の支援無電池残量が参照され(S104)、支援無EV走行距離と支援有EV走行距離と支援無電池残量とが算出される(S106)。このとき、支援無電池残量がゼロよりも大きい場合には、IGオフ前の支援無EV走行距離にIGオンされてから移動距離が加算されて支援無EV走行距離が算出される。さらに、IGオフ前の支援有EV走行距離にIGオンされてからの移動距離が加算されて支援有EV走行距離が算出される。これにより、一時的なIGオフ後にIGオンされてから切替制御が再開されるまでの蓄電装置100の電力を用いた電動走行による走行距離がIGオフ前の支援無EV走行距離とIGオフ前の支援有EV走行距離とにそれぞれ加算されて、支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とが算出される。
【0121】
その後に、支援条件が成立し(S108にてYES)、先読み情報が更新される場合には(S110にてYES)、支援無電池残量がゼロ以下になるまで支援無EV走行距離が算出されるとともに、支援有EV走行距離が算出される(S126)。
【0122】
以上のようにして、本実施の形態に係るハイブリッド車両によると、切替制御の実行中における一時的なIFオフの後にIGオンされた場合には、実行履歴(IGオフ前の支援無EV走行距離、IGオフ前の支援無電池残量およびIGオフ前の支援有EV走行距離)を用いて支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とが算出されるとともに、IGオンされてから切替制御を開始するまでの期間におけるエンジン14を停止させた状態での電動走行による走行距離が加算されて少なくとも支援有EV走行距離が算出される。そのため、支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とを精度高く算出することができる。したがって、走行状況に応じた切替制御を実行する場合と実行しない場合とにおける車載電池の電力を用いた電動走行による走行距離を精度高く算出するハイブリッド車両を提供することができる。
【0123】
以下、変形例について記載する。
【0124】
上述の実施の形態では、車両1は、たとえば、シリーズパラレル方式のハイブリッド車両であるものとして説明したが、少なくとも上述のCDモードとCSモードとが設定可能なハイブリッド車両であればよく、シリーズ方式などのその他の方式のハイブリッド車両であってもよい。
【0125】
さらに上述の実施の形態では、残存エネルギーErは、蓄電装置100の現在のSOCから所定範囲内になるまでの電力量に相当するエネルギーであるものとして説明したが、当該エネルギーに一定のマージンを加算した値を残存エネルギーとしてもよい。
【0126】
さらに上述の実施の形態では、HV-ECU300とナビECU350との各々が所定の処理を実行することにより、各種情報を授受して連携して動作するものとして説明したがたとえば、HV-ECU300の機能とナビECU350の機能とを有する単一のECUによって所定の処理を実行してもよい。
【0127】
さらに上述の実施の形態では、
図2に示すような切替制御に関する情報をHMI装置330に表示するものとして説明したが、HMI装置330に代えてまたは加えてユーザが所有する携帯端末の表示装置に表示させてもよい。
【0128】
図6は、変形例におけるハイブリッド車両の構成の一例を示す図である。
図6に示す車両1は、
図1に示す車両1と比較して、ユーザが所有する携帯端末400と、車両1の外部に設けられるサーバ500とのうちの少なくともいずれかと通信可能な通信装置390を含む点で異なる。
図6に示される通信装置390以外の車両1の構成については、
図1に示される車両1の構成と同様である。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0129】
図6に示すように、車両1は、通信装置390をさらに備える。通信装置390は、車両1のユーザが所有する携帯端末400と、車両1の外部に設けられるサーバ500を経由した携帯端末404とのうちの少なくともいずれかと通信可能に構成される。
【0130】
通信装置390と携帯端末400とは、たとえば、事前にペアリング処理が実行されるなどして、所定の近距離無線通信で通信可能に接続されてもよいし、図示しない基地局を経由して無線LAN(Local Area Network)等の無線通信で通信可能に接続されてもよいし、あるいは、有線で直接的に通信可能に接続されてもよい。
【0131】
携帯端末400には、表示部402が設けられる。表示部402は、通信装置390から受信する情報を所定の形式で表示可能に構成される。HV-ECU300は、通信装置390を経由して切替制御に関する情報を携帯端末400に送信し、携帯端末400は、通信装置390から受信した当該情報を表示部402に表示するようにしてもよい。このようにしても、切替制御の実行による効果等の切替制御に関する情報をユーザに認識させることができる。HV-ECU300は、通信装置390を経由して切替制御に関する情報を携帯端末400に送信する場合には、当該情報をHMI装置330に表示しないようにしてもよい。
【0132】
また、通信装置390とサーバ500とは、たとえば、図示しない基地局を経由して無線LAN等の無線通信で通信可能に接続されてもよい。サーバ500と携帯端末404とについても、たとえば、図示しない基地局を経由して無線LAN等の無線通信で通信可能に接続されてもよい。
【0133】
携帯端末404には、表示部406が設けられる。表示部406は、通信装置390からサーバ500を経由して受信する情報を所定の形式で表示可能に構成される。HV-ECU300は、通信装置390およびサーバ500を経由して切替制御に関する情報を携帯端末404に送信し、携帯端末404は、サーバ500から受信した当該情報を表示部406に表示するようにしてもよい。このようにしても、切替制御の実行による効果等の切替制御に関する情報をユーザに認識させることができる。
【0134】
上述の実施の形態では、目的地に到着する前にIGオフされることにより制御終了条件が成立する場合に、切替制御を終了するときに、履歴フラグをオン状態に維持したまま、IGオフ前の支援無EV走行距離と、IGオフ前の支援有EV走行距離と、IGオフ前の支援無電池残量とをメモリ302に記憶し、IGオンされてから切替制御が再開するまでの間における電動走行による走行距離をそれぞれ加算して支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とを算出するものとして説明したが、以下のようにして支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とを算出してもよい。
【0135】
すなわち、目的地に到着する前に切替制御が一時的な中断状態になることにより制御終了条件が成立し、その後中断状態から復帰する場合に、中断状態である期間と、中断状態になってから切替制御が再開するまでの期間とにおける電動走行による走行距離を算出し、算出された走行距離を加算して支援有EV走行距離を算出してもよい。
【0136】
図7は、変形例においてHV-ECU300で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【0137】
なお、
図7のフローチャートに示す処理は、
図4のフローチャートに示す処理と比較して、S104の処理が省略されるとともに、S108の処理に代えてS300の処理が実行される点と、S128の処理とS130の処理とに代えてS302の処理と、S304の処理と、S306の処理と、S308の処理とが実行される点で異なる。上述の処理以外の処理については、以下に説明する場合を除き、
図4のフローチャートに示す処理と同じ処理であり、同じステップ番号が付与されている。そのため、それらの詳細な説明は繰り返さない。
【0138】
支援実施履歴なしと判定される場合(S102にてNO)、処理はS300に移される。あるいは、支援実施履歴ありと判定され(S102にてYES)、支援無EV走行距離および支援有EV走行距離が算出される場合(S106)、処理はS300に移される。
【0139】
S300にて、HV-ECU300は、支援条件が成立するか否かを判定する。支援条件については、上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。支援条件が成立すると判定される場合(S300にてYES)、処理はS110に移される。一方、支援条件が成立しないと判定される場合(S300にてNO)、処理はS302に移される。あるいは、S126にて、支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とが算出される場合、処理はS302に移される。
【0140】
S302にて、HV-ECU300は、制御終了条件が成立するか否かを判定する。制御終了条件については、上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。制御終了条件が成立すると判定される場合(S302にてYES)、処理はS304に移される。また、制御終了条件が成立していないと判定される場合(S302にてNO)、処理はS306に移される。
【0141】
S304にて、HV-ECU300は、走行計画に従った切替制御を終了する。HV-ECU300は、たとえば、履歴フラグをオフ状態に設定する。さらに、支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とは、たとえば、
図2に示す切替制御の実行による効果に関する情報がHMI装置330に表示された後に、初期値にリセットされる。
【0142】
S306にて、HV-ECU300は、制御中断条件が成立するか否かを判定する。制御中断条件は、たとえば、蓄電装置100の温度異常が発生するという条件と、蓄電装置100の電力枯渇が発生するという条件と、車両1の走行経路からの離脱が発生するという条件と、CDモード中においてエンジン14の始動が行なわれるという条件とのうちの少なくともいずれかの条件が成立するという条件を含む。
【0143】
HV-ECU300は、たとえば、蓄電装置100の温度がしきい値を超える高温状態になる場合に、蓄電装置100の温度異常が発生したと判定する。さらに、HV-ECU300は、たとえば、蓄電装置100のSOCがしきい値(たとえば、SOCの下限値を示す値)以下である場合に、蓄電装置100の電力枯渇が発生したと判定する。さらに、HV-ECU300は、車両1の現在位置が、設定された走行経路と異なる経路(あるいは、所定距離以上離隔した経路)上を移動中である場合に、車両1の走行経路からの離脱が発生したと判定する。さらに、HV-ECU300は、CDモード選択中にエンジン14を始動させる条件が成立した場合(あるいは、エンジン回転数がしきい値以上である場合)に、CDモード中においてエンジン14の始動が行なわれると判定する。なお、エンジン14の始動させる条件は、たとえば、アクセル開度がしきい値以上になるという条件等を含むようにしてもよい。
【0144】
制御中断条件が成立すると判定される場合(S306にてYES)、処理はS308に移される。なお、制御中断条件が成立しないと判定される場合(S306にてNO)、処理はS300に戻される。
【0145】
S308にて、HV-ECU300は、切替制御を中断状態に設定する。この場合、HV-ECU300は、CDモードを継続して選択する。なお、HV-ECU300は、走行計画に従った切替制御の実行中であることを示す情報をHMI装置330に表示している場合には、非表示状態としてもよい。HV-ECU300は、切替制御を中断状態に設定すると、処理をS102に戻す。
【0146】
以上のような構造およびフローチャートに基づくこの変形例におけるHV-ECU300の動作について説明する。
【0147】
たとえば、ユーザの起動操作により車両1の制御システムを起動させた場合には、IGフラグがオン状態になるため(S100にてYES)、支援実施履歴があるか否かが判定される(S102)。履歴フラグがオフ状態であることによって支援実施履歴がないと判定される場合には(S102にてNO)、支援条件が成立するか否かが判定される(S300)。
【0148】
車両1の目的地および走行経路が設定されると支援条件が成立していると判定され(S300にてYES)、先読み情報が更新されるか否かが判定される(S110)。ナビECU350において道路交通情報の受信によって設定された走行経路に対応した先読み情報が生成され、HV-ECU300がナビECU350から生成された先読み情報を受信すると、先読み情報が更新されたと判定される(S110にてYES)。そのため、先読み情報に基づいて走行経路を構成する複数の走行区間における消費エネルギーEnが算出されるとともに、それらの総和が総消費エネルギーEsumとして算出される(S112)。
【0149】
支援実施履歴なしであっても、総消費エネルギーEsumが残存エネルギーErよりも大きい場合には(S114にてYES)、走行計画が生成され(S116)、走行計画に従って制御モードの切替制御が実行される(S118)。
【0150】
このとき、支援実施履歴なしであるため(S120にてYES)、支援無電池残量が設定されるとともに(S122)、履歴フラグがオン状態に設定され(S124)、支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とが算出される(S126)。
【0151】
すなわち、支援無電池残量がゼロよりも大きい場合(S200にてYES)、支援無EV走行距離(前回値)に前回値の算出時点からの移動距離が加算されて支援無EV走行距離(今回値)が算出される(S202)。
【0152】
そして、支援無電池残量(前回値)から前回値の算出時点からの走行消費分と補機消費分とが減算されて支援無電池残量(今回値)が算出される(S204)。
【0153】
さらに、制御モードとしてCDモードが維持される場合には(S206にてYES)、支援有EV走行距離(前回値)に前回値の算出時点からの移動距離が加算されて支援有EV走行距離(今回値)が算出される(S208)。そして、目的地に到着していない場合など、制御終了条件が成立していない限り(S128にてNO)、切替制御が継続して実施される。
【0154】
目的地に到着する前に、蓄電装置100の温度異常が発生する場合には(S302にてNO、S306にてYES)、切替制御が中断状態に設定される(S308)。このとき、HMI装置330には、切替制御が実行中であることを示す情報が表示されない。一方、履歴フラグのオン状態が維持されるため、支援実施履歴があると判定される(S102にてYES)。そのため、支援条件が成立するまでの間(S300にてNO)、支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とが継続して行なわれる(S106)。蓄電装置100の温度異常が解消して制御中断条件が不成立になり(S306にてNO)、支援条件が再度成立すると(S300にてYES)、先読み情報が更新され(S110にてYES)、切替制御が再開される(S118)。このとき、支援無EV走行距離と支援有EV走行距離との算出は、継続して行なわれるため(S126)、切替制御が中断されている期間における蓄電装置100の電力を用いた電動走行による走行距離と、制御中断条件が不成立となってから切替制御が開始されるまでの期間における蓄電装置100の電力を用いた電動走行による走行距離とが加算されて支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とがそれぞれ算出される。
【0155】
このように、一時的な中断状態から切替制御が復帰した後に、切替制御の実行履歴を用いて支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とが算出されるとともに、復帰してから切替制御が開始するまでの期間におけるエンジン14を停止させた状態での電動走行による走行距離が加算されて少なくとも支援有EV走行距離が算出される。そのため、支援無EV走行距離と支援有EV走行距離とを精度高く算出することができる。
【0156】
なお、上記した変形例は、その全部または一部を適宜組み合わせて実施してもよい。
【0157】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0158】
1 ハイブリッド車両、10 第1MG、12 第2MG、14 エンジン、16 動力分割装置、28 駆動輪、40 PCU、50 SMR、60 充電リレー、70 充電装置、80 インレット、90 コネクタ、92 外部電源、100 蓄電装置、200 監視ユニット、210 電圧検出部、220 電流検出部、230 温度検出部、300 HV-ECU、301 CPU、302 メモリ、310 IGスイッチ、320 センサ群、330 HMI装置、340 通信バス、350 ナビECU、360 位置検出装置、370 交通情報受信装置、372 AC-ECU、374 空調装置、380 モード選択スイッチ、390 通信装置、400,404 携帯端末、402,406 表示部、500 サーバ。