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特許7388345燃料電池システムおよび燃料電池システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】燃料電池システムおよび燃料電池システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04029 20160101AFI20231121BHJP
   H01M 8/043 20160101ALI20231121BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20231121BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20231121BHJP
   H01M 8/04303 20160101ALI20231121BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20231121BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20231121BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20231121BHJP
【FI】
H01M8/04029
H01M8/043
H01M8/0432
H01M8/04701
H01M8/04303
H01M8/04 J
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020211987
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022098553
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 智隆
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】赤松 一志
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-282106(JP,A)
【文献】特開2008-293994(JP,A)
【文献】特表2011-503812(JP,A)
【文献】特開2020-136041(JP,A)
【文献】特開2014-32837(JP,A)
【文献】特開2018-116873(JP,A)
【文献】特開2005-93349(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0214662(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムであって、
燃料電池と、外部から供給される一次側冷媒と前記燃料電池に流通させる二次側冷媒との間の熱交換を行なう熱交換器と、前記二次側冷媒の流量を調整する冷媒ポンプと、を有する燃料電池冷却系と、前記燃料電池の運転を制御する制御部と、をそれぞれ有する複数の燃料電池ユニットと、
冷却装置と、
前記冷却装置から前記複数の燃料電池ユニットのそれぞれに前記一次側冷媒を供給する冷却系と、
を備え、
前記燃料電池システムの運転停止中において、
前記冷却装置は、前記複数の燃料電池ユニットのそれぞれに、予め定められた温度以上の温度に調整して前記一次側冷媒を供給し、
前記複数の燃料電池ユニットのうち、少なくとも、凍結可能性のある燃料電池と判断された燃料電池ユニットでは、前記制御部は、前記二次側冷媒が前記熱交換器を流れるように前記冷媒ポンプを作動させる、
燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池冷却系は、さらに、前記燃料電池から流出する前記二次側冷媒を、前記熱交換器に流通させるか前記熱交換器をバイパスさせるか切替可能とするバルブを有し、
前記燃料電池システムの運転停止中において、前記凍結可能性のある燃料電池を有する燃料電池ユニットにおける前記制御部は、前記冷媒ポンプを作動させるとともに、前記二次側冷媒が前記熱交換器を流通するように前記バルブを作動させる、燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池システムであって、
前記複数の燃料電池ユニットのうち、前記燃料電池システムの運転中に作動を開始した燃料電池ユニットでは、
前記制御部は、前記燃料電池の温度として利用される前記二次側冷媒の温度が目標温度に到達するまでの間において、
前記二次側冷媒の温度が前記一次側冷媒の温度未満の場合には、前記冷媒ポンプを作動させるとともに、前記二次側冷媒が前記熱交換器を流通するように前記バルブを作動させ、
前記二次側冷媒の温度が前記一次側冷媒の温度以上の場合には、前記冷媒ポンプを作動させるとともに、前記二次側冷媒が前記熱交換器をバイパスするように前記バルブを作動させる、
燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池システムであって、
前記複数の燃料電池ユニットを制御するユニット制御部を有し、
前記凍結可能性のある燃料電池の判断は、前記ユニット制御部において、判断対象の燃料電池の雰囲気温度が凍結判定温度以下となっている場合になされる、燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池システムであって、
前記凍結可能性のある燃料電池の判断は、前記複数の燃料電池ユニットのそれぞれの前記制御部において、判断対象の燃料電池の雰囲気温度が凍結判定温度以下となっている場合になされる、燃料電池システム。
【請求項6】
燃料電池と、外部から供給される一次側冷媒と前記燃料電池に流通させる二次側冷媒との間の熱交換を行なう熱交換器と、前記二次側冷媒の流量を調整する冷媒ポンプと、を有する燃料電池冷却系と、をそれぞれ有する複数の燃料電池ユニットと、冷却装置と、前記冷却装置から前記複数の燃料電池ユニットのそれぞれに前記一次側冷媒を供給する冷却系と、を備える燃料電池システムの制御方法であって、
前記燃料電池システムの運転停止中において、前記冷却装置によって前記複数の燃料電池ユニットのそれぞれに、予め定められた温度以上の温度に調整された前記一次側冷媒が供給される状態で、前記複数の燃料電池ユニットのうち、少なくとも、凍結可能性のある燃料電池と判断された燃料電池ユニットでは、前記二次側冷媒が前記熱交換器を流れるように前記冷媒ポンプを作動させる、
燃料電池システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システム及び燃料電池システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムでは、氷点下のような低温時における始動の信頼性を高めるために、燃料電池の発電に伴う自己発熱を増大させる暖機運転を行うことで、通常運転よりも短時間で燃料電池を昇温することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-4243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、燃料電池の自己発熱による暖機運転では、熱源が自身の燃料電池だけであるため、燃料電池の温度が適正温度まで昇温するのに時間が掛かる。特に、複数の燃料電池を、例えば、非常用発電装置として利用するような場合には、使用開始時における速やかな電力供給が求められるため、使用可能となる前の暖機運転に要する時間の短時間化が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、燃料電池システムが提供される。この燃料電池システムは、燃料電池と、外部から供給される一次側冷媒と前記燃料電池に流通させる二次側冷媒との間の熱交換を行なう熱交換器と、前記二次側冷媒の流量を調整する冷媒ポンプと、を有する燃料電池冷却系と、前記燃料電池の運転を制御する制御部と、をそれぞれ有する複数の燃料電池ユニットと、冷却装置と、前記冷却装置から前記複数の燃料電池ユニットのそれぞれに前記一次側冷媒を供給する冷却系と、を備える。前記燃料電池システムの運転停止中において、前記冷却装置は、前記複数の燃料電池ユニットのそれぞれに、予め定められた温度以上の温度に調整して前記一次側冷媒を供給し、前記複数の燃料電池ユニットのうち、少なくとも、凍結可能性のある燃料電池と判断された燃料電池ユニットでは、前記制御部は、前記二次側冷媒が前記熱交換器を流れるように前記冷媒ポンプを作動させる。
この形態の燃料電池システムによれば、燃料電池システムの運転停止中において、少なくとも、凍結可能性のある燃料電池を有する燃料電池ユニットでは、冷媒ポンプを作動させることにより、凍結しない温度に設定された一次側冷媒から熱交換器を介して熱を受け取って温められた二次側冷媒を燃料電池に流通させて、燃料電池を暖機することができるので、燃料電池の凍結を回避させることが可能である。これにより、燃料電池システムの始動時における暖機時間を短くすることが可能である。
(2)上記(1)の形態の燃料電池システムにおいて、前記燃料電池冷却系は、さらに、前記燃料電池から流出する前記二次側冷媒を、前記熱交換器に流通させるか前記熱交換器をバイパスさせるか切替可能とするバルブを有し、前記燃料電池システムの運転停止中において、前記凍結可能性のある燃料電池を有する燃料電池ユニットにおける前記制御部は、前記冷媒ポンプを作動させるとともに、前記二次側冷媒が前記熱交換器を流通するように前記バルブを作動させるようにしてもよい。
この形態の燃料電池システムによれば、燃料電池システムの運転停止中において、少なくとも、凍結可能性のある燃料電池を有する燃料電池ユニットでは、冷媒ポンプを作動させるとともに、二次側冷媒が熱交換器を流通するようにバルブを作動させることにより、凍結しない温度に設定された一次側冷媒から熱交換器を介して熱を受け取って温められた二次側冷媒を燃料電池に流通させて、燃料電池を暖機することができるので、燃料電池の凍結を回避させることが可能である。これにより、燃料電池システムの始動時における暖機時間を短くすることが可能である。
(3)上記(2)の形態の燃料電池システムにおいて、前記複数の燃料電池ユニットのうち、前記燃料電池システムの運転中に作動を開始した燃料電池ユニットでは、前記制御部は、前記燃料電池の温度として利用される前記二次側冷媒の温度が目標温度に到達するまでの間において、前記二次側冷媒の温度が前記一次側冷媒の温度未満の場合には、前記冷媒ポンプを作動させるとともに、前記二次側冷媒が前記熱交換器を流通するように前記バルブを作動させ、前記二次側冷媒の温度が前記一次側冷媒の温度以上の場合には、前記冷媒ポンプを作動させるとともに、前記二次側冷媒が前記熱交換器をバイパスするように前記バルブを作動させる、ようにしてもよい。
上記形態の燃料電池システムによれば、複数の燃料電池ユニットのうち、作動を開始した燃料電池ユニットでは、二次側冷媒の温度が目標温度に到達するまでの間において、二次側冷媒の温度が一次側冷媒の温度未満の場合には、一次側冷媒から熱交換器を介して熱を受け取って温められた二次側冷媒を燃料電池に流通させて燃料電池を暖機するとともに、燃料電池の作動による自己発熱により燃料電池を暖機することが可能である。
(4)上記(1)から(3)のいずれかの形態の燃料電池システムにおいて、前記複数の燃料電池ユニットを制御するユニット制御部を有し、前記凍結可能性のある燃料電池の判断は、前記ユニット制御部において、判断対象の燃料電池の雰囲気温度が凍結判定温度以下となっている場合になされるとしてもよい。
上記形態の燃料電池システムによれば、判断対象の燃料電池の雰囲気温度によって凍結可能性のある燃料電池の判断を行うことにより、判断対象の燃料電池の凍結可能性の判断の精度を高めることができる。
(5)上記(1)から(3)のいずれかの形態の燃料電池システムにおいて、前記凍結可能性のある燃料電池の判断は、前記複数の燃料電池ユニットのそれぞれの前記制御部において、判断対象の燃料電池の雰囲気温度が凍結判定温度以下となっている場合になされるとしてもよい。
上記形態の燃料電池システムによれば、判断対象の燃料電池の雰囲気温度によって凍結可能性のある燃料電池の判断を行うことにより、判断対象の燃料電池の凍結可能性の判断の精度を高めることができる。
【0007】
本開示は、上記以外の種々の形態で実現することも可能であり、例えば、燃料電池システムの制御方法、燃料電池システムを備えた発電装置等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態としての燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。
図2】燃料電池システムの運転停止状態における制御部の制御フローチャートである。
図3】燃料電池システムの運転停止状態における各燃料電池ユニットのユニット制御部の制御フローチャートである。
図4】FC暖機処理実行中の燃料電池冷却系の状態を示す説明図である。
図5】第2実施形態としての燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。
図6】燃料電池システムの運転停止状態における制御部の制御フローチャートである。
図7】第3実施形態としての燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。
図8】燃料電池システムの運転中に作動を開始した燃料電池ユニットのユニット制御部の制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態としての燃料電池システム10の概略構成を示す説明図である。燃料電池システム10は、燃料電池を用いた定置設置型の発電システムであり、燃料電池を用いた発電設備20と、発電設備20の外部に設けられた冷却装置30と、冷却装置30から発電設備20内に冷却用の冷媒を供給する冷却系40と、を備えている。発電設備20は、設置されたコンテナ21内に収容された複数の燃料電池ユニット22およびユニット制御部23(図1では「U-ECU23」と記載)を有しており、少なくとも1つの燃料電池ユニット22がユニット制御部23の制御に従って発電を行なうことで、外部に電力を供給する発電設備である。冷却装置30は、冷却系40を介して発電設備20内の複数の燃料電池ユニット22のそれぞれに冷却用の冷媒を循環供給する冷却装置である。なお、コンテナ21は必ずしも必要な構成要素ではなく、コンテナ21を備えていない発電設備20であってもよい。
【0010】
冷却系40は、冷却装置30に接続された主供給管路610と、主供給管路610に接続された設備供給管路612と、設備供給管路612を後述する複数の燃料電池ユニット22に含まれる熱交換器410にそれぞれ接続した複数の一次側冷媒供給管路614と、を備える。また、冷却系40は、冷却装置30に接続された主還流管路620と、主還流管路620に接続された設備還流管路622と、設備還流管路622を複数の燃料電池ユニット22に含まれる熱交換器410にそれぞれ接続した複数の一次側冷媒還流管路624と、を備える。複数の一次側冷媒供給管路614は、それぞれ、対応する熱交換器410の一次側入口416に接続されており、複数の一次側冷媒還流管路624は、それぞれ、対応する熱交換器410の一次側出口418に接続されている。なお、設備供給管路612には仕切バルブ613が設けられており、設備還流管路622には仕切バルブ623が設けられている。これらの仕切バルブ613,623は、通常、冷媒が管路612,622を流通可能となるように、開かれた状態とされる。
【0011】
冷却装置30と各燃料電池ユニット22の熱交換器410が冷却系40によって接続されることで、冷却装置30から冷却系40を介して熱交換器410の一次側入口416に供給された冷媒は、熱交換器410内を流通し、熱交換器410の一次側出口418から排出され、冷却系40を介して冷却装置30に還流される。冷却装置30は、冷却系40を介して還流された冷媒を気化潜熱により冷却して、再び冷却用の冷媒とすることにより、冷却用の冷媒を循環供給することができる。
【0012】
また、冷却装置30は、燃料電池システム10の運転停止中、すなわち、発電設備20による発電の停止中において、冷却装置30及び冷却系40の凍結防止のために、冷媒の温度が凍結しない一定温度以上となるように温度制御を行なうとともに、冷媒を循環させる。この冷媒としては、通常、水が用いられるため、凍結しない一定の温度としては、水の氷点(0℃)よりも高い温度が予め設定される。例えば、5℃~15℃程度の範囲のいずれかの温度に設定されればよく、例えば、10℃程度の温度に設定されるようにすればよい。なお、常時、冷媒の温度制御および冷媒の循環を行なう必要はなく、冷媒の温度が予め定められた温度未満となって冷媒が凍結する可能性のある場合に、温度制御および循環制御を行なうようにしてもよい。
【0013】
発電設備20の複数の燃料電池ユニット22は、いずれも、基本的には同一の構成を有する。図1では、1つの燃料電池ユニット22の構成のみを具体的に示し、他の燃料電池ユニット22については構成を省略している。
【0014】
燃料電池ユニット22は、反応ガスである燃料ガスと酸化剤ガスとを反応させて発電するユニットであり、燃料電池100(図1では、「FC100」と記載)と、燃料ガス供給系200と、酸化剤ガス供給系300と、燃料電池冷却系400と、燃料電池制御部500(図1では、「FC-ECU500」と記載)と、を備える。
【0015】
燃料電池100は、発電の単位モジュールであるセル(以下、「単セル」とも呼ぶ)が複数積層されたスタック構成を有している。各単セルは、燃料ガスと酸化剤ガスを用いて発電を行なう固体高分子形燃料電池である。本実施形態では、燃料ガスとして水素が用いられ、酸化剤ガスとして空気(エア)中の酸素が用いられる。各単セルでは、電解質膜を間に介して、アノード側に燃料ガスが流れるアノード側ガス流路が形成され、カソード側に酸化剤ガスが流れるカソード側ガス流路が形成されている。また、各単セルの間には、両側の単セルを冷却するための冷媒が流れる冷媒流路が形成されている。なお、燃料電池としては、固体高分子形燃料電池に限らず、固体酸化物形燃料電池等、他種の燃料電池を採用してもよい。
【0016】
燃料ガス供給系200は、燃料電池100への燃料ガスの供給、および、燃料電池100から排出した燃料オフガスを燃料ガスとして循環供給を行なう。酸化剤ガス供給系300は、燃料電池100への酸化剤ガスの供給、および、燃料電池100からの酸化剤オフガスの排出を行なう。なお、燃料ガス供給系200における燃料ガスの供給制御、および、酸化剤ガス供給系300における酸化剤ガスの供給制御は、それぞれに含まれる各種アクチュエータが燃料電池制御部500に制御されることによって行なわれる。
【0017】
燃料電池冷却系400は、燃料電池100の温度を調整するために燃料電池100に対して冷媒を循環供給する冷媒循環系である。冷媒には、エチレングリコールなどの不凍液や水、不凍液と水の混合液等が用いられる。
【0018】
燃料電池冷却系400は、熱交換器410と、熱交換器410の二次側出口414と燃料電池100の冷媒入口102とを繋ぐ冷媒供給管路420と、冷媒供給管路420に設けられた冷媒ポンプ450と、燃料電池100の冷媒出口104と熱交換器410の二次側入口412とを繋ぐ冷媒還流管路430と、を備える。冷媒還流管路430には、分流バルブ460が設けられており、分流バルブ460を介してバイパス管路440が接続されている。バイパス管路440は、冷媒供給管路420の熱交換器410と冷媒ポンプ450との間の位置で冷媒供給管路420に合流するように接続されている。バイパス管路440には、流通する冷媒に含まれるイオンを除去するためのイオン交換樹脂を有するイオン交換機470が設けられている。
【0019】
分流バルブ460は、熱交換器410の二次側を経由して流れる冷媒と、熱交換器410をバイパスしてバイパス管路440を流れる冷媒との割合を変更可能な弁であり、本実施形態ではロータリーバルブによって構成されている。なお、この分流バルブ460が、燃料電池100から流出する冷媒を、熱交換器に流通させるか熱交換器をバイパスさせるか切替可能とする「バルブ」に相当する。
【0020】
熱交換器410の一次側入口416には冷却系40の一次側冷媒供給管路614が接続されており、熱交換器410の一次側出口418には一次側冷媒還流管路624が接続されている。熱交換器410の一次側には、冷却装置30から供給される冷媒が流通する。
【0021】
熱交換器410は、一次側を流通する冷媒(以下、「一次側冷媒」とも呼ぶ)と、二次側を流通する冷媒(以下、「二次側冷媒」とも呼ぶ)との間で熱交換を行なう。例えば、冷却装置30によって冷却された一次側冷媒が二次側冷媒の熱を受け取って二次側冷媒の温度を低下させることによって、二次側冷媒を冷却することができる。
【0022】
なお、冷媒供給管路420の熱交換器410側の端部には、熱交換器410から流出する二次側冷媒の温度を計測する温度センサ480が設けられている。また、冷媒還流管路430の燃料電池100側の端部には、燃料電池100から流出する二次側冷媒の温度を計測する温度センサ490が設けられている。温度センサ480,490の計測値は、燃料電池制御部500に入力され、燃料電池冷却系400における二次側冷媒の温度制御に利用される。
【0023】
なお、燃料電池冷却系400の作動状態、すなわち、冷媒ポンプ450および分流バルブ460の作動状態は、燃料電池制御部500によって制御される。例えば、燃料電池システム10の運転によって発電が行なわれる燃料電池ユニット22では、通常、燃料電池冷却系400を以下のように作動させる。
【0024】
燃料電池100の温度が目標温度以上の場合、二次側冷媒が熱交換器410に流入するように、分流バルブ460の熱交換器410側の方向の開度、および、冷媒ポンプ450の駆動量を調整して、熱交換器410で冷却された二次側冷媒を燃料電池100に循環供給させる。通常、熱交換器410側の方向の開度を全開とするように調整する。この場合、目標温度以上で、かつ、発電に適した適正温度の状態で、燃料電池100の発電が可能となるように、燃料電池100を冷却することができる。
【0025】
また、燃料電池100の温度が目標温度に比べて低い場合、分流バルブ460のバイパス管路440側の方向を全開とし、冷媒ポンプ450の駆動量を調整して、燃料電池100を流通した二次側冷媒の全てをバイパス管路440に流通させことで、熱交換器410をバイパスさせた二次側冷媒を燃料電池100に循環供給させる。この場合、燃料電池100の発電による自己発熱により二次側冷媒の温度を上昇させて、燃料電池100が目標温度以上となるように燃料電池100を暖機することができる。
【0026】
なお、運転が停止されて発電が行なわれていない燃料電池ユニット22では、後述する場合を除いて、燃料電池冷却系400の動作は停止状態とされる。
【0027】
燃料電池制御部500は、CPUと、ROMやRAM等のメモリと、入出力ポートと、を備えたコンピュータ、例えば、マイクロコンピュータによって構成されている。燃料電池システム10の運転によって発電が行なわれる燃料電池ユニット22の燃料電池制御部500は、メモリに格納されている各種制御プログラムを実行して、不図示の各種メータや、温度センサ480,490を含む各種センサ等からの情報を取得し、燃料ガス供給系200、酸化剤ガス供給系300、および、燃料電池冷却系400を制御する。また、燃料電池システム10の運転停止状態、すなわち、発電設備20の各燃料電池ユニット22の運転停止状態において、各燃料電池ユニット22の燃料電池制御部500は、メモリに格納されている運転停止状態用の制御プログラムを実行することで、燃料電池冷却系400の動作を制御する。この燃料電池ユニット22の運転停止状態における燃料電池制御部500の制御については後述する。なお、燃料電池制御部500は、単一の制御部として構成される必要はなく、複数の制御部によって構成して、これら複数の制御部間で必要な情報をやり取りするようにしてもよい。
【0028】
発電設備20のコンテナ21内には、収容された複数の燃料電池ユニット22の雰囲気温度を計測する温度センサ24が設けられている。温度センサ24の計測値はユニット制御部23に入力され、後述する各燃料電池ユニット22の燃料電池制御部500の制御に利用される。なお、以下では、コンテナ21内に収容された複数の燃料電池ユニット22の雰囲気温度を、単に「コンテナ21内の雰囲気温度」とも呼ぶ。
【0029】
ユニット制御部23は、CPUと、ROMやRAM等のメモリと、入出力ポートと、を備えたコンピュータ、例えば、マイクロコンピュータによって構成されている。燃料電池システム10の運転によって発電が行なわれる発電設備20のユニット制御部23は、メモリに格納されている各種制御プログラムを実行して、各燃料電池ユニット22の燃料電池制御部500に指示を与えることで、各燃料電池ユニット22の動作を制御する。また、燃料電池システム10の運転停止状態において、ユニット制御部23は、メモリに格納されている運転停止状態用の制御プログラムを実行して、温度センサ24からの情報を取得し、各燃料電池ユニット22の燃料電池制御部500に指示を与えることで、各燃料電池ユニット22の燃料電池冷却系400の動作を制御する。この燃料電池システム10の運転停止状態におけるユニット制御部23の制御については後述する。なお、ユニット制御部23も、単一の制御部として構成される必要はなく、複数の制御部によって構成して、これら複数の制御部間で必要な情報をやり取りするようにしてもよい。
【0030】
図2は、燃料電池システムの運転停止状態におけるユニット制御部23の制御フローチャートである。ステップS110で、ユニット制御部23は、温度センサ24からコンテナ21内の雰囲気温度Taを取得し、雰囲気温度Taと暖機開始閾値温度Tsとの大小関係から、各燃料電池ユニット22の燃料電池100の凍結可能性の有無を判断する。
【0031】
暖機開始閾値温度Tsは、燃料電池100が凍結する可能性、具体的には、燃料電池100の内部にある液水が、凍結している、あるいは、凍結する可能性、があるため、凍結している液水を融解させ、あるいは、凍結する可能性がある液水を凍結させないための温度に設定される。例えば、暖機開始閾値温度Tsは、水の氷点である0℃にマージンを考慮して設定した+2℃~+5℃等の0℃以上の温度に設定される。暖機開始閾値温度Tsは「凍結判定温度」に相当する。
【0032】
Ta>Tsの場合には(ステップS110:NO)、ユニット制御部23は、各燃料電池ユニット22の燃料電池100に凍結可能性は無いと判断し、この制御処理を終了する。これに対して、Ta≦Tsの場合には(ステップS110:YES)、ユニット制御部23は、各燃料電池ユニット22の燃料電池100に凍結可能性が有ると判断し、ステップS120でFC暖機指示のフラグをONとする。FC暖機指示のフラグがONとなった場合、各燃料電池ユニット22の燃料電池制御部500は、後述するように、燃料電池冷却系400を作動させて燃料電池100の暖機を開始する。
【0033】
そして、ユニット制御部23は、ステップS130で、雰囲気温度Taを取得し、雰囲気温度Taと暖機終了閾値温度Teとの大小関係から、各燃料電池ユニット22の燃料電池100の凍結可能性の有無を判断する。暖機終了閾値温度Teは、FC暖機を安定に実行するために、暖機開始閾値温度Tsよりも高い温度に設定される。但し、Te=Tsとしてもよい。
【0034】
Ta<Teの場合には(ステップS130:NO)、ユニット制御部23は、各燃料電池ユニット22の燃料電池100の凍結可能性は無くなっていないと判断し、ステップS130の処理を繰り返す。これに対して、Ta≧Teの場合には(ステップS130;YES)、ユニット制御部23は、各燃料電池ユニット22の燃料電池100の凍結可能性は無くなったと判断し、ステップS140でFC暖機指示のフラグをOFFとし、この制御処理を終了する。FC暖機指示のフラグがOFFとなった場合、各燃料電池ユニット22の燃料電池制御部500は、後述するように、燃料電池冷却系400を停止して燃料電池100の暖機を終了する。
【0035】
なお、ユニット制御部23は、上記制御処理を繰り返し実行する。この制御処理の繰り返しの実行は、前の制御処理の終了後、直ちに行なわれてもよく、一定時間経過後に行なわれても良い。
【0036】
図3は、燃料電池システムの運転停止状態における各燃料電池ユニット22の燃料電池制御部500の制御フローチャートである。燃料電池制御部500は、燃料電池システムの運転停止状態において、あらかじめ定められたタイムスケジュールで起動して、この制御処理を実行する。
【0037】
ステップS210で、燃料電池制御部500は、ユニット制御部23からFC暖機指示のフラグを取得し、FC暖機指示のフラグの状態から、FC暖機処理の要否を判断する。FC暖機指示のフラグがOFFの場合には(ステップS210:NO)、燃料電池制御部500は、FC暖機処理は不要と判断し、この制御処理を終了する。これに対して、FC暖機指示のフラグがONの場合には(ステップS210:YES)、燃料電池制御部500は、FC暖機処理は必要と判断し、ステップS220で、燃料電池冷却系400のみを作動させて、FC暖機処理を開始する。具体的には、分流バルブ460の流れの方向を、熱交換器410側に切り替えて、冷媒ポンプ450を駆動して、二次側冷媒を燃料電池100に循環供給する。なお、これにより実行される燃料電池100の暖機については、後述する。
【0038】
そして、燃料電池制御部500は、ステップS230で、ユニット制御部23からFC暖機指示のフラグを取得し、FC暖機指示のフラグの状態から、FC暖機処理の継続の要否を判断する。
【0039】
FC暖機指示のフラグがOFFでない場合には(ステップS230:NO)、燃料電池制御部500は、FC暖機処理の継続が必要と判断し、ステップS230の処理を繰り返す。これに対して、FC暖機指示のフラグがOFFの場合には(ステップS230;YES)、燃料電池制御部500は、FC暖機処理の継続は不要となったと判断し、ステップS240で燃料電池冷却系400の作動、具体的には、冷媒ポンプ450の駆動を停止してFC暖機処理を停止し、この制御処理を終了する。
【0040】
図4は、FC暖機処理実行中の燃料電池冷却系400の状態を示す説明図である。なお、図4では、説明の便宜上、熱交換器410、燃料電池100、一次側冷媒供給管路614、一次側冷媒還流管路624、冷媒供給管路420、および、冷媒還流管路430のみを示しており、他の構成要素(図1参照)は省略されている。
【0041】
一次側冷媒C1は、一次側冷媒供給管路614および一次側冷媒還流管路624を含む冷却系40(図1参照)を介して、熱交換器410の一次側と冷却装置30(図1参照)との間を循環する。また、二次側冷媒C2は、冷媒供給管路420および冷媒還流管路430を介して熱交換器410の二次側と燃料電池100との間を循環する。
【0042】
上記したように、燃料電池システム10の運転停止状態における一次側冷媒C1の温度Tc1は、凍結しない一定温度となるように温度制御されている。なお、熱交換器410の一次側入口416から流入する一次側冷媒C1の温度Tc1をTc1iで表すものとする。以下では、この一次側冷媒の温度Tc1iは暖機開始閾値温度Tsおよび暖機終了閾値温度Teよりも高い温度に設定されているものとして説明する。
【0043】
また、二次側冷媒C2の温度Tc2は、暖機開始閾値温度Tsおよび暖機終了閾値温度Teよりも低い温度となっているものとして説明する。以下では、説明を容易にするため、各管路における温度勾配を無視して、熱交換器410の二次側出口414から流出して燃料電池100の冷媒入口102から燃料電池100に流入する二次側冷媒C2の温度Tc2をTc2iで表すものとする。また、燃料電池100の冷媒出口104から流出して熱交換器410の二次側入口412から熱交換器410に流入する二次側冷媒C2の温度Tc2をTc2oで表すものとする。
【0044】
FC暖機処理の開始時点では、熱交換器410に流入する一次側冷媒C1の温度Tc1iは、熱交換器410に流入する二次側冷媒C2の温度Tc2oよりも高い状態となっている。上記したように、熱交換器410は、一次側を流通する一次側冷媒C1と、二次側を流通する二次側冷媒C2との間で熱交換を行なうものである。このため、熱交換器410は、一次側を流通する一次側冷媒C1から二次側を流通する二次側冷媒C2に熱を受け渡して、熱交換器410から燃料電池100に流入する二次側冷媒C2の温度Tc2iを、燃料電池100から熱交換器410に流入する二次側冷媒C2の温度Tc2oよりも上昇させることができる。熱交換器410で温められた二次側冷媒C2が燃料電池100を流通することにより、二次側冷媒C2から燃料電池100に一部の熱が受け渡されて、燃料電池100の温度Tfを上昇させることができる。燃料電池100の温度Tfの上昇に利用された分だけ温度が低下した温度Tc2oの二次側冷媒C2は、燃料電池100から流出して熱交換器410に還流され、熱交換器410によって温められる。このように熱交換器410の熱交換器により温められた二次側冷媒C2が循環することで、二次側冷媒C2の温度を、一次側冷媒C1の温度Tc1iに近づくように上昇させていくことができる。これにより、燃料電池100の温度Tfを、一次側冷媒の温度Tc1iに近づくように上昇させることができる。この結果、凍結している燃料電池100が融解するように、凍結可能性のある燃料電池100が凍結しないように、燃料電池100を暖機することができる。
【0045】
第1実施形態の燃料電池システム10では、システムの運転停止状態において、コンテナ21内の雰囲気温度Taが、いずれかの燃料電池100が凍結する可能性があることを示す暖機開始閾値温度Ts以下である場合に、各燃料電池ユニット22の燃料電池冷却系400のみを作動させている。そして、燃料電池冷却系400では、二次側冷媒を熱交換器410に流通させることで、予め凍結しない温度に温度制御された一次側冷媒の熱を受け取って二次側冷媒を温めることが可能である。これにより、各燃料電池ユニット22では、温められた二次側冷媒を燃料電池100内に流通させることによって燃料電池100を暖機することができ、燃料電池100の凍結を抑制することが可能である。この結果、燃料電池システム10の運転を開始した際に、作動を開始した燃料電池ユニット22において実行される暖機運転の時間を短縮することができ、速やかに適正な作動状態での発電を開始することが可能である。なお、ユニット制御部23および各燃料電池制御部500が「制御部」に相当する。
【0046】
なお、コンテナ21内の雰囲気温度を計測する温度センサ24は、以下で説明するように設置すればよい。コンテナ21の雰囲気温度は、上記したように、燃料電池100の凍結可能性の有無を判断する温度である。そこで、この雰囲気温度を計測する温度センサ24は、複数の燃料電池ユニット22の燃料電池100の雰囲気温度を計測可能な位置に設置することが好ましい。但し、複数の燃料電池100の雰囲気温度は、コンテナ21内において、それぞれの燃料電池100が設置されている位置に応じて変化する可能性が高い。そこで、複数の燃料電池100のうち、最も雰囲気温度が低下する燃料電池100を予め求めて、その近くに温度センサ24を設置すればよい。また、複数の燃料電池100のうちのいずれかの近くに温度センサ24を設置した場合には、最も雰囲気温度が低下する燃料電池100の雰囲気温度との温度差を予め求めて、その温度差を加味して暖機開始閾値温度Tsおよび暖機終了閾値温度Teを設定すればよい。
【0047】
B.第2実施形態:
図5は、第2実施形態としての燃料電池システム10Bの概略構成を示す説明図である。燃料電池システム10Bは、温度センサ24(図1参照)に代えて各燃料電池100の近くにそれぞれ設置された温度センサ110を備えている。また、燃料電池システム10は、ユニット制御部23(図1参照)に代えて、各温度センサ110から入力される計測値を利用して、後述するように、各燃料電池制御部500を制御するユニット制御部23Bを備えている。燃料電池システム10Bは、これらの相違点を除いて、第1実施形態の燃料電池システム10(図1参照)と同様の構成を有している。
【0048】
図6は、燃料電池システムの運転停止状態におけるユニット制御部23Bの制御フローチャートである。ステップS110Bで、ユニット制御部23Bは、各温度センサ110から各燃料電池100の雰囲気温度Taを取得し、雰囲気温度Taと暖機開始閾値温度Tsとの大小関係から、各燃料電池100について、それぞれ、凍結可能性の有無を判断する。
【0049】
各燃料電池100のいずれもがTa>Tsの場合には(ステップS110B:NO)、ユニット制御部23Bは、いずれの燃料電池100にも凍結可能性は無いと判断し、この制御処理を終了する。これに対して、Ta≦Tsの燃料電池100が存在する場合には(ステップS110B:YES)、ユニット制御部23Bは、その燃料電池100には凍結可能性が有ると判断し、ステップS120Bで該当する燃料電池100のFC暖機指示のフラグをONとする。FC暖機指示のフラグがONとなった燃料電池100を有する燃料電池ユニット22の燃料電池制御部500は、第1実施形態で説明したように(図3参照)、燃料電池冷却系400を作動させて燃料電池100の暖機を開始する。
【0050】
そして、ユニット制御部23Bは、ステップS130Bで、各燃料電池100の雰囲気温度Taを取得し、FC暖機指示のフラグがONとなった各燃料電池100の雰囲気温度Taと暖機終了閾値温度Teとの大小関係から、各燃料電池100について、それぞれ、凍結可能性の有無を判断する。
【0051】
各燃料電池100のいずれもがTa<Teの場合には(ステップS130:NO)、ユニット制御部23Bは、いずれの燃料電池100にも凍結可能性は無くなっていないと判断し、ステップS132Bにおいて、FC暖機指示のフラフがOFFの他の燃料電池100にTa≦Tsの燃料電池100が有るか否か判断する。
【0052】
他の燃料電池100のいずれもがTa>Tsの場合には(ステップS132B:NO)、ユニット制御部23Bは、ステップS130Bの処理に戻る。これに対して、Ta≦Tsの他の燃料電池100が存在する場合には(ステップS132B:YES)、ユニット制御部23Bは、その燃料電池100には凍結可能性が有ると判断し、ステップS134Bで該当する燃料電池100のFC暖機指示のフラグをONとし、ステップS130Bの処理に戻る。
【0053】
各燃料電池100のいずれもがTa>Teの場合には(ステップS130B;YES)、ユニット制御部23Bは、各燃料電池100の凍結可能性は無くなったと判断し、ステップS140Bで各FC暖機指示のフラグをOFFとし、この制御処理を終了する。FC暖機指示のフラグがOFFとなった場合、各燃料電池ユニット22の燃料電池制御部500は、第1実施形態で説明したように、燃料電池冷却系400を停止して燃料電池100の暖機を終了する。
【0054】
ユニット制御部23Bは、上記制御処理を繰り返し実行する。この制御処理の繰り返しの実行は、前の制御処理の終了後、直ちに行なわれてもよく、一定時間経過後に行なわれても良い。
【0055】
第2実施形態の燃料電池システム10Bでは、各燃料電池100の近くに温度センサ110を設けて、雰囲気温度Taが暖機開始閾値温度Ts以下である燃料電池100についてのみ暖機を行なう構成としている。これにより、暖機が必要な燃料電池の判断をより精度良く行なうことができ、より精度よく燃料電池の凍結を抑制することが可能である。
【0056】
なお、上記第2実施形態では、Ta≦Tsに該当する燃料電池100のみを暖機するものとして説明したが、Ta≦Tsに該当する燃料電池100が有った場合、一般的にその周辺の燃料電池100も凍結の可能性が高くなると考えられるので、それらの燃料電池100の暖機も行なわせるようにしてもよい。また、第1実施形態と同様に全ての燃料電池100の暖機を行なわせるようにしてもよい。また、上記第2実施形態では、各FC暖機指示のフラグをまとめてOFF(図6のステップS140B参照)とする例を説明したが、Ta>Teとなった燃料電池100(図6のステップS130B)ごとに個別にFC暖機指示のフラグをOFFとするようにしてもよい。
【0057】
C.第3実施形態:
図7は、第3実施形態としての燃料電池システム10Cの概略構成を示す説明図である。燃料電池システム10Cは、ユニット制御部23(図1参照)に代えてユニット制御部23Cを備え、設備供給管路612を流れる一次側冷媒の温度を計測し、計測値をユニット制御部23Cに供給する温度センサ611を備えている。また、燃料電池システム10Cは、各燃料電池ユニット22の燃料電池制御部500(図1参照)に代えて、後述するように、ユニット制御部23Cから供給される温度センサ611の計測値を利用して、燃料電池冷却系400を制御する燃料電池制御部500Cを備えている。燃料電池システム10Cは、これらの相違点を除いて、第1実施形態の燃料電池システム10(図1参照)と同様の構成を有している。燃料電池システム10Cでは、第1実施形態で説明した燃料電池システムの運転停止状態におけるユニット制御部23の制御処理(図2参照)、および、各燃料電池制御部500の制御処理(図3参照)に加えて、各燃料電池制御部500Cにおいて、以下で説明する制御処理が実行される点に特徴を有している。
【0058】
図8は、燃料電池システムの運転中に作動を開始した燃料電池ユニット22の燃料電池制御部500Cの制御フローチャートである。燃料電池制御部500Cは、ユニット制御部23Cからの運転指示に従って、この制御処理を繰り返し実行して、燃料電池冷却系400における二次側冷媒の流れを制御する。なお、複数の燃料電池ユニット22のうち、作動を開始する燃料電池ユニットの数や特定は、発電電力等のスケジュールに従って、ユニット制御部23Cによって任意に設定される。
【0059】
ステップS310で、燃料電池制御部500Cは、燃料電池100の温度Tfとして利用可能な温度として、燃料電池100の冷媒出口104に設けられた温度センサ490から二次側冷媒の温度Tc2を取得し、二次側冷媒の温度Tc2と目標温度Ttとの大小関係を判断する。
【0060】
目標温度Ttは、燃料電池100における発電を適切に行なうことが可能な温度、例えば、40℃~60℃程度の温度に設定される。なお、二次側冷媒の温度Tc2としては、冷媒供給管路420の熱交換器410側の端部に設けられた温度センサ480の計測値を取得するようにしてもよい。温度センサ490で計測される二次側冷媒の温度は、燃料電池100を流通した後の二次側冷媒の温度であり、温度センサ490で計測される二次側冷媒の温度は、燃料電池100を流通する前の二次側冷媒の温度であるので、いずれも、燃料電池100の発熱状態に応じて一定の相関を有する温度である。従って、いずれの温度も、燃料電池100の温度を示す温度として利用することが可能である。但し、燃料電池100を流通した後の二次側冷媒の温度の方が、実際の燃料電池100の温度に近い温度となるので、燃料電池100を流通した後の二次側冷媒の温度を用いる方が好ましい。本例では、二次側冷媒の温度Tc2として、温度センサ490で計測される燃料電池100を流通した後の二次側冷媒の温度を用いるものとする。
【0061】
Tc2≧Ttの場合には(ステップS310:NO)、燃料電池制御部500Cは、燃料電池100を暖機する必要は無いと判断し、ステップS340で、二次側冷媒が流れる冷媒流路を、二次側冷媒の温度Tc2に応じて制御する。具体的には、二次側冷媒の温度Tc2が目標温度Tt以上で、かつ、発電に適した適正温度の状態を維持するように、分流バルブ460の開度を調整して、熱交換器410側に流れる流量と、バイパス管路440側に流れる流量を調整し、二次側冷媒を燃料電池100に循環供給する。
【0062】
Tc2<Ttの場合には(ステップS310:YES)、燃料電池制御部500Cは、燃料電池100を暖機する必要が有ると判断し、ステップS320で、さらに、二次側冷媒の温度Tc2と一次冷媒の温度Tc1との大小関係を判断する。なお、一次側冷媒の温度Tc1は、ユニット制御部23Cから取得される。
【0063】
Tc2≧Tc1の場合には(ステップS320:NO)、燃料電池制御部500Cは、ステップS340で、二次側冷媒が流れる冷媒流路を二次側冷媒の温度Tc2に応じて制御する。但し、Tc2≧Ttの場合(ステップS310:NO)の場合とは異なり、Tc2<Tt(ステップS310:YES)であるので、二次側冷媒を温めて燃料電池100の暖機を継続する必要がある。そこで、Tc1≦Tc2<Ttの範囲では、二次側冷媒が熱交換器410側ではなくバイパス管路440側を流れるように、分流バルブ460の流れの方向をバイパス管路440側に切り替えて、二次側冷媒を燃料電池100に循環供給する。
【0064】
Tc2<Tc1の場合には(ステップS320:YES)、燃料電池制御部500Cは、二次側冷媒が熱交換器410側を流れるように、分流バルブ460の流れの方向を熱交換器410側に切り替えて、二次側冷媒を燃料電池100に循環供給する。この場合、一次側冷媒からの熱を受け取って二次側冷媒が温められることによって燃料電池100の暖機が行なわれ、また、燃料電池100の自己発熱により、二次側冷媒が温められることによっても、燃料電池100の暖機が行なわれる。
【0065】
第3実施形態の燃料電池システム10Cでは、燃料電池システムの運転中に作動を開始した燃料電池ユニット22においても、燃料電池100の自己発熱による燃料電池100の暖機に加えて、一次側冷媒からの熱を受け取って二次側冷媒を温めることによっても燃料電池100の暖機を行なうことができる。これにより、燃料電池システム10Cの運転を開始した際に、燃料電池ユニット22において実行される暖機運転の時間をさらに短縮することができ、より速やかに適正な作動状態での発電を開始することが可能である。
【0066】
第3実施形態の燃料電池システム10Cは、第1実施形態の燃料電池システム10(図1参照)の構成を基本として、燃料電池システムの運転状態における燃料電池冷却系400の制御処理(図8)を適用した構成を例に説明したが、これに限定されるものではない。第2実施形態の燃料電池システム10B(図5参照)の構成を基本として、燃料電池システムの運転状態における燃料電池冷却系400の制御処理(図8)を適用することも可能である。
【0067】
D.他の実施形態:
(D1)第1実施形態および第2実施形態の燃料電池冷却系400はバイパス管路440および分流バルブ460を備える構成として説明したが、バイパス管路440および分流バルブ460を備えない構成であってもよい。この場合にも、同様の効果を得ることができる。
【0068】
(D2)第1実施形態ではユニット制御部23の制御に従って、各燃料電池ユニット22の燃料電池制御部500の制御が実行される場合を例に説明したが、ユニット制御部23において実行される各燃料電池ユニット22の制御を、各燃料電池制御部500において実行されるようにしてもよい。同様に、第2実施形態においても、ユニット制御部23Bにおいて実行される各燃料電池ユニット22についての個別の制御を、各燃料電池制御部500において実行されるようにしてもよい。
【0069】
(D3)各実施形態では、1つの発電設備20を備える構成を例に説明したが、2以上の複数の発電設備を備える構成としてもよい。この場合において、各発電設備では、それぞれ、各実施形態で説明した制御が実行されればよい。
【0070】
(D4)上記第1実施形態では、燃料電池100が凍結する可能性の有無を判断する温度として、複数の燃料電池ユニット22のいずれかに設置された温度センサ24によって計測される雰囲気温度を利用した。また、第2実施形態では、燃料電池100が凍結する可能性の有無を判断する温度として、各燃料電池ユニット22のそれぞれについて、燃料電池100の近くに設置された温度センサ110によって計測される雰囲気温度を利用した。燃料電池100が凍結する可能性の有無を判断する温度としては、これらに限定されるものではなく、燃料電池100が凍結する可能性の有無を判断できる温度であればよい。例えば、燃料電池100を流通する二次側冷媒の温度、特に、燃料電池100の冷媒出口104付近の二次側冷媒の温度を利用するようにしてもよい。すなわち、燃料電池100の温度と一定の相関を有する温度を利用するようにしてもよい。また、発電設備20内のいずれかの雰囲気温度を利用するようにしてもよい。但し、燃料電池100の温度により近い温度、実施形態のように、燃料電池100により近い位置の雰囲気温度や、燃料電池100の冷媒出口付近における二次側冷媒の温度等を利用することが好ましい。
【0071】
(D5)第3実施形態では、一次側冷媒の温度を計測する温度センサ611を、発電設備20内に一次側冷媒を供給するための設備供給管路612に設けた構成を例に説明したが、これに限定されるものではなく、主供給管路610の冷却装置30付近に設けるようにしてもよい。複数の発電設備20を備える構成の場合に、1つの温度センサ611で一次側冷媒の温度を計測することが可能である。
【0072】
(D6)ユニット制御部23において実行させる制御処理の一部または全部をハードウェア回路で構成してもよい。同様に燃料電池制御部500において実行させる制御処理の一部または全部をハードウェア回路で構成してもよい。
【0073】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
10,10B,10C…燃料電池システム、20…発電設備、21…コンテナ、22…燃料電池ユニット、23,23B,23C…ユニット制御部、24…温度センサ、30…冷却装置、40…冷却系、100…燃料電池、102…冷媒入口、104…冷媒出口、110…温度センサ、200…燃料ガス供給系、300…酸化剤ガス供給系、400…燃料電池冷却系、410…熱交換器、412…二次側入口、414…二次側出口、416…一次側入口、418…一次側出口、420…冷媒供給管路、430…冷媒還流管路、440…バイパス管路、450…冷媒ポンプ、460…分流バルブ、470…イオン交換機、480…温度センサ、490…温度センサ、500,500C…燃料電池制御部、610…主供給管路、611…温度センサ、612…設備供給管路、613…仕切バルブ、614…一次側冷媒供給管路、620…主還流管路、622…設備還流管路、623…仕切バルブ、624…一次側冷媒還流管路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8