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特許7388350ナノセルロース含有成形物及びその製造方法
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  • 特許-ナノセルロース含有成形物及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ナノセルロース含有成形物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20231121BHJP
   C08J 7/048 20200101ALI20231121BHJP
   C09D 179/02 20060101ALI20231121BHJP
   C09D 101/04 20060101ALI20231121BHJP
   D21H 11/18 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B32B27/10
C08J7/048 CEZ
C09D179/02
C09D101/04
D21H11/18
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020517068
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2019017939
(87)【国際公開番号】W WO2019212044
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2018088839
(32)【優先日】2018-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 友貴
(72)【発明者】
【氏名】長▲浜▼ 英昭
(72)【発明者】
【氏名】山田 俊樹
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-190744(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199252(WO,A1)
【文献】特開2012-046843(JP,A)
【文献】国際公開第2018/033584(WO,A1)
【文献】特表2017-512164(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179729(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08J7/04-7/06
C09D1/00-10/00
101/00-201/10
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価カチオン樹脂及びナノセルロースを含有する混合物から成る成形物であって、
前記混合物が、多価カチオン樹脂から成る層上に前記ナノセルロースを含有する層を形成することにより、多価カチオン樹脂及びナノセルロースが混合されて成り、
前記ナノセルロースを固形分として1m当たり1.0g含有する場合に、多価カチオン樹脂が1m当たり0.061.20g含有されていることを特徴とする成形物。
【請求項2】
前記ナノセルロースを固形分として1m当たり1.0g含有する場合の23℃0%RHにおける酸素透過度が0.32(cc/m・day・atm)未満である請求項1記載の成形物。
【請求項3】
前記ナノセルロースが、TEMPO触媒により酸化処理されたナノセルロース、セルロースナノクリスタルの少なくとも1種である請求項1又は2に記載の成形物。
【請求項4】
前記TEMPO触媒により酸化処理されたナノセルロースが、クラフトパルプ又は微細化セルロースにTEMPO触媒を用いて酸化処理を行った後解繊処理することにより得られたものである請求項3記載の成形物。
【請求項5】
前記セルロースナノクリスタルが、スルホ基及び/又は硫酸基を0.01~2.0mmol/gの量で含有する請求項3記載の成形物。
【請求項6】
前記多価カチオン樹脂が、水溶性アミン含有ポリマーである請求項1~5の何れかに記載の成形物。
【請求項7】
前記多価カチオン樹脂が、ポリエチレンイミンである請求項1~6の何れかに記載の成形物。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の成形物から成るバリア層が、基材上に形成されて成ることを特徴とする積層体。
【請求項9】
前記基材が、水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂から成る請求項8記載の積層体。
【請求項10】
前記バリア層と水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂から成る層の界面剥離強度が2.3(N/15mm)以上である請求項9記載の積層体。
【請求項11】
前記水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂が、ポリエステル樹脂、再生セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸である請求項9又は10記載の積層体。
【請求項12】
水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂から成る層の上に、多価カチオン樹脂含有溶液を塗工・乾燥し、多価カチオン樹脂から成る層を形成する工程、該多価カチオン樹脂から成る層上に、ナノセルロース含有分散液を塗工・乾燥し、前記ナノセルロースを固形分として1m当たり1.0g含有する場合に、多価カチオン樹脂が1m当たり0.061.20g含有されているバリア層を形成する工程を備えて成る積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノセルロース含有成形物及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、ナノセルロースが有する優れたガスバリア性を維持しながら、基材との界面剥離強度が向上されたナノセルロース含有成形物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノセルロースは、高度バイオマス原料として、機能性添加剤、フィルム複合材料等として種々の用途に使用することが提案されている。特に、セルロースナノファイバーから成る膜やセルロースナノファイバーを含有する積層体等の材料は、セルロース繊維間の水素結合や架橋的な強い相互作用から、ガスの溶解、拡散を抑制できるため酸素バリア性等のガスバリア性に優れていることが知られており、セルロースナノファイバーを利用したバリア材料が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、平均繊維径が200nm以下、アスペクト比が10~10000の範囲にあるセルロース繊維を含有し、このセルロース繊維を構成するカルボキシル基含有量が0.4~2mmol/gであるガスバリア用材料が提案されており、このガスバリア用材料は、高い光透過率を有することが記載されている。
また下記特許文献2には、結晶化度が70%以上、銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法による重合度が160以下、且つ繊維径が50nm以下であるセルロースナノファイバーを分散媒に分散して成る分散液を基材に塗布して成るバリア材料が提案されており、この分散液は紙に塗布することにより酸素バリア性と共に光沢性も付与できることが記載されている。
【0004】
上記特許文献に記載されたセルロースナノファイバーは、繊維径の小さいセルロースナノファイバーが狭い分布範囲で存在しており、このセルロースナノファイバーを使用して成るバリア材は、透明性や光沢性を有するものではあるが、ポリエステル等の疎水性樹脂から成る基材との密着性が低いことから、層間剥離の発生によりバリア性が低下するという問題がある。
セルロースナノファイバーから成る層とポリエステル樹脂等の基材との密着性を改良するために、セルロースナノファーバー層と基材の間に、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基または水酸基を有する樹脂を少なくとも1種類以上含み、且つ融点が60℃以上150℃以下であるエマルジョン系樹脂で形成されて成るアンカー層が形成された積層体が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-57552号公報
【文献】特開2013-256546号公報
【文献】特開2014-79938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献3に記載された積層体は、基材とセルロースナノファイバー層との界面強度が向上されているとしても、この積層体を用いて容器形状に成形する等の大きな負荷をかけた場合には、層間剥離を生じてしまい、実用に耐え得るほどの界面密着強度を有していない。
またセルロースナノファイバーの塗工液を均一に塗工することが困難であり、塗工ムラが生じることに起因して所期のガスバリア性が得られない、という問題がある。
従って本発明の目的は、優れたガスバリア性を有すると共に、基材上に形成した場合に該基材との界面剥離強度が高い、ナノセルロース含有層を有する成形物及びその製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、優れたガスバリア性及び層間密着性を有するナノセルロース含有層を有する積層体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、 多価カチオン樹脂及びナノセルロースを含有する混合物から成る成形物であって、 前記混合物が、多価カチオン樹脂から成る層上に前記ナノセルロースを含有する層を形成することにより、多価カチオン樹脂及びナノセルロースが混合されて成り、前記ナノセルロースを固形分として1m当たり1.0g含有する場合に、多価カチオン樹脂が1m当たり0.061.20g含有されていることを特徴とする成形物が提供される。
【0008】
本発明の成形物においては、
1.前記ナノセルロースを固形分として1m当たり1.0g含有する場合の23℃0%RHにおける酸素透過度が0.32(cc/m・day・atm)未満であること、
.前記ナノセルロースが、TEMPO触媒により酸化処理されたセルロースナノファイバー又はセルロースナノクリスタルの少なくとも1種であること、
.前記TEMPO触媒により酸化処理されたナノセルロースが、クラフトパルプ又は微細化セルロースにTEMPO触媒を用いて酸化処理を行った後解繊処理することにより得られたものであること、
.前記セルロースナノクリスタルが、スルホ基及び/又は硫酸基を0.01~2mmol/gの量で含有すること、
.前記多価カチオン樹脂が、水溶性アミン含有ポリマーであること、
.前記多価カチオン樹脂が、ポリエチレンイミンであること、
が好適である。
【0009】
また本発明によれば、上記成形物から成るバリア層が、基材上に形成されて成ることを特徴とする積層体が提供される。
本発明の積層体においては、
1.前記基材が、水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂から成ること、
2.前記バリア層と水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂から成る層の界面剥離強度が2.3(N/15mm)以上であること、
3.前記水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂が、ポリエステル樹脂、再生セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸であること、
が好適である。
【0010】
本発明によれば更に、水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂から成る層の上に、多価カチオン樹脂含有溶液を塗工・乾燥し、多価カチオン樹脂から成る層を形成する工程、該多価カチオン樹脂から成る層上に、ナノセルロース含有分散液を塗工・乾燥し、前記ナノセルロースを固形分として1m当たり1.0g含有する場合に、多価カチオン樹脂が1m当たり0.061.20g含有するバリア層を形成する工程を備えて成る積層体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のナノセルロース含有層を有する成形物は、ナノセルロース間の緻密な自己組織化構造を維持しながら、ナノセルロース間に多価カチオン樹脂が自然拡散して介在した状態になっている。すなわち、セルロースナノファイバーは、セルロース繊維同士の荷電反発により自己組織化構造を形成し、この自己組織化構造が透過ガスの透過経路の障壁になることから、優れたガスバリア性を発現できるものであるが、本発明の成形物においては、この自己組織化構造が多価カチオンによって更に強化されていることから、ナノセルロースだけで発現されるガスバリア性よりも優れたガスバリア性を有している。具体的には、ナノセルロースを固形分として1m当たり1.0g含有する場合の23℃0%RHにおける酸素透過度が0.32(cc/m・day・atm)未満と、優れた酸素バリア性を有している。
また成形物中に多価カチオン樹脂が存在することによって、ポリエステル樹脂のような疎水性の樹脂から成る基材上に、多価カチオン樹脂及びナノセルロース含有層(以下、単に「バリア層」ということがある)を形成して積層体とした場合にも、基材とバリア層との界面における密着強度が向上し、界面破壊強度が2.3(N/15mm)以上となり、界面破壊に起因する層間剥離が生じることが有効に防止されている。
【0012】
すなわち、後述する実施例の結果から明らかなように、ナノセルロース含有分散液を直接基材に形成した積層体では、満足する酸素バリア性が得られている一方、基材とバリア層の界面剥離強度が低く、層間剥離のおそれがある(比較例1)。またナノセルロース含有分散液を、アンカー層を介して塗工した積層体では、酸素バリア性及び界面剥離強度の何れも満足する結果が得られない(比較例2)。更に、ナノセルロース含有分散液と、多価カチオン樹脂含有溶液を混合して、基材に塗工して成る積層体では、界面剥離強度は満足する値が得られているとしても、酸素バリア性が大きく低下している(比較例3)。
これに対して、本発明の製造方法により基材上に多価カチオン樹脂含有溶液を塗工・乾燥して形成された多価カチオン樹脂から成る層の上にナノセルロース含有分散液を塗工・乾燥することにより、バリア層を形成した積層体においては、比較例1よりも優れた酸素バリア性を有すると共に、基材とバリア層との界面剥離強度も4.5N/15mmと比較例3に比しても大きく、層間剥離が有効に防止されていることが明らかである(実施例1~6)。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の成形物の一例のTOF-SIMSよる成分分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(成形物)
本発明の成形物は、多価カチオン樹脂及びナノセルロースの混合物から成る成形物であり、ナノセルロースを固形分として1m当たり1.0g含有する場合の23℃0%RHにおける酸素透過度が0.32(cc/m・day・atm)未満と、優れた酸素バリア性を発現可能であると共に、基材上に成形物を成形した場合に、基材層と成形物との密着性を顕著に向上可能な成形物である。
本発明の成形物は、前述したとおり、多価カチオン樹脂含有溶液とナノセルロース含有分散液を予め混合した混合液から成形することはできず、多価カチオン樹脂から成る層上にナノセルロースを含有する層を形成することによって、上記ガスバリア性及び基材への密着性を発現可能な混合状態を有する成形物として成形できる。すなわち、本発明の成形物における混合状態を定性的或いは定量的に表現することは困難であるが、前述したナノセルロースが有する自己組織化構造が維持された状態で多価カチオン樹脂及びナノセルロースが混合されることによって初めて形成されるものである。
【0015】
このことは、本発明の成形物について、TOF-SIMSによる成分分析した結果を示す図1からも明らかである。すなわち、ポリエステル基材上に、多価カチオン樹脂含有溶液から成る層を形成し、この層上にナノセルロース含有分散液から成る層を形成した場合でも、バリア層の最表面側からポリエステル基材側に至るまで、多価カチオン樹脂(ポリエチレンイミン)に由来するフラグメントイオンを表すC(m/z56)が存在し、しかもバリア層の最表面からポリエステル基材側に向かって多価カチオン樹脂(ポリエチレンイミン)に由来する窒素のフラグメントイオンのピーク強度がほぼ一定割合で出現し、ポリエステル基材(PET)に由来するフラグメントイオンを表すC(m/z104)のピーク強度が出現するポリエステル基材との界面付近においては多価カチオン樹脂(ポリエチレンイミン)に由来する窒素のフラグメントイオンの強度がやや高くなる特徴を示す。それぞれ別々に形成されたナノセルロース分散液から形成された層及び多価カチオン樹脂溶液から形成された層が、撹拌等の混合操作を経なくとも、一体となって混合層を形成していることが理解される。
【0016】
本発明の成形物においては、ナノセルロースを固形分として1m当たり1.0g含有する場合に、多価カチオン樹脂が1m当たり0.01~2.0gの量で含有されていることが好適である。上記範囲よりも多価カチオン樹脂の量が少ない場合には、上記範囲にある場合に比して、本発明の成形物をポリエステル樹脂等から成る疎水性の基材に対する界面剥離強度の向上を図ることができず、その一方上記範囲よりも多価カチオン樹脂の量が多い場合には、上記範囲にある場合に比して、成形物のガスバリア性の向上を図ることができないおそれがある。
【0017】
(ナノセルロース)
本発明に用いるナノセルロースとしては、
(1)セルロース原料を、TEMPO触媒を用いて酸化処理を行った後、機械解繊処理を行うことにより製造された粒径が小さく且つ粒径分布が狭いセルロースナノファイバー、
(2)セルロース原料を酸化処理に賦する前に微細化処理して微細化セルロースを作製し、この微細化セルロースにTEMPO触媒を用いた酸化処理を行った後、解繊処理を行うことによって製造された平均粒径が大きく且つ粒径分布の広いセルロースナノファイバー、
(3)上記(1)のセルロースナノファイバーにセルロースナノクリスタルを添加して分散処理を行った、平均粒径が大きく且つ粒径分布の広い、セルロースナノファイバー、
(4)スルホ基及び/又は硫酸基を0.01~2.0mmol/gの量で含有するセルロースナノクリスタル、
の4種のナノセルロースを用いることができる。
尚、セルロースナノファイバーはカルボキシル基量が0.1~2.0mmol/gの範囲にあることが好ましい。カルボキシル基量が上記範囲にあることにより、セルロース分子の結晶構造を保持し、結晶化度の高いセルロースナノファイバーが有効な量で存在し、優れたガスバリア性を発現することが可能になる。
【0018】
[原料セルロース]
本発明において、セルロースナノファイバーの原料となるセルロース系原料としては、従来よりセルロースナノファイバーの原料として使用されていたセルロース系原料を使用することができ、これに限定されないが、クラフトパルプ、木材パルプ、非木材パルプ、コットン、バクテリアセルロース等の他、製紙等の栽ち落ちであってもよい。好適には、クラフトパルプを使用することが望ましい。また木材パルプは漂白されたもの又は無漂白のものの何れであってもよい。
【0019】
[微細化処理]
上記(2)のセルロースナノファイバーにおいては、セルロースの酸化処理に先立って微細化処理することにより、セルロースナノファイバーの形状や大きさの範囲を大きくすることが可能になる。この結果、得られるセルロースナノファイバーは、セルロース原料が単離されただけの状態のものも含んでおり、セルロース繊維の粒径分布を大きくすることができる。また微細化セルロースは、表面積が大きいことから、次いで行う酸化処理において微細化セルロースの分解を促進し、酸化処理後の反応液を低粘度化することが可能である。これにより、酸化処理後に行う機械的な解繊処理における剪断力を低下させることが可能になって、セルロース繊維の平均粒径を大きくすることができると考えられる。
微細化処理は、従来公知の方法によって行うことができ、具体的には、超高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、グラインダー、高速ブレンダ―、ビーズミル、ボールミル、ジェットミル、離解機、叩解機、二軸押出機等を使用して微細化することができる。
微細化処理は、乾式又は湿式の何れで行うこともできるが、次いで行う酸化処理は、微細化セルロースのスラリー状態で行うことが好ましいことから、水等を分散媒として超高圧ホモジナイザー等により微細化することが好適である。
【0020】
[酸化処理]
クラフトパルプ等の原料セルロース又は上記微細化されたセルロースは、TEMPO触媒(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル)を介した水系、常温、常圧の条件下で、セルロースグルコースユニットの6位の水酸基をカルボキシル基に酸化する酸化反応を生じさせる。
触媒としては、4-アセトアミドーTEMPO、4-カルボキシーTEMPO、4-フォスフォノキシーTEMPO等のTEMPOの誘導体を用いることもできる。
TEMPO触媒の使用量は、微細化セルロース(乾燥基準)1gに対して0.01~100mmol、好ましくは0.01~5mmolの量である。
また酸化処理時には、TEMPO触媒と共に、酸化剤、臭化物又はヨウ化物等の共酸化剤を併用することが好適である。
酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物等公知の酸化剤を例示することができ、特に次亜塩素酸ナトリウムや次亜臭素酸ナトリウムを好適に使用できる。酸化剤は、微細化セルロース(乾燥基準)1gに対して0.5~500mmol、好ましくは5~50mmolの量である。
また共酸化剤としては、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属、ヨウ化ナトリウム等のヨウ化物アルカリ金属を好適に使用できる。共酸化剤は、微細化セルロース(乾燥基準)1gに対して0.1~100mmol、好ましくは0.5~5mmolの量である。
また反応液は、水を反応媒体とすることが好ましい。
【0021】
酸化処理の反応温度(スラリー温度)は1~50℃、特に10~50℃の範囲であり、室温であってもよい。また反応時間は1~240分、特に60~240分であることが好ましい。
反応の進行に伴い、セルロース中にカルボキシル基が生成するため、スラリーのpHの低下が認められるが、酸化反応を効率よく進行させるため、水酸化ナトリウム等のpH調整剤を用いてpH9~12の範囲に維持することが望ましい。
酸化処理後に、使用した触媒等を水洗などにより除去する。
【0022】
[解繊処理]
酸化処理された微細化セルロースを解繊処理する。
解繊処理は、前述した微細化処理と同様の方法によって行うことができるが、本発明において、セルロースナノファイバーは、分散液の状態で使用することが好適であることから、水中に分散させて解繊処理を行うことが望ましい。このため、前述した機械的微細化処理装置の中でも、超高圧ホモジナイザー、ミキサー、グラインダー等を好適に使用することができる。
【0023】
[セルロースナノクリスタル]
原料セルロースに濃硫酸や濃塩酸による酸加水分解処理を施すことによってロッド状のセルロース結晶繊維であるセルロースナノクリスタルを得る。このセルロースナノクリスタルは、平均繊維径が2~50nmで平均繊維長が100nm~500nm、好ましくは平均繊維径が2~15nmで平均繊維長が100~200nmである。また、比表面積は90~900m/g程度で、200~300m/g程度が好ましい。また結晶化度は70%以上であり、好ましくは80%以上である。
本発明においては、上記(4)のナノセルロースとして、このセルロースナノクリスタルをそのまま使用することができる。この際、セルロースナノクリスタルは、スルホ基及び/又は硫酸基を0.01~2.0mmol/gの量で含有していることが、優れたガスバリア性を発現する上で望ましい。尚、本明細書において、硫酸基は硫酸エステル基をも含む概念である。
【0024】
また上記(3)のナノセルロースとして、上記(1)のセルロースナノファイバーにセルロースナノクリスタルを添加する場合、上記(1)のセルロースナノファイバーに対し、上記セルロースナノクリスタルを、99.99:0.01~50:50、好ましくは99.99:0.01~90:10、更に好ましくは99.99:0.01~95:5の範囲の重量比となるように添加し、分散処理することにより調製できる。
【0025】
[分散処理]
前述したセルロースナノファイバー又はセルロースナノクリスタルは、分散液の状態で使用することが好適であることから分散処理が用いられる。分散処理は超高圧ホモジナイザー、超音波分散機、ホモジナイザー、ミキサー等の分散機を好適に使用することができ、また、攪拌棒、攪拌石等による攪拌方法を用いても良い。
【0026】
上記酸化処理された微細化セルロースの解繊処理やセルロースナノファイバーへのセルロースナノクリスタルの添加を経て得られたナノセルロースを含有する分散液は、固形分1質量%の水分散で、粘度が5~100000mPa・s(レオメーター、温度30℃)の範囲にあることから、取扱い性、塗工性に優れており、容易に後述するガスバリア材を製造することができる。
また上記(2)のセルロースナノファイバーは種々の形状及び大きさのセルロースファイバーを含有することから、光散乱するセルロースファイバーも存在するため、固形分1質量%の水分散は、ヘイズが1.0~60の範囲にあり、従来の平均粒径の小さいセルロースナノファイバーに比してヘイズが高く、半透明~不透明の膜を形成することが可能であり、隠蔽性に優れている。
【0027】
(多価カチオン樹脂)
本発明に使用する多価カチオン樹脂としては、水溶性あるいは水性分散性の多価カチオン性官能基を含有する樹脂である。このような多価カチオン樹脂としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアミンポリアミドエピクロロヒドリン、ポリアミンエピクロロヒドリン等の水溶性アミン含有ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩)、ジシアンジアミドホルマリン、ポリ(メタ)アクリレート、カチオン化澱粉、カチオン化ガム、キトサン等を挙げることができるが、水溶性アミン含有ポリマー、特にポリエチレンイミンを使用することが好適であり、より好適にはアミノ基を有する水溶性アミン含有ポリマーである分岐状のポリエチレンイミンを使用することが望ましい。
【0028】
(成形物・積層体の製造方法)
本発明の成形物は、多価カチオン樹脂含有溶液を塗工・乾燥し、多価カチオン樹脂から成る層を形成する工程、該多価カチオン樹脂から成る層上に、ナノセルロース含有分散液を塗工・乾燥することにより、多価カチオン樹脂及びナノセルロースが特有の混合状態で混合された成形物として製造することができる。
この際、基材上、特に水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂から成る基材上に多価カチオン樹脂含有溶液を塗工することにより、基材上に、ナノセルロース及び多価カチオン樹脂から成る成形物が形成された積層体として製造することができる。また多価カチオン樹脂含有溶液及びナノセルロース含有分散液をこの順序でそれぞれ塗布・乾燥させてキャストフィルムとして形成し、ガスバリア性フィルムとして使用することもできる。
【0029】
[多価カチオン樹脂含有溶液の塗工・乾燥]
多価カチオン樹脂含有溶液は、多価カチオン樹脂を固形分基準で0.01~30質量%、特に0.1~10質量%の量で含有する溶液であることが好ましい。上記範囲よりも多価カチオン樹脂の量が少ない場合には、上記範囲にある場合に比して、ガスバリア性及び界面剥離強度の向上を図ることができず、一方上記範囲よりも多価カチオン樹脂の量が多くてもガスバリア性及び界面剥離強度の更なる向上は得られず経済性に劣ると共に、塗工性や製膜性にも劣るおそれがある。
また多価カチオン樹脂含有溶液に用いる溶媒としては、水、メタノール,エタノール,イソプロパノール等のアルコール、2-ブタノン,アセトン等のケトン、トルエン等の芳香族系溶剤、及びこれらと水との混合溶媒であってもよい。
多価カチオン樹脂含有溶液は、後述するナノセルロース含有分散液から形成される層中のナノセルロース量(固形分)を基準に、多価カチオン樹脂含有溶液の濃度によって塗工量が決定される。すなわち、前述したとおり、ナノセルロース(固形分)が1m当たり1.0g含有する場合に、多価カチオン樹脂が1m当たり0.01~2.0gの量で含有されるように、塗工することが好ましい。
塗布方法としては、これに限定されないが、例えばスプレー塗装、浸漬、或いはバーコーター、ロールコーター、グラビアコーター等により塗布することが可能である。また塗膜の乾燥方法としては、温度5~200℃で0.1秒~24時間の条件で乾燥することが好ましい。また乾燥処理は、オーブン乾燥、赤外線加熱、高周波加熱等により行うことができるが、自然乾燥であってもよい。
【0030】
[ナノセルロース含有分散液の塗工・乾燥]
ナノセルロース含有分散液は、固形分基準で0.01~10質量%、特に0.5~5.0質量%の量で含有されていることが好ましく、上記範囲よりも少ない場合には、上記範囲にある場合に比してガスバリア性が劣るようになり、その一方上記範囲より多いと上記範囲にある場合に比して塗工性や製膜性に劣るようになる。
また分散液は、水だけでもよいが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、2-ブタノン、アセトン等のケトン、トルエン等の芳香族系溶剤と水との混合溶媒であってもよい。
また上記多価カチオン樹脂含有溶液又はナノセルロース含有分散液には、必要に応じて、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、耐水化剤、粘土鉱物、架橋剤、金属塩、コロイダルシリカ、アルミナゾル、酸化チタン、微粒子等、公知の添加剤を配合することができる。
【0031】
ナノセルロース含有分散液は、ナノセルロース(固形分)が1m当たり0.1~3.0gとなるように塗工することが好ましい。
ナノセルロース分散含有液の塗布方法及び乾燥方法は、多価カチオン含有溶液の塗布方法及び乾燥方法と同様に行うことができるが、温度5~200℃で0.1秒~24時間の条件で乾燥することが好ましい。
【0032】
(積層体)
本発明の積層体は、本発明の成形物から成るバリア層を基材上、特に水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂から成る層(基材)上に形成して成るものであり、本発明の成形物は疎水性の樹脂から成る層であっても界面剥離強度を向上できることから、バリア層と水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂から成る層(基材)の界面剥離強度が2.3(N/15mm)以上であり、バリア層と基材との層間剥離の発生が有効に防止されている。
積層体は、前述したとおり、水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂から成る層(基材)上に上述した多価カチオン樹脂含有溶液を塗布・乾燥して多価カチオン樹脂含有層を形成し、次いでこの多価カチオン樹脂含有層上にナノセルロース含有分散液を塗布・乾燥することにより、多価カチオン樹脂及びナノセルロースが混合された成形物から成るバリア層が水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂から成る層(基材)上に形成されることにより製造できる。
基材としては、樹脂、好適には水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂を用い、押出成形、射出成形、ブロー成形、延伸ブロー成形或いはプレス成形等の手段で製造された、フィルム、シート、或いはボトル状、カップ状、トレイ状、パウチ状等の成形体を例示できる。
基材の厚みは、積層体の形状や用途等によって一概に規定できないが、フィルムの場合で5~50μmの範囲にあることが好適である。
【0033】
基材となる樹脂は、低-、中-或いは高-密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-共重合体、アイオノマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のオレフィン系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、メタキシリレンアジパミド等のポリアミド;ポリスチレン、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等のスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル系共重合体;ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・エチルアクリレート共重合体等のアクリル系共重合体;ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、アセチルセルロース、セルロースアセチルプロピーネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂、セロファン等の再生セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等を例示でき、中でも水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂が好適であり、特にポリエステル樹脂、再生セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸を好適に使用できる。
基材となる樹脂、好適には水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂には、所望に応じて顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤等の添加剤の1種或いは2種類以上を配合することができる。
【0034】
本発明の積層体においては、上記基材及び成形物から成る層以外に、必要により他の層を形成することもできる。
ナノセルロース含有層は、高湿度条件下ではガスバリア性が低下することから、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等の従来公知の耐湿性樹脂から成る層を更に形成することが好適である。
【実施例
【0035】
以下に本発明の実施例を説明する。なお、以下の実施例は本発明の一例であり、本発明はこれらの実施例には限定されない。
各項目の測定方法は、次の通りである。
【0036】
<酸素透過度>
酸素透過量測定装置(OX-TRAN2/22、モコン社製)を用いて、23℃、湿度0%RHの条件で多価カチオン樹脂及びナノセルロースを含有する混合物から成る成形物の酸素透過度(cc/m・day・atm)を測定した。表1に結果を示す。
【0037】
<界面剥離強度>
多価カチオン樹脂及びナノセルロースを含有する混合物から成る成形物についてバリア層面側に引張試験のための支持体(PET,50μm,コスモシャインA4300 東洋紡株式会社製)をポリウレタン系接着剤(ポリオール成分:タケラックA315,イソシアネート成分:タケネートA50 三井化学株式会社製)を用い、ドライラミネートで接着した。72時間のエージング後、積層体を幅15mm×長さ10cmの短冊状に切り抜き試験片とした。試験片について引張り速度300mm/minで180°剥離を行い、紙基材とラミネート層との間の密着強度(N/15mm)を測定した。試験環境は25℃・50%RHとした。表1に結果を示す。
【0038】
<TOF-SIMSによる成分分析>
多価カチオン樹脂及びナノセルロースを含有する混合物から成る成形物を1cm角に切り出し、バリア層面側を上部にして試料台に固定した。TOF-SIMS分析装置(アルバック・ファイ製、TRIFT V)においてArガスクラスターイオン(Ar )をエッジングイオンとしながら一次イオン(Bi 2+)を照射した。一次イオンの加速電圧を30KV、測定極性を正イオンにして分析を行った。図1に結果を示す。
【0039】
(実施例1)
<ナノセルロース含有分散液の調製>
パルプの分散流体を機械解繊処理することによって調製した微細化セルロース10g(固形量)に対しTEMPO触媒(Sigma Aldrich社製)0.8mmolと臭化ナトリウム12.1mmolを添加し、イオン交換水を加えて1Lにメスアップし、均一に分散するまで攪拌した。反応系にセルロース1g当たり15mmolの次亜塩素酸ナトリウムを添加し、酸化反応を開始した。反応中は0.5N水酸化ナトリム水溶液でpH10.0から10.5に系内のpHを保持し、30℃で4時間酸化反応を行った。酸化したセルロースはイオン交換水を加えながら高速冷却遠心分離機(16500rpm,10分)を用いて中性になるまで十分洗浄を行った。洗浄したセルロースに水を加えて1質量%に調製し、ミキサー(7011JBB,大阪ケミカル株式会社製)で解繊処理してナノセルロース含有分散液を得た。
【0040】
<多価カチオン樹脂及びナノセルロースを含有する混合物から成る成形物の作製>
以下の手順により多価カチオン樹脂及びナノセルロースを含有する混合物から成る成形物を作製した。
紙基材(坪量:250g/m)にPET樹脂を30μmの厚みで押出ラミネートしたPETラミネート紙のPET表面にコロナ処理を施し、バーコーターを用いてPET面にポリエチレンイミン(PEI)(エポミン,P-1000,株式会社日本触媒製)を塗工量が固形量として0.6g/mになるように塗工した。熱風乾燥器(MSO-TP,ADVANTEC社製)により50℃で10分乾燥して固形化した後、前記方法で製造された1質量%のナノセルロース含有分散液をバーコーターを用いて塗工し、室温で一晩風乾した。塗工量は固形量として1.0/mであった。
【0041】
(実施例2)
針葉樹クラフトパルプ10g(固形量)に対しTEMPO触媒(Sigma Aldrich社製)0.8mmolと臭化ナトリウム12.1mmolを添加し、イオン交換水を加えて1Lにメスアップし、均一に分散するまで攪拌した。反応系にセルロース1g当たり15mmolの次亜塩素酸ナトリウムを添加し、酸化反応を開始した。反応中は0.5N水酸化ナトリム水溶液でpH10.0から10.5に系内のpHを保持し、30℃で4時間酸化反応を行った。酸化したセルロースはイオン交換水を加えながら高速冷却遠心分離機(16500rpm,10分)を用いて中性になるまで十分洗浄を行った。洗浄したセルロースに水を加えて1質量%に調製し、ミキサー(7011JBB,大阪ケミカル株式会社製)で解繊処理してナノセルロース含有分散液を得た。前記方法で製造された1質量%のナノセルロース含有分散液を用いて塗工した以外は実施例1と同様に行い、多価カチオン樹脂及びナノセルロースを含有する混合物から成る成形物を得た。
【0042】
(実施例3)
セルロースナノクリスタルを1質量%の固形量になるようにイオン交換水を加え、スターラーで2時間攪拌した後、超音波処理にて30分間分散処理を行うことで1質量%のナノセルロース含有分散液を得た。前記ナノセルロース含有分散液を用いて塗工した以外は実施例1と同様に行い、多価カチオン樹脂及びナノセルロースを含有する混合物から成る成形物を得た。
【0043】
(実施例4)
ポリエチレンイミンの塗工量が固形量として0.06g/mになるように塗工を変更した以外は実施例1と同様に行い、多価カチオン樹脂及びナノセルロースを含有する混合物から成る成形物を得た。
【0044】
(実施例5)
ポリエチレンイミンの塗工量が固形量として1.2g/mになるように塗工を変更した以外は実施例1と同様に行い、多価カチオン樹脂及びナノセルロースを含有する混合物から成る成形物を得た。
【0045】
(実施例6)
基材を2軸延伸PETフィルム(ルミラーP60,12μm,東レ株式会社製)に変更した以外は実施例1と同様に行い、多価カチオン樹脂及びナノセルロースを含有する混合物から成る成形物を得た。
【0046】
(比較例1)
多価カチオン樹脂による塗工を行わなかった以外は実施例1と同様に行いナノセルロースを含有する成形物を得た。
【0047】
(比較例2)
コロナ処理が施されたPETラミ紙のPET上に、ポリウレタン水分散体(スーパーフレックス210,第一工業製薬製)とエポキシ系架橋剤(Denacol-614B,ナガセケムテックス株式会社製)を100:5の割合で混合した塗工液について塗工量が固形量として0.6g/mになるように塗工した。熱風乾燥器(MSO-TP,ADVANTEC社製)により50℃で10分乾燥して固形化した後、実施例1の方法で製造された1質量%のナノセルロース含有分散液をバーコーターで塗工し、室温で一晩風乾した。塗工量は固形量として1.0g/mであった。以上の方法からナノセルロースを含有する成形物を得た。
【0048】
(比較例3)
実施例1の方法で製造されたナノセルロース含有分散液に対してポリエチレンイミンが固形量として10:6の重量比になるように混合し、10分間スターラーで攪拌することでポリエチレンイミン及びナノセルロース含有分散液を得た。PETラミネート紙のPET上にコロナ処理を施し、前記のポリエチレンイミン及びナノセルロース含有分散液の塗工量が固形量として1.6g/mになるように塗工し、ポリエチレンイミン及びナノセルロースを含有する成形物を得た。
【0049】
(比較例4)
多価カチオン樹脂による塗工を行わなかった以外は実施例2と同様に行いナノセルロースを含有する成形物を得た。
【0050】
(比較例5)
多価カチオン樹脂による塗工を行わなかった以外は実施例3と同様に行いナノセルロースを含有する成形物を得た。
【0051】
(比較例6)
多価カチオン樹脂による塗工を行わなかった以外は実施例6と同様に行いナノセルロースを含有する成形物を得た。
【0052】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の成形物は、優れたガスバリア性を有すると共に、ポリエステル等の疎水性の熱可塑性樹脂から成る基材とも界面剥離強度が高いことから、水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂から成る基材上に形成され、層間剥離のないガスバリア性積層体として好適に使用される。
図1