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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/343 20060101AFI20231121BHJP
   H01S 5/323 20060101ALI20231121BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20231121BHJP
   H01L 33/12 20100101ALI20231121BHJP
【FI】
H01S5/343 610
H01S5/323 610
H01L33/32
H01L33/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020532245
(86)(22)【出願日】2019-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2019026113
(87)【国際公開番号】W WO2020021979
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2018140843
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田才 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 博
(72)【発明者】
【氏名】川西 秀和
(72)【発明者】
【氏名】簗嶋 克典
【審査官】小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-038941(JP,A)
【文献】特開2013-247222(JP,A)
【文献】特開2011-155241(JP,A)
【文献】特表2013-502731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
H01L 33/00-33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Alx2Inx1Ga(1-x1-x2)N(0<x1<1,0≦x2<1)からなる単層から構成された第1層と、
前記第1層に接して設けられ、前記第1層に対して格子緩和したAly2Iny1Ga(1-y1-y2)N(0<y1<1,0≦y2<1)からなると共に、複数の層から構成された第2層と、
前記第2層の上方に設けられ、前記第2層に対して格子緩和したAlz2Inz1Ga(1-z1-z2)N(0<z1<1,0≦z2<1)からなると共に、活性層を含む複数の層から構成された第3層とを備え、
GaNの面内方向の格子定数aGAN、前記第1層の面内方向の格子定数a1、前記第2層を構成する前記複数の層それぞれの面内方向の格子定数a2および前記第3層を構成する前記活性層を含む前記複数の層それぞれの面内方向の格子定数a3がaGAN<a2<a1,a3の関係を有する
発光デバイス。
【請求項2】
前記第1層の面内方向の格子定数a1と前記第2層の面内方向の格子定数a2とは(a2-a1)/a1<-0.06%の関係を満たし、前記第2層の面内方向の格子定数a2と前記第3層の面内方向の格子定数a3とは(a3-a2)/a2>0.06%の関係を満たし、前記第1層の面内方向の格子定数a1とGaNの面内方向の格子定数aGANとは(a1-aGAN)/aGAN>0.33%の関係を満たす、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記第2層を構成する前記格子定数a2の前記複数の層の総厚が100nm以上である、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記第3層を構成する前記格子定数a3の前記複数の層の総厚が100nm以上である、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項5】
前記第2層は前記複数の層としてクラッド層を有し、前記第3層は前記複数の層として光ガイド層を有する、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項6】
更に、基板を有し、
前記基板上に、前記第1層、前記第2層および前記第3層がこの順に設けられている、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項7】
更に、前記基板と前記第1層との間にバッファ層を有し、
前記バッファ層は、窒化ガリウム(GaN),窒化ガリウムインジウム(GaInN),窒化ガリウムアルミニウム(AlGaN),窒化アルミニウム(AlN)または窒化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInN)からなる、請求項6に記載の発光デバイス。
【請求項8】
前記基板は、窒化ガリウム(GaN)基板により構成されている、請求項6に記載の発光デバイス。
【請求項9】
前記基板は、サファイア基板、シリコン(Si)基板、窒化アルミニウム(AlN)基板または酸化亜鉛(ZnO)基板により構成されている、請求項6に記載の発光デバイス。
【請求項10】
前記第2層と前記第3層との間に歪層をさらに有し、
前記歪層は、前記第2層の面内の格子定数a2よりも小さいまたはaGaNと前記第3層の格子定数a3との間の格子定数を有する、請求項1に記載の発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば窒化ガリウム(GaN)系材料を用いた発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)系材料を用いた発光デバイスの開発が活発に行われている。発光デバイスとしては、例えば、半導体レーザ(Laser Diode;LD)および発光ダイオード(Light Emitting Diode;LED)等が挙げられる。このような発光デバイスでは、例えば、基板よりも面内の格子定数が大きい発光層が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-115105号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、GaN系材料を用いた発光デバイスでは、青色帯域および緑色帯域の光を発するLDやLEDが実用化されているが、緑色帯域に関しては十分な発光が得られておらず、発光効率の改善が求められている。また、赤色帯域においてはGaInP系材料が用いられているが、GaInP系のLEDおよびLDは、高温時における発光効率が低いという課題がある。
【0005】
発光効率を向上させることが可能な発光デバイスを提供することが望ましい。
【0006】
本開示の一実施形態の発光デバイスは、Alx2Inx1Ga(1-x1-x2)N(0<x1<1,0≦x2<1)からなる単層から構成された第1層と、第1層に接して設けられ、第1層に対して格子緩和したAly2Iny1Ga(1-y1-y2)N(0<y1<1,0≦y2<1)からなると共に、複数の層から構成された第2層と、第2層の上方に設けられ、第2層に対して格子緩和したAlz2Inz1Ga(1-z1-z2)N(0<z1<1,0≦z2<1)からなると共に、活性層を含む複数の層から構成された第3層とを備えたものであり、GaNの面内方向の格子定数aGAN、第1層の面内方向の格子定数a1、第2層を構成する複数の層それぞれの面内方向の格子定数a2および第3層を構成する活性層を含む複数の層それぞれの面内方向の格子定数a3がaGAN<a2<a1,a3の関係を有する。
【0007】
本開示の一実施形態の発光デバイスでは、GaNよりも面内方向の格子定数が大きな第1層上に、第1層に対して格子緩和した第2層および第2層に対して格子緩和すると共に、活性層を含む第3層をこの順に積層するようにした。上記GaN、第1層、第2層および第3層は面内方向の格子定数として順にaGaN、a1、a2、a3を有すると共に、aGAN<a2<a1,a3の関係を有する。これにより、GaNに対して格子緩和しながらも単結晶性に優れ、且つ、結晶欠陥が少ない活性層を形成する。
【0008】
本開示の一実施形態の発光デバイスによれば、面内方向の格子定数がGaNの格子定数aGANよりも大きく、且つa2<a1,a3の関係を有する格子定数a1を有する第1層、格子定数a2を有する第2層および活性層を含むと共に、格子定数a3を有する第3層をこの順に積層するようにしたので、単結晶性に優れ、且つ、結晶欠陥が少ない活性層が得られ、活性層の発光効率を向上させることが可能となる。即ち、高い発光効率を有する発光デバイスを提供することが可能となる。
【0009】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態に係る発光デバイスの構成を表す断面模式図である。
図2】AlGaInNからなる層におけるAlおよびInの組成に対するバンドギャップと格子定数との関係を表す図である。
図3A図1に示した発光デバイスの製造工程を説明する断面模式図である。
図3B図3Aに続く工程を表す断面模式図である。
図3C図3Bに続く工程を表す断面模式図である。
図4】本開示の変形例1に係る発光デバイスの構成を表す断面模式図である。
図5】本開示の変形例2に係る発光デバイスの構成を表す断面模式図である。
図6】本開示の変形例3に係る発光デバイスの構成を表す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示における実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は本開示の一具体例であって、本開示は以下の態様に限定されるものではない。また、本開示は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比等についても、それらに限定されるものではない。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.実施の形態(GaNよりも面内方向の格子定数が大きな3層を格子定数の大きさが大小大となるように積層した例)
1-1.発光デバイスの構成
1-2.発光デバイスの製造方法
1-3.作用・効果
2.変形例1(第2層に厚膜のGaN層を用いた例)
3.変形例2(第2層に超格子を用いた例)
4.変形例3(半導体レーザ素子としての構成の一例)
【0012】
<1.実施の形態>
図1は、本開示の一実施の形態に係る発光デバイス(発光デバイス1)の断面構成を模式的に表したものである。この発光デバイス1は、例えば可視領域、特に500nm以上の波長の光を出射する半導体レーザまたは発光ダイオード等である。本実施の形態の発光デバイス1は、基板11上に、面内方向の格子定数a1を有する第1層13、面内方向の格子定数a2を有する第2層14および面内方向の格子定数a3を有する第3層16がこの順に積層されている。各面内方向の格子定数a1,a2,a3は、GaNの面内方向の格子定数aGANよりも大きく、aGAN<a2<a1,a3の関係を有している。
【0013】
(1-1.発光デバイスの構成)
発光デバイス1は、上記のように、基板11上に、第1層13、第2層14および第3層16がこの順に積層されており、第3層16内に発光層(活性層17)を有する。本実施の形態の発光デバイス1は、窒化ガリウム(GaN)系材料を用いて形成されている。更に、基板11と第1層13との間にはバッファ層12が、第2層14と第3層16との間には、歪層15が設けられている。第1層13、第2層14および第3層16は、上記のように、面内方向の格子定数としてそれぞれa1,a2,a3を有し、これらはGaNの面内方向の格子定数aGANよりも大きく、aGAN<a2<a1,a3の関係を有している。
【0014】
基板11は、例えば窒化ガリウム(GaN)基板であり、その厚みは例えば300μm~500μmである。例えば、GaN基板のc面が主面として用いられている。なお、基板11は、窒化ガリウム(GaN)基板の他、例えば、サファイア基板、シリコン(Si)基板、窒化アルミニウム(AlN)基板および酸化亜鉛(ZnO)基板を用いてもよい。
【0015】
バッファ層12は、第1層13を格子緩和させるためのものであり、基板11と第1層13との間に設けられている。バッファ層12は、例えば低温バッファ層であり、例えば、400℃~750℃程度の低温で形成された、非単結晶の層である。非単結晶の例としては、例えば、アモルファスおよび多結晶等が挙げられる。バッファ層12は、例えば、窒化ガリウム(GaN),窒化ガリウムインジウム(GaInN),窒化ガリウムアルミニウム(AlGaN),窒化アルミニウム(AlN)または窒化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInN)により構成されている。バッファ層12の厚みは、例えば10nm~100nmである。
【0016】
第1層13は、バッファ層12に接して設けられている。第1層13は、Alx2Inx1Ga(1-x1-x2)N(0<x1<1,0≦x2<1)からなる。第1層13のインジウム(In)組成x1(%)は、例えば0.5%以上30%以下である。バッファ層12上に設けられた第1層13は、基板11(GaN基板)の面内方向(例えばc面)の格子定数よりも大きい面内方向の格子定数a1を有し、格子緩和されている。第1層13は、基板11に対して完全緩和されていてもよいし、部分緩和されていてもよい。なお、完全緩和とは直下の層に対して歪がない状態を指し、部分緩和とは直下の層に対して歪を有している状態を指す。第1層13の厚みは、例えば100nm~2000nmである。第1層13の厚みを100nm以上、より好ましくは500nm以上にすることにより、100nm未満の厚みを有する場合に比べ、単結晶性に優れ低転位密度の結晶が構成される。
【0017】
図2は、AlGaInNからなる層におけるAlおよびInの組成に対するバンドギャップ(Eg[eV])およびGaNに対する格子不整合度(da/a)の等高線を表したものである。第1層13の具体的な組成としては、例えばGaInNが挙げられるが、Alを含んだAlGaInNとしてもよい。aはGaNの格子定数で、daはAlInGaNとGaNとの格子定数差であり、da/aはAlGaInNとGaNとの格子不整合度を表す。例えばda/a=0の等高線上のAlGaInNはその格子定数がGaNと等しい。つまり、本等高線よりも上の領域であれば、GaNよりも格子定数の大きな4元混晶を得ることができる。また、通常、GaN基板上にGaInNを成長させた場合、面内方向の格子定数aは同一で、GaInNは成長方向に結晶格子が歪んだ状態となるようにエピタキシャルに成長していくが、上記のように、GaInNの基板11側に低温バッファ層(バッファ層12)を設けることにより面内方向の格子定数aがGaNよりも大きな、つまり、緩和したGaInN層を得ることができる。また、緩和したGaInN層を得るには、バッファ層を用いる方法の他に、GaInNの積層厚みをGaNに対する臨界膜厚よりも厚く成長させるという方法も挙げられる。
【0018】
第2層14は、第1層13に接して設けられている。第2層14は、Aly2Iny1Ga(1-y1-y2)N(0<y1<1,0≦y2<1)からなる。第1層13上に設けられた第2層14は、第1層13の面内方向の格子定数よりも小さい面内方向の格子定数a2を有し、格子緩和されている。第2層14は、第1層13対して完全緩和されていてもよいし、部分緩和されていてもよい。第2層14は、複数の層から構成されており、例えば、図1に示したように、第1層13上に、GaInNからなる層(GaInN層)14A、GaNからなる層(GaN層)14B、n-GaInNとGaNとの積層構造からなる層(n-GaInN/GaN層)14Cおよびn-GaInNからなる層(n-GaInN層)14Dがこの順に積層されている。第2層14の厚みは、例えば100nm~2000nmである。第2層14の厚みを100nm以上、より好ましくは500nm以上にすることにより、100nm未満の厚みを有する場合に比べ、平坦性に優れ低転位密度の結晶が構成される。第2層14上には、例えばGaNからなる歪層15が例えば1nm~50nmの厚みで設けられている。
【0019】
第3層16は、歪層15に接して設けられている。第3層16は、Alz2Inz1Ga(1-z1-z2)N(0<z1<1,0≦z2<1)からなる。第2層14上に設けられた第3層16は、第2層14の面内方向の格子定数よりも大きな面内方向の格子定数a3を有し、格子緩和されている。第3層16は、第2層14に対して完全緩和されていてもよいし、部分緩和されていてもよい。第3層16は、複数の層から構成されており、例えば、図1に示したように、例えばGaInNからなる活性層17を間に、n-GaInNからなる層(n-GaInN層)16Aおよびp-GaInNからなる層(p-GaInN層)16Bがこの順に積層されている。第3層16の厚みは、例えば100nm~2000nmである。
【0020】
本実施の形態で発光デバイス1は、上記のように、基板11上に順に積層された第1層13、第2層14および第3層16の面内方向の格子定数a1,a2,a3が、aGAN<a2<a1,a3の関係を満たすようになっている。これにより、第2層14および第3層16の平坦性および単結晶性に優れ、低転位密度な結晶層を形成することができる。
【0021】
第1層13の面内方向の格子定数a1は、(a1-aGaN)/aGaN>0.33%を満たすような大きさとなっていることが好ましい。第2層14の面内方向の格子定数a2の大きさは、第1層13の面内方向の格子定数a1と基板11の格子定数aGaNとの間の値となっており、第2層14の面内方向の格子定数a2は、(a2-a1)/a1<-0.06%を満たすような大きさとなっていることが好ましい。第3層16の面内方向の格子定数a3は、第2層14の格子定数a2よりも大きな値となっており、第3層16の面内方向の格子定数a3は、(a3-a2)/a2>0.06%を満たすような大きさとなっていることが好ましい。第1層13の格子定数a1と第3層16の格子定数a3との大小関係はどちらが大きくてもよいが、格子定数a1と格子定数a3とが近い値をとることで、さらに優れた平坦性および高い単結晶性を有すると共に、低転位密度な結晶を有する第2層14および第3層16が構成される。
【0022】
本実施の形態の発光デバイス1は、上記関係を満たす第1層13、第2層14および第3層16を順に積層した3段構造とすることで、平坦性に優れ、且つ、貫通転位が少ない状態でGaNよりも面内方向の格子定数が大きい単結晶からなる活性層17が得られる。よって、活性層17の発光効率を大きく向上させることが可能となる。
【0023】
なお、第1層13、第2層14および第3層16が面内方向に異方性を有する結晶構造を有する場合には、少なくとも一方向の格子定数が上記関係を満たせばよい。また、第3層16上には更に別の層が設けられていてもよく、例えばさらに格子緩和した層を設けるようにしてもよい。
【0024】
更に、第1層13と第2層14との間には、第2層14と第3層16との間の歪層15のように他の層が設けられていてもよい。第1層13と第2層14との間および第2層14と第3層16との間に設けられる層は、例えば段階的に格子定数が変化していてもよい。
【0025】
(1-2.発光デバイスの製造方法)
本実施の形態の発光デバイス1は、例えば以下のように製造することができる。図3A図3Cは、発光デバイス1の製造方法を工程順に表したものである。
【0026】
まず、図3Aに示したように、基板11上にバッファ層12を形成する。具体的には、GaNからなる基板11上に400℃~750℃の温度で窒化ガリウムインジウム(GaInN)を成長させることによりバッファ層12を形成する。
【0027】
次に、図3Bに示したように、バッファ層12上に第1層13を形成する。第1層13は、例えば、700℃~900℃の温度で、バッファ層12上にAlx2Inx1Ga(1-x1-x2)N(0<x1<1,0≦x2<1)を成長させることにより形成する。低温で形成されたバッファ層12上の第1層13では、面内方向の格子定数a1が窒化ガリウム(GaN)よりも大きくなっている。即ち、第1層13は、格子緩和されて形成されている。
【0028】
続いて、図3Cに示したように、この第1層13上に第2層14を形成する。第2層14は、例えば、700℃~1000℃の温度で、第1層13上にAly2Iny1Ga(1-y1-y2)N(0<y1<1,0≦y2<1)を成長させることにより形成する。具体的には、例えば、第1層13上にGaInN層14Aを例えば500nmの厚みで形成したのち、GaN層14Bを例えば500nmの厚みで形成する。続いて、GaN層14B上にn-GaInN/GaN層14Cを例えば500nmの厚みで形成する。次に、n-GaInN/GaN層14C上にn-GaInN層14Dを例えば500nmの厚みで形成する。第2層14を構成する各層14A,14B,14C,14Dでは、面内方向の格子定数a2が、それぞれ、第1層13の面内方向の格子定数a1よりも小さくなっている。即ち、第2層14は、格子緩和されて形成されている。次に、第2層14を形成したのち、この第2層14上に、歪層15を例えば5nmで形成する。
【0029】
最後に、歪層15上に第3層16を形成する。第3層16は、例えば、700℃~900℃の温度で、歪層15上にAlz2Inz1Ga(1-z1-z2)N(0<z1<1,0≦z2<1)を成長させることにより形成する。具体的には、例えば、歪層15上にn-GaInN層16Aを例えば200nmの厚みで形成したのち、活性層17を例えば3nmの厚みで形成する。続いて、活性層17上にp-GaInN16Bを例えば200nmの厚みで形成する。第3層16を構成する各層16A,16B,17では、面内方向の格子定数a3が、それぞれ、第2層14の面内方向の格子定数a2よりも大きくなっている。即ち、第3層16は、格子緩和されて形成されている。なお、n-GaInN層16Aおよびp-GaInN16Bはアンドープでもよい。
【0030】
第2層14の面内方向の格子定数をa2に、第3層16の面内方向の格子定数をa3に変化させる方法について説明する。これら面内方向の格子定数を変化させる層は、上記の構成例ではGaInN層14Aとn-GaInN層16Aが相当するが、例えば、GaInN層14Aやn-GaInN層16A層を直接下層に対して臨界厚みを超える厚膜に形成することが挙げられる。あるいは、3次元成長を促す成長条件を適用し結晶内に空隙を導入する方法がある。また、上記のように、n-GaInN層16Aにてa2からa3へ面内の格子定数を拡大させる際に、歪層15のように、一度a2よりも格子定数の小さい結晶を導入し、その後に格子定数の大きいn-GaInN層16Aを積層することでa3への格子緩和を生じさせやすくすることが可能となる。更に、別の方法としては、GaInN/GaNやAlGaN/GaNあるいはAlGaN/GaInN等の超格子構造を成長方向に組成変調し格子緩和を促す方法等がある。ここで、歪層15の面内方向の格子定数はその厚みによって、aGaNとa3との間の格子定数を持ち得る。以上により、図1に示した発光デバイス1が完成する。
【0031】
(1-3.作用・効果)
窒化ガリウム(GaN)系材料を用いた発光デバイスは、可視領域の発光素子として開発されており、その用途の1つとしてRGBの発光素子を用いたディスプレイがある。可視領域のうち、青色帯域および緑色帯域は、GaN系材料を用いたLEDやLDで既に実用化されているが、緑色帯域の光を発するLEDおよびLDでは発光効率の改善が求められている。赤色帯域の光を発する発光デバイスではGaInP系材料が用いられているが、GaInP系の材料を用いたLEDおよびLDは、高温時における発光効率が低いという課題がある。
【0032】
一般に、GaN系材料を用いた可視領域の発光素子は、活性層にGaInNが用いられている。GaInNは、Inの組成が大きくなるに従い、発光波長が長くなる。活性層の厚みにもよるが、例えば16%で青色帯域、23%で緑色帯域および33%で赤色帯域となる。一方で、Inの組成が大きくなるにつれて発光再結合確率の減少および非発光再結合確率の増大が生じ、青色帯域よりも長い波長領域において良好な発光特性を有するLEDやLDを提供することは困難である。発光再結合確率の減少の要因は、In組成の揺らぎの増大およびピエゾ分極の増大が挙げられる。非発光再結合確率の増大については、GaN基板やGaNテンプレート基板と、GaInN活性層との間の格子不整合度の増大に起因する結晶欠陥の発生が挙げられる。また、前述したピエゾ分極はGaN基板やGaNテンプレート基板と、GaInN活性層との間の格子不整合度に比例して大きくなるため、GaInN活性層の歪量を低減することが発光効率を向上させる重要な要因となる。
【0033】
GaInN活性層の歪量を低減させる方法の一つとしては、GaInN基板を用いることが考えられるが、結晶性の良好なGaInNバルク基板を得ることは難しい。この他、GaInNに対して格子整合するScAlMgO4、ZnOおよびMgAl24といった異種材料からなる基板を用いることが考えられるが、異種材料基板上において高品質な結晶を得ることは容易ではない。また、GaN基板やGaNテンプレート基板上に格子緩和したGaInNを積層し、さらにその上に活性層を成長させる方法が考えられる。具体的には、例えばGaNテンプレート基板上にGaInN/GaNの超格子を用いた構造や、低温GaInNバッファ層上にGaInN層を積層した構造が挙げられる。しかしながら、上記方法を用いて得られる格子緩和したGaInNはX線回折ピークの単峰性が低く、結晶欠陥が多い。結晶性の悪いGaInNに対して、その上に結晶性に優れた活性層を成長させることは困難である。
【0034】
これに対して、本実施の形態の発光デバイス1では、GaNからなる基板11上に、Alx2Inx1Ga(1-x1-x2)N(0<x1<1,0≦x2<1)からなる第1層13と、第1層13に対して格子緩和したAly2Iny1Ga(1-y1-y2)N(0<y1<1,0≦y2<1)からなる第2層14と、第2層14に対して格子緩和したAlz2Inz1Ga(1-z1-z2)N(0<z1<1,0≦z2<1)からなると共に、活性層17を含む第3層16を順に積層するようにした。第1層13の面内方向の格子定数a1、第2層14の面内方向の格子定数a2および第3層16の面内方向の格子定数a3は、GaNの面内方向の格子定数aGaNよりも大きく、且つ、aGAN<a2<a1,a3の関係を有する。これにより、GaNに対して格子緩和しながらも単結晶性に優れ、且つ、貫通転位が少なく、平坦性が良好な活性層17を形成することが可能となる。
【0035】
上記メカニズムについて説明する。仮に、面内方向の格子定数a1からなる第1層13のみを基板11と活性層との間に設けた場合、第1層13上には、貫通転位が多く、表面の平坦性が悪化した活性層が形成される。一方、本実施の形態のように、第1層13上に、第1層13の面内方向の格子定数a1よりも小さい面内方向の格子定数a2を有する第2層14を形成することにより、横方向成長が得やすいGaN層を厚く成長させることが可能となる。これにより、貫通転位が少なく、平坦性が良好な活性層17を形成することが可能となる。
【0036】
また、仮に、基板11と活性層との間に、面内方向の格子定数a2を有する第2層14と面内方向の格子定数a3を有する第3層16の2段構成の層を設けた場合、第3層16において平坦性の著しい悪化や、貫通電位密度の増大が生じる。一方で、本実施の形態のように、基板11と活性層との間の面内方向の格子定数を3段階で変化させる構造とした場合、面内方向の格子定数をa2からa3(a2<a3)へと変化させる際に平坦性の悪化や貫通電位密度の増大は生じない。これは、大きな面内方向の格子定数a1を有する第1層13が第2層14の下方に設けられているからであり、面内方向の格子定数をa2からa3(a2<a3)へと拡大させる際に、上記のように、n-GaInN層16A層に、例えば結晶内に空隙を導入した場合に大きさがより小さな空隙によって格子定数をa2からa3(a2<a3)に拡大させることが可能となり、平坦性の悪化が改善される。
【0037】
以上のように、本実施の形態の発光デバイス1では、GaNの面内方向の格子定数aGaNよりも大きく、且つ、aGAN<a2<a1,a3の関係を有する、面内方向の格子定数a1の第1層13、面内方向の格子定数a2の第2層14および面内方向の格子定数a3の第3層16をこの順に積層するようにした。これにより、活性層17の貫通転位密度が低く、平坦性が向上した活性層17が得られる。即ち、高い発光効率を有する発光デバイスを提供することが可能となる。
【0038】
特に、緑色帯域および赤色帯域の光を発するGaInNからなる活性層17では、活性層の歪量が低減されるため、活性層17に生じるピエゾ分極が低減され、発光再結合確率が増大する。また、活性層17で発生する欠陥が低減されることで、非発光再結合確率が低減される。よって、GaInNからなる活性層17の発光効率を大きく向上させることが可能となる。
【0039】
次に、本開示の変形例(変形例1~3)について説明する。以下では、上記実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0040】
<2.変形例1>
図4は、本開示の変形例(変形例1)に係る発光デバイス(発光デバイス2)の断面構成を模式的に表したものである。この発光デバイス2は、例えば可視領域、特に500nm以上の波長の光を出射する半導体レーザまたは発光ダイオード等である。発光デバイス2は、上記実施の形態と同様に、GaNの面内方向の格子定数aGANよりも大きく、aGAN<a2<a1,a3の関係を有する格子定数a1の第1層13、格子定数a2の第2層24および格子定数a3の第3層16がこの順に積層されている。本変形例では、第2層24が、例えば5nm以上の厚みを有するGaN層24A、n-GaInN/GaN層14Cおよびn-GaInN層14Dの3層からなる点が上記実施の形態とは異なる。
【0041】
aGAN<a2<a1,a3の関係を満たす格子定数a2を有する第2層24は、最も第1層13側に設けられる層をGaInNから構成する以外に、臨界膜厚を超える厚みを有するGaN層24Aで形成することでも得られる。なお、第2層24を構成するn-GaInN/GaN層14Cおよびn-GaInN層14Dは、上記実施の形態と同様の構成を有する。
【0042】
このように、第2層24の最も第1層13側に設けられる層としてGaInN層14Aに代えて、例えば、臨界膜厚を超える5nm以上の厚みを有するGaN層24Aを設けることで、第1層13に対して格子緩和すると共に、GaNの面内方向の格子定数aGANよりも大きく、且つ、aGAN<a2<a1,a3の関係を有する発光デバイス2を形成することができる。即ち、上記実施の形態と同等の特性を有する発光デバイス2を提供することが可能となる。
【0043】
<3.変形例2>
図5は、本開示の変形例(変形例2)に係る発光デバイス(発光デバイス3)の断面構成を模式的に表したものである。この発光デバイス3は、例えば可視領域、特に500nm以上の波長の光を出射する半導体レーザまたは発光ダイオード等である。発光デバイス3は、上記実施の形態と同様に、GaNの面内方向の格子定数aGANよりも大きく、aGAN<a2<a1,a3の関係を有する格子定数a1の第1層13、格子定数a2の第2層34および格子定数a3の第3層16がこの順に積層されている。本変形例では、第2層34が、AlGaNとGaNとが積層され超格子構造を有するAlGaN/GaN層34Aと、n-GaInN/GaN層14Cおよびn-GaInN層14Dとの3層からなる点が上記実施の形態とは異なる。
【0044】
aGAN<a2<a1,a3の関係を満たす格子定数a2を有する第2層34は、最も第1層13側に設けられる層をGaInNや厚膜形成したGaNから構成する以外に、AlGaNとGaNとが積層された超格子構造を有する層(AlGaN/GaN層)34Aで形成することでも得られる。AlGaN/GaN層34Aは、AlGaN/GaNの積層構造の他に、AlGaNとGaInNあるいはAlGaNとGaNを積層させた構造としても同様の効果が得られる。なお、第2層34を構成するn-GaInN/GaN層14Cおよびn-GaInN層14Dは、上記実施の形態と同様の構成を有する。
【0045】
このように、第2層34の最も第1層13側に設けられる層としてGaInN層14Aに代えて、AlGaN/GaN等の超格子構造を有する層(AlGaN/GaN層)34Aを設けることで、第1層13に対して格子緩和すると共に、GaNの面内方向の格子定数aGANよりも大きく、且つ、aGAN<a2<a1,a3の関係を有する発光デバイス2を形成することができる。即ち、上記実施の形態と同等の特性を有する発光デバイス3を提供することが可能となる。
【0046】
<4.変形例3>
図6は、本開示の変形例(変形例3)に係る発光デバイス(発光デバイス4)の断面構成を模式的に表したものである。この発光デバイス4は、例えば可視領域、特に500nm以上の波長の光を出射する半導体レーザである。本変形例の発光デバイス4は、上記実施の形態と同様に、GaNの面内方向の格子定数aGANよりも大きく、aGAN<a2<a1,a3の関係を有する格子定数a1の第1層43、格子定数a2の第2層44および格子定数a3の第3層46がこの順に積層されており、第2層44中にはクラッド層45があり、第3層46には活性層47および光ガイド層が形成されている。更に、第3層46上には、クラッド層48およびコンタクト層49が積層されている。
【0047】
本変形例の発光デバイス4は、第1層43、クラッド層45を含む第2層44、活性層47を含む光ガイド層を構成する第3層46、クラッド層48、コンタクト層49がこの順に積層されている。
【0048】
基板11は、例えば窒化ガリウム(GaN)基板であり、その厚みは例えば300μm~500μmである。例えば、窒化ガリウム(GaN)基板のc面が主面として用いられている。
【0049】
第1層43は、基板11に接して設けられている。第1層43は、上記実施の形態における第1層13と同様に、基板11(窒化ガリウム(GaN)基板)の面内方向(例えばc面)の格子定数よりも大きい面内方向の格子定数a1を有し、格子緩和されている。第1層43は、例えばGaInNからなるバッファ層(GaInNバッファ層)43Aと、Alx2Inx1Ga(1-x1-x2)N(0<x1<1,0≦x2<1)からなる層(例えば、Ga0.95In0.05N層)43Bとがこの順に積層されている。GaInNバッファ層43Aの厚みは、例えば10nm~100nmである。Ga0.95In0.05N層43Bの厚みは、例えば例えば100nm~2000nmである。
【0050】
第2層44は、第1層43に接して設けられている。第2層44は、Aly2Iny1Ga(1-y1-y2)N(0<y1<1,0≦y2<1)からなる。第1層43上に設けられた第2層44は、上記実施の形態における第2層14と同様に、第1層43の面内方向の格子定数よりも小さい面内方向の格子定数a2を有し、格子緩和されている。第2層44は、第1層43対して完全緩和されていてもよいし、部分緩和されていてもよい。
【0051】
第2層44は、複数の層から構成されており、例えば、図6に示したように、第1層43上に、GaNからなる層(GaN層)44A、GaN/Ga0.95In0.05Nからなる層(GaN/Ga0.95In0.05N層)44BおよびGaNからなる層(GaN層)44Cがこの順に積層されている。GaN層44C上には、さらにクラッド層45として、それぞれGaN/GaInNからなるGaN/Ga0.97In0.03N層45a、GaN/Ga0.96In0.04N層45b、GaN/Ga0.95In0.05N層45cおよびGaN/Ga0.94In0.06N層45dがこの順に積層されている。第2層44の厚みは、例えば30nm~750nmである。例えば、GaN層44Aの厚みは、例えば30nm~750nmである。GaN/Ga0.95In0.05N層44Bの厚みは、例えば100nm~1000nmである。GaN層44Cの厚みは、例えば30nm~200nmである。GaN/Ga0.97In0.03N層45aの厚みは、例えば30nm~500nmである。GaN/Ga0.96In0.04N層45bの厚みは、例えば30nm~500nmである。GaN/Ga0.95In0.05N層45cの厚みは、例えば30nm~500nmである。GaN/Ga0.94In0.06N層45dの厚みは、例えば30nm~500nmである。
【0052】
第3層46は、第2層44を構成するクラッド層45に接して設けられている。第3層46は、Alz2Inz1Ga(1-z1-z2)N(0<z1<1,0≦z2<1)からなる。第2層44上に設けられた第3層46は、第2層44の面内方向の格子定数よりも大きな面内方向の格子定数a3を有し、格子緩和されている。第3層46は、第2層44(具体的には、クラッド層45)に対して完全緩和されていてもよいし、部分緩和されていてもよい。第3層46は、複数の層から構成されており、例えば、図6に示したように、例えばGaN/Ga0.92In0.08Nからなる層(GaN/Ga0.92In0.08N層46A)、単一量子井戸あるいは多重量子井戸からなる活性層47、GaN層46BおよびGaN/Ga0.94In0.06N層46Cがこの順に積層されており、所謂光ガイド層を形成している。GaN/Ga0.92In0.08N層46Aはn型ドープおよびアンドープのいずれでもよく、GaN/Ga0.94In0.06N層46Cも同様に、p型ドープおよびアンドープのいずれでもよい。
【0053】
クラッド層48は、例えば第3層46を構成するGaN/Ga0.94In0.06N層46Cに接して設けられている。クラッド層48は、例えばGaN/Ga0.95In0.05N層からなる。クラッド層48の厚みは、例えば50nm~500nmである。コンタクト層49は、例えばクラッド層48に接して設けられている。コンタクト層49は、例えばGaNからなる。コンタクト層49の厚みは、例えば10nmである。クラッド層48およびコンタクト層49は、それぞれ、p型ドープされており、ドーパントとして例えばマグネシウム(Mg)が用いられる。
【0054】
なお、第2層44と第3層46との間には、図示していないが、例えばGaNからなる歪層が例えば3~10nmの厚みで形成されている。
【0055】
このように、第2層44と第3層46との間にa2よりも面内方向の格子定数が小さいGaNを挿入すると共に、第2層44上に、第2層44よりもIn組成の高いGaInN層(GaN/Ga0.92In0.08N層)46Aを成長させることで、第3層46の格子定数a3を拡大させることができる。よって、通常の手法であるGaN基板上にコヒーレント成長した活性層に比べ、より歪の小さい活性層47が形成され、活性層47の発光効率を大きく向上させることが可能となる。
【0056】
半導体レーザにおいて良好な光閉じ込めを得るためには、クラッド層および光ガイド層それぞれにおいて数百nm以上の厚膜が必要となる。一般的な発光デバイスでは、デバイス全域は面内方向の格子定数は同一であって全層が基板に対してコヒーレントに成長されるが、例えばデバイス全層が比亜kりガイド層と同等の格子定数aを有する場合、光ガイド層は厚膜を成長できるが、クラッド層の積層厚は臨界膜厚の観点から設計厚みが制限される。逆に、デバイス全層がクラッド層と同等の格子定数を有する場合、光ガイド層の積層厚が臨界膜厚の観点から制限される。一方で、本実施の形態であれば、クラッド層および光ガイド層はそれぞれで所望の格子定数(a2,a3)を選択することが可能となり、光閉じ込めに対する設計の自由度が上がり、良好な光閉じ込めと内部ロスの小さいレーザ構造を設計することが可能となり、半導体レーザのしきい電流やスロープ効率を大きく向上させられる。
【0057】
これに対して、本変形例では、クラッド層45および光ガイド層を構成する第3層46それぞれにおいて、所望のIn組成のGaInNと合致する格子定数を適用できるため、構造設計の自由度を向上させることが可能となる。また、光閉じ込めやロスが低減されるため、高いデバイス特性を有する半導体レーザを提供することが可能となる。
【0058】
以上、実施の形態および変形例1~3を挙げて本開示を説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態において例示した発光デバイス1の構成要素、配置および数等は、あくまで一例であり、全ての構成要素を備える必要はなく、また、他の構成要素をさらに備えていてもよい。
【0059】
更に、上記実施の形態等では、基板11上に発光層(活性層17)を有する発光デバイス1を例に挙げて説明したが、本開示は、発光以外の機能層を有する電子デバイスにも適用可能である。
【0060】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であってこれに限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【0061】
なお、本開示は、以下のような構成も可能である。
(1)
Alx2Inx1Ga(1-x1-x2)N(0<x1<1,0≦x2<1)からなる単層から構成された第1層と、
前記第1層に接して設けられ、前記第1層に対して格子緩和したAly2Iny1Ga(1-y1-y2)N(0<y1<1,0≦y2<1)からなると共に、複数の層から構成された第2層と、
前記第2層の上方に設けられ、前記第2層に対して格子緩和したAlz2Inz1Ga(1-z1-z2)N(0<z1<1,0≦z2<1)からなると共に、活性層を含む複数の層から構成された第3層とを備え、
GaNの面内方向の格子定数aGAN、前記第1層の面内方向の格子定数a1、前記第2層を構成する前記複数の層それぞれの面内方向の格子定数a2および前記第3層を構成する前記活性層を含む前記複数の層それぞれの面内方向の格子定数a3がaGAN<a2<a1,a3の関係を有する
発光デバイス。
(2)
前記第1層の面内方向の格子定数a1と前記第2層の面内方向の格子定数a2とは(a2-a1)/a1<-0.06%の関係を満たし、前記第2層の面内方向の格子定数a2と前記第3層の面内方向の格子定数a3とは(a3-a2)/a2>0.06%の関係を満たし、前記第1層の面内方向の格子定数a1とGaNの面内方向の格子定数aGANとは(a1-aGAN)/aGAN>0.33%の関係を満たす、前記(1)に記載の発光デバイス。
(3)
前記第2層を構成する前記格子定数a2の前記複数の層の総厚が100nm以上である、前記(1)または(2)に記載の発光デバイス。
(4)
前記第3層を構成する前記格子定数a3の前記複数の層の総厚が100nm以上である、前記(1)乃至(3)のうちのいずれか1つに記載の発光デバイス。
(5)
前記第2層は前記複数の層としてクラッド層を有し、前記第3層は前記複数の層として光ガイド層を有する、前記(1)乃至(4)のうちのいずれか1つに記載の発光デバイス。
(6)
更に、基板を有し、
前記基板上に、前記第1層、前記第2層および前記第3層がこの順に設けられている、前記(1)乃至(5)のうちのいずれか1つに記載の発光デバイス。
(7)
更に、前記基板と前記第1層との間にバッファ層を有し、
前記バッファ層は、窒化ガリウム(GaN),窒化ガリウムインジウム(GaInN),窒化ガリウムアルミニウム(AlGaN),窒化アルミニウム(AlN)または窒化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInN)からなる、前記(6)に記載の発光デバイス。
(8)
前記基板は、窒化ガリウム(GaN)基板により構成されている、前記(6)または(7)に記載の発光デバイス。
(9)
前記基板は、サファイア基板、シリコン(Si)基板、窒化アルミニウム(AlN)基板または酸化亜鉛(ZnO)基板により構成されている、前記(6)または(7)に記載の発光デバイス。
(10)
前記第2層と前記第3層との間に歪層をさらに有し、
前記歪層は、前記第2層の面内の格子定数a2よりも小さいまたはaGaNと前記第3層の格子定数a3との間の格子定数を有する、前記(1)乃至(9)のうちのいずれか1つに記載の発光デバイス。
【0062】
本出願は、日本国特許庁において2018年7月27日に出願された日本特許出願番号2018-140843号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願の全ての内容を参照によって本出願に援用する。
【0063】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6