(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】一体化3次元表示体および識別情報記録方法
(51)【国際特許分類】
G03H 1/02 20060101AFI20231121BHJP
B42D 25/328 20140101ALI20231121BHJP
G11B 7/0065 20060101ALI20231121BHJP
G11B 7/24044 20130101ALI20231121BHJP
G11B 7/24012 20130101ALI20231121BHJP
【FI】
G03H1/02
B42D25/328
G11B7/0065
G11B7/24044
G11B7/24012
(21)【出願番号】P 2020553204
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2019040513
(87)【国際公開番号】W WO2020080367
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018195365
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】籠谷 彰人
(72)【発明者】
【氏名】梅田 梢
(72)【発明者】
【氏名】香田 祖光
【審査官】川瀬 正巳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/209113(WO,A1)
【文献】特開2005-215569(JP,A)
【文献】特開2013-020084(JP,A)
【文献】特開2002-208053(JP,A)
【文献】特開2010-111072(JP,A)
【文献】特開2014-215362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03H 1/02
B42D 25/328
G11B 7/0065
G11B 7/24044
G11B 7/24012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラムの再生のための情報が記録された記録面を備
え、
前記記録面に、
前記ホログラムの再生像の各集光点からの光の位相成分が計算される、前記各集光点に1対1で対応する計算要素区画と、
前記位相成分に基づいて計算された位相角を記録するための位相角記録領域とを備え、
前記位相角記録領域は、予め定められた解像度の整数倍のピッチで凸構造および凹構造が交互に設けられた凹凸構造面を有する単色区画を複数含み、
前記計算要素区画と前記位相角記録領域との重複領域に、前記位相角を記録し、
前記各集光点は、複数の前記単色区画からの反射光によって集光される場合であっても、前記各集光点毎に決定された、前記記録面からの固有の距離において集光され、
前記重複領域の全面を覆わないように部分的に覆う2次元情報を配置
することによって、
前記ホログラムの再生像である3次元情報と、前記2次元情報とが一体化されたことを特徴とする、一体化3次元表示体。
【請求項2】
前記再生像および前記2次元情報のうちの少なくとも何れかが、個人認証情報を含むことを特徴とする、請求項
1に記載の一体化3次元表示体。
【請求項3】
前記記録面における前記単色区画の形状、前記2次元情報の形状、および前記再生像の形状のうちの少なくとも何れかが、文字または絵柄を表すことを特徴とする、請求項
1に記載の一体化3次元表示体。
【請求項4】
前記記録面における前記単色区画の形状、前記2次元情報の形状、および前記再生像の形状のうちの少なくとも何れかが、機械読取可能なコードを表すことを特徴とする、請求項
1に記載の一体化3次元表示体。
【請求項5】
前記記録面にさらに、前記位相角が記録されない位相角非記録領域を備え、前記計算要素区画内の前記位相角非記録領域の表面を、鏡面としたことを特徴とする、請求項1に記載の一体化3次元表示体。
【請求項6】
前記記録面にさらに、前記位相角が記録されない位相角非記録領域を備え、前記計算要素区画内の前記位相角非記録領域に、前記位相角以外の情報を記録することを特徴とする、請求項1に記載の一体化3次元表示体。
【請求項7】
前記位相角以外の情報は、光の散乱、反射、および回折特性のうちの少なくとも何れかを含む情報であることを特徴とする、請求項
6に記載の一体化3次元表示体。
【請求項8】
前記位相角は、
【数1】
に従ってφとして算出され、ここで、(kx、ky)は、前記単色区画を構成する画素の座標、W(kx、ky)は、座標(kx、ky)における前記位相成分、nは前記集光点の数(n=0~Nmax)、ampは前記集光点の光の振幅、iは虚数、λは前記再生像を再生する際の光の波長、On(x、y、z)は前記集光点の座標、Xmin、Xmax、Ymin、Ymaxは、前記集光点毎に規定される前記計算要素区画の範囲を示す座標であることを特徴とする、請求項1に記載の一体化3次元表示体。
【請求項9】
前記単色区画は、前記ホログラムの再生のために必要とされる色の数に等しい種類数存在し、前記単色区画において反射された反射光の色は、前記必要とされる色のうちの何れかであり、前記単色区画のおのおのの前記凹構造の深さは、前記反射光の色に応じて決定され
、
前記重複領域における前記単色区画に、前記決定された前記凹構造の深さを記録することを特徴とする、請求項1に記載の一体化3次元表示体。
【請求項10】
前記位相角記録領
域の中に、複数種類の画
素が規則的に配置された色調変換区
画が設けられ、
前記複数種類の画
素はおのおの、画素の種類毎に予め定められた配列パターンにしたがって、各種類の前記単色区
画を配列してなる、請求項9に記載の一体化3次元表示体。
【請求項11】
前記重複領域に前記位相角を記録することに代えて、前記重複領域に、前記位相角に応じてボイド量が変調されたボイドを埋め込むことを特徴とする、請求項1に記載の一体化3次元表示体。
【請求項12】
前記計算要素区画は複数存在し、前記記録面において、前記複数の計算要素区画のうち、他の計算要素区画と重ならないように配置されている計算要素区画を、異なる色で着色することを特徴とする、請求項1に記載の一体化3次元表示体。
【請求項13】
前記記録面に、金属の反射層を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の一体化3次元表示体。
【請求項14】
対象物に貼り付けられたことを特徴とする、請求項1に記載の一体化3次元表示体。
【請求項15】
前記記録面と、前記集光点との間の距離を0.5(mm)以上、50(mm)以下とし、前記記録面に対する法線方向に対して、0(°)以上、70(°)以下傾いた視野角範囲で観察されることを特徴とする、請求項1に記載の一体化3次元表示体。
【請求項16】
請求項
13に記載の一体化3次元表示体に識別情報を記録するために、前記識別情報に応じて、前記金属の反射層をディメタライズすることを特徴とする、識別情報記録方法。
【請求項17】
前記識別情報は、機械読取可能なコードであり、
前記ディメタライズすることは、反射と非反射との組み合わせによって前記機械読取可能なコードを実現するために、前記金属の反射層のうち、非反射としたい部位の金属の30(%)以上、70(%)以下をディメタライズすることを特徴とする、請求項
16に記載の識別情報記録方法。
【請求項18】
請求項1に記載の一体化3次元表示体に識別情報を記録するために、前記記録面に印刷層を設け、前記印刷層に前記識別情報を記録することを特徴とする、識別情報記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、計算機によって計算された、例えばホログラムに適用される空間情報の位相成分が記録された一体化3次元表示体および識別情報記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、計算機によって計算された光の干渉に基づいて制御される計算機合成ホログラムに関し、以下の先行技術文献が開示されている。
【0003】
(特許文献1) 日本国特許第4525151号明細書
(特許文献2) 国際公開第2018/097238号公報
(特許文献3) 国際公開第2016/167173号公報
上記先行技術文献によって開示された技術は、例えば、証券、カード媒体および認証体に適用される。例えば特許文献1には、波長毎に周期の異なる凹凸構造を形成することで、フルカラーの3次元像を表示する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2、3には、リップマンホログラムと呼ばれ、波長毎に色成分の異なる像をレーザ光源によって感光性材料に多重記録することで、フルカラーの3次元像を表示する技術が開示されている。
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示されている技術は、縦方向の視差を排除し、横方向とした場合にのみ成立するために、横方向のみにしか立体効果がない。さらに、縦方向には色ずれが発生し、虹色に色が変化してしまう。
【0006】
この種の虹色への変化は、現在世の中に普及しているホログラム全般で見られる一般的な効果であり、コモディティー化している。
【0007】
また特許文献2、3のリップマンホログラムは、フルカラーの3次元像が再生可能であり、通常、RGB3色のレーザと、感光性材料とがあれば、周知の方法で作製することができる。
【0008】
しかしながら、感光性材料は、一般的な紫外線硬化性樹脂を用いたエンボスホログラムと比較してコスト高であること、また、RGB3色のレーザを用いたリップマンホログラムの撮影はエンボスホログラムと比較してタクトが遅く、量産性に向かないという問題がある。
【0009】
さらには、感光性材料へ機械読取可能なコードを追記する場合には、その都度、機械読取可能なコードを感光性材料へ撮影し、記録する必要があり、手間がかかるという問題もある。
【0010】
本発明の実施形態はこのような背景を鑑みてなされたものであり、虹色の色ずれの発生しない量産性の高いフルカラー再生可能な3次元像と、機械読取可能なコードとを複合して提供することが可能な、一体化3次元表示体および識別情報記録方法を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の第1の側面は、ホログラムの再生のための情報が記録された記録面を備えた一体化3次元表示体であって、記録面に、ホログラムの再生像の各集光点からの光の位相成分が計算される、各集光点に1対1で対応する計算要素区画と位相成分に基づいて計算された位相角を記録するための位相角記録領域とを備えている。位相角記録領域は、予め定められた解像度の整数倍のピッチで凸構造および凹構造が交互に設けられた凹凸構造面を有する単色区画を複数含んでいる。また、計算要素区画と位相角記録領域との重複領域に、位相角を記録する。各集光点は、複数の単色区画からの反射光によって集光される場合であっても、各集光点毎に決定された、記録面からの固有の距離において集光される。
【0012】
本発明の第2の側面は、本発明の第1の側面の一体化3次元表示体において、再生像の少なくとも一部と、記録面の深さ方向において重なるように、記録面に2次元情報を配置している。
【0013】
本発明の第3の側面は、本発明の第2の側面の一体化3次元表示体において、位相角記録領域の全面を覆わないように、記録面に2次元情報を配置している。
【0014】
本発明の第4の側面は、本発明の第2の側面の一体化3次元表示体において、再生像および2次元情報のうちの少なくとも何れかが、個人認証情報を含んでいる。
【0015】
本発明の第5の側面は、本発明の第2の側面の一体化3次元表示体において、記録面における単色区画の形状、2次元情報の形状、および再生像の形状のうちの少なくとも何れかが、文字または絵柄を表す。
【0016】
本発明の第6の側面は、本発明の第2の側面の一体化3次元表示体において、記録面における単色区画の形状、2次元情報の形状、および再生像の形状のうちの少なくとも何れかが、機械読取可能なコードを表す。
【0017】
本発明の第7の側面は、本発明の第1の側面の一体化3次元表示体において、記録面にさらに、位相角が記録されない位相角非記録領域を備え、計算要素区画内の位相角非記録領域の表面を、鏡面としている。
【0018】
本発明の第8の側面は、本発明の第1の側面の一体化3次元表示体において、記録面にさらに、位相角が記録されない位相角非記録領域を備え、計算要素区画内の位相角非記録領域に、位相角以外の情報を記録している。
【0019】
本発明の第9の側面は、本発明の第8の側面の一体化3次元表示体において、位相角以外の情報は、光の散乱、反射、および回折特性のうちの少なくとも何れかを含む情報である。
【0020】
本発明の第10の側面は、本発明の第1の側面の一体化3次元表示体において、位相角は、
【0021】
【0022】
に従ってφとして算出され、ここで、(kx、ky)は、単色区画を構成する画素の座標、W(kx、ky)は、座標(kx、ky)における位相成分、nは集光点の数(n=0~Nmax)、ampは集光点の光の振幅、iは虚数、λは再生像を再生する際の光の波長、On(x、y、z)は集光点の座標、Xmin、Xmax、Ymin、Ymaxは、集光点毎に規定される計算要素区画の範囲を示す座標である。
【0023】
本発明の第11の側面は、本発明の第1の側面の一体化3次元表示体において、単色区画は、ホログラムの再生のために必要とされる色の数に等しい種類数存在し、単色区画において反射された反射光の色は、必要とされる色のうちの何れかであり、単色区画のおのおのの凹構造の深さは、反射光の色に応じて決定され、重複領域に位相角を記録することに代えて、重複領域における単色区画に、決定された凹構造の深さを記録する。
【0024】
本発明の第12の側面は、本発明の第1の側面の一体化3次元表示体において、重複領域に位相角を記録することに代えて、重複領域に、位相角に応じてボイド量が変調されたボイドを埋め込む。
【0025】
本発明の第13の側面は、本発明の第1の側面の一体化3次元表示体において、計算要素区画は複数存在し、記録面において、複数の計算要素区画のうち、他の計算要素区画と重ならないように配置されている計算要素区画を、異なる色で着色する。
【0026】
本発明の第14の側面は、本発明の第1の側面の一体化3次元表示体において、記録面に、金属の反射層を備えている。
【0027】
本発明の第15の側面は、本発明の第1の側面の一体化3次元表示体において、対象物に貼り付けられている。
【0028】
本発明の第16の側面は、本発明の第1の側面の一体化3次元表示体において、記録面と、集光点との間の距離を0.5(mm)以上、50(mm)以下とし、記録面に対する法線方向に対して、0(°)以上、70(°)以下傾いた視野角範囲で観察される。
【0029】
本発明の第17の側面は、本発明の第14の側面の一体化3次元表示体に識別情報を記録するために、識別情報に応じて、金属の反射層をディメタライズする、識別情報記録方法である。
【0030】
本発明の第18の側面は、本発明の第17の側面の識別情報記録方法において、識別情報は、機械読取可能なコードであり、ディメタライズすることは、反射と非反射との組み合わせによって機械読取可能なコードを実現するために、金属の反射層のうち、非反射としたい部位の金属の30(%)以上、70(%)以下をディメタライズする。
【0031】
本発明の第19の側面は、本発明の第1の側面の一体化3次元表示体に識別情報を記録するために、記録面に印刷層を設け、印刷層に識別情報を記録する、識別情報記録方法である。
【0032】
本発明の第1の側面の一体化3次元表示体によれば、計算要素区画を設けることによって、計算機による計算時間を短縮し、空間情報のノイズを減らし、鮮明なホログラムを得ることができる。
【0033】
この計算では特に、位相角を計算し、記録することができる。このような位相型ホログラムは、高い回折効率を実現しながら、光の位相成分のみを変調することができる。このため、明るさが低減することなく、高輝度を保ったまま光を制御することができる。
【0034】
また、位相角を記録するための位相角記録領域を、計算要素区画内に限定することによって、計算機による計算時間をさらに短縮することもできる。それに加えて、一体化3次元表示体に当たる光の割合を制御することもできる。
【0035】
さらには、計算要素区画内における、位相角記録領域以外の部分を位相角非記録領域と定義すると、集光点において再生される再生像の明るさを、位相角非記録領域を設けない場合に対して、(位相角記録領域)/(位相角記録領域+位相角非記録領域)だけ暗くすることができる。これによって、反射光の明暗を制御することができる。
【0036】
また位相角記録領域に光が照射された場合にのみ、3次元の再生像を再生することもできる。すなわち、位相角記録領域が大きいほど、明るい再生像を再生することができ、小さいほど、暗い再生像しか再生できないようにすることができる。しかし、暗い再生像しか再生できない代わりに、位相角非記録領域を別の光学要素として適用することもできる。
【0037】
さらにまた、位相角記録領域内を1つまたは複数の単色区画から構成することで、モノクロおよびカラーの3次元再生をすることができる。
【0038】
本発明の第2の側面の一体化3次元表示体によれば、再生像の少なくとも一部と、記録面の深さ方向において重なるように、記録面に2次元情報を配置することによって、耐偽造性を各段に高めることができる。
【0039】
単純に再生像と、2次元情報とが、記録面において分離されて配置されている場合、元から存在する正規の2次元情報だけを書き換えれば2次元情報を偽造できる。そのため、正規の再生像と、偽造された2次元情報とが容易にペアにされ、簡単に偽造される恐れがあり、耐偽造性は低い。また、3次元の再生像と2次元情報とが2層に分かれている場合も、正規の2次元情報の1層分を、偽造された2次元情報の層に差し替えられることによって、容易に偽造される恐れがあり、耐偽造性は低い。しかしながら、この一体化3次元表示体によれば、これら問題を解消することができる。
【0040】
本発明の第3の側面の一体化3次元表示体によれば、位相角記録領域の全面を覆わないように、記録面に2次元情報を配置している。仮に、集光点1点に対する位相角記録領域の全面が、2次元情報によって覆われた場合、位相角記録領域から再生するはずであった集光点が消えてしまう。しかしながら、この一体化3次元表示体によれば、位相角記録領域の全面を覆わないように2次元情報を配置するので、位相角記録領域から再生する集光点を消えないようにすることができる。
【0041】
本発明の第4の側面の一体化3次元表示体によれば、再生像および2次元情報のうちの少なくとも何れかを、個人認証情報として適用することができる。
【0042】
本発明の第5の側面の一体化3次元表示体によれば、動的な3次元の再生像と、静的な2次元情報である文字や絵柄とを組み合わせて表示することができる。これによって、2次元情報の耐偽造性を高めることもできる。
【0043】
本発明の第6の側面の一体化3次元表示体によれば、単色区画の形状、2次元情報の形状、および再生像の形状のうちの少なくとも何れかによって、機械読取可能なコードを表すことによって、耐偽造性をさらに高めた可変コードを提供することができる。機械読取可能なコードは、2次元コード、または1次元コードである。機械読取可能なコードは、QRコード(登録商標)、バーコード、データマトリックス等である。
【0044】
本発明の第7の側面の一体化3次元表示体によれば、記録面において、計算要素区画内の位相角非記録領域の表面を、鏡面とすることができる。
【0045】
本発明の第8の側面の一体化3次元表示体によれば、計算要素区画内の位相角非記録領域に、位相角以外の情報を記録することによって、位相角非記録領域で、3次元再生像の光の位相成分以外を制御することができる。
【0046】
本発明の第9の側面の一体化3次元表示体によれば、位相角以外の情報を、光の散乱、反射、および回折特性のうちの少なくとも何れかを含む情報とすることによって、異なる光の効果を用いて多種光の制御を行い、複雑な目視効果を実現することができる。
【0047】
本発明の第10の側面の一体化3次元表示体によれば、単色区画を構成する画素の座標における位相角を、具体的に、
【0048】
【0049】
に従って算出することができる。
【0050】
本発明の第11の側面の一体化3次元表示体によれば、位相角を記録する代わりに、位相角に応じた単色区画の凹構造の深さを、重複領域に記録することができる。
【0051】
本発明の第12の側面の一体化3次元表示体によれば、位相角を記録する代わりに、位相角に応じてボイド量が変調されたボイドを、重複領域に埋め込むことができる。
【0052】
本発明の第13の側面の一体化3次元表示体によれば、記録面において、他の計算要素区画と重ならないように配置されている計算要素区画を、異なる色で着色することによって、フルカラーで3次元の再生像を再生することができる。
【0053】
本発明の第14の側面の一体化3次元表示体によれば、記録面に、金属の反射層を備えることによって、光の反射効率を高め、反射光により明るい再生像を再生することができる。
【0054】
本発明の第15の側面の一体化3次元表示体は、対象物に貼り付けられることができる。
【0055】
本発明の第16の側面の一体化3次元表示体では、再生像は、一般的なオフィス環境等では蛍光灯等の照明のサイズや数によって、ぼけて視認されないが、点光源であるLEDや、スマートフォンやレジリーダの光源の照射によって、視認されるようになる。
【0056】
本発明の第17の側面の識別情報記録方法によれば、金属の反射層のうち、非反射としたい部位を、レーザによってディメタライズすることによって、識別情報を記録することができる。
【0057】
本発明の第18の側面の識別情報記録方法によれば、金属の反射層のうち、非反射としたい部位をディメタライズすることによって、2次元情報を記録することができる。なお、ディメタライズ量が大きいほど、2次元情報のコントラストが上がり、認識し易くなるので、単位時間当たりの認識率は高くなる一方、3次元の再生像の明るさは低下する。逆に、ディメタライズ量が小さいほど、3次元の再生像は明るさ増すが、機械読取可能な2次元情報のコントラストが下がり、結果として認識率が下がる。本発明の第18の側面の識別情報記録方法によれば、金属の反射層のうち、非反射としたい部位の金属の30(%)以上、70(%)以下をディメタライズすることによって、認識容易な2次元情報と、明るい再生像との両方を実現することができる。
【0058】
本発明の第19の側面の識別情報記録方法によれば、記録面に印刷層を設け、この印刷層に識別情報を記録することによって、記録面における位相角記録領域の一部を遮蔽し、遮蔽した領域を、2次元情報の記録のために有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る識別情報記録方法が適用された一体化3次元表示体を説明するための概念図である。
【
図2】
図2は、位相角に対応する画素の深さが記録された重複領域の一部分を例示する断面図である。
【
図3】
図3は、
図2のような構成例の重複領域を有する一体化3次元表示体による再生像の正面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る一体化3次元表示体によって実現されるフルカラー表示の原理を説明するための概念図である。
【
図5A】
図5Aは、集光点を赤色で発光させるための単色区画の配置例を示す概念図である。
【
図5B】
図5Bは、集光点を青色で発光させるための単色区画の配置例を示す概念図である。
【
図5C】
図5Cは、集光点を紫色で発光させるための単色区画の配置例を示す概念図である。
【
図6】
図6は、色調変換区間において縦方向にRGBが繰り返し配置された配置例を示す概念図である。
【
図7】
図7は、縦方向にRGBが繰り返し配置された色調変換区間が2列配置された配置例を示す概念図である。
【
図8】
図8は、縦方向にすべてGが配置された色調変換区間の配置例を示す概念図である。
【
図9】
図9は、R、B、Gがランダムに配置された色調変換区間の配置例を示す概念図である。
【
図10】
図10は、複数の画素パターンが配置された色調変換区間の配置例を示す概念図である。
【
図11】
図11は、6つの波長の反射光のために6種類の単色区画を設けた一体化3次元表示体を例示する概念図である。
【
図12】
図12は、視域によって異なる色が表示される状態を説明するための概念図である。
【
図13】
図13は、絵柄を表す形状を有する2次元情報を、一体化3次元表示体に付与した例を示す概念図である。
【
図14A】
図14Aは、2次元情報と3次元的に分布している集光点とが、xy平面において重ならない位置関係の一例を示す断面図および平面図である。
【
図14B】
図14Bは、2次元情報と3次元的に分布している集光点とが、xy平面において重なる位置関係の一例を示す断面図および平面図である。
【
図15A】
図15Aは、重複領域と2次元情報との、記録面上における位置関係(重複領域の一部のみが、2次元情報によって覆われている)を示す概念図である。
【
図15B】
図15Bは、重複領域と2次元情報との、記録面上における位置関係(重複領域の全面が、2次元情報によって覆われている)を示す概念図である。
【
図16A】
図16Aは、2次元情報(絵柄)と集光点とが、xy平面において重なるように配置されている認証体の一実施形態を示す断面図および平面図である。
【
図16B】
図16Bは、2次元情報(2次元バーコード)と集光点とが、xy平面において重なるように配置されている認証体の一実施形態を示す断面図および平面図である。
【
図17A】
図17Aは、単色区画の平面形状によって表現される絵柄を有する認証体の一実施形態を示す断面図および平面図である。
【
図17B】
図17Bは、単色区画の平面形状によって表現される絵柄と2次元バーコードとを有する認証体の一実施形態を示す断面図および平面図である。
【
図18A】
図18Aは、再生色の異なる複数の単色区画を跨ぐように、3次元の再生像が再生されることを説明する概念図である(右側から斜め方向に進む視線方向である場合)。
【
図18B】
図18Bは、再生色の異なる複数の単色区画を跨ぐように、3次元の再生像が再生されることを説明する概念図である(面に対して直交する視線方向である場合)。
【
図18C】
図18Cは、再生色の異なる複数の単色区画を跨ぐように、3次元の再生像が再生されることを説明する概念図である(左側から斜め方向に進む視線方向である場合)。
【
図19A】
図19Aは、ディメタライズによって反射スペクトルを変化させる方法の例を説明するための本発明の実施形態に係る一体化3次元表示体の一例を示す断面図である(ディメタライズ前)。
【
図19B】
図19Bは、ディメタライズによって反射スペクトルを変化させる方法の例を説明するための本発明の実施形態に係る一体化3次元表示体の一例を示す断面図である(ディメタライズ後)。
【
図20A】
図20Aは、機械認証装置から照射された検査光が、反射層において反射する状態を説明するための概念図である。
【
図20B】
図20Bは、機械認証装置から照射された検査光が、ディメタライズ部において透過する状態を説明するための概念図である。
【
図21A】
図21Aは、印刷層を設けることによって、反射スペクトルを変化させる方法を説明するための本発明の実施形態に係る一体化3次元表示体の一実施形態を示す断面図である(単色区画構成)。
【
図21B】
図21Bは、印刷層を設けることによって、反射スペクトルを変化させる方法を説明するための本発明の実施形態に係る一体化3次元表示体の一実施形態を示す断面図である(マルチレベル構成)。
【
図22】
図22は、ディメタライズ処理によって2次元バーコードを作成するために、コンピュータに入力される条件データの一例を示す図である。
【
図23】
図23は、金属の反射層におけるディメタライズ量と、機械読取可能なコードの認識率および再生像の見易さとの関係を示すテーブルである。
【
図24】
図24は、位相角に応じたボイド量を有するボイドが画素に埋め込まれた状態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同様または類似した機能を発揮する構成要素には、全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。本発明の各実施形態、各構成、各構造、各側面は組合せることができ、相乗効果を発揮できる。
【0061】
図1は、本発明の実施形態に係る識別情報記録方法が適用された一体化3次元表示体を説明するための概念図である。
【0062】
本発明の実施形態に係る識別情報記録方法が適用された一体化3次元表示体10は、
図1に示すxy平面に配置された基材12と、基材12上に設けられた記録面14とを備えている。記録面14上には、多数の画素gが格子状に配置されている。各画素gの形状は正方とすることができ、一辺の長さpは、電子線描画装置の最小解像度(可能な範囲としては、100~500(nm))とすることができる。なお、各画素gの形状は、長方形とすることができ、さらに、その長方形の角を丸くすることもできる。
【0063】
記録面14には、計算要素区画16、位相角記録領域18、および位相角非記録領域20が配置される。記録面14を、金属の反射層で覆うことができる。
【0064】
計算要素区画16は、ホログラムの再生像40の各集光点Sn(nは正の整数)に1対1で対応して規定され、各集光点Snからの光の位相成分が計算される領域である。このホログラムの再生像40は、可視とすることができる。ホログラムを再生する光の波長は、470(nm)以上、750(nm)以下とすることができる。一体化3次元表示体10は、可視域で3次元情報を読み取り可能とすることができる。固体撮像カメラにて、可視域で3次元情報を読み取ることができる。固体撮像カメラは、CCDカメラ、CMOSカメラとすることができる。また、一体化3次元表示体10は赤外域、紫外域でも3次元情報を読み取り可能とすることができる。赤外カメラを使って、赤外域で3次元情報を読み取ることができる。赤外カメラは、固体撮像カメラとすることができる。ブラックライト等の紫外線ランプで照明し、蛍光体により紫外光を可視光や赤外光に変換し、紫外域で3次元情報を固体撮像カメラで読み取ることができる。
【0065】
位相角記録領域18は、各集光点Snからの光の位相成分に基づいて計算された位相角や、位相角に応じた画素深さを記録するための領域である。位相角記録領域18のうち、計算要素区画16と重なる重複領域に、これら情報が記録される。
【0066】
一方、位相角非記録領域20は、位相角記録領域18に記録される情報が記録されない領域である。すなわち、位相角非記録領域20には、各集光点Snからの光の位相成分に基づいて計算された位相角や、位相角に応じた画素深さも記録されない。しかしながら、位相角非記録領域20には、それ以外の情報である、光の散乱、反射、および回折特性等を記録することができる。位相角非記録領域20の表面を、鏡面とすることができる。
【0067】
位相角φは、
【0068】
【0069】
に従って算出される。ここで、(kx、ky)は、画素gの座標、W(kx、ky)は、座標(kx、ky)における位相成分、nは集光点Snの数(n=0~Nmax)、ampは集光点Snの光の振幅、iは虚数、λは再生像40を再生する際の光の波長、On(x、y、z)は集光点Snの座標、Xmin、Xmax、Ymin、Ymaxは、集光点Sn毎に規定される計算要素区画16の範囲を示す座標である。
【0070】
上記式に従って得られた位相角φが、位相角記録領域18のうち、計算要素区画16と重なる重複領域における対応する画素gに記録される。
【0071】
また、重複領域における対応する画素gに、位相角φに応じた画素gの深さとして位相角φを記録できる。この場合、位相角φを、画素gの深さに変換する。これは、計算機が、位相角φを0~2πの範囲で計算し、さらに計算結果を出力するために、8ビットのグレースケール値に変換することによって行う。この場合、2πが8ビットのグレースケール値の255に相当する。その後、計算結果を元に、電子線描画装置によって、レジスト基材に描画する。
【0072】
電子線描画装置がマルチレベルの描画に対応できない場合には、同一箇所にパワーの異なる描画を多段階行うことによって、マルチレベルに近い描画を行うことができる。3回描画することによって、8段階のマルチレベルを表現することができる。その後、レジストを現像し凹凸を有した基材を得る。凹凸を有した基材を電鋳処理を行うことで、スタンパーを得る。レジスト基材へ描画する際には、4段階、8段階で位相角を記録するのができる。特に、単色区画22の凹凸は、2段階とすることができる。
【0073】
画素gの深さによって色味を変化させる場合には1回描画の2段階である必要がある。この場合、設計値であるグレースケールを2値化することによって、描画することができる。つまり、単色区画22の凹凸の凹部は、一定の深さを有している。また、単色区画22の凹凸の凸部は、一定の高さを有している。
【0074】
凹部となる画素gの深さは、電子線のドーズ量を変調することで制御できる。ドーズ量に伴って、レジスト基材へ描画される深さが変化するからである。このようにして、記録面14上の画素gにある深さの凹部を記録できる。
【0075】
そのスタンパーを用いて、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV樹脂等にて、レジスト基材に面して設けられた重複領域における画素gに凹凸を形成する。このようにして、エンボス層の凹凸は、スタンパーをエンボスすることで形成できる。このエンボスは熱エンボスとできる。また、エンボス中、エンボス後、またはその双方で紫外線を照射できる。スタンパーは、エンボス中に加熱または冷却してもよい。このようにして、重複領域における画素gに、位相角φに対応する画素gの深さを記録することができる。
【0076】
図2は、位相角に対応する画素の深さが記録された重複領域の一部分を例示する断面図である。
【0077】
図2には、図中上側から、剥離層27、エンボス層23、反射層24、粘着層25の順に積層された重複領域19の断面構成例が示されている。これらのうち、エンボス層23および反射層24は、記録面14に相当する。基材12は図示を省略している。エンボス層23の画素gの深さは、位相角φに対応する。粘着層25は、一体化3次元表示体10を対象物26に固定することができ、剥離層27は、エンボス層23の表面を保護することができる。この構成では、エンボス層23と反射層24の界面が記録面14となる。
【0078】
重複領域19は、xy平面上に、複数の画素gのグループから構成される1つまたは複数の単色区画22を備えている。また、同一の各単色区画22内では、エンボス層23の深さTは同一である。すなわち、
図2に説明されている2つの単色区画22(#1)、(#2)のうち、単色区画22(#1)におけるエンボス層23の画素gの深さT1を有し、単色区画22(#2)におけるエンボス層23の画素gは、深さT1よりも深い深さT2(T2>T1)を有する。エンボス層23の画素gは、x方向およびy方向において、画素gの一辺の長さpの任意の整数倍のピッチ(p、2p、3p、・・・)で、凹と凸が交互に配置される。
【0079】
エンボス層23と粘着層25との間には、金属または金属化合物の反射層24が堆積され、さらにエンボス層23の粘着層25とは逆側の表面は、剥離層27によって覆われる。反射層24の金属は、アルミニウム、銀、金等とすることができる。反射層24の金属は、硫化金属、金属酸化物、チッ化金属等とすることができる。硫化金属は、硫化亜鉛等とすることができる。金属酸化物は、アルミナ、酸化チタン等とすることができる。チッ化金属は、チッ化カルシウム、チッ化アルミニウム等とすることができる。金属の反射層は、レーザ光を吸収しやすいため、レーザエングレービングに適している。
【0080】
単色区画22の種類は、エンボス層23の画素gの深さTによって決定される。
図2に示す例では、画素gの深さT1である単色区画22(#1)と、画素gの深さT2である単色区画22(#2)との2種類の単色区画22しか例示されていないが、一体化3次元表示体10では、単色区画22の種類数は、再生像40の再生のために必要とされる色の数に等しい。再生像40を再生するために、RGBの3色が適用される場合、エンボス層23の深さTが異なる3種類の単色区画22を、各々RGBの3色に対応する単色区画22とすることができる。画素gの深さは、78(nm)以上、250(nm)以下とすることができる。これは、可視光の青から赤の範囲を470(nm)から750(nm)とし、エンボス層23の屈折率を、1.5とし、必要な構造の深さを1/4λから、1/2λとした場合である。
【0081】
図2に示す例では、単色区画22(#1)のエンボス層23の画素gは、中心波長λ1の光を反射するため深さT1を有し、単色区画22(#2)のエンボス層23の画素gは、中心波長λ2の光を反射するため深さT2を有する。
【0082】
また、
図2では、一例として、隣接する2つの単色区画22(#1)、(#2)のみを例示しているが、重複領域19には、xy平面上に、同一種類の単色区画22を、多数配置することができる。単色区画22は、隣接して配置できる。また、隣接して配置した単色区画22を、一体化した集合体として記録面14に形成できる。
【0083】
このようにして、単色区画22を構成する各画素gに、各画素gの座標において算出された位相角φに応じた深さTを記録することができる。
【0084】
また、単色区画22(#1)には、点C1を中心としたゾーンプレートとなるように画素gが配置され、単色区画22(#2)には、点C2を中心としたゾーンプレートとなるように画素gが配置されている。
【0085】
点C1は、集光点S1から記録面14への垂線と、記録面14の表面との交点である。同様に、点C2は、集光点S2から記録面14への垂線と、記録面14の表面との交点である。集光点S1から記録面14の表面までの垂線の長さはZ1であり、集光点S2から記録面14の表面までの垂線の長さはZ2である。
【0086】
さらに、単色区画22(#1)には、点C2を中心としたゾーンプレートとなるように画素gが配置され、単色区画22(#2)には、点C1を中心としたゾーンプレートとなるように画素gが配置されている。言い換えると、単色区画22(#1)と単色区画22(#2)とは位相接続するように整列している。また、このゾーンプレートの空間周波数は、中心から周囲に向かうにつれて高くなる。この空間周波数は単色区画22の集光点Sに集光する反射光の波長に、影響与える。特にゾーンプレートのうち、高すぎる空間周波数となる領域では、回折される影響が顕著となるため、この影響を軽減する観点から、ゾーンプレートの空間周波数は、500(本/mm)以下とすることができる。
【0087】
これによって、各集光点Snは、異なる単色区画22からの反射光が集光される場合であっても、各集光点Sn毎に決定された記録面14からの固有の距離Znにおいて集光される。距離Zn(nは自然数)はいずれも、0.5(mm)以上、50(mm)以下とすることができる。その理由は、白色光で再生した場合、再生する距離が遠すぎないため、RGB毎に像の色が分離することがなく、色の分解による画質の劣化を防止でき、また、3次元像を平面のイメージと区別可能であり、3次元像として視認できるからである。
【0088】
また、絵柄、図形、コード等をレーザで、反射層24を部分的に除去することで、記録することができる。この記録のためのレーザとして、赤外線レーザを適用できる。赤外線レーザのビームは、反射層24を除去するのに必要な熱エネルギーを反射層24に照射できる。赤外線レーザは、固体レーザを適用できる。固体レーザとしては、一般的なYAGレーザを適用できる。YAGレーザの基本波長は1064(nm)である。また、エンボス層23がポリマーである場合、その屈折率は一般的に1.5近辺である。そのため、エンボス層23の屈折率を、1.5とすると、エンボス層23中の波長は、709(nm)である。垂直入射の際に、最も光を反射する条件は、エンボス層23の画素の深さがレーザのエンボス層23中での波長の半分となる、354(nm)である。一方で、構造の深さが177(nm)で、光の反射が最も少なくなる。
【0089】
そのため、構造の深さを、89(nm)以上、266(nm)以下とすることで、レーザの光を吸収しやすくなる。また、この区間内であれば、異なる構造であっても同じエングレービングの条件で反射層24を部分除去することができる。また、可視でのホログラムの再生としての要求特性から、画素の深さは、78(nm)以上、250(nm)以下であり、エングレービングの要求特性からの画素の深さは89(nm)以上、266(nm)以下であるため、89(nm)以上、250(nm)以下であれば、両要求を満たせる。
【0090】
このように、一体化3次元表示体10は、可視でホログラムを再生でき、且つレーザにより2次元情報をその反射層24に記録することができる。なお、構造の深さまたは高さは350(nm)以上であると、エンボス加工が困難となる。
【0091】
このようにして多数の単色区画22からの反射光は、何れも規定された各集光点S1、S2、・・・Snにおいて集光される。
図2には、単色区画22(#1)からの反射光である伝搬光、および単色区画22(#2)からの反射光である伝搬光が、何れも集光点S1、S2において集光することが図示されている。すなわち、
図2の例では、複数の単色区間22(#1、#2)に共通する集光点S1に、複数の単色区間22(#1、#2)からの伝搬光が集光される。同様に、複数の単色区間22(#1、#2)に共通する集光点S2に、複数の単色区間22(#1、#2)からの伝搬光が集光される。つまり、反射層24から集光点Sに向かう伝搬光は、離れた位置である集光点Sに集光される。
【0092】
図3は、
図2のような構成例の重複領域を有する一体化3次元表示体による再生像を上側(Z方向)から見た正面図である。
【0093】
集光点S1、S2において、各単色区画22(#1)、(#2)それぞれからの反射光が集光されていることが示されている。
【0094】
次に、本発明の実施形態に係る一体化3次元表示体によって実現されるフルカラー表示の原理について説明する。
【0095】
図4は、本発明の実施形態に係る一体化3次元表示体によって実現されるフルカラー表示の原理を説明するための概念図である。
【0096】
前述したように、一体化3次元表示体10では、単色区画22の種類数は、再生像40の再生のために必要とされる色の数に等しい。それに加えて、一体化3次元表示体10では、単色区画22の数および配置を、表現したい絵柄、あるいは機械読取可能なコードに応じて変化させることができる。
【0097】
再生像40の再生のために必要とされる発色する色をRGBの3色とし、単色区画22を、人間の目で視認できないほどのサイズとすることができる。人間の目で視認できないほどのサイズは、100(μm)以下とでき、そこまで小さくした状態でxy平面上に配置した場合、拡散照明下では、白色が観察されるが、点光源下では、各集光点Snの色に合わせて、3次元の再生像40をフルカラーで再生することができる。その際における重複領域19内の単色区画22の配置例を
図5A、
図5B、および
図5Cを用いて説明する。
【0098】
図5Aは、集光点S1を赤色で発光させるための単色区画の配置例を示す概念図である。
【0099】
図5Bは、集光点S2を青色で発光させるための単色区画の配置例を示す概念図である。
【0100】
図5Cは、集光点S3を紫色で発光させるための単色区画の配置例を示す概念図である。
【0101】
図5Aに示すように、集光点S1を赤色で発光させるためには、集光点S1によって規定される計算要素区画16と位相角記録領域18との重複領域19A内に、赤色光を反射する単色区画22(#1)のみを配置する。
【0102】
図5Bに示すように、集光点S2を青色で発光させるためには、集光点S2によって規定される計算要素区画16と位相角記録領域18との重複領域19B内に、青色光を反射する単色区画22(#2)のみを配置する。
【0103】
一方、紫は、赤と青との合成色であるので、
図5Cに示すように、集光点S3を紫色で発光させるためには、集光点S3によって規定される計算要素区画16と位相角記録領域18との重複領域19C内に、赤色光を反射する単色区画22(#1)と、青色光を反射する単色区画22(#2)とを配置する。
【0104】
また、
図6のように、位相角記録領域18の中に、赤色用区画R、緑色用区画G、青色用区画Bが図中縦方向に繰り返し配置されたRGBの色調変換区画21を設け、各RGBに、それぞれの色の強度にあったキノフォームを形成することによって、3次元の再生像40をRGBによるフルカラーで再生することができる。
図6に対して
図7のように、
図6における色調変換区画21に対応する色調変換区画21(#1)に記録されたデータを、そのまま横方向にコピーし、色調変換区画21(#1)に隣接した色調変換区画21(#2)を形成することによって、再生点の輝度を、
図6に対して2倍にすることができる。
【0105】
図6におけるRGBの色変換区域21における区画を、
図8に示すように、すべて緑色用区画Gとすることによって、つまり、
図6における緑色用区画Gに記録されたデータを、隣接する赤色用区画Rおよび青色用区画Bにコピーすることによって、
図6に比べて、緑成分の輝度を3倍にすることができる。
【0106】
図6では、赤色用区画R、緑色用区画G、青色用区画Bが縦方向に規則的に繰り返された色調変換区画21が例示されている。それに対して、
図9のように、色調変換区画21に、赤色用区画R、緑色用区画G、青色用区画Bをランダムに配置することもできる。このようなランダム配置によって、色調変換区画21の並べ方を考えることなく、RGBの比率を自由に変えることができる。
【0107】
図10(a)は、
図9とは異なり、色調変換区画21に、赤色用区画R、緑色用区画G、青色用区画Bを、規則的に配置した一例を示している。ただし、色調変換区画21に、同一パターンの画素gが配置されているのではなく、
図10(b)に例示するように、複数のパターンの画素g1、g2が配置されている。画素g1、g2ともにL字型形状をしているが、RGBの配列パターンが異なっている。画素g1は、緑色用区画Gを中心として、青色用区画Bと赤色用画素Rとが緑色用区画Gに隣接配置されることによって形成されるL字型形状の画素である。一方、画素g2は、青色用区画Bを中心として、緑色用区画Gと赤色用画素Rとが青色用区画Bに隣接配置されることによって形成されるL字型形状の画素である。
図10(b)では、2パターンの画素g1、g2しか例示していないが、画素のパターンも、パターンの数も一例であり、色調変換区画21には、複数のパターンの画素gを、任意に配置することができる。
【0108】
なお、2つ以上の配置が、異なる領域を設けてもよい。この配置の違いによって、絵柄を形成できる。この絵柄は、文字、コード、ランドマーク、肖像、シンボル等とできる。
【0109】
また、デジタル画像においてRGB=(255、255、255)とした場合に、例えばRGB=(10、20、30)を記録する場合には、単色区画22に記録する際、記録面積を調整することによって実現できる。例えば、(10/255、20/255、30/255)の面積率で記録することができる。また、このように面積を調整し記録する方法の他に、前述したamp(集光点の光の振幅)で調整する方法もある。
【0110】
図11は、6つの波長の反射光のために6種類の単色区画22(#1)、(#2)、(#3)、(#4)、(#5)、(#6)を設けた一体化3次元表示体10を例示する概念図である。
【0111】
図11は、X軸方向に横長な長方形状の6つの単色区画22(#1)、(#2)、(#3)、(#4)、(#5)、(#6)を、Y軸方向に積み上げるように配置した例を示している。しかしながら、これは一例であって、他の任意の配置とすることもできる。
【0112】
図12は、視域によって異なる色が表示される状態を説明するための概念図である。
【0113】
図11に示す構成によれば、
図12に示すように、視野の角度方向によって、1つの集光点S1が、6色の異なる色で再生される。
【0114】
図13は、絵柄を表す形状を有する2次元情報を、一体化3次元表示体に付与した例を示す概念図である。
【0115】
2次元情報50は、記録面14よりも観察者側、すなわち、集光点Sn側に設けられた図示しない印刷層に印刷されることによって、一体化3次元表示体10に付与できる。あるいは、金属の反射層24に対して、レーザを用いたエングレービングによってディメタライズすることによって、反射層24から金属を除去し、光の反射を制御することによって、一体化3次元表示体10に付与できる。
【0116】
なお、2次元情報50は、絵柄を表す形状に限定されず、文字を表す形状や、機械読取可能なコードとすることもできる。これら絵柄、文字、およびパターンを、個人認証情報として適用することもできる。
【0117】
図13に例示する構成によれば、2次元情報50と、集光点Snに反射光を集光させるための情報とが同じ領域に共存するので、高い耐偽造性を実現することができる。集光点Snに反射光を集光させることは、3次元の再生像40を再生させることであるので、集光点Snに反射光を集光させるための情報は、3次元情報に相当する。すなわち、
図13は、高い耐偽造性を実現するために、2次元情報50と3次元情報とを同じ領域に共存させた構成を例示している。
【0118】
図14Aは、2次元情報50と3次元的に分布している集光点S(S1~Sn)とが、xy平面において重ならない位置関係の一例を示す断面図および平面図である。
【0119】
図14Bは、2次元情報50と3次元的に分布している集光点S(S1~Sn)とが、xy平面において重なる位置関係の一例を示す概念図である。
【0120】
図14A(a)および
図14B(a)に示す断面図は、それぞれ
図14A(b)および
図14B(b)に示すW1-W1線、およびW2-W2線に沿った断面図であり、z方向、すなわち、記録面14の深さ方向における記録面14と集光点Sとの位置関係を示している。
図14A(b)および
図14B(b)に示す平面図は、xy平面における重複領域19と、2次元情報50との位置関係を示している。
【0121】
図14Aに示すような構成によれば、2次元情報50と、3次元情報とがxy平面上において分離しているので、2次元情報50のみを偽造し、3次元情報は正規のものを適用することができる。このため、耐偽造性は弱い。
【0122】
一方、
図14Bに示すような構成によれば、2次元情報50と、3次元情報とが少なくとも部分的に、記録面14の深さ方向において重なるように配置されている。このため、2次元情報50と、3次元情報との両方を偽造することは困難になるので、耐偽造性を高めることができる。
【0123】
図15Aおよび
図15Bは、重複領域19と、2次元情報50との、記録面14上における位置関係を示す概念図である。
【0124】
図15Aは、重複領域19の一部のみが2次元情報50と重なっている状態、すなわち、重複領域19の全面を覆わないように、2次元情報50が配置されている状態を示す。
図15Bは、重複領域19の全面が、2次元情報50によって覆われている状態を示す。
【0125】
図15Bに説明するように、重複領域19の全面が2次元情報50によって覆われている場合、重複領域19を利用することができないので、集光点Snを再生することができない。一方、
図15Aに説明するような位置関係では、重複領域19の一部が2次元情報50に覆われていても、重複領域19のうち、2次元情報50によって覆われていない部分を利用して集光点Snを再生することができる。したがって、記録面14に2次元情報50を記録する場合には、
図15Aのように、重複領域19の全面を覆うことがないように、2次元情報50を配置する。
【0126】
図16Aおよび
図16Bは、2次元情報50と3次元的に分布している集光点S(S1~Sn)とが、xy平面において重なるように配置されている認証体の一実施形態を示す断面図および平面図である。
【0127】
図16A(a)および
図16B(a)に示す断面図は、それぞれ
図16A(b)および
図16B(b)に示すW3-W3線およびW4-W4線に沿った断面図であり、図で説明するように、認証体60は、対象物26に接着された一体化3次元表示体10を含んでいる。特に、
図16A(b)および
図16B(b)に明示されているように、重複領域19には、同じ大きさの縦長の矩形形状をしている3種類の単色区画22(#1)、(#2)、(#3)が、図中左方向から右方向へ、重ならないように、順に隣接して配置されている。これら3種類の単色区画22(#1)、(#2)、(#3)を、異なる色で着色することができる。
【0128】
重複領域19の上面に、図示しない印刷層を配置し、印刷層に2次元情報50を印刷することによって、認証体60に2次元情報50を付与することができる。あるいは、印刷層を配置することなく、金属の反射層24をディメタライズすることによっても、認証体60に2次元情報50を付与することができる。
【0129】
このような2次元情報50によって、絵柄を表示したり、2次元バーコードを表示することができる。
図16A(b)には、2次元情報50が絵柄である場合が説明されており、
図16B(b)には、2次元情報50がバーコードである場合が説明されている。
【0130】
2次元情報50が重複領域19の全面を覆っている
図15Bのような構成にならないように、すなわち、重複領域19の少なくとも一部が、2次元情報50によって覆われていない
図15Aのような構成となるように、2次元情報50を配置することによって、集光点Snが消えることなく、一体化3次元表示体10に2次元情報50を付与することができる。
【0131】
図17Aは、単色区画の平面形状によって表現される絵柄を有する認証体の一実施形態を示す断面図および平面図である。
【0132】
図17A(a)に示す断面図は、
図17A(b)に示すW5-W5線に沿った断面図である。
【0133】
図17Aに説明される認証体では、特に
図17A(b)に示されるように、重複領域19に配置される単色区画22(#1)、(#2)、(#3)の平面形状によって、絵柄が表現される。同様に、複数種類の単色区画22の平面形状の構成によって、絵柄のみならず、文字や、機械読取可能なコードを表現することもできる。これら絵柄、文字、コードに、個人認証情報の意味を持たせることによって、個人認証情報を有した認証体60を実現することができる。
【0134】
図17Bは、単色区画の平面形状によって表現される絵柄と、バーコードのパターンとを有する認証体の一実施形態を示す断面図および平面図である。
【0135】
図17B(a)に示す断面図は、
図17B(b)に示すW6-W6線に沿った断面図である。
【0136】
図17Bで説明される認証体60は、
図17Aに示す認証体60における重複領域19の上面に、
図16Bと同様に、図示しない印刷層を配置し、印刷層に、2次元情報(バーコード情報)50を印刷したものである。
【0137】
図18A、
図18B、および
図18Cは、再生色の異なる複数の単色区画22(#1)、(#2)を跨ぐように、3次元の再生像40が再生されることを説明する概念図である。
【0138】
図18A、
図18B、および
図18Cの正面図に示すように、一体化3次元表示体10(重複領域19)が2分された左半分に単色区画22(#1)が配置され、右半分に単色区画22(#2)が配置されている。単色区画22(#1)からの反射光は、第1の再生色(例えば、赤色)の光で集光点Snにて集光し、単色区画22(#2)からの反射光は、第2の再生色(例えば、青色)の光で集光点Snにて集光することによって、再生像40を再生する。
【0139】
図18Bの側面図に示すように、観察者90が、一体化3次元表示体10の正面中心から面に直交する視線方向で一体化3次元表示体10を観察した場合、
図18Bの正面図に示すように、一体化3次元表示体10の中心に位置し、左半分が第1の色で、右半分が第2の色で表示された再生像40を観察することができる。
【0140】
一方、
図18Aの側面図に示すように、観察者90が、一体化3次元表示体10の中心よりも図中右側上方から、一体化3次元表示体10の面に対して、0(°)以上、70(°)以下の傾斜角で、右側から斜め方向に進む視線方向で一体化3次元表示体10を観察した場合、
図18Aの正面図に示すように、一体化3次元表示体10の中心よりも左側にシフトして位置し、それに応じて、
図18Bに示す場合よりも、第1の色で表示される領域の面積が大きく、第2の色で表示される領域の面積が小さくなっている再生像40を観察することができる。
【0141】
逆に、
図18Cの側面図に示すように、観察者90が、一体化3次元表示体10の中心よりも図中左側上方から、一体化3次元表示体10の面に対して、0(°)以上、70(°)以下の傾斜角で、左側から斜め方向に進む視線方向で一体化3次元表示体10を観察した場合、
図18Cの正面図に示すように、一体化3次元表示体10の中心よりも右側にシフトして位置し、それに応じて、
図18Bに示す場合よりも、第2の色で表示される領域の面積が大きく、第1の色で表示される領域の面積が小さくなっている再生像40を観察することができる。
【0142】
なお、再生像40によって実現される3次元情報は、文字や絵柄に限定されず、QRコード、バーコード、データマトリックス等の機械認証情報を表すパターンを表示するために利用することもできる。また、集光点Snの3次元位置座標で真正か偽造かの検証することで、一体化3次元表示体10を認証することによって、高度なセキュリティを実現することができる。
【0143】
このように、再生像40の3次元情報を認証情報とすることができる。また、3次元情報の再生像40を表示する単色区画22に識別情報である2次元情報が記録されることで、認証情報と識別情報とを不可分に一体化できる。バーコードは、一定の間隔で、バーが配列しているため、記録面14上の反射層24に記録した場合、その位相角記録領域18が分散する。そのため、記録面14から1点に集光点Sに光を反射するあるゾーンプレートが記録されている領域の反射層24全部が除去されることを避けることができる。
【0144】
バーコードは、流通コードに適用されるJAN/EAN/UPCや、物流商品用コードとして適用されるITF、工業用バーコードとして適用されるCODE39、宅配の伝票で適用されるNW-7等とすることができる。また、バーコードは、誤り検出符号や、誤り訂正符号を含むこともできる。つまり冗長性を有することができる。また、バーコードは、反射率を2値化し、ONとOFFからデータを読み取るが、多値とすることもできる。また、2次元情報は、複数の単色区画22にわたって記録することができる。複数の単色区画22を形成することは、高度な加工技術を要するため、その複数の単色区画22にわたって、2次元情報を記録することで、2次元情報の改ざんを防止できる。さらに、2次元情報が識別情報である場合には、識別情報の改ざんによる成りすましを防止できる。
【0145】
3次元位置座標の取得は、ステレオカメラによる方法や、既に商品化されているKinectセンサによる方法、透過型の画素型スキャナを用い、深さ方向にスキャンする方法等を含む。
【0146】
さらに、取得した3次元位置座標を、Point Cloud Library等を用いて演算処理し、SHOT(Signature of Histograms of OrienTations)特徴量、PFH(Point Feature Histograms)特徴量、PPF(Point Pair Feature)特徴量等のような3次元特徴量を推定し、データベースにある正しい3次元位置座標と比較することによって、認証体60が真正品であるか偽造品であるかを判定することができる。
【0147】
次に、エンボス層23の深さTを変えずに、反射光の特性、すなわち、反射スペクトルを変化させる方法について説明する。
【0148】
これまで、
図2等で、エンボス層23の深さTを変えることによって、反射光の特性、すなわち、反射スペクトルを変化させることについて説明した。しかしながら、反射スペクトルを変化させることは、エンボス層23の深さTを変えなくても、金属の反射層24をディメタライズすることや、印刷層28を設けることによっても実現することができる。
【0149】
金属の反射層24をディメタライズすることによって、反射スペクトルを変化させる方法を、
図19Aおよび
図19Bを用いて説明する。
【0150】
図19Aは、ディメタライズによって反射スペクトルを変化させる方法を説明するための本発明の実施形態に係る一体化3次元表示体の一例を示す断面図である。
【0151】
図19Aのような断面構成を有する一体化3次元表示体は、基材12に、剥離層27、ンボス層23が順に積層されている。さらに、反射層24がエンボス層23をカバーしている。反射層24上には、さらに接着層がある。
【0152】
また、図中x方向に、3つの単色区画22(#1)、(#2)、(#3)が順に配置されており、同一の単色区画22内では、それぞれエンボス層23の深さTとして、固有の値を有している。
図19Aでは、単色区画22(#1)におけるエンボス層23は深さT1であり、単色区画22(#2)におけるエンボス層23は深さT2であり、単色区画22(#3)におけるエンボス層23は深さT3であり、T2>T1>T3の関係を有する。
【0153】
一方、
図19Bは、
図19Aの状態から、金属の反射層24がディメタライズされ、金属の一部が除去された実施形態を示す断面図である。この場合、接着層は、反射層24または、エンボス層23上にある。レーザによるエングレービングによってディメタライズできる。
【0154】
図19Aのような構成から、
図19Bのように、金属の反射層24がディメタライズされると、エンボス層反射スペクトルを変化させることができる。
【0155】
このようにディメタライズによって反射スペクトルが変化するメカニズムを、
図20Aおよび
図20Bを用いて説明する。
【0156】
図20Aは、機械認証装置70から照射された検査光αが、反射層24において反射する状態を説明するための概念図である。
【0157】
図20Bは、機械認証装置70から照射された検査光αが、ディメタライズ部30において透過する状態を説明するための概念図である。
【0158】
図20A(a)および
図20B(a)に示す一体化3次元表示体11の断面構成は、
図19Bに示す断面構成から基材12を除去し、粘着層25に対象物26を粘着させた構成をしている。なお、
図20A(a)では、金属の反射層24がディメタライズされた部分を、ディメタライズ部30として示している。
【0159】
一体化3次元表示体11は、ディメタライズによる反射スペクトルの変化を利用して、
図20A(b)および
図20B(b)に示すような機械読取可能なコード80を記録するために利用される。
【0160】
機械認証装置70は、一体化3次元表示体11に向けて検査光αを照射し、一体化3次元表示体11からの反射光βを検出することによって、機械読取可能なコードのパターンを読み取るための装置であって、限定される訳ではないが、スマートフォン、レジリーダ、光スペクトル装置等を適用できる。
【0161】
このとき、機械認証装置70は、記録面14に対して、好適には、0(°)以上、70(°)以下の傾斜角で、機械読取可能なコードのパターンを読み取る。
【0162】
機械認証装置70から照射された検査光αは、反射層24においては、
図20A(a)に説明するように反射するために、反射光βは、機械認証装置70に戻って来ない。このため、反射層24は、機械認証装置70によって、
図20A(b)に説明するように、機械読取可能なコードの、黒に相当する部位として認識される。
【0163】
一方、機械認証装置70から照射された検査光αは、ディメタライズ部30においては、
図20B(a)で説明するように透過し、その下の対象物26において反射する。特に、対象物26が白色であれば、検査光αが対象物26の表面で散乱して散乱光γが生じ、この散乱光γが、機械認証装置70に戻り、機械認証装置70によって白として認識される。このため、ディメタライズ部30は、機械認証装置70によって、
図20B(b)で説明するように、機械読取可能なコードのうち、白に相当する部位として認識される。
【0164】
次に、印刷層を設けることによって反射スペクトルを変化させる方法を、
図21Aおよび
図21Bを参照して説明する。
【0165】
図21Aおよび
図21Bは、印刷層を設けることによって、反射スペクトルを変化させる方法を説明するための本発明の実施形態に係る一体化3次元表示体の一実施形態を示す断面図である。
【0166】
図21Aに示す断面構成は、
図19Aに示すように単色区画22を備えた構成における剥離層27とエンボス層23との間に、印刷層28を追加した構成をしている。このように、印刷層28を追加することによって、エンボス層23の深さTを変化させなくても、反射スペクトルを変化させることができるが、エンボス層23の深さTによって決定される反射光の色と、印刷による色とを組み合わせて適用することもできる。さらに、印刷層28を追加した場合には、
図21Bのように、単色区画22を設けず、複数種類の異なる深さTを有するエンボス層23が、面全体にわたってランダムに分布したマルチレベル構成とすることもできる。
【0167】
次に、コンピュータによってなされるディメタライズ処理について説明する。
【0168】
図22は、ディメタライズ処理によって2次元バーコードを作成するために、コンピュータに入力される条件データの一例を示す図である。
図22において、白い部分は、金属の反射層24の金属を残すように指示された部分に相当し、黒い部分は、金属の反射層24の金属をディメタライズするように指示された部分に相当する。
【0169】
このような条件データに従って、コンピュータは、
図22に示される白い部分に相当する反射層24の金属をディメタライズせず、
図22に示される黒い部分に相当する反射層24の金属のみをディメタライズする。
【0170】
ディメタライズされない部分は、
図20Aを用いて説明したように、黒い部分として認識される一方、ディメタライズされた部分は、
図20Bを用いて説明したように、白い部分として認識される。
【0171】
このように、金属をディメタライズすることによって、機械読取可能なコードを記録することができる。
【0172】
ところで、機械認証装置70による機械読取可能なコードの認識率や、再生像40の見易さは、ディメタライズ量に依存する。ディメタライズ量は、ディメタライズ前の金属部の面積S1とし、ディメタライズ後の金属部の面積S2とすると、ディメタライズ量(%)=(S1-S2)/S1と定義される。また、認識率は、読み取ったコードのうち、認識したコードの比率である。
【0173】
図23は、金属の反射層24のうち非反射としたい部位におけるディメタライズ量と、機械読取可能なコードの認識率および再生像40の見易さとの関係を示すテーブルである。
【0174】
金属の反射層24のディメタライズ量が大きいほど、機械読取可能なコードとしてのコントラストが上がるために、認証し易くなるので、単位時間当たりの認識率は高くなる一方、再生像40の明るさは低下するので、再生像40は見難くなる。
【0175】
逆に、ディメタライズ量が小さいほど、再生像40は明るくなり、見易くなるものの、機械読取可能なコードとしてのコントラストは低下するので、認識率は下がる。
【0176】
図23は、金属の反射層24のうち、非反射としたい部位におけるディメタライズ量が、30(%)以上、70(%)以下であれば、良好な視認性と、再生像40の見易さとを両立させることができることを示している。
【0177】
したがって、本発明の実施形態に係る一体化3次元表示体では、金属の反射層24のうち非反射としたい部位(例えば、機械読取可能なコードにおいて白く表示する部位)の金属の30(%)以上、70(%)以下をディメタライズする。
【0178】
次に、本発明の実施形態に係る一体化3次元表示体を構成する各部位の材料について説明する。
【0179】
基材12に適用する材料に、ガラス基材のようなリジッドなものを適用することも、フィルム基材を適用することもできる。基材12は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)等のプラスチックフィルムとでき、記録面14を設けた際にかかる熱や圧力等によって変形や変質の少ない材料が適している。なお、用途や目的によっては紙や合成紙、プラスチック複層紙や樹脂含浸紙等を基材12とすることもできる。
【0180】
剥離層27は、樹脂および滑剤で形成できる。樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等が好適である。樹脂としては、アクリル樹脂やポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂を適用することができる。また、滑剤としては、ポリエチレンパウダー、パラフィンワックス、シリコーン、カルナバロウ等のワックスが好適である。これらは剥離層27として、基材12にグラビア印刷法やマイクログラビア法等のような周知の塗布方式によって形成される。剥離層27の厚みは、0.1(μm)以上、2(μm)以下の範囲内とすることができる。剥離層27は、記録面14や、2次元情報を保護するため、ハードコート性を有することができる。ハードコート性は、鉛筆硬度試験(JIS K5600-5-4)において、H以上5H以下の硬度とすることができる。
【0181】
エンボス層23は、樹脂を母材とすることができる。樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、ラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性材料、電子線硬化性樹脂等が好適である。樹脂として、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂の熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレートを適用することができる。エンボス層23の厚みは、0.5(μm)以上、5(μm)以下の範囲とすることができる。
【0182】
反射層24の材質は、金属とすることができる。金属の反射層24は、レーザを吸収しやすくエングレービングに適している。なお、金属の反射層24としては、アルミニウム、銀、スズ、クロム、ニッケル、銅、金等を適用することができる。また、反射層24の材質は金属化合物とできる。金属化合物の反射層24として、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化ケイ素酸化鉄、を適用できる。また、酸化ケイ素はSi2O3、SiO等とできる。金属化合物、酸化ケイ素の反射層24は、透光性とすることができる。また、反射層24は、エンボス層23の全面または一部に形成されている。または、反射層24は、単層または多層である。金属層と、金属化合物または酸化ケイ素の2層の反射層24とからなる多層とすることができる。この反射層24は、金属層が一部に形成されている場合、金属層が形成された領域を選択的にエングレービングし、2次元情報を記録できる。特に金属層の外形を彩文柄等にすることで、偽造耐性を向上できる。
【0183】
反射層24の材質は、金属以外の無機化合物とすることもできる。無機化合物は、屈折率が高く反射率を高めやすい。
【0184】
金属、金属化合物、あるいは無機化合物からなる反射層24を形成するために、気相堆積法を適用することができる。
【0185】
気相堆積法としては蒸着、CVD、スパッタを適用できる。反射層24の厚みは、40(nm)以上、1000(nm)以下の範囲内が好ましい。40(nm)以上であれば、レーザエングレービング時に、ディメタライズ部の輪郭がクリアとなる。1000(nm)以下であれば、レーザエングレービング時等での反射層のワレを防止できる。反射層24の反射率は、30(%)以上、95(%)以下の範囲内が好ましい。反射層24の反射率が30(%)以上であれば、十分な反射が得られる。一方、反射層24の反射率が、95(%)よりも高ければ十分な像の明るさ得られるが、反射層24の加工が困難なる。
【0186】
反射層24はまた、レーザ光を吸収するインキを用いて形成することもできる。インキは、印刷方式に応じて、オフセットインキ、活版インキ、およびグラビアインキ等とすることができる。また、組成の違いに応じて、樹脂インキ、油性インキ、および水性インキとすることもできる。また、乾燥方式の違いに応じて、酸化重合型インキ、浸透乾燥型インキ、蒸発乾燥型インキ、および紫外線硬化型インキとすることもできる。また、照明角度または観察角度に応じて色が変化する機能性インキを適用することもできる。このような機能性インキとしては、光学的変化インキ(Optical Variable Ink)、カラーシフトインキ、およびパールインキを適用することができる。
【0187】
図2、
図20A、および
図20Bで説明する一体化3次元表示体は、対象物26に貼り付けられている。この貼り付けは、熱圧転写で実現できる。言い換えれば、貼り付けの加工は、熱圧転写とできる。対象物26は、印刷体とすることができる。対象物26は、紙幣、クーポン、カード、ボード、ポスター、タグ、シール等である。カード、ボード、タグは、一般に平坦な表面を有し、コードの読み取り性もよく、3D像の歪みも少ない。対象物26の材質は、紙、ポリマー等である。紙、ポリマー等は粘着層25を介して貼り付け可能である。また、紙、ポリマー以外にも、金属、セラミック等でもよく、粘着層25を介して貼り付け可能なものであれば、特に限定されない。
【0188】
粘着層25は、一体化3次元表示体10を対象物26と密着できれば良く、材質は問わないが、タック性の粘着剤や熱可塑接着材等とすることができる。
【0189】
また、一体化3次元表示体10の表面に、擦れ等によって傷が付いてしまうと、再生像40にボケが発生する恐れがある。このため、一体化3次元表示体10の表面に、図示しない保護層を設けても良い。保護層は、ハードコート性を付与することもできる。ハードコート性は、鉛筆硬度試験(JIS K5600-5-4)において、H以上5H以下の硬度とすることができる。これによって、一体化3次元表示体10の表面が、擦れ等によって傷付くことを阻止することができる。
【0190】
一体化3次元表示体10の表面の20°グロス(Gs(20°))は、15以上、70以下であることが好ましい。20°グロス(Gs(20°))が15に満たない場合、防眩性が強くなり、集光点Snがうまく結像しなくなる。
【0191】
一方、20°グロス(Gs(20°))が70を超える場合、防眩性が不十分なため再生像40に反射光が映りこみ、再生像40の撮像、観察が困難となる。なお、より好ましい20°グロス(Gs(20°))は、20以上、60以下の範囲内である。
【0192】
また、記録面14の透過像鮮明度(C(0.125)+C(0.5)+C(1.0)+C(2.0))の値は、200(%)以上であることが好ましい。また、記録面14のヘイズ(Hz)を、1.0(%)以上、25(%)以下とすることができる。20°グロスの測定は、光沢度計(BYK-Gardner製micro-TRI-gloss)を使用して、JIS-K7105-1981に基づきを測定した。透過鮮明度の測定は、写像測定器(スガ試験機社製、商品名;ICM-1DP)を用い、JIS-K7105-1981に基づき測定した。
【0193】
防眩性フィルムを透過する光は、移動する光学くしを通して測定した際の最高波長Mおよび最低波長mから、C=(M-m)/(M+m)×100の式に基づく計算により求められる。透過像鮮明度C(%)は、値が大きいほど、画像が鮮明で、良好であることを表す。測定には4種類の幅の光学くし(0.125(mm)、0.5(mm)、1.0(mm)、2.0(mm))を適用したので、100(%)×4=400(%)が最大値となる。
【0194】
へイズ(Hz)は、ヘイズメータ(日本電色工業製NDH2000)を用いJIS-K7105-1981に準じてヘイズ(Hz)を測定した。
【0195】
全光線反射率は、JIS-K7105に準じ、日立ハイテクノロジーズ社製分光光度計であるU-4100を測定装置とし、積分球で全光線を集めることで計測できる。
【0196】
なお、
図19Aおよび
図19Bに説明する断面構成を有する一体化3次元表示体11の他の実施形態として、剥離層27を省略し、基材12に記録面14を直接積層することもできる。この場合、剥離層27がないことから、粘着層25によって対象物26に貼り付けられた後も、基材12が残る。
【0197】
基材12が印刷層を形成する場合、マット調の用紙を適用するのが好ましい。マット調の用紙としては、上質紙、中質紙、マットコート紙、アート紙等が挙げられる。印刷層は、インキを用いて形成することもできる。
【0198】
インキは、顔料インキ、染料インキとすることができる。顔料インキは、無機化合物のみならず、有機物とすることもできる。無機物の顔料は、黒鉛、コバルト、チタン等である。有機物の顔料は、フタロシアニン化合物、アゾ顔料、有機錯体等である。また、蛍光性、りん光性の顔料を適用することもできる。
【0199】
また、顔料を、ポリマーの母材に分散し、印刷することによって印刷層を形成することもできる。ポリマーの母材としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ロジン等とすることができる。顔料の添加量は、0.1(%)以上、10%(以下)が好ましい。染料インキは、有機物の染料インキを適用できる。
【0200】
有機物の染料は、天然染料、合成染料がある。合成染料は、アゾ染料、有機錯体染料等である。また、蛍光性、りん光性の染料を適用できる。染料を、ポリマーの母材に分散し、印刷することによって印刷層を形成することもできる。ポリマーの母材は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ロジン等とすることができる。染料の添加量は、0.5%以上、30%以下が好ましい。
【0201】
本発明の実施形態に係る識別情報記録方法が適用された一体化3次元表示体によれば、上述したように、計算要素区画16を設けることによって、計算機による計算時間を短縮し、空間情報のノイズを減らし、鮮明なホログラムを得ることができる。
【0202】
この計算では特に、位相角φを計算し、記録することができる。このような位相型ホログラムは、高い回折効率を実現しながら、光の位相成分のみを変調することができる。このため、明るさが低減することなく、高輝度を保ったまま光を制御することができる。
【0203】
また、位相角φを記録するための領域を、重複領域19内に限定することによって、計算機による計算時間をさらに短縮することもできる。それに加えて、一体化3次元表示体10に当たる光の割合を制御することもできる。
【0204】
さらには、計算要素区画16内における、位相角記録領域18以外の部分を位相角非記録領域20と定義すると、集光点Snにおいて再生される再生像40の明るさを、位相角非記録領域20を設けない場合に対して、(位相角記録領域18)/(位相角記録領域18+位相角非記録領域20)だけ暗くすることができる。これによって、光の明暗を制御することができる。
【0205】
また位相角記録領域18に光が照射された場合にのみ、3次元の再生像40を再生することもできる。すなわち、位相角記録領域18が大きいほど、明るい再生像40を再生することができ、小さいほど、暗い再生像40しか再生しないようにすることができる。また、暗い再生像40しか再生できない代わりに、位相角非記録領域20を別の光学要素として適用することもできる。
【0206】
さらにまた、重複領域19内を1種類の単色区画22から構成することで、モノクロで3次元再生することができる。重複領域19内を複数種類の単色区画22から構成することで、カラーで3次元再生することができる。
【0207】
また、記録面14上に2次元情報50を、再生像40の少なくとも一部と記録面14の深さ方向において重なるように配置することによって、耐偽造性を各段に高めることもできる。
【0208】
さらには、2次元情報50を記録面14上に配置する場合、重複領域19の全面を覆わないように配置することによって、重複領域19から再生する集光点Snを消さないようにすることができる。
【0209】
なお、再生像40および2次元情報50のうちの少なくとも何れかを、個人認証情報として適用することができる。あるいは、動的な3次元の再生像40と、非動的な文字や絵柄の2次元情報50を組み合わせて表示することもできる。また、文字や絵柄の2次元情報50の耐偽造性を高めることもできる。
【0210】
さらに、単色区画22の平面形状、2次元情報50、および再生像40のいずれか1つ、その複合体、または、その組み合わせは、機械読取可能なコードを表すことができる。機械読取可能なコードは、QRコード、バーコード、データマトリックス等とすることができる。これにより耐偽造性をさらに高めた可変コードを作製することもできる。
【0211】
また、計算要素区画16内の、位相角非記録領域20に、位相角以外の情報を記録することによって、位相角非記録領域20上で、光の散乱、反射、および回折特性といった、3次元の再生像40の光の位相成分以外を制御することもできる。
【0212】
さらには、位相角を画素の深さに変換し、重複領域19に記録することもできる。
【0213】
さらにまた、記録面14上において、他の計算要素区画16と重ならないように配置されている計算要素区画16を、異なる色で着色することによって、フルカラーで3次元の再生像40を再生することもできる。さらに、記録面14の表面に、金属の反射層24を備えることによって、光の反射効率を高め、より明るい再生像40を再生することもできる。
【0214】
また、一体化3次元表示体10、11を、対象物26に貼り付けることもできる。さらには、一体化3次元表示体10、11は、一般的なオフィス環境等では蛍光灯等の照明のサイズや数によって、再生像40がぼけ、視認することができないが、点光源であるLEDや、スマートフォンやレジリーダの光源を照射し、再生像40を視認することができる。
【0215】
また、反射層24が金属である場合、この金属をレーザエングレービングによってディメタライズすることによって、機械読取可能なコードを記録できる。このパターンに、識別情報を記録することもできる。なお、機械読取可能なコードに関しては、ディメタライズ量が大きくなるほど、認証し易くなるものの、3次元の再生像40の明るさは低下するので、金属の反射層24のうち非反射としたい部位の金属の30(%)以上70(%)以下をディメタライズすることによって、コードパターンの認証のしやすさと、再生像40のための十分な明るさとを両立させることができる。
【0216】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る識別情報記録方法が適用された一体化3次元表示体によれば、虹色の色ずれの発生しない量産性の高いフルカラー再生可能な3次元像と、機械読取可能なコードとを複合して提供することができる。
【0217】
(第1の別の実施形態)
本発明の第1の別の実施形態について説明する。本実施形態は、他の実施形態と組合せられる。
【0218】
以下では、本発明の第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0219】
本発明の第1の実施形態では、位相角に応じた画素の深さTを有する単色区画22を形成するためにスタンパーを用いることについて説明した。しかしながら、他の手法として、ハロゲン化銀露光材料を露光現像し、漂白後現像銀をハロゲン化銀などの銀塩に変えて透明にすることもできる。あるいは光によって屈折率や表面の形状が変化するサーモプラスチック等を利用することもできる。
【0220】
このような構成によっても、反射光を集光点Snに集光させ、所望するホログラムの再生像40を再生することができ、第1の実施形態で説明したように、虹色の色ずれの発生しない量産性の高いフルカラー再生可能な3次元像と、機械読取可能なコードとを複合して提供することができる。
【0221】
(第2の別の実施形態)
本発明の第2の別の実施形態について説明する。本実施形態は、他の実施形態と組合せられる。
【0222】
以下でもまた、本発明の第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0223】
本発明の第1の実施形態では、ホログラムの再生像40を再生するために、重複領域19の対応する画素に、位相成分に基づいて計算された位相角φを記録したり、位相角φに応じた画素gの深さTを記録することを説明した。
【0224】
本発明の第2の別の実施形態では、ホログラムの再生像40を再生するために、重複領域19の対応する画素gに、位相角φに応じた深さTを記録することに代えて、位相角φに応じたボイド量に変調されたボイドを埋め込む。
【0225】
図24は、位相角に応じたボイド量を有するボイドが画素に埋め込まれた状態の一例を示す断面図である。
【0226】
これは、
図24に示すように、重複領域19における単色区画22を構成する各画素gに、各画素gの座標において算出された位相角φに応じたボイド量を有するボイドを埋め込むことによってなされる。
【0227】
図24には2つの単色区画22(#1)、(#2)が示されており、単色区画22(#1)における画素gのうちの何れかは、単色区画22(#1)において計算された位相角φに応じたボイド量に変調されたボイドV1が埋め込まれている。
【0228】
同様に、単色区画22(#2)における画素gのうちの何れかは、単色区画22(#2)において計算された位相角φに応じたボイド量に変調されたボイドV2が埋め込まれている。
【0229】
このような構成によっても、反射光を集光点Snに集光させ、所望するホログラムの再生像40を再生することができ、本発明の第1の実施形態で説明したように、虹色の色ずれの発生しない量産性の高いフルカラー再生可能な3次元像と、機械読取可能なコードとを複合して提供することが可能となる。
【0230】
なお、本願発明は、本発明の上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本発明の各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、本発明の上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。