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特許7388376遠隔支援システム、遠隔支援方法、及び遠隔支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】遠隔支援システム、遠隔支援方法、及び遠隔支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231121BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20231121BHJP
   B60W 30/095 20120101ALI20231121BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60W60/00
B60W30/095
G08G1/09 V
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021027860
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022129233
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 勇介
(72)【発明者】
【氏名】河内 太一
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/077739(WO,A1)
【文献】特開2007-310698(JP,A)
【文献】特表2021-504812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 60/00
B60W 30/095
G08G 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転を行う車両が自動運転を継続することが困難になると予測される場合、前記車両の遠隔操作を依頼する遠隔操作要求を遠隔オペレータに対して発信する遠隔支援システムであって、
少なくとも一つのプログラムが格納された記憶装置と、
前記少なくとも一つの記憶装置と結合された少なくとも一つのプロセッサと、を備え、
前記少なくとも一つのプロセッサは、前記少なくとも一つのプログラムの実行により、
前記車両の運転環境情報を取得する処理と、
前記運転環境情報に基づいて生成された前記車両の将来の走行軌道に基づき、前記車両が前記自動運転を継続することが困難になるかどうかを判定する判定処理と、
を実行するように構成され、
前記判定処理は、
前記運転環境情報に基づいて検出された検出物標の確からしさの度合を表す尤度指標値を取得し、取得した前記尤度指標値が、所定の判定閾値よりも高い場合に、前記検出物標を回避対象として設定する処理と、
前記運転環境情報に基づいて、前記回避対象の将来の予測軌道を生成する予測軌道生成処理と、
を含み、前記予測軌道と前記走行軌道とに基づいて、前記車両が前記自動運転を継続することが困難になるかどうかを判定するように構成され、
前記判定処理は、
第二評価基準に比べて前記車両の安全性が重視されるように前記判定閾値が規定された第一評価基準に基づいて前記判定処理を実行する処理と、
前記第一評価基準に比べて前記車両の走行効率が重視されるように前記判定閾値が規定された第二評価基準に基づいて前記判定処理を実行する処理と、を含み、
前記第二評価基準に規定された前記判定閾値は、前記第一評価基準に規定された前記判定閾値に比べて高い値であり、
前記少なくとも一つのプロセッサは、前記少なくとも一つのプログラムの実行により、
前記第一評価基準に基づいて前記判定処理を実行した場合の判定結果に基づいて、前記遠隔操作要求の発信要否を判定する第一判定処理と、
前記第二評価基準に基づいて前記判定処理を実行した場合の判定結果に基づいて、前記走行軌道の修正要否を判定する第二判定処理と、
を実行するように構成される遠隔支援システム。
【請求項2】
自動運転を行う車両が自動運転を継続することが困難になると予測される場合、プロセッサが前記車両の遠隔操作を依頼する遠隔操作要求を遠隔オペレータに対して発信する遠隔支援方法であって、
運転環境情報に基づいて生成された前記車両の将来の走行軌道に基づき、前記車両が前記自動運転を継続することが困難になるかどうかを判定する判定処理は、
前記運転環境情報に基づいて検出された検出物標の確からしさの度合を表す尤度指標値を取得し、取得した前記尤度指標値が、所定の判定閾値よりも高い場合に、前記検出物標を回避対象として設定する処理と、
前記運転環境情報に基づいて、前記回避対象の将来の予測軌道を生成する予測軌道生成処理と、
を含み、前記予測軌道と前記走行軌道とに基づいて、前記車両が前記自動運転を継続することが困難になるかどうかを判定するように構成され、
前記判定処理は、
第二評価基準に比べて前記車両の安全性が重視されるように前記判定閾値が規定された第一評価基準に基づく判定処理と、
前記第一評価基準に比べて前記車両の走行効率が重視されるように前記判定閾値が規定された第二評価基準に基づく判定処理と、を含み、
前記第二評価基準に規定された前記判定閾値は、前記第一評価基準に規定された前記判定閾値に比べて高い値であり、
前記プロセッサが、
前記第一評価基準に基づいて前記判定処理を実行した場合の判定結果に基づいて、前記遠隔操作要求の発信要否を判定し、
前記第二評価基準に基づいて前記判定処理を実行した場合の判定結果に基づいて、前記走行軌道の修正要否を判定する
ことを特徴とする遠隔支援方法。
【請求項3】
自動運転を行う車両が自動運転を継続することが困難になると予測される場合、前記車両の遠隔操作を依頼する遠隔操作要求を遠隔オペレータに対して発信することをプロセッサに実行させるプログラムであって、
前記プログラムは、
前記車両の運転環境情報を取得する処理と、
前記運転環境情報に基づいて生成された前記車両の将来の走行軌道に基づき、前記車両が前記自動運転を継続することが困難になるかどうかを判定する判定処理と、
を前記プロセッサに実行させ、
前記プロセッサが実行する前記判定処理は、
前記運転環境情報に基づいて検出された検出物標の確からしさの度合を表す尤度指標値を取得し、取得した前記尤度指標値が、所定の判定閾値よりも高い場合に、前記検出物標を回避対象として設定する処理と、
前記運転環境情報に基づいて、前記回避対象の将来の予測軌道を生成する予測軌道生成処理と、
を含み、前記予測軌道と前記走行軌道とに基づいて、前記車両が前記自動運転を継続することが困難になるかどうかを判定するように構成され、
前記プロセッサが実行する前記判定処理は、
第二評価基準に比べて前記車両の安全性が重視されるように前記判定閾値が規定された第一評価基準に基づいて前記判定処理を実行する処理と、
前記第一評価基準に比べて前記車両の走行効率が重視されるように前記判定閾値が規定された第二評価基準に基づいて前記判定処理を実行する処理と、を含み、
前記第二評価基準に規定された前記判定閾値は、前記第一評価基準に規定された前記判定閾値に比べて高い値であり、
前記プログラムは、
前記第一評価基準に基づいて前記判定処理を実行した場合の判定結果に基づいて、前記遠隔操作要求の発信要否を判定する第一判定処理と、
前記第二評価基準に基づいて前記判定処理を実行した場合の判定結果に基づいて、前記走行軌道の修正要否を判定する第二判定処理と、
を前記プロセッサに実行させる
ことを特徴とする遠隔支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠隔オペレータに対して車両の遠隔操作要求の発信を行う遠隔支援システム、遠隔支援方法、及び遠隔支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、遠隔操作者に遠隔運転を実行させるための遠隔運転制御装置に関する技術が開示されている。この装置では、自動運転を行う車両から送信された遠隔操作リクエストに応じて遠隔操作者による車両の遠隔操作が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-77649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転を行う車両が自動運転を継続することが困難になると予測される場合、遠隔操作要求を発信するとともに、遠隔操作を待つための走行計画に修正する状況を考える。この場合、安全性を重視して自動運転の継続可否を予測すると、早いタイミングで回避対象を検出して遠隔操作要求を発信することができるが、その分早いタイミングから減速が行われることがあり、走行効率や快適性が損なわれるおそれがある。一方において、走行効率を重視して自動運転の継続可否を予測すると、遠隔操作要求を発信するタイミングが遅れることが予想される。この場合、遠隔操作を待つために車両が路上に停止し続けることになり、交通流を乱すおそれがある。このように、自動運転の最中の車両から遠隔操作要求を発信する場合、安全性と走行効率との両立に課題がある。
【0005】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたもので、走行効率の低下を防ぎつつ、安全性を重視して遠隔操作要求を発信することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、第1の開示は、自動運転を行う車両が自動運転を継続することが困難になると予測される場合、車両の遠隔操作を依頼する遠隔操作要求を遠隔オペレータに対して発信する遠隔支援システムに適用される。遠隔支援システムは、少なくとも一つのプログラムが格納された記憶装置と、少なくとも一つの記憶装置と結合された少なくとも一つのプロセッサと、を備える。少なくとも一つのプロセッサは、少なくとも一つのプログラムの実行により、車両の運転環境情報を取得する処理と、運転環境情報に基づいて生成された車両の将来の走行軌道に基づき、車両が自動運転を継続することが困難になるかどうかを判定する判定処理と、を実行するように構成される。判定処理は、運転環境情報に基づいて検出された検出物標の確からしさの度合を表す尤度指標値を取得し、取得した尤度指標値が、所定の判定閾値よりも高い場合に、検出物標を回避対象として設定する処理と、運転環境情報に基づいて、回避対象の将来の予測軌道を生成する予測軌道生成処理と、を含み、予測軌道と走行軌道とに基づいて、車両が自動運転を継続することが困難になるかどうかを判定するように構成される。また、判定処理は、第二評価基準に比べて車両の安全性が重視されるように判定閾値が規定された第一評価基準に基づいて判定処理を実行する処理と、第一評価基準に比べて車両の走行効率が重視されるように判定閾値が規定された第二評価基準に基づいて判定処理を実行する処理と、を含む。第二評価基準に規定された判定閾値は、第一評価基準に規定された判定閾値に比べて高い値である。少なくとも一つのプロセッサは、少なくとも一つのプログラムの実行により、第一評価基準に基づいて判定処理を実行した場合の判定結果に基づいて、遠隔操作要求の発信要否を判定する第一判定処理と、第二評価基準に基づいて判定処理を実行した場合の判定結果に基づいて、走行軌道の修正要否を判定する第二判定処理と、を実行するように構成される。
【0012】
第2の開示は、自動運転を行う車両が自動運転を継続することが困難になると予測される場合、プロセッサが車両の遠隔操作を依頼する遠隔操作要求を遠隔オペレータに対して発信する遠隔支援方法に適用される。運転環境情報に基づいて生成された車両の将来の走行軌道に基づき、車両が自動運転を継続することが困難になるかどうかを判定する判定処理は、運転環境情報に基づいて検出された検出物標の確からしさの度合を表す尤度指標値を取得し、取得した尤度指標値が、所定の判定閾値よりも高い場合に、検出物標を回避対象として設定する処理と、運転環境情報に基づいて、回避対象の将来の予測軌道を生成する予測軌道生成処理と、を含み、予測軌道と走行軌道とに基づいて、車両が自動運転を継続することが困難になるかどうかを判定するように構成される。また、判定処理は、第二評価基準に比べて車両の安全性が重視されるように判定閾値が規定された第一評価基準に基づく判定処理と、第一評価基準に比べて車両の走行効率が重視されるように判定閾値が規定された第二評価基準に基づく判定処理と、を含む。第二評価基準に規定された判定閾値は、第一評価基準に規定された判定閾値に比べて高い値である。遠隔支援方法は、プロセッサが、第一評価基準に基づいて判定処理を実行した場合の判定結果に基づいて、遠隔操作要求の発信要否を判定し、第二評価基準に基づいて判定処理を実行した場合の判定結果に基づいて、走行軌道の修正要否を判定する。
【0013】
第3の開示は、自動運転を行う車両が自動運転を継続することが困難になると予測される場合、車両の遠隔操作を依頼する遠隔操作要求を遠隔オペレータに対して発信することをプロセッサに実行させる遠隔支援プログラムに適用される。遠隔支援プログラムは、車両の運転環境情報を取得する処理と、運転環境情報に基づいて生成された車両の将来の走行軌道に基づき、車両が自動運転を継続することが困難になるかどうかを判定する判定処理と、をプロセッサに実行させる。プロセッサが実行する判定処理は、運転環境情報に基づいて検出された検出物標の確からしさの度合を表す尤度指標値を取得し、取得した尤度指標値が、所定の判定閾値よりも高い場合に、検出物標を回避対象として設定する処理と、運転環境情報に基づいて、回避対象の将来の予測軌道を生成する予測軌道生成処理と、を含み、予測軌道と走行軌道とに基づいて、車両が自動運転を継続することが困難になるかどうかを判定するように構成される。また、プロセッサが実行する判定処理は、第二評価基準に比べて車両の安全性が重視されるように判定閾値が規定された第一評価基準に基づいて判定処理を実行する処理と、第一評価基準に比べて車両の走行効率が重視されるように判定閾値が規定された第二評価基準に基づいて判定処理を実行する処理と、を含む。第二評価基準に規定された判定閾値は、第一評価基準に規定された判定閾値に比べて高い値である。そして、遠隔支援プログラムは、第一評価基準に基づいて判定処理を実行した場合の判定結果に基づいて、遠隔操作要求の発信要否を判定する第一判定処理と、第二評価基準に基づいて判定処理を実行した場合の判定結果に基づいて、走行軌道の修正要否を判定する第二判定処理と、をプロセッサに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、遠隔操作要求を発信するかどうかを判定するための判定処理では、安全を重視した第一評価基準に基づき自動運転を行う車両が自動運転を継続することが困難になるかどうかを判定することができる。また、走行軌道の修正要否では、走行効率を重視した第二評価基準に基づき、自動運転を行う車両が自動運転を継続することが困難になるかどうかを判定することができる。このような構成によれば、走行軌道の修正については走行効率を重視することができ、また、遠隔操作要求の要否判定では安全を重視することができる。これにより、走行効率の低下を防ぎつつ、安全性を重視して遠隔操作要求を発信することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1の遠隔支援システムの概要を説明するための構成例を示すブロック図である。
図2】自動運転車両の構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施の形態1の遠隔支援システムにおいて遠隔操作が実行される状況の一例を説明するための図である。
図4】実施の形態1の遠隔支援システムにおいて遠隔操作が実行される状況の一例を説明するための図である。
図5】自動運転制御装置が備える機能の一部を示す機能ブロック図である。
図6】自動運転制御装置において実行される処理のフローチャートである。
図7】実施の形態1の自動運転制御装置の変形例を説明するための図である。
図8】実施の形態1の自動運転制御装置の他の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この開示が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造やステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この開示に必ずしも必須のものではない。
【0017】
実施の形態1.
1-1.実施の形態1の遠隔支援システムの全体構成
先ず、実施の形態1の遠隔支援システムの概略構成を説明する。図1は、実施の形態1の遠隔支援システムの概要を説明するための構成例を示すブロック図である。図1に示す遠隔支援システム100は、自動運転車両10が自動運転を継続することが困難になると予測される場合、自動運転車両10の走行を制御するための遠隔操作を行うためのシステムである。以下、遠隔支援システム100に利用される自動運転車両10を、単に「車両10」とも表記する。
【0018】
遠隔操作とは、車両の加速、減速、及び操舵の何れかの操作指示を含む遠隔運転だけでなく、車両10の周辺環境の認知或いは判断の一部を支援する運転支援も含む。遠隔操作は、遠隔地に待機する遠隔オペレータによって行われる。遠隔支援システム100に利用される遠隔オペレータの数に限定はない。また、遠隔支援システム100に利用される車両10の台数にも限定はない。
【0019】
図1に示すように、遠隔支援システム100は、車両10と、遠隔操作装置2と、を含む。遠隔操作装置2は、遠隔サーバ4と、遠隔オペレータが遠隔操作の入力を行うための遠隔オペレータインターフェース6と、を含む。遠隔サーバ4は、通信ネットワークNを介して車両10と通信可能に接続されている。遠隔サーバ4には、車両10から各種の情報が送られる。遠隔オペレータインターフェース6は、例えば車両のステアリングハンドル、アクセルペダル、及びブレーキペダルを模擬した入力装置を備える。或いは、遠隔オペレータインターフェース6は、運転支援において判断結果を入力するための入力装置を備える。
【0020】
遠隔支援システム100では、自動運転を行う車両10が自動運転を継続することが困難になると予測される場合、車両10の遠隔操作を依頼する遠隔操作要求が車両10から発信される。遠隔支援システム100では、発信される遠隔操作要求に応じて、遠隔オペレータが遠隔操作装置2を介して遠隔操作を行う。典型的には、遠隔オペレータは、遠隔オペレータインターフェース6に対して遠隔操作の入力を行う。遠隔サーバ4は、通信ネットワークNを介して車両10に対して遠隔操作指示を発信する。車両10は、遠隔操作装置2から送られる遠隔操作指示に従って走行する。なお、遠隔操作装置2の構成については、公知の技術を採用することができるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0021】
1-2.実施の形態1の自動運転車両の構成
次に、実施の形態1の遠隔支援システム100に適用される自動運転車両10の自動運転に係わる構成の一例を説明する。図2は、自動運転車両10の構成の一例を示すブロック図である。車両10は、自動運転可能な自動運転車両である。ここでの自動運転としては、SAE(Society of Automotive Engineers)のレベル定義におけるレベル3以上の自動運転を想定している。なお、車両10の動力源に限定はない。
【0022】
車両10は、自動運転制御装置40を備えている。自動運転制御装置40は、車両10の自動運転を行うための機能と、遠隔オペレータから発信される遠隔操作指示に従い車両10の遠隔自動運転を行うための機能と、を有している。自動運転制御装置40には、情報取得装置30、通信装置50、及び走行装置60が接続されている。
【0023】
情報取得装置30は、車両位置センサ31、周辺状況センサ32、及び車両状態センサ33を含んで構成されている。
【0024】
車両位置センサ31は、車両10の位置及び方位を検出する。例えば、車両位置センサ31は、GPS(Global Positioning System)センサを含む。GPSセンサは、複数のGPS衛星から送信される信号を受信し、受信信号に基づいて車両10の位置及び方位を算出する。車両位置センサ31は、周知の自己位置推定処理(localization)を行い、車両10の現在位置の精度を高めてもよい。車両位置センサ31で検出された情報は、周辺環境情報の一部として自動運転制御装置40に随時送信される。
【0025】
周辺状況センサ32は、車両10の周辺情報を認識する。例えば、周辺状況センサ32は、カメラ(撮像装置)、ライダー(LIDAR: Laser Imaging Detection and Ranging)、及びレーダ等が例示される。周辺情報は、周辺状況センサ32によって認識された物標情報を含んでいる。物標としては、周辺車両、歩行者、路側物、障害物、白線、信号、等が例示される。物標情報は、車両10に対する物標の相対位置及び相対速度を含んでいる。周辺状況センサ32において認識された情報は、周辺環境情報の一部として自動運転制御装置40に随時送信される。
【0026】
車両状態センサ33は、車両10の状態を示す車両情報を検出する。車両状態センサ33としては、車速センサ、横加速度センサ、ヨーレートセンサなどが例示される。車両状態センサ33で検出された情報は、車両運動情報の一部として自動運転制御装置40に随時送信される。
【0027】
通信装置50は、車両の外部と通信を行う。例えば、通信装置50は、通信ネットワークNを介して遠隔操作装置2と各種情報の送信及び受信を行う。また、通信装置50は、路側機、周辺車両、周囲のインフラ、等の外部装置と通信を行う。路側機は、例えば渋滞情報、車線別の交通情報、一時停止等の規制情報、死角位置の交通状況の情報等を送信するビーコン装置である。また、外部装置が周辺車両である場合、通信装置50は、周辺車両との間で車車間通信(V2V通信)を行う。さらに、外部装置が周辺のインフラである場合、通信装置50は、周囲のインフラとの間で路車間通信(V2I通信)を行う。
【0028】
走行装置60は、操舵装置、駆動装置、及び制動装置を含んでいる。操舵装置は、車両10の車輪を転舵する。駆動装置は、車両10の駆動力を発生させる駆動源である。駆動装置としては、エンジン又は電動機が例示される。制動装置は、車両10に制動力を発生させる。走行装置60は、車両10の操舵、加速、及び減速に関わる走行制御量に基づいて車両10の走行を制御する。
【0029】
自動運転制御装置40は、自動運転及び遠隔自動運転における各種処理を行う情報処理装置である。典型的に、自動運転制御装置40は、少なくとも一つのプロセッサ42、少なくとも一つの記憶装置44、および、少なくとも一つの入出力インターフェース48を備えるマイクロコンピュータである。自動運転制御装置40は、ECU(Electronic Control Unit)とも呼ばれる。
【0030】
記憶装置44には、車両10の運転環境に関する運転環境情報46が格納される。運転環境情報46は、上述の周辺環境情報及び車両運動情報を含む。記憶装置44としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)等、が例示される。
【0031】
記憶装置44には、地図データベース47が格納されている。地図データベース47は、地図情報を記憶するデータベースである。運転環境情報46は、地図データベース47の地図情報を含んでいる。地図情報には、道路の位置情報、道路形状の情報、レーン数、車線幅、交差点及び分岐点の位置情報、道路の優先度等の交通環境を示す交通環境情報、等が含まれる。なお、地図データベース47は、遠隔操作装置2の遠隔サーバ4等、車両10と通信可能なサーバに格納されていてもよい。
【0032】
プロセッサ42は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。プロセッサ42は、記憶装置44と入出力インターフェース48と結合されている。記憶装置44には、自動運転及び遠隔自動運転に係わる遠隔支援プログラムを含む少なくとも一つのプログラム45が格納されている。プロセッサ42が記憶装置44に格納されたプログラム45を読み出して実行することにより、自動運転制御装置40の各種機能が実現される。
【0033】
入出力インターフェース48は、遠隔操作装置2との間で情報をやり取りするためのインターフェースである。自動運転制御装置40において生成された各種情報、及び後述する遠隔操作要求は、入出力インターフェース48を介して遠隔操作装置2へと出力される。
【0034】
1-3.実施の形態1の遠隔支援システムの特徴
先ず、実施の形態1の遠隔支援システムにおいて、遠隔オペレータによる遠隔操作が実行される状況の一例について説明する。図3及び図4は、実施の形態1の遠隔支援システムにおいて遠隔操作が実行される状況の一例を説明するための図である。
【0035】
図3及び図4には、車線L1を走行する車両10が描かれている。車線L1に隣接する車線L2は、車両10の進行方向とは逆方向に進行する車両の車線である。車線L1及び車線L2は、交差点I1において車線L3と交差している。車両10は交差点I1を右折して車線L3へと進行する予定である。車両10を基準とした交差点I1の反対側には、車線L2を走行する対向車両V1が描かれている。車両10同様に、対向車両V1は交差点I1に進入する予定である。
【0036】
遠隔支援システムでは、車両10が自動運転を継続することが困難になると予測される場合、遠隔操作装置2に対して遠隔操作要求RQが発信される。典型的には、遠隔支援システムでは、車両10が回避対象の物標に衝突することが予測される場合、遠隔操作装置2に対して遠隔操作要求RQが発信される。図3に示す交通環境の例では、対向車両V1が回避対象の物標である。自動運転制御装置40は、車両10の走行軌道TR1と、対向車両V1の予測軌道TR2と、を生成する。そして、自動運転制御装置40は、走行軌道TR1と予測軌道TR2に基づいて、車両10が対向車両V1に衝突することが予測されるかどうかを判定する。この判定処理は、以下「衝突判定処理」と呼ばれる。衝突判定処理では、例えば、走行軌道TR1と予測軌道TR2とが交差するかどうかを判定する交差判定処理を行う。そして、交差判定処理において反転が認められると、車両10が対向車両V1に衝突することが予測されると判定する。
【0037】
車両10が対向車両V1に衝突することが予測されると判定された場合、自動運転制御装置40は、遠隔操作装置2に対して遠隔操作要求RQを発信するとともに、車両10の遠隔運転に必要な情報として、情報取得装置30にて取得された運転環境情報46を送信する。遠隔操作要求RQを受けた遠隔操作装置2は、遠隔オペレータによる遠隔自動運転を行う。典型的には、遠隔オペレータは、自動運転制御装置40から受信した運転環境情報46に基づいて、交差点I1の通過判断を行う。そして、遠隔オペレータは、遠隔オペレータインターフェース6を操作することによって、車両10に対して遠隔操作指示を発信する。ここでの遠隔操作指示は、走行装置60の操作量でもよいし、また、「進行」、「停止」、「右折」等の判断結果の指示でもよい。車両10の自動運転制御装置40は、遠隔操作装置2から送られる遠隔操作指示に従って交差点I1を通過する。
【0038】
ここで、衝突判定処理の演算では、評価基準を規定した種々のパラメータが利用されている。これらのパラメータは、記憶装置44に格納されている。パラメータには、例えば、走行効率を重視した第二評価基準としてのパラメータAと、安全性を重視した第一評価基準としてのパラメータBと、が含まれる。パラメータAは、パラメータBに比べて検出物標を回避対象として扱うための基準が高い。或いは、パラメータAは、パラメータBに比べて回避対象が交通規則或いは慣習を順守する順守可能性が高いものとして扱う。或いは、パラメータAは、パラメータBに比べて回避対象が現在の動作状態を維持する維持可能性が高いものとして扱う。或いは、パラメータAは、パラメータBに比べて回避対象との衝突有無を判定する際に許容される誤差範囲が狭い。
【0039】
図3に示す例では、自動運転制御装置40が走行効率を重視したパラメータAを利用した衝突判定処理を実行した場合を例示している。走行効率を重視したパラメータAを採用すると、安全性を重視したパラメータBを採用した場合と比べて、走行効率が重視される反面、衝突判定が成立する頻度の減少、或いは、衝突判定が成立するタイミングの遅れ、といった傾向が生じる。
【0040】
衝突判定の成立のタイミングが遅くなると、遠隔操作要求RQを発信するタイミングにも遅れが生じる。遠隔操作要求RQを発信してから遠隔オペレータが遠隔操作を開始するまでには、10秒から15秒程度の判断時間が必要となる。このため、遠隔操作要求RQを発信するタイミングが遅れると、車両10は予測衝突位置の手前の所定の停止位置において、遠隔オペレータによる遠隔操作の開始を待つことが必要となる。車両10の道路上での待機動作は、交通流を乱すこと或いは追突等の原因となる可能性がある。
【0041】
一方、図4に示す例では、自動運転制御装置40が安全性を重視したパラメータBを利用した衝突判定処理を実行した場合を示している。安全性を重視したパラメータBを利用した衝突判定処理では、衝突判定の成立のタイミングが早くなる傾向があるため、遠隔操作要求RQを発信するタイミングに遅れは生じない。しかしながら、遠隔操作要求RQの発信タイミングが早くなると、早いタイミングから減速或いは停止を行う走行軌道が生成されてしまい、走行効率や快適性といった要素が損なわれるおそれがある。
【0042】
このように、遠隔操作要求の発信のための衝突判定処理は、遠隔オペレータの判断時間を確保するために早いタイミングで実施することが好ましい。しかしながら、その一方で、走行軌道の修正のための衝突判定処理は、走行効率を高めるために遅いタイミングで実施することが好ましい。
【0043】
そこで、実施の形態1の遠隔支援システム100では、車両10の自動運転の最中の用途に応じて、衝突判定処理に使用するパラメータを使い分ける点に特徴を有している。典型的には、自動運転制御装置40は、遠隔操作要求の要否を判定する第一判定処理のための衝突判定処理において、安全性を重視したパラメータBを利用する。一方、自動運転制御装置40は、走行軌道の修正要否を判定する第二判定処理のための衝突判定処理において、走行効率を重視したパラメータBを利用する。このような衝突判定処理におけるパラメータの使い分けによれば、自動運転の走行効率の低下を抑えつつ安全性を重視した遠隔操作要求の要否判定を行うことが可能となる。
【0044】
以下、実施の形態1の遠隔支援システム100の自動運転制御装置40の機能構成及び具体的処理について説明する。
【0045】
1-4.自動運転制御装置の機能構成
次に、自動運転制御装置40の機能構成の一例について説明する。図5は、自動運転制御装置40が備える機能の一部を示す機能ブロック図である。自動運転制御装置40は、周辺環境情報取得部402、車両運動情報取得部404、地図情報取得部406、走行計画部410、及び遠隔操作要求部460を備えている。
【0046】
周辺環境情報取得部402及び車両運動情報取得部404は、情報取得装置30によって検出された周辺環境情報及び車両運動情報をそれぞれ取得するための機能ブロックである。地図情報取得部406は、地図データベース47に格納されている地図情報を取得するための機能ブロックである。
【0047】
走行計画部410は、遠隔操作要求の発信要否を判定する第一判定処理と車両10の自動運転のための走行軌道の修正要否を判定する第二判定処理と、を行う。
【0048】
典型的には、走行計画部410は、走行軌道生成部412、物標動作予測部414、走行計画生成部420、走行軌道選択部450、及び遠隔操作要求判定部452を備える。
【0049】
走行軌道生成部412は、目的地、車両運動情報及び地図情報から演算される車両10の目標ルート、位置及び速度を用いて、車両10の走行軌道TR1を生成する。生成された走行軌道TR1は、走行計画生成部420に送られる。
【0050】
物標動作予測部414は、自動運転車両10との衝突の可能性のある回避対象の予測軌道TR2を生成する予測軌道生成処理を行う。回避対象は、例えば対向車両、先行車両、交差道路を走行する交差車両、等が例示される。物標動作予測部414は、周辺環境情報及び地図情報から演算される回避対象の位置及び速度を用いて、当該回避対象の予測軌道TR2を演算する。なお、回避対象に対して、右折、左折、直進等、複数の予測がある場合、複数の予測軌道TR2を演算してもよい。演算された予測軌道TR2は、走行計画生成部420に送られる。
【0051】
走行計画生成部420は、衝突判定部430と、走行軌道修正部440と、を備えている。衝突判定部430は、車両10と回避対象との将来の衝突有無の判定結果及び衝突する場合の予測衝突位置CPを算出する。典型的には、衝突判定部430は、走行軌道TR1と予測軌道TR2とが交差する領域を算出する。そして、衝突判定部430は、パラメータAの評価基準を用いて、車両10と回避対象との将来の衝突有無の判定結果及び予測衝突位置CPAを算出する。この処理は、第二評価基準であるパラメータAを用いた衝突判定処理であることから、「第二衝突判定処理」とも呼ばれる。第二衝突判定処理の判定結果及び算出された予測衝突位置CPAは、走行軌道修正部440に送られる。
【0052】
また、衝突判定部430は、パラメータBの評価基準を用いて、車両10と回避対象との将来の衝突有無の判定結果及び予測衝突位置CPBを算出する。この処理は、第一評価基準であるパラメータBを用いた衝突判定処理であることから、「第一衝突判定処理」とも呼ばれる。第一衝突判定処理の判定結果及び予測衝突位置CPBは、遠隔操作要求判定部452に送られる。
【0053】
パラメータBの評価基準を用いた第一衝突判定処理によれば、パラメータAの評価基準よりも安全性が重視される。また、パラメータAの評価基準を用いた第二衝突判定処理にによれば、パラメータBの評価基準よりも走行効率が重視される。以下、パラメータAとパラメータBの具体的な評価基準について幾つか例示する。
【0054】
<回避対象として取り扱うための評価基準>
走行計画部410は、入力される周辺環境情報に含まれる検出物標のうち、車両10への衝突が予測される検出物標を回避対象として取り扱う。パラメータA及びパラメータBには、検出物標を回避対象として取り扱うための評価基準が規定されている。典型的には、パラメータAは、複数の周辺状況センサ32のうち、ライダーとカメラの両方で検出した検出物標を回避対象として取り扱う。これに対して、パラメータBは、複数の周辺状況センサ32のうち、カメラのみで検出した検出物標であっても回避対象として取り扱う。このように、パラメータBの評価基準によれば、パラメータAよりも多数の回避対象が取り扱われることとなる。
【0055】
或いは、周辺環境情報には、検出物標の確からしさ(尤度)の度合を表す尤度指標値が含まれている。走行計画部410は、入力される周辺環境情報に含まれる検出物標のうち、尤度指標値が所定の判定閾値よりも高い物標を回避対象として設定するように取り扱う。パラメータA及びパラメータBには、尤度指標値の判定閾値が規定されている。パラメータAは、パラメータBよりも尤度指標値の判定閾値が高い。このため、パラメータBの評価基準によれば、パラメータAよりも多数の回避対象が取り扱われることとなる。
【0056】
<交通法規或いは交通慣習の順守可能性に関する評価基準>
走行計画部410は、検出物標の交通法規或いは交通慣習に対する順守可能性を予測して、回避対象の予測軌道TR2を生成する。パラメータA及びパラメータBには、回避対象の交通法規或いは交通慣習の順守可能性に関する評価基準が規定されている。パラメータAは、パラメータBよりも回避対象の交通法規或いは交通慣習の順守可能性が高いものとして取り扱う。典型的には、検出物標が一時停止線で停止している非優先車両である場合、パラメータAは、当該非優先車両が発進しないと予測して回避対象の取り扱いを決定或いは予測軌道TR2の生成を行う。これに対し、パラメータBは、当該非優先車両が交通法規或いは交通慣習を無視して発進することも考慮して回避対象の取り扱いの決定或いは予測軌道TR2の生成を行う。
【0057】
或いは、検出物標が前方の対向車線で右折待ちをしている対向車両である場合、パラメータAは、当該対向車両が交通法規或いは交通慣習を順守して右折待ちを継続すると予測して回避対象の取り扱いを決定或いは予測軌道TR2の生成を行う。これに対し、パラメータBは、当該対向車両が交通法規或いは交通慣習を無視して右折することも考慮して回避対象の取り扱いの決定或いは予測軌道TR2の生成を行う。
【0058】
<回避対象の動作の維持可能性に関する評価基準>
走行計画部410は、回避対象の将来の動作の維持可能性を予測して予測軌道TR2を生成する。パラメータA及びパラメータBには、回避対象の将来の動作の維持可能性に関する評価基準が規定されている。パラメータAは、パラメータBよりも回避対象が現状の動作を維持する可能性が高いと予測して回避対象の取り扱いを決定或いは予測軌道TR2の生成を行う。典型的には、検出物標が車両である場合、パラメータAは、当該車両が現状の走行を維持すると仮定して回避対象の取り扱いを決定或いは予測軌道TR2の生成を行う。これに対し、パラメータBは、当該車両が現状の走行を維持するだけでなく異なる走行を行うことも予測して回避対象の取り扱いの決定或いは予測軌道TR2の生成を行う。
【0059】
或いは、検出物標が横断歩道の周辺を歩行する歩行者である場合、パラメータAは、歩行者が歩行を維持すると仮定して横断歩道への到達有無を判定する。これに対し、パラメータBは、当該歩行者が歩行を維持せずに走り出すことも想定して、横断歩道への到達有無を判定する。
【0060】
<許容誤差に関する評価基準>
走行計画部410は、車両10の走行軌道TR1と回避対象の予測軌道TR2とが交差する場合に、車両10が回避対象に衝突する可能性があると予測する。パラメータA及びパラメータBには、軌道の交差判定を行う際の許容誤差に関する評価基準が規定されている。典型的には、パラメータAは、2σの標準偏差までの誤差楕円を考慮して軌道の交差判定を行う。パラメータBは、3σの標準偏差までの誤差楕円を考慮して軌道の交差判定を行う。
【0061】
再び図5に戻り、走行軌道修正部440は、パラメータAの評価基準を用いた第二衝突判定処理の結果に基づいて、走行軌道TR1を修正する。典型的には、第二衝突判定処理の結果が衝突ありである場合、走行軌道修正部440は、車両10の位置及び速度、地図情報、走行軌道TR1、予測軌道TR2、及び予測衝突位置CPAに基づいて、回避対象との衝突を回避するように走行軌道TR1を修正した走行軌道TRA1を生成する。一方、第二衝突判定処理の結果が衝突なしである場合、走行軌道修正部440は、走行軌道TR1をそのまま走行軌道TRA1として生成する。また、走行軌道TRA1の生成と並行して、走行軌道修正部440は、車両10の位置及び速度、地図情報、走行軌道TR1、予測軌道TR2、及び予測衝突位置CPAに基づいて、予測衝突位置CPAの直前又は交差点の進入前の所定の停止位置で停止して遠隔操作を待つように走行軌道TR1を修正した走行軌道TRA2を生成する。生成された走行軌道TRA1及びTRA2は走行軌道選択部450に送られる。
【0062】
遠隔操作要求判定部452は、パラメータBの評価基準を用いた第一衝突判定処理の結果に基づいて、遠隔操作要求の発信要否を判定する。典型的には、第一衝突判定処理の結果が衝突なしである場合、つまり、遠隔操作要求判定部452に入力される予測衝突位置CPBが存在しない場合、遠隔操作要求判定部452は、遠隔操作要求が不要と判定する。また、第一衝突判定処理の結果が衝突ありである場合、遠隔操作要求判定部452は、地図情報或いは周辺環境情報を用いて予測衝突位置CPBにおける交通優先状況を判定する。そして、予測衝突位置CPBでの交通優先状況が、車両10が優先されるべき状況である場合、遠隔操作要求判定部452は、遠隔操作要求が不要であると判定する。また、予測衝突位置CPBでの交通優先状況が、車両10が非優先の状況である場合、遠隔操作要求判定部452は、遠隔操作要求が必要であると判定する。遠隔操作要求の要否の判定結果は、遠隔操作要求部460へ送られる。また、遠隔操作要求の要否の判定結果は、走行軌道選択部450へも送られる。
【0063】
走行軌道選択部450は、遠隔操作要求の要否の判定結果に基づいて、走行装置60に送るべき走行軌道TRを選択する。典型的には、遠隔操作要求が必要と判定された場合、走行軌道選択部450は、走行軌道TRA2を走行軌道TRとして選択する。或いは、遠隔操作要求が不要と判定された場合、走行軌道選択部450は、走行軌道TRA1を走行軌道TRとして選択する。選択された走行軌道TRは、走行装置60に送られる。
【0064】
遠隔操作要求部460は、遠隔操作装置2を操作する遠隔オペレータに対して遠隔操作要求を通信ネットワークNを介して発信するための装置である。遠隔操作要求部460は、遠隔操作要求判定部452から送られた遠隔操作要求の要否に従い、遠隔操作装置2に対して遠隔操作要求RQの発信を行う。
【0065】
1-5.自動運転制御装置で実行される具体的処理
図6は、自動運転制御装置40において実行される処理のフローチャートである。図6に示すルーチンは、車両10の自動運転の最中に、自動運転制御装置40において繰り返し実行される。
【0066】
図6に示すルーチンのステップS100では、走行軌道生成部412において、車両10の走行軌道TR1が生成される。次のステップS102では、物標動作予測部414において、回避対象の予測軌道TR2が生成される。ステップS102の処理が行われると、ステップS110からステップS116までの第一判定処理と、ステップS120からステップS130までの第二判定処理とが並行して行われる。
【0067】
第一判定処理では、先ずステップS110において、安全性を重視したパラメータBの評価基準を用いて、第一衝突判定処理が行われる。典型的には、第一衝突判定処理では、回避対象と車両10との衝突有無の判定及び予測衝突位置CPBの演算が行われる。次のステップS112では、回避対象と車両10との衝突があるかどうかが判定される。ここでは、衝突判定部430は、有効な予測衝突位置CPBが演算されたれた場合に、回避対象と車両10との衝突があると判定する。
【0068】
ステップS112の処理において、回避対象と車両10との衝突がないと判定された場合、遠隔操作要求は不要であると判断することができる。この場合、遠隔操作要求判定部452は、遠隔操作要求が不要であると判定し、遠隔操作要求RQを発信することなく本ルーチンは終了される。
【0069】
一方、ステップS112の処理において、回避対象と車両10との衝突があると判定された場合、処理はステップS114に進む。ステップS114では、遠隔操作要求判定部452において、地図情報と予測衝突位置CPBに基づいて、車両10の回避対象に対する交通環境が予測衝突位置CPBにおいて非優先かどうかが判定される。その結果、予測衝突位置CPBにおいて車両10が非優先ではない場合、車両10が回避対象に衝突しないと判断されて、遠隔操作要求判定部452は、遠隔操作要求が不要であると判定する。
【0070】
一方、予測衝突位置CPBにおいて車両10が非優先である場合、車両10が回避対象に衝突することが予測されると判断される。この場合、処理はステップS116に進む。ステップS116では、遠隔操作要求判定部452は、遠隔操作要求が必要であると判定し、遠隔操作要求RQを発信する。
【0071】
第二判定処理では、先ずステップS120において、走行効率を重視したパラメータAの評価基準を用いて、第二衝突判定処理が行われる。典型的には、第二衝突判定処理では、回避対象と車両10との衝突有無の判定及び予測衝突位置CPAの演算が行われる。次のステップS122では、回避対象と車両10との衝突があるかどうかが判定される。ここでは、衝突判定部430は、有効な予測衝突位置CPAが演算された場合に、回避対象と車両10との衝突があると判定する。
【0072】
ステップS122の処理において、回避対象と車両10との衝突がないと判定された場合、ステップS100の処理において生成された走行軌道TR1を修正する必要がないと判断される。この場合、走行軌道修正部440において、走行軌道TR1が走行軌道TRA1として生成されて、処理はステップS126に進む。一方、回避対象と車両10との衝突があると判定された場合、処理はステップS124に進む。
【0073】
ステップS124では、走行軌道修正部440において、予測衝突位置CPAでの回避対象との衝突を考慮するように走行軌道TR1を修正した走行軌道TRA1が生成される。ステップS124の処理が実行されると、処理はステップS126に進む。
【0074】
ステップS126では、ステップS116の処理によって遠隔操作要求RQが発信されたかどうかが判定される。その結果、遠隔操作要求RQが発信されていない場合、走行軌道TRA1が走行軌道TRとして選択されて、処理はステップS130に進む。一方、遠隔操作要求RQが発信されている場合、処理はステップS128に進む。
【0075】
走行軌道修正部440では、予測衝突位置CPAの直前又は交差点の進入前の所定の停止位置で停止して遠隔操作を待つように走行軌道TR1を修正した走行軌道TRA2が生成されている。ステップS128では、走行軌道TRA2が走行軌道TRとして選択されて、処理はステップS130に進む。
【0076】
ステップS130では、選択された走行軌道TRが走行装置60に送信される。走行装置60は、走行軌道TRに従い車両10の自動運転を行う。
【0077】
このように、実施の形態1の遠隔支援システム100による遠隔支援方法によれば、第一判定処理では安全性を重視したパラメータBが利用され、第二判定処理では走行効率を重視したパラメータAが利用される。このような構成によれば、安全性を重視して遠隔操作要求の発信要否を判断しつつ、車両10の走行自体は走行効率を重視して行うことができる。
【0078】
1-6.変形例
実施の形態1の遠隔支援システム100は、以下のように変形した態様を採用してもよい。
【0079】
自動運転制御装置40の機能配置に限定はない。すなわち、自動運転制御装置40の機能の一部又は全部は、車両10に搭載されていてもよいし、遠隔操作装置2の遠隔サーバに配置されていてもよい。
【0080】
図6に示すルーチンにおいて、ステップS110からS116の第一判定処理とステップS120からS130の第二判定処理とは、並行して実行する例に限らず、順に実行してもよい。この場合、例えば、ステップS110からS116の第一判定処理を、ステップS120からS130の第二一判定処理の前に実行すればよい。
【0081】
実施の形態1の自動運転制御装置40では、異なるパラメータA,Bを利用した衝突判定処理を共通の衝突判定部430において行う構成としたが、固有のパラメータを利用した衝突判定処理を行う衝突判定部を複数個備える構成でもよい。図7は、実施の形態1の自動運転制御装置40の変形例を説明するための図である。図7に示す自動運転制御装置40は、図5の衝突判定部430に替えて衝突判定部A432及び衝突判定部B434を備える点を除き、図5と同様の構成を有している。
【0082】
衝突判定部A432は、パラメータAと同等の固有のパラメータを利用した衝突判定処理を行うための機能ブロックである。つまり、衝突判定部A432は、衝突判定部430におけるパラメータAを利用した衝突判定処理と同様の機能を有している。衝突判定部B434は、パラメータBと同等の固有のパラメータを利用した衝突判定処理を行うための機能ブロックである。つまり、衝突判定部B434は、衝突判定部430におけるパラメータBを利用した衝突判定処理と同様の機能を有している。このような構成によれば、実施の形態1の衝突判定部430と同様の処理を、衝突判定部A432及び衝突判定部B434によって実現することができる。
【0083】
図8は、実施の形態1の自動運転制御装置40の他の変形例を説明するための図である。図8に示す自動運転制御装置40は、図5の走行軌道生成部412、物標動作予測部414、及び衝突判定部430に替えて衝突判定モデルA436及び衝突判定モデルB438を備える点を除き、図5と同様の構成を有している。
【0084】
衝突判定モデルA436は、パラメータAを利用した衝突判定処理と同等の判定処理を行うための機械学習モデルである。つまり、衝突判定モデルA436は、衝突判定部430におけるパラメータAを利用した衝突判定処理と同様の機能を有している。衝突判定モデルA436は、例えば、走行軌道の生成を想定したときに、減速が必要なタイミングで真(True)を返すことを予測正解としてモデル学習を行う。また、衝突判定モデルB438は、パラメータを利用した衝突判定処理を行うための機能ブロックである。つまり、衝突判定モデルB438は、衝突判定部430におけるパラメータBを利用した衝突判定処理と同様の機能を有している。衝突判定モデルB438は、例えば、遠隔操作要求を想定したときに、遠隔操作要求が必要なタイミングで真(True)を返すことを予測正解としてモデル学習を行う。このような構成によれば、実施の形態1の衝突判定部430と同様の処理を、衝突判定モデルA436及び衝突判定モデルB438によって実現することができる。
【符号の説明】
【0085】
2 遠隔操作装置
4 遠隔サーバ
6 遠隔オペレータインターフェース
10 自動運転車両(車両)
20 情報取得装置
30 情報取得装置
31 車両位置センサ
32 周辺状況センサ
33 車両状態センサ
40 自動運転制御装置
42 プロセッサ
44 記憶装置
45 プログラム
46 運転環境情報
47 地図データベース
48 入出力インターフェース
60 走行装置
100 遠隔支援システム
402 周辺環境情報取得部
404 車両運動情報取得部
406 地図情報取得部
410 走行計画部
412 走行軌道生成部
414 物標動作予測部
420 走行計画生成部
430 衝突判定部
432 衝突判定部A
434 衝突判定部B
436 衝突判定モデルA
438 衝突判定モデルB
440 走行軌道修正部
450 走行軌道選択部
452 遠隔操作要求判定部
460 遠隔操作要求部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8