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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】車両及び車両運行システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 3/02 20060101AFI20231121BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20231121BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20231121BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20231121BHJP
   B60P 1/43 20060101ALI20231121BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B60R3/02
B60J5/06 G
B60J5/06 A
B60J5/04 C
B60K1/04 Z
B60P1/43 B
B60R16/02 660B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021052519
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150089
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊達 智啓
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-160705(JP,A)
【文献】特開2020-095354(JP,A)
【文献】特開2008-065773(JP,A)
【文献】特開2021-009452(JP,A)
【文献】特開2021-026340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/02
B60J 5/06
B60J 5/04
B60K 1/04
B60P 1/43
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客の乗降通路を形成するスロープの展開と格納を行うスロープ装置と、
乗車前の前記乗客の状況を撮像する撮像装置と、
前記乗客の属性情報を含む乗車予約データベースを備えるサーバと通信すると共に、前記スロープ装置によって前記スロープの展開と格納を行う制御装置と、を備える車両であって、
前記乗客を乗車させるために停車した際に、前記制御装置が、前記撮像装置で撮像した乗車前の前記乗客の画像に基づいて前記サーバの前記乗車予約データベースから取得した前記乗客の前記属性情報を確認し、確認した前記属性情報に応じて前記スロープの展開を行うこと、
を特徴とする車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記乗車予約データベースから取得する前記乗客の前記属性情報は、前記乗客の乗車の際の車椅子の利用の有無の情報を含み、
前記制御装置は、前記撮像装置で撮像した乗車前の前記乗客の画像に基づいて前記乗車予約データベースから取得した前記乗客の乗車の際の車椅子の利用の有無の情報を確認し、確認した前記乗客の乗車の際の車椅子の利用の有無の情報に応じて前記スロープの展開を行うこと、
を特徴とする車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両であって、
前記制御装置は、前記乗客が乗車の際に携帯する携帯端末と通信し、
前記乗車予約データベースから取得する前記乗客の前記属性情報は、前記乗客が前記乗車予約データベースに登録した登録携帯端末の情報を含み、
前記制御装置は、前記乗客の携帯する前記携帯端末から取得した前記携帯端末の情報と、前記乗車予約データベースから取得した前記乗客の前記登録携帯端末の情報とに基づいて、前記乗客が乗車予約した前記乗客であるかどうかを確認すること、
を特徴とする車両。
【請求項4】
請求項3に記載の車両であって、
前記制御装置は、前記乗客の携帯する前記携帯端末から取得した前記携帯端末の近接情報に基づいて、前記スロープの展開を行うこと、
を特徴とする車両。
【請求項5】
乗客を乗せて自律走行する車両と、
前記乗客の属性情報を含む乗車予約データベースを備えるサーバと、を備える車両運行システムであって、
前記車両は、
前記乗客の乗降通路を形成するスロープの展開と格納を行うスロープ装置と、
乗車前の前記乗客の状況を撮像する撮像装置と、
前記サーバと通信すると共に、前記スロープ装置によって前記スロープの展開と格納を行う制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記車両が前記乗客を乗車させるために停止した際に、前記撮像装置で撮像した乗車前の前記乗客の画像に基づいて、前記サーバの前記乗車予約データベースから取得した前記乗客の前記属性情報を確認し、
確認した前記属性情報に応じて前記スロープの展開を行うこと、
を特徴とする車両運行システム。
【請求項6】
請求項5に記載の車両運行システムであって、
前記乗車予約データベースが格納する前記乗客の属性情報は、前記乗客の乗車の際の車椅子の利用の有無の情報を含み、
前記制御装置は、前記撮像装置で撮像した乗車前の前記乗客の画像に基づいて、前記サーバの前記乗車予約データベースから取得した前記乗客の乗車の際の車椅子の利用の有無の情報を確認し、
確認した前記乗客の乗車の際の車椅子の利用の有無の情報に応じて前記スロープの展開を行うこと、
を特徴とする車両運行システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の車両運行システムであって、
前記乗客が乗車の際に携帯する携帯端末を含み、
前記制御装置は、前記乗客が乗車の際に携帯する前記携帯端末と通信し、
前記乗車予約データベースが格納する前記乗客の前記属性情報は、前記乗客が登録した前記乗客の登録携帯端末の情報を含み、
前記制御装置は、前記乗客の携帯する前記携帯端末から取得した前記携帯端末の情報と、前記乗車予約データベースから取得した前記乗客の前記登録携帯端末の情報とに基づいて、前記乗客が乗車予約した前記乗客であるかどうかを確認すること、
を特徴とする車両運行システム。
【請求項8】
請求項7に記載の車両運行システムであって、
前記制御装置は、前記乗客の携帯する前記携帯端末から取得した前記携帯端末の近接情報に基づいて、前記スロープの展開を行うこと、
を特徴とする車両運行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客の属性に応じてドアの開閉とスロープの開閉とを行う車両及びその車両を用いる車両運行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車椅子使用者の乗合車両への乗降性を向上させるため、乗合車両の昇降口の下部にスロープ装置を搭載する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、無人タクシーに乗客が乗車しようとする場合に、乗客の携帯端末と通信して乗客を特定し、乗客が無人タクシーに近接したことを検知して車両ドアを解錠して乗客が乗車可能な状態とするシステムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-116112号公報
【文献】特開2019-20985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、乗合車両において、ドアを開放する毎にスロープを展開するような構成の場合、停車時間が長くなってしまい乗合車両の運行速度が遅くなってしまう。このため、車椅子利用の乗客が乗降する場合のみスロープを展開する等、スロープの展開の要否を判断する必要がある。一方、乗合車両を完全自動運転で運行する要望が高まっているが、乗合車両を完全自動運転する場合には、運転手或いはオペレータによる確認以外の方法でスロープの展開の要否を判断することが必要となる。
【0006】
そこで、本発明は、車両において自律制御によってスロープの展開の要否を判断することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両は、乗客の乗降通路を形成するスロープの展開と格納を行うスロープ装置と、乗車前の前記乗客の状況を撮像する撮像装置と、前記乗客の属性情報を含む乗車予約データベースを備えるサーバと通信すると共に、前記スロープ装置によって前記スロープの展開と格納を行う制御装置と、を備える車両であって、前記乗客を乗車させるために停車した際に、前記制御装置が、前記撮像装置で撮像した乗車前の前記乗客の画像に基づいて前記サーバの前記乗車予約データベースから取得した前記乗客の前記属性情報を確認し、確認した前記属性情報に応じて前記スロープの展開を行うこと、を特徴とする。
【0008】
これにより、車両において自律制御によって乗客の属性情報に応じたスロープの展開の要否を判断することができる。
【0009】
本発明の車両において、前記乗車予約データベースから取得する前記乗客の前記属性情報は、前記乗客の乗車の際の車椅子の利用の有無の情報を含み、前記制御装置は、前記撮像装置で撮像した乗車前の前記乗客の画像に基づいて前記乗車予約データベースから取得した前記乗客の乗車の際の車椅子の利用の有無の情報を確認し、確認した前記乗客の乗車の際の車椅子の利用の有無の情報に応じて前記スロープの展開を行ってもよい。
【0010】
これにより、自律制御によって乗客の車椅子の利用の有無の情報に応じてスロープの展開を行うことができる。
【0011】
前記制御装置は、前記乗客が乗車の際に携帯する携帯端末と通信し、前記乗車予約データベースから取得する前記乗客の前記属性情報は、前記乗客が前記乗車予約データベースに登録した登録携帯端末の情報を含み、前記制御装置は、前記乗客の携帯する前記携帯端末から取得した前記携帯端末の情報と、前記乗車予約データベースから取得した前記乗客の前記登録携帯端末の情報とに基づいて、前記乗客が乗車予約した前記乗客であるかどうかを確認してもよい。
【0012】
このように、車両に乗車しようとしている乗客が乗車予約した乗客かどうかを確認してからスロープの展開を行うので、確実に乗客の属性に応じてスロープの展開を行うことができる。
【0013】
本発明の車両において、前記制御装置は、前記乗客の携帯する前記携帯端末から取得した前記携帯端末の近接情報に基づいて、前記スロープの展開を行ってもよい。
【0014】
これにより、乗客が車両に近づいたタイミングでスロープの展開を行うので、おもてなし感を演出することができる。
【0015】
本発明の車両運行システムは、乗客を乗せて自律走行する車両と、前記乗客の属性情報を含む乗車予約データベースを備えるサーバと、を備える車両運行システムであって、前記車両は、前記乗客の乗降通路を形成するスロープの展開と格納を行うスロープ装置と、乗車前の前記乗客の状況を撮像する撮像装置と、前記サーバと通信すると共に、前記スロープ装置によって前記スロープの展開と格納を行う制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記車両が前記乗客を乗車させるために停止した際に、前記撮像装置で撮像した乗車前の前記乗客の画像に基づいて、前記サーバの前記乗車予約データベースから取得した前記乗客の前記属性情報を確認し、確認した前記属性情報に応じて前記スロープの展開を行うこと、を特徴とする。
【0016】
これにより、自動運転を行う車両において自律制御によって乗客の属性情報に応じてスロープの展開の要否を判断し、スロープの展開を行うことができる。
【0017】
本発明の車両運行システムにおいて、前記乗車予約データベースが格納する前記乗客の属性情報は、前記乗客の乗車の際の車椅子の利用の有無の情報を含み、前記制御装置は、前記撮像装置で撮像した乗車前の前記乗客の画像に基づいて、前記サーバの前記乗車予約データベースから取得した前記乗客の乗車の際の車椅子の利用の有無の情報を確認し、確認した前記乗客の乗車の際の車椅子の利用の有無の情報に応じて前記スロープの展開を行ってもよい。
【0018】
これにより、自動運転を行う車両において自律制御によって乗客の車椅子の利用の有無に応じたスロープの展開を行うことができる。
【0019】
本発明の車両運行システムにおいて、前記乗客が乗車の際に携帯する携帯端末を含み、前記制御装置は、前記乗客が乗車の際に携帯する前記携帯端末と通信し、前記乗車予約データベースが格納する前記乗客の前記属性情報は、前記乗客が登録した前記乗客の登録携帯端末の情報を含み、前記制御装置は、前記乗客の携帯する前記携帯端末から取得した前記携帯端末の情報と、前記乗車予約データベースから取得した前記乗客の前記登録携帯端末の情報とに基づいて、前記乗客が乗車予約した前記乗客であるかどうかを確認してもよい。
【0020】
このように、車両に乗車しようとしている乗客が乗車予約した乗客かどうかを確認してからスロープの展開を行うので、自動運転を行う車両においても確実に乗客の属性に応じてスロープの展開を行うことができる。
【0021】
本発明の車両運行システムにおいて、前記制御装置は、前記乗客の携帯する前記携帯端末から取得した前記携帯端末の近接情報に基づいて、前記スロープの展開を行ってもよい。
【0022】
これにより、自動運転を行う車両においても乗客が車両に近づいたタイミングでスロープの展開を行うので、おもてなし感を演出することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、車両において自律制御によってスロープの展開の有無を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態の車両運行システムに用いられる車両であって、ドアが閉止され、スロープが格納された状態を示す斜視図である。
図2図1に示す車両のドアが開放され、スロープが展開された状態を示す斜視図である。
図3図1に示す車両のドアが開放され、スロープが展開され、乗客が車両に近接した状態を示す立面図である。
図4】実施形態の車両運行システムの構成を示す機能ブロック図である。
図5図4に示す乗車予約データベースのデータ構造を示す図である。
図6図1に示す車両の動作を示すフローチャートである。
図7図6に示すフローチャートの続きである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら実施形態の車両運行システム100について説明する。尚、各図に示す矢印FR、矢印UP、矢印RHは、車両10の前方向(進行方向)、上方向、右方向をそれぞれ示している。また、各矢印FR、UP、RHの反対方向は、車両後方向、下方向、左方向を示す。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。図1に示すように、車両運行システム100は、車両10と、サーバ50と、乗客70が携帯する携帯端末60とで構成される。尚、車両10は複数でもよいが、図中では、一台の車両10のみを表示し、他の車両10の図示は省略する。尚、図1は、車両10のドア12が閉止され、スロープ22が格納された状態を示す。
【0026】
車両10は、自動運転で自律走行可能な電気自動車である。図1に示すように、車両10は、ボデー101と、ドア装置11と、スロープ装置21と、撮像装置であるカメラ27と、通信装置35と、ドア・スロープ制御装置31と、走行制御装置41と、位置検出装置45と、センサ44と、バッテリ46と、駆動用モータ47と、車輪48と、を含んでいる。
【0027】
ボデー101は、前後対称で、内部に乗客70が搭乗する車室102を備えている。車室102のフロア103はフラットで、車室102の中には、乗客70が座る座席(図示せず)が配置されている。
【0028】
ドア装置11は、ボデー101の側面に設けられてボデー101の側面に沿ってスライドする両開きのドア12と、ドア12を開閉させるモータ13と、モータ13の動作を制御する制御部14とで構成される。
【0029】
スロープ装置21は、ボデー101のフロア103の下側に設けられている。スロープ装置21は、ボデー101の車両幅方向外側に向かって展開されるスロープ22と、スロープ22の展開と格納とを行うモータ23と、モータ23の制御を行う制御部24とで構成される。
【0030】
カメラ27は、ドア12の上部のボデー101の側面に取付けられて、車両10のドア12の外にいる乗車前の乗客70の状況を撮像する。
【0031】
通信装置35と、ドア・スロープ制御装置31と、走行制御装置41と、センサ44と、位置検出装置45とはボデー101の内部に配置されている。バッテリ46は、フロア103の下のスロープ装置21の横に配置されている。車両10の駆動用モータ47は、車輪48の内部に内蔵されたインホイールモータである。尚、駆動用モータ47はインホイールモータではなくボデー101に搭載されて車輪48を駆動するように構成してもよい。
【0032】
図2に示すように、車両10が停止し、乗客70が乗降する際には、ドア装置11は乗客70の乗降用のドア12を開放する。ドア12が開放されるとフラットな車室102が現れる。また、スロープ装置21は、車両10が停止し、ドア12が開放される際に、ボデー101の車両幅方向外側に向かってスロープ22を展開する。展開されたスロープ22は、図3に示すように先端が歩道82の上に接し、歩道82にいる車椅子71に乗った乗客70の車両10のフロア103への乗降通路を構成する。また、カメラ27は、歩道82にいる乗車前の乗客70の状況を撮像する。尚、乗客70が車道81の脇にいる場合には、スロープ装置21はスロープ22の先端が車道81の上に接するようにスロープ22を展開する。
【0033】
図4に示すように、ドア装置11とスロープ装置21とはドア・スロープ制御装置31に接続されており、ドア・スロープ制御装置31の指令に基づいてドア12の開閉とスロープ22の展開と格納とを行う。また、カメラ27は、ドア・スロープ制御装置31に接続されてカメラ27が撮像した画像データは、ドア・スロープ制御装置31に入力される。ドア・スロープ制御装置31は、通信装置35に接続されている。通信装置35は外部の通信回線65を介してサーバ50と通信してサーバ50とデータの授受を行う。また、通信装置35は、乗客70が携帯している携帯端末60と通信して携帯端末60の近接情報を取得する。従って、ドア・スロープ制御装置31は、通信装置35と通信回線65を介してサーバ50と通信してデータの授受を行い、通信装置35を介して乗客70が携帯している携帯端末60と通信してデータの授受を行う。また、乗客70が携帯している携帯端末60は通信回線65を介してサーバ50と通信し、サーバ50との間でデータの授受を行う。ここで、通信回線65は、例えば、インターネットあるいは電話通信回線でもよい。
【0034】
車両10の駆動用モータ47と、バッテリ46と、車両10に搭載された加速度センサ、速度センサ等のセンサ44と、GPS装置を内蔵して車両10の走行位置を検出する位置検出装置45とは走行制御装置41に接続されている。駆動用モータ47とバッテリ46とは走行制御装置41の指令で動作する。また、センサ44の検出した加速度、速度等のデータは、走行制御装置41に入力される。また、位置検出装置45が検出した車両10の位置データも走行制御装置41に入力される。また、走行制御装置41は通信装置35に接続されており、通信装置35と通信回線65とを介してサーバ50と通信してサーバ50との間でデータの授受を行う。
【0035】
ドア装置11の制御部14は、内部に情報処理を行うプロセッサであるCPU15と動作プログラムや制御データを格納するメモリ16を備えるコンピュータで構成されている。同様に、スロープ装置21の制御部24も内部に情報処理を行うプロセッサであるCPU25と動作プログラムや制御データを格納するメモリ26を備えるコンピュータで構成されている。また、同様にドア・スロープ制御装置31、走行制御装置41は内部に情報処理を行うプロセッサであるCPU32,42とメモリ33,43を備えるコンピュータで構成されている。
【0036】
サーバ50は、内部に情報処理を行うプロセッサであるCPU51と動作プログラム等を格納するメモリ52とを備えるコンピュータで構成されており、大量のデータを格納するデータベース部53が接続されている。データベース部53の中には、車両10の運行制御を行う際に参照する運行データベース54と、乗客70の登録した乗車予約データを格納する乗車予約データベース55とが格納されている。データベース部53は、例えば、ハードディスクや外部のメモリ装置で構成されてもよい。
【0037】
図5に示すように乗車予約データベース55は、乗客70が携帯端末60で予約を行った際に登録した乗客70の氏名と、登録携帯端末情報と、乗降の際の車椅子71の利用の有無、音声案内の要否等の乗客70の属性情報と、乗車日、乗車時刻、乗車場所を含む予約情報と、サーバ50が予約情報に基づいて策定した乗車予定車両番号とを関連付けて格納したものである。図5に示す乗車予約データベース55では、乗降の際の要件として車椅子71の利用の有無、音声案内の要否の2つを例示したがこれに限らない。例えば、介助者の要否等の項目を格納してもよい。また、登録携帯端末情報は、例えば、乗客70の携帯する携帯端末60の電話番号でもよいし、携帯端末60を特定できる他の情報でもよい。
【0038】
また、運行データベース54は、複数の車両10の走行ルート、停車場所等の配車情報が格納されている。尚、データベース部53には、これらの各データベース54,55の他に地図や走行ルートの詳細情報等のデータベースを含んでもよい。
【0039】
次に、図6、7を参照しながら車両運行システム100の動作について説明する。図6のステップS101に示すように、乗客70が携帯端末60で乗客70の氏名と、登録携帯端末情報と、乗降の際の車椅子71の利用の有無、音声案内の要否等の乗客の属性情報と、乗車日、乗車時刻、乗車場所を含む予約情報とを入力して乗車予約を行うと、これらの情報は、図5に示すように乗車予約データベース55に登録される。
【0040】
乗客70が乗車予約を登録するとサーバ50は、図6のステップS102に示すように、予約情報に基づいて車両10の配車と走行ルートの策定とを行い、乗車予約データベースに乗客70が乗車する予定の車両番号を登録する。そして、サーバ50は、図6のステップS103で、乗客70の乗車予定の車両10に乗客70の属性情報を送信する。車両10のドア・スロープ制御装置31は、乗客70の属性情報を通信回線65、通信装置35を介して取得し、メモリ33に格納する。また、サーバ50は、予約情報と走行ルートの情報を車両10に送信する。車両10の走行制御装置41は、予約情報と走行ルートの情報とをメモリ43に格納する。
【0041】
走行制御装置41のCPU42は、位置検出装置45で取得した車両10の位置情報とセンサ44で取得した車両10の走行状態情報とに基づいて、メモリ43に格納した走行ルートに沿って車両10を自動運転で自律走行させる。そして、図6のステップS104に示すように、車両10が登録された乗車場所に到着すると走行制御装置41のCPU42は、乗客70を乗車させるために車両10を停止させる。車両10が停止したら、CPU42は、乗客70の乗車場所に到着、停止したことを示す信号をドア・スロープ制御装置31に出力する。
【0042】
ドア・スロープ制御装置31のCPU32は、走行制御装置41から乗車場所に到着、停止した信号が入力されたら、図6のステップS105に示すように、通信装置35を介して乗客70が携帯している携帯端末60と通信し、乗客70が携帯している携帯端末60の携帯端末情報を取得する。そして、図6のステップS106に示すように、CPU32は、取得した携帯端末情報がメモリ33に格納されている登録携帯端末情報と一致するか判断する。そして、CPU32は、図6のステップS106でYESと判断した場合には、乗車場所で乗車を待っているのは乗車予約を行った乗客70であると判断して図6のステップS107に進む。一方、CPU32は、図6のステップS106でNOと判断した場合には、乗車場所で乗車を待っているのは乗車予約を行った乗客70ではないと判断して処理を終了する。
【0043】
CPU32は、図6のステップS107でメモリ33に格納されている乗客70の属性情報を読みだし、車椅子71の利用が有と登録されているか確認する。そして、図6のステップS107でYESと判断した場合には、図6のステップS108に進む。
【0044】
CPU32は、図6のステップS108において、図3に示すようにカメラ27でドア12の側の歩道82の上にいる乗客70の画像を撮像し、撮像した画像データをメモリ33に格納する。そして、CPU32は、図6のステップS109において、ステップS108で取得した画像の画像分析を行い、乗客70が車椅子71に座っているかどうかを確認する。CPU32は、画像分析の結果、乗客70が車椅子71を利用していると判断した場合には、車椅子71の利用が有という乗客70の属性情報が確認され、スロープ22の展開が必要と判断する。そして、CPU32は、図6のステップS110でYESと判断して図7のステップS111に進み、乗客70が携帯している携帯端末60と通信装置35を介して通信して携帯端末60の近接情報を取得する。この近接情報の取得は、近接通信によって取得してもよい。
【0045】
そして、CPU32は、図7のステップS112に示すように、携帯端末60からの近接情報に基づいて、乗客70が車両10に近接してきているかどうかを判断し、図7のステップS112でYESと判断した場合には、図7のステップS113に進んで、ドア装置11とスロープ装置21にドア12の開放指令とスロープ22の展開指令とを出力する。ドア装置11はこの指令によって図2図3に示すようにドア12を開放する。また、スロープ装置21はこの指令によってスロープ22を歩道82に向かって展開する。乗客70は、車椅子71に乗って歩道82からスロープ22を通って車両10の車室102のフロア103の上に乗り込む。
【0046】
一方、乗客70が車椅子71の利用が有ると登録していたのに、画像分析の結果、実際には車椅子71を利用していないと判断した場合には、CPU32は、スロープ22の展開は必要ないと判断する。そして、CPU32は、図6のS110でNOと判断して図7のステップS117に進んで、携帯端末60の近接情報を取得する。そして、図7のステップS118に進んで、乗客70が車両10に近接してきているかどうかを判断し、図7のステップS118でYESと判断した場合には、図7のステップS119に進んでドア装置11にドア12を開放する指令を出力してドア12を開放させる。この際、CPU32は、スロープ装置21にスロープ22の展開指令を出力せず、スロープ22は展開されない。
【0047】
また、乗客70が車椅子71の利用が無いと登録していた場合には、ドア・スロープ制御装置31のCPU32は、図6のステップS107でNOと判断して図6のステップS114、S115、S116に進んで、図6のステップS108,S109、S110と同様、カメラ27で乗客70の画像を撮像し、画像分析を行って、乗客70が車椅子71を利用していないかどうかを確認する。
【0048】
乗客70が乗車予約の登録の通り車椅子71を利用していないと判断した場合には、CPU32は、車椅子71の利用が無いという乗客70の属性情報を確認し、スロープ22の展開は必要ないと判断する。そして、CPU32は、図6のステップS116でNOと判断して図7のステップS117に進み、ステップS117で携帯端末60の近接情報を取得し、ステップS118で乗客70の近接を判断し、ステップS119でドア装置11にドア12を開放する指令を出力する。この際、CPU32は、スロープ装置21にスロープ22の展開指令を出力せず、スロープ22は展開されない。
【0049】
また、乗客70が車椅子71の利用が無いと登録していたのに、画像分析の結果、実際には車椅子71を利用していると判断した場合には、CPU32は、スロープ22の展開が必要と判断する。そして、CPU32は、図6のS116でYESと判断して図7のステップS111、S112、S113を実行してドア装置11とスロープ装置21にドア12の開放指令とスロープ22の展開指令とを出力し、ドア12を開放させると共に、スロープ22を展開させる。
【0050】
以上、説明したように、実施形態の車両運行システム100は、乗客70が乗車予約の際に登録した登録携帯端末情報に基づいて乗客70が乗車予約をした本人であるかどうかを確認し、乗車予約の際に登録した乗客70の属性情報とカメラ27で撮像した画像とに基づいてスロープ22の展開の要否を判断するので、車両10の自律制御によって確実にスロープ22の展開を行うことができる。このため、車両10を運転手或いはオペレータがいない完全自動運転で走行させた場合でも、乗客70に応じた乗車態様をとることができる。
【0051】
また、車両10を乗合バスとして自動運転で運行した場合、スロープ22の展開が必要な乗客70が乗降する際にのみスロープ22を展開するので、停車時間を短くして運行速度を速めることができる。更に、乗客70が車両10に近づいたタイミングでドア12の開放とスロープ22の展開とを行うので、おもてなし感を演出することができる。
【0052】
以上の説明では、乗車予約の際に属性情報として登録した乗客70の車椅子71の利用の有無の情報とカメラ27で撮像した画像とに基づいてスロープ22の展開の要否の判断を行うこととして説明したが、これに限らない。例えば、乗車予約の際に属性情報として登録した乗客70の音声案内の要否の情報とカメラ27で撮像した画像とに基づいて、乗客70の乗車動作に合わせて現在位置や移動方向の音声案内を行うようにしてもよい。この場合、おもてなし感を効果的に延出することができる。
【0053】
また、以上の説明では、車両10は、自動運転で自律走行可能な電気自動車であるとして説明したが、運転手或いはオペレータが運転する電気自動車でもよいし、エンジン駆動の車両でもよい。また、車両10は、乗合バス或いはタクシーとして運行されてもよい。また、以上の説明では、ドア・スロープ制御装置31と走行制御装置41とは別々の制御装置として説明したが、これに限らず、1つの制御装置でドア装置11とスロープ装置21の制御と車両10の走行制御とを行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 車両、11 ドア装置、12 ドア、13,23 モータ、14,24 制御部、15,25,32,42,51 CPU、16,26,33,43,52 メモリ、21 スロープ装置、22 スロープ、27 カメラ、31 ドア・スロープ制御装置、35 通信装置、41 走行制御装置、44 センサ、45 位置検出装置、46 バッテリ、47 駆動用モータ、48 車輪、50 サーバ、53 データベース部、54 運行データベース、55 乗車予約データベース、60 携帯端末、65 通信回線、70 乗客、71 車椅子、81 道路、82 歩道、100 車両運行システム、101 ボデー、102 車室、103 フロア。
図1
図2
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図5
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図7