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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】両開き収納装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/04 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
B60R7/04 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021056302
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022153193
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 将訓
(72)【発明者】
【氏名】寺井 伸弘
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-043263(JP,A)
【文献】特開2017-171303(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0267421(US,A1)
【文献】特開2007-145165(JP,A)
【文献】特開2019-156278(JP,A)
【文献】特開2001-322503(JP,A)
【文献】特開2000-255340(JP,A)
【文献】米国特許第06003716(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102015208748(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が設けられた収容部を有するボックス本体と、
前記開口を開閉可能に覆う蓋部材と、
第一回転軸及び第二回転軸のうちの何れかの軸を選択的に中心にして前記蓋部材を開閉動作させる開閉機構と、
前記蓋部材に配設され、前記ボックス本体側から配策部材を介して電力又は流体が供給される作動機器と、
を備え、
前記開閉機構は、前記ボックス本体と前記蓋部材との間に介在するように配置され、一端部が前記蓋部材に前記第一回転軸を中心にして揺動可能に支持されると共に他端部が前記ボックス本体に前記第二回転軸を中心にして揺動可能に支持されたヒンジ部材を有し、
前記ヒンジ部材は、前記蓋部材が前記第一回転軸を中心にして開閉動作する際には前記蓋部材に追従せず前記ボックス本体側に留まり、前記蓋部材が前記第二回転軸を中心にして開閉動作する際には前記蓋部材に追従して前記ボックス本体に対して揺動し、
前記配策部材は、前記ヒンジ部材に沿うように前記一端部と前記他端部との間に延びて配策されるヒンジ配策部を有する、両開き収納装置。
【請求項2】
前記ヒンジ配策部は、前記ヒンジ部材の前記一端部と前記他端部との間で直線距離に比して長くなるように配策されている、請求項1に記載された両開き収納装置。
【請求項3】
前記配策部材は、前記ヒンジ配策部の端部と前記蓋部材側又は前記ボックス本体側との間に介在し、前記第一回転軸又は前記第二回転軸を中心にした前記蓋部材の開閉動作に伴って変形する可変配策部を有する、請求項1又は2に記載された両開き収納装置。
【請求項4】
前記可変配策部は、前記蓋部材の開閉動作を許容する余長を有する部位である、請求項3に記載された両開き収納装置。
【請求項5】
前記可変配策部は、前記蓋部材の開閉動作を許容する長さ伸縮可能な部位である、請求項3に記載された両開き収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両開き収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車室内に配置されるコンソールボックスなどの収納装置が知られている(例えば、特許文献1,2)。特許文献1記載の収納装置は、アームレストとして使用する蓋部材にヒータを内蔵させたものである。この収納装置において、蓋部材は、ボックス本体の開口を開閉可能に覆う部材であって、支持部材により一つの回転軸を中心にして回転可能に支持されている。ヒータは、蓋部材の支持部材側からボックス本体側に引き回された配線を介して電源装置に接続されており、その電源装置からの配線を介した電力供給により発熱する。このため、蓋部材の表面に置いた車両乗員の前腕をヒータを用いて温めることができる。
【0003】
また、特許文献2記載の収納装置は、一つの蓋部材を二つの回転軸それぞれを中心にして回転可能に支持する両開き収納装置である。この収納装置は、第一回転軸及び第二回転軸のうちの何れかの軸を選択的に中心にして蓋部材を開閉動作させる開閉機構を備えている。この開閉機構は、ボックス本体と蓋部材との間に介在するように配置されたヒンジ部材を有している。このヒンジ部材は、一端部が蓋部材に第一回転軸を中心にして揺動可能に支持されると共に、他端部がボックス本体に第二回転軸を中心にして揺動可能に支持されたアーム部材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-156278号公報
【文献】特開2007-145165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2記載の両開き収納装置において、特許文献1記載のヒータを適用する場合、蓋部材を回転させる回転軸が二つあることとなるので、蓋部材側のヒータとボックス本体側の電源装置とを繋ぐ配線を一方の回転軸を支持する支持部材側から直接にボックス本体側へ引き回すと、他方の回転軸を中心にして蓋部材を回転させることができなくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、蓋部材を二つの回転軸それぞれを中心にして開閉動作可能に構成しつつ、蓋部材に配設されたヒータなどの作動機器に繋がる配線などの配策部材の配策を成立させた両開き収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、開口が設けられた収容部を有するボックス本体と、前記開口を開閉可能に覆う蓋部材と、第一回転軸及び第二回転軸のうちの何れかの軸を選択的に中心にして前記蓋部材を開閉動作させる開閉機構と、前記蓋部材に配設され、前記ボックス本体側から配策部材を介して電力又は流体が供給される作動機器と、を備え、前記開閉機構は、前記ボックス本体と前記蓋部材との間に介在するように配置され、一端部が前記蓋部材に前記第一回転軸を中心にして揺動可能に支持されると共に他端部が前記ボックス本体に前記第二回転軸を中心にして揺動可能に支持されたヒンジ部材を有し、前記ヒンジ部材は、前記蓋部材が前記第一回転軸を中心にして開閉動作する際には前記蓋部材に追従せず前記ボックス本体側に留まり、前記蓋部材が前記第二回転軸を中心にして開閉動作する際には前記蓋部材に追従して前記ボックス本体に対して揺動し、前記配策部材は、前記ヒンジ部材に沿うように前記一端部と前記他端部との間に延びて配策されるヒンジ配策部を有する、両開き収納装置である。
【0008】
この構成によれば、ボックス本体側と蓋部材側の作動機器とを繋ぐ配策部材は、開閉機構の有するヒンジ部材に沿うようにそのヒンジ部材の一端部と他端部との間に延びて配策される。ヒンジ部材は、蓋部材の第一回転軸を中心にした開閉動作時は蓋部材に追従せずボックス本体側に留まり、蓋部材の第二回転軸を中心にした開閉動作時は蓋部材に追従してボックス本体に対して揺動する。従って、蓋部材を第一回転軸及び第二回転軸それぞれを中心にして開閉動作可能に構成しつつ、蓋部材に配設された作動機器に繋がる配策部材の配策を成立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る両開き収納装置が備える蓋部材の左側開状態での斜視図である。
図2】本実施形態の両開き収納装置が備える蓋部材の右側開状態での斜視図である。
図3】本実施形態の両開き収納装置の分解斜視図である。
図4】本実施形態の両開き収納装置が備える開閉機構の有するヒンジ部材の斜視図である。
図5】本実施形態の両開き収納装置が備える開閉機構の有するヒンジ部材の分解斜視図である。
図6】本実施形態の両開き収納装置が備える開閉機構の構成図である。
図7】本実施形態の両開き収納装置が備える開閉機構の、蓋部材の左側開状態での構成図である。
図8】本実施形態の両開き収納装置が備える開閉機構の、蓋部材の右側開状態での構成図である。
図9】本実施形態の両開き収納装置が備える作動機器の構成図である。
図10】本実施形態の両開き収納装置が備えるヒンジ部材を後方から見た図である。
図11】本実施形態の両開き収納装置を蓋部材の閉状態で切断した際の後方から見た断面図である。
図12】本実施形態の両開き収納装置を蓋部材の右側開状態で切断した際の後方から見た断面図である。
図13】本実施形態の両開き収納装置を蓋部材の左側開状態で切断した際の後方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る両開き収納装置の具体的な実施形態について図面を用いて説明する。
【0011】
図1図13を用いて、一実施形態に係る両開き収納装置1について説明する。
両開き収納装置1は、例えば車両の車室内に設置されるセンターコンソールに装着されるコンソールボックスである。尚、本実施形態において、方向を示す内容は、両開き収納装置1が設置される車両を基準にしたものとする。例えば、「右側」とは車両進行方向に対する車両右側を指し、「左側」とは車両進行方向に対する車両左側を指すものとする。
【0012】
両開き収納装置1は、図1図2、及び図3に示す如く、ボックス本体10と、蓋部材20と、開閉機構30と、作動機器90と、を備えている。両開き収納装置1は、開閉機構30により蓋部材20がボックス本体10に対して開閉動作されるように構成されている。また、両開き収納装置1は、蓋部材20が閉位置にあるときに乗員の腕を置くためのアームレストとして用いられるものであって、その蓋部材20上において作動機器90が作動されるように構成されている。
【0013】
ボックス本体10は、物を収容可能な箱体である。ボックス本体10は、上面に開口11が設けられた直方体形状の収容部12を有している。尚、ボックス本体10は、収容部12を取り囲む側壁及び底壁からなるものであればよく、例えばカップホルダーなどを収めるための枠などを含んでいてもよい。
【0014】
開口11は、四角形状に形成されている。開口11の周縁は、それぞれ前後方向に延びる二つの前後辺11aと、それぞれ前後辺11aに直交する方向すなわち左右方向に延びる二つの左右辺11bと、を有している。すなわち、両開き収納装置1は、開口11の前後辺11aが前後方向に延びかつ開口11の左右辺11bが左右方向に延びるように形成配置されている。
【0015】
蓋部材20は、ボックス本体10の開口11を開閉可能に覆うリッドである。蓋部材20は、ボックス本体10の開口11に対応した大きさに形成されている。蓋部材20は、薄肉矩形状に形成されている。蓋部材20は、開口11を覆った閉位置から、開口11の周縁の右側の前後辺11aに沿って前後方向に延びる回転軸(以下、第一回転軸と称す。)を中心にして回転可能であると共に、開口11の周縁の左側の前後辺11aに沿って前後方向に延びる回転軸(以下、第二回転軸と称す。)を中心にして回転可能である。蓋部材20は、ボックス本体10に対して左右それぞれにおいて閉位置から所定角度(例えば100°)をなす全開位置まで開動作することが可能である。
【0016】
蓋部材20は、インナ蓋材21と、アウタ蓋材22と、成形ウレタン材23と、表皮材24と、を有している。インナ蓋材21及びアウタ蓋材22は、蓋部材20の基材をなす部材である。インナ蓋材21及びアウタ蓋材22はそれぞれ、矩形板状に形成されている。アウタ蓋材22は、インナ蓋材21の上面を覆っており、外観において丸みを帯びた形状に形成されている。インナ蓋材21とアウタ蓋材22とは、その間に開閉機構30の構成部品などを収容した状態で凹凸嵌合などにより蓋部材20の基材として一体化されている。
【0017】
成形ウレタン材23は、アウタ蓋材22の上面を覆って蓋部材20の外形をなす部材である。成形ウレタン材23は、アウタ蓋材22の上面全域に亘って設けられている。成形ウレタン材23は、クッション性や柔軟性を有しており、軟質ウレタンフォームなどにより構成されている。成形ウレタン材23は、アウタ蓋材22の上面に接着剤などにより固定されている。
【0018】
表皮材24は、成形ウレタン材23の上面を覆って蓋部材20の外表面をなす袋状の部材である。表皮材24は、成形ウレタン材23の上面全域に亘って設けられている。表皮材24は、ポリウレタンやポリ塩化ビニル等の合成皮革やファブリック,皮革等により構成されている。表皮材24は、成形ウレタン材23の上面やインナ蓋材21の下面などに接着剤などにより固定されている。
【0019】
開閉機構30は、右側の第一回転軸及び左側の第二回転軸のうちの何れか一の回転軸を選択的に中心にして蓋部材20を開閉動作させるためのユニットである。開閉機構30は、図4図5図6図7、及び図8に示す如く、ヒンジ部材32と、右側枢支部33Rと、左側枢支部33Lと、を有している。
【0020】
ヒンジ部材32は、長尺形状に形成されたアーム状の部材である。ヒンジ部材32は、ボックス本体10の後基部13と蓋部材20との間に介在するように配置されている。ヒンジ部材32は、蓋部材20の閉位置において長手方向が左右方向に延びるように配置され、蓋部材20の車両後側に形成された側壁部に沿うように配置される。ヒンジ部材32は、長手方向において蓋部材20の左右方向の幅と略同じ長さを有するように形成されている。
【0021】
ヒンジ部材32は、長手方向一端部が蓋部材20に上記第一回転軸を中心にして揺動可能に支持されかつ長手方向他端部がボックス本体10の後基部13に上記第二回転軸を中心にして揺動可能に支持されるように構成されている。すなわち、ヒンジ部材32は、第一回転軸を中心にして蓋部材20に対して揺動可能であると共に、第二回転軸を中心にしてボックス本体10の後基部13に対して揺動可能である。
【0022】
ヒンジ部材32には、二つの貫通孔32R,32Lが設けられている。貫通孔32Rは、ヒンジ部材32の長手方向一端部に設けられており、前後方向に貫通している。貫通孔32Lは、ヒンジ部材32の長手方向他端部に設けられており、前後方向に貫通している。
【0023】
右側枢支部33Rは、上記の第一回転軸を構成するための部位であって、蓋部材20をその第一回転軸を中心にして開閉(すなわち、左側開閉)動作させる部位である。右側枢支部33Rは、車両右側すなわちヒンジ部材32の長手方向一端側に配置されている。右側枢支部33Rは、軸体34Rと、アームスプリング35Rと、筒体36Rと、ダンパ37Rと、を有している。
【0024】
軸体34Rは、円筒状に形成されたカラーである。軸体34Rは、ヒンジ部材32の長手方向一端部の後側から前方に向けて貫通孔32Rに挿通されている。軸体34Rの後端側は、そのヒンジ部材32に固定されている。軸体34Rの前端側は、その貫通孔32Rの前側の開口から車両前方に向けて突出している。軸体34Rの前端側は、蓋部材20のインナ蓋材21に設けられた支持孔(図示せず)に挿入されており、蓋部材20に対して回転可能に支持されている。軸体34Rは、開口11周縁の右側の前後辺11aに沿って前後方向に延びており、第一回転軸を構成している。ヒンジ部材32は、長手方向一端側の軸体34Rにより蓋部材20に対して揺動可能である。
【0025】
アームスプリング35Rは、ヒンジ部材32を蓋部材20に対して揺動させるための付勢力を発生するねじりバネである。アームスプリング35Rは、軸体34Rに巻装されている。アームスプリング35Rの付勢力は、蓋部材20の閉位置を含め蓋部材20が左側開閉動作していないときに最大である。アームスプリング35Rは、一端部がヒンジ部材32に固定されかつ他端部が蓋部材20のインナ蓋材21に固定されるように配置されている。
【0026】
筒体36Rは、軸体34Rに外挿された中空筒状の部材である。筒体36Rは、軸体34Rに対して同軸上に設けられている。筒体36Rは、軸体34Rの回転に伴って一体的に回転する。筒体36Rには、外歯36Raが形成されている。外歯36Raは、筒体36Rの外周に沿って複数並んでいる。
【0027】
ダンパ37Rは、ヒンジ部材32が蓋部材20に対して揺動するとき(すなわち、蓋部材20の左側開動作時)の揺動速度を減速させる減衰装置である。ダンパ37Rは、円筒状に形成されている。ダンパ37Rは、蓋部材20のインナ蓋材21に取り付け固定されている。ダンパ37Rには、外歯37Raが形成されている。外歯37Raは、ダンパ37Rの外周に沿って複数並んでいる。ダンパ37Rの外歯37Raと筒体36Rの外歯36Raとは互いに噛合している。ダンパ37Rは、上記の揺動速度を減速させる減衰力を筒体36Rを通じて軸体34Rに付与する。
【0028】
左側枢支部33Lは、上記の第二回転軸を構成するための部位であって、蓋部材20をその第二回転軸を中心にして開閉(すなわち、右側開閉)動作させる部位である。左側枢支部33Lは、車両左側すなわちヒンジ部材32の長手方向他端側に配置されている。左側枢支部33Lは、軸体34Lと、アームスプリング35Lと、筒体36Lと、ダンパ37Lと、を有している。
【0029】
軸体34Lは、円柱状に形成された部材である。軸体34Lは、ヒンジ部材32の長手方向他端部の前側から後方に向けて貫通孔32Lに挿通されている。軸体34Lの前端側は、そのヒンジ部材32に固定されている。軸体34Lの後端側は、その貫通孔32Lの後側の開口から車両後方に向けて突出している。軸体34Lの後端側は、ボックス本体10の後基部13に設けられた支持孔13Lに挿入されており、ボックス本体10の後基部13に対して回転可能に支持されている。軸体34Lは、開口11周縁の左側の前後辺11aに沿って前後方向に延びており、第二回転軸を構成している。ヒンジ部材32は、長手方向他端側の軸体34Lによりボックス本体10の後基部13に対して揺動可能である。
【0030】
アームスプリング35Lは、ヒンジ部材32をボックス本体10の後基部13に対して揺動させるための付勢力を発生するねじりバネである。アームスプリング35Lは、軸体34Lに巻装されている。アームスプリング35Lの付勢力は、蓋部材20の閉位置を含め蓋部材20が右側開閉動作していないときに最大である。アームスプリング35Lは、一端部がヒンジ部材32に固定されかつ他端部がボックス本体10の後基部13に固定されるように配置されている。
【0031】
筒体36Lは、軸体34Lに外挿された中空筒状の部材である。筒体36Lは、軸体34Lに対して同軸上に設けられている。筒体36Lは、軸体34Lの回転に伴って一体的に回転する。筒体36Lには、外歯36Laが形成されている。外歯36Laは、筒体36Lの外周に沿って複数並んでいる。
【0032】
ダンパ37Lは、ヒンジ部材32がボックス本体10の後基部13に対して揺動するとき(すなわち、蓋部材20の右側開動作時)の揺動速度を減速させる減衰装置である。ダンパ37Lは、円筒状に形成されている。ダンパ37Lは、ボックス本体10の後基部13に取り付け固定されている。ダンパ37Lには、外歯37Laが形成されている。外歯37Laは、ダンパ37Lの外周に沿って複数並んでいる。ダンパ37Lの外歯37Laと筒体36Lの外歯36Laとは互いに噛合している。ダンパ37Lは、上記の揺動速度を減速させる減衰力を筒体36Lを通じて軸体34Lに付与する。
【0033】
開閉機構30は、また、ロックユニット39を有している。ロックユニット39は、蓋部材20の右側及び左側の少なくとも一方側をボックス本体10に対して閉位置に保持すると共に、一方側をボックス本体10に対して閉位置に保持した状態で他方側の閉位置保持を解除するユニットである。
【0034】
ロックユニット39は、左側ロック装置40と、右側ロック装置50と、伝達ロッド60と、フラップ装置70と、を有している。左側ロック装置40は、蓋部材20の左側を閉位置に保持すると共に、その左側の閉位置保持を解除する装置である。右側ロック装置50は、蓋部材20の右側を閉位置に保持すると共に、その右側の閉位置保持を解除する装置である。左側ロック装置40は、蓋部材20の左側に配置されている。右側ロック装置50は、蓋部材20の右側に配置されている。
【0035】
左側ロック装置40は、第一左側ロッド41と、第二左側ロッド42と、左側同期装置43と、左側ロッド付勢部材44と、左側操作部45と、を有している。第一左側ロッド41は、蓋部材20の後部側に配設された、略前後方向に延びるロッド部材である。第二左側ロッド42は、蓋部材20の前部側に配設された、略前後方向に延びるロッド部材である。第一左側ロッド41及び第二左側ロッド42はそれぞれ、蓋部材20に対して前後方向に進退可能に支持されている。
【0036】
第一左側ロッド41は、その後端部が蓋部材20の本体の後端よりも後方に突出する状態と蓋部材20の本体内に入り込む状態との間で前後移動可能である。ヒンジ部材32の前面には、第一左側ロッド41が挿入され係合される係合孔32Hが設けられている。第一左側ロッド41の後端部は、蓋部材20の本体の後端よりも後方に突出した際にヒンジ部材32の係合孔32Hに挿入されて係合される。
【0037】
第二左側ロッド42は、その前端部が蓋部材20の本体の前端よりも前方に突出する状態と蓋部材20の本体内に入り込む状態との間で前後移動可能である。ボックス本体10の前基部14の後面には、第二左側ロッド42が挿入され係合される係合孔14aが設けられている。第二左側ロッド42の前端部は、蓋部材20の本体の前端よりも前方に突出した際にボックス本体10の前基部14の係合孔14aに挿入されて係合される。第二左側ロッド42は、前基部14に係合した際に第二回転軸を構成する。
【0038】
左側同期装置43は、第一左側ロッド41と第二左側ロッド42とを互いに近づける方向又は遠ざける方向に同期して移動させる装置である。左側同期装置43は、第一左側ロッド41の前端部と第二左側ロッド42の後端部との間に配置されている。左側同期装置43は、蓋部材20のインナ蓋材21に回転可能に支持された円板状の回転体である。左側同期装置43には、第一左側ロッド41の前端部が回動可能に支持されていると共に、第二左側ロッド42の後端部が回動可能に支持されている。左側同期装置43における第一左側ロッド41の支持点と第二左側ロッド42の支持点とは、周方向に略180°離間しており、その左側同期装置43の回転中心を挟んで略対称に位置している。
【0039】
左側ロッド付勢部材44は、第二左側ロッド42を蓋部材20に対して前方へ付勢する付勢力を発生するつるまきバネである。左側ロッド付勢部材44は、一端部が第二左側ロッド42に固定されかつ他端部が蓋部材20のインナ蓋材21に固定されるように配置されている。左側ロッド付勢部材44の付勢力は、第二左側ロッド42の前方への付勢により左側同期装置43を上方から見て時計回り(右回り)に回転させる力となり、これにより、第一左側ロッド41を蓋部材20に対して後方へ付勢する力となる。
【0040】
左側操作部45は、蓋部材20の左側の閉位置保持を解除するために操作者により押圧操作される部位である。左側操作部45は、ボックス本体10の前基部14の左側に配設されている。左側操作部45は、操作者の押圧操作時に触れるボタン部45aと、ボタン部45aと第二左側ロッド42とを係合させる機構部45bと、を有している。
【0041】
ボタン部45aは、前基部14の左側壁に左右方向にスライド移動可能に設けられている。ボタン部45aは、スプリング(図示せず)により前基部14に対して左方に付勢されており、操作者が右方へ押圧していない状態において前基部14の左側壁に沿って面一となるように保持されている。ボタン部45aは、操作者の押圧操作によりスプリングの付勢力に抗して前基部14に対して右方に相対移動される。
【0042】
機構部45bは、ボタン部45aが右方へ押圧操作されていない状態すなわちボタン部45aが前基部14の左側壁に沿って面一となっている状態では、第二左側ロッド42の前端に当接していない。一方、ボタン部45aが右方へ押圧操作されると、機構部45bが第二左側ロッド42の前端に当接してその第二左側ロッド42を左側ロッド付勢部材44の付勢力に抗して蓋部材20内に入り込むように後方へ移動させる。第二左側ロッド42が後方へ移動すると、左側同期装置43が左回りに回転することで、第一左側ロッド41が前方へ移動する。
【0043】
蓋部材20が閉状態にありかつ左側操作部45のボタン部45aが右方へ押圧操作されていないとき、又は、蓋部材20が右側開状態にあるときは、第二左側ロッド42の前端部は、蓋部材20の本体の前端よりも前方に突出しており、ボックス本体10の前基部14に係合している。また、このとき、第一左側ロッド41の後端部は、蓋部材20の本体の後端よりも後方に突出しており、ヒンジ部材32に係合している。以下、この状態を左ロック状態と称す。
【0044】
また、蓋部材20の閉状態において左側操作部45のボタン部45aが右方へ押圧操作されると、第二左側ロッド42の前端部が蓋部材20の本体の前端よりも後方に位置して蓋部材20内に入り込むことで、第二左側ロッド42と前基部14との係合が解除される。また、このとき、左側同期装置43の左回転により第一左側ロッド41の後端部が蓋部材20の本体の後端よりも前方に位置して蓋部材20内に入り込むことで、第一左側ロッド41とヒンジ部材32との係合が解除される。以下、この状態を左ロック解除状態と称す。尚、左側ロック装置40は、第二左側ロッド42とボックス本体10の前基部14との係合解除と第一左側ロッド41とヒンジ部材32との係合解除とが互いに略同じタイミングで行われるように構成されていることが望ましい。
【0045】
右側ロック装置50は、第一右側ロッド51と、第二右側ロッド52と、右側同期装置53と、右側ロッド付勢部材54と、右側操作部55と、を有している。第一右側ロッド51は、蓋部材20の後部側に配設された、略前後方向に延びるロッド部材である。第二右側ロッド52は、蓋部材20の前部側に配設された、略前後方向に延びるロッド部材である。第一右側ロッド51及び第二右側ロッド52はそれぞれ、蓋部材20に対して前後方向に進退可能に支持されている。
【0046】
第一右側ロッド51の後端部は、右側枢支部33Rの軸体34Rの中心に空いた貫通孔34Raに挿通されている。第一右側ロッド51は、その後端部が蓋部材20の本体の後端よりも後方に突出し更にはヒンジ部材32の後端よりも後方に突出する状態とヒンジ部材32内に入り込む状態との間で前後移動可能である。ボックス本体10の後基部13の前面には、第一右側ロッド51が挿入され係合される係合孔13aが設けられている。第一右側ロッド51の後端部は、ヒンジ部材32の後端よりも後方に突出した際にボックス本体10の後基部13の係合孔13aに挿入されて係合される。
【0047】
第二右側ロッド52は、その前端部が蓋部材20の本体の前端よりも前方に突出する状態と蓋部材20の本体内に入り込む状態との間で前後移動可能である。ボックス本体10の前基部14の後面には、第二右側ロッド52が挿入され係合される係合孔14bが設けられている。第二右側ロッド52の前端部は、蓋部材20の本体の前端よりも前方に突出した際にボックス本体10の前基部14の係合孔14bに挿入されて係合される。第二右側ロッド52は、前基部14に係合した際に第一回転軸を構成する。
【0048】
右側同期装置53は、第一右側ロッド51と第二右側ロッド52とを互いに近づける方向又は遠ざける方向に同期して移動させる装置である。右側同期装置53は、第一右側ロッド51の前端部と第二右側ロッド52の後端部との間に配置されている。右側同期装置53は、蓋部材20のインナ蓋材21に回転可能に支持された円板状の回転体である。右側同期装置53には、第一右側ロッド51の前端部が回動可能に支持されていると共に、第二右側ロッド52の後端部が回動可能に支持されている。右側同期装置53における第一右側ロッド51の支持点と第二右側ロッド52の支持点とは、周方向に略180°離間しており、その右側同期装置53の回転中心を挟んで略対称に位置している。
【0049】
右側ロッド付勢部材54は、第二右側ロッド52を蓋部材20に対して前方へ付勢する付勢力を発生するつるまきバネである。右側ロッド付勢部材54は、一端部が第二右側ロッド52に固定されかつ他端部が蓋部材20のインナ蓋材21に固定されるように配置されている。右側ロッド付勢部材54の付勢力は、第二右側ロッド52の前方への付勢により右側同期装置53を上方から見て反時計回り(左回り)に回転させる力となり、これにより、第一右側ロッド51を蓋部材20に対して後方へ付勢する力となる。
【0050】
右側操作部55は、蓋部材20の右側の閉位置保持を解除するために操作者により押圧操作される部位である。右側操作部55は、ボックス本体10の前基部14の右側に配設されている。右側操作部55は、操作者の押圧操作時に触れるボタン部55aと、ボタン部55aと第二右側ロッド52とを係合させる機構部55bと、を有している。
【0051】
ボタン部55aは、前基部14の右側壁に左右方向にスライド移動可能に設けられている。ボタン部55aは、スプリング(図示せず)により前基部14に対して右方に付勢されており、操作者が左方へ押圧していない状態において前基部14の右側壁に沿って面一となるように保持されている。ボタン部55aは、操作者の押圧操作によりスプリングの付勢力に抗して前基部14に対して左方に相対移動される。
【0052】
機構部55bは、ボタン部55aが左方へ押圧操作されていない状態すなわちボタン部55aが前基部14の右側壁に沿って面一となっている状態では、第二右側ロッド52の前端に当接していない。一方、ボタン部55aが左方へ押圧操作されると、機構部55bが第二右側ロッド52の前端に当接してその第二右側ロッド52を右側ロッド付勢部材54の付勢力に抗して蓋部材20内に入り込むように後方へ移動させる。第二右側ロッド52が後方へ移動すると、右側同期装置53が右回りに回転することで、第一右側ロッド51が前方へ移動する。
【0053】
蓋部材20が閉状態にありかつ右側操作部55のボタン部55aが左方へ押圧操作されていないとき、又は、蓋部材20が左側開状態にあるときは、第二右側ロッド52の前端部は、蓋部材20の本体の前端よりも前方に突出しており、ボックス本体10の前基部14に係合している。また、このとき、第一右側ロッド51の後端部は、ヒンジ部材32の後端よりも後方に突出しており、ヒンジ部材32を通過してボックス本体10の後基部13に係合している。以下、この状態を右ロック状態と称す。
【0054】
また、蓋部材20の閉状態において右側操作部55のボタン部55aが左方へ押圧操作されると、第二右側ロッド52の前端部が蓋部材20の本体の前端よりも後方に位置して蓋部材20内に入り込むことで、第二右側ロッド52と前基部14との係合が解除される。また、このとき、右側同期装置53の右回転により第一右側ロッド51の後端部がヒンジ部材32の後端よりも前方に位置してヒンジ部材32内に入り込むことで、第一右側ロッド51と後基部13との係合が解除される。以下、この状態を右ロック解除状態と称す。尚、右側ロック装置50は、第二右側ロッド52とボックス本体10の前基部14との係合解除と第一右側ロッド51とボックス本体10の後基部13との係合解除とが互いに略同じタイミングで行われるように構成されていることが望ましい。
【0055】
伝達ロッド60は、左側ロック装置40及び右側ロック装置50のうちの何れか一方がロック解除状態にある場合に、そのうちの他方がロック状態からロック解除状態へ状態変化するのを阻止する部材である。伝達ロッド60は、左右方向に延在しており、蓋部材20のインナ蓋材21に設けられたガイド61に沿って左右方向に移動可能に支持されている。伝達ロッド60は、右端部が右側同期装置53の前部に支持されかつ左端部が自由端となるように構成されている。伝達ロッド60は、右側同期装置53が右回転したときは右方へ移動し、右側同期装置53が左回転したときは左方へ移動する。
【0056】
伝達ロッド60の左端側には、前後方向に貫通する係合孔62が設けられている。この係合孔62には、第二左側ロッド42に一体に設けられた係合凸部42aが係合可能である。図6に示す如く、蓋部材20の閉状態(すなわち、左ロック状態かつ右ロック状態)では、係合凸部42aは、係合孔62に係合しておらず、係合孔62の前方位置でその係合孔62に対面している。
【0057】
一方、蓋部材20の閉状態から第二左側ロッド42が後方へ移動して蓋部材20が左ロック解除状態になると、図7に示す如く、係合凸部42aが係合孔62に係合する。このため、左ロック解除状態では、伝達ロッド60が左右方向に移動することが規制されるので、第一及び第二右側ロッド51,52が前後方向に移動することは規制され、右側ロック装置50が右ロック解除状態となるのは阻止される。
【0058】
また、蓋部材20の閉状態から第二右側ロッド52が後方へ移動して蓋部材20が右ロック解除状態になると、図8に示す如く、伝達ロッド60が右方へ移動し、係合凸部42aが、その伝達ロッド60の係合孔62の左側に隣接する端部60aの前方位置でその端部60aに対面する。この対面状態では、第一及び第二左側ロッド41,42が前後方向に移動しても、係合凸部42aが伝達ロッド60の端部60aに当接する。このため、右ロック解除状態では、第一及び第二左側ロッド41,42が前後方向も移動することは規制され、左側ロック装置40が左ロック解除状態となるのは阻止される。
【0059】
フラップ装置70は、蓋部材20が右ロック状態かつ左ロック解除状態すなわち左側開状態にあるときに左側ロック装置40を左ロック解除状態に維持させる左側フラップ装置71と、蓋部材20が左ロック状態かつ右ロック解除状態すなわち右側開状態にあるときに右側ロック装置50を右ロック解除状態に維持させる右側フラップ装置72と、を有している。左側フラップ装置71は、蓋部材20の左前部側に配設されており、左側ロック装置40と係合可能である。また、右側フラップ装置72は、蓋部材20の右前部側に配設されており、右側ロック装置50と係合可能である。
【0060】
次に、両開き収納装置1の動作について説明する。
両開き収納装置1において、蓋部材20の閉状態では、第一左側ロッド41がヒンジ部材32に係合し、第一右側ロッド51がヒンジ部材32を通してボックス本体10の後基部13に係合し、かつ第二左側ロッド42及び第二右側ロッド52がボックス本体10の前基部14に係合するので、蓋部材20は、ボックス本体10の開口11を閉塞する閉状態に維持される。
【0061】
上記した蓋部材20の閉状態で左側操作部45のボタン部45aが右方へ押し込み操作されると、第二左側ロッド42が後方へ移動すると共に、左側同期装置43が左回りに回転して第一左側ロッド41が前方へ移動する。これらの移動が第二左側ロッド42とボックス本体10の前基部14との係合解除まで行われかつ第一左側ロッド41とヒンジ部材32との係合解除まで行われると、第一及び第二右側ロッド51,52がボックス本体10と係合した状態(すなわち、右側ロック装置50の右ロック状態)が維持されたまま左側ロック装置40が左ロック解除状態になる。これにより、蓋部材20の右側について閉状態が保持されたまま、蓋部材20の左側について閉状態の保持が解除される。
【0062】
蓋部材20が左ロック解除状態になると、ヒンジ部材32がボックス本体10の後基部13に対して揺動しない一方、蓋部材20が右側枢支部33Rのアームスプリング35Rの付勢力によりヒンジ部材32に対して揺動する。このため、左側操作部45のボタン部45aの右方への押圧操作が行われた場合は、ヒンジ部材32がボックス本体10に一体化された状態で、蓋部材20がそのヒンジ部材32ひいてはボックス本体10に対して右側の第一回転軸を中心にして回動する。これにより、蓋部材20の左側が開位置に向けて開かれる。
【0063】
また、上記した蓋部材20の閉状態で右側操作部55のボタン部55aが左方へ押し込み操作されると、第二右側ロッド52が後方へ移動すると共に、右側同期装置53が右回りに回転して第一右側ロッド51が前方へ移動する。これらの移動が第二右側ロッド52とボックス本体10の前基部14との係合解除まで行われかつ第一右側ロッド51とボックス本体10の後基部13との係合解除まで行われると、第一及び第二左側ロッド41,42がボックス本体10の前基部14又はヒンジ部材32と係合した状態(すなわち、左側ロック装置40の左ロック状態)が維持されたまま右側ロック装置50が右ロック解除状態になる。これにより、蓋部材20の左側について閉状態が保持されつつ、蓋部材20の右側について閉状態の保持が解除される。
【0064】
蓋部材20が右ロック解除状態になると、蓋部材20がヒンジ部材32に対して揺動しない一方、ヒンジ部材32が左側枢支部33Lのアームスプリング35Lの付勢力によりボックス本体10の後基部13に対して揺動する。このため、右側操作部55のボタン部55aの左方への押圧操作が行われた場合は、蓋部材20がヒンジ部材32に一体化された状態でボックス本体10に対して左側の第二回転軸を中心にして回動する。これにより、蓋部材20の右側が開位置に向けて開かれる。
【0065】
このように、両開き収納装置1において、蓋部材20は、ボックス本体10の開口11を覆った閉状態から、右側の第一回転軸を中心にして左側の開位置へ向けて開動作することが可能であると共に、左側の第二回転軸を中心にして右側の開位置へ向けて開動作することが可能である。蓋部材20は、第一回転軸及び第二回転軸のうちの何れか一方の回転軸を選択的に中心にして開閉動作することが可能である。また、開閉機構30のヒンジ部材32は、蓋部材20が右側の第一回転軸を中心にして開閉動作する際には蓋部材20に追従せずボックス本体10側に留まり、蓋部材20が左側の第二回転軸を中心にして開閉動作する際には蓋部材20に追従してボックス本体10に対して揺動する。
【0066】
作動機器90は、ボックス本体10側の電源装置や流体発生源などから電力や流体が供給されることにより作動する機器である。作動機器90は、例えば、車両乗員がアームレストとしての蓋部材20の上面に置いた前腕を温める目的などのために用いられたヒータやクーラ、或いは、点灯や点滅を行う照明やイルミネーションなどの照明装置である。以下、作動機器90は、電力供給により作動するヒータであるものとする。
【0067】
作動機器90は、蓋部材20に配設されている。作動機器90は、図9に示す如く、発熱体91と、その発熱体91の発熱を制御する制御部92と、を有するヒータエレメントである。作動機器90は、シート状に形成された絶縁シート93を有している。発熱体91及び制御部92は、絶縁シート93に取り付けられている。尚、発熱体91は、一枚の絶縁シート93上に取り付けられるものであってもよいが、二枚の絶縁シート93に挟み込まれるものであってもよい。作動機器90(特に、発熱体)は、例えば、蓋部材20の成形ウレタン材23と表皮材24との間に配置される。
【0068】
発熱体91は、電力供給により発熱する。発熱体91は、例えば、線状に延びた熱線部材が面状に配置されて電極間が一本の熱線部材で接続された面状ヒータである。発熱体91は、蓋部材20の表面近傍に配置されており、蓋部材20の上面全域に亘って張り巡らされるように配置形成されている。
【0069】
また、制御部92は、発熱体91の温度調整のためのサーミスタ及びサーモスタットなどを含む。制御部92は、発熱体91に電気接続されている。制御部92は、蓋部材20における第二回転軸に比べて第一回転軸に近い箇所に配置されている。また、制御部92は、車両乗員が蓋部材20の上面に腕を置いた際にその腕の触感性が損なわれない箇所(例えば、蓋部材20の表面よりも奥側)に配置されている。
【0070】
制御部92は、ボックス本体10に設けられた電源装置に一端が接続された配策部材95の他端に接続されている。作動機器90には、ボックス本体10側の電源装置から配策部材95を介して電力が供給される。すなわち、ボックス本体10側の電源装置から蓋部材20側の作動機器90への電力供給は、配策部材95を介して行われる。
【0071】
配策部材95は、ボックス本体10側の電源装置と作動機器90とを繋ぐ電気配線である。配策部材95は、外周部が保護被膜により被覆された状態で使用される可撓性を有する部材である。配策部材95の一部は、ヒンジ部材32に配策されている。すなわち、配策部材95は、ヒンジ配策部96を有している。ヒンジ配策部96は、ヒンジ部材32に沿うようにヒンジ部材32の長手方向一端部と長手方向他端部との間に延びて配策される部位のことである。
【0072】
ヒンジ部材32は、図5及び図10に示す如く、本体部32aと、第一配線口32bと、第二配線口32cと、リブ32dと、配線パス部32eと、を有している。本体部32aは、貫通孔32Rが設けられた長手方向一端部と、貫通孔32Lが設けられた長手方向他端部と、の間でアーム状に延びる部位である。本体部32aは、前後方向に幅を有する帯部材が環状をなすように形成されている。
【0073】
第一配線口32bは、配策部材95のうちヒンジ配策部96におけるヒンジ部材32の長手方向一端部側がヒンジ部材32内から外部に飛び出す開口である。第一配線口32bは、四角形又は円形,楕円形などに形成されている。第一配線口32bは、第一回転軸をなす貫通孔32R近傍に配置されており、蓋部材20に近接するようにヒンジ部材32の長手方向一端部における上面に設けられている。また、第一配線口32bは、ヒンジ部材32と蓋部材20との第一回転軸を中心にした揺動が妨げられない範囲でその第一回転軸の軸中心に接近した位置に設けられることが配策部材95の余長を短く抑えるうえで好ましい。
【0074】
第二配線口32cは、配策部材95のうちヒンジ配策部96におけるヒンジ部材32の長手方向他端部側がヒンジ部材32内から外部に飛び出す開口である。第二配線口32cは、四角形又は円形,楕円形などに形成されている。第二配線口32cは、第二回転軸をなす貫通孔32L近傍に配置されており、ボックス本体10に近接するようにヒンジ部材32の長手方向他端部における下面に設けられている。また、第二配線口32cは、ヒンジ部材32とボックス本体10との第二回転軸を中心にした揺動が妨げられない範囲でその第二回転軸の軸中心に接近した位置に設けられることが配策部材95の余長を短く抑えるうえで好ましい。尚、第二配線口32cが配置される箇所における第二回転軸の軸中心からの距離は、第一配線口32bが配置される箇所における第一回転軸の軸中心からの距離に比べて長いものとする。
【0075】
リブ32dは、上下方向及び左右方向の剛性確保等のために設けられた部位である。リブ32dは、前後方向に幅を有する状態で本体部32aの環状の帯状部材内の面から上下方向及び左右方向に延びるように形成されている。リブ32dは、例えば図10に示す如く、ヒンジ部材32の長手方向一端部と長手方向他端部との間で、上下方向成分及び左右方向成分を含む斜め方向に延びて三角波状に波打つように延在している。
【0076】
配線パス部32eは、ヒンジ部材32内の第一配線口32bと第二配線口32cとの間のリブ32dにおいてヒンジ配策部96を通過させる部位のことである。配線パス部32eは、リブ32dに設けられた、ヒンジ配策部96が通る溝や孔或いはヒンジ配策部96が引っ掛かる爪形状部である。配線パス部32eは、ヒンジ配策部96が通過するリブ32dごとに設けられている。配線パス部32eの大きさは、ヒンジ配策部96が嵌りかつ蓋部材20の開閉動作時にその配線パス部32e内で動くことを抑える程度に設定されている。
【0077】
配線パス部32eは、第一配線口32bと第二配線口32cとの間のヒンジ配策部96の長さがその第一配線口32bと第二配線口32cとの間の直線距離に比して長くなるように(例えば、第一配線口32bと第二配線口32cとの間で波打つように)リブ32dに設けられている。ヒンジ配策部96は、ヒンジ部材32の長手方向一端部と長手方向他端部との間(具体的には、第一配線口32bと第二配線口32cとの間)で直線距離に比して長くなるように配策されている。また、ヒンジ配策部96は、配線パス部32eを通過しながら余長を持って湾曲形状に延びるように配策されている。
【0078】
配策部材95は、また、第一可変配策部97と、第二可変配策部98と、を有している。第一可変配策部97は、配策部材95のうち、主に蓋部材20が第一回転軸を中心にして開閉動作する際にその開閉動作に伴って変形する部位のことである。第二可変配策部98は、配策部材95のうち、主に蓋部材20が第二回転軸を中心にして開閉動作する際にその開閉動作に伴って変形する部位のことである。
【0079】
第一可変配策部97は、配策部材95におけるヒンジ部材32の第一配線口32bから飛び出た箇所に設けられている。第一可変配策部97は、ヒンジ配策部96の第一配線口32b側の端部と蓋部材20側の制御部92との間に介在している。第一可変配策部97は、蓋部材20が第一回転軸を中心にして開閉動作することによりヒンジ部材32がその蓋部材20に追従することなく蓋部材20がヒンジ部材32に対して揺動した場合に、ヒンジ部材32の第一配線口32bと蓋部材20側の制御部92との距離変化に追従して、断線することなく変形する。
【0080】
第二可変配策部98は、配策部材95におけるヒンジ部材32の第二配線口32cから飛び出た箇所に設けられている。第二可変配策部98は、ヒンジ配策部96の第二配線口32c側の端部とボックス本体10側の電源装置との間に介在している。第二可変配策部98は、蓋部材20が第二回転軸を中心にして開閉動作することによりヒンジ部材32がその蓋部材20に追従してボックス本体10に対して揺動した場合に、ヒンジ部材32の第二配線口32cとボックス本体10側の電源装置との距離変化に追従して、断線することなく変形する。
【0081】
尚、上記の如く、第二配線口32cが配置される箇所における第二回転軸の軸中心からの距離は、第一配線口32bが配置される箇所における第一回転軸の軸中心からの距離に比べて長いので、第二可変配策部98が蓋部材20の第二回転軸を中心にした開閉動作時に変形する変形量(図11及び図12参照)は、第一可変配策部97が蓋部材20の第一回転軸を中心にした開閉動作時に変形する変形量(図11及び図13参照)に比して大きい。
【0082】
第一可変配策部97及び第二可変配策部98はそれぞれ、上記の変形量に対応して蓋部材20の開閉動作を許容する余長(すなわち、弛み)を有する部位である。第一可変配策部97の余長は、蓋部材20の左側開閉動作に伴う配策部材95の第一配線口32bから蓋部材20の配線口までの距離変化に合わせて設定されている。また、第二可変配策部98の余長は、蓋部材20の右側開閉動作に伴う配策部材95の第二配線口32cからボックス本体10の配線口までの距離変化に合わせて設定されている。第二可変配策部98の余長は、第一可変配策部97の余長に比して長い。
【0083】
このように、両開き収納装置1においては、ボックス本体10側の電源装置と蓋部材20側の作動機器90とを繋ぐ配策部材95が、ボックス本体10と蓋部材20との間に介在するように配置されるヒンジ部材32に沿うように延びて配策される。そして、その配策部材95のうちヒンジ部材32に配策されたヒンジ配策部96が、ヒンジ部材32の第一回転軸がある長手方向一端部側の第一配線口32bから出て蓋部材20側の作動機器90に渡ると共に、ヒンジ部材32の第二回転軸がある長手方向他端部側の第二配線口32cから出てボックス本体10側の電源装置に渡る。
【0084】
ヒンジ部材32は、図12に示す如く、蓋部材20が第一回転軸を中心にして回転する左側開閉動作時は、蓋部材20に追従せずボックス本体10側に留まる。一方、ヒンジ部材32は、図13に示す如く、蓋部材20が第二回転軸を中心にして回転する右側開閉動作時は、蓋部材20に追従してボックス本体10に対して揺動する。
【0085】
従って、上記の如く配策部材95がヒンジ部材32に沿って配策された構造によれば、ボックス本体10側の電源装置と蓋部材20側の作動機器90との間で配策部材95を、蓋部材20が第一回転軸を中心にして左開閉動作する際及び第二回転軸を中心にして開閉動作する際の何れにも断線させることなく適切に引き回すことができる。すなわち、両開き収納装置1の構造によれば、蓋部材20を第一回転軸及び第二回転軸それぞれを中心にして開閉動作可能に構成しつつ、蓋部材20に配設された作動機器90に繋がる配策部材95の配策を成立させることができる。
【0086】
また、配策部材95は、ヒンジ部材32に沿って配策されたヒンジ配策部96の一端部においてヒンジ部材32内から第一配線口32bを介して外部に飛び出して蓋部材20側の作動機器90に接続されると共に、そのヒンジ配策部96の他端部においてヒンジ部材32内から第二配線口32cを介して外部に飛び出してボックス本体10側の電源装置に接続される。このため、蓋部材20が開閉動作しても配策部材95の配策を成立させるうえで必要な余長をできるだけ短くすることができ、その配策部材95の配策の成立性を確保することができる。
【0087】
尚、ボックス本体10の収容部12内は、蓋部材20の第一回転軸を中心にした左側開閉動作時は車室内の左部(すなわち、右側ハンドル車の場合は助手席)側から視認し易くなり、一方、蓋部材20の第二回転軸を中心にした右側開閉動作時は車室内の右部(すなわち、右側ハンドル車の場合は運転席)側から視認し易くなる。上記の如く、第二可変配策部98の余長は、第一可変配策部97の余長に比して長い。蓋部材20の第二回転軸を中心にした右側開閉動作時における第二可変配策部98の変形量は、蓋部材20の第一回転軸を中心にした開閉動作時における第一可変配策部97の変形量に比して大きい。
【0088】
従って、右側ハンドル車の場合は、第一可変配策部97に比して余長の長い第二可変配策部98が、運転席側から視認し易くなり、助手席側から視認し難くなる。このため、右側ハンドル車の場合は、助手席に着座する人に余長の長い第二可変配策部98を視認させ難くして、助手席側からの見栄えを向上させることができ、助手席側の人に配策部材95が視認されることに伴って付与される不快感を軽減させることができる。尚、運転席側及び助手席側の何れでも見栄えを向上させるため、配策部材95のうち視認可能な露出部位に編組チューブなどを適用するのが好適である。
【0089】
また、配策部材95は、第一回転軸を中心にした蓋部材20の左側開閉動作に伴って変形する第一可変配策部97と、第二回転軸を中心にした蓋部材20の右側開閉動作に伴って変形する第二可変配策部98と、を有する。第一可変配策部97は、ヒンジ配策部96におけるヒンジ部材32の長手方向一端側の端部と蓋部材20側の作動機器90との間に介在している。また、第二可変配策部98は、ヒンジ配策部96におけるヒンジ部材32の長手方向他端側の端部とボックス本体10側の電源装置との間に介在している。第一可変配策部97は、蓋部材20の左側開閉動作を許容する余長を有する。また、第二可変配策部98は、蓋部材20の右側開閉動作を許容する余長を有する。このため、蓋部材の左側開閉動作及び右側開閉動作を共にスムースに実現することができる。
【0090】
更に、ヒンジ配策部96は、ヒンジ部材32の長手方向一端部(具体的には、第一配線口32b)と長手方向他端部(具体的には、第二配線口32c)との間で第一配線口32bと第二配線口32cとを繋ぐ直線距離に比して長くなるように配策されている。更に、ヒンジ配策部96は、配線パス部32eを通過しながら余長を持って湾曲しながら配策されている。このため、蓋部材20の開閉動作に伴ってヒンジ配策部96が蓋部材20側又はボックス本体10側に引っ張られたとしても、ヒンジ配策部96が伸縮することができるので、蓋部材20の開閉動作時に配策部材95が断線するのを防止することができる。
【0091】
尚、上記の実施形態においては、第一可変配策部97及び第二可変配策部98がそれぞれ特許請求の範囲に記載した「可変配策部」に相当している。
【0092】
ところで、上記の実施形態においては、配策部材95が可撓性を有し、第一可変配策部97及び第二可変配策部98それぞれが蓋部材20の開閉動作を許容する余長を有するように構成されている。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、第一可変配策部97及び第二可変配策部98それぞれが蓋部材20の開閉動作を許容する長さ伸縮可能に構成されていてもよい。
【0093】
また、上記の実施形態においては、配策部材95が、ヒンジ部材32に沿って配策されるヒンジ配策部96と、ヒンジ配策部96の一端部と蓋部材20側の作動機器90との間に介在する第一可変配策部97と、ヒンジ配策部96の他端部とボックス本体10側の電源装置との間に介在する第二可変配策部98と、を有することを前提にして、ヒンジ配策部96と第一可変配策部97とが互いに別部であるものとし、ヒンジ配策部96と第二可変配策部98とが互いに別部であるものとしている。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、ヒンジ配策部96と第一可変配策部97とがオーバーラップすることすなわち第一可変配策部97の少なくとも一部がヒンジ部材32内に収まっていることとしてもよいし、また、ヒンジ配策部96と第二可変配策部98とがオーバーラップすることすなわち第二可変配策部98の少なくとも一部がヒンジ部材32内に収まっていることとしてもよい。
【0094】
また、上記の実施形態においては、作動機器90が電力供給により作動するヒータであるものとした。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、作動機器90が、電力供給により作動するクーラや照明装置などであってもよい。また、作動機器90が、電力供給により作動するもの以外に、水や空気などの流体の供給により作動するものであってもよい。作動機器90が流体供給により作動する場合、配策部材95は、その流体が流通可能な管状部材である。そして、この管状部材としての配策部材95のうち少なくとも第一可変配策部97及び第二可変配策部98はそれぞれ、変形可能に(例えば、可撓性を有するチューブ状に或いは蛇腹状などの長さ伸縮可能に)構成される。
【0095】
また、上記の実施形態においては、蓋部材20の第一回転軸を中心にした左側開閉動作時にヒンジ部材32が蓋部材20に追従せずボックス本体10側に留まり、蓋部材20の第二回転軸を中心にした右側開閉動作時にヒンジ部材32が蓋部材20に追従してボックス本体10に対して揺動するものとしている。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。逆に、蓋部材20の第一回転軸を中心にした左側開閉動作時にヒンジ部材32が蓋部材20に追従してボックス本体10に対して揺動し、蓋部材20の第二回転軸を中心にした右側開閉動作時にヒンジ部材32が蓋部材20に追従せずボックス本体10側に留まるものとしてもよい。
【0096】
更に、上記の実施形態においては、ヒンジ部材32をボックス本体10の後部側に配置することとしている。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、ヒンジ部材32をボックス本体10の前部側に配置することとしてもよい。また、両開き収納装置1が、ボックス本体10の後部側にのみヒンジ部材32を配置した構造を有することに限らず、ボックス本体10の後部側及び前部側の双方にそれぞれヒンジ部材32を配置した構造を有するようにしてもよい。
【0097】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0098】
1:両開き収納装置、10:ボックス本体、11:開口、12:収容部、20:蓋部材、30:開閉機構、32:ヒンジ部材、39:ロックユニット、40:左側ロック装置、50:右側ロック装置、90:作動機器、91:発熱体、92:制御部、95:配策部材、96:ヒンジ配策部、97:第一可変配策部、98:第二可変配策部。
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