特許 7388389 蓄電装置の製造方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2023-11-20

(45)【発行日】2023-11-29

(54)【発明の名称】蓄電装置の製造方法

(51)【国際特許分類】

   H01M 50/293 20210101AFI20231121BHJP

   H01M 50/211 20210101ALI20231121BHJP

   H01M 50/224 20210101ALI20231121BHJP

   H01M 50/276 20210101ALI20231121BHJP

   H01M 50/289 20210101ALI20231121BHJP

   H01M 50/588 20210101ALI20231121BHJP

   H01M 50/591 20210101ALI20231121BHJP

   H01M 50/593 20210101ALI20231121BHJP

【ＦＩ】

H01M50/293

H01M50/211

H01M50/224

H01M50/276

H01M50/289

H01M50/588

H01M50/591

H01M50/593

【請求項の数】 2

(21)【出願番号】P 2021060576

(22)【出願日】2021-03-31

(65)【公開番号】P2022156737

(43)【公開日】2022-10-14

【審査請求日】2022-08-09

(73)【特許権者】

【識別番号】000003207

【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110001195

【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】加藤 真史

【審査官】山下 裕久

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１６－００９５８５（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１３－０１２４４１（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０２０－００９６７２（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｈ０１Ｍ ５０／２９３

Ｈ０１Ｍ ５０／２１１

Ｈ０１Ｍ ５０／２２４

Ｈ０１Ｍ ５０／２７６

Ｈ０１Ｍ ５０／２８９

Ｈ０１Ｍ ５０／５８８

Ｈ０１Ｍ ５０／５９１

Ｈ０１Ｍ ５０／５９３

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

金属からなり、内面に絶縁シートが設けられており少なくとも一方向に開口するケース本体と、金属からなり、内面に絶縁シートが設けられており前記ケース本体の開口を塞ぐ形状を有する閉塞板と、を準備する準備工程と、
前記ケース本体内に蓄電モジュールを配置する配置工程と、
前記閉塞板によって前記ケース本体の開口が閉塞されるように前記ケース本体に前記閉塞板を溶接する溶接工程と、
前記ケース本体の内面と前記閉塞板の内面との境界部を被覆する被覆部が形成されるように、前記ケース本体外から前記ケース本体内に絶縁性を有する絶縁性材料を注入する注入工程と、を備える、蓄電装置の製造方法。

【請求項2】

前記注入工程では、前記絶縁性材料として５Ｐａ・ｓ以上の粘度を有する材料を注入する、請求項１に記載の蓄電装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は、蓄電装置及び蓄電装置の製造方法に関する。

【背景技術】

【0002】

例えば、特開２００３－１８７７５５号公報には、ケースと、ケース内に収容された複数の電極と、を備える二次電池が開示されている。ケースは、上方に開口する箱状部と、箱状部の開口を塞ぐ蓋部と、を有している。箱状部の内面及び蓋部の内面には、絶縁フィルムが設けられている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】特開２００３－１８７７５５号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

特開２００３－１８７７５５号公報に記載される二次電池では、蓋部を箱状部に溶接することにより、箱状部と蓋部との境界部分において絶縁フィルムが溶融する場合がある。この場合、絶縁性が不十分となる。

【0005】

本開示の目的は、絶縁性を確保することが可能な蓄電装置及びその製造方法を提供することである。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本開示の一局面に従った蓄電装置は、金属からなり、少なくとも一方向に開口するケース本体と、前記ケース本体内に配置された蓄電モジュールと、金属からなり、前記ケース本体の開口を塞ぐように前記ケース本体に溶接された閉塞板と、前記ケース本体の内面及び前記閉塞板の内面を被覆する絶縁シートと、絶縁性を有する材料からなり、前記ケース本体の内面と前記閉塞板の内面との境界部を被覆する被覆部と、を備える。

【0007】

また、本開示の一局面に従った蓄電装置の製造方法は、金属からなり、内面に絶縁シートが設けられており少なくとも一方向に開口するケース本体と、金属からなり、内面に絶縁シートが設けられており前記ケース本体の開口を塞ぐ形状を有する閉塞板と、を準備する準備工程と、前記ケース本体内に蓄電モジュールを配置する配置工程と、前記閉塞板によって前記ケース本体の開口が閉塞されるように前記ケース本体に前記閉塞板を溶接する溶接工程と、前記ケース本体の内面と前記閉塞板の内面との境界部を被覆する被覆部が形成されるように、前記ケース本体外から前記ケース本体内に絶縁性を有する絶縁性材料を注入する注入工程と、を備える。

【発明の効果】

【0008】

本開示によれば、絶縁性を確保することが可能な蓄電装置及びその製造方法を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0009】

【図1】本開示の一実施形態の蓄電装置の構成を概略的に示す断面図である。

【図2】溶接工程後の状態を概略的に示す断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0010】

本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。

【0011】

図１は、本開示の一実施形態の蓄電装置の構成を概略的に示す斜視図である。この蓄電装置１は、例えば、車両に搭載される。

【0012】

図１に示されるように、蓄電装置１は、蓄電モジュール１００と、ケース２００と、絶縁シート３００と、被覆部４００と、を備えている。蓄電装置１に接するように冷却装置２が設けられてもよい。

【0013】

蓄電モジュール１００は、少なくとも一つの蓄電セル１０１を有している。本実施形態では、蓄電モジュール１００は、複数の蓄電セル１０１を有している。なお、図１には、３つの蓄電セル１０１が示されているが、蓄電セル１０１の数は、特に限定されない。蓄電セル１０１として、例えば、リチウムイオン電池が挙げられる。

【0014】

蓄電セル１０１は、いわゆるラミネート型セルである。すなわち、蓄電セル１０１は、複数の電極体１１０と、集電板１２０と、ラミネートフィルム１３０と、接着部材１４０と、電解液（図示略）と、を有している。なお、蓄電セル１０１は、セパレータと電解液の代わりに、固定電解質を有する全固体電池で構成されてもよい。

【0015】

複数の電極体１１０は、一方向に積層されている。各電極体１１０の端部は、集電板１２０に電気的に接続されている。

【0016】

ラミネートフィルム１３０は、複数の電極体１１０及び集電板１２０の一部を被覆している。集電板１２０の端部は、ラミネートフィルム１３０から突出している。各集電板１２０の端部は、複数の蓄電セル１０１が電気的に直列に接続されるようにバスバー１０２によって接続されている。ラミネートフィルム１３０は、接着部材１４０を介して集電板１２０に接続されている。ラミネートフィルム１３０内には、電解液が充填されている。

【0017】

ケース２００は、蓄電モジュール１００を収容している。ケース２００は、金属（アルミニウム等）からなる。ケース２００は、ケース本体２１０と、閉塞板２２０と、を有している。

【0018】

ケース本体２１０は、少なくとも一方向に開口している。本実施形態では、ケース本体２１０は、各蓄電セル１０１の積層方向と直交する方向に延びる中心軸を有する四角筒状に形成されている。ケース本体２１０には、注入口ｈ（図２を参照）が設けられている。

【0019】

閉塞板２２０は、ケース本体２１０の開口を塞ぐようにケース本体２１０に溶接されている。閉塞板２２０は、平板状に形成されている。

【0020】

冷却装置２は、閉塞板２２０に接するように設けられる。換言すれば、冷却装置２は、各蓄電セル１０１の積層方向と直交する方向にケース２００に接するように設けられる。

【0021】

絶縁シート３００は、ケース本体２１０の内面及び閉塞板２２０の内面を被覆している。絶縁シート３００は、ケース本体２１０の外面を被覆していてもよい。

【0022】

被覆部４００は、絶縁性を有する絶縁性材料からなる。被覆部４００は、ケース本体２１０の内面と閉塞板２２０の内面との境界部２１５を被覆している。被覆部４００は、ケース２００の注入口ｈを通じてケース２００内に前記絶縁性材料（本実施形態ではポッティング材）を注入することにより形成される。被覆部４００は、接着部材１４０とともに、集電板１２０のうちラミネートフィルム１３０から突出した部位の全域と、バスバー１０２の全域と、を被覆していることが好ましい。このようにすれば、ケース２００に対する蓄電モジュール１００の相対変位が抑制される。

【0023】

図１に示されるように、蓄電装置１は、制限ユニット５００をさらに備えていてもよい。制限ユニット５００は、蓄電モジュール１００とケース本体２１０との間に配置されている。なお、制限ユニット５００は、互いに隣接する一対の蓄電セル１０１間に配置されてもよい。

【0024】

制限ユニット５００は、各蓄電セル１０１の積層方向におけるケース２００に対する蓄電モジュール１００の相対変位を制限する。制限ユニット５００は、例えば、ダイラタンシー性を有する材料からなる。すなわち、各蓄電セル１０１の膨張時等、ケース２００に対して各蓄電セル１０１が小さな速度で前記積層方向に相対変位するときには、制限ユニット５００は、弾性変形することによって各蓄電セル１０１の膨張を吸収する。一方、蓄電装置１の振動時等、ケース２００に対して各蓄電セル１０１が比較的大きな速度で前記積層方向に相対変位するときには、制限ユニット５００は、相対的に大きな弾性率を示すことによってケース２００に対する各蓄電セル１０１の相対変位を規制する。これにより、蓄電装置１の振動時における蓄電モジュール１００の共振が抑制される。

【0025】

以上に説明した蓄電装置１の体積抵抗率は、１．０×１０^６Ω・ｃｍ以上であることが好ましい。

【0026】

次に、蓄電装置１の製造方法について説明する。本製造方法は、準備工程と、配置工程と、溶接工程と、注入工程と、を備えている。

【0027】

準備工程では、内面に絶縁シート３００が設けられたケース本体２１０と、内面に絶縁シート３００が設けられた閉塞板２２０と、が準備される。

【0028】

配置工程では、絶縁シート３００が設けられたケース本体２１０内に、蓄電モジュール１００が配置される。

【0029】

溶接工程では、図２に示されるように、絶縁シート３００が設けられた閉塞板２２０によってケース本体２１０の開口が閉塞されるようにケース本体２１０に閉塞板２２０が溶接される。このとき、ケース本体２１０の内面と閉塞板２２０の内面との境界部２１５を被覆している絶縁シート３００が溶融する場合がある。

【0030】

注入工程では、ケース本体２１０の内面と閉塞板２２０の内面との境界部２１５を被覆する被覆部４００が形成されるように、ケース本体２１０に設けられた注入口ｈを通じてケース２００外からケース２００内に絶縁性を有する絶縁性材料が注入される。絶縁性材料は、被覆部４００を形成する材料（ポッティング材）である。この工程では、境界部２１５（ケース２００の内面が露出している部位）への浸透性を高めるため、前記絶縁性材料として５Ｐａ・ｓ以上の粘度を有する材料が注入される。

【0031】

以上のように、本実施形態の蓄電装置１では、ケース本体２１０の内面及び閉塞板２２０の内面が絶縁シート３００により被覆されており、かつ、ケース本体２１０の内面と閉塞板２２０の内面との境界部２１５が被覆部４００により被覆されているため、絶縁性が確保される。

【0032】

また、上記実施形態では、蓄電セル１０１の積層方向におけるケース２００の外側からケース２００を介して蓄電セル１０１の主面を冷却するのではなく、前記積層方向と直交する方向におけるケース２００の側部からポッティング材からなる被覆部４００を介して集電板１２０が冷却される。このため、蓄電モジュール１００が有効に冷却される。また、蓄電装置１と冷却装置２とを含む装置全体の積層方向における寸法の小型化が可能となる。

【0033】

上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。

【0034】

上記実施形態における蓄電装置は、金属からなり、少なくとも一方向に開口するケース本体と、前記ケース本体内に配置された蓄電モジュールと、金属からなり、前記ケース本体の開口を塞ぐように前記ケース本体に溶接された閉塞板と、前記ケース本体の内面及び前記閉塞板の内面を被覆する絶縁シートと、絶縁性を有する材料からなり、前記ケース本体の内面と前記閉塞板の内面との境界部を被覆する被覆部と、を備える。

【0035】

この蓄電装置では、ケース本体の内面及び閉塞板の内面が絶縁シートにより被覆されており、かつ、ケース本体の内面と閉塞板の内面との境界部が被覆部により被覆されているため、絶縁性が確保される。

【0036】

また、前記蓄電装置の体積抵抗率は、１．０×１０^６Ω・ｃｍ以上であることが好ましい。

【0037】

上記実施形態における蓄電装置の製造方法は、金属からなり、内面に絶縁シートが設けられており少なくとも一方向に開口するケース本体と、金属からなり、内面に絶縁シートが設けられており前記ケース本体の開口を塞ぐ形状を有する閉塞板と、を準備する準備工程と、前記ケース本体内に蓄電モジュールを配置する配置工程と、前記閉塞板によって前記ケース本体の開口が閉塞されるように前記ケース本体に前記閉塞板を溶接する溶接工程と、前記ケース本体の内面と前記閉塞板の内面との境界部を被覆する被覆部が形成されるように、前記ケース本体外から前記ケース本体内に絶縁性を有する絶縁性材料を注入する注入工程と、を備える。

【0038】

この製造方法では、溶接工程においてケース本体の内面と閉塞板の内面との境界部において絶縁シートが溶融した場合においても、その後の注入工程において前記境界部が絶縁性材料からなる被覆部により被覆されるため、絶縁性が確保された蓄電装置が製造される。

【0039】

また、前記注入工程では、前記絶縁性材料として５Ｐａ・ｓ以上の粘度を有する材料を注入することが好ましい。

【0040】

なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。

【符号の説明】

【0041】

１ 蓄電装置、２ 冷却装置、１００ 蓄電モジュール、１０１ 蓄電セル、１０２ バスバー、１１０ 電極体、１２０ 集電板、１３０ ラミネートフィルム、１４０ 接着部材、２００ ケース、２１０ ケース本体、２１５ 境界部、２２０ 閉塞板、３００ 絶縁シート、４００ 被覆部、５００ 制限ユニット、ｈ 注入口。

【図1】

【図2】