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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】燃料電池システム及び飛行体
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04858 20160101AFI20231121BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20231121BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20231121BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20231121BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20231121BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20231121BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/00 A
H01M8/00 Z
H01M8/04537
H01M8/2465
B64D27/24
H01M8/10 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021073157
(22)【出願日】2021-04-23
(65)【公開番号】P2022167392
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】岡部 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 公男
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-331705(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0033274(US,A1)
【文献】特開2005-183047(JP,A)
【文献】特開2010-165503(JP,A)
【文献】特開2013-062153(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111231702(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04858
H01M 8/00
H01M 8/04537
H01M 8/2465
B64D 27/24
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体用の燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムは、燃料電池と、
バッテリと、
前記飛行体の傾斜角を測定する角度センサと、
前記飛行体にかかる重力加速度を測定する重力加速度センサと、
モータと、
制御部を有し、
前記モータは、前記燃料電池と前記バッテリが独立した電源として回路で接続され、且つダブルインバータを用いた2重3相巻線を有し、
前記制御部は、前記モータからの通常出力要求時は、前記燃料電池からの所定の第1出力で前記モータを駆動し、且つ、前記モータで発生したトルクで前記バッテリを充電し、
前記制御部は、前記傾斜角が所定の角度よりも大きい場合、及び、前記重力加速度が所定の重力加速度よりも大きい場合の内の少なくともいずれか一方の場合に、前記モータからの高出力要求が有ると判定し、
前記制御部は、前記モータからの高出力要求時は、前記第1出力で前記燃料電池を発電させ、且つ、所定の第2出力で前記バッテリを放電させ、前記燃料電池及び前記バッテリの出力で前記モータを駆動することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記第2出力の範囲は、前記通常出力要求時の前記モータの回転方向と同じになる範囲である、請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池は、2以上の単セルを積層した積層体である燃料電池スタックであり、
前記燃料電池スタックは、両端に前記回路と接続されたエンドターミナルを有し、且つ、両端以外の任意の位置に前記回路と接続可能な少なくとも1つの予備ターミナルを有し、
前記回路は、スイッチを有し、
前記スイッチは、当該スイッチの切替えにより前記エンドターミナルと前記予備ターミナルとの回路切替えを可能とし、
前記燃料電池システムは、前記燃料電池スタックの各単セルの電圧を計測するセル電圧センサを有し、
前記制御部は、前記セル電圧センサが計測した各単セルの電圧をモニタリングし、少なくとも1つの前記単セルの電圧の低下を検知したとき、電圧の低下した当該単セルが前記回路から外れるように、前記スイッチを切替える、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の燃料電池システムを備える飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システム及び飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(FC)は、1つの単セル(以下、セルと記載する場合がある)又は複数の単セルを積層した燃料電池スタック(以下、単にスタックと記載する場合がある)で構成され、水素等の燃料ガスと酸素等の酸化剤ガスとの電気化学反応によって電気エネルギーを取り出す発電装置である。なお、実際に燃料電池に供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスは、酸化・還元に寄与しないガスとの混合物である場合が多い。特に酸化剤ガスは酸素を含む空気である場合が多い。
なお、以下では、燃料ガスや酸化剤ガスを、特に区別することなく単に「反応ガス」あるいは「ガス」と呼ぶ場合もある。また、単セル、及び、単セルを積層した燃料電池スタックのいずれも、燃料電池と呼ぶ場合がある。
【0003】
燃料電池に関して種々の研究がなされている。
例えば特許文献1では、燃料電池が搭載された飛行体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-081559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池を飛行体に搭載する場合、車両に搭載する場合と比較して、天候の影響を受け易い。
【0006】
飛行体が天候等の影響を受けた場合の燃料電池のフェールセーフ技術として、燃料電池の電源としての信頼性の向上と出力の向上が求められる。
【0007】
また、風等の外部からの入力の影響や方向転換時等に対し航空機等の飛行体のバランスを取るために、繰り返し燃料電池の出力を変化させる場合がある。
燃料電池は出力に対して燃費効率の良い動作範囲があるため、燃料電池の使い方によっては、発電効率が低く燃費が悪化してしまう。
【0008】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、燃料電池とバッテリの電源としての独立性及びリダンダントを保ちながら、バッテリへの充電を可能とする燃料電池システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の燃料電池システムは、飛行体用の燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムは、燃料電池と、
バッテリと、
モータと、
制御部を有し、
前記モータは、前記燃料電池と前記バッテリが独立した電源として回路で接続され、且つダブルインバータを用いた2重3相巻線を有し、
前記制御部は、前記モータからの通常出力要求時は、前記燃料電池からの所定の第1出力で前記モータを駆動し、且つ、前記モータで発生したトルクで前記バッテリを充電することを特徴とする。
【0010】
本開示の燃料電池システムにおいては、前記制御部は、前記モータからの高出力要求時は、前記第1出力で前記燃料電池を発電させ、且つ、所定の第2出力で前記バッテリを放電させ、前記燃料電池及び前記バッテリの出力で前記モータを駆動してもよい。
【0011】
本開示の燃料電池システムにおいては、前記第2出力の範囲は、前記通常出力要求時の前記モータの回転方向と同じになる範囲であってもよい。
【0012】
本開示の燃料電池システムにおいては、前記燃料電池は、2以上の単セルを積層した積層体である燃料電池スタックであり、
前記燃料電池スタックは、両端に前記回路と接続されたエンドターミナルを有し、且つ、両端以外の任意の位置に前記回路と接続可能な少なくとも1つの予備ターミナルを有し、
前記回路は、スイッチを有し、
前記スイッチは、当該スイッチの切替えにより前記エンドターミナルと前記予備ターミナルとの回路切替えを可能とし、
前記燃料電池システムは、前記燃料電池スタックの各単セルの電圧を計測するセル電圧センサを有し、
前記制御部は、前記セル電圧センサが計測した各単セルの電圧をモニタリングし、少なくとも1つの前記単セルの電圧の低下を検知したとき、電圧の低下した当該単セルが前記回路から外れるように、前記スイッチを切替えてもよい。
【0013】
本開示の飛行体は、前記燃料電池システムを備える。
【発明の効果】
【0014】
本開示の燃料電池システムによれば、燃料電池とバッテリの電源としての独立性及びリダンダントを保ちながら、バッテリへの充電を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本開示に用いられるダブルインバータによる2重3相モータの駆動システムの一例を示す回路模式図である。
図2図2は、本開示に用いられる回路の燃料電池付近の一例を示す模式図であり、(1)は燃料電池の通常運転時、(2)は単セル(a)の不調時、(3)は単セル(b)の不調時の例を示す図である。
図3図3は、本開示の燃料電池システムの制御の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、本開示の燃料電池システムの制御の別の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.第1実施形態
本開示の燃料電池システムは、飛行体用の燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムは、燃料電池と、
バッテリと、
モータと、
制御部を有し、
前記モータは、前記燃料電池と前記バッテリが独立した電源として回路で接続され、且つダブルインバータを用いた2重3相巻線を有し、
前記制御部は、前記モータからの通常出力要求時は、前記燃料電池からの所定の第1出力で前記モータを駆動し、且つ、前記モータで発生したトルクで前記バッテリを充電することを特徴とする。
【0017】
本開示においては、燃料ガス、及び、酸化剤ガスをまとめて反応ガスと称する。アノードに供給される反応ガスは、燃料ガスであり、カソードに供給される反応ガスは酸化剤ガスである。燃料ガスは、主に水素を含有するガスであり、水素であってもよい。酸化剤ガスは酸素、空気、乾燥空気等であってもよい。
【0018】
本開示の燃料電池システムは、飛行体に搭載されて用いられる。
また、本開示の燃料電池システムは、二次電池の電力でも飛行可能な飛行体に搭載されて用いられてもよい。
本開示の飛行体は、航空機であってもよい。航空機は、飛行機、垂直離着陸機等であってもよい。垂直離着陸機は、ヘリコプター、ドローン等であってもよい。
飛行体は、本開示の燃料電池システムを備えていてもよい。
【0019】
燃料電池システムは、バッテリを備える。
バッテリ(二次電池)は、充放電可能なものであればよく、例えば、ニッケル水素二次電池、及び、リチウムイオン二次電池等の従来公知の二次電池が挙げられる。また、二次電池は、電気二重層コンデンサ等の蓄電素子を含むものであってもよい。二次電池は、複数個を直列に接続した構成であってもよい。二次電池の充放電は、制御部によって制御されてもよい。
【0020】
燃料電池システムは、モータを備える。
モータは飛行体の回転翼のモータであってもよく、エアコンプレッサーのモータであってもよい。
モータは、燃料電池とバッテリが独立した電源として回路で接続され、且つダブルインバータを用いた2重3相巻線を有する。
【0021】
図1は、本開示に用いられるダブルインバータによる2重3相モータの駆動システムの一例を示す回路模式図である。図1に示すように、2組の3相巻線を有する2重3相巻線モータ30の1組の3相巻線を第1インバータ40によって駆動し、もう1組の3相巻線を第2インバータ50によって駆動するシステムである。
ここで、2重3相巻線モータ30は、互いに電気的に絶縁された2組の3相巻線を1つの固定子に収めたモータであり、2台のインバータで駆動することを前提とした専用モータである。
2台のインバータの内の第1インバータ40にはバッテリ20が接続され、第2インバータ50には燃料電池10が接続されている。
各インバータは、6つのパワー素子60により構成され、制御部の指令に基づき2重3相巻線モータ30に交流電力を供給する。
バッテリ20と第1インバータ40との間にはコンバータ1が配置されていてもよい。
コンバータ1は、バッテリ20の電圧を昇圧して第1インバータ40に供給してもよい。
燃料電池10と第2インバータ50との間にはコンバータ2が配置されていてもよい。
コンバータ2は、燃料電池の電圧を昇圧して第2インバータ50に供給してもよい。
2重3相モータ駆動システムは、専用モータを必要とするが、第1インバータ40の出力と第2インバータ50の出力が電気的に独立しているため、2台のインバータのうち、一方が故障したとしてもその影響が他方に及ばない。
【0022】
制御部は、物理的には、例えば、CPU(中央演算処理装置)等の演算処理装置と、CPUで処理される制御プログラム及び制御データ等を記憶するROM(リードオンリーメモリー)、並びに、主として制御処理のための各種作業領域として使用されるRAM(ランダムアクセスメモリー)等の記憶装置と、入出力インターフェースとを有するものである。また、制御部は、例えば、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)等の制御装置であってもよい。
制御部は、飛行体に搭載されていてもよい駆動スイッチと電気的に接続されていてもよい。制御部は駆動スイッチが切られていても外部電源により動作可能であってもよい。
【0023】
制御部は、モータからの通常出力要求時は、燃料電池からの所定の第1出力でモータを駆動し、且つ、モータで発生したトルクでバッテリを充電する。
所定の第1出力とは、通常出力要求時に必要な燃料電池の出力とバッテリの充電に必要な出力を考慮して適宜設定することができる。
通常出力要求時とは、例えば、飛行体の水平飛行時等の機体が安定して飛行している時等が想定される。
モータからの通常出力要求時等のモータトルクが少しで良い時には燃料電池の電源から所定の第1出力で必要トルクを発生させ、そのトルクでバッテリ側のインバータを発電させ、バッテリを充電する。電源の独立性を保つ非接触充電を行うことにより、燃料電池に不具合が生じた場合であってもバッテリの出力でモータを駆動することができる。
本開示においては、バッテリと燃料電池が独立した電源として接続され、且つダブルインバータを用いた2重3相巻線を有するモータを搭載した燃料電池システムにおいて、モータからの通常出力要求時等のバッテリと燃料電池の両方の出力が必要な状況ではなく、燃料電池の出力で賄える状況において、燃料電池の発電効率を向上させるための制御を実施する。燃料電池は、バッテリの受け入れ可能な電力と最低限飛行に必要な電力を一定で出力する。これにより、燃料電池とバッテリのそれぞれの電源の特性を生かし、電源の独立性及びリダンダントを保ちながら、バッテリへの充電を可能とする。また、燃料電池とバッテリのそれぞれの電源の特性を生かして、燃料電池の燃費を良好にすることができる。
【0024】
制御部は、モータからの高出力要求時は、第1出力で燃料電池を発電させ、且つ、所定の第2出力でバッテリを放電させ、燃料電池及びバッテリの出力でモータを駆動してもよい。
第2出力の範囲は、通常出力要求時のモータの回転方向と同じになる範囲であってもよい。第2出力が高すぎるとモータが逆回転する場合があり、燃費が悪くなる。そのため、第2出力の範囲は、通常出力要求時のモータの回転方向と同じになる範囲とすることにより、燃費を良好にすることができる。
本開示においては、バッテリと燃料電池が独立した電源として接続され、且つダブルインバータを用いた2重3相巻線を有するモータを搭載した燃料電池システムにおいて、燃料電池とバッテリのそれぞれの電源の特性を生かし、電源の独立性及びリダンダントを保ちながら、モータトルクが多く必要な時には2つの電源から動力を得ることができる。モータトルクが多く必要な時とは、例えば風等の外部からの入力時や飛行体の方向転換時等が想定される。
具体的には、モータトルクが多く必要な時の飛行体の推進力の調整は、バッテリ側のインバータで発電し、この際のバッテリの放電は、モータの回転方向が逆にならない範囲で行い、燃料電池は、バッテリの受け入れ可能な電力と最低限飛行に必要な電力を一定で出力する。これにより、燃料電池とバッテリのそれぞれの電源の特性を生かして、燃料電池の燃費を良好にすることができる。
【0025】
モータからの高出力要求の有無を判定するために、燃料電池システムは、例えば、角度センサ、重力加速度センサ等を備えていてもよい。
角度センサは、飛行体の傾斜角を測定する。
角度センサは、制御部と電気的に接続され、制御部は、角度センサによって測定された飛行体の傾斜角を検知する。制御部は、飛行体の傾斜角を検知し、飛行体の傾斜角が所定の角度よりも大きい場合に外部からの入力や飛行体の方向転換等があったとみなしてもよい。所定の傾斜角は経験則により適宜設定してもよい。
角度センサは、従来公知の角度計等を用いることができる。
重力加速度センサは、飛行体にかかる重力加速度を測定する。
重力加速度センサは、制御部と電気的に接続され、制御部は、重力加速度センサによって測定された飛行体にかかる重力加速度を検知する。制御部は、飛行体にかかる重力加速度を検知し、飛行体にかかる重力加速度が所定の重力加速度よりも大きい場合に外部からの入力等があったとみなしてもよい。所定の重力加速度は経験則により適宜設定してもよい。
重力加速度センサは、従来公知の重力加速度計等を用いることができる。
【0026】
本開示の燃料電池システムは、燃料電池を備える。
燃料電池は、単セルを1つのみ有するものであってもよいし、単セルを複数個積層した積層体である燃料電池スタックであってもよい。
単セルの積層数は特に限定されず、例えば、2~数百個であってもよく、2~600個であってもよい。
【0027】
燃料電池の単セルは、少なくとも膜電極ガス拡散層接合体を備える。
膜電極ガス拡散層接合体は、アノード側ガス拡散層及び、アノード触媒層及び、電解質膜及び、カソード触媒層及び、カソード側ガス拡散層をこの順に有する。
【0028】
カソード(酸化剤極)は、カソード触媒層及びカソード側ガス拡散層を含む。
アノード(燃料極)は、アノード触媒層及びアノード側ガス拡散層を含む。
カソード触媒層及びアノード触媒層をまとめて触媒層と称する。また、アノード触媒およびカソード触媒としては、例えば、Pt(白金)、Ru(ルテニウム)などが挙げられ、触媒を担持する母材および導電材としては、例えば、カーボンなどの炭素材料等が挙げられる。
【0029】
カソード側ガス拡散層及びアノード側ガス拡散層をまとめてガス拡散層と称する。
ガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材等であってもよい。
導電性部材としては、例えば、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、並びに、金属メッシュ、及び、発泡金属などの金属多孔質体等が挙げられる。
【0030】
電解質膜は、固体高分子電解質膜であってもよい。固体高分子電解質膜としては、例えば、水分が含まれたパーフルオロスルホン酸の薄膜等のフッ素系電解質膜、及び、炭化水素系電解質膜等が挙げられる。電解質膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)等であってもよい。
【0031】
単セルは、必要に応じて膜電極ガス拡散層接合体の両面を挟持する2枚のセパレータを備えてもよい。2枚のセパレータは、一方がアノード側セパレータであり、もう一方がカソード側セパレータである。本開示では、アノード側セパレータとカソード側セパレータとをまとめてセパレータという。
セパレータは、反応ガス及び冷媒を単セルの積層方向に流通させるための供給孔及び排出孔を有していてもよい。冷媒としては、低温時の凍結を防止するために例えばエチレングリコールと水との混合溶液を用いることができる。
供給孔は、燃料ガス供給孔、酸化剤ガス供給孔、及び、冷媒供給孔等が挙げられる。
排出孔は、燃料ガス排出孔、酸化剤ガス排出孔、及び、冷媒排出孔等が挙げられる。
セパレータは、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよい。
セパレータは、ガス拡散層に接する面に反応ガス流路を有していてもよい。また、セパレータは、ガス拡散層に接する面とは反対側の面に燃料電池の温度を一定に保つための冷媒流路を有していてもよい。
セパレータがアノード側セパレータである場合は、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよく、アノード側セパレータは、アノード側ガス拡散層に接する面に燃料ガス供給孔から燃料ガス排出孔に燃料ガスを流す燃料ガス流路を有していてもよく、アノード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に冷媒供給孔から冷媒排出孔に冷媒を流す冷媒流路を有していてもよい。
セパレータがカソード側セパレータである場合は、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよく、カソード側セパレータは、カソード側ガス拡散層に接する面に酸化剤ガス供給孔から酸化剤ガス排出孔に酸化剤ガスを流す酸化剤ガス流路を有していてもよく、カソード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に冷媒供給孔から冷媒排出孔に冷媒を流す冷媒流路を有していてもよい。
セパレータは、ガス不透過の導電性部材等であってもよい。導電性部材としては、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン、及び、プレス成形した金属(例えば、鉄、アルミニウム、及び、ステンレス等)板等であってもよい。また、セパレータが集電機能を備えるものであってもよい。
【0032】
燃料電池は、各供給孔が連通した入口マニホールド、及び、各排出孔が連通した出口マニホールド等のマニホールドを有していてもよい。
入口マニホールドは、アノード入口マニホールド、カソード入口マニホールド、及び、冷媒入口マニホールド等が挙げられる。
出口マニホールドは、アノード出口マニホールド、カソード出口マニホールド、及び、冷媒出口マニホールド等が挙げられる。
【0033】
燃料電池は、2以上の単セルを積層した積層体である燃料電池スタックである場合、当該燃料電池スタックは、両端に回路と接続されたエンドターミナルを有し、且つ、両端以外の任意の位置に回路と接続可能な少なくとも1つの予備ターミナルを有していてもよい。
エンドターミナルは、インバータ2又はコンバータ2の回路と接続されていてもよい。
予備ターミナルは、少なくとも1つ有していればよく、単セルの積層数をn個としたとき、最大で(n-1)個有していてもよい。
【0034】
回路は、スイッチを有していてもよい。
スイッチは、当該スイッチの切替えによりエンドターミナルと予備ターミナルとの回路切替えを可能とする。
回路は、スイッチを複数個有していてもよく、各ターミナルに対応して複数のスイッチが回路に配置されていてもよい。各ターミナルに対応する各スイッチによって各ターミナルの回路への接続と非接続の切替えが個別に可能となっていてもよい。
スイッチ(スイッチング素子)としては、IGBT、及び、MOSFET等であってもよい。
【0035】
燃料電池システムは、セル電圧センサを有していてもよい。
セル電圧センサは、燃料電池スタックの各単セルの電圧を計測する。
セル電圧センサは、制御部と電気的に接続され、制御部は、セル電圧センサによって測定された燃料電池スタックの各単セルの電圧を検知する。
セル電圧センサは、従来公知の電圧計等を用いることができる。
【0036】
制御部は、セル電圧センサが計測した各単セルの電圧をモニタリングし、少なくとも1つの単セルの電圧の低下を検知したとき、電圧の低下した当該単セルが回路から外れるように、スイッチを切替えてもよい。
【0037】
燃料電池スタックにおいて1つでも単セルの不調が発生すると燃料電池スタック全体の出力が下がってしまう。本開示においては、燃料電池スタックの途中に予備ターミナルと、回路切り替え可能なスイッチを配置し、セル電圧モニタによりセル電圧低下(不調)を検知した場合に、回路切り替えの制御を実施する。これにより、燃料電池の電圧が低下した際にも使える回路構成とすることができる。
【0038】
図2は、本開示に用いられる回路の燃料電池付近の一例を示す模式図であり、(1)は燃料電池の通常運転時、(2)は単セル(a)の不調時、(3)は単セル(b)の不調時の例を示す図である。
図2に示す回路は、燃料電池スタック10と、第1スイッチ11と、第2スイッチ12と、第3スイッチ13と、第4スイッチ14と、第1エンドターミナル70と、第2エンドターミナル71と、予備ターミナル72と、を備える。二重波線はその先の回路の省略を意味する。二重波線の先は第2コンバータ又は第2インバータと接続していてもよい。
(1)で示す燃料電池の通常運転時は、第1スイッチ11と、第4スイッチ14がオンで、第2スイッチ12と、第3スイッチ13がオフとなり、第1エンドターミナル70と、第2エンドターミナル71が回路に接続され、燃料電池10の全ての単セルから出力を取り出せるようになっている。
(2)で示す単セル(a)の不調時は、第2スイッチ12と、第4スイッチ14がオンとなり、第1スイッチ11と、第3スイッチ13がオフとなり、予備ターミナル72と、第2エンドターミナル71が回路に接続され、燃料電池10の単セル(a)を含む一部の単セルを除いた残りの単セルから出力を取り出すことができる。
(3)で示す単セル(b)の不調時は、第1スイッチ11と、第3スイッチ13がオンとなり、第2スイッチ12と、第4スイッチ14がオフとなり、第1エンドターミナル70と、予備ターミナル72が回路に接続され、燃料電池10の単セル(b)を含む一部の単セルを除いた残りの単セルから出力を取り出すことができる。
一部の単セルの不調時に(2)、(3)のように回路を切替えることにより、燃料電池スタック全体としての出力の低下を抑制することができる。
【0039】
燃料電池システムは、燃料ガス系を備えていてもよい。
燃料ガス系は、燃料電池に燃料ガスを供給する。
燃料ガス系は燃料ガス供給部と、排気排水弁を有していてもよい。
燃料ガス系は、さらに燃料ガス供給流路、エジェクタ、循環流路、気液分離器、燃料オフガス排出流路等を備えていてもよい。
【0040】
燃料ガス供給部は、燃料ガスを燃料電池のアノードに供給する。
燃料ガス供給部としては、例えば、燃料タンク等が挙げられ、具体的には、液体水素タンク、圧縮水素タンク等が挙げられる。
燃料ガス供給部は、制御部と電気的に接続される。燃料ガス供給部は、制御部からの制御信号に従って、燃料ガス供給部の主止弁の開閉が制御されることにより燃料ガスの燃料電池への供給のON/OFFが制御されてもよい。
【0041】
燃料ガス供給流路は、燃料ガス供給部と燃料電池の燃料ガス入口とを接続する。燃料ガス供給流路は、燃料電池のアノードへの燃料ガスの供給を可能にする。燃料ガス入口は、燃料ガス供給孔、アノード入口マニホールド等であってもよい。
【0042】
燃料ガス供給流路には、エジェクタが配置されていてもよい。
エジェクタは、例えば、燃料ガス供給流路上の循環流路との合流部に配置されていてもよい。エジェクタは、燃料ガスと循環ガスとを含む混合ガスを燃料電池のアノードに供給する。エジェクタとしては、従来公知のエジェクタを採用することができる。
【0043】
燃料ガス供給流路の燃料ガス供給部とエジェクタとの間の領域には、調圧弁及び中圧水素センサが配置されていてもよい。
調圧弁は、燃料ガス供給部からエジェクタに供給される燃料ガスの圧力を調節する。
調圧弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって調圧弁の開閉及び開度等を制御されることにより、エジェクタに供給される燃料ガスの圧力を調整してもよい。
中圧水素センサは、制御部と電気的に接続され、制御部は、中圧水素センサによって測定された燃料ガスの圧力を検知し、検知した圧力から調圧弁の開閉及び開度等を制御することにより、エジェクタに供給される燃料ガスの圧力を調整してもよい。
【0044】
燃料オフガス排出流路は、燃料電池の燃料ガス出口と燃料電池システムの外部とを接続する。
燃料オフガス排出流路には、燃料ガス出口と燃料電池システムの外部との間の領域に気液分離器が配置されていてもよい。
燃料オフガス排出流路は、循環流路から気液分離器を介して分岐していてもよい。
燃料オフガス排出流路は、燃料電池の燃料ガス出口から排出される燃料オフガスを燃料電池システムの外部に排出する。燃料ガス出口は、燃料ガス排出孔、アノード出口マニホールド等であってもよい。
【0045】
排気排水弁(燃料オフガス排出弁)は、燃料オフガス排出流路に配置されていてもよい。排気排水弁は、燃料オフガス排出流路の気液分離器よりも下流に配置される。
排気排水弁は、燃料オフガス及び水分等を外部(系外)へ排出することを可能にする。なお、外部とは、燃料電池システムの外部であってもよく、飛行体の外部であってもよい。
排気排水弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって排気排水弁の開閉を制御されることにより、燃料オフガスの外部への排出流量及び水分(液水)の排水流量を調整してもよい。また、排気排水弁の開度を調整することにより、燃料電池のアノードに供給される燃料ガス圧力(アノード圧力)を調整してもよい。
燃料オフガスは、アノードにおいて未反応のまま通過した燃料ガス及び、カソードで生成した生成水がアノードに到達した水分等を含んでいてもよい。燃料オフガスは、触媒層及び電解質膜等で生成した腐食物質及び、掃気時にアノードに供給されてもよい酸化剤ガス等を含む場合がある。
【0046】
循環流路は、燃料電池の燃料ガス出口とエジェクタとを接続してもよい。
循環流路は、燃料オフガス排出流路から分岐し、燃料ガス供給流路に配置されるエジェクタと接続することにより燃料ガス供給流路と合流してもよい。
循環流路は、燃料オフガス排出流路から気液分離器を介して分岐し、燃料ガス供給流路に配置されるエジェクタと接続することにより燃料ガス供給流路と合流してもよい。
循環流路は、燃料電池の燃料ガス出口から排出された燃料ガスである燃料オフガスを回収し、循環ガスとして燃料電池に供給することを可能にする。
【0047】
循環流路には、ガス循環ポンプが配置されていてもよい。ガス循環ポンプは、燃料オフガスを循環ガスとして循環させる。ガス循環ポンプは、制御部と電気的に接続され、制御部によってガス循環ポンプの駆動のオン・オフ及び回転数等を制御されることにより、循環ガスの流量を調整してもよい。
【0048】
循環流路には、気液分離器(アノード気液分離器)が配置されていてもよい。
気液分離器は、燃料オフガス排出流路と循環流路との分岐点に配置されていてもよい。したがって、燃料ガス出口から気液分離器までの流路は、燃料オフガス排出流路であってもよく、循環流路であってもよい。
気液分離器は、燃料オフガス排出流路の排気排水弁よりも上流に配置される。
気液分離器は、燃料ガス出口から排出される燃料ガスである燃料オフガスと水分(液水)を分離する。これにより、燃料オフガスを循環ガスとして循環流路に戻してもよいし、不要なガス及び水分等を燃料オフガス排出流路の排気排水弁を開弁して外部に排出してもよい。また、気液分離器により、余分な水分が循環流路に流れることを抑制することができるため、当該水分による循環ポンプ等の凍結の発生を抑制することができる。
【0049】
燃料電池システムは、酸化剤ガス系を備えていてもよい。
酸化剤ガス系は、酸化剤ガス供給部、酸化剤ガス供給流路、酸化剤オフガス排出流路、酸化剤ガスバイパス流路、バイパス弁、酸化剤ガス流量センサ等を備えていてもよい。
酸化剤ガス供給部は、燃料電池に酸化剤ガスを供給する。具体的には、酸化剤ガス供給部は、燃料電池のカソードに酸化剤ガスを供給する。
酸化剤ガス供給部としては、例えば、エアコンプレッサー等を用いることができる。
酸化剤ガス供給部は、制御部と電気的に接続される。酸化剤ガス供給部は、制御部からの制御信号に従って駆動される。酸化剤ガス供給部は、制御部によって酸化剤ガス供給部からカソードに供給される酸化剤ガスの流量及び圧力からなる群より選ばれる少なくとも1つを制御されてもよい。
酸化剤ガス供給流路は、酸化剤ガス供給部と燃料電池の酸化剤ガス入口とを接続する。酸化剤ガス供給流路は、酸化剤ガス供給部から燃料電池のカソードへの酸化剤ガスの供給を可能にする。酸化剤ガス入口は、酸化剤ガス供給孔、カソード入口マニホールド等であってもよい。
酸化剤オフガス排出流路は、燃料電池の酸化剤ガス出口と接続する。酸化剤オフガス排出流路は、燃料電池のカソードから排出される酸化剤ガスである酸化剤オフガスの外部への排出を可能にする。酸化剤ガス出口は、酸化剤ガス排出孔、カソード出口マニホールド等であってもよい。
酸化剤オフガス排出流路には、酸化剤ガス圧力調整弁が設けられていてもよい。
酸化剤ガス圧力調整弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって酸化剤ガス圧力調整弁が開弁されることにより、反応済みの酸化剤ガスである酸化剤オフガスを酸化剤オフガス排出流路から外部へ排出する。また、酸化剤ガス圧力調整弁の開度を調整することにより、カソードに供給される酸化剤ガス圧力(カソード圧力)を調整してもよい。
酸化剤ガスバイパス流路は、酸化剤ガス供給流路から分岐し、燃料電池を迂回し、酸化剤ガス供給流路の分岐部と酸化剤オフガス排出流路の合流部とを接続する。
酸化剤ガスバイパス流路には、バイパス弁が配置される。
バイパス弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によってバイパス弁が開弁されることにより、燃料電池への酸化剤ガスの供給が不要な場合に燃料電池を迂回して酸化剤ガスを酸化剤オフガス排出流路から外部へ排出することができる。
酸化剤ガス流量センサは、酸化剤ガス供給流路に配置される。
酸化剤ガス流量センサは、酸化剤ガス系内の酸化剤ガスの流量を検出する。酸化剤ガス流量センサは、制御部と電気的に接続される。制御部は、酸化剤ガス流量センサで検出した酸化剤ガスの流量からエアコンプレッサーの回転数を推定してもよい。酸化剤ガス流量センサは、酸化剤ガス供給流路の酸化剤ガス供給部よりも上流に配置されていてもよい。
酸化剤ガス流量センサは、従来公知の流量計等を採用することができる。
【0050】
燃料電池システムは、燃料電池の冷却系を備えていてもよい。
冷却系は、冷媒供給部を備えていてもよく、冷媒循環流路を備えていてもよい。
冷媒循環流路は、燃料電池に設けられる冷媒供給孔及び冷媒排出孔に連通し、冷媒供給部から供給される冷媒を燃料電池内外で循環させることを可能にする。
冷媒供給部は、制御部と電気的に接続される。冷媒供給部は、制御部からの制御信号に従って駆動される。冷媒供給部は、制御部によって冷媒供給部から燃料電池に供給される冷媒の流量を制御される。これにより燃料電池の温度が制御されてもよい。
冷媒供給部は、例えば、冷却水ポンプ等が挙げられる。
冷媒循環流路には、冷却水の熱を放熱するラジエータが設けられていてもよい。
冷媒循環流路には、冷媒を蓄えるリザーブタンクが設けられていてもよい。
【0051】
図3は、本開示の燃料電池システムの制御の一例を示すフローチャートである。
制御部は、モータからの通常出力要求時は、燃料電池からの所定の第1出力でモータを駆動し、且つ、モータで発生したトルクでバッテリを充電する。
制御部は、モータからの高出力要求が有るか否か判定する。
制御部は、モータからの高出力要求が有ると判定した時は、所定の第1出力で燃料電池を発電させ、且つ、所定の第2出力でバッテリを放電させ、燃料電池及びバッテリの出力でモータを駆動し、制御を終了する。
一方、制御部は、モータからの高出力要求が無いと判定した時は、燃料電池からの所定の第1出力でモータを駆動し、且つ、モータで発生したトルクでバッテリを充電する制御を維持する。
【0052】
図4は、本開示の燃料電池システムの制御の別の一例を示すフローチャートである。
まず、制御部は、セル電圧センサが計測した各単セルの電圧をモニタリング(監視)する。
そして、制御部は、セル電圧センサが計測した各単セルの電圧の低下の有無を判定する。
そして、制御部は、各単セルの内の少なくとも1つの単セルの電圧の低下を検知したときは、電圧の低下した当該単セルが回路から外れるように、スイッチを切替えて制御を終了する。
一方、制御部は、各単セルの電圧の低下を検知しないときは制御を終了してもよいし、各単セルの電圧のモニタリングを継続してもよい。
【0053】
2.第2実施形態
本開示の燃料電池システムは、飛行体用の燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムは、燃料電池と、
バッテリと、
モータと、
制御部を有し、
前記モータは、前記燃料電池と前記バッテリが独立した電源として回路で接続され、且つダブルインバータを用いた2重3相巻線を有し、
前記制御部は、前記モータからの高出力要求時は、所定の第1出力で前記燃料電池を発電させ、且つ、所定の第2出力で前記バッテリを放電させ、前記燃料電池及び前記バッテリの出力で前記モータを駆動することを特徴とする。
【0054】
本開示の第2実施形態においては、燃料電池とバッテリのそれぞれの電源の特性を生かし、電源の独立性及びリダンダントを保ちながら、モータトルクが多く必要な時には2つの電源から動力を得ることができる。
【0055】
本開示の第2実施形態の燃料電池システムにおいては、前記第2出力の範囲は、前記通常出力要求時の前記モータの回転方向と同じになる範囲であってもよい。
モータトルクが多く必要な時の飛行体の推進力の調整は、バッテリ側のインバータで発電し、この際のバッテリの放電は、モータの回転方向が逆にならない範囲で行い、燃料電池は、バッテリの受け入れ可能な電力と最低限飛行に必要な電力を一定で出力する。これにより、燃料電池とバッテリのそれぞれの電源の特性を生かして、燃料電池の燃費を良好にすることができる。
【0056】
本開示の第2実施形態の燃料電池システムにおいては、前記制御部は、前記モータからの通常出力要求時は、前記燃料電池からの所定の前記第1出力で前記モータを駆動し、且つ、前記モータで発生したトルクで前記バッテリを充電してもよい。
これにより、モータからの通常出力要求時等のバッテリと燃料電池の両方の出力が必要な状況ではなく、燃料電池の出力で賄える状況において、燃料電池の発電効率を向上させるための制御を実施する。燃料電池は、バッテリの受け入れ可能な電力と最低限飛行に必要な電力を一定で出力する。これにより、燃料電池とバッテリのそれぞれの電源の特性を生かし、電源の独立性及びリダンダントを保ちながら、バッテリへの充電を可能とする。
【0057】
本開示の第2実施形態の燃料電池システムにおいては、前記燃料電池は、2以上の単セルを積層した積層体である燃料電池スタックであり、
前記燃料電池スタックは、両端に前記回路と接続されたエンドターミナルを有し、且つ、両端以外の任意の位置に前記回路と接続可能な少なくとも1つの予備ターミナルを有し、
前記回路は、スイッチを有し、
前記スイッチは、当該スイッチの切替えにより前記エンドターミナルと前記予備ターミナルとの回路切替えを可能とし、
前記燃料電池システムは、前記燃料電池スタックの各単セルの電圧を計測するセル電圧センサを有し、
前記制御部は、前記セル電圧センサが計測した各単セルの電圧をモニタリングし、少なくとも1つの前記単セルの電圧の低下を検知したとき、電圧の低下した当該単セルが前記回路から外れるように、前記スイッチを切替えてもよい。
これにより、燃料電池の電圧が低下した際にも使える回路構成とすることができる。
【0058】
第2実施形態における燃料電池、モータ、バッテリ、制御部、回路、セル電圧センサ、角度センサ、重力加速度センサ等は、第1実施形態で例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0059】
3.第3実施形態
本開示の燃料電池システムは、飛行体用の燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムは、燃料電池と、
バッテリと、
モータと、
制御部を有し、
前記モータは、前記燃料電池と前記バッテリが独立した電源として回路で接続され、且つダブルインバータを用いた2重3相巻線を有し、
前記燃料電池は、2以上の単セルを積層した積層体である燃料電池スタックであり、
前記燃料電池スタックは、両端に前記回路と接続されたエンドターミナルを有し、且つ、両端以外の任意の位置に前記回路と接続可能な少なくとも1つの予備ターミナルを有し、
前記回路は、スイッチを有し、
前記スイッチは、当該スイッチの切替えにより前記エンドターミナルと前記予備ターミナルとの回路切替えを可能とし、
前記燃料電池システムは、前記燃料電池スタックの各単セルの電圧を計測するセル電圧センサを有し、
前記制御部は、前記セル電圧センサが計測した各単セルの電圧をモニタリングし、少なくとも1つの前記単セルの電圧の低下を検知したとき、電圧の低下した当該単セルが前記回路から外れるように、前記スイッチを切替えることを特徴とする。
【0060】
本開示の第3実施形態においては、燃料電池スタックの途中に予備ターミナルと、回路切り替え可能なスイッチを配置し、セル電圧モニタによりセル電圧低下(不調)を検知した場合に、回路切り替えの制御を実施する。これにより、燃料電池の電圧が低下した際にも使える回路構成とすることができる。
【0061】
本開示の第3実施形態の燃料電池システムにおいては、前記制御部は、前記モータからの通常出力要求時は、前記燃料電池からの所定の第1出力で前記モータを駆動し、且つ、前記モータで発生したトルクで前記バッテリを充電してもよい。
これにより、モータからの通常出力要求時等のバッテリと燃料電池の両方の出力が必要な状況ではなく、燃料電池の出力で賄える状況において、燃料電池の発電効率を向上させるための制御を実施する。燃料電池は、バッテリの受け入れ可能な電力と最低限飛行に必要な電力を一定で出力する。これにより、燃料電池とバッテリのそれぞれの電源の特性を生かし、電源の独立性及びリダンダントを保ちながら、バッテリへの充電を可能とする。また、燃料電池とバッテリのそれぞれの電源の特性を生かして、燃料電池の燃費を良好にすることができる。
【0062】
本開示の第3実施形態の燃料電池システムにおいては、前記制御部は、前記モータからの高出力要求時は、前記第1出力で前記燃料電池を発電させ、且つ、所定の第2出力で前記バッテリを放電させ、前記燃料電池及び前記バッテリの出力で前記モータを駆動してもよい。
これにより、燃料電池とバッテリのそれぞれの電源の特性を生かし、電源の独立性及びリダンダントを保ちながら、モータトルクが多く必要な時には2つの電源から動力を得ることができる。
【0063】
本開示の第3実施形態の燃料電池システムにおいては、前記第2出力の範囲は、前記通常出力要求時の前記モータの回転方向と同じになる範囲であってもよい。
モータトルクが多く必要な時の飛行体の推進力の調整は、バッテリ側のインバータで発電し、この際のバッテリの放電は、モータの回転方向が逆にならない範囲で行い、燃料電池は、バッテリの受け入れ可能な電力と最低限飛行に必要な電力を一定で出力する。これにより、燃料電池とバッテリのそれぞれの電源の特性を生かして、燃料電池の燃費を良好にすることができる。
【0064】
第3実施形態における燃料電池、モータ、バッテリ、制御部、回路、セル電圧センサ、角度センサ、重力加速度センサ等は、第1実施形態で例示したものと同様のものを挙げることができる。
【符号の説明】
【0065】
10 燃料電池(燃料電池スタック)
11 第1スイッチ
12 第2スイッチ
13 第3スイッチ
14 第4スイッチ
20 バッテリ
30 2重3相巻線モータ
40 第1インバータ
50 第2インバータ
60 パワー素子
70 第1エンドターミナル
71 第2エンドターミナル
72 予備ターミナル
図1
図2
図3
図4