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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】表示装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/3233 20160101AFI20231121BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20231121BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/20 624B
G09G3/20 680G
G09F9/30 338
G09F9/30 365
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021122327
(22)【出願日】2021-07-27
(62)【分割の表示】P 2020005726の分割
【原出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021179628
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】児玉 拓海
(72)【発明者】
【氏名】腰原 健
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-151506(JP,A)
【文献】特開2005-352411(JP,A)
【文献】特開2017-227755(JP,A)
【文献】特開2019-158987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 3/38
G09F 9/30
H10K 50/10
H10K 59/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ線と、
走査線と、
第1制御線と、
第2制御線と、
給電線と、
前記データ線と前記走査線とに対応して設けられた画素回路と、を有し、
前記画素回路は、
第1ゲートノード、前記給電線と電気的に接続された第1ソースノード、および第1ドレインノードを有する第1トランジスターと、
前記走査線と電気的に接続された第2ゲートノードを有する第2トランジスターと、
前記第1制御線と電気的に接続された第3ゲートノードを有する第3トランジスターと、
前記第2制御線と電気的に接続された第4ゲートノードを有する第4トランジスターと、
第1電極、第2電極および前記第1電極と第2電極との間に設けられた発光機能層を有する表示素子と、を含み、
前記第1トランジスターは、前記第1ゲートノードと前記第1ソースノードとの間の電圧に応じた電流を、前記給電線および前記第4トランジスターを介して前記表示素子に供給し、
前記第2トランジスターは、前記データ線と前記第1ゲートノードとの電気的接続を制御し、前記走査線を介して前記第2ゲートノードに印可される電位に応じてオン状態またはオフ状態となり、
前記第3トランジスターは、前記データ線と前記第1ドレインノードとの電気的接続を制御し前記第1制御線を介して前記第3ゲートノードに印可される電位に応じてオン状態またはオフ状態となり、
前記第4トランジスターは、前記第1ドレインノードと前記第1電極との電気的接続を制御し前記第2制御線を介して前記第4ゲートノードに印可される電位に応じてオン状態またはオフ状態となり、
第1初期化期間、第2初期化期間および第3初期化期間を含む第1期間において、前記第1ゲートノードの電圧が初期化され、
前記第1初期化期間において、前記第2トランジスターはオン状態となり、前記第3トランジスターおよび前記第4トランジスターはオフ状態となり、前記データ線および前記第2トランジスターを介して前記第1ゲートノードに前記第1トランジスターがオフ状態となる電圧が印加され、
前記第2初期化期間において、前記第2トランジスターはオフ状態となり、前記第3トランジスターおよび前記第4トランジスターはオン状態となり、前記データ線、前記第3トランジスターおよび前記第4トランジスターを介して、前記第1電極に前記表示素子が非発光となる電圧が印加され、
前記第3初期化期間において、前記第2トランジスターはオン状態となり、前記第3トランジスターおよび前記第4トランジスターはオフ状態となり、前記データ線および前記第2トランジスターを介して前記第1ゲートノードに前記第1トランジスターがオン状態となる電圧が印加される、
表示装置。
【請求項2】
記第1期間の後の第2期間において、
前記第2トランジスターおよび前記第3トランジスターはオン状態となり、前記第4トランジスターオフ状態となり
前記第2期間の後の第3期間において、
前記第2トランジスターオン状態となり、前記第3トランジスターおよび前記第4トランジスターオフ状態となり、前記データ線に、前記表示素子に流す電流に応じた電圧のデータ信号が供給される
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第3期間の後の第4期間において、
前記第1トランジスターおよび前記第4トランジスターを介して、前記表示素子に電流が流れる
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第4期間において、
前記第4ゲートノードに、第1電圧が印加され、
前記第1電圧は、当該第4トランジスターオン状態となる第2電圧、および、前記第4トランジスターオフ状態となる第3電圧の間の電圧である
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれかの表示装置を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
表示素子として例えばOLED(Organic Light Emitting Diode)を用いた表示装置が知られている。この表示装置では、表示素子やトランジスターなどを含む画素回路が、表示しようとする画像の画素に対応して設けられる構成が一般的である。また、表示装置には、表示サイズの小型化や表示の高精細化が要求されることが多い。表示サイズの小型化と表示の高精細化とを両立するためには、画素回路を微細化する必要があるので、表示装置を、例えばシリコンなどの半導体の基板に集積する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
なお、上記特許文献1には、表示素子への電流を制御する際にトランジスターのしきい値を補償して、表示品位の低下を抑えるための技術についても提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-212444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、1つの画素回路にトランジスターを5個設ける必要があり、小型化・高精細化を阻害する原因となった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る表示装置は、データ線と走査線とに対応して設けられた画素回路を有し、前記画素回路は、第1トランジスター、第2トランジスター、第3トランジスター、第4トランジスターおよび表示素子を含み、前記第1トランジスターは、ゲートノード、ソースノードおよびドレインノードを有し、前記第1トランジスターは、前記ゲートノードおよび前記ソースノード間の電圧に応じた電流を、前記表示素子に前記第4トランジスターを介して流し、前記第2トランジスターは、前記データ線と前記第1トランジスターのゲートノードとの間に設けられ、前記走査線の電位に応じてオンまたはオフし、前記第3トランジスターは、前記データ線と前記第1トランジスターのドレインノードとの間に設けられ、前記第4トランジスターは、前記第1トランジスターのドレインノードおよび前記表示素子との間に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る表示装置の構成を示す斜視図である。
図2】表示装置の構成を示すブロック図である。
図3】表示装置における要部の構成を回路図である。
図4】表示装置における画素回路の構成を示す図である。
図5】表示装置の動作を示すタイミングチャートである。
図6】表示装置の動作を説明するための図である。
図7】表示装置の動作を説明するための図である。
図8】表示装置の動作を説明するための図である。
図9】表示装置の動作を説明するための図である。
図10】表示装置の動作を説明するための図である。
図11】表示装置の動作を説明するための図である。
図12】応用例に係る表示装置の動作を示すタイミングチャートである。
図13】表示装置を用いたヘッドマウントディスプレイを示す斜視図である。
図14】ヘッドマウントディスプレイの光学構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態に係る表示装置について図面を参照して説明する。なお、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0008】
図1は、実施形態に係る表示装置10の構成を示す斜視図であり、図2は、表示装置10の構成を示すブロック図である。
この表示装置10は、例えばヘッドマウントディスプレイなどにおいてカラー画像を表示するマイクロ・ディスプレイ・パネルであり、複数の画素回路や当該画素回路を駆動する駆動回路などが半導体基板に形成される。半導体基板としては、典型的にはシリコン基板であるが、他の半導体基板であってもよい。
【0009】
表示装置10は、表示領域で開口する枠状のケース192に収納されるとともに、FPC(Flexible Printed Circuits)基板194の一端が接続される。FPC基板194の他端には、外部の上位装置に接続されるための複数の端子196が設けられる。なお、上位装置は、表示装置10に表示させるための画像信号および同期信号を出力する。
【0010】
図2に示されるように、表示装置10は、制御回路20、データ信号出力回路30、スイッチ群40、容量素子群50、初期化回路60、補助回路70、表示領域100および走査線駆動回路120を含む。
表示領域100では、m行の走査線12が図において左右方向に沿って設けられ、(3q)列のデータ線14bが、上下方向に沿って、かつ、各走査線12と互いに電気的に絶縁を保つように設けられる。
なお、m、qは、2以上の整数である。また、後述するようにm行の走査線12と(3q)列のデータ線14bとの交差に対応して画素回路が設けられる。
【0011】
制御回路20は、上位装置から出力された画像信号Vidおよび同期信号Syncに基づいて各部を制御する。同期信号Syncに同期して供給される画像信号Vidは、表示すべき画像における画素の階調レベルを、例えばRGB毎に8ビットで指定する。また、同期信号Syncには、画像信号Vidの垂直走査開始を指示する垂直同期信号や、水平走査開始を指示する水平同期信号、および、画像信号の1画素分のタイミングを示すドットクロック信号が含まれる。
【0012】
制御回路20は、各部を制御するために、制御信号Gcp、Gref、Y_Ctr、/Gini、/Gorst、/Drst、L_Ctr、Sel(1)~Sel(q)およびクロック信号Clkを生成する。図2では省略されているが、制御回路20は、制御信号Gcpとは論理反転の関係にある制御信号/Gcpと、制御信号Grefとは論理反転の関係にある制御信号/Grefと、Sel(1)~Sel(q)とは論理反転の関係にある制御信号/Sel(1)~/Sel(q)とを出力する。
【0013】
なお、これらの制御信号においてLレベルは電圧ゼロの基準である0Vであり、Hレベルは例えば6.0Vである。また、制御信号/Gelは、LレベルおよびHレベルにMレベルを加えた3値をとる。Mレベルは、LレベルとHレベルとの中間の値のレベルであり、例えば4~5Vである。
また、制御回路20は、画像信号Vidを適切に処理し、例えば10ビットにアップコンバートし、画像信号Vdatとして出力する。なお、制御回路20は、画像信号Vidを画像信号Vdatに変換するためのルックアップテーブルや、各種の設定用パラメーターを記憶するレジスタなどを含む。
【0014】
走査線駆動回路120は、制御信号Y_Ctrにしたがって、m行(3q)列で配列する画素回路を、1行を単位として駆動するための回路である。
データ信号出力回路30は、第1データ信号を出力する。詳細には、データ信号出力回路30は、画素回路で表現する画素、すなわち表示しようとする画像における画素の階調レベルに応じた電圧であって、電圧振幅を圧縮する前の第1データ信号を出力する。
なお、本実施形態では、データ信号出力回路30から出力される第1データ信号の電圧振幅が圧縮され、第2データ信号としてデータ線14bに供給される。したがって、圧縮後の第2データ信号も、画素の階調レベルに応じた電圧となる。言い換えると、データ線14bの電圧は、画素の階調レベルに応じた電圧となる。
また、データ信号出力回路30は、シリアルで供給される画像信号Vdatを、複数相(この例ではqの係数である「3」相)にパラレル変換して出力する機能も有する。
【0015】
データ信号出力回路30は、シフトレジスタ31、ラッチ回路32、D/A変換回路群33およびアンプ群34を含む。
シフトレジスタ31は、クロック信号Clkに同期してシリアルで供給される画像信号Vdatを順次転送して、1行分、すなわち画素回路の個数でいえば(3q)個分、格納する。
【0016】
ラッチ回路32は、シフトレジスタ31に格納された(3q)個分の画像信号Vdatを制御信号L_Ctrにしたがってラッチし、ラッチした画像信号Vdatを制御信号L_Ctrにしたがって3相にパラレル変換して出力する。
【0017】
D/A変換回路群33は、3つのD/A(Digital to Analog)変換器を含む。3つのD/A変換器によって、ラッチ回路32から出力される3相の画像信号Vdatがアナログ信号に変換される。
アンプ群34は3つの増幅器を含む。3つの増幅器によって、D/A変換回路群33から出力される3相のアナログ信号が増幅され、第1データ信号Vd(1)、Vd(2)、Vd(3)として出力される。
制御回路20は、後述するように書込期間に先立つ補償期間において順次排他的にHレベルとなる制御信号Sel(1)~Sel(q)を出力する。
【0018】
図3は、表示装置10のうち、スイッチ群40、容量素子群50、初期化回路60、補助回路70および表示領域100の構成を示す回路図である。
表示領域100には、表示すべき画像の画素に対応した画素回路110がマトリクス状に設けられる。詳細には、画素回路110は、m行の走査線12と、(3p)列のデータ線14bとの交差部に対応して設けられる。このため、画素回路110は、図において縦m行×横(3q)列でマトリクス状に配列する。ここでマトリクス配列のうち、行(ロウ)を区別するために、図において上から順に1、2、3、…、(m-1)、m行と呼ぶ場合がある。同様にマトリクスの列(カラム)を区別するために、図において左から順に1、2、3、…、(3q-1)、(3q)列と呼ぶ場合がある。
【0019】
また、データ線14bは、図2および図3では3列毎にグループ化されている。グループを一般化して説明するために、1以上q以下の整数jを用いると、左から数えてj番目のグループには、(3j-2)列目、(3j-1)列目および(3j)列目の計3列のデータ線14bが属している、ということになる。
【0020】
同一行の走査線12と同一グループに属する3列のデータ線14bとの交差に対応した3つの画素回路110は、それぞれR(赤)、G(緑)、B(青)の画素に対応して、これらの3画素が表示すべきカラー画像の1ドットを表現する。すなわち、実施形態では、RGBに対応した計3つの画素回路110によって1ドットのカラーを加法混色で表現する。
【0021】
走査線駆動回路120は、走査線12を1行毎に順番に走査するための走査信号を、制御信号Y_Ctrにしたがって生成する。ここで、1、2、3、…、(m-1)、m行目の走査線12に供給される走査信号が、それぞれ/Gwr(1)、/Gwr(2)、…、/Gwr(m-1)、/Gwr(m)と表記される。
なお、走査線駆動回路120は、走査信号/Gwr(1)~/Gwr(m)のほかにも、当該走査信号に同期した制御信号を行毎に生成して表示領域100に供給するが、図3においては図示が省略されている。
【0022】
表示装置10では、データ線14bに対応してデータ転送線14aが設けられる。
また、スイッチ群40は、データ転送線14a毎に設けられたトランスミッションゲート45の集合体である。
このうち、1、4、7、…、(3q-2)列のデータ転送線14aに対応するq個のトランスミッションゲート45の入力端は共通接続される。なお、この入力端には、第1データ信号Vd(1)が画素毎に時系列で供給される。
また、2、5、8、…、(3q-1)列のデータ転送線14aに対応するq個のトランスミッションゲート45の入力端は共通接続され、第1データ信号Vd(2)が画素毎に時系列で供給される。
同様に、3、6、9、…、(3q)列のデータ転送線14aに対応するq個のトランスミッションゲート45の入力端は共通接続され、第1データ信号Vd(3)が画素毎に時系列で供給される。
ある列のトランスミッションゲート45の出力端は、当該列のデータ転送線14aの一端に接続される。
【0023】
j番目のグループに属する(3j-2)、(3j-1)、(3j)列に対応した3つのトランスミッションゲート45は、制御信号Sel(j)がHレベルのとき(制御信号/Sel(j)がLレベルのとき)に、入力端および出力端の間でオンする。
なお、図3では、紙面の制約のため、1番目のグループおよびq番目のグループのみ図示され、他のグループは省略されている。また、図3のトランスミッションゲート45は、図2では、単なるスイッチとして簡略化されて表記されている。
【0024】
容量素子群50は、データ転送線14a毎に設けられた容量素子51の集合体である。ここで、ある列のデータ転送線14aに対応する容量素子41の一端は、当該データ転送線14aの一端に接続され、当該容量素子41の他端は、一定電位、例えば電圧ゼロの基準となる電位に接地されている。
【0025】
初期化回路60は、データ線14b毎に設けられたPチャネルMOS型のトランジスター66、67および68の集合体である。
ある列のデータ線14bに対応するトランジスター66のゲートノードには制御信号/Drstが供給され、当該トランジスター66のソースノードには電圧Velが印加され、当該トランジスター66のドレインノードは、当該列のデータ線14bに接続される。
また、ある列のデータ線14bに対応するトランジスター67のゲートノードには制御信号/Gorstが供給され、当該トランジスター67のソースノードには電圧Vorstが印加され、当該トランジスター67のドレインノードは、当該列のデータ線14bに接続される。
ある列のデータ線14bに対応するトランジスター68のゲートノードには制御信号/Giniが供給され、当該トランジスター68のソースノードには電圧Viniが印加され、当該トランジスター68のドレインノードは、当該列のデータ線14bに接続される。
【0026】
補助回路70は、列毎に設けられたトランスミッションゲート72、73と、列毎に設けられた容量素子74、75との集合体である。
ここで、ある列に対応するトランスミッションゲート72は、制御信号GcpがHレベルのとき(制御信号/GcpがLレベルのとき)に、入力端および出力端の間でオンする。ある列に対応するトランスミッションゲート72の入力端は、当該列のデータ転送線14aの他端に接続され、当該列に対応するトランスミッションゲート72の出力端は、当該列に対応するトランスミッションゲート73の出力端、当該列に対応する容量素子74の一端、および、当該列に対応する容量素子75の一端に接続される。
【0027】
ある列に対応するトランスミッションゲート73は、制御信号GrefがHレベルのとき(制御信号/GrefがLレベルのとき)に、入力端および出力端の間でオンする。ある列に対応するトランスミッションゲート73の入力端には、電圧Vrefが印加される。
また、ある列に対応する容量素子75の他端は、一定電位、例えば電圧ゼロの基準となる電位に接地されている。
ある列に対応する容量素子74の他端は、当該列に対応するデータ線14bの一端に接続される。
【0028】
本実施形態において、データ転送線14aの一端は、トランスミッションゲート45の出力端および容量素子51の一端に接続され、データ転送線14aの他端は、トランスミッションゲート72における入力端に接続される。表示領域100は、スイッチ群40と補助回路70との間に位置するので、データ転送線14aは、表示領域100を通過する。
一方、トランスミッションゲート45を介してデータ転送線14aに供給された第1データ信号は、トランスミッションゲート72および容量素子74およびデータ線14bを介して第2データ信号として画素回路110に供給される。
このため、データ信号出力回路30から出力される第1データ信号は、データ転送線14aを介して、表示領域100を挟んで反対の位置にある補助回路70に到達し、折り返して、第2データ信号となってデータ線14bを介して画素回路110に供給される。
【0029】
この構成では、容量素子74が設けられる領域とデータ信号出力回路30とが、表示領域100とを挟んで位置する。このため、表示領域100を基準とした場合に、データ信号出力回路30が設けられる領域に要素が集中しないで済む。表示領域100は、4辺からある程度離間させる必要があり、データ信号出力回路30が設けられない領域であっても、ある程度、辺からの距離が必要となる。データ信号出力回路30およびその周辺の領域に要素が集中すると、当該領域に要する面積が拡大して、その分、小型化を阻害する要因となり得るが、上記構成では、当該領域に要する面積が縮小されるので、小型化を図ることができる。
【0030】
図4は、画素回路110の構成を示す図である。m行(3q)列で配列する画素回路110は電気的にみれば互いに同一である。このため、画素回路110については、i行目であって、任意の1列に対応する1つの画素回路110で代表させて説明する。
【0031】
図に示されるように、画素回路110は、Pチャネル型のトランジスター121~124と、OLED130と、容量素子132とを含む。
また、i行目の画素回路110には、走査信号/Gwr(i)のほか、制御信号/Gcmp(i)、/Gel(i)が、走査線駆動回路120から供給される。
【0032】
OLED130は、表示素子の一例であり、画素電極213と、共通電極218とで発光機能層216を挟持する。画素電極213はアノードとして機能し、共通電極218はカソードとして機能する。また、共通電極218は光透過性を有する。
OLED130において、アノードからカソードに電流が流れると、アノードから注入された正孔とカソードから注入された電子とが発光機能層216で再結合して励起子が生成され、白色光が発生する。このときに発生した白色光が、図示省略された反射膜とハーフミラーとで構成された光共振器にて共振し、RGBのいずれかの色に対応して設定された共振波長で出射する。光共振器から光が出射する経路には、当該色に対応したカラーフィルターが設けられる。したがって、OLED130からの出射光は、光共振器およびカラーフィルターによる着色を経て、観察者に視認される。
【0033】
なお、画素回路110に設けられるOLED130は、表示画像の最小単位となる。1個の画素回路110は1個のOLED130を含む。ある画素回路110は他の画素回路110とは独立して制御され、OLED130は画素回路110に対応する色で発光して、3原色の1つを表現する。
すなわち、1つの画素回路110は、表示すべき色のうち、三原色の1つを表現するので、厳密にいえば、サブ画素回路と呼ぶべきであるが、説明を簡略化するために画素回路と呼ぶことにする。なお、表示装置10が単に明暗のみの単色画像を表示する場合には、上記カラーフィルターを省略してもよい。
【0034】
トランジスター121にあっては、ゲートノードgがトランジスター122のドレインノードに接続され、ソースノードが電圧Velの給電線116に接続され、ドレインノードがトランジスター123のソースノードおよびトランジスター124のソースノードに接続される。なお、容量素子132にあっては、一端がトランジスター121のゲートノードgに接続され、他端が一定の電圧、例えば電圧Velの給電線116に接続される。このため、容量素子132は、トランジスター121におけるゲートノードgの電圧を保持することになる。
なお、容量素子132としては、例えば、トランジスター121のゲートノードgに寄生する容量を用いてもよいし、シリコン基板において互いに異なる導電層で絶縁層を挟持することによって形成される容量を用いてもよい。
【0035】
i行目であって任意の列における画素回路110のトランジスター122にあっては、ゲートノードがi行目の走査線12に接続され、ソースノードが当該列のデータ線14bに接続される。
i行目であって任意の列における画素回路110のトランジスター123にあっては、ゲートノードに制御信号/Gcmp(i)が供給され、ドレインノードが当該列のデータ線14bに接続される。
i行目であって任意の列における画素回路110のトランジスター124にあっては、ゲートノードに制御信号/Gel(i)が供給され、ドレインノードがOLED130のアノードである画素電極213およびトランジスター125のドレインノードに接続される。
なお、OLED130のカソードとして機能する共通電極218は、電圧Vctの給電線に接続される。また、表示装置10はシリコン基板に形成されるので、トランジスター121~124の基板電位については例えば電圧Velに相当する電位としている。
【0036】
図5は、表示装置10の動作を説明するためのタイミングチャートである。
表示装置10では、1フレーム(F)の期間に1、2、3、…、m行目という順番で水平走査される。
なお、本説明において1フレームの期間とは、画像信号Vidで指定される画像の1コマを表示するのに要する期間をいう。1フレームの期間の長さは、垂直同期期間と同じ場合、例えば同期信号Syncに含まれる垂直同期信号の周波数が60Hzであれば、当該垂直同期信号の1周期分に相当する16.7ミリ秒である。また、1行分の水平走査に要する期間が水平走査期間(H)である。なお、図5において、電圧を示す縦スケールは、各信号にわたって必ずしも揃っていない。
【0037】
各行における水平走査期間(H)での動作は、画素回路110においてほぼ共通である。また、ある水平走査期間(H)において走査される行の1~(3q)列目の画素回路110の動作についても、ほぼ共通である。そこで以下については、i行目であって(3j-2)列における画素回路110について着目して説明する。
表示装置10において、水平走査期間(H)は、時間の順で、初期化期間(A)、(B)、(C)、補償期間(D)および書込期間(E)の5つの期間に分けられる。また、画素回路110の動作としては、上記5つの期間に、さらに発光期間(F)が加わる。
初期化期間(A)、(B)、(C)のうち、初期化期間(A)は、トランジスター121をオフ状態に設定するための期間であり、初期化期間(C)の事前準備的な処理のための期間である。初期化期間(B)は、OLED130のアノードにおける電位をリセットするための処理であり、初期化期間(C)は、補償期間(E)の始期においてトランジスター121をオンさせるための電圧を、ゲートノードgに印加するための期間である。
【0038】
各水平走査期間(H)において初期化期間(A)では、制御信号/Giniおよび/GorstがHレベルであり、制御信号/DrstがLレベルとなり、制御信号GrefがHレベルとなり、制御信号GcpがLレベルとなる。このため、トランジスター68がオフし、トランジスター67がオフし、トランジスター66がオンし、トランスミッションゲート73がオンし、トランスミッションゲート72がオフする。
また、i行目が選択される水平走査期間(H)の初期化期間(A)では、走査信号/Gwr(i)がLレベルとなり、制御信号/Gcmp(i)がHレベルであり、制御信号/Gel(i)がHレベルである。このため、当該画素回路110においてトランジスター122がオンし、トランジスター122、123がオフする。
【0039】
したがって、初期化期間(A)では、図6に示されるように、電圧Vrefが、トランスミッションゲート73を介して、容量素子74の一端、容量素子75の一端およびトランスミッションゲート72の出力端に印加される。また、当該画素回路110では、電圧Velが、トランジスター66、データ線14bおよびトランジスター122を順に介して、容量素子132の一端、および、トランジスター121のゲートノードgに印加される。電圧Velがゲートノードgに印加されると、ゲートノード・ソースノード間の電圧がゼロとなるので、トランジスター121は強制的にオフとなり、OLED130に流れる電流が遮断される。また、電圧Velがデータ線14bを介して容量素子74の他端に印加されるので、当該容量素子74は電圧|Vel-Vref|に充電される。
【0040】
各水平走査期間(H)において初期化期間(B)では、制御信号/GiniがHレベルであり、制御信号/GorstがLレベルとなり、制御信号/DrstがHレベルとなり、制御信号GrefがHレベルであり、制御信号GcpがLレベルである。このため、トランジスター68がオフを維持し、トランジスター67がオンに変化し、トランジスター66がオフに変化し、トランスミッションゲート73がオンを維持し、トランスミッションゲート72がオフを維持する。
また、i行目が選択される水平走査期間(H)の初期化期間(B)では、走査信号/Gwr(i)がHレベルとなり、制御信号/Gcmp(i)がLレベルであり、制御信号/Gel(i)がLとなる。このため、当該画素回路110においてトランジスター122がオフし、トランジスター123、124がオンする。
【0041】
したがって、初期化期間(B)では、図7に示されるように、容量素子74の一端、容量素子75の一端およびトランスミッションゲート72の出力端は、電圧Vrefに維持される。また、当該画素回路110では、電圧Vorstが、トランジスター67、データ線14b、トランジスター123および124を順に介して、OLED130のアノードである画素電極213に印加される。OLED130は、画素電極213と共通電極218とで発光機能層216を挟持するので、容量成分が寄生する。初期化期間(B)では、画素電極213への電圧Vorstの印加によって、当該容量成分に保持された電圧が、詳細には、発光期間(F)において当該OLED130に流れていた電流に応じた電圧が、リセットされる。なお、電圧Vorstは、OLED130を非発光とさせる電圧であり、具体的には、Lレベルに相当するゼロボルト、もしくは当該ゼロボルトに近い電圧(0~1ボルト)である。また、電圧Vorstがデータ線14bを介して容量素子74の他端に印加されるので、当該容量素子74は電圧|Vorst-Vref|に充電される。
【0042】
各水平走査期間(H)において初期化期間(C)では、制御信号/GiniがLレベルとなり、制御信号/GorstがHレベルとなり、制御信号/DrstがHレベルであり、制御信号GrefがHレベルであり、制御信号GcpがLレベルである。このため、トランジスター68がオンに変化し、トランジスター67がオフに変化し、トランジスター66がオフを維持し、トランスミッションゲート73がオンを維持し、トランスミッションゲート72がオフを維持する。
また、i行目が選択される水平走査期間(H)の初期化期間(C)では、走査信号/Gwr(i)がLレベルとなり、制御信号/Gcmp(i)がHレベルとなり、制御信号/Gel(i)がHレベルとなる。このため、当該画素回路110においてトランジスター122がオンし、トランジスター123、124がオフする。
【0043】
したがって、初期化期間(C)では、図8に示されるように、容量素子74の一端、容量素子75の一端およびトランスミッションゲート72の出力端は、電圧Vrefに維持される。また、当該画素回路110では、電圧Viniが、トランジスター68、データ線14bおよびトランジスター122を順に介して、容量素子132の一端、および、トランジスター121のゲートノードgに印加される。また、電圧Viniがデータ線14bを介して容量素子74の他端に印加されるので、当該容量素子74は電圧|Vini-Vref|に充電される。
【0044】
各水平走査期間(H)において補償期間(D)では、制御信号/GiniがHレベルとなり、制御信号/GorstがHレベルであり、制御信号/DrstがHレベルであり、制御信号GrefがHレベルであり、制御信号GcpがLレベルである。このため、トランジスター68がオフに変化し、トランジスター67がオフを維持し、トランジスター66がオフを維持し、トランスミッションゲート73がオンを維持し、トランスミッションゲート72がオフを維持する。また、i行目が選択される水平走査期間(H)の補償期間(D)では、走査信号/Gwr(i)がLレベルを維持し、制御信号/Gcmp(i)がLレベルに変化し、制御信号/Gel(i)がHレベルを維持する。このため、当該画素回路110においてトランジスター122がオンし、トランジスター123がオンし、トランジスター124がオフする。
【0045】
したがって、補償期間(D)では、図9に示されるように、容量素子74の一端、容量素子75の一端およびトランスミッションゲート72の出力端は、電圧Vrefに維持される。
当該画素回路110では、容量素子132が、直前の初期化期間(C)において、トランジスター121のゲートノード・ソースノード間の電圧として電圧(Vel-Vini)を保持した状態となっている。
この状態において、トランジスター122、123がオンになると、トランジスター121がオンして、当該トランジスター121は、ゲートノードおよびドレインノードが接続された状態、すなわち、ダイオード接続状態となる。したがって、当該トランジスター121においてゲートノード・ソースノード間の電圧Vgsが当該トランジスター121のしきい値電圧に収束する。ここで、しきい値電圧を便宜的にVthと表記すると、トランジスター121のゲートノードgは、しきい値電圧Vthに対応した電圧(Vel-Vth)に収束する。
【0046】
なお、補償期間(D)の始期では、ダイオード接続となったトランジスター121においてソースノードからドレインノードに向かって電流が流れることが必要である。このため、補償期間(D)の前の初期化期間(D)においてゲートノードgに印加される電圧Viniは、
Vini<Vel-Vth
という関係にある。
【0047】
また、補償期間(D)では、トランジスター121のゲートノードgがトランジスター122を介してデータ線14bに接続され、トランジスター121のドレインノードがトランジスター123を介してデータ線14bに接続される。このため、当該データ線14bおよび容量素子74の他端についても、電圧(Vel-Vth)に収束する。したがって、当該容量素子74は電圧|Vel-Vth-Vref|に充電される。
【0048】
一方、補償期間(D)において制御信号Sel(1)~Sel(q)は、順次排他的にHレベルとなる。なお、図9では省略されているが、補償期間(D)においては、制御信号/Sel(1)~/Sel(q)が、制御信号Sel(1)~Sel(q)に同期して、順次排他的にLレベルとなる。
また、データ信号出力回路30は、制御信号Sel(1)~Sel(q)のうち、例えば制御信号Sel(j)がHレベルとなったときに、i行目の走査線12とj番目のグループに属するデータ線14bとの交差に対応する3画素の第1データ信号Vd(1)~Vd(3)を出力する。より詳細には、データ信号出力回路30は、制御信号Sel(j)がHレベルとなる期間において、i行(3j-2)列の画素に対応する第1データ信号Vd(1)を出力し、i行(3j-1)列の画素に対応する第1データ信号Vd(2)を出力し、i行(3j)列の画素に対応する第1データ信号Vd(3)を出力する。
具体例としては、jが「2」であれば、データ信号出力回路30は、制御信号Sel(2)がHレベルとなる期間において、i行目4列目の画素に対応する第1データ信号Vd(1)を出力し、i行目5列目の画素に対応する第1データ信号Vd(2)を出力し、i行目6列目の画素に対応する第1データ信号Vd(3)を出力する。
【0049】
制御信号Sel(1)~Sel(q)が順次排他的にHレベルになると、1列目から(3q)列目までに対応する容量素子51に、それぞれの画素に対応する第1データ信号の電圧が保持される。
なお、図9は、画素回路110が属するj番目のグループに対応する制御信号Sel(j)が補償期間(D)においてHレベルとなって、第1データ信号Vd(1)の電圧Vdataが容量素子51に保持される状態を示している。
【0050】
各水平走査期間(H)において書込期間(E)では、制御信号/GiniがHレベルであり、制御信号/GorstがHレベルであり、制御信号/DrstがHレベルであり、制御信号GrefがLレベルとなり、制御信号GcpがHレベルとなる。このため、トランジスター68、67、66がオフを維持し、トランスミッションゲート73がオフに変化し、トランスミッションゲート72がオンに変化する。また、i行目が選択される水平走査期間(H)の書込期間(E)では、走査信号/Gwr(i)がLレベルを維持し、制御信号/Gcmp(i)がHレベルに変化し、制御信号/Gel(i)がHレベルを維持する。このため、当該画素回路110においてトランジスター122がオンし、トランジスター123、124がオフする。
【0051】
したがって、i行目が選択される水平走査期間(H)の書込期間(E)では、図10に示されるように、トランスミッションゲート73のオフ、および、トランスミッションゲート72のオンにより、容量素子74の一端が、電圧Vrefから容量素子51に保持された電圧に応じて変化する。当該電圧変化は、当該容量素子74を介して、データ線14bおよびトランジスター122を順に介してゲートノードgに伝播する。当該変化後のゲートノードgの電圧が容量素子132に保持される。
【0052】
なお、図10に示されるように、容量素子51の容量をCrefと表記し、容量素子74の容量をCblkと表記し、容量素子75の容量をCdtと表記し、容量素子132の容量をCpixと表記する。また、補償期間(D)において容量素子51に保持された第1データ信号Vd(1)の電圧をVdataと表記する。
補償期間(D)から書込期間(E)までにおけるゲートノードgの電圧変化分ΔVは次式(1)で示される。
【0053】
【数1】
【0054】
すなわち、式(1)で示されるように、ゲートノードgは、容量素子74の一端における電圧変化分(Vdata-Vref)に、係数Kaを乗じた値に変化する。なお、係数Kaは、「1」未満の係数であり、容量Cref、Cblk、CdtおよびCpixによって定まる。換言すれば、容量Cref、Cblk、CdtおよびCpixが適切な値となるように設計されて、係数Kaが「1」未満にされる。係数Kaが「1」未満であると、第1データ信号の電圧Vdataの最低値から最高値までの電圧振幅が、係数Kaに応じて圧縮されて、ゲートノードgに伝播することになる。
画素回路110が微小化されると、トランジスター121のゲートノード・ソースノード間の電圧Vgsのごくわずかな変化に対してOLED130の流れる電流が大きく変化する場合がある。
この場合であっても、本実施形態では、第1データ信号の電圧Vdataの電圧振幅が係数Kaに応じて圧縮されて、ゲートノードgに伝播するので、OLED130の流れる電流を精度良く制御することができる。
【0055】
書込期間(E)の終了後、発光期間(F)となる。すなわちi行目の走査線12の選択終了後、発光期間(F)に至ると、制御信号/Gel(i)がMレベルになる。このため、図11に示されるように、トランジスター121は、電圧Vgsに応じた電流Ielであって、トランジスター124におけるソース・ドレイン間の抵抗で制限を受ける電流Ielを、OLED130に流す。したがって、当該OLED130が、当該電流Ielに応じた輝度で発光する。
【0056】
なお、図6乃至図11では、容量素子群50および初期化回路60が設けられる領域が特に区別されていない。
【0057】
本実施形態では、データ信号出力回路30から出力される第1データ信号の電圧Vdataの振幅を、容量素子74を介することによって圧縮して、第2データ信号として画素回路110におけるゲートノードgに供給する構成としている。
一方で、本実施形態では、補償期間(D)において、トランジスター121のしきい値電圧Vthを補償する構成としている。
そこで次に、補償期間(D)の有用性について説明する。なお、この有用性の説明に際し、数式が複雑化するのを避けるために、第1データ信号の電圧Vdataの圧縮比が「1」である場合、すなわち補償期間(D)後の書込期間(E)において第1データ信号の電圧Vdataがそのままデータ線14bに供給される場合を想定する。また、発光期間(F)においてトランジスター124のゲートノードにMレベルではなく、Lレベルが印加されて、当該トランジスター124がオンして、ソースノード・ドレインノード間の抵抗が理想的にゼロである場合を想定する。
まず、発光期間(F)においてOLED130に流れる電流Ielは、次式(2)のように表すことができる。
【0058】
【数2】
なお、式(2)における係数k1は、次式(3)で表される。
【0059】
【数3】
【0060】
式(3)において、Wはトランジスター121のチャネル幅であり、Lはトランジスター121のチャネル長であり、μはキャリアの移動度であり、Coxはトランジスター121における(ゲート)酸化膜の単位面積あたりの容量である。
【0061】
第1データ信号の電圧Vdataを圧縮せず、かつ、トランジスター121のしきい値電圧を補償しない構成において、当該トランジスター121のゲートノードgに、直接、第1データ信号の電圧Vdataが印加されたときに、当該トランジスター121のゲートノード・ソースノード間の電圧Vgsは、次式(4)のように表すことができる。
【0062】
【数4】
このときに、OLED130に流れる電流Ielは、次式(5)のように表すことができる。
【0063】
【数5】
【0064】
式(5)に表されるように、電流Ielは、しきい値電圧Vthの影響を受ける。ここで、半導体プロセスの関係で、トランジスター121におけるしきい値電圧Vthのばらつきは、数mV~数十mVの範囲となる。トランジスター121におけるしきい値電圧Vthが数mV~数十mVの範囲でばらつく場合、電流Ielは、隣り合う画素回路110同士で、最大で40%の差が発生する虞がある。
OLED130における電流-輝度の特性は概ね線形である。このため、しきい値電圧Vthを補償しない構成では、2つのOLED130を同じ輝度で発光させるために、当該2つの画素回路110に、たとえ同じ電圧Vdataの第1データ信号を供給しても、実際にはOLED130に流れる電流が相違する。したがって、しきい値電圧Vthを補償しない構成では、輝度がばらついて、表示品位を大きく損なうことになる。
【0065】
補償期間(D)において、トランジスター121におけるゲートノードgを、電圧(Vel-Vth)に収束させた後、電圧Vdataに変化させた場合、当該トランジスター121のゲートノード・ソースノード間の電圧Vgsは、次式(6)のように表すことができる。
【数6】
【0066】
なお、式(6)における係数k2は、第1データ信号の電圧Vdataを圧縮しない構成(容量素子74を有さない構成)における容量CblkおよびCpixで定まる係数である。
式(6)のように電圧Vgsが表される場合、OLED130に流れる電流Ielは、次式(7)のように表すことができる。
【数7】
【0067】
式(7)では、しきい値電圧Vthの項が除去されており、電流Ielは、第1データ信号の電圧Vdataによって定められる。これにより、トランジスター121のしきい値電圧Vthに起因する表示品位の低下を抑えることが可能となる。
なお、実施形態では、実際には式(1)に示されるように、第1データ信号の電圧Vdataの最低値から最高値までの電圧振幅が、係数Kaに応じて圧縮されて、ゲートノードgに伝播することになる。
また、本実施形態では、発光期間(F)においてトランジスター124のゲートノードにMレベルが供給されて、電流Ielが制限されるが、しきい値電圧Vthに起因する表示品位の低下が抑えられることには変わりはない。
【0068】
次に、本実施形態において発光期間(F)において、トランジスター124のゲートノードにMレベルを印加することの有用性について説明する。
トランジスター124のゲートノードにMレベルを印加する理由は、当該トランジスター124を飽和領域で動作させることによって、OLED130における電流電圧特性の経年変化に依らずに、トランジスター121による定電流性を維持するためである。
【0069】
詳細には、電流Ielが流れると、OLED130は、当該電流Ielに応じた輝度で発光する。本実施形態において画素回路110では、トランジスター121におけるゲートノードgの電圧を容量素子132により保持することで、給電線116からOLED130に流れる電流Ielの定電流性が確保されている。
【0070】
しかしながら、OLED130では、発光時間の経過によって素子特性が変化し、一定の電流を流すために必要なアノード(画素電極213)の電位が次第に高くなる特性を有する。OLED130におけるアノードの電位が高くなると、給電線116から共通電極218に至るまでの経路における電位の平衡点が変化し、トランジスター124のソースノード、すなわちトランジスター121のドレインノードの電位が上昇する。トランジスター121のドレインノードの電位が上昇すると、トランジスター121におけるソースノード・ドレインノード間の電圧も変動して、トランジスター121のドレインノードに流れる電流も変動するので、結果的に、OLED130の定電流性が損なわれる。
【0071】
そこで本実施形態では、OLED130の素子特性の経年変化に伴う定電流性が損なわれることの対策として、トランジスター124を飽和領域で動作させている。
トランジスター124を飽和領域で動作させると、OLED130におけるアノードの電位が変化しても、その影響を直接受けるのは、トランジスター124となる。トランジスター121は、当該トランジスター124のドレインノードにおける電位変動の影響を受けるが、飽和領域におけるドレイン電流の変動は微小である。このため、トランジスター124に接続されるトランジスター121におけるドレイン電位の変動、ひいては電流リークによるゲート電位の変動影響が緩和される。
【0072】
<変形例、応用例等>
前述した実施形態では、次のような応用または変形が可能である。
【0073】
実施形態では、説明のために例えばi行目の発光期間(F)については、i行目の走査線12が選択される水平走査期間以外の期間において、連続させた構成とした。この構成に限られず、例えば図12に示されるように、制御信号/Gel(i)がHレベルとなる非発光期間を適宜挿入して、非発光期間と発光期間(F)とが交互に繰り返される構成としてもよい。
【0074】
実施形態では、シリアル-パラレル変換によって3相に変換する例を示したが、当該相数は2以上であればよい。また、シリアル-パラレル変換ではなく、第1データ信号を点順次で供給してトランスミッションゲート45のオンによって容量素子51にサンプリングする構成でもよい。
【0075】
トランジスター66~68、121~124のチャネルは、実施形態に限定されない。また、これらのトランジスター66~68、121~125は、適宜トランスミッションゲートに置き換えてもよい。その逆にトランスミッションゲート45、72、73については、片チャネルのトランジスターに置き換えてもよい。
また、実施形態では、表示素子の一例としてOLED130を例示して説明したが、定電流性が要求される他の表示素子を用いてもよい。
【0076】
<電子機器>
次に、実施形態等に係る表示装置10を適用した電子機器について説明する。表示装置10は、画素が小サイズで高精細な表示な用途に向いている。そこで、電子機器として、ヘッドマウントディスプレイを例に挙げて説明する。
【0077】
図13は、ヘッドマウントディスプレイの外観を示す図であり、図14は、その光学的な構成を示す図である。
まず、図13に示されるように、ヘッドマウントディスプレイ300は、外観的には、一般的な眼鏡と同様にテンプル310や、ブリッジ320、レンズ301L、301Rを有する。また、ヘッドマウントディスプレイ300は、図14に示されるように、ブリッジ320近傍であってレンズ301L、301Rの奥側(図において下側)には、左眼用の表示装置10Lと右眼用の表示装置10Rとが設けられる。
表示装置10Lの画像表示面は、図14において左となるように配置している。これによって表示装置10Lによる表示画像は、光学レンズ302Lを介して図において9時の方向に出射する。ハーフミラー303Lは、表示装置10Lによる表示画像を6時の方向に反射させる一方で、12時の方向から入射した光を透過させる。表示装置10Rの画像表示面は、表示装置10Lとは反対の右となるように配置している。これによって表示装置10Rによる表示画像は、光学レンズ302Rを介して図において3時の方向に出射する。ハーフミラー303Rは、表示装置10Rによる表示画像を6時方向に反射させる一方で、12時の方向から入射した光を透過させる。
【0078】
この構成において、ヘッドマウントディスプレイ300の装着者は、表示装置10L、10Rによる表示画像を、外の様子と重ね合わせたシースルー状態で観察することができる。
また、このヘッドマウントディスプレイ300において、視差を伴う両眼画像のうち、左眼用画像を表示装置10Lに表示させ、右眼用画像を表示装置10Rに表示させると、装着者に対し、表示された画像があたかも奥行きや立体感を持つかのように知覚させることができる。
【0079】
なお、表示装置10を含む電子機器については、ヘッドマウントディスプレイ300のほかにも、ビデオカメラやレンズ交換式のデジタルカメラなどにおける電子式ビューファインダーにも適用可能である。
【0080】
<付記>
ひとつの態様(態様1)に係る表示装置は、データ線と走査線とに対応して設けられた画素回路を有し、前記画素回路は、第1トランジスター、第2トランジスター、第3トランジスター、第4トランジスターおよび表示素子を含み、前記第1トランジスターは、ゲートノード、ソースノードおよびドレインノードを有し、前記第1トランジスターは、前記ゲートノードおよび前記ソースノード間の電圧に応じた電流を、前記第4トランジスターを介して前記表示素子に流し、前記第2トランジスターは、前記データ線と前記第1トランジスターのゲートノードとの間に設けられ、前記走査線の電位に応じてオンまたはオフし、前記第3トランジスターは、前記データ線と前記第1トランジスターのドレインノードとの間に設けられ、前記第4トランジスターは、前記第1トランジスターのドレインノードおよび前記表示素子との間に設けられる。
この態様によれば、画素回路のトランジスター数が、従来の構成、例えば特許文献1で示される構成と比較して削減されるので、小型化・高精細化を図ることが容易となる。また、画素回路のトランジスター数が削減されるので、歩留まりを向上させることができる。
なお、トランジスター121が第1トランジスターの一例であり、トランジスター122が第2トランジスターの一例であり、トランジスター123が第3トランジスターの一例であり、トランジスター124が第4トランジスターの一例である。また、OLED130が表示素子の一例である。
【0081】
態様1の具体的な態様(態様2)に係る表示装置は、第1期間において、前記第2トランジスターがオンし、前記第3トランジスターおよび前記第4トランジスターがオフして、前記データ線を介して、前記第1トランジスターのゲートノードに当該第1トランジスターをオンさせる電圧が印加され、前記第1期間の後の第2期間において、前記第2トランジスターおよび前記第3トランジスターがオンし、前記第4トランジスターがオフし、前記第2期間の後の第3期間において、前記第2トランジスターがオンし、前記第3トランジスターおよび前記第4トランジスターがオフし、前記データ線に、前記表示素子に流す電流に応じた電圧のデータ信号が供給される。
この態様によれば、第2期間において第2トランジスターおよび第3トランジスターのオンにより、第1トランジスターはゲートノードとドレインノードが接続されるので、当該第1トランジスターのゲートノードおよびデータ線は、しきい値電圧に応じた電圧に収束する。第2期間の次の第3期間では、データ線がデータ信号の電圧に変化し、当該変化は、オンの第1トランジスターを介して第1トランジスターのゲートノードに伝播する。このため、第1トランジスターでは、第1トランジスターのしきい値が補償された状態となる。
なお、初期化期間(C)が第1期間の一例であり、補償期間(D)が第2期間の一例であり、書込期間(E)が第3期間の一例である。
【0082】
態様2の具体的な態様(態様3)に係る表示装置は、前記第3期間の後の第4期間において、前記第1トランジスターおよび前記第4トランジスターを介して、前記表示素子に電流が流れる。
この態様によれば、第1トランジスターのしきい値が補償された状態で、第3期間において当該第1トランジスターがゲートノードの電圧に応じた電流を表示素子に電流を流すので、表示品位の向上を図ることができる。
なお、発光期間(F)が第4期間の一例である。
【0083】
態様3の具体的な態様(態様4)に係る表示装置において、前記第4トランジスターは、ゲートノードを有し、前記第4期間において、前記第4トランジスターのゲートノードに、第1電圧が印加され、前記第1電圧は、当該第4トランジスターをオンさせる第2電圧、および、当該第4トランジスターをオフさせる第3電圧の間の電圧である。
この態様によれば、第4期間において第4トランジスターが、飽和領域で動作するので、表示素子の特性が変化しても第1トランジスターによる定電流性を確保することができる。
なお、Mレベルが第1電圧の一例であり、Lレベルが第2電圧の一例であり、Hレベルが第3電圧の一例である。
【0084】
態様1乃至4のいずれかの具体的な態様(態様5)に係る表示装置において、前記表示素子は、一端および他端を有するOLEDであり、前記一端が前記第4トランジスターに接続され、前記第1期間は、第1初期化期間、第2初期化期間および第3初期化期間を含み、前記第1初期化期間において、前記第2トランジスターがオンし、前記第3トランジスターおよび前記第4トランジスターがオフして、前記データ線および前記第2トランジスターを介して前記第1トランジスターのゲートノードに当該第1トランジスターをオフさせる電圧が印加され、前記第2初期化期間において、前記第2トランジスターがオフし、前記第3トランジスターおよび前記第4トランジスターがオンして、前記データ線、前記第3トランジスターおよび前記第4トランジスターを介して、前記表示素子の一端に前記OLEDを非発光とさせる電圧が印加され、前記第3初期化期間において、前記第2トランジスターがオンし、前記第3トランジスターおよび前記第4トランジスターがオフして、前記データ線を介して前記第1トランジスターのゲートノードに当該第1トランジスターをオンさせる電圧が印加される。
この態様によれば、第1初期化期間では第1トランジスターのゲートノードに、当該第1トランジスターをオフさせる電圧が印加される。このため、OLEDに流れる電流が遮断される。第2初期化期間では、OLEDの一端が当該OLEDを非発光とさせる電圧にリセットされる。このため、OLEDに寄生する容量成分によってわずかに発光してしまう現象が抑えられる。第3初期化期間では、第1トランジスターのゲートノードに当該第1トランジスターをオンさせる電圧が印加される。これにより、次の補償期間の始期において第1トランジスターのソースノード・ドレインノードの間で確実に電流を流すことができる。
なお、初期化期間(A)が第1初期化期間の一例であり、初期化期間(B)が第2初期化期間の一例であり、初期化期間(C)が第3初期化期間の一例である。また、画素電極213がOLEDの一端の一例であり、共通電極218がOLEDの他端の一例である。
【0085】
態様1乃至5の具体的な態様(態様6)に係る電子機器は、上記いずれか態様に係る表示装置を有する。この態様によれば、表示装置の小型化・高精細化を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0086】
10…表示装置、12…走査線、14a…データ転送線、14b…データ線、20…制御回路、30…データ信号出力回路、31…シフトレジスタ、32…ラッチ回路、33…D/A変換回路群、34…アンプ群、45、72、73…トランスミッションゲート、51、74、75、132…容量素子、100…表示領域、110…画素回路、66~68、121~124…トランジスター、130…OLED、300…ヘッドマウントディスプレイ。
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