(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】内燃機関の暖機装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20231121BHJP
F01N 3/18 20060101ALI20231121BHJP
F01N 5/02 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
F01N3/20 K
F01N3/20 D
F01N3/18 D
F01N5/02 G
(21)【出願番号】P 2022049276
(22)【出願日】2022-03-25
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】横井 健
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0292964(US,A1)
【文献】特開2020-84936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0340895(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第2254014(GB,A)
【文献】独国特許出願公開第4435213(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0198821(US,A1)
【文献】特開2013-124609(JP,A)
【文献】特開昭59-173515(JP,A)
【文献】特開2018-145882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/20
F01N 3/18
F01N 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒を有し、エンジンから排出された排気ガスが通る排気通路において前記排気ガス中の窒素酸化物を除去する後処理装置と、
前記排気通路における前記後処理装置の上流側に配置されたヒータと、
前記後処理装置を通過した空気を前記ヒータの上流側へと戻す循環通路と、
前記ヒータによって加熱された空気を前記後処理装置へと送る送風手段と、
前記エンジンの冷却水が流れる冷却水流路と、
前記後処理装置を通過した前記加熱された空気と、前記冷却水流路内の前記冷却水との間で熱交換をすることによって、前記冷却水を温める熱交換器と、
前記ヒータ及び前記送風手段の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記エンジンが停止している状態で、前記ヒータ及び前記送風手段を動作させ、前記ヒータによって加熱された空気を前記後処理装置及び前記熱交換器へ供給する、
内燃機関の暖機装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記後処理装置の前記触媒の温度が所定の閾値以下である場合に、前記ヒータ及び送風手段を動作させる、
請求項1に記載の内燃機関の暖機装置。
【請求項3】
前記熱交換器は前記排気通路に配置されており、
前記循環通路は、前記熱交換器の上流側において前記排気通路から分岐する第1分岐路を含み、
前記第1分岐路が前記排気通路から分岐する部分に配置され、前記加熱された空気が前記第1分岐路のみに流れる状態と、前記加熱された空気が前記排気通路のみに流れる状態とを切り替える第1バルブをさらに備え、
前記制御装置は、
前記加熱された空気が前記後処理装置及び前記熱交換器へ供給されている状態で、前記エンジンの温度が所定の閾値を超えた場合に、前記第1バルブを制御し、前記加熱された空気を前記第1分岐路のみに流して前記循環通路内で循環させる、
請求項1又は2に記載の内燃機関の暖機装置。
【請求項4】
前記熱交換器が前記排気通路に配置されており、
前記循環通路は、前記熱交換器の下流側において前記排気通路から分岐する第2分岐路を含み、
前記第2分岐路が前記排気通路から分岐する部分に配置され、前記加熱された空気が前記第2分岐路のみに流れる状態と、前記加熱された空気が前記排気通路のみに流れる状態とを切り替える第2バルブをさらに備え、
前記制御装置は、
前記ヒータ及び前記送風手段を動作させる前に、前記第1バルブ及び第2バルブを制御し、前記第1バルブを前記加熱された空気が前記排気通路のみに流れる状態に切り替え、前記第2バルブを前記加熱された空気が第2分岐路のみに流れる状態に切り替え、その後、前記ヒータ及び前記送風手段を動作させることにより、前記加熱された空気を前記後処理装置及び前記熱交換器へ供給する、
請求項3に記載の内燃機関の暖機装置。
【請求項5】
前記循環通路は、前記後処理装置を通過した空気を、前記排気通路のうちターボチャージャの下流側であって前記ヒータの上流側の位置へと戻す第1循環通路であり、
前記第1循環通路上に、前記送風手段としてエアポンプが配置されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の内燃機関の暖機装置。
【請求項6】
前記循環通路は、前記後処理装置を通過した空気を、ターボチャージャの吸気通路へと戻す第2循環通路であり、
前記熱交換器は、前記第2循環通路に配置された低圧EGRクーラである、
請求項1又は2に記載の内燃機関の暖機装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の暖機装置に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒を活性化するために触媒を温めることが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HEV(Hybrid Electric Vehicle)やPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)の車両は、モータが駆動している状態では、エンジンは動作しない。エンジンの停止中に触媒を温めることで、モータ駆動からエンジン駆動に切り替わった直後においても、良好に排ガスを低減させることができる。一方で、エンジン駆動に切り替わった直後ではエンジンの温度が低く、エンジンの動作性能が低くなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、エンジンを停止させた状態においてヒータにより触媒を温める場合に、効率良くエンジンを暖機できる内燃機関の暖機装置を提供する目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、触媒を有し、エンジンから排出された排気ガスが通る排気通路において前記排気ガス中の窒素酸化物を除去する後処理装置と、前記排気通路における前記後処理装置の上流側に配置されたヒータと、前記後処理装置を通過した空気を前記ヒータの上流側へと戻す循環通路と、前記ヒータによって加熱された空気を前記後処理装置へと送る送風手段と、前記エンジンの冷却水が流れる冷却水流路と、前記後処理装置を通過した前記加熱された空気と、前記冷却水流路内の前記冷却水との間で熱交換をすることによって、前記冷却水を温める熱交換器と、前記ヒータ及び前記送風手段の動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記エンジンが停止している状態で、前記ヒータ及び前記送風手段を動作させ、前記ヒータによって加熱された空気を前記後処理装置及び前記熱交換器へ供給する、内燃機関の暖機装置を提供する。
【0007】
前記制御装置は、前記後処理装置の前記触媒の温度が所定の閾値以下である場合に、前記ヒータ及び送風手段を動作させてもよい。
【0008】
前記熱交換器は前記排気通路に配置されており、前記循環通路は、前記熱交換器の上流側において前記排気通路から分岐する第1分岐路を含み、前記第1分岐路が前記排気通路から分岐する部分に配置され、前記加熱された空気が前記第1分岐路のみに流れる状態と、前記加熱された空気が前記排気通路のみに流れる状態とを切り替える第1バルブをさらに備え、前記制御装置は、前記加熱された空気が前記後処理装置及び前記熱交換器へ供給されている状態で、前記エンジンの温度が所定の閾値を超えた場合に、前記第1バルブを制御し、前記加熱された空気を前記第1分岐路のみに流して前記循環通路内で循環させてもよい。
【0009】
前記熱交換器が前記排気通路に配置されており、前記循環通路は、前記熱交換器の下流側において前記排気通路から分岐する第2分岐路を含み、前記第2分岐路が前記排気通路から分岐する部分に配置され、前記加熱された空気が前記第2分岐路のみに流れる状態と、前記加熱された空気が前記排気通路のみに流れる状態とを切り替える第2バルブをさらに備え、前記制御装置は、前記ヒータ及び前記送風手段を動作させる前に、前記第1バルブ及び第2バルブを制御し、前記第1バルブを前記加熱された空気が前記排気通路のみに流れる状態に切り替え、前記第2バルブを前記加熱された空気が第2分岐路のみに流れる状態に切り替え、その後、前記ヒータ及び前記送風手段を動作させることにより、前記加熱された空気を前記後処理装置及び前記熱交換器へ供給してもよい。
【0010】
前記循環通路は、前記後処理装置を通過した空気を、前記排気通路のうちターボチャージャの下流側であって前記ヒータの上流側の位置へと戻す第1循環通路であり、前記第1循環通路上に、前記送風手段としてエアポンプが配置されていてもよい。
【0011】
前記循環通路は、前記後処理装置を通過した空気を、ターボチャージャの吸気通路へと戻す第2循環通路であり、前記熱交換器は、前記第2循環通路に配置された低圧EGRクーラであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エンジンを停止させた状態においてヒータにより触媒を温める場合に、効率良くエンジンを暖機できる内燃機関の暖機装置を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態の内燃機関の構成を示す図である。
【
図2】暖機装置がエンジン停止時に行う暖機動作のフローチャートである。
【
図3】本発明の他の実施形態の内燃機関の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
(内燃機関100の概要)
図1は、本発明の一実施形態の内燃機関100の構成を示す図である。
図1の矢印は、空気の流れを示している。内燃機関100は、一例として、HEV(Hybrid Electric Vehicle)又はPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)の車両に設けられた内燃機関である。
【0015】
内燃機関100は、主として、エアクリーナ1、ターボチャージャ2、第1チャージエアクーラ3、電動過給機4、第2チャージエアクーラ5、エンジン6、EGR配管部7、及び、暖機装置10を備える。
【0016】
エンジン6の動作時の空気の流れは、この種の内燃機関における一般的な空気の流れと基本的に同様であるため簡単に説明する。エンジン6の動作中、車両内に吸入された空気は、エアクリーナ1、ターボチャージャ2、第1チャージエアクーラ3、電動過給機4、及び第2チャージエアクーラ5を通過して、エンジン6へと供給される。エンジン6から排出された排気ガスの一部はEGR配管部7によってエンジン6の給気側に戻される。エンジン6から排出された排気ガスの他の一部は、ターボチャージャ2を通過した後、暖機装置10へと流入する。
【0017】
詳細は後述するが、本実施形態の内燃機関100の特徴の1つは、エンジン6の排気側において暖機装置10が構成されていることである。暖機装置10は、エンジン6の停止中に、ヒータ11及びエアポンプ14を動作させ、ヒータ11によって加熱された空気を後処理装置12及び熱交換器13へ供給する。これにより、後処理装置12の触媒が温められる。また、冷却水流路L内のエンジンの冷却水も温められるため、エンジン6も暖機される。
【0018】
このような構成によれば、エンジン6の停止中に後処理装置12の触媒を温め、触媒を活性化温度とすることができる。また、後処理装置12の触媒を温めるためのエネルギーを用い、エンジンの冷却水を温めることによって、エンジン6を効率的に暖機することができる。
【0019】
(各部の構成)
以下、内燃機関100の各部について説明する。エアクリーナ1は、エンジン6に吸入される空気中の異物を除くフィルタである。エアクリーナ1から取り込まれた空気は、吸気通路p1を通じてターボチャージャ2へ供給される。
【0020】
ターボチャージャ2は、エンジン6の排気を利用してタービンを回転させることにより、吸気通路p1から取り込んだ空気を圧縮する。ターボチャージャ2が圧縮された空気をエンジン6に供給することで、エンジン6が1回の燃焼行程で発生するトルクが増大する。
【0021】
第1チャージエアクーラ3は、ターボチャージャ2によって圧縮され高温となった空気を冷却する。空気が冷却されるので、エンジン6が吸入する空気の密度が高まる。
【0022】
電動過給機4は、不図示のモータの駆動力により圧縮した圧縮空気をエンジン6へ供給する装置である。電動過給機4は、第1チャージエアクーラ3と第2チャージエアクーラ5とを接続する通路p2に配置されている。電動過給機4が圧縮空気をエンジン6に供給していない状態では、電動過給機4は、空気が電動過給機4を通過するのを阻止する。したがってこの状態では、空気は、通路p2ではなくバイパス路である通路p3を通じて、第2チャージエアクーラ5に供給される。通路p3には、バルブVaが配置されている。バルブVaは、例えば電磁バルブであり、通路p3において空気を通過させるか否かを切り替える。
【0023】
電動過給機4は、エンジン6が停止している状態においては、EGR配管部7を通して、エンジン6の排気側へ圧縮空気を供給する。電動過給機4が暖機装置10の送風手段として機能する例については、第2の実施形態で説明する。
【0024】
第2チャージエアクーラ5は、エンジン6が吸入する空気を冷却する。エンジン6は、例えば、軽油等の液体燃料の燃焼により引き起こされる気筒の往復運動を回転力に変換することにより、駆動力を生成する。
図1は、4気筒のディーゼルエンジンの例を示している。
【0025】
EGR配管部7は、エンジン6の排気ガスの一部をエンジン6の給気側に戻すため構造部である。EGR配管部7は、通路p4、通路p5、EGRクーラ7a、バルブVb、及びバルブVcを有する。通路p4及び通路p5は、並行に配置され、エンジン6の給気側と排気側とを接続する。
【0026】
EGRクーラ7aは通路p4に配置され、エンジン6の排気側から給気側に戻る排気ガスを冷却する。バルブVbは、通路p5に配置されている。バルブVbは、例えば電磁バルブであり、通路p5において空気を通過させるか否かを切り替える。バルブVcは、EGR配管部7において空気を通過させるか否かを切り替える。
【0027】
このように構成されたEGR配管部7を通じて排気ガスの一部がエンジン6の吸気側に戻されることにより、エンジン6内の燃焼時の最高温度が低下し、窒素酸化物の生成量が低減する。エンジン6が停止している状態においては、通路p5を通じて、電動過給機4からの圧縮空気をエンジン6の排気側に供給することができる。
【0028】
(暖機装置10について)
暖機装置10は、主として、排気通路p6、ヒータ11、後処理装置12、循環通路p7、第1バルブV1、第2バルブV2、熱交換器13、冷却水流路L、エアポンプ14、及び制御装置15を有している。
【0029】
排気通路p6は、エンジン6からの排気ガスが流れる通路である。排気通路p6には、上流側から順に、ヒータ11、後処理装置12及び熱交換器13が配置されている。排気通路p6の末端部は大気に露出しており、ターボチャージャ2を通過した排気ガスが排気通路p6の末端部から大気に放出される。
【0030】
ヒータ11は、排気通路p6内を流れる空気を加熱する。ヒータ11は、排気通路p6における後処理装置12の上流側に位置している。ヒータ11は、電熱コイルヒータである。ヒータ11は、不図示の電源からの電力によって駆動する。ヒータ11の動作は、制御装置15によって制御される。ヒータ11は、加熱された空気が後処理装置12を通過した際に触媒が活性化温度以上まで温められるように、空気を十分な温度に加熱する。
【0031】
後処理装置12は、触媒を有し、排気通路p6において排気ガス中の窒素酸化物を除去する。後処理装置12は、
図1の例では、DOC12a及びSCR12bを含んでいる。
【0032】
DOC(Diesel Oxidation Catalyst)12aは、貴金属触媒を含み、エンジン6からの排気中の未燃焼ガスを酸化する。DOC12aは、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物を酸化する。
【0033】
SCR(Selective Catalytic Reduction)12bは、エンジン6からの排気の窒素酸化物を除去する。SCR12bは、例えば、還元剤を用いて排気中の窒素酸化物を選択的に還元することにより、窒素酸化物を除去する選択還元触媒である。
【0034】
エンジン6の始動直後には、後処理装置12の触媒の温度が触媒活性化温度より低い。このため、窒素酸化物の除去効率を向上させるため、暖機装置10は、後処理装置12の触媒をヒータ11によって温める。
【0035】
循環通路p7は、後処理装置12を通過した空気をヒータ11の上流側へと戻す通路である。循環通路p7は、本発明における第1循環通路に相当する。循環通路p7は、第1分岐路p7-1、第2分岐路p7-2、通路p7-3を有する。第1分岐路p7-1は、熱交換器13の上流側において排気通路p6から分岐する通路である。第2分岐路p7-2は、熱交換器13の下流側において排気通路p6から分岐する通路である。通路p7-3は、第1分岐路p7-1からの空気、及び、第2分岐路p7-2からの空気を排気通路p6に戻す通路である。なお、詳細は後述するが、第2分岐路p7-2は、加熱された空気を熱交換器13に供給することなくヒータ11の上流側へと戻すバイパス路として機能する。
【0036】
上記のように構成された循環通路p7は、後処理装置12を通過した空気を排気通路p6のうちターボチャージャ2の下流側であってヒータ11の上流側の位置へと戻す。
【0037】
第1バルブV1は、第1分岐路p7-1が排気通路p6から分岐する部分に配置されている。第1バルブV1は、一例として電磁バルブである。第1バルブV1の動作は、制御装置15によって制御される。第1バルブV1は、第1バルブV1を通過した空気が第1分岐路p7-1のみに流れる状態と、第1バルブV1を通過した空気が排気通路p6のみに流れる状態とに切り替える。
【0038】
第2バルブV2は、第2分岐路p7-2が排気通路p6から分岐する部分に配置されている。第2バルブV2は、一例として電磁バルブである。第1バルブV1の動作は、制御装置15によって制御される。第2バルブV2は、第2バルブV2を通過した空気が第2分岐路p7-2のみに流れる状態と、第2バルブV2を通過した空気が排気通路p6のみに流れる状態とに切り替える。
【0039】
熱交換器13は排気通路p6に配置されており、後処理装置12を通過した、ヒータ11によって温められた空気が通過する。熱交換器13は、冷却水流路Lの冷却水を温める機能を有する。具体的には、熱交換器13は、熱交換器13を通過する加熱された空気と、冷却水流路Lを流れる冷却水との間で熱交換をすることによって、冷却水流路Lの冷却水を温める。
【0040】
冷却水流路Lは、内部にエンジンの冷却水が流れる流路であり、本来的には、エンジン6を冷却するための構造部である。本実施形態では、冷却水流路L内の冷却水を温めてエンジン6に供給することで、エンジン6を温め、エンジン6の暖機を行うことができる。
【0041】
図示は省略するが、冷却水流路Lには、冷却水流路L内の冷却水を移動させるためのウォータポンプが配置されていてもよい。ウォータポンプの動作は、例えば、制御装置15によって制御される。
【0042】
エアポンプ14は、循環通路p7に設けられており、ヒータ11によって加熱された空気を循環させる。エアポンプ14は、本発明における送風手段であり、加熱された空気を後処理装置12へと送る。エアポンプ14は、具体的には、通路p7-3に配置されている。エアポンプ14の動作は、制御装置15によって制御される。
【0043】
制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)と記憶部とを有する。制御装置15は、例えば、ECU(Engine Control Unit)である。ECUは、内燃機関100の動作を制御するエンジンECUであってもよいし、エンジンECUとは別に設けられたECUであってもよい。
【0044】
制御装置15は、後処理装置12の触媒の温度を測定する温度センサT1の出力値を取得する。温度センサT1は、DOC12aの触媒又はSCR12bの触媒の少なくともいずれかの温度を測定する。
【0045】
制御装置15は、また、エンジン6の温度を測定する温度センサT2の出力値を取得する。エンジン6の温度は、一例として、エンジン6が十分に暖機されたか否かを判定するために用いられる。
【0046】
制御装置15は、ヒータ11、エアポンプ14、第1バルブV1、及び第2バルブV2の動作を制御する。具体的には、制御装置15は、ヒータ11の動作の開始、動作の停止、及びヒータ11の出力を制御する。制御装置15は、また、エアポンプ14の動作の開始、動作の停止、及びエアポンプ14の出力を制御する。
【0047】
制御装置15の記憶部は、制御装置15の各種判定に利用される閾値データを記憶している。記憶部は、例えば、後処理装置12の触媒を暖機する必要があることを示す触媒の温度と、触媒の活性化温度以上に設定された触媒の目標温度と、エンジン6が十分に暖機されたことを示すエンジン6の温度とを記憶している。触媒の目標温度は、一例として160℃以上である。
【0048】
(エンジン停止時の暖機動作)
上述のように構成された暖機装置10がエンジン6の停止時に後処理装置12の触媒及びエンジン6を温める動作について以下説明する。
図2は、暖機装置10がエンジン停止時に行う暖機動作のフローチャートである。
【0049】
まず、ステップS1において、制御装置15は、エンジン6が停止しているか否かを判定する。制御装置15は、エンジン6が停止していることを示す任意の情報に基づいて、エンジン6が停止しているか否かを判定する。例えば、制御装置15は、車両がモータ駆動モードである場合に、エンジン6が停止していると判定する。
【0050】
エンジン6が停止し、後処理装置12の触媒の温度が低い場合には、触媒が活性化温度以上となるように触媒を温める必要がある。そこで、エンジン6が停止している場合(ステップS1でYes)、制御装置15は、ステップS2において、後処理装置12の触媒の温度が所定の閾値以下であるか否かを判定する。具体的には、制御装置15は、温度センサT1からの出力値と、記憶部が記憶する閾値とに基づき、触媒の温度が所定の閾値以下であるか否かを判定する。
【0051】
触媒の温度が所定の閾値以下である場合(ステップS2でYes)、制御装置15は、ステップS3において、暖機動作を開始する前の工程として流路の切り替えを行う。本実施形態の暖機装置10は、ヒータ11で加熱した空気を後処理装置12と熱交換器13とに供給する。そこで、ステップS3では、制御装置15は、第1バルブV1及び第2バルブV2を制御し、第1バルブV1を、空気が排気通路p6のみに流れる状態に切り替え、第2バルブV2を、空気が第2分岐路p7-2のみに流れる状態に切り替える。この状態では、後処理装置12を通過した空気は、第1分岐路p7-1には流れず、熱交換器13を流れて第2分岐路p7-2及び通路p7-3経由でヒータ11の上流側に戻る。
【0052】
次いで、ステップS4において、制御装置15は、ヒータ11及びエアポンプ14(送風手段)を動作させる。これにより、ヒータ11により加熱された空気がエアポンプ14により後処理装置12へと供給される。加熱された空気が後処理装置12を通過することにより、後処理装置12の触媒が温められる。
【0053】
後処理装置12を通過した加熱された空気は、排気通路p6経由で熱交換器13に供給される。熱交換器13では、加熱された空気と、冷却水流路L内の冷却水との間で熱交換が行われることで冷却水が温められる。温められた冷却水がエンジン6に供給されることで、エンジン6が暖機される。
【0054】
熱交換器13を通過した加熱された空気は、大気へ放出されることなく、第2分岐路p7-2及び通路p7-3軽油でヒータ11の上流側に戻される。このように、加熱された空気が排気通路p6及び循環通路p7内の循環する構成によれば、効率的に触媒及び冷却水を温めることができる。
【0055】
エンジン6が十分に暖機された後は、加熱された空気を熱交換器13に供給する必要はない。そこで、ステップS5において、制御装置15は、エンジンの温度が所定の温度を超えたか否かを判定する。具体的には、制御装置15は、温度センサT2からの出力値と、記憶部が閾値として記憶する温度に基づき、エンジンの温度が所定の温度を超えたか否かを判定する。
【0056】
加熱された空気が後処理装置12及び熱交換器13へ供給されている状態で、エンジン6の温度が所定の閾値を超えた場合(ステップS5でYes)、制御装置15は、ステップS6において、流路の切り替えを行う。具体的には、制御装置15は、第1バルブV1を制御し、加熱された空気を第1分岐路p7-1のみに流して循環通路p7内で循環させる状態とする。つまり、この状態では、加熱された空気は熱交換器13へは供給されることなく、第1分岐路p7-1及び通路p7-3を通って循環通路p7内を循環する。このように、エンジン6が十分に暖機された場合に熱交換器13に空気を供給しないようにすることで、加温された空気のエネルギーを効率的に利用して触媒を温めることができる。
【0057】
次いで、ステップS7において、制御装置15は、後処理装置12触媒の温度が目標温度を超えたか否かを判定する。具体的には、制御装置15は、温度センサT1からの出力値と、記憶部が閾値として記憶する温度とに基づき、触媒の温度が目標温度を超えたか否かを判定する。
【0058】
触媒の温度が目標温度を超えた場合(ステップS7でYes)、ステップS8において、制御装置15は、ヒータ11及びエアポンプ14の動作を停止させる。
【0059】
上記の一連の工程により、暖機装置10は、後処理装置12の触媒を温める。また、暖機装置10は、冷却水流路L内の冷却水を温めることで、エンジン6の暖機を行う。
【0060】
(作用効果)
以上説明したように本実施形態の暖機装置10によれば、エンジン6を停止させた状態においてヒータ11により後処理装置12の触媒を温める場合に、ヒータ11によって加熱された空気でエンジンの冷却水も温めることができるので、エネルギーを効率的に利用してエンジン6の暖機を行うことができる。
【0061】
冷却水を温める熱源として、後処理装置12の触媒を温める熱源であるヒータ11が利用されているため、ヒータ11のほかに別途熱源を設ける必要が無く、暖機装置10の構成が複雑化しない。
【0062】
本実施形態では、特に、後処理装置12の触媒とエンジンの冷却水の暖機を開始した後、エンジンが十分に暖機されたら(ステップS5参照)、第1バルブV1によって流路が変更され、加熱された空気を、第1分岐路p7-1、通路p7-3、及び排気通路p6に循環させる。この状態では、加熱された空気が熱交換器13に供給されないため、加熱された空気のエネルギーが冷却水を温めるために使用されず、後処理装置12の触媒を効率的に暖機することができる。
【0063】
本実施形態では、
図1に示したように、第1バルブV1と第2バルブV2との2つのバルブが設けられているので、制御装置15がこれらのバルブを制御することで、加熱された空気が、第2分岐路p7-2、通路p7-3、及び排気通路p6内を循環する状態と、第1分岐路p7-1、通路p7-3、及び排気通路p6内を循環する状態とを切り替えることができる。
【0064】
本実施形態では、また、循環通路p7及び循環通路p7に配置されたエアポンプ14という比較的簡単な構成で、加熱された空気を循環させるための送風手段を構成できる。
【0065】
上記の説明では、
図1を参照しながら内燃機関100の具体的な構成を説明したが、本発明は必ずしも上述した具体的な構成に限定されない。例えば、第1バルブV1及び第2バルブV2のうち少なくとも一方が省略されてもよい。暖機装置10は、後処理装置12の触媒とエンジンの冷却水とを温める動作を、ヒータ11によって加熱された空気を排気通路p6経由で大気に放出させながら、実施してもよい。
【0066】
また、冷却水流路Lには、車両の室内の空気と冷却水との間で熱交換するための熱交換機が設けられていてもよい。このような熱交換機が設けられていることで、エンジン6が停止している間に、触媒を温めた空気を利用して効率良く室内を温めることも可能になる。
【0067】
<第2の実施形態>
図3は、本発明の他の実施形態の内燃機関の構成を示す図である。暖機装置10Aが第1の実施形態の構成と異なる点を除き、他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0068】
暖機装置10Aは、排気通路p6、ヒータ11、後処理装置12、循環通路p8、第2バルブV2、LP-EGRクーラ16、冷却水流路L、及び、制御装置15を有している。暖機装置10Aでは、第1の実施形態の構成と比較して、熱交換器13、エアポンプ14及び第1バルブV1等が省略されている。その他の構成については第1の実施形態と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0069】
循環通路p8は、後処理装置12を通過した空気を、ターボチャージャ2の吸気通路p1へと戻す通路である。循環通路p8は、本発明における第2循環通路に相当する。
【0070】
LP-EGRクーラ16(低圧EGR、Low Pressure-EGR)は、循環通路p8に配置されている。LP-EGRクーラ16は、エアクリーナ1とターボチャージャ2との間に排気を戻すための装置である。
図2の構成では、LP-EGRクーラ16が熱交換器の機能も有する。具体的には、LP-EGRクーラ16は、ヒータ11によって加熱された空気と、冷却水流路L内のエンジンの冷却水との間で熱交換をすることによって、冷却水を温めてエンジン6を暖機する。
【0071】
制御装置15は、第1の実施形態と同様、エンジン6が停止している状態でヒータ11を動作させ、後処理装置12の触媒を温めるために空気を加熱する。本実施形態では、制御装置15は、電動過給機4の動作も制御する。具体的には、制御装置15は、電動過給機4を動作させ、EGR配管部7経由で圧縮空気を排気通路p6のヒータ11の上流側に供給させる。
【0072】
このようにヒータ11の上流側に供給された圧縮空気は、ヒータ11によって加熱され、加熱された空気は、第1の実施形態と同様、後処理装置12に供給される。これにより、後処理装置12の触媒が温められる。
【0073】
後処理装置12を通過した加熱された空気は、排気通路p6及び第2バルブV2を経由して、循環通路p8へと流れ込む。LP-EGRクーラ16を加熱された空気が流れることで、加熱された空気と冷却水流路Lの冷却水との間で熱交換が行われ、冷却水流路L内の冷却水が温められる。
【0074】
図3の構成では、循環通路p8が吸気通路p1に接続しているので、LP-EGRクーラ16を通過した空気は、ターボチャージャ2の上流側まで戻される。その後、空気は、ターボチャージャ2、第1チャージエアクーラ3、及び電動過給機4を通過し、以下、上述した説明と同様の流れで再びヒータ11の上流側へと戻される。
【0075】
以上説明したように、本発明においては、ヒータ11によって加熱された空気を送る送風手段は必ずしもエアポンプ14に限定されず、送風手段は、エンジン6の上流側に位置する電動過給機4であってもよい。
図3のような構成によれば、エアポンプ14を設ける必要ないという利点がある。
【0076】
なお、
図3は、タービンが設けられておらず、モータとコンプレッサとを有する電動コンプレッサが備えられた構成を例示している。しかし、本発明においては、電動アシストターボチャージャが利用されてもよい。電動アシストターボチャージャは、圧縮機とタービンとの間にモータが配置されたターボチャージャであり、モータの駆動力により空気を圧縮することができる。
【0077】
<変形例>
上述した実施形態では、後処理装置12の触媒を暖機するための熱を利用してエンジンの冷却水を温め、エンジン6を暖機することを説明した。本発明の一形態においては、暖機装置は、温められた冷却水によって車室内を温めてもよい。
【0078】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0079】
1 エアクリーナ
2 ターボチャージャ
3 第1チャージエアクーラ
4 電動過給機
5 第2チャージエアクーラ
6 エンジン
7 EGR配管部
7a EGRクーラ
10 暖機装置
10A 暖機装置
11 ヒータ
12 後処理装置
13 熱交換器
14 エアポンプ
15 制御装置
16 LP-EGRクーラ
100 内燃機関
ECU エンジン
L 冷却水流路
p1 吸気通路
p2 通路
p3 通路
p4 通路
p5 通路
p6 排気通路
p7 循環通路
p7-1 第1分岐路
p7-2 第2分岐路
p7-3 通路
p8 循環通路
T1 温度センサ
T2 温度センサ
V1 第1バルブ
V2 第2バルブ
Va バルブ
Vb バルブ
Vc バルブ