(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】エレベータの制御装置
(51)【国際特許分類】
B66B 1/18 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
B66B1/18 N
(21)【出願番号】P 2022108942
(22)【出願日】2022-07-06
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 豪
(72)【発明者】
【氏名】小村 章
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/116963(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/023719(WO,A1)
【文献】特開2018-080033(JP,A)
【文献】特開2017-030918(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03608271(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00 - 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
行先階の登録に用いられる登録部
として、エレベータの乗場から離れた位置に設置された第1登録部と、当該乗場に設置された第2登録部と、を備えたエレベータに適用可能な制御装置であり、
利用者が所有する端末装置において、その利用者の歩行速度を計測することにより、そのときの当該利用者の状態を反映した実測値を取得することが可能であり、
前記
第1登録部にて利用者が行先階を登録した場合
であって、
その利用者が所有する前記端末装置にて得られた前記実測値が第1所定速度よりも大きい場合に、その実測値を考慮して、当該利用者についての乗りかごへの割当て
を行い、
前記第1登録部にて利用者が行先階を登録した場合であって、その利用者が所有する前記端末装置にて得られた前記実測値が前記第1所定速度よりも小さい場合には、前記第2登録部にて改めて行先階を登録する必要があることを利用者に通知する、エレベータの制御装置。
【請求項2】
前記第1登録部にて利用者が行先階を登録した場合であって、その利用者が所有する前記端末装置にて得られた前記実測値が、前記第1所定速度よりも大きく、且つ、当該第1所定速度より大きい第2所定速度よりも小さい場合に、その実測値を考慮して、当該利用者についての乗りかごへの割当てを行い、
前記第1登録部にて利用者が行先階を登録した場合であって、その利用者が所有する前記端末装置にて得られた前記実測値が、前記第1所定速度よりも小さい場合、又は、前記第2所定速度よりも大きい場合には、前記第2登録部にて改めて行先階を登録する必要があることを利用者に通知する、請求項1に記載のエレベータの制御装置。
【請求項3】
行先階の登録に用いられる登録部
として、エレベータの乗場から離れた位置に設置された第1登録部と、当該乗場に設置された第2登録部と、を備えたエレベータに適用可能な制御装置であり、
利用者が所有する端末装置において、その利用者の歩行速度を計測することにより、そのときの当該利用者の状態を反映した実測値を取得することが可能であり、
前記
第1登録部にて利用者が行先階を登録した場合
であって、
その利用者が所有する前記端末装置にて得られた前記実測値が第2所定速度よりも小さい場合に、その実測値を考慮して、当該利用者についての乗りかごへの割当て
を行い、
前記第1登録部にて利用者が行先階を登録した場合であって、その利用者が所有する前記端末装置にて得られた前記実測値が前記第2所定速度よりも大きい場合には、前記第2登録部にて改めて行先階を登録する必要があることを利用者に通知する、エレベータの制御装置。
【請求項4】
前記登録部はコードリーダで構成された部分であり、
前記端末装置では、それを所有する利用者による行先階の入力が可能であり、且つ、当該行先階が入力された場合に、その行先階と前記実測値とを含んだコードを生成することが可能であり、
利用者が、自身の前記端末装置で生成された前記コードを前記コードリーダに読み取らせた場合に、当該コードに含まれている前記行先階が前記登録部にて登録されたものとして、その利用者についての前記割当てを、当該コードに含まれている前記実測値を考慮して行う、請求項1
~3の何れかに記載のエレベータの制御装置。
【請求項5】
前記登録部にて利用者が行先階を登録した場合であって、当該登録部の設置階に乗りかごが停止中である場合には、その利用者についての前記割当てを当該停止中の乗りかごに対して行い、その乗りかごの出発時刻が、前記利用者が所有する前記端末装置にて得られた前記実測値から算出される当該利用者の到着時刻前である場合には、当該乗りかごの戸開を延長することにより前記出発時刻を遅らせる、請求項1
~3の何れかに記載のエレベータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータにおいて利用者ごとに乗りかごへの割当てを行う制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、エレベータの制御技術として、行先階登録装置にて行先階の登録を行った利用者ごとに乗りかごへの割当てを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、乗りかごの近くに行先階登録装置が設置されているため、利用者は、行先階登録装置にて行先階を登録した後に、すぐに乗りかごに乗車することができる。従って、特許文献1では、利用者が、自身に割り当てられた乗りかごに乗り遅れてしまうといった事態は生じにくい。一方、エレベータによっては、乗場から離れた位置に行先階登録装置が設置される場合がある。例えば、建物の入口がある階においては、当該入口の近くに行先階登録装置が設置される場合がある。そのような場合、利用者は、行先階登録装置での行先階の登録後、乗場までの移動距離が長くて時間を要し、自身に割り当てられた乗りかごに乗り遅れてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、そのような乗遅れの発生を防止する技術として、行先階登録装置から乗りかごまでの移動に要する移動時間を考慮して乗りかごへの割当てを行う技術が提案されている。しかし従来は、どの利用者に対しても、予め設定された一定の歩行時間(例えば、一般の利用者について平均的な歩行時間)が上記移動時間として考慮されるに過ぎなかった。
【0006】
実際には、歩行時間は、同じ距離であっても利用者ごとに異なり、また、同じ利用者であっても、そのときの健康や荷物などの状態によって変わることがある。このため、歩行速度が遅い利用者においては、予め設定された一定の歩行時間では足りず、乗りかごへの乗遅れが発生しやすくなる。一方、歩行速度が速い利用者においては、予め設定された一定の歩行時間では長すぎて、予定よりも早く乗場に到達してしまうことになり、乗りかごが到着するまでの待ち時間や乗りかごが出発するまでの待ち時間が発生しやすくなる。このような乗遅れや待ち時間の発生は、輸送効率を低下させることになる。
【0007】
そこで本発明の目的は、エレベータにおいて、行先階を登録してから乗りかごに到達するまでの移動距離が長くて時間を要する場合であっても高い輸送効率の実現を可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る制御装置は、行先階の登録に用いられる登録部を備えたエレベータに適用可能な制御装置である。また、利用者が所有する端末装置において、その利用者の歩行速度を計測することにより、そのときの当該利用者の状態を反映した実測値を取得することが可能である。そして、上記制御装置は、登録部にて利用者が行先階を登録した場合に、その利用者についての乗りかごへの割当てを、当該利用者が所有する端末装置にて得られた実測値を考慮して行う。
【0009】
ここで、利用者の状態を反映した歩行速度の実測値を端末装置にて取得することにより、行先階の登録後に乗りかごまで移動するときの利用者の歩行速度として、そのときの利用者の状態に対応した適切な値が精度良く得られることになる。そして、上記制御装置によれば、その値(歩行速度の実測値)を考慮して割当てを行うことにより、各利用者を最適な乗りかごに乗車させることができる。その結果として、歩行速度が遅い利用者に対しては乗りかごへの乗遅れを防止でき、歩行速度が速い利用者に対しては待ち時間の短縮が可能になる。
【0010】
上記エレベータにおいて、登録部は、エレベータの乗場から離れた位置に設置された第1登録部と、当該乗場に設置された第2登録部と、を含んでいてもよい。この場合、制御装置は、第1登録部にて利用者が行先階を登録した場合であって、その利用者が所有する端末装置にて得られた実測値が第1所定速度よりも小さい場合、或いは、当該実測値が第1所定速度より大きい第2所定速度よりも大きい場合には、第2登録部にて改めて行先階を登録する必要があることを利用者に通知してもよい。
【0011】
ここで、歩行速度が著しく遅い利用者については、その歩行速度(具体的には、その歩行速度に基づいて算出される移動時間)を考慮したとしても、乗場までの距離が長くなると割当ての精度が低くなり、乗りかごに乗り遅れるおそれがある。また、利用者によっては、急いで走ってきて第1登録部にて行先階を登録する場合がある。その場合、当該利用者が所有する端末装置で得られる実測値は、走ってきたときの歩行速度が考慮されるため比較的大きな値になることが予想される。そして、そのような実測値が乗りかごへの割当てにて考慮されたとすると、利用者にとっては、第1登録部に到達するまでと同様、乗りかごまで移動するときにも長い距離を走らなければならないといった事態が生じ得る。そこで、上記構成によれば、そのような利用者には、第2登録部にて改めて行先階を登録する必要があることを通知することにより、乗りかごの近くで行先階を登録させることができ、その結果として、歩行速度が著しく遅い又は速い利用者に対しても割当ての精度を担保することが可能になる。
【0012】
上記エレベータにおいて、登録部はコードリーダで構成された部分であってもよい。また、端末装置では、それを所有する利用者による行先階の入力が可能であり、且つ、当該行先階が入力された場合に、その行先階と実測値とを含んだコードを生成することが可能であってもよい。そして、利用者が、自身の端末装置で生成されたコードをコードリーダに読み取らせた場合に、当該コードに含まれている行先階が登録部にて登録されたものとして、制御装置が、その利用者についての割当てを、当該コードに含まれている実測値を考慮して行ってもよい。この構成によれば、同じ1つのコード内に行先階及び実測値の両方が含まれているため、1つのコードをコードリーダに読み取らせるといった簡単な操作で、それらの情報を纏めてコードリーダから入力することができる。
【0013】
登録部にて利用者が行先階を登録した場合であって、当該登録部の設置階に乗りかごが停止中である場合には、制御装置は、その利用者についての割当てを当該停止中の乗りかごに対して行ってもよい。一方、このように停止中の乗りかごに対して割当てが行われた場合には、行先階を登録した利用者は、そのときの当該利用者の歩行速度によっては、割り当てられた乗りかご(停止中の乗りかご)の出発時刻までに移動できずに乗り遅れてしまうおそれがある。そこで、制御装置は、上記停止中の乗りかごの出発時刻が、利用者が所有する端末装置にて得られた実測値から算出される当該利用者の到着時刻前である場合には、当該乗りかごの戸開を延長することにより出発時刻を遅らせてもよい。この構成によれば、乗りかごへの乗遅れが発生するおそれがあることを予測して当該乗りかごの戸開が延長されるため、乗りかごへの乗遅れが回避されやすくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エレベータにおいて、行先階を登録してから乗りかごに到達するまでの移動距離が長くて時間を要する場合であっても、高い輸送効率の実現が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(A)実施形態におけるエレベータの全体構成を示した概念図、及び(B)利用者が所有する端末装置の構成を示した概念図である。
【
図2】実施形態での行先階登録装置の設置位置を例示した概念図である。
【
図3】実施形態において、端末装置のタッチパネルに表示される(A)入力画面、(B)入力画面(コード表示ボタンが表示された状態)、及び(C)コード画面、並びに行先階登録装置の通知部に表示される(D)待機画面、及び(E)報知画面、をそれぞれ例示した概念図である。
【
図4】実施形態で用いられる装置管理データの一例を示した概念図である。
【
図5】実施形態において端末装置が実行する制御処理(行先階入力用アプリで実行される処理)を示したフローチャートである。
【
図6】実施形態において群管理制御装置が実行する呼び登録処理を示したフローチャートである。
【
図7】第1変形例での行先階登録装置の設置位置を例示した概念図である。
【
図8】第1変形例で用いられる装置管理データの一例を示した概念図である。
【
図9】第1変形例において群管理制御装置が実行する呼び登録処理を示したフローチャートである。
【
図10】第1変形例において行先階登録装置の通知部に表示される報知画面を例示した概念図である。
【
図11】第2変形例において群管理制御装置が実行する呼び登録処理を示したフローチャートである。
【
図12】第3変形例において群管理制御装置が実行する呼び登録処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1]実施形態
[1-1]エレベータの全体構成
図1(A)は、実施形態におけるエレベータの全体構成を示した概念図である。
図1(A)に示されるように、このエレベータは、乗りかごGと、行先階登録装置1と、エレベータ制御装置2と、群管理制御装置3と、を備えている。
図1(1)の例では、乗りかごGが3つ設けられており、それらが符号G1~G3で区別されている。
【0017】
ここで、行先階登録装置1は、利用者が行先階Fdを登録するための装置であり、建物の各階に設置される。行先階登録装置1は、
図2(A)に示されるようにエレベータの乗場に設置されることが多いが、階によっては、
図2(B)に示されるように乗場から離れた位置に設置される場合がある。例えば、建物の入口がある階においては、当該入口の近くに行先階登録装置1が設置される場合がある。そのような場合、利用者は、行先階登録装置1での行先階Fdの登録後、乗場までの移動距離が長くて時間を要し、自身に割り当てられた乗りかごGに乗り遅れてしまうおそれがある。
【0018】
そこで、そのような乗遅れの発生を防止する技術として、行先階登録装置1から乗りかごGまでの移動に要する移動時間Tgを考慮して乗りかごGへの割当てを行う技術が提案されている。しかし従来は、どの利用者に対しても、予め設定された一定の歩行時間(例えば、一般の利用者について平均的な歩行時間)が上記移動時間Tgとして考慮されるに過ぎなかった。
【0019】
実際には、歩行時間は、同じ距離であっても利用者ごとに異なり、また、同じ利用者であっても、そのときの健康や荷物などの状態によって変わることがある。このため、歩行速度Vが遅い利用者においては、予め設定された一定の歩行時間では足りず、乗りかごGへの乗遅れが発生しやすくなる。一方、歩行速度Vが速い利用者においては、予め設定された一定の歩行時間では長すぎて、予定よりも早く乗場に到達してしまうことになり、乗りかごGが到着するまでの待ち時間や乗りかごGが出発するまでの待ち時間が発生しやすくなる。このような乗遅れや待ち時間の発生は、輸送効率を低下させることになる。
【0020】
そこで本実施形態では、エレベータにおいて、行先階Fdを登録してから乗りかごGに到達するまでの移動距離が長くて時間を要する場合であっても高い輸送効率を実現するべく、それを可能にするための制御装置が、群管理制御装置3の一部又は全部によって構成されている。具体的には、群管理制御装置3は、利用者が所有する端末装置Hが計測した利用者の歩行速度Vを用いて、上記エレベータの制御を行う。以下、各部の構成について具体的に説明する。尚、以下に説明する構成は、乗りかごGの数、行先階登録装置1の数などが、
図1(A)の例に示されたものと異なるエレベータにも適用できる。
【0021】
<端末装置>
図1(B)は、利用者が所有する端末装置H(スマートフォンなど)の構成を示した概念図である。この図に示されるように、端末装置Hは、通信部101と、タッチパネル102と、記憶部103と、制御部104と、を備えている。ここで、通信部101は、通信デバイスで構成された部分であり、外部とのネットワーク通信を担う。タッチパネル102は、各種情報(行先階Fdを含む)の入力(選択を含む)に用いられる入力部としての機能と、各種情報の表示を担う表示部としての機能とを兼ね備えている。尚、端末装置Hは、入力部として、タッチパネル102の他に、ボタンなどの入力デバイスを備えていてもよい。記憶部103は、ROMやRAMなどの記憶デバイスで構成された部分であり、各種データ(プログラムを含む)の保存に用いられる。制御部104は、CPUなどの処理デバイスで構成された部分であり、端末装置Hの各部の動作制御を担う。
【0022】
本実施形態では、利用者の歩行速度Vを計測するためのアプリケーションソフトウェア(以下、「歩行速度計測用アプリ」と称す)と、行先階Fdを入力(選択を含む)するためのアプリケーションソフトウェア(以下、「行先階入力用アプリ」と称す)とが、端末装置Hにインストールされている。即ち、記憶部103には、これらのアプリが実行可能な状態で保存されている。尚、これらのアプリは、携帯可能な記憶媒体(例えば、フラッシュメモリなど)に読取可能な状態で保存され、当該記憶媒体から読み出されて端末装置Hにインストールされてもよいし、他のサーバなどにダウンロード可能に保存され、当該サーバからダウンロードされて端末装置Hにインストールされてもよい。
【0023】
上記の各種アプリは、例えばタッチパネル102でのタッチ操作によって立ち上げられたときに、制御部104にて実行される。
【0024】
歩行速度計測用アプリの実行時においては、制御部104は、端末装置Hに設けられているセンサ(GPSセンサ、加速度センサ、ジャイロセンサなど)を利用して、当該端末装置Hを所有する利用者の歩行速度Vを計測することにより、そのときの利用者の状態を反映した実測値Vrを連続的又は断続的に取得する。本実施形態では、制御部104は、計測した歩行速度Vの平均値を実測値Vrとして取得する。
【0025】
行先階入力用アプリの実行時においては、制御部104は、タッチパネル102での行先階Fdの入力(選択を含む)を可能にする。具体的には、制御部104は、行先階Fdを入力(選択を含む)するための入力画面(
図3(A)参照)をタッチパネル102に表示する。これにより、端末装置Hでは、それを所有する利用者による行先階Fdの入力が可能になる。そして、上記入力画面にて行先階Fdが入力された場合に、制御部104は、その行先階Fdと、そのときに並列処理で実行している歩行速度計測用アプリにて取得した歩行速度Vの実測値Vr(本実施形態では歩行速度Vの平均値)とを含んだコードCdを生成し、そのコードCdをタッチパネル102の画面に表示する(コード画面(
図3(C)参照))。ここで、当該コードCdには、行先階Fdと実測値Vrの両方を含むことができるものであれば、QRコード(登録商標)、バーコード、カラーコードなど様々なコードを適用することができる。このように同じ1つのコードCd内に行先階Fdと実測値Vrの両方を含ませることにより、1つのコードCdをコードリーダに読み取らせるといった簡単な操作で、それらの情報を纏めてコードリーダから入力することができる。尚、端末装置Hにて制御部104が実行する制御処理の詳細については後述する。
【0026】
<行先階登録装置>
行先階登録装置1には、登録部11と通知部12とが設けられている。また、各行先階登録装置1には、当該行先階登録装置1を他の装置と識別するための装置情報Pdが設定されている。
【0027】
登録部11は、行先階Fdの登録に用いられる部分(具体的には、利用者が行先階Fdを登録するときの登録操作に用いられる部分)である。本実施形態では、登録部11はコードリーダで構成された部分である。そして、利用者が、自身の端末装置Hで生成されたコードCd(タッチパネル102に表示されたコードCd。
図3(C)参照)をコードリーダに読み取らせた場合に、当該コードCdに含まれている行先階Fd(端末装置Hで入力された行先階Fd)が行先階登録装置1にて登録されたものとして扱われる。
【0028】
通知部12は、液晶パネルなどの表示装置で構成された部分であり、利用者への各種情報の通知を行う。本実施形態では、待機画面(
図3(D)参照)と報知画面(
図3(E)参照)が通知部12に表示される。ここで、待機画面は、行先階Fdの登録のために必要な操作として、端末装置Hのタッチパネル102に表示されたコードCdを登録部11(コードリーダ)に読み取らせる必要があることを利用者に通知するための画面である。報知画面は、登録部11にて行先階Fdを登録した利用者に、乗りかごGへの割当ての情報を通知するための画面である。
【0029】
本実施形態では、後述するように、登録部11にて利用者が行先階Fdを登録した場合には、エレベータの制御処理の1つとして、群管理制御装置3が、その利用者について乗りかごGへの割当てを行い、且つ、その割当ての情報を利用者に通知する。そこで、登録部11にて行先階Fdが登録された場合には、行先階登録装置1は、そのような制御処理に必要な情報を群管理制御装置3へ送信する。具体的には、行先階登録装置1は、制御処理に必要な情報として、自身の登録部11(コードリーダ)で読み取ったコードCdに含まれている行先階Fd及び実測値Vrを群管理制御装置3へ送信する。このとき、行先階登録装置1は、行先階Fd及び実測値Vrがどの装置から送信されてきたのかを群管理制御装置3に認識させるべく、行先階Fd及び実測値Vrと共に、自身の装置情報Pdを群管理制御装置3へ送信する。
【0030】
その後、行先階登録装置1は、乗りかごGへの割当ての情報を群管理制御装置3から受信した場合に、その情報を、通知部12に表示することによって利用者に通知する。具体的には、行先階登録装置1は、報知画面(
図3(E)参照)を表示することにより、割当ての情報を利用者に通知する。ここで、乗りかごGへの割当ての情報には、当該乗りかごGを識別するための番号や記号などの情報(以下、この情報を「かご情報Pg」と称す)が含まれる。尚、通知部12は、画面表示によって各種情報を利用者に通知するものに限らず、各種情報を音声で利用者に通知するものに適宜変更されてもよい。
【0031】
<エレベータ制御装置>
エレベータ制御装置2は、乗りかごGごとに設けられ、自身に対応する乗りかごGの動作を制御する装置である。
【0032】
<群管理制御装置>
群管理制御装置3は、エレベータ制御装置2を通じて乗りかごGを一元的に管理する装置である。本実施形態では、群管理制御装置3は、記憶部31と制御部32とを備えており、制御処理の1つとして、乗りかごGへの割当てから利用者への通知までの一連の処理を含んだ呼び登録処理を実行する。
【0033】
記憶部31は、ROMやRAMなどの記憶デバイスで構成された部分であり、当該記憶部31には、呼び登録処理に必要な情報が保存されている。具体的には、呼び登録処理に必要な情報として装置管理データDrが記憶部31に保存されている。
【0034】
図4は、装置管理データDrの一例を示した概念図である。この図に示されるように、装置管理データDrには、行先階登録装置1ごとに、装置情報Pdが、設置階Fsと、設置位置Psと、当該行先階登録装置1から各乗りかごG(G1~G3)までの距離Lgとが対応付けられた状態で予め保存されている。
【0035】
ここで、設置階Fsは、装置情報Pdで特定される行先階登録装置1が設置されている階である。そして、利用者は、行先階Fdの登録を行った階から乗りかごGに乗車することになるので、設置階Fsは、群管理制御装置3が乗りかごGへの割当てを行う際に、行先階Fdの登録を行った利用者の出発階(乗車階)として用いられる。
【0036】
設置位置Psは、対応する設置階Fsにおいて行先階登録装置1が設置されている位置である。本実施形態においては、建物の入口が設けられている階では、当該入口の近くにだけ行先階登録装置1が設置され(
図2(B)参照)、その他の階では、乗場にだけ行先階登録装置1が設置されている(
図2(A)参照)。そして、それらの位置情報が、装置管理データDr内の設置位置Psに反映されており、
図4の例では、設置位置Psとして「入口」又は「乗場」が装置情報Pdに対応付けられている。尚、本実施形態では、設置位置Psは、後述する制御処理において特に用いられることがないため、装置管理データDrにて装置情報Pdに対応付けられていなくてもよい。制御処理において設置位置Psが用いられる例については、後述の第1変形例にて説明する。
【0037】
距離Lgは、群管理制御装置3が乗りかごGへの割当てにて利用者の歩行速度Vの実測値Vrを考慮する際に用いられる。具体的には、距離Lgは、実測値Vrと共に、行先階登録装置1から各乗りかごG(G1~G3)までの移動に要する移動時間Tgを算出するときに用いられる。
【0038】
制御部32は、CPUなどの処理デバイスで構成された部分であり、呼び登録処理を実行する。以下、具体的に説明する。尚、より詳細な内容(制御の流れなど)については後述する。
【0039】
呼び登録処理では、制御部32は、行先階登録装置1にて利用者が行先階Fdを登録した場合に、その利用者についての乗りかごGへの割当てを、当該利用者が所有する端末装置Hにて得られた歩行速度Vの実測値Vr(本実施形態では歩行速度Vの平均値)を考慮して行う(割当処理)。
【0040】
その後、制御部32は、実行した割当ての情報(本実施形態では、かご情報Pg)を、行先階Fdの登録で用いられた行先階登録装置1の通知部12を通じて利用者に通知する(通知処理)。
【0041】
このような呼び登録処理は、群管理制御装置3の制御部32内に構築される処理部によって実行される。
図1では、そのような処理部として、割当処理部321及び通知処理部322が示されている。本実施形態では、当該処理部は、制御部32にプログラムを実行させることによってソフトウェアで構成される。そして、そのようなプログラムは、携帯可能な記憶媒体(例えば、フラッシュメモリ等)に読取可能な状態で保存され、当該記憶媒体から読み出されてインストールされたものが群管理制御装置3の記憶部31に保存されてもよいし、他のサーバなどにダウンロード可能に保存され、当該サーバからダウンロードされてインストールされたものが記憶部31に保存されてもよい。尚、上記の処理部は、群管理制御装置3内に回路を構築することによってハードウェアで構成されてもよい。
【0042】
[1-2]制御処理
上述したエレベータにおいて、行先階Fdを登録してから乗りかごGに到達するまでの移動距離が長くて時間を要する場合であっても高い輸送効率を実現するための処理が、以下のとおり実行される。
【0043】
[1-2-1]端末装置が実行する制御処理(行先階入力用アプリで実行される処理)
図5は、端末装置Hが実行する制御処理(行先階入力用アプリで実行される処理)を示したフローチャートである。本実施形態では、行先階入力用アプリは、行先階登録装置1にて利用者が行先階Fdを登録したいタイミング(例えば、行先階登録装置1に到着したタイミング、或いは、到着する前のタイミング)で、当該利用者によるタッチパネル102の操作によって立ち上げられる。
【0044】
一方、歩行速度計測用アプリは、端末装置Hにて常時実行されているか、或いは、行先階入力用アプリの起動時点を基準として少なくとも所定期間(具体的には、歩行速度Vの実測値Vrとして利用者の状態を反映したものを取得するのに必要な期間)を遡った時点から端末装置Hにて実行されているものとする。尚、行先階入力用アプリの起動時において未だ歩行速度計測用アプリが実行されていなかった場合には、行先階入力用アプリの起動のタイミングで歩行速度計測用アプリが立ち上げられてもよい。
【0045】
行先階入力用アプリの起動後、端末装置Hは、行先階Fdを入力(選択を含む)するための入力画面(
図3(A)参照)をタッチパネル102に表示する(ステップS101)。これにより、利用者は、端末装置Hにて行先階Fdを入力することが可能になる。
【0046】
その後、端末装置Hは、行先階Fdが入力されたか否かを判断する(ステップS102A)。本実施形態では、上記入力画面にて利用者が行先階Fdを入力した場合に、その入力画面には、当該行先階Fdなどの情報を含んだコードCdを表示させるためのコード表示ボタンが表示される(
図3(B)参照)。そして、端末装置Hは、そのコード表示ボタンが押されたか否かを判断することにより、行先階Fdが入力されたか否かを判断する。
【0047】
ステップS102Aは、当該ステップS102Aにて「入力された(Yes)」と判断されるか、或いは、所定時間が経過することでステップS102Bにて「タイムアウトになった(Yes)」と判断されるまで繰り返し実行される。尚、タイムアウトになった場合には、端末装置Hは、行先階入力用アプリを終了させる。
【0048】
そして、端末装置Hは、ステップS102Aにおいて、コード表示ボタンが「押された」と判断でき、その判断を以て、行先階Fdが「入力された(Yes)」と判断できた場合には、その行先階Fdと、そのときに並列処理で実行している歩行速度計測用アプリにて取得した歩行速度Vの実測値Vrとを含んだコードCdを生成する(ステップS103)。
【0049】
ここで、実測値Vrは、端末装置Hにて利用者が行先階Fdを入力したときの当該利用者の状態が値に反映されたものであり、そのような実測値Vrとして、センサで計測された歩行速度Vの平均値が用いられている。特に限定されるものではないが、歩行速度Vの平均値には、端末装置Hにて利用者が行先階Fdを入力したときの当該利用者の状態を反映できるものであれば、歩行速度計測用アプリの実行中における全期間を対象とした平均値や、直近の所定期間(例えば直近の5分間)を対象とした平均値、その日のそれまでの全期間を対象とした平均値、1日のうちの所定の時間帯についての1週間分を対象とした平均値、或いはこれらの期間のうちの停止時を除いた部分を対象とした平均値など、様々な期間を対象とした平均が適宜用いられてもよい。また、実測値Vrには、上記のように利用者の状態を反映できるものであれば、歩行速度Vの平均値に限定されない歩行速度Vの計測値が適宜用いられてもよい。
【0050】
次に、端末装置Hは、ステップS103で生成したコードCdをタッチパネル102の画面に表示する(ステップS104。コード画面(
図3(C)参照))。その後、端末装置Hは、例えば所定時間が経過したときに、行先階入力用アプリを終了させる。
【0051】
[1-2-2]群管理制御装置が実行する制御処理(呼び登録処理)
図6は、群管理制御装置3が実行する呼び登録処理を示したフローチャートである。呼び登録処理は、群管理制御装置3が行先階登録装置1から行先階Fdなどの情報を受信した場合に開始される。以下では、このときに群管理制御装置3が受信した情報(行先階Fd、実測値Vr、装置情報Pdを含む)を纏めて「受信情報Pr」と称す。
【0052】
呼び登録処理が開始されると、群管理制御装置3は、装置管理データDrから、受信情報Pr内の装置情報Pdに対応付けられている各種情報を読み出す(ステップS201)。具体的には、群管理制御装置3は、装置情報Pdで特定される行先階登録装置1(即ち、受信情報Pr内の行先階Fdの登録に用いられた行先階登録装置1)の設置階Fsと、当該行先階登録装置1から各乗りかごG(G1~G3)までの距離Lgとを、装置管理データDrから読み出す。
【0053】
そして、群管理制御装置3は、ステップS201で読み出した設置階Fsを利用者の出発階(乗車階)として用い、当該出発階と受信情報Pr内の行先階Fdとを1つの乗場呼びとして、乗りかごGへの割当てを行う(割当処理。ステップS202)。
【0054】
このとき、群管理制御装置3は、受信情報Pr内の実測値Vrを考慮して乗りかごGへの割当てを行う。具体的には、群管理制御装置3は、ステップS201で読み出した各乗りかごG(G1~G3)までの距離Lgと、受信情報Pr内の実測値Vrとを用いて、行先階登録装置1から各乗りかごG(G1~G3)までの移動に要する移動時間Tgを算出する。そして、群管理制御装置3は、乗りかごGごとに異なる移動時間Tg(但し、乗りかごGまでの距離Lgが同じ場合には、移動時間Tgは同じになる)を考慮した上で、利用者にとって最適な乗りかごGを抽出して当該乗りかごGへの割当てを行う。
【0055】
その後、群管理制御装置3は、ステップS202で実行した割当ての情報(本実施形態では、かご情報Pg)を利用者に通知する(通知処理。ステップS203)。具体的には、群管理制御装置3は、受信情報Pr内の装置情報Pdで特定される行先階登録装置1の通知部12への報知画面(
図3(E)参照)の表示により、割当ての情報を利用者に通知する。
【0056】
このような制御処理によれば、利用者の状態を反映した歩行速度Vの実測値Vrを端末装置Hにて取得することにより、行先階Fdの登録後に乗りかごGまで移動するときの利用者の歩行速度Vとして、そのときの利用者の状態に対応した適切な値が精度良く得られることになる。そして、その値(歩行速度Vの実測値Vr)を考慮して割当てを行うことにより、各利用者を最適な乗りかごGに乗車させることができる。その結果として、歩行速度Vが遅い利用者に対しては乗りかごGへの乗遅れを防止でき、歩行速度Vが速い利用者に対しては待ち時間の短縮が可能になる。よって、行先階Fdを登録してから乗りかごGに到達するまでの移動距離が長くて時間を要する場合であっても、高い輸送効率が実現される。
【0057】
[2]変形例
[2-1]第1変形例
図7は、第1変形例での行先階登録装置1の設置位置を例示した概念図である。この図に示されるように、上述したエレベータには、行先階登録装置1として、エレベータの乗場から離れた位置に設置された第1行先階登録装置1Aと、当該乗場に設置された第2行先階登録装置1Bと、が設けられていてもよい。また、行先階登録装置1が備える登録部11及び通知部12として、第1行先階登録装置1Aには、第1登録部11A及び第1通知部12Aが設けられ、第2行先階登録装置1Bには、第2登録部11B及び第2通知部12Bが設けられていてもよい。
【0058】
本変形例においては、建物の入口が設けられている階では、当該入口の近くに第1行先階登録装置1Aが設置され、その階の乗場に第2行先階登録装置1Bが設置されている(
図7参照)。また、その他の階では、乗場にだけ第2行先階登録装置1Bが設置されている(
図2(A)参照)。そして、それらの位置情報が、装置管理データDr内の設置位置Psに反映されている(
図8参照)。
【0059】
このようなエレベータにおいて、群管理制御装置3は、第1行先階登録装置1Aの第1登録部11Aにて利用者が行先階Fdを登録した場合であって、その利用者が所有する端末装置Hにて得られた実測値Vrが第1所定速度Vt1よりも小さい場合には、第2行先階登録装置1Bの第2登録部11Bにて改めて行先階Fdを登録する必要があることを利用者に通知してもよい。以下、具体的に説明する。
【0060】
図9は、第1変形例において群管理制御装置3が実行する呼び登録処理を示したフローチャートである。呼び登録処理が開始されると、群管理制御装置3は、まず、行先階Fdの登録に用いられた行先階登録装置1が第1行先階登録装置1A(乗場から離れた位置に設置されたもの)と第2行先階登録装置1B(乗場に設置されたもの)のどちらであるのかを特定するべく、以下の処理を実行する。
【0061】
群管理制御装置3は、装置管理データDrから、受信情報Pr内の装置情報Pdに対応付けられている設置位置Psを読み出す(ステップS211)。次に、群管理制御装置3は、設置位置Psの値が「入口」と「乗場」のどちらであるのかを判断する(ステップS212)。そして、群管理制御装置3は、ステップS212にて「入口」であると判断した場合には、その判断を以て、行先階Fdの登録に用いられた行先階登録装置1は第1行先階登録装置1Aであると判断できる。一方、群管理制御装置3は、ステップS212にて「乗場」であると判断した場合には、その判断を以て、行先階Fdの登録に用いられた行先階登録装置1は第2行先階登録装置1Bであると判断できる。
【0062】
ここで、歩行速度Vが著しく遅い利用者については、その歩行速度V(具体的には、その歩行速度Vに基づいて算出される移動時間Tg)を割当て時に考慮したとしても、乗場までの距離Lgが長くなると当該割当ての精度が低くなり、乗りかごGに乗り遅れるおそれがある。
【0063】
そして、群管理制御装置3は、ステップS212にて「入口」であると判断した場合には、その判断を以て、乗場までの距離Lgが長くて割当ての精度が低くなるおそれがあると判断できる。そこで、群管理制御装置3は、そのように判断できた場合において実際に割当ての精度が低くなってしまうことを回避するために、次のような判断を行う。群管理制御装置3は、第1行先階登録装置1Aにて行先階Fdを登録した利用者の歩行速度Vが、乗場に到着するまでの移動時間Tgを算出して割当て時に考慮したとしても当該割当ての精度を担保できないほどに遅いか否かを判断するべく、受信情報Pr内の実測値Vrが第1所定速度Vt1よりも小さいか否かを判断する(ステップS221)。
【0064】
そして、群管理制御装置3は、ステップS221にて「小さい(Yes)」と判断した場合には、その判断を以て、割当ての精度を担保できないと判断できる。この場合、群管理制御装置3は、第2行先階登録装置1Bの第2登録部11Bにて改めて行先階Fdを登録する必要があることを利用者に通知する(ステップS222)。具体的には、群管理制御装置3は、
図10に例示した報知画面を、受信情報Pr内の装置情報Pdで特定される第1行先階登録装置1Aの第1通知部12Aに表示することにより、乗場で改めて行先階Fdを登録する必要があること(すなわち、第2行先階登録装置1Bにて改めて行先階Fdを登録する必要があること)を利用者に通知する。
【0065】
このような処理によれば、歩行速度Vが著しく遅い利用者には、第2行先階登録装置1Bにて改めて行先階Fdを登録する必要があることを通知することにより、乗りかごGの近くで行先階Fdを登録させることができ、その結果として、歩行速度Vが著しく遅い利用者に対しても割当ての精度を担保することが可能になる。
【0066】
一方、群管理制御装置3は、ステップS212にて「乗場」であると判断した場合や、ステップS221にて「小さくない(No)」と判断した場合には、
図6のステップS201~S203(割当処理、通知処理を含む)と同じ処理を実行する。この制御処理によれば、上述した実施形態と同様、各利用者を最適な乗りかごGに乗車させることができる。
【0067】
[2-2]第2変形例
第1変形例で説明したエレベータ(
図7参照)において、利用者によっては、急いで走ってきて第1行先階登録装置1Aにて行先階Fdを登録する場合がある。その場合、当該利用者が所有する端末装置Hで得られる実測値Vrは、走ってきたときの歩行速度Vが考慮されるため比較的大きな値になることが予想される。そして、そのような実測値Vrが乗りかごGへの割当てにて考慮されたとすると、利用者にとっては、第1行先階登録装置1Aに到達するまでと同様、乗りかごGまで移動するときにも長い距離を走らなければならないといった事態が生じ得る。しかし、利用者によっては、第1行先階登録装置1Aからは急がずに歩こうと考えることもあり得る。また仮に、利用者が、第1行先階登録装置1Aからは急がずに歩くであろうことがわかったとしても、当該利用者が歩くときの歩行速度Vがどの程度であるかを判定することは難しく、従って、その利用者について適切な乗りかごGを割り当てることは難しい。
【0068】
そこで、群管理制御装置3は、第1行先階登録装置1Aの第1登録部11Aにて利用者が行先階Fdを登録した場合であって、その利用者が所有する端末装置Hにて得られた実測値Vrが第2所定速度Vt2(>第1所定速度Vt1)よりも大きい場合には、第2行先階登録装置1Bの第2登録部11Bにて改めて行先階Fdを登録する必要があることを利用者に通知してもよい。
【0069】
具体的には、第1変形例で説明した呼び登録処理(
図9参照)のステップS221において、群管理制御装置3は、第1行先階登録装置1Aにて行先階Fdを登録した利用者の歩行速度Vが、乗場に到着するまでの移動時間Tgを算出して割当て時に考慮してしまうと当該割当ての精度を担保できなくなってしまうほどに速いか否かを判断するべく、受信情報Pr内の実測値Vrが第2所定速度Vt2よりも大きいか否かを判断してもよい(
図11参照)。一例として、第2所定速度Vt2には、一般的な早歩きのときの歩行速度Vを用いることができる。
【0070】
そして、群管理制御装置3は、ステップS221にて「大きい(Yes)」と判断した場合に、第2行先階登録装置1Bの第2登録部11Bにて改めて行先階Fdを登録する必要があることを利用者に通知してもよい(ステップS222)。
【0071】
このような処理によれば、歩行速度Vが著しく速い利用者には、第2行先階登録装置1Bにて改めて行先階Fdを登録する必要があることを通知することにより、乗りかごGの近くで行先階Fdを登録させることができ、その結果として、歩行速度Vが著しく速い利用者に対しても割当ての精度を担保することが可能になる。
【0072】
尚、本変形例のステップS221では、第1変形例で説明した判断(実測値Vrが第1所定速度Vt1よりも小さいか否かの判断)と、本変形例で説明した判断(実測値Vrが第2所定速度Vt2よりも大きいか否かの判断)の両方が行われてもよい。そして、それらの判断の何れか一方で「Yes」となった場合にステップS222が実行されてもよい。
【0073】
[2-3]第3変形例
上述したエレベータにおいて、群管理制御装置3は、行先階登録装置1の登録部11にて利用者が行先階Fdを登録した場合であって、当該行先階登録装置1の設置階Fsに乗りかごGが停止中である場合には、その利用者についての割当てを当該停止中の乗りかごGに対して行ってもよい。一方、このように停止中の乗りかごGに対して割当てが行われた場合には、行先階登録装置1にて行先階Fdを登録した利用者は、そのときの当該利用者の歩行速度Vによっては、割り当てられた乗りかごG(停止中の乗りかごG)の出発時刻tvまでに移動できずに乗り遅れてしまうおそれがある。そこで、そのような乗遅れが発生するおそれがある場合には、群管理制御装置3は、乗遅れを解消できるように、戸開を延長することにより出発時刻tvを遅らせてもよい。以下、具体的に説明する。
【0074】
図12は、第3変形例において群管理制御装置3が実行する呼び登録処理を示したフローチャートである。本変形例では、群管理制御装置3は、
図6のステップS201と同じ処理を実行した後、各乗りかごG(G1~G3)の位置情報に基づいて、ステップS201で読み出した設置階Fsに乗りかごGが停止中であるか否かを判断する(ステップS231)。
【0075】
そして、群管理制御装置3は、ステップS231にて「停止中である(Yes)」と判断した場合には、受信情報Pr内の行先階Fdを登録した利用者についての割当てを、上記設置階Fsに停止中の乗りかごGに対して行う(割当処理。ステップS232)。
【0076】
その後、群管理制御装置3は、ステップS232で実行した割当ての情報(本変形例では、かご情報Pg)を利用者に通知する(通知処理。ステップS233)。具体的には、群管理制御装置3は、受信情報Pr内の装置情報Pdで特定される行先階登録装置1の通知部12への報知画面(
図3(E)参照)の表示により、割当ての情報を利用者に通知する。
【0077】
次に、群管理制御装置3は、受信情報Pr内の実測値Vrと、ステップS201で読み出した距離Lgのうちの停止中の乗りかごGまでの距離Lgとを用いて、当該乗りかごGに利用者が到着する到着時刻twを算出する(ステップS234)。即ち、群管理制御装置3は、受信情報Pr内の行先階Fdを登録した利用者が所有する端末装置Hにて得られた実測値Vrから、当該利用者の到着時刻twを算出する。
【0078】
その後、群管理制御装置3は、受信情報Pr内の行先階Fdを登録した利用者が、ステップS232で割り当てた乗りかごG(停止中の乗りかごG)に乗り遅れるおそれがあるか否かを判断するべく、当該乗りかごGの出発時刻tvが、ステップS234で算出した利用者の到着時刻tw前であるか否かを判断する(ステップS235)。
【0079】
そして、群管理制御装置3は、ステップS235にて「到着時刻tw前である(Yes)」と判断した場合には、その判断を以て、乗遅れが発生するおそれがあると判断できる。この場合、群管理制御装置3は、ステップS232で割り当てた乗りかごG(停止中の乗りかごG)の戸開を延長することにより、当該乗りかごGの出発時刻tvを遅らせる(ステップS236)。一例として、群管理制御装置3は、ステップS234で算出した到着時刻twから当初の出発時刻tvを差し引いた時間(tw-tv)又はそれにマージンを考慮した時間を、戸開の延長時間とすることができる。群管理制御装置3は、ステップS236での戸開延長の実行後、呼び登録処理を終了させる。
【0080】
一方、群管理制御装置3は、ステップS235にて「到着時刻tw前でない(No)」と判断した場合には、その判断を以て、乗遅れが発生するおそれはないと判断できる。この場合、群管理制御装置3は、ステップS236での戸開延長を実行せずに呼び登録処理を終了させる。
【0081】
このような制御処理によれば、停止中の乗りかごGへの乗遅れが発生するおそれがある場合でも、それを予測して当該乗りかごGの戸開が延長されるため、乗りかごGへの乗遅れが回避されやすくなる。
【0082】
一方、群管理制御装置3は、ステップS231にて「停止中でない(No)」と判断した場合には、
図6のステップS202(割当処理)及びS203(通知処理)と同じ処理を実行する。この制御処理によれば、上述した実施形態と同様、各利用者を最適な乗りかごGに乗車させることが可能になる。
【0083】
[2-4]他の変形例
上述したエレベータにおいて、登録部11及び通知部12は、行先階登録装置1に限らず、エレベータの乗場への進入を規制する規制装置(セキュリティゲートなど)に設けられてもよい。
【0084】
上述したエレベータにおいて、登録部11は、行先階Fdを直接入力して登録するものに適宜変更されてもよく、この場合、端末装置Hにて歩行速度計測用アプリの実行により得られた歩行速度Vの実測値Vrは、群管理制御装置3が割当てを実行する際に、群管理制御装置3からの要求に応じて群管理制御装置3に送信されてもよい。例えば、近距離無線通信(NFC、Bluetooth(登録商標)など)や無線LAN(Wi-Fiなど)などの無線通信手段を用いて実測値Vrを群管理制御装置3に送信することができる。
【0085】
また、登録部11にて利用者が行先階Fdを直接入力した場合において、その利用者が端末装置Hを所有していない場合や、端末装置Hを所有していたとしても歩行速度計測用アプリがインストールされていない場合には、群管理制御装置3は、予め記憶部31に保存されている歩行速度Vの設定値を、その利用者についての歩行速度Vの実測値Vrとして用いてもよい。
【0086】
上述の実施形態及び変形例の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態や変形例ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0087】
また、上述の実施形態や変形例からは、発明の対象として、群管理制御装置3に限らず、それを含んだ制御システム、群管理制御装置3以外の装置、群管理制御装置3や制御システムで実行される制御処理やプログラム、更には端末装置Hで実行される制御処理やプログラムなどが個々に抽出されてもよいし、それらの一部が部分的に抽出されてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 行先階登録装置
1A 第1行先階登録装置
1B 第2行先階登録装置
2 エレベータ制御装置
3 群管理制御装置
G 乗りかご
H 端末装置
V 歩行速度
11 登録部
11A 第1登録部
11B 第2登録部
12 通知部
12A 第1通知部
12B 第2通知部
31 記憶部
32 制御部
Cd コード
Dr 装置管理データ
Fd 行先階
Fs 設置階
Lg 距離
Pd 装置情報
Pg かご情報
Pr 受信情報
Ps 設置位置
Tg 移動時間
Vr 実測値
tv 出発時刻
tw 到着時刻
101 通信部
102 タッチパネル
103 記憶部
104 制御部
321 割当処理部
322 通知処理部
Vt1 第1所定速度
Vt2 第2所定速度
【要約】
【課題】エレベータにおいて、行先階を登録してから乗りかごに到達するまでの移動距離が長くて時間を要する場合であっても高い輸送効率の実現を可能にする技術を提供する。
【解決手段】制御装置は、行先階の登録に用いられる登録部を備えたエレベータに適用可能な制御装置である。また、利用者が所有する端末装置において、その利用者の歩行速度を計測することにより、そのときの当該利用者の状態を反映した実測値を取得することが可能である。そして、上記制御装置は、登録部にて利用者が行先階を登録した場合に、その利用者についての乗りかごへの割当てを、当該利用者が所有する端末装置にて得られた実測値を考慮して行う。
【選択図】
図1