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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 3/06 20060101AFI20231121BHJP
   G01L 7/00 20060101ALI20231121BHJP
   G01L 19/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G01K3/06
G01L7/00 A
G01L19/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022116609
(22)【出願日】2022-07-21
(62)【分割の表示】P 2017025875の分割
【原出願日】2017-02-15
(65)【公開番号】P2022132597
(43)【公開日】2022-09-08
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 博
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-198277(JP,A)
【文献】特開2009-109313(JP,A)
【文献】特開平11-2577(JP,A)
【文献】特開平7-198503(JP,A)
【文献】特開平11-72402(JP,A)
【文献】特開2005-181032(JP,A)
【文献】米国特許第3355949(US,A)
【文献】米国特許第6176138(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第102305686(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/26
G01K 3/06
G01K 13/02
G01L 7/00- 7/24
G01L 19/00-19/16
G01D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象にかかる圧力を検出する圧力センサを備えたセンサ装置であって、
前記圧力センサは、前記センサ装置の筐体内部に、圧力検出素子が前記検出対象に対して露出するように設けられ、
前記筐体内部に設けられ、前記筐体または前記圧力センサを介し前記検出対象から伝導する温度を検出する第1温度センサと、
前記第1温度センサよりも前記検出対象から離れた位置に設けられた第2温度センサと、
前記第1温度センサが検出した温度と前記第2温度センサが検出した温度とから前記検出対象の温度を算出する温度算出部と、を備え
前記筐体は、側面に配線取付部を有した円柱または角柱の形状であり、底面を含む一部分が前記検出対象と接触しており、
前記第1温度センサは、前記筐体内部において前記圧力センサと接触して配置され、
前記第2温度センサは、前記筐体の、前記検出対象と接触していない部分、かつ前記配線取付部の反対側の側面の内側に設けられ、
前記圧力センサは、前記圧力検出素子が前記筐体の底面から前記検出対象に対して露出するように配置される、ことを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記第1温度センサは、前記圧力検出素子の検出面と反対面に配置されることを特徴とする、請求項に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象にかかる圧力と、検出対象の温度とを検出するセンサ装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、検出対象(例えば水、油等の流体、空気等)にかかる圧力と、温度とを1つのセンサ装置で検出したい、というニーズが存在した。これに応え、近年、圧力および温度を1装置で検出可能なセンサ装置が種々開発されている(特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-033531号公報(2011年02月17日公開)
【文献】特開2009-281915号公報(2009年12月03日公開)
【文献】特開2011-202960号公報(2011年10月13日公開)
【文献】特開2014-122811号公報(2014年07月03日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1~4に記載の従来技術では、温度センサを筐体の突出部にプローブとして設けている。これは、温度センサの温度検出の際に、気温等の、検出対象の温度以外の温度に影響されないようにするためである。
【0005】
しかしながら、温度センサを検出対象に対して突出する構成とすると、当該突出部分にごみやほこりが溜まるため、保守性が低下するというデメリットがある。また、突出部分の前後で流体の圧力損失が発生するというデメリットがある。例えば、検出対象が流体である場合、上記圧力損失によって配管の詰まり等が起こり得る。
【0006】
一方、これらのデメリットを解消するために温度センサを突出部分以外に配置した場合、温度センサは温度検出の際に気温等の影響を受けるため、検出対象の温度を正確に検出することができない。
【0007】
本開示は上記の問題点に鑑みてなされたものである。本開示は、検出対象の温度を精度良く算出するとともに、筐体の形状を単純化することが可能なセンサ装置等を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本開示に係るセンサ装置は、検出対象にかかる圧力を検出する圧力センサを備えたセンサ装置であって、前記圧力センサは、前記センサ装置の筐体内部に、圧力検出素子が前記検出対象に対して露出するように設けられ、前記筐体内部に設けられ、前記筐体または前記圧力センサを介し前記検出対象から伝導する温度を検出する第1温度センサと、前記第1温度センサよりも前記検出対象から離れた位置に設けられた第2温度センサと、前記第1温度センサが検出した温度と前記第2温度センサが検出した温度とから前記検出対象の温度を算出する温度算出部と、を備えている。
【0009】
温度センサは、温度検出の際に気温の影響を受ける。そのため、従来技術では、気温の影響を受けにくい位置に温度センサを配置して、温度検出の精度を担保していた。例えば、従来技術では、温度センサを検出対象に対して突出したプローブとして設けていた。
【0010】
一方、前記の構成によれば、第1温度センサと第2温度センサとの2つの温度センサが検出した2つの温度を用いて検出対象の温度を算出する。そのため、検出対象の温度を正確に算出することができる。また、上記2つの温度を用いて検出対象の温度の算出精度を高めるため、センサ装置において第1温度センサを上述のプローブ等に配置する必要が無い。したがって、前記の構成によれば、検出対象の温度を精度良く算出するとともに、センサ装置の筐体の形状を単純化することができる。
【0011】
前記センサ装置において、前記第1温度センサは、前記筐体内部において前記圧力センサと接触して配置されてもよい。これにより、圧力センサの近傍に第1温度センサを配置するため、筐体の形状をより小型かつ単純化することができる。
【0012】
前記センサ装置において、前記第1温度センサは、前記圧力検出素子の検出面と反対面に配置されてもよい。これにより、第1温度センサは、検出対象に直接接している圧力検出素子から伝導する温度を検出することができる。そのため、第1温度センサは、実際の検出対象の温度により近い温度を検出することができる。したがって、センサ装置は、より精度良く検出対象の温度を算出することができる。
【0013】
前記センサ装置において、前記第2温度センサは、前記筐体の、前記検出対象と接触していない部分の内側に設けられてもよい。これにより、第2温度センサは温度検出の際に検出対象からの温度の伝搬を受けにくい位置に設けられる。したがって、第2温度センサは気温を精度良く算出することができる。そして、センサ装置は、より精度良く検出された気温と、第1温度センサの検出した温度とから検出対象の温度を算出することができる。したがって、センサ装置は、より精度良く検出対象の温度を算出することができる。
【0014】
前記センサ装置において、前記筐体は円柱または角柱の形状であり底面を含む一部分が前記検出対象と接触していてもよい。また、前記圧力センサは、前記圧力検出素子が前記筐体の底面から前記検出対象に対して露出するように配置されてもよい。
【0015】
このように、センサ装置の筐体および圧力センサを、検出対象の移動を極力妨げないような形状とすることで、検出対象の圧力損失を抑制することができる。したがって、センサ装置は、当該センサ装置を設置したことによる、検出対象およびその周辺設備に対する悪影響を抑制することができる。例えば、検出対象が流体である場合、検出対象の流れを妨げないようにすることができるため、配管の詰まりを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、検出対象の温度を精度良く算出するとともに、筐体の形状を単純化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態1に係るセンサ装置の要部構成を示すブロック図である。
図2】前記センサ装置の外観の一例を示す図である。
図3図3の(a)は、前記センサ装置の接続部と、前記センサ装置に含まれる圧力センサおよび第1温度センサとの組み立て方法の一例を示した図である。図3の(b)は、前記接続部と、前記圧力センサおよび前記第1温度センサとを組み立てた状態の断面図である。
図4】前記圧力センサ、前記第1温度センサ、および前記第2温度センサの位置関係を模式的に示した図である。
図5】検出対象と外気温との温度差に応じた、前記第1温度センサの検出温度の変化を示すグラフである。
図6】検出対象の温度の算出に係る処理の流れを示すフローチャートである。
図7】実施形態2に係るセンサ装置の第1温度センサの配置位置と、検出対象の温度の値および第1温度センサ検出した温度の値とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示に係るセンサ装置は、検出対象にかかる圧力と、検出対象の温度とを検出するセンサ装置である。検出対象とは、センサ装置が圧力および温度を検出する対象とする物体を示す。なお、検出対象は固体、液体、気体のいずれであっても構わない。
【0019】
本開示に係るセンサ装置は、圧力センサとともに複数の温度センサを備えていること、および、当該複数の温度センサの検出した温度から検出対象の温度を算出することを特徴としている。また、本開示に係るセンサ装置は、各温度センサの配置を工夫する点にも特徴がある。以下、各実施形態を例にとり、本開示に係るセンサ装置の各部材の構成および機能について説明する。
【0020】
〔実施形態1〕
≪センサ装置1の外観≫
以下、本開示の実施形態1について説明する。始めに、本実施形態に係るセンサ装置1の外観の形状について説明する。なお、本実施形態では一例として、検出対象がパイプを流れる水または油等の流体である場合について説明する。
【0021】
図2は、センサ装置1の外観の一例を示す図である。センサ装置1の筐体2は、例えば円柱、または角柱の形状を有している。より詳しくは、筐体2は円柱(または角柱)の長手方向の一方を、当該長手方向に対し角度をつけて切断したような形状を有していることが望ましい。以降、図示のように筐体2の長手方向をz軸方向とし、z軸方向に対し垂直な平面をxy平面とする。また、筐体2のz軸方向における上の面を「上面」と称し、筐体2のz軸方向における下の面を「底面」と称し、その他の面を「側面」と称する。
【0022】
筐体2の底面を含む一部分には接続部3が設けられている。接続部3は筐体2を検出対象が充填された漕や管、または検出対象自体に対して取付けるための治具を含む。接続部3は、筐体2の底面を含む一部分が検出対象と接触するように筐体2を固定する。
【0023】
筐体2の上面には、図示のように、センサ装置1の検出結果等を表示するためのディスプレイ4と、センサ装置1に対する指示入力を行うためのボタン5とが設けられていてもよい。また、筐体2の側面には、後述する通信部40の通信に用いるケーブル等を取り付け可能な配線取付部6が設けられていてもよい。また、筐体2は図示しない表示灯やスイッチ等を備えていてもよい。
【0024】
≪要部構成≫
図1は、センサ装置1の要部構成を示すブロック図である。センサ装置1は少なくとも、圧力センサ60と、第1温度センサ70と、第2温度センサ80と、AD変換部90と、制御部10と、記憶部50とを備えている。さらに、センサ装置1は、入力部20と、表示部30と、通信部40とを備えていてもよい。
【0025】
圧力センサ60は検出対象にかかる圧力を検出する。圧力センサ60は検出した圧力を電気信号としてAD変換部90に送信する。圧力センサ60の圧力検出の方法は、検出対象の性質に応じて適宜選択されてよい。例えば、検出対象が水、油等の流体である場合、圧力センサ60はピエゾ式の圧力センサであってもよい。
【0026】
なお、圧力センサ60の構造および検出方式は、検出対象にかかり得る圧力の範囲(最大値および最小値)を考慮して決定されることが望ましい。例えば、鍛造の際のプレス機による圧力、圧延プレスの油圧、加工機のクランプ圧、バイト送り圧、洗浄機のポンプ圧等を検出する場合、圧力センサ60は最大40Mpa程度の圧力を検出可能であることが望ましい。
【0027】
第1温度センサ70および第2温度センサ80は温度を検出する。第1温度センサ70は、筐体2または圧力センサ60から伝導する検出対象の温度を検出するための温度センサである。一方、第2温度センサ80は、第1温度センサ70の温度検出における、気温の影響を測るために設けられるセンサである。
【0028】
第1温度センサ70および第2温度センサ80は、筐体2において異なる位置に設けられる。第1温度センサ70と第2温度センサ80との位置関係については後で詳述する。第1温度センサ70および第2温度センサ80の温度検出の方法は、従来ある方法を用いればよい。第1温度センサ70および第2温度センサ80は、検出した温度を電気信号としてAD変換部90に送信する。
【0029】
AD変換部90は、圧力センサ60から受信した電気信号が示す圧力を数値化する。例えば、圧力センサ60が上述のピエゾ方式の圧力センサである場合、AD変換部90は電気信号が示す電気抵抗の変化から、圧力を数値化する。また、AD変換部90は、第1温度センサ70および第2温度センサ80から受信した電気信号が示す温度をそれぞれ数値化する。なお、センサ装置1は、圧力を数値化するAD変換部90と、温度を数値化するAD変換部90とを別個に備えていてもよい。また、センサ装置1はAD変換部90を備えず、圧力センサ60で圧力の数値化、第1温度センサ70および第2温度センサ80で温度の数値化をそれぞれ行ってもよい。
【0030】
制御部10は、センサ装置1を統括的に制御する。制御部10は、AD変換部90から圧力および温度の値を受信する。制御部10は、温度算出部11を含む。温度算出部11は、第1温度センサ70が検出した温度の値と第2温度センサ80が検出した温度の値とに応じて検出対象の温度を算出する。検出対象の具体的な算出方法については、後で詳述する。なお、制御部10はAD変換部90から受信した圧力の数値を、記憶部50に記憶された数値等、予め定められた補正値により補正して、より正確な圧力値を算出してもよい。
【0031】
記憶部50は、センサ装置1が使用するデータを格納する。例えば、記憶部50は、第1温度センサ70の検出した温度の値と、第2温度センサ80の検出した温度の値との組み合わせに検出対象の温度を対応付けた温度算出データ51を格納する。温度算出データ51は、第1温度センサ70の検出した温度の値、および第2温度センサ80の検出した温度の値を所定の範囲で区切り、各数値範囲に対応する検出対象の温度を紐付けたものであってもよい。
【0032】
入力部20は、センサ装置1に対するユーザの入力操作を受け付ける。入力部20は、例えば図2に示したボタン5等の物理ボタンやタッチパネル等で実現される。表示部30は、温度や圧力を表示する。表示部30は、例えば図2に示したディスプレイ4等の表示装置である。
【0033】
通信部40は、温度算出部11が算出した温度と、圧力とを制御部10から受信し、PLC(programmable logic controller)またはPC(personal computer)等の外部装置に送信する。また、通信部40は外部装置からセンサ装置1の制御命令を受信し、制御部10に伝えてもよい。通信部40の通信形式は問わない。例えば図2に示した配線取付部6に取り付けられたケーブルを用いた有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。
【0034】
≪温度センサの配置≫
図3の(a)および(b)は、センサ装置1における圧力センサ60の配置の一例を示した図である。また、図3の(c)および(d)は、圧力センサ60に対する第1温度センサ70の配置の一例を示した図である。
【0035】
図3の(a)および(b)に示すように、圧力センサ60は、例えば固定部品7および8を用いて、接続部3にはめ込まれるように固定される。このとき、圧力センサ60は、圧力検出のための素子(圧力検出素子)の検出面9が、筐体2の底面から検出対象に対して露出するように配置される。
【0036】
また、図3の(c)および(d)に示すように、第1温度センサ70はz軸方向において圧力センサ60の上側に当該圧力センサ60と接触して配置されることが望ましい。具体的には、第1温度センサ70は筐体2の内部であって、圧力センサ60の圧力検出素子の検出面9と反対面に配置されることが望ましい。これにより、第1温度センサ70は、検出対象に直接接している圧力検出素子から伝導する温度を検出することができる。つまり、第1温度センサ70は、実際の検出対象の温度により近い温度を検出することができる。
【0037】
図4は、圧力センサ60、第1温度センサ70、および第2温度センサ80の位置関係を模式的に示した図である。なお、図中の斜線部分は、パイプ100を流れる流体(検出対象)を示している。また、同図では接続部3や配線取付部6等の物理的構成を省略して表現している。また、同図および以降の説明では、筐体2の外の気温(外気温)をT、検出対象の温度をT、第1温度センサ70の検出温度をT、第2温度センサ80の検出温度をTとする。また、外気温が第2温度センサ80に伝導する際の伝導率をθa-b、検出温度が第1温度センサ70に伝導する際の伝導率をθL-cとする。
【0038】
図4の模式図でも、図3の(c)および(d)で示したように、第1温度センサ70は、圧力センサ60の圧力検出素子の検出面と反対面に配置される。一方、第2温度センサ80は、第1温度センサ70よりも検出対象から離れた位置に設けられる。第2温度センサ80は、検出対象の温度が極力伝播しない位置に設けられることが望ましい。例えば、第2温度センサ80は、筐体2の検出対象と接触していない部分の内側に設けられる。また、第2温度センサ80は筐体2から露出されるように設けられていてもよいし、第2温度センサ80自体が筐体2の外側に設けられていてもよい。また、第2温度センサ80は筐体2と別に設けられた外部装置であってもよい。
【0039】
≪流体温度の算出方法≫
本実施形態に係るセンサ装置1の温度算出部11は、第1温度センサ70の検出した温度の値と、第2温度センサ80の検出した温度の値とから検出対象の温度を算出する。以下、図4および図5を用いて、温度算出部11の行う検出対象の温度の算出に係る処理について説明する。
【0040】
図4に示したパイプ100は、設備配管であってその厚みは数mm程度である。したがって、上述したように第2温度センサ80を配置すれば、検出対象およびパイプ100の熱は第2温度センサ80の温度検出に対しほとんど影響を与えない。図4に示した各温度の変数を用いると、第2温度センサ80の検出温度Tと、外気温Tとの関係は、以下の式1のようにモデル化できる。
【0041】
一方、第1温度センサ70は、筐体2または圧力センサ60から伝導する検出対象の温度を検出する際に、筐体2の内部の気温の影響を受ける。筐体2の内部の気温は外気温に応じて変化するため、第1温度センサ70は外気温の影響を受けているといえる。第1温度センサ70の検出温度Tと、検出対象の温度Tと、外気温Tとの関係は、以下の式2のようにモデル化できる。
=T×θa-b+ε・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(式1)
=T×θL-c+f(T-T)+ε・・・・・・・・・・・・・・・・・(式2)
θa-bおよびθL-cは熱伝導率であり、第1温度センサ70と接触している筐体2または圧力センサ60の材質から予め定められた定数である。また、f(T-T)は予め定められた関数f()に、検出対象と外気温との温度差T-Tを代入した値である。関数f()は、センサ装置1の構造および材質等により予め定められる関数であり、記憶部50に記憶されている。また、εは式ごとに適宜設定される、誤差修正のための数値である。
【0042】
図5は、検出対象と外気温との温度差に応じた、第1温度センサ70の検出温度の変化を示すグラフである。図中の実線は、検出対象と外気温との温度差に応じた式2の値の推移を示している。一方、点線は、検出対象と外気温との温度差が無い場合((T-T)=0)のT1の値を延長した線である。
【0043】
図示のように、検出対象の温度と外気温との差が生じた場合((T-T)>0)、第1温度センサ70は温度検出の際に気温の影響を受けるため、式2から算出される値は低下する。この低下の度合いは、検出対象の温度と外気温との差が大きくなるほど大きくなる。
【0044】
本実施形態に係るセンサ装置1では、温度算出部11は、TおよびTを示す数値を受信すると、記憶部50の温度算出データ51を参照して、TおよびTの値の組み合わせに対応するTの値を特定することで、Tを算出する。
【0045】
≪処理の流れ≫
図6は、制御部10が行う、検出対象の温度の算出に係る処理の流れを示すフローチャートである。制御部10は、AD変換部90からTおよびTの数値を、所定の時間間隔で取得する(S1)。制御部10の温度算出部11は、取得したTおよびTの所定時間における平均値を算出する(S2)。なお、TまたはTを1回しか取得していない場合、S2の処理は行わなくてよい。
【0046】
次に、温度算出部11は、記憶部50に格納された温度算出データ51を参照して、Tの値に対応する検出対象の温度を特定する(S3)。最後に、制御部10は温度算出部11が算出したTを、通信部40を介し外部装置に出力する(S4)。もしくは、制御部10はTを表示部30に出力する(S4)。
【0047】
以上の構成および処理手順によれば、第1温度センサ70が検出した温度と第2温度センサが検出した温度とから検出対象の温度を算出することで、検出対象の温度を正確に算出することができる。そのため、センサ装置1は第1温度センサ70を上述のプローブ等に配置しなくてもよい。したがって、センサ装置1は、検出対象の温度を精度良く算出するとともに、筐体2の形状を単純化することができる。
【0048】
なお、温度算出部11は温度算出データ51を参照せず、第1温度センサ70の検出した温度の値の平均値と、第2温度センサ80の検出した温度の値の平均値とを上述の式1および式2に代入して、検出温度を算出してもよい。具体的には、温度算出部11はまず、式1にT(の平均値)を代入してTを求める。次に、温度算出部11は、求めたTを式2に代入することにより、Tを算出する。この場合、センサ装置1は記憶部50に温度算出データ51を格納していなくてもよい。
【0049】
〔実施形態2〕
第1温度センサ70の配置位置は、実施形態1に示した配置位置(圧力検出素子の裏側)に限られない。以下、本開示の実施形態2について説明する。本実施形態に係るセンサ装置1は、第1温度センサ70の配置が前記各実施形態に係るセンサ装置1と異なる。
【0050】
図7は、第1温度センサ70の配置位置と、TおよびTの値を示すグラフである。「素子裏側」の実線は、実施形態1にて説明したように、第1温度センサ70を圧力検出素子の裏側に配置した場合のTの値を示す。「固定部品内側」は、第1温度センサ70を接続部3の固定部品7の内側の面に配置した場合のTの値を示す。「固定部品外側」は、第1温度センサ70を固定部品7の外側の面に配置した場合のTの値を示す。なお、ここで言う「外側の面」は、固定部品7が接続部3に接している面を示す。また、「内側の面」は、固定部品7が接続部3に接していない面を示す。
【0051】
図示の通り、流体温度(検出対象の温度)が一定である場合、Tの値とTの値との差は、第1温度センサ70の配置位置によって決まった値に収束する。ここで、収束する値は第1温度センサ70の配置位置により微差が生じる。センサ装置1はこの微差に応じて上述した式2のf()の関数を変更する、または記憶部50の温度算出データ51における、TおよびTとTとの対応付けをしておくことで、例えば固定部品7の内側または外側等に第1温度センサ70を配置しても、精度良くTを算出することができる。
【0052】
〔実施形態3〕
センサ装置1の制御部10の制御ブロック(特に温度算出部11)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0053】
後者の場合、制御部10は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0054】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0055】
〔変形例〕
センサ装置1は、第1温度センサ70を複数個備えていてもよい。また、センサ装置1は第2温度センサ80を複数個備えていてもよい。1つ以上の第1温度センサ70および1つ以上の第2温度センサ80を備える場合、温度算出部11は、例えば第1温度センサ70群の検出温度の平均値と、第2温度センサ80群の検出温度の平均値とをそれぞれ算出して、温度算出データ51において該平均値の組み合わせに対応する検出対象の温度を特定すればよい。もしくは、温度算出部11は複数の第1温度センサ70または複数の第2温度センサ80の、それぞれの検出温度に各センサの配置位置に応じて適宜重み付けをしてもよい。そして、重み付けを加味して算出された第1温度センサ70群の検出温度および第2温度センサ80群の検出温度を算出し、これらの温度を用いて検出温度を算出してもよい。
【0056】
また、センサ装置1は第1温度センサ70および第2温度センサ80とは別に、圧力センサ60の基板温度を検出する第3温度センサを備えていてもよい。圧力センサ60の基板温度を検出するためには、第3温度センサを、圧力センサ60の検出対象と接触していない箇所、かつ第1温度センサ70と異なる位置に配置すればよい。
【符号の説明】
【0057】
1 センサ装置
2 筐体
3 接続部
10 制御部
11 温度算出部
50 記憶部
60 圧力センサ
70 第1温度センサ
80 第2温度センサ
90 AD変換部
図1
図2
図3
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図5
図6
図7