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  • 特許-発泡壁紙、発泡壁紙の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】発泡壁紙、発泡壁紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06N 7/04 20060101AFI20231121BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20231121BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20231121BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231121BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
D06N7/04
B32B5/18
B32B27/18 F
B32B27/00 E
E04F13/07 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022122835
(22)【出願日】2022-08-01
(62)【分割の表示】P 2017211735の分割
【原出願日】2017-11-01
(65)【公開番号】P2022136331
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】由良 武志
(72)【発明者】
【氏名】山村 菜月
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-341005(JP,A)
【文献】特開2004-099557(JP,A)
【文献】特開2004-300648(JP,A)
【文献】特開2013-208804(JP,A)
【文献】特開2015-189022(JP,A)
【文献】特開2012-213923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N 1/00- 7/06
B32B 1/00-43/00
E04F 13/00-13/30
A01N 1/00-65/48
A01P 1/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材に積層した発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層に積層した絵柄印刷層と、前記絵柄印刷層に積層した表面保護層と、を備え、
前記発泡樹脂層は、水性エマルジョン樹脂を主成分として形成され、且つ水溶性の抗菌剤を含有し、
前記抗菌剤の前記発泡樹脂層に対する質量比は、0.1%以上1.0%以下の範囲内であり、
前記表面保護層は、前記表面保護層を構成する固形成分のうち質量比10%以上30%以下の範囲内でシリコン系樹脂を含み、さらに、シリコン系樹脂以外の樹脂成分として、アクリル酸及びメタクリル酸、ないしはそれらのエステルのうちから選択した一種以上のモノマーから形成される重合体、または、重合体に対してスチレン、酢酸ビニル、エチレン及びα‐オレフィンのうち一種以上のモノマーないしはブロックコポリマーを共重合させることによって得られる重合体を含み、
前記抗菌剤は、有機窒素硫黄系の抗菌剤であることを特徴とする発泡壁紙。
【請求項2】
前記表面保護層の坪量は、5.0g/m以上30.0g/m以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載した発泡壁紙。
【請求項3】
前記表面保護層の前記絵柄印刷層と対向する面と反対の面には、エンボス加工による凹凸形状が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した発泡壁紙。
【請求項4】
基材と、前記基材に積層した発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層に積層した絵柄印刷層と、前記絵柄印刷層に積層した表面保護層と、を備える発泡壁紙の製造方法であって、
前記発泡樹脂層を形成する発泡樹脂層形成工程と、前記表面保護層を形成する表面保護層形成工程と、を備え、
前記発泡樹脂層形成工程では、前記発泡樹脂層の主成分とする水性エマルジョン樹脂に水溶性且つ有機窒素硫黄系の抗菌剤を含有させるとともに、前記抗菌剤の前記発泡樹脂層に対する質量比を0.1%以上1.0%以下の範囲内として前記発泡樹脂層を形成し、
前記表面保護層形成工程では、前記表面保護層を構成する固形成分のうち質量比10%以上30%以下の範囲内でシリコン系樹脂を含み、さらに、シリコン系樹脂以外の樹脂成分として、アクリル酸及びメタクリル酸、ないしはそれらのエステルのうちから選択した一種以上のモノマーから形成される重合体、または、重合体に対してスチレン、酢酸ビニル、エチレン及びα‐オレフィンのうち一種以上のモノマーないしはブロックコポリマーを共重合させることによって得られる重合体を含んで前記表面保護層を形成することを特徴とする発泡壁紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁面装飾等に用いる、発泡壁紙と、発泡壁紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、店舗や病院等の衛生面を重視する建築物に対し、抗菌性を有する壁紙が適用されているが、抗菌剤を化粧層等の最表層に存在させなければ、効果を発揮させることが困難である。
しかしながら、壁紙に用いる抗菌剤の主流である銀系の抗菌剤は、ハロゲンとの反応性が高いため、塩素系の洗浄剤や塩素を多く含む水で清掃すると、失活する可能性がある。また、有機系の抗菌剤は耐熱性が低いため、最表層に添加した場合は、製品加工時に発生する熱で失活する可能性がある。
【0003】
これに対し、例えば、特許文献1に開示されているように、化粧層を形成する材料に混合される薬剤に非昇華性の薬剤を用いることで、徐放性を有する抗菌剤を添加した壁紙の技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-168677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、技術を適用可能な範囲が塩化ビニル系の壁紙と紙系の壁紙に限定されており、非塩化ビニル系の壁紙等、プラスチック系の壁紙への適用が困難であるという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、プラスチック系の壁紙への適用が可能であるとともに、加熱や清掃の後であっても抗菌性を維持することが可能な、発泡壁紙と、発泡壁紙の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、基材と、基材に積層した発泡樹脂層と、発泡樹脂層に積層した絵柄印刷層と、絵柄印刷層に積層した表面保護層と、を備える発泡壁紙である。そして、発泡樹脂層は、水性エマルジョン樹脂を主成分として形成され、且つ水溶性の抗菌剤を含有し、抗菌剤の発泡樹脂層に対する質量比は、0.1%以上1.0%以下の範囲内であり、表面保護層は、表面保護層を構成する固形成分のうち質量比10%以上30%以下の範囲内でシリコン系樹脂を含む。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様は、基材と、基材に積層した発泡樹脂層と、発泡樹脂層に積層した絵柄印刷層と、絵柄印刷層に積層した表面保護層と、を備える発泡壁紙の製造方法であり、発泡樹脂層を形成する発泡樹脂層形成工程と、表面保護層を形成する表面保護層形成工程とを備える。発泡樹脂層形成工程では、発泡樹脂層の主成分とする水性エマルジョン樹脂に水溶性の抗菌剤を含有させるとともに、抗菌剤の発泡樹脂層に対する質量比を0.1%以上1.0%以下の範囲内として発泡樹脂層を形成する。表面保護層形成工程では、表面保護層を構成する固形成分のうち質量比10%以上30%以下の範囲内でシリコン系樹脂を含んで表面保護層を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、最表層ではない発泡樹脂層に抗菌剤を添加するため、プラスチック系の壁紙への適用が可能であるとともに、加熱や清掃の後であっても抗菌性を維持することが可能な、発泡壁紙と、発泡壁紙の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態における発泡壁紙の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本発明の第一実施形態を以下において説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係や、各層の厚さの比率等は、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
さらに、以下に示す第一実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質や、それらの形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0012】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(発泡壁紙)
図1を参照して、発泡壁紙1の構成について説明する。
発泡壁紙1は、図1中に表すように、基材2と、発泡樹脂層4と、絵柄印刷層6と、表面保護層8を、この順で備える。
発泡壁紙1の透湿度は、400[g/m・hr]以上1000[g/m・hr]以下の範囲内である。
【0013】
(基材)
基材2は、火に接しても燃え難い紙材を用いて形成されたシート状の層である。
基材2を形成する紙材としては、壁紙用の裏打紙等、紙基材として通常使用されている材料であれば、特に限定されずに使用することが可能である。したがって、基材2を形成する紙材としては、例えば、水溶性難燃剤を含浸させたパルプ主体の難燃紙や、無機質剤を混抄した無機質紙等を用いることが可能である。
【0014】
第一実施形態では、一例として、基材2の材料として、水溶性難燃剤を含浸させた紙等、木質系の材料とした場合について説明する。これは、基材2を木質系の基材とすることで、基材2の構成が発泡壁紙に適切な構成となるとともに、基材2を形成する材料の入手が容易となるためである。
ここで、水溶性難燃剤としては、例えば、スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン等を用いることが可能である。また、無機質剤としては、例えば、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を用いることが可能である。
【0015】
なお、基材2の表面のうち、樹脂層2を積層する側の面(図1中では、基材2の上側の面)に対し、易接着処理を施すことで、基材2の表面を易接着処理面としてもよい。易接着処理としては、例えば、表面に対しコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等を用いることが可能である。また、易接着処理面とする代わりに、プライマー層を形成してもよい。
【0016】
(発泡樹脂層)
発泡樹脂層4は、基材2に積層されている。具体的には、発泡樹脂層4は、図1中において、基材2の上側の面に積層されている。
また、発泡樹脂層4は、樹脂成分と、充填剤と、発泡剤と、発泡助剤と、樹脂分と、有機系抗菌剤と、添加剤と、抗菌剤を含有しており、発泡剤が発泡することで形成されている。
発泡樹脂層4が含有する樹脂成分は、主成分として水性エマルジョン樹脂を含有する。すなわち、発泡樹脂層4は、水性エマルジョン樹脂を主成分として形成されている。
【0017】
発泡樹脂層4が含有する充填剤としては、例えば、無機充填剤を用いることが可能である。また、無機充填剤は、一種を単独で用いることも、二種類以上を併用して用いることも可能である。
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カオリン等を用いることが可能である。
発泡樹脂層4が含有する発泡剤(揮発性膨張剤)は、熱膨張性マイクロカプセルの形で発泡樹脂層4が含有する樹脂成分に添加することが、性能(発泡倍率、強度)の観点から好ましい。また、発泡樹脂層4が含有する発泡剤としては、アゾ系、ヒドラジッド系、ニトロソ系等を用いることが可能である。
【0018】
また、発泡樹脂層4には、必要に応じて、顔料等を添加して着色してもよい。
顔料の添加による着色は、透明であってもよいし、半透明であってもよいし、不透明であってもよい。
顔料としては、例えば、酸化鉄、カーボンブラック等を用いることが可能である。
顔料の添加量は、樹脂層全量を基準として、5[質量%]以上50[質量%]以下の範囲内が好ましく、10[質量%]以上30[質量%]以下の範囲内がより好ましい。
発泡樹脂層4が含有する抗菌剤としては、水に可溶であること(水溶性)が条件となるため、例えば、チアゾール系を用いることが可能である。
【0019】
また、発泡樹脂層4が含有する抗菌剤としては、水溶性を有していれば、ニトリル系、イミダゾール系、アルコール系、アルデヒド系、(カルボン酸系、エステル系)、ジスルフィド系、チオカーバメート系、フェノール系等を用いることが可能である。
さらに、発泡樹脂層4が含有する抗菌剤としては、水溶性を有していれば、ピリジン・キノリン系、トリアジン系、イソチアゾロン系、アニリド系、カルボン酸系、エーテル系、過酸化物・エポキシ系、ビグアナイド系、界面活性剤系等を用いることが可能である。
【0020】
第一実施形態では、一例として、発泡樹脂層4が含有する抗菌剤を、有機窒素硫黄系の抗菌剤とした場合について説明する。
抗菌剤の発泡樹脂層4に対する質量比は、0.1[%]以上1.0[%]以下の範囲内である。
発泡樹脂層4が含有する添加剤としては、必要に応じて、難燃剤、セル調整剤、安定剤、滑剤等、周知の添加剤を用いることが可能である。
難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属酸化物系難燃剤、リン酸エステル系等のリン系難燃剤、テトラブロモビスフェノールA等の臭素系難燃剤等を用いることが可能である。
【0021】
(絵柄印刷層)
絵柄印刷層6は、発泡樹脂層4に積層されている。具体的には、絵柄印刷層6は、図1中において、発泡樹脂層4の上側の面に積層されている。
また、絵柄印刷層6は、発泡壁紙1へ、所望の絵柄による意匠性を付与するものであり、絵柄の種類等は、特に限定的されるものではない。
絵柄としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等、発泡壁紙1を用いる箇所に適した絵柄を選択することが可能である。
【0022】
絵柄印刷層6を形成する印刷インキについては、壁紙として一般的に求められるような耐光性、発色性、使用される成分の安全性の用件(顔料や添加剤として、重金属や硫黄化合物を含まない等)を満たしていれば特に限定されるものではない。
第一実施形態では、一例として、絵柄印刷層6を形成する印刷インキを、アクリル重合体をベースレジンとする水系のインキとした場合について説明する。
絵柄印刷層6を形成する印刷インキは、上記のような水性エマルジョンから構成され、印刷後に乾燥させることで、絵柄印刷層6の塗膜となる。
また、インキには、絵柄模様を構成する公知の顔料が含まれる。
【0023】
また、絵柄印刷層6を形成する印刷インキに、顔料を組み合わせて配合することで、絵柄の表現を豊かにすることが可能となる。また、絵柄印刷層6を形成する印刷インキに、紫外線吸収剤や光安定剤等を添加することで、耐候性を良好にすることも可能となる。
絵柄の印刷方法としては、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷等、既知の印刷方法を用いることが可能である。
特に、全面を同一に着色する場合には、上述した印刷方法の他に、コーティングの手法や装置を用いてもよい。
【0024】
(表面保護層)
表面保護層8は、絵柄印刷層6に積層されており、コート層(コーティング層)とも呼称される層である。具体的には、表面保護層8は、図1中において、絵柄印刷層6の上側の面に積層されている。
また、表面保護層8は、層(表面保護層8)を構成する固形成分のうち、質量比10%以上30%以下の範囲内で、シリコン系樹脂を含む。
【0025】
また、表面保護層8は、シリコン系樹脂以外の樹脂成分として、アクリル酸(CH=CHCOOH)及びメタクリル酸(CH=C(CH)COOH)、ないしはそれらのエステルのうちから選択した一種以上のモノマーから形成される重合体、または、重合体に対してスチレン、酢酸ビニル、エチレン及びα-オレフィンのうち一種以上のモノマーないしはブロックコポリマーを共重合させることによって得られる重合体を含むことが好ましい。
なお、表面保護層8の構成は、シリコン系樹脂以外の樹脂成分として、ポリ塩化ビニル等の樹脂を含む構成とすることも可能である。
【0026】
表面保護層8の坪量は、熱や塩素からの保護、表面強度、耐汚染性等の物性を付与する観点から、5.0[g/m]以上30.0[g/m]以下の範囲内であることが好ましい。さらに、表面保護層8の坪量は、15.0[g/m]以上25.0[g/m]以下の範囲内であることがより好ましい。
また、表面保護層8の絵柄印刷層6と対向する面と反対の面(図1中における、表面保護層8の上側の面)には、エンボス加工による凹凸形状10が形成されている。
エンボス加工による凹凸形状10としては、例えば、布目、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャー、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等を用いることが可能であり、適宜選択が可能である。
【0027】
(発泡壁紙1の製造方法)
以下、図1を参照して、第一実施形態の発泡壁紙1の製造方法を説明する。
発泡壁紙1の製造方法は、基材2と、発泡樹脂層4と、絵柄印刷層6と、表面保護層8を備える発泡壁紙1の製造方法であり、発泡樹脂層4を形成する発泡樹脂層形成工程と、表面保護層8を形成する表面保護層形成工程とを備える。
【0028】
発泡樹脂層形成工程では、発泡樹脂層4の主成分とする水性エマルジョン樹脂に水溶性の抗菌剤を含有させるとともに、抗菌剤の発泡樹脂層4に対する質量比を0.1[%]以上1.0[%]以下の範囲内として、発泡樹脂層4を形成する。
発泡樹脂層形成工程において、発泡樹脂層4の主成分とする水性エマルジョン樹脂に水溶性の抗菌剤を含有させることで、抗菌剤を、他の物性に悪影響が無い範囲で、経時変化によりブリードさせることが可能となる。
これにより、抗菌剤を含有する発泡樹脂層4を表面保護層8が保護する構成となるため、ふき取り清掃や洗剤との接触による抗菌剤の除去や、抗菌剤の揮発・昇華による喪失を抑制することが可能となる。
【0029】
表面保護層形成工程では、表面保護層8を構成する固形成分のうち質量比10%以上30%以下の範囲内でシリコン系樹脂を含んで、表面保護層8を形成する。
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0030】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の発泡壁紙1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)基材2と、基材2に積層した発泡樹脂層4と、発泡樹脂層4に積層した絵柄印刷層6と、絵柄印刷層6に積層した表面保護層8を備える。これに加え、発泡樹脂層4は、水性エマルジョン樹脂を主成分として形成され、且つ水溶性の抗菌剤を含有し、抗菌剤の発泡樹脂層4に対する質量比は、0.1[%]以上1.0[%]以下の範囲内である。さらに、表面保護層8は、前記表面保護層を構成する固形成分のうち質量比10[%]以上30[%]以下の範囲内でシリコン系樹脂を含む。
【0031】
このため、最表層ではない発泡樹脂層4に抗菌剤を添加することで、抗菌剤を含有する発泡樹脂層4を表面保護層8が保護する構成となり、ふき取り清掃や洗剤との接触による抗菌剤の除去や、抗菌剤の揮発・昇華による喪失を抑制することが可能となる。
その結果、プラスチック系の壁紙への適用が可能であるとともに、加熱や清掃の後であっても抗菌性を維持することが可能な、発泡壁紙1を提供することが可能となる。
【0032】
(2)抗菌剤が、有機窒素硫黄系の抗菌剤である。
その結果、抗菌性に加え、防カビ効果を有することが可能となる。また、長期間に亘り、安定した効力を持続することが可能となる。
(3)表面保護層8の坪量が、5.0[g/m]以上30.0[g/m]以下の範囲内である。
その結果、表面保護層8による発泡樹脂層4の保護力を向上させることが可能となる。
【0033】
(4)透湿度が400[g/m・hr]以上1000[g/m・hr]以下の範囲内である。
その結果、発泡壁紙1の構成を、壁紙として適切な透湿度を有する構成とすることが可能となる。
(5)表面保護層8の絵柄印刷層6と対向する面と反対の面に、エンボス加工による凹凸形状10が形成されている。
その結果、絵柄印刷層6によって発泡壁紙1へ付与する意匠性を向上させることが可能となる。
また、第一実施形態の発泡壁紙1の製造方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
【0034】
(6)発泡樹脂層4の主成分とする水性エマルジョン樹脂に水溶性の抗菌剤を含有させるとともに、抗菌剤の発泡樹脂層4に対する質量比を0.1[%]以上1.0[%]以下の範囲内として発泡樹脂層4を形成する、発泡樹脂層形成工程を備える。これに加え、表面保護層8を構成する固形成分のうち質量比10[%]以上30[%]以下の範囲内でシリコン系樹脂を含んで表面保護層8を形成する、表面保護層形成工程を備える。
このため、最表層ではない発泡樹脂層4に抗菌剤を添加することで、抗菌剤を含有する発泡樹脂層4を表面保護層8が保護する構成となり、ふき取り清掃や洗剤との接触による抗菌剤の除去や、抗菌剤の揮発・昇華による喪失を抑制することが可能となる。
その結果、プラスチック系の壁紙への適用が可能であるとともに、加熱や清掃の後であっても抗菌性を維持することが可能な、発泡壁紙1の製造方法を提供することが可能となる。
【実施例
【0035】
第一実施形態を参照しつつ、以下、実施例の発泡壁紙と、比較例の発泡壁紙について説明する。
(実施例1)
実施例1の発泡壁紙は、以下の構成とした。
また、実施例1の発泡壁紙は、透湿度を400[g/m・hr]とした。
・基材
坪量が65[g/m]の普通紙を用いて形成した。
・発泡樹脂層
エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)を主成分とし、充填剤として炭酸カルシウムを80部、カプセル発泡剤を10部添加した。そして、発泡倍率を5倍に設定し、坪量が100[g/m]となるように形成した。
さらに、発泡樹脂層には、抗菌剤(BC-477)を含有させ、抗菌剤の発泡樹脂層に対する質量比を0.3[%]とした。
・絵柄印刷層
アクリル樹脂系インキを用いて、塗布量が2[g/m]となるように形成した。
・表面保護層
アクリル系樹脂及びシリコン系樹脂を主成分とし、坪量が5[g/m]となるように形成した。
【0036】
(実施例2)
実施例2の発泡壁紙は、透湿度を1000[g/m・hr]とした構成を除き、実施例1の発泡壁紙と同様である。
(実施例3)
実施例3の発泡壁紙は、表面保護層の構成を除き、実施例1の発泡壁紙と同様である。
・表面保護層
アクリル系樹脂及びシリコン系樹脂を主成分とし、坪量が30[g/m]となるように形成した。
(実施例4)
実施例4の発泡壁紙は、透湿度を1000[g/m・hr]とした構成と、表面保護層の構成を除き、実施例3の発泡壁紙と同様である。
【0037】
(比較例1)
比較例1の発泡壁紙は、以下の構成とした。
また、比較例1の発泡壁紙は、透湿度を400[g/m・hr]とした。
・基材
坪量が65[g/m]の普通紙を用いて形成した。
・発泡樹脂層
エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)を主成分とし、充填剤として炭酸カルシウムを80部、カプセル発泡剤を10部添加した。そして、発泡倍率を5倍に設定し、坪量が100[g/m]となるように形成した。
・絵柄印刷層
アクリル樹脂系インキを用いて、塗布量が2[g/m]となるように形成した。
・表面保護層
アクリル系樹脂及びシリコン系樹脂を主成分とし、坪量が30[g/m]となるように形成した。
さらに、表面保護層には、抗菌剤(ゼオミック AV-10D)を含有させ、抗菌剤の表面保護層に対する質量比を0.3[%]とした。
【0038】
(比較例2)
比較例2の発泡壁紙は、透湿度を1000[g/m・hr]とした構成を除き、比較例1の発泡壁紙と同様である。
(比較例3)
比較例3の発泡壁紙は、表面保護層の構成を除き、比較例2の発泡壁紙と同様である。
・表面保護層
アクリル系樹脂及びシリコン系樹脂を主成分とし、坪量が30[g/m]となるように形成した。
さらに、表面保護層には、抗菌剤(ゼオミック AV-10D)を含有させ、抗菌剤の表面保護層に対する質量比を2.0[%]とした。
【0039】
(比較例4)
比較例4の発泡壁紙は、以下の構成とした。
また、比較例4の発泡壁紙は、透湿度を1000[g/m・hr]とした。
・基材
坪量が65[g/m]の普通紙を用いて形成した。
・発泡樹脂層
エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)を主成分とし、充填剤として炭酸カルシウムを80部、カプセル発泡剤を10部添加した。そして、発泡倍率を5倍に設定し、坪量が100[g/m]となるように形成した。
さらに、発泡樹脂層には、抗菌剤(ゼオミック AV-10D)を含有させ、抗菌剤の発泡樹脂層に対する質量比を2.0[%]とした。
・絵柄印刷層
アクリル樹脂系インキを用いて、塗布量が2[g/m]となるように形成した。
・表面保護層
アクリル系樹脂及びシリコン系樹脂を主成分とし、坪量が30[g/m]となるように形成した。
【0040】
(比較例5)
比較例5の発泡壁紙は、発泡樹脂層の構成を除き、比較例4の発泡壁紙と同様である。
・発泡樹脂層
エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)を主成分とし、充填剤として炭酸カルシウムを80部、カプセル発泡剤を10部添加した。そして、発泡倍率を5倍に設定し、坪量が100[g/m]となるように形成した。
さらに、発泡樹脂層には、抗菌剤(BC-477)を含有させ、抗菌剤の発泡樹脂層に対する質量比を2.0[%]とした。
(比較例6)
比較例6の発泡壁紙は、透湿度を100[g/m・hr]とした構成を除き、比較例5の発泡壁紙と同様である。
【0041】
(性能評価)
実施例の発泡壁紙と、比較例の発泡壁紙に対し、それぞれ、通常の状態における抗菌性と、拭き取り後の抗菌性に対する性能評価を行った。
通常の状態における抗菌性は、壁装問屋協議会の規格である「抗菌壁紙性能規定」の試験方法に基づき、「生菌数が0.63以下」の場合を合格として評価し、「生菌数が0.63を超える」場合を不合格として評価した。
拭き取り後の抗菌性は、壁装問屋協議会の規格である「抗菌壁紙性能規定」の試験方法に基づき、「生菌数が0.63以下」の場合を合格として評価し、「生菌数が0.63を超える」場合を不合格として評価した。
評価結果は表1中に表す。
【0042】
【表1】
【0043】
(評価結果)
表1中に表されるように、実施例の発泡壁紙は、比較例の発泡壁紙と比較して、通常の状態における抗菌性と、拭き取り後の抗菌性が高いことが確認された。
【符号の説明】
【0044】
1…発泡壁紙、2…基材、4…発泡樹脂層、6…絵柄印刷層、8…表面保護層、10…凹凸形状
図1