(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】逆力機構
(51)【国際特許分類】
F16F 3/04 20060101AFI20231121BHJP
H01G 5/01 20060101ALI20231121BHJP
H01G 5/013 20060101ALI20231121BHJP
F16H 21/10 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
F16F3/04 Z
H01G5/01 B
H01G5/013 100
F16H21/10 H
(21)【出願番号】P 2022154803
(22)【出願日】2022-09-28
【審査請求日】2023-09-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】下川 琢也
(72)【発明者】
【氏名】錦織 祐市
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/043230(WO,A1)
【文献】特開2006-055494(JP,A)
【文献】中国実用新案第208169459(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 3/04
F16H 21/10
H01G 5/00- 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正のばね定数を有する機器と組合せて、負のばね定数を有し同じ作用点に逆力を与え合計操作力を調整する逆力機構において、
両端が支持され軸回りに回転可能な主軸と、
一端側の孔に前記主軸を挿通した主リンクと、
前記主リンクの他端側の孔に挿通され前記主軸を中心とした円弧軌跡上を移動可能であり、かつ、軸回りに回転可能に設けられた可動軸と、
一端側の孔に前記可動軸を挿通した動作リンクと、
前記主軸に対して垂直方向に延在し、両端が固定されたスライダーと、
前記動作リンクの他端側の孔に挿通され、前記スライダーに案内されて前記スライダーと並行方向に移動可能であり、かつ、軸回りに回転可能に設けられた動作軸と、
一端側に前記可動軸を挿通する長孔を有するばねリンクと、
前記ばねリンクの他端側の孔に挿通されるばね軸と、
前記ばねリンクに設けられた逆力ばねと、
を備え、
前記主軸と前記動作軸を結ぶ線から前記可動軸が最も離れる挿入状態において、前記主軸から前記可動軸への延長線上の基点から、前記スライダーと平行に、前記合計操作力が零以外の一定値となるように設定された寸法を移動した位置に前記ばね軸を固定し、
前記動作リンクと前記スライダーの動作角度を25°~85°の範囲とすることを特徴とする逆力機構。
【請求項2】
前記逆力ばねは、前記ばねリンクにおける前記ばね軸と前記可動軸の間に挿入された圧縮ばねであることを特徴とする請求項1記載の逆力機構。
【請求項3】
前記ばねリンクは他端側を延長し、
前記逆力ばねは、前記ばねリンクの前記ばね軸よりも他端側に設けられた引張りばねであることを特徴とする請求項1記載の逆力機構。
【請求項4】
正のばね定数を有する機器と組合せて、負のばね定数を有し同じ作用点に逆力を与え合計操作力を調整する逆力機構において、
両端が支持され軸回りに回転可能な主軸と、
一端側の孔に前記主軸を挿通した主リンクと、
前記主リンクの他端側の孔に挿通され前記主軸を中心とした円弧軌跡上を移動可能であり、かつ、軸回りに回転可能に設けられた可動軸と、
一端側の孔に前記可動軸を挿通した動作リンクと、
前記主軸に対して垂直方向に延在し、両端が固定されたスライダーと、
前記動作リンクの他端側の孔に挿通され、前記スライダーに案内されて前記スライダーと並行方向に移動可能であり、かつ、軸回りに回転可能に設けられた動作軸と、
一端側に前記可動軸を挿通する長孔を有するばねリンクと、
前記ばねリンクの他端側の孔に挿通されるばね軸と、
前記ばねリンクにおける前記ばね軸と前記可動軸の間に挿入された逆力ばねと、
を備え、
前記ばね軸を前記主軸と前記可動軸との間に固定し、
前記動作リンクと前記スライダーの動作角度を25°~85°の範囲とし、前記合計操作力の値を零以外の値にすることを特徴とする逆力機構。
【請求項5】
正のばね定数を有する前記機器は、可変真空コンデンサであることを特徴とする請求項1~4のうち何れかに記載の逆力機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正のばね定数を有する機器と組み合わせて、負のばね定数を有し同じ作用点に逆向きに働く力(以下、逆力と称する)を与え、操作力を調整する逆力機構に関する。
【背景技術】
【0002】
正のばね定数を有する機器の例として可変真空コンデンサがある。
図11に示すように、可変真空コンデンサ7は、少なくとも一部が絶縁性を有する筒状体(例えば、セラミック管)72の両端を固定側導体73と可動側導体74により閉塞して、真空容器を構成している。
【0003】
符号75は、固定側導体73の真空容器内側に設けられた固定電極を示すものである。固定電極75は、内径が異なる複数の略円筒状の電極部材を微小なギャップを持たせて構成される。
【0004】
符号77は、後述の可動電極76を支持する可動支持部77を示すものである。可動支持部77は、固定側導体73と対向して配置され、後述の可動ロッド78を介して、真空容器の軸方向Y(筒状体72の両端方向)に移動自在となるように構成されている。
図11に示す可動支持部77の場合、真空容器の径方向に延在した平板状を成している。
【0005】
可動電極76は、固定電極75と同様に内径が異なる複数の略円筒状の電極部材を微小なギャップを持たせて構成されたものである。この可動電極76の各電極部材は固定電極75と非接触状態で該固定電極75に挿出入(固定電極75の各電極部材間に挿出入して互いに交叉)できるように、可動支持部77の固定側導体73側において固定電極75に対向して設けられ、これにより、当該固定電極75との間に静電容量を形成できるように構成されている。
【0006】
符号78は、可動支持部77の背面側(可動電極76が設けられていない可動側導体74側)から軸方向Yに延設された可動ロッドを示すものである。
図11中では可動ロッド78が真空容器の可動側導体74側を突出するように延設されている。
【0007】
符号79は、可変真空コンデンサ7の通電路の一部として、可撓性の薄い軟質金属で筒状(例えば蛇腹状)のベローズを示すものである。このベローズ79は、真空容器内におけるベローズ79の外周側、すなわち筒状体72、固定側導体73、可動側導体74、可動支持部77,ベローズ79で囲まれた空間(以下、真空室と称する)71を気密(真空状態にできるように気密)に保持しながら、可動電極76、可動支持部77、可動ロッド78が軸方向Yに移動できるように構成されている。そして、真空容器内におけるベローズ79の内周側(ベローズ79の可動ロッド78側)には、大気圧状態の空間(以下、大気室と称する)が形成されている。
【0008】
これにより、真空部71内に固定電極75と微小なギャップを持たせた可動電極76とが設けられる。可変真空コンデンサ7の駆動源により可動ロッド78、可動支持部77を介して可動電極76を軸方向Yに移動させ、静電容量を可変とする。
【0009】
可動ロッド78を挿出入すると、ベローズ79のバネ定数79aに従い変位の復元力が生じ、更に、真空圧が加わる。これにより、可変真空コンデンサ7は最も挿入された位置でプラスの引込力となり、挿出する程引込力が増加する線形の正のばね定数を有する操作力特性となる。
【0010】
可変真空コンデンサ7は、高速操作に適するように操作力の低減や一定値化ができない不都合がある。
【0011】
これら正のばね定数を有する機器に、操作力の絶対値や変動幅を減じるなどの調整手段として、逆力を有する逆力機構を組合せることがある。
【0012】
特許文献1には逆力を得る機構として弾性機構が開示されている。この特許文献1は、正のばね定数を有する正弾性機構と負のばね定数を有する負弾性機構の2組の機構を組合せ、更に、負弾性機構は主副2種の負弾性部で構成されている。このような構成により、任意の正負両方のばね定数を得られるが、構成が複雑で大型になる不都合がある。
【0013】
また、従来からトグル倍力機構が知られている。トグル倍力機構は、2つのリンク(主リンクと動作リンク)と、スライダーと、3つの軸(2つのリンクの軸となる固定された主軸、固定されていない可動軸、スライダーと連動する動作軸)と、を備え、スライダーに対し垂直方向から可動軸に所定の入力を与える。
【0014】
この機構において動作リンクとスライダーの動作角度は0~60°が多用され、中でも25°以下の鋭角範囲は入力に対する出力の比率が急増する曲線状特性になり倍力機構と呼ばれている。一方、85°を超えると入力に対する出力の比率が急減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
急増する曲線状特性のトグル倍力機構と、正のばね定数による直線特性の機器を組み合わせても、合計操作力の絶対値を減じることは可能であるものの、急増する曲線状特性の影響により操作力の変動幅が大きくなる不都合がある。
【0017】
機構には動作に必要な隙間・ガタがあり、操作中に零値になると力の方向が反転し、隙間・ガタにより動作が瞬時停滞して不連続操作特性になる。
【0018】
これを正のばね定数による直線特性の機器と組み合わせたとき、不連続操作特性によって操作指示に対する正確な出力が不能となり高精度制御ができなくなる不都合がある。
【0019】
以上示したようなことから、正のばね定数を有する機器と組み合わせる逆力機構において、構成を簡素化して小型化し、高速操作に適するように操作力の低減を図り、高精度制御に適するように操作力を零以外の値にすることが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、正のばね定数を有する機器と組合せて、負のばね定数を有し同じ作用点に逆力を与え合計操作力を調整する逆力機構において、両端が支持され軸回りに回転可能な主軸と、一端側の孔に前記主軸を挿通した主リンクと、前記主リンクの他端側の孔に挿通され前記主軸を中心とした円弧軌跡上を移動可能であり、かつ、軸回りに回転可能に設けられた可動軸と、一端側の孔に前記可動軸を挿通した動作リンクと、前記主軸に対して垂直方向に延在し、両端が固定されたスライダーと、前記動作リンクの他端側の孔に挿通され、前記スライダーに案内されて前記スライダーと並行方向に移動可能であり、かつ、軸回りに回転可能に設けられた動作軸と、一端側に前記可動軸を挿通する長孔を有するばねリンクと、前記ばねリンクの他端側の孔に挿通されるばね軸と、前記ばねリンクに設けられた逆力ばねと、を備え、前記主軸と前記動作軸を結ぶ線から前記可動軸が最も離れる挿入状態において、前記主軸から前記可動軸への延長線上の基点から、前記スライダーと平行に、前記合計操作力が零以外の一定値となるように設定された寸法を移動した位置に前記ばね軸を固定し、前記動作リンクと前記スライダーの動作角度を25°~85°の範囲とする。
【0021】
また、その一態様として、前記逆力ばねは、前記ばねリンクにおける前記ばね軸と前記可動軸の間に挿入された圧縮ばねであることを特徴とする。
【0022】
また、他の態様として、前記ばねリンクは他端側を延長し、前記逆力ばねは、前記ばねリンクの前記ばね軸よりも他端側に設けられた引張りばねであることを特徴とする。
【0023】
また、他の態様として、正のばね定数を有する機器と組合せて、負のばね定数を有し同じ作用点に逆力を与え合計操作力を調整する逆力機構において、両端が支持され軸回りに回転可能な主軸と、一端側の孔に前記主軸を挿通した主リンクと、前記主リンクの他端側の孔に挿通され前記主軸を中心とした円弧軌跡上を移動可能であり、かつ、軸回りに回転可能に設けられた可動軸と、一端側の孔に前記可動軸を挿通した動作リンクと、前記主軸に対して垂直方向に延在し、両端が固定されたスライダーと、前記動作リンクの他端側の孔に挿通され、前記スライダーに案内されて前記スライダーと並行方向に移動可能であり、かつ、軸回りに回転可能に設けられた動作軸と、一端側に前記可動軸を挿通する長孔を有するばねリンクと、前記ばねリンクの他端側の孔に挿通されるばね軸と、前記ばねリンクにおける前記ばね軸と前記可動軸の間に挿入された逆力ばねと、を備え、前記ばね軸を前記主軸と前記可動軸との間に固定し、前記動作リンクと前記スライダーの動作角度を25°~85°の範囲とし、前記合計操作力の値を零以外の値にすることを特徴とする。
【0024】
また、その一態様として、正のばね定数を有する前記機器は、可変真空コンデンサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、正のばね定数を有する機器と組み合わせる逆力機構において、構成を簡素化して小型化し、高速操作に適するように操作力の低減を図り、高精度制御に適するように操作力を零以外の値にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態における逆力機構と可変真空コンデンサの組み合わせを示す正面図である。
【
図7】逆力機構の挿入状態の力のベクトル図である。
【
図8】逆力機構の挿出状態の力のベクトル図である。
【
図11】従来の可変真空コンデンサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本願発明における逆力機構の実施形態を
図1~
図10に基づいて詳述する。
【0028】
[実施形態]
図1は実施形態における逆力機構と可変真空コンデンサの組み合わせを示す正面図、
図2は
図1におけるA-A’断面図、
図3は
図2におけるB-B’断面図を示す。
図1~
図3に示すように、可変真空コンデンサ7に取付具81を介して逆力機構1を接続する。可変真空コンデンサ7については
図11と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。この可変真空コンデンサ7は、可変真空コンデンサ7が最も挿入された挿入状態(可動ロッド78、可動支持部77、可動電極76が最も固定側導体73に近づいた状態)において操作力がプラスの引込力となり、挿出する程引込力が増す線形の正のばね定数を有する。
【0029】
逆力機構1は、一対の側板10と、一対の側板10の上端側、下端側にそれぞれねじ10aで固定された上板8および下板9と、を有する。上板8から直動操作棒3を突出させる。直動操作棒3は、図外の駆動源に支持される。可変真空コンデンサ7の可動ロッド78は、下板9を貫通して逆力機構1に支持される。
【0030】
図2、
図3に示すように、逆力機構1は、少なくとも2つのリンク(主リンク21および動作リンク22)と、スライダー15と、3つの軸(主軸11および可動軸13および動作軸14)と、を備えた1組のトグル機構である。
【0031】
図4に示すように、主軸11はその両端が一対の側板10に支持される。主軸11は一対の側板10に対して垂直に設けられ、側板10の内側に設けられた一対の板状の主リンク21の一端側の孔に挿通される。主軸11は、主リンク21と動作リンク22の2つのリンクの軸となり軸回りに回転可能に支持される。
【0032】
可動軸13は、一対の側板10の内側で側板10に対して垂直、かつ、軸回りに回転可能に設けられ、側板10には固定されていない。可動軸13は、主リンク21の内側の可動金具2の長切欠2aに挿通して、可動軸13と可動金具2が動作中に接触しないようになっている。また、可動軸13は、可動金具2の外側の主リンク21の他端側の孔、および、板状の動作リンク22の一端側の孔に挿通される。更に、可動軸13は、動作リンク22の外側のばねリンク23の一端側に設けた長孔23aに挿通し、ばねリンク23の軸方向に自由に移動できるようになっている。可動軸13は主軸11を中心とした円弧軌跡上を移動可能である。
【0033】
動作軸14は一対の側板10の内側で側板10に対して垂直、かつ、軸回りに回転可能に設けられ、側板10には固定されていない。動作軸14は、可動金具2の孔2bと、可動金具2の外側に設けられた動作リンク22の他端側の孔に挿通される。
【0034】
スライダー15はその両端が上板8、下板9に固定され、上板8、下板9に対して垂直に設けられる。すなわち、スライダー15は、主軸11に対して垂直方向に延在する。可動金具2は内部にリニアブッシュ2cを固定し、リニアブッシュ2cの挿通孔内にスライダー15が挿通される。このような構成により、スライダー15とリニアブッシュ2cは動作軸14を案内し、動作軸14はスライダー15を平行移動した
図7に示す仮想スライダー線15a上を上下に移動する。すなわち、動作軸14はスライダー15と平行方向に移動可能である。可動金具2は動作軸14に追従する。
【0035】
可動金具2には主軸11との接触を避ける切欠2dと、上面に直動操作棒3を固着する穴2e、および、下面に可動ロッド78を固着する図示されていない固定穴を設ける。
【0036】
ばねリンク23は、一端側に可動軸13を相通する長孔23aを有し、他端側にばね軸12を相通する孔を有する。
【0037】
このトグル機構において、主リンク21の主軸11と可動軸13間の軸間距離は、動作寸法S、可動軸13にかかる力F1の曲線状特性、および、動作リンク22とスライダー15の角度θ3に係る。また、動作リンク22の可動軸13と動作軸14間の軸間距離は、動作寸法S、ばねリンク23と動作リンク22との角度θ1とばねリンク23と主リンク21との角度θ2、および、動作リンク22とスライダー15の角度θ3に係る。動作寸法Sについては後述する。
【0038】
ここで、挿入状態aは、可変真空コンデンサ7の可動ロッド78、可動支持部77、可動電極76が最も固定側導体73に近づいた状態を示す。また、挿入状態aにおいて、逆力機構1は、主軸11と動作軸14を結ぶ線から可動軸13が最も離れる。
【0039】
一方、挿出状態bは、可変真空コンデンサ7の可動ロッド78、可動支持部77、可動電極76が最も固定側導体73から離れた状態を示す。また、挿出状態bにおいて、逆力機構1は、主軸11と動作軸14を結ぶ線に可動軸13が最も近づく。
【0040】
なお、前記動作寸法Sは、可変真空コンデンサ7の可動ロッド78、可動支持部77、可動電極76の挿入状態aからの移動距離を示す。動作寸法Sは挿入状態aで最小となり、挿出状態bで最大となる。
【0041】
挿入状態aにおいて、主軸11から可動軸13への延長上の基点から、スライダー15と平行に下方向へ
図7の寸法16を移動した位置、かつ、ばね軸12と可動軸13の間にばね定数24aを有する逆力ばね24を挿入できる位置にばね軸12を固定する。寸法16については後述する。
【0042】
図5、
図7の挿入状態aにおいて、逆力機構1の可動軸13は円弧軌跡の初期位置(円弧軌跡上の最も左下の位置)にあり、動作軸14もスライド動作の初期位置(スライド動作範囲の最も下の位置)にある。主軸11と動作軸14を結ぶ線から可動軸13が最も離れるために、ばね軸12と可動軸13間の距離が最短となり逆力ばね24の最大の力F1aが可動軸13に加わる。
【0043】
ばね軸12と可動軸13の位置関係により、ばねリンク23と動作リンク22の角度θ1a(約18°)と、ばねリンク23と主リンク21の角度θ2a(約21°)が定まる。可動軸13にかかる最大の力F1aは、角度θ1aと角度θ2aの2つの角度比率に従い、動作リンク22の動作軸14にかかる力F2aと主リンク21の主軸11にかかる力に分圧される。
【0044】
ばね軸12と可動軸13の位置関係により、動作リンク22と仮想スライダー線15aの角度θ3aは85°以下となる。本実施形態の
図7では約83°となる。逆力F3aは、動作軸14にかかる力F2aと角度θ3aの余弦値との積である。角度θ3a(約83°)の余弦値は小さいため、逆力F3aが最小の値となる。
【0045】
可動金具2において、逆力F3aと可変真空コンデンサ7の操作力F4aとの差が合計操作力F5aとなる。合計操作力F5aはばね軸12を基点から寸法16分下に固定したことにより挿入側にプラスの値となる。
【0046】
図6、
図8の挿出状態bにおいて、逆力機構1の可動軸13は円弧軌跡の最終位置(円弧軌跡上の最も右上の位置)にあり、動作軸14もスライダー動作の最終位置(スライダー動作範囲の最も上の位置)にある。
【0047】
主軸11と動作軸14を結ぶ線に可動軸13が最も近づくため、ばね軸12と可動軸13間の距離が最長となり逆力ばね24の最少の力F1bが可動軸13に加わる。
【0048】
ばね軸12と可動軸13の位置関係により、ばねリンク23と動作リンク22の角度θ1b(約57°)と、ばねリンク23と主リンク21の角度θ2b(約69°)が定まる。可動軸13にかかる最少の力F1bは、角度θ1bと角度θ2bの角度比率に従い、動作リンク22の動作軸14にかかる力F2bと主リンク21の主軸11にかかる力に分圧する。
【0049】
ばね軸12と可動軸13の位置関係により、動作リンク22と仮想スライダー線15aの角度θ3bは25°を超える角度となる。本実施形態の
図8では約29°である。逆力F3bは、動作軸14にかかる力F2bと角度θ3bの余弦値との積である。角度θ3b(約29°)の余弦値は大きいため、逆力F3bが最大の値となる。
【0050】
可動金具2において、逆力F3bと可変真空コンデンサ7の操作力F4bとの差が合計操作力F5bとなる。
【0051】
図9は、横軸に可変真空コンデンサ7の挿入状態aから挿出状態b間の動作寸法S、縦軸にその角度θ3(0°~90°)を示す。
図10は、横軸に可変真空コンデンサ7の挿入状態aから挿出状態b間の動作寸法S、縦軸に0点を中心に、+側は可変真空コンデンサへの引込力、-側は可変真空コンデンサ7の引出力を示す。この引込力および引出力は0点から離れるほど大きな値となる。
【0052】
可動軸13にかかる力F1は、一般にばね定数24aの逆力ばね24のばね力により動作寸法Sに応じて線形に変化するが、本実施形態では挿入状態aの初期位置と挿出状態bの最終位置との間で可動軸13が円弧軌跡で移動することにより可動軸13にかかる力F1は動作寸法Sに応じて曲線的に変化する。すなわち、挿入状態aの可動軸13にかかる力F1aから挿出状態bの可動軸13にかかる力F1bまで下方向(引出力が大きい方向)に湾曲し、全体として挿入状態aより挿出状態bが減少する曲線状特性となる。
【0053】
可動軸13が円弧軌跡で移動することにより、ばねリンク23と動作リンク22の角度θ1は挿入状態aの角度θ1a(約18°)から挿出状態bの角度θ1b(約57°)まで下方向(角度が小さい方向)に湾曲しながら広がる。同様に、ばねリンク23と主リンク21の角度θ2も挿入状態aの角度θ2aから挿出状態bの角度θ2bまで下方向(角度が小さい方向)に湾曲しながら広がる。
【0054】
このとき、角度θ1より角度θ2の比率が高くなり、可動軸13にかかる力F1は角度θ2の比率に連動して動作軸14にかかる力F2と主軸11にかかる力に配分される。動作軸14にかかる力F2は、挿入状態aから挿出状態bまで少し減少方向(引出力が小さい方向)に湾曲しながら、全体として挿入状態aより挿出状態bで緩やかに増加する特性となる。
【0055】
すなわち、角度θ1と角度θ2の角度比率の変化により挿入状態aから挿出状態bへ向かうに従い可動軸13にかかる力F1が減少する特性は、動作軸14にかかる力F2では緩やかに増加する特性(逆力)となり、力方向の変化が逆転し逆力が生まれる。
【0056】
固定したばね軸12と可動軸13の円弧軌跡および動作リンク22の軸間距離により、動作リンクと仮想スライダー線15aの角度θ3は、挿入状態aの最大角度θ3a(85°以下、本実施形態では約83°)から中間までほぼ線形に角度が減少し、中間から挿出状態bの最小角度θ3b(25°を超える角度、本実施形態では約29°)までは少し増加方向(角度が大きい方向)に湾曲しながら減少する。
【0057】
逆力F3は、動作軸14にかかる力F2と角度θ3の余弦値との積である。そのため、動作軸14にかかる力F2の少し減少方向に湾曲しながら緩やかに増加する特性が、少し増加方向に湾曲する角度θ3の余弦値との積により補正される。その結果、逆力F3は挿入状態aの逆力F3aから挿出状態bの逆力F3bに向かうに従い線形に引出力が大きくなる逆力特性となる。なお、動作軸14にかかる力F2により逆力F3の方が傾きが大きくなる。
【0058】
可動金具2において、逆力F3と可変真空コンデンサ7の操作力F4とが相殺されて合計操作力F5となり、操作中に力の方向が反転することがない一定の値の操作力を有する操作特性になる。
【0059】
挿入状態aから挿出状態bへの動作において、主リンク21の可動軸13は円弧軌跡を描く。ばね軸12と可動軸13間の寸法が挿入状態aの最短から挿出状態bの最長に変化し、ばね定数24aにより逆力ばね力による可動軸13にかかる力F1が挿入状態aより挿出状態bで減少する。
【0060】
最小ばね力F1b(挿出状態bにおける逆力ばね24が可動軸13にかかる力)は、動作軸14にかかる逆力F3bに影響し、逆力F3bは合計操作力F5に影響する。逆力ばね24のばね定数24aは、正のばね定数1aを有する機器(可変真空コンデンサ7)の動作寸法Sに対する操作力F4の増加の勾配(傾き)と、動作寸法Sに対する動作軸14の逆力F3の増加の勾配(傾き)と、が整合するように調整する。可変真空コンデンサ7の操作力F4の勾配と逆力F3の勾配が整合することにより合計操作力F5が一定値となる。
【0061】
正のばね定数を有する機器と組合せる逆力機構において、特許文献1の弾性機構は主副2種の負弾性部で構成し、互いに抗することにより逆力(負のばね定数を有する力)を得ている。それに対し、本実施形態は、リンクの回転角に応じた力の変化を利用し1種の負弾性部から逆力を得る機構としている。
【0062】
リンクの回転角に応じた力の変化を利用する1組のトグル機構において、動作リンク22とスライダー15の角度θ3の両端側(0°~90°の両端側)は入力に対して出力が急変するが、中間部分は出力が入力と同等以下で逆力(負のばね定数を有する力)特性となる。この特性に着目し、動作リンク22とスライダー15の角度θ3を25°~85°の範囲とし、角度25°側を挿出状態、最大逆力値、最小入力値とし、他方の角度85°側を挿入状態、最小逆力値、最大入力値とする。
【0063】
挿入状態aにおいて、主軸11から可動軸13への延長線上の位置にばね軸12を固定するとばねリンク23と主リンク21の角度θ2が一直線の180°となり逆力ばね力から可動軸13にかかる力F1が全て主軸11に加えられて動作軸14にかかる力F2は零となる。そして、挿入状態aにおいて、ばね軸12の固定位置を上方向へ移動すると動作軸14に対する力は減少し、ばね軸12の固定位置を下方向へ移動すると動作軸14に対する力は増加する。このように、ばね軸12を固定した位置により動作軸14にかかる力F2を調整する。
【0064】
前述した寸法16は、ばねリンク23と動作リンク22との角度θ1、ばねリンク23と主リンク21との角度θ2、および、動作リンク22とスライダー15の角度θ3に係る。ばね軸12を主軸11から可動軸13の延長線上の基点からスライダー15と平行方向に寸法16分下方に移動させて逆力F3を調整し、可変真空コンデンサ7の操作力F4と逆力F3との差である合計操作力F5が零以外の一定値となるようにする。換言すると、寸法16は合計操作力F5が零以外の一定値となるように設定する。
【0065】
機構の動作に隙間・ガタは必要なので、動作中の力の変化を予測して合計操作力F5の値をプラスマイナスいずれかの値に設定して、合計操作力F5が零にならないように、言い換えると零以外の値にする。これにより、機構の部品間は同一面で摺動することになり機構の動作に必要な隙間・ガタの影響が無くなり、動作が瞬時停滞して操作の精度が低下することを防ぐ。
【0066】
この逆力機構1を、正のばね定数を有する機器に組合せて、操作力特性を調整する。そして、図示省略した駆動源により直動操作棒3を操作することにより、逆力機構1を介して可動ロッド78、可動支持部77、可動電極76を軸方向Yに移動させて可変真空コンデンサ7の静電容量を希望値に操作する。
【0067】
以上示したように、本実施形態によれば、正のばね定数を有する機器と組合せる逆力機構において、1種の負弾性部からなる機構としたことにより、構成を簡素化し小型化できる。
【0068】
また、正のばね定数を有する機器に逆力機構を組み合わせることにより、高速操作に適するように操作力の絶対値を低減することができる。
【0069】
また、合計操作力F5の値を大きくした零以外の値としたことにより、操作指示に対する正確な出力が可能となり高精度に制御することが可能となる。
【0070】
さらに、動作リンク22とスライダー15の角度θ3を25°~85°の範囲としたことにより、出力が入力と同等以下で逆力特性とすることが可能となる。
【0071】
また、ばね軸12の固定位置を調整することにより、動作軸14に掛かる力と合計操作力F5を任意設定でき、線形の逆力特性を得ることができる。
【0072】
また、逆力F3と可変真空コンデンサ7の操作力F4の傾きを整合させることにより、合計操作力F5を一定の値にできる。
【0073】
「他の実施形態」
実施形態では、ばねリンク23に通した逆力ばね24について圧縮バネを用いたが、ばねリンク23を可動軸13よりばね軸12の反対側に延長し、延長部分(ばねリンク23のばね軸12よりも他端側)に引張ばねを用いてもよい。
【0074】
また、主軸11と動作軸14を結ぶ線から可動軸13が最も離れる挿入状態aにおいて、ばね軸12を主リンク21の主軸11から可動軸13への線の延長上の反対側、言い換えると主リンク21の主軸11と可動軸13との間に固定してもよい。ただし、この場合、ばねリンク23と動作リンク22の角度θ1、ばねリンク23と主リンク21の角度θ2、および、動作リンク22とスライダー15の角度θ3が変わり、角度θ3の余弦値との積などの補正ができず逆力機構の出力を線形にすることができない。そのため、合計操作力F5を一定値にすることはできない。しかし、合計操作力F5を零以外の値にすることは可能である。
【0075】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0076】
1…逆力機構、2…可動金具、2b…穴、2c…リニアブッシュ、3…直動操作棒、8…上板、9…下板、10…側板、11…主軸、12…ばね軸、13…可動軸、14…動作軸、15…スライダー、16…寸法、21…主リンク、22…動作リンク、23…ばねリンク、23a…長孔、24…逆力ばね、24a…バネ定数、7…可変真空コンデンサ、71…真空部、72…筒状体(セラミック管)、73…固定側導体、74…可動側導体、75…固定電極、76…可動電極、77…可動支持部、78…可動ロッド、79…主ベローズ、79a…バネ定数、81…取付具、θ1…ばねリンクと動作リンクの角度、θ2…ばねリンクと主リンクの角度、θ3…動作リンクとスライダーの角度、F1…可動軸にかかる力、F2…動作軸にかかる力、F3…逆力、F4…可変真空コンデンサの操作力、F5…合計操作力、S…動作寸法
【要約】
【課題】正のばね定数を有する機器と組み合わせる逆力機構において、構成を簡素化して小型化し、高速操作に適するように操作力の低減を図り、高精度制御に適するように合計操作力を零以外の値にする。
【解決手段】挿入状態において、主軸11から可動軸13への延長線上の基点から、スライダー15と平行に、合計操作力が零以外の一定値となるように設定された寸法を移動した位置にばね軸12を固定する。動作リンク22とスライダー15の動作角度を25°~85°の範囲とする。
【選択図】
図3