(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】商用店舗内消費型電力システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20231121BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20231121BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 120
H02J7/35 K
(21)【出願番号】P 2022157273
(22)【出願日】2022-09-30
【審査請求日】2023-07-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗田 了輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文俊
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-253952(JP,A)
【文献】特開2013-027163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統への接続ラインと、
前記接続ラインに接続され、商用店舗内に設置され、前記商用電力系統に連系される負荷と、
前記接続ラインに接続され、前記商用店舗に設置された再生可能エネルギー発電部と、前記再生可能エネルギー発電部の発電電力の少なくとも一部を充電、または前記商用電力系統から供給される電力を充電し、かつ前記負荷に対して放電可能な蓄電池と、を含むパワーコンディショナと、
前記再生可能エネルギー発電部の発電電力量を予測する発電電力量予測部と、前記負荷の消費電力量を予測する消費電力量予測部と、を含み、前記パワーコンディショナの動作を制御する制御部と、
前記商用店舗に設置されたPOSレジスタと、
を備え、前記商用電力系統に逆潮流する機能を持たない商用店舗内消費型電力システムであって、
前記負荷は、一時的に消費電力を大きくする可能性を有する負荷を含む、
前記再生可能エネルギー発電部の発電電力と前記蓄電池からの放電電力との合計電力と、前記商用電力系統から供給される電力とで、前記負荷の前記消費電力が賄われている場合において、
前記制御部は、
前記POSレジスタが処理する購買情報を取得し、
所定商品が購入されたことを示す前記購買情報を前記POSレジスタから取得すると、前記負荷の消費電力の少なくとも一部を賄うように前記蓄電池に対して放電電力を所定量増加するように制御する、
商用店舗内消費型電力システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記負荷の消費電力が、前記所定商品が購入された情報を取得した後の所定時間にわたり前記蓄電池が放電した所定量分増加しなかった場合、前記蓄電池に対して前記所定量増加させた放電を止めるように制御する、
請求項1に記載の商用店舗内消費型電力システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記蓄電池の放電状況を取得して、前記所定商品が購入される前の時点における前記蓄電池からの放電電力がゼロであれば、
前記蓄電池から放電を開始するように制御する、
請求項1または請求項2に記載の商用店舗内消費型電力システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記蓄電池の放電状況を取得して、前記所定商品が購入される前の時点における前記蓄電池からの放電電力がゼロでなければ、
前記蓄電池から放電電力を増加するように制御する、
請求項1または請求項2に記載の商用店舗内消費型電力システム。
【請求項5】
前記商用店舗は、コンビニエンスストアである、
請求項1または請求項2に記載の商用店舗内消費型電力システム。
【請求項6】
前記所定商品は、おにぎり、弁当、揚げ物の少なくとも1つを含む、
請求項5に記載の商用店舗内消費型電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過渡的に消費電力が大きくなる負荷を備えるコンビニ店舗等に対応する電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンビニエンスストア等の各種店舗に対するエネルギー利用支援装置が記載されている。特許文献1のエネルギー利用支援装置は、コンビニエンスストアにおける、各種機器の過去の稼働履歴、リアルタイムの電力系統からの買電電力量等から、ピーク電力を上げないように各種機器の運用スケジュールを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すような従来技術では、各種機器の消費電力は全て電力系統から供給されており、太陽光発電等の再生可能エネルギーを利用することや、蓄電池を利用していない。そして、特許文献1に示すような従来技術では、再生可能エネルギーの利用率を上げる構成や方法は記載されていない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、コンビニ店舗等において、買電電力量のピーク電力を抑制しながら、再生可能エネルギーの利用率を向上する商用店舗内消費型電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の商用店舗内消費型電力システムは、商用電力系統への接続ライン、負荷、パワーコンディショナ、制御部、および、POSレジスタを備え、商用電力系統に逆潮流する機能を持たない商用店舗内消費型電力システムである。
【0007】
負荷は、接続ラインに接続され、商用店舗内に設置され、商用電力系統に連系される。パワーコンディショナは、商用店舗に設置された再生可能エネルギー発電部と、再生可能エネルギー発電部の発電電力の少なくとも一部を充電、または商用電力系統から供給される電力を充電し、かつ負荷に対して放電可能な蓄電池とを含む。制御部は、再生可能エネルギー発電部の発電電力量を予測する発電電力量予測部と、負荷の消費電力量を予測する消費電力量予測部と、を含み、パワーコンディショナの動作を指示する。POSレジスタは、商用店舗に設置される。負荷は、一時的に消費電力を大きくする可能性を有する負荷を含む。
【0008】
再生可能エネルギー発電部の発電電力と蓄電池からの放電電力との合計電力と、商用電力系統から供給される電力とで、負荷の消費電力が賄われている場合において、制御部は、POSレジスタが処理する購買情報を取得し、所定商品が購入されたことを示す購買情報をPOSレジスタから取得すると、負荷の消費電力の少なくとも一部を賄うように蓄電池に対して放電電力を所定量増加するように制御する。
【0009】
この構成では、負荷の消費電力が一時的に大きくなっても、蓄電池から放電電力で賄われるので、商用電力系統から供給される電力が増加することが抑制される。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、負荷急変によって過渡的に重負荷になり、商用電力系統から不足電力を調達してしまうことによって、再生可能エネルギーの利用率が悪化することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る電力システムの構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図2(A)、
図2(B)、
図2(C)は、本発明の第1の実施形態に係る電力システムの具体的な制御の内容を説明する機能ブロック図である。
【
図3】
図3(A)、
図3(B)、
図3(C)は、従来技術を含む比較対象の電力システムの具体的な制御の内容を説明する機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る電力システムの電力制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5(A)、
図5(B)、
図5(C)は、本発明の第2の実施形態に係る電力システムの具体的な制御の内容を説明する機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る電力システムの電力制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る電力システムの電力制御方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る商用店舗内消費型電力システムについて、図を参照して説明する。なお、以下では、「商用店舗内消費型電力システム」を「電力システム」と称する。この電力システムは、コンビニエンスストア等の商用店舗に適用されるシステムであり、特に、一時的に消費電力が大きくなる負荷を備える商用店舗に適用されるシステムである。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る電力システムの構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、電力システム10は、パワーコンディショナ20、太陽光発電パネル30、負荷40、通信装置50、POSレジスタ60、電力系統ライン500、および、電流センサCTを備える。パワーコンディショナ20(
図1のPCS)は、PVコンバータ21(
図1のPVC)、双方向インバータ22(
図1のINV)、双方向DCDCコンバータ23(
図1のDCDCCONV)、蓄電池24、系統連系リレー25、および、マイコン29を備える。マイコン29が本発明の「制御部」に対応する。太陽光発電パネル30が本発明の「再生可能エネルギー発電部」に対応する。
【0014】
太陽光発電パネル30は、PVコンバータ21に接続される。PVコンバータ21は、双方向インバータ22の直流端子に接続される。また、PVコンバータ21および双方向インバータ22の直流端子は、双方向DCDCコンバータ23に接続される。双方向DCDCコンバータ23には、蓄電池24が接続される。
【0015】
双方向インバータ22の交流端子は、系統連系リレー25のPCS側端子に接続される。系統連系リレー25の商用電力系統側端子は、電力系統ライン500を通じて、商用交流電源(商用電力系統)に接続される。この電力系統ライン500には、電流センサCTが設置されている。
【0016】
マイコン29は、PVコンバータ21、双方向インバータ22、双方向DCDCコンバータ23、蓄電池24、および、系統連系リレー25に接続する。マイコン29は、これらに対して、パワーコンディショナとしての各種動作を行うための制御を行う。
【0017】
負荷40は、消費電力が大きな負荷を含む。消費電力が大きな負荷とは、例えば、1.5kW等の大電力を消費する電子レンジであり、定常的に消費電力が大きいものではなく(このときは待機電力)、所定のタイミング(例えば、弁当を温めるタイミング等)に一時的に消費電力が大きくなるものである。すなわち、負荷40は、負荷40の合計消費電力量を一時的に大きくする可能性を有する負荷を含む。
【0018】
負荷40は、電力系統ライン500における電流センサCTと系統連系リレー25との間の部分に接続され、電力系統ライン500を通じて電力供給される。
【0019】
通信装置50は、マイコン29、負荷40、POSレジスタ60に接続され、後述する所定の情報の送受信制御を行う。
【0020】
POSレジスタ60は、通信装置50に接続される。POSレジスタ60は、一般的な商品購入、会計に関する処理を行うとともに、特定商品の購入を検出すると、通信装置50を通じて、特定商品の購入情報をマイコン29に送信する。
【0021】
(定常的な電力制御)
上述の消費電力が大きな負荷の運転が行われていない定常時、マイコン29は、太陽光発電パネル30の発電電力および蓄電池24の放電電力の合計電力と、商用電力系統からの供給電力(買電電力)とを用いて、負荷40の消費電力を賄ように、パワーコンディショナ20の各機能部を制御する。
【0022】
この際、マイコン29は、太陽光発電パネル30の発電電力量を予測し、負荷40の消費電力量を予測する。マイコン29は、この予測に基づいて、商用電力系統からの供給電力量が所定時間当たりで予め契約した電力量を超えないように、さらには商用電力系統への逆潮流が発生しないように、蓄電池24の充電制御または放電制御を行う。この際、マイコン29は、電流センサCTの電流検出結果を用いることもできる。このように、マイコン29は、本発明の「発電電力量予測部」および「消費電力量予測部」を含む。
【0023】
(負荷で一時的に消費電力が大きくなるときの制御)
POSレジスタ60は、負荷40の消費電力が一時的に大きくなる可能性を有する商品(特定商品:例えば電子レンジで温める弁当90)の購入を検出すると、通信装置50を通じてこの購入情報をマイコン29に送信する。
【0024】
マイコン29は、この購入情報に基づいて、蓄電池24の放電電力を増加させる制御を行う。この際、マイコン29は、上述の負荷40の消費電力量の予測(予測増加量)を補うように、蓄電池24の放電電力を増加させる制御を行う。さらに、マイコン29は、逆潮流が生じない範囲で、蓄電池24の放電電力を増加させる制御を行う。
【0025】
これにより、この後、負荷40の消費電力が増加しても、この増加分は、蓄電池24の放電電力の増加量で賄われる。したがって、電力システム10は、商用電力系統からの供給電力(買電電力)を増加させることなく、負荷40の消費電力は、過不足無く賄われる。
【0026】
より具体的には、電力システム10は次の制御を行う。
図2(A)、
図2(B)、
図2(C)は、本発明の第1の実施形態に係る電力システムの具体的な制御の内容を説明する機能ブロック図である。
図2(A)は定常時、
図2(B)は、POSレジで特定商品を検出し、消費電力が大きな負荷の動作が始まる前、
図2(C)は、消費電力が大きな負荷が運転されているときを示す。なお、
図2(A)、
図2(B)、
図2(C)は、制御の説明に必要最小限の機能部のみを記載しており、他の機能部は記載を省略している(具体的な構成は
図1参照)。
【0027】
図2(A)に示すように、商用店舗の負荷40の消費電力量の合計20kWであり、太陽光発電パネル30の発電電力量が10kWである場合、マイコン29は、蓄電池24からの放電を行わず、商用電力系統から10kWの電力量の供給を受ける。
【0028】
これにより、マイコン29は、太陽光発電パネル30の発電電力量(10kW)と、商用電力系統からの供給電力(10kW)とによって、負荷40の消費電力量(20kW)を賄う。この結果、電力システム10は、再生可能エネルギーを用いて、商用電力系統からの買電電力を10kWに抑えながら、負荷40の消費電力量を賄うことができる。
【0029】
図2(B)に示すように、POSレジスタ60で特定商品(弁当90)の購入が検出されると、マイコン29は、負荷40の消費電力量の増加量(2kW)、言い換えれば、消費電力量が増加後の負荷40の消費電力量(22kW)を予測する。
【0030】
マイコン29は、増加量(2kW)を賄うように、蓄電池24の放電電力量を2kWに制御する。これにより、蓄電池24は、2kWで放電する。したがって、パワーコンディショナ20は、太陽光発電パネル30の発電電力量10kWと蓄電池24の放電電力2kWとの合計電力量12kWを負荷40に供給する。
【0031】
ここで、消費電力が大きな負荷はまだ運転開始されておらず、負荷40の消費電力量は20kWである。このため、負荷40には、商用電力系統からの8kWが供給される。これにより、太陽光発電パネル30の発電電力量(10kW)、蓄電池24の放電電力(2kW)、商用電力系統からの供給電力(8kW)によって、負荷40の消費電力量(20kW)が賄われる。
【0032】
図2(C)に示すように、例えば、弁当90を電子レンジで急速に温める場合のように、消費電力が大きな負荷の運転が開始されると、負荷40の消費電力量は22kWになる。この場合、負荷40には、商用電力系統からの10kWが供給される。これにより、太陽光発電パネル30の発電電力量(10kW)、蓄電池24の放電電力(2kW)、商用電力系統からの供給電力(10kW)によって、負荷40の消費電力量(22kW)が賄われる。
【0033】
このように、電力システム10は、消費電力が大きな負荷が運転されても、商用電力系統からの供給電力量(買電電力量)は、10kWを超えない。そして、電力システム10は、供給電力の増加を抑えるために、蓄電池24からの放電電力を用いる。蓄電池24の蓄電電力は、例えば、太陽光発電パネル30の発電電力の余剰電力等によって賄われる。
【0034】
一般的に「ピークカット制御」と呼ばれるものは、所定時間(例えば30分)単位での電力量(kWh)を基準にして電力会社と契約しており、この閾値を超えると高額な料金を支払う必要があるため、所定時間単位内の商用電力系統からの購入電力量を閾値以下に抑えるように制御するものであり、本発明は負荷急変に伴う過渡的な電力変動であるため、即座に電力料金に影響を与えるものではない。しかし、蓄電池の蓄電容量が十分あるにも関わらず、負荷急変によって過渡的に重負荷になり、商用電力系統から不足電力分を調達してしまうことで、再生可能エネルギー利用率を悪化させてしまうことを防ぐことができる。
【0035】
なお、本発明の構成、制御を行わない場合、次のようになる。
図3(A)、
図3(B)、
図3(C)は、従来技術を含む比較対象の電力システムの具体的な制御の内容を説明する機能ブロック図である。
図3(A)は定常時、
図3(B)は、消費電力が大きな負荷が運転開始時、
図3(C)は、消費電力が大きな負荷の運転開始から所定時間後を示す。なお、
図2(A)、
図2(B)、
図2(C)は、制御の説明に必要最小限の機能部のみを記載しており、他の機能部は記載を省略している(具体的な構成は
図1参照)。比較対象の電力システムは、上述の本発明の構成および制御を行わない電力システムである。
【0036】
図3(A)のとき、すなわち、定常時は、
図2(A)と同様であり、説明は省略する。
【0037】
図3(B)に示すように、例えば、弁当90を電子レンジで急速に温める場合のように、消費電力が大きな負荷の運転が開始されると、負荷40の消費電力量は22kWになる。この場合、商用電力系統から負荷40への供給電力量は、10kWから12kWに増加する。これにより、太陽光発電パネル30の発電電力量(10kW)、商用電力系統からの供給電力(12kW)によって、負荷40の消費電力量(22kW)が賄われる。
【0038】
このように、比較構成では、消費電力が大きな負荷が運転されると、商用電力系統からの供給電力量(買電電力量)は、12kWを超えてしまう。
【0039】
図3(C)に示すように、マイコン29は、電流センサCTの検知電流によって、供給電力量の増加を検知する。マイコン29は、増加量(2kW)を賄うように、蓄電池24の放電電力量を2kWに制御する。これにより、蓄電池24は、2kWで放電する。したがって、パワーコンディショナ20は、太陽光発電パネル30の発電電力量10kWと蓄電池24の放電電力2kWとの合計電力量12kWを負荷40に供給する。
【0040】
パワーコンディショナ20からの供給電力量が12kWになることで、商用電力系統からの供給電力は10kWに低下する。これにより、太陽光発電パネル30の発電電力量(10kW)、蓄電池24の放電電力(2kW)、商用電力系統からの供給電力(10kW)によって、負荷40の消費電力量(22kW)が賄われる。
【0041】
以上のように、比較構成では、負荷40の消費電力量の増加に対して、蓄電池24からの放電電力による負荷40への電力アシストが間に合わない。これにより、比較構成では、蓄電池の蓄電容量が十分ある場合であっても、負荷急変による過渡的な電力変動分を商用電力系統から調達してしまい、再生可能エネルギーの利用率を悪化させてしまう。
【0042】
このように、本願発明の電力システム10は、比較構成と比較しても、負荷急変によって過渡的に重負荷になり、商用電力系統から不足電力を調達してしまうことによって再生可能エネルギーの利用率が悪化することを防ぐことができる。
【0043】
(電力制御方法)
図4は、本発明の第1の実施形態に係る電力システムの電力制御方法の一例を示すフローチャートである。なお、
図4に示す各処理の具体的な内容は上述しているので、ここでは必要箇所を除いて、各処理の具体的な説明を省略する。
【0044】
マイコン29は、定常時(消費電力の大きな負荷が運転していない状態)の制御を行う(S11)。
【0045】
マイコン29は、POSレジスタ60から特定商品の購入情報を取得すると(S12:YES)、蓄電池24からの放電開始の制御を行う(S13)。なお、マイコン29は、POSレジスタ60から特定商品の購入情報を取得しなければ(S12:NO)、定常時の制御を継続する。
【0046】
この後、消費電力量の大きな負荷の運転が開始される(S14)。このように、電力システム10は、消費電力量の大きな負荷の運転前に、蓄電池24から放電を開始する。これにより、消費電力量の大きな負荷が運転開始されるときには、負荷40に蓄電池24からの放電電力も供給されている。
【0047】
なお、マイコン29は、消費電力量の大きな負荷の運転の終了を検知すると(S15)、蓄電池24からの放電を停止し(S16)、定常時の制御に戻る。
【0048】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る商用店舗内消費型電力システムについて、図を参照して説明する。第2の実施形態に係る電力システム10Aは、第1の実施形態に係る電力システム10と同様の構成を備えており、マイコン29で行う制御において異なる。電力システム10Aの他の点については、電力システム10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0049】
概略的には、電力システム10Aは、蓄電池24からの放電が行われている状態において、負荷の消費電力量が増加する場合に対応する。
【0050】
図5(A)、
図5(B)、
図5(C)は、本発明の第2の実施形態に係る電力システムの具体的な制御の内容を説明する機能ブロック図である。
図5(A)は定常時、
図5(B)は、POSレジで特定商品を検出し、消費電力が大きな負荷の動作が始まる前、
図5(C)は、消費電力が大きな負荷が運転されているときを示す。なお、
図5(A)、
図5(B)、
図5(C)は、制御の説明に必要最小限の機能部のみを記載しており、他の機能部は記載を省略している(具体的な構成は
図1参照)。
【0051】
図5(A)に示すように、電力システム10Aは、商用店舗の負荷40の消費電力量の合計20kWであり、太陽光発電パネル30の発電電力量が5kWであり、蓄電池24の放電電力が5kWであると、商用電力系統から10kWの電力量の供給を受ける。
【0052】
これにより、太陽光発電パネル30の発電電力量(5kW)と、蓄電池24からの放電電力量(5kW)と、商用電力系統からの供給電力(10kW)とによって、負荷40の消費電力量(20kW)を賄う。この結果、電力システム10Aは、再生可能エネルギーを用いて、商用電力系統からの買電電力を10kWに抑えながら、負荷40の消費電力量を賄うことができる。
【0053】
図5(B)に示すように、POSレジスタ60で特定商品(弁当90)の購入が検出されると、マイコン29は、負荷40の消費電力量の増加量(2kW)、言い換えれば、消費電力量が増加後の負荷40の消費電力量(22kW)を予測する。
【0054】
マイコン29は、増加量(2kW)を賄うように、蓄電池24の放電電力量を5kWから7kWに増加するように制御する。これにより、蓄電池24は、7kWで放電する。したがって、パワーコンディショナ20は、太陽光発電パネル30の発電電力量5kWと蓄電池24の放電電力7kWとの合計電力量12kWを負荷40に供給する。
【0055】
ここで、消費電力が大きな負荷はまだ運転開始されておらず、負荷40の消費電力量は20kWである。このため、負荷40には、商用電力系統からの8kWが供給される。これにより、太陽光発電パネル30の発電電力量(5kW)、蓄電池24の放電電力(7kW)、商用電力系統からの供給電力(8kW)によって、負荷40の消費電力量(20kW)が賄われる。
【0056】
図5(C)に示すように、例えば、弁当90を電子レンジで急速に温める場合のように、消費電力が大きな負荷の運転が開始されると、負荷40の消費電力量は22kWになる。この場合、負荷40には、商用電力系統からの10kWが供給される。これにより、太陽光発電パネル30の発電電力量(5kW)、蓄電池24の放電電力(7kW)、商用電力系統からの供給電力(10kW)によって、負荷40の消費電力量(22kW)が賄われる。
【0057】
このように、電力システム10Aは、消費電力が大きな負荷が運転されても、商用電力系統からの供給電力量(買電電力量)は、10kWを超えない。そして、電力システム10Aは、供給電力の増加を抑えるために、蓄電池24からの放電電力の増加制御を用いる。蓄電池24の蓄電電力は、例えば、太陽光発電パネル30の発電電力の余剰電力等によって賄われる。
【0058】
したがって、電力システム10Aは、商用電力系統からの供給電力量(買電電力量)のピーク電力を抑制しながら、再生可能エネルギーの利用率を向上できる。
【0059】
(電力制御方法)
図6は、本発明の第2の実施形態に係る電力システムの電力制御方法の一例を示すフローチャートである。なお、
図6に示す各処理の具体的な内容は上述しているので、ここでは必要箇所を除いて、各処理の具体的な説明を省略する。
【0060】
マイコン29は、蓄電池24からの放電電力を用いながら定常時(消費電力の大きな負荷が運転していない状態)の制御を行う(S11A)。
【0061】
マイコン29は、POSレジスタ60から特定商品の購入情報を取得すると(S12:YES)、蓄電池24からの放電電力増加の制御を行う(S13)。なお、マイコン29は、POSレジスタ60から特定商品の購入情報を取得しなければ(S12:NO)、放電電力を増加させず、定常時の制御を継続する。
【0062】
この後、消費電力量の大きな負荷の運転が開始される(S14)。このように、電力システム10は、消費電力量の大きな負荷の運転前に、蓄電池24から放電を開始する。これにより、消費電力量の大きな負荷が運転開始されるときには、負荷40に蓄電池24において増加された放電電力も供給されている。
【0063】
なお、マイコン29は、消費電力量の大きな負荷の運転の終了を検知すると(S15)、蓄電池24からの放電電力を低下し(S16A)、定常時の制御に戻る。
【0064】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る商用店舗内消費型電力システムについて、図を参照して説明する。第3の実施形態に係る電力システムは、第1の実施形態に係る電力システム10と同様の構成を備えており、マイコン29で行う制御において異なる。第3の実施形態に係る電力システムの他の点については、電力システム10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0065】
概略的には、第3の実施形態に係る電力システムは、負荷40の消費電力量の遷移に基づいて蓄電池24の放電を制御する。
【0066】
(電力制御方法)
図7は、本発明の第3の実施形態に係る電力システムの電力制御方法の一例を示すフローチャートである。
【0067】
マイコン29は、蓄電池24からの放電電力増加の制御を行う(S13)と、負荷40の消費電力量を経時的に観測する。
【0068】
マイコン29は、負荷40の消費電力量の増加(消費電力量の大きな負荷の運転開始)を検出すると(S14B:YES)、蓄電池24の放電電力を維持する。
【0069】
一方、マイコン29は、負荷40の消費電力量の増加が所定時間にわたり無い(消費電力量の大きな負荷が運転されない)ことを検出すると(S14B:NO)、蓄電池24からの放電を停止し(S16)、定常時の制御に戻る。
【0070】
これにより、電力システムは、蓄電池24の放電電力を抑制できる。
【0071】
なお、上述の各実施形態の構成および制御は、適宜組み合わせることができ、それぞれの組み合わせに応じた作用効果を奏することができる。
【0072】
また、上述の説明では、負荷を電子レンジとして、弁当90を例に示したが、おにぎりでもよいし、負荷も電子レンジだけに限らず、揚げ物を作る際のフライヤー等、コンビニエンスストア等の商用店舗の消費電力を一時的に増加させる可能性を有するものであれば、上述の電力システムを適用できる。
【符号の説明】
【0073】
20:パワーコンディショナ
21:PVコンバータ
22:双方向インバータ
23:双方向DCDCコンバータ
24:蓄電池
25:系統連系リレー
29:マイコン
30:太陽光発電パネル
40:負荷
50:通信装置
60:POSレジスタ
90:弁当
500:電力系統ライン
【要約】
【課題】買電電力量のピーク電力を抑制しながら、再生可能エネルギーの利用率を向上する。
【解決手段】
負荷40は、一時的に消費電力を大きくする可能性を有する負荷を含む。太陽光発電パネル30の発電電力と蓄電池24からの放電電力との合計電力と、商用電力系統から供給される電力とで、負荷40の消費電力が賄われている場合において、マイコン29は、POSレジスタ60が処理する購買情報を取得し、所定商品が購入されたことを示す購買情報をPOSレジスタ60から取得すると、負荷40の消費電力の少なくとも一部を賄うように蓄電池24に対して放電電力を所定量増加するように制御する。
【選択図】
図1