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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20231121BHJP
   B66C 13/00 20060101ALI20231121BHJP
   B66C 23/36 20060101ALI20231121BHJP
   B66C 23/88 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B60T7/12 C
B66C13/00 D
B66C23/36 Z
B66C23/88 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022197048
(22)【出願日】2022-12-09
(62)【分割の表示】P 2018240195の分割
【原出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2023036670
(43)【公開日】2023-03-14
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】谷井 悟
(72)【発明者】
【氏名】津田 和彰
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-247572(JP,A)
【文献】特開2018-24500(JP,A)
【文献】特開2003-238077(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105741(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/38183(WO,A1)
【文献】特開2016-218629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12
B66C 13/00
B66C 23/36
B66C 23/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を有する車体と、
上記車体の前端よりも前方に突出するブームと、
上記車体の前方の障害物を検出可能なセンサと、
上記車輪に制動力を加えるブレーキ装置と、
閾値を記憶するメモリを有するコントローラと、を備え、
上記コントローラは、
上記センサが検出した障害物の最下点の地面からの高さが上記閾値未満であるか否かを判断する第1判断処理と、
上記最下点の地面からの高さが上記閾値未満であることに基づいて上記ブレーキ装置を駆動させる停止処理と、を実行する、作業車。
【請求項2】
車速を検出する速度センサを更に備え、
上記コントローラは、
上記速度センサが検出した車速と、上記センサが検出した検出値とに基づいて、上記障害物が停止障害物であるか否かを判断する第2判断処理を更に実行し、
上記停止障害物であると判断したことに基づいて上記停止処理を実行する、請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
停止解除ボタンを更に備え、
上記コントローラは、
上記停止解除ボタンが操作されたことに基づいて、上記停止処理を解除する解除処理を更に実行する、請求項1に記載の作業車。
【請求項4】
上記第2判断処理は、単位時間当たりの上記障害物までの距離の変化量が示す当該障害物の接近速度と、上記車速との差が、上記メモリに記憶された閾値速度の範囲内であることに基づいて、上記障害物が上記停止障害物であると判断する、請求項2に記載の作業車。
【請求項5】
車輪を有する車体と、
上記車体の前端よりも前方に突出するブームと、
上記車体の前方の障害物を検出可能なセンサと、
スピーカと、
閾値を記憶するメモリを有するコントローラと、を備え、
上記コントローラは、
上記センサが検出した障害物の最下点の地面からの高さが上記閾値未満であるか否かを判断する第1判断処理と、
上記最下点の地面からの高さが上記閾値未満であることに基づいて上記スピーカに音声を出力させる報知処理と、を実行する、作業車。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行時において車体の前端より前方に突出するブームを備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
起伏可能なブームを備えた作業車がある。ブームは、作業車の走行時において倒伏されており、その先端部は、車体の前端より前方に突出している。
【0003】
ところで、特許文献1は、車両の前方を検出するセンサと、ブレーキ制御システムとを搭載した車両を開示する。ブレーキ制御システムは、センサが検出した車両の前方の障害物に応じて、車両のブレーキの動作を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-39303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の発明者は、ブームを備えた作業車においては、通常の車両では生じない問題が生じ得る可能性があることに気付いた。具体的には、ブームを備えた作業車が左折及び右折のために、信号の無い交差点等に進入すると、他の車両の運転手が、作業車の車体の前端から前方に突出するブームに気付かずに側方から直進し、当該他の車両がブームの先端部に接触してしまうおそれが生じるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、交差点等への進入時において、ブームの先端部への他の車両の接触を抑制可能な手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る作業車は、車輪を有する車体と、上記車体の前端よりも前方に突出するブームと、上記ブームの先端部に応じた位置に設けられ、当該先端部の側方の障害物を検出するセンサと、上記車輪に制動力を加えるブレーキ装置と、上記センサから入力された検出データに基づいて、上記ブレーキ装置を駆動するコントローラと、を備える。
【0008】
コントローラは、ブームの先端部に設けられてブームの先端部の側方の障害物を検出するセンサから入力された検出データに基づいて、ブレーキ装置を駆動する。コントローラは、例えば、ブームの先端部に向かって側方から直進する車両をセンサが検出すると、ブレーキ装置を駆動させて車体を停止させる。したがって、本発明の作業車は、交差点等への進入時において、ブームの先端部への他の車両の接触を抑制することができる。
【0009】
(2) 上記コントローラは、上記検出データに基づいて、検出した障害物が上記ブームの先端部に近づいているか否かを判断し、近づいていると判断したことに応じて、上記ブレーキ装置を駆動してもよい。
【0010】
コントローラは、例えば、センサが検出した障害物が停止しているか遠ざかる場合は、ブレーキ装置を駆動させず、センサが検出した障害物がブームの先端部に近づいている場合に、ブレーキ装置を駆動させる。したがって、本発明の作業車は、他の車両がブームの先端部に接触するおそれがある場合にブレーキ装置を駆動させて車体を停止させることができる。すなわち、本発明の作業車は、車体を適切に停止させることができる。
【0011】
(3) 上記コントローラは、メモリを備えていてもよい。上記コントローラは、上記検出データに基づいて、検出した障害物の検出高さが上記メモリに記憶された第1閾値以上であるか否かを判断し、上記検出高さが上記第1閾値以上であることに応じて、上記ブレーキ装置を駆動する。
【0012】
コントローラは、検出した障害物が、ブームと接触しない高さのオートバイクや人や自動車である場合、ブレーキ装置を駆動させず、検出した障害物が、ブームと接触する高さの自動車等である場合、ブレーキ装置を駆動させる。したがって、本発明の作業車は、さらに適切に車体を停止させることができる。
【0013】
(4) 上記コントローラは、メモリを備えていてもよい。上記コントローラは、上記検出データに基づいて、検出した障害物までの検出距離が上記メモリに記憶された閾値距離未満であるか否かを判断し、上記検出距離が上記閾値距離未満であることに応じて、上記ブレーキ装置を駆動させる。
【0014】
コントローラは、センサが検出した障害物までの検出距離が閾値距離未満であることに応じて、ブレーキ装置を駆動する。したがって、本発明の作業車は、車体をさらに適切に停止させることができる。
【0015】
(5) 上記コントローラは、上記センサが障害物を検出しなくなったことと、上記センサが検出した障害物が離れていくこととの少なくとも一方に応じて、上記ブレーキ装置の駆動を停止してもよい。
【0016】
コントローラは、センサが障害物を検出しなくなり、或いは、障害物が車体から離れていくと、ブレーキ装置の駆動を停止して、車体を走行可能にする。したがって、ブレーキ装置が不必要に駆動されることが防止される。その結果、本発明の作業車の使い勝手が良くなる。
【0017】
(6) 本発明に係る作業車は、報知装置をさらに備えていてもよい。上記コントローラは、上記ブレーキ装置を駆動させると判断したことに応じて、上記報知装置に報知させる。
【0018】
ブレーキ装置が駆動された後に、或いはブレーキ装置が駆動される前に、報知装置が報知を行う。したがって、センサが障害物を検知して車体が停止されたこと、或いはセンサが障害物を検知して車体が停止されることを運転手に容易に認識させることができる。
【0019】
(7) 本発明に係る作業車は、上記車体の前方の障害物を検出可能なセンサを備えていてもよい。上記コントローラは、メモリを備える。上記コントローラは、上記センサが検出した上記車体の前方の障害物の最下点の高さ位置が、上記メモリに記憶された第2閾値未満であることに応じて、上記ブレーキ装置を駆動する
【0020】
コントローラは、例えば、高架や陸橋など、センサが検知した車体前方の障害物がブームに接触すると判断すると、ブレーキ装置を駆動させて車体を停止させる。したがって、本発明の作業車は、高架等の障害物とブームとの接触を防止して安全に走行することもできる。
【0021】
(8) 本発明に係る作業車は、車体と、上記車体の前端よりも前方に突出するブームと、上記ブームの先端部に応じた位置に設けられ、当該先端部の側方の障害物を検出するセンサと、報知装置と、上記センサから入力された検出データに基づいて、上記報知装置に報知を行わせるコントローラと、を備える。
【0022】
コントローラは、ブームの先端部に設けられてブームの先端部の側方の障害物を検出するセンサから入力された検出データに基づいて、報知装置に報知を行わせる。報知装置は、例えば、スピーカや回転灯やディスプレイなどである。コントローラは、例えば、ブームの先端部に向かって側方から直進する車両をセンサが検出すると、報知装置に報知を行わせ、作業車の運転手や、作業者に接近する障害物(車両)の運転手に報知を行う。したがって、本発明の作業車は、交差点等への進入時において、ブームの先端部への他の車両の接触を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る作業車は、交差点等への進入時において、ブームの先端部への他の車両の接触を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、第1実施形態に係るクレーン車10の斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係るクレーン車10の模式的な平面図である。
図3図3は、第1実施形態に係るクレーン車10の機能ブロック図である。
図4図4は、ブレーキ制御処理のフローチャートである。
図5図5は、変形例に係るクレーン車10の模式的な平面図である。
図6図6は、変形例に係るクレーン車10の機能ブロック図である。
図7図7は、変形例におけるブレーキ制御処理のフローチャートである。
図8図8は、変形例に係るクレーン車10の模式的な平面図である。
図9図9は、第2実施形態に係るクレーン車10の機能ブロック図である。
図10図10は、第2実施形態における報知処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、以下で説明される実施形態は、本発明の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは、言うまでもない。
【0026】
[第1実施形態]
【0027】
図1は、本実施形態に係るクレーン車10を示す。クレーン車10は、本発明の「作業車」の一例である。ただし、作業車は、クレーン車10に限られない。作業車は、トラッククレーンなど、倒伏可能であって、かつ走行時において先端が車体の前端より前方に突出するブームを備えていればよい。
【0028】
クレーン車10は、走行体11と、走行体11に搭載されたクレーン装置12及びキャビン13と、を主に備える。
【0029】
走行体11は、車体20と、不図示の車軸及び車輪21と、不図示のエンジンと、バッテリ24(図3)と、不図示の油圧装置と、を備える。
【0030】
車軸は、車体20に回転可能に支持されている。車輪21は、車軸の両端に保持されている。エンジンは、車軸を回転駆動し、車軸を介して車輪21を回転させる。また、エンジンは、バッテリ24(図3)を充電する。さらにまた、エンジンは、油圧装置が備える油圧ポンプを駆動させる。油圧ポンプは、所定圧力の作動油を吐出し、後述の旋回モータ等を駆動する。
【0031】
車体20は、図1が示すように、車体20の姿勢を安定させる前アウトリガ31及び後アウトリガ32を備える。
【0032】
前アウトリガ31は、車体20の前部に設けられている。前アウトリガ31は、外筒と、左右一対の内筒と、アウトリガシリンダと、左右一対のジャッキシリンダとを備える。外筒は、車体20の幅方向に沿って延びている。内筒は、外筒に内挿されており、車体20の幅方向にスライド可能である。アウトリガシリンダは、油圧装置によって作動油を供給されて伸縮し、内筒をスライドさせる。ジャッキシリンダは、各内筒の先端にそれぞれ固定されている。ジャッキシリンダは、油圧装置によって作動油を供給され、上下方向において伸縮する。
【0033】
後アウトリガ32は、車体20の後部に設けられている。後アウトリガ32は、前アウトリガ31と同様の構成であり、外筒、左右一対の内筒、アウトリガシリンダ、及び左右一対のジャッキシリンダを備える。
【0034】
キャビン13は、図1が示すように、旋回台41に搭載されている。キャビン13は、クレーン車10の運転を行う運転装置17(図3)と、クレーン装置12の操縦を行う操縦装置18(図3)と、を有する。すなわち、クレーン車10は、いわゆるラフテレーンクレーンであって、クレーン車10の運転及びクレーン装置12の操縦が1つのキャビン13で行われる作業車である。但し、クレーン車10は、運転装置17を有するキャビンと、操縦装置18を有するキャビンとの2つのキャビンを備えたオールテレーンクレーンであってもよい。
【0035】
また、キャビン13は、操作状況や、後述のカメラ46、47が撮影した映像を表示するディスプレイ67(図3)を備える。ディスプレイ67は、キャビン13内において、運転席に着座した運転手が視認し易い位置に設けられている。ディスプレイ67は、不図示のケーブルによって、後述のコントローラ60(図3)と接続されている。ディスプレイ67は、コントローラ60から入力された画像データを表示する。
【0036】
また、キャビン13は、不図示の制御ボックスを有する。制御ボックスは、制御基板を収容する。制御基板は、マイクロコンピュータや抵抗やコンデンサやダイオードや種々のICを実装されており、図3が示すコントローラ60及び電源回路65を構成している。また、音声を出力するスピーカ66が制御基板に実装されている。スピーカ66は、コントローラ60から入力された音声信号に応じた音声を出力する。スピーカ66及びディスプレイ67は、本発明の「報知装置」の一例である。コントローラ60や電源回路65については、後述される。
【0037】
クレーン装置12は、図1が示すように、車体20に旋回可能に支持された旋回台41と、旋回台41に支持されたブーム42と、を備える。ブーム42は、基端ブーム43、単一又は複数の中間ブーム44、及び先端ブーム45を有する。基端ブーム43、中間ブーム44、及び先端ブーム45は、入れ子状に配置されており、ブーム42は、伸縮可能である。基端ブーム43は、旋回台41に起伏可能に支持されている。すなわち、ブーム42は、起伏可能、かつ、伸縮可能である。
【0038】
ブーム42は、クレーン車10の走行時において、縮小かつ倒伏されている。以下では、走行時におけるブーム42の姿勢を格納姿勢として説明がされる。図1は、ブーム42が格納姿勢である状態のクレーン車10を示す。格納姿勢におけるブーム42の先端部は、車体20の前端よりも前方に突出している。
【0039】
クレーン装置12は、旋回モータと、ブーム42を起伏させる起伏シリンダと、ブーム42を伸縮させる伸縮シリンダと、をさらに備える。
【0040】
旋回モータは、車体20に設けられている。旋回モータは、上述の油圧装置から作動油を供給されて回転し、既知のギアを介して旋回台41を旋回させる。
【0041】
起伏シリンダは、旋回台41に設けられている。伸縮シリンダは、ブーム42に設けられている。起伏シリンダ及び伸縮シリンダは、油圧装置から作動油を供給され、伸縮する。伸縮する起伏シリンダは、ブーム42を起伏させる。伸縮する伸縮シリンダは、ブーム42を伸縮させる。
【0042】
ジブ14がブーム42に装着されている。ジブ14は、クレーン車10が走行する際には、ブーム42の側面(図1に示す例では右側面)に装着され、クレーン装置12が操作される際には、ブーム42の先端部に装着される。但し、ジブ14の有無は任意である。
【0043】
クレーン車10は、交差点への進入時などにおいて、他の車両がブーム42の先端に接触することを防止するシステムを有する。当該システムは、走行体11が有するブレーキ装置70と、左カメラ46及び右カメラ47と、コントローラ60及び電源回路65とによって構成される。以下、詳しく説明がされる。
【0044】
ブレーキ装置70は、ブレーキ部材71と、ブレーキ部材71を動作させる駆動装置72とを備える。
【0045】
ブレーキ部材71は、車輪21や車軸に直接或いは間接的に負荷(制動力)を加えて車輪21や車軸の回転を抑制し、或いは制止する部材である。ブレーキ部材71は、例えば、いわゆるディスクブレーキが有するブレーキパッドや、いわゆるドラムブレーキが有するシューである。ただし、ブレーキ部材71は、車輪21や車軸の回転を抑制及び制止可能であれば、ブレーキパッドやシューに限られない。
【0046】
駆動装置72は、ブレーキ部材71をディスクやドラムに押し当てて車輪21や車軸の回転を抑制する。駆動装置72は、例えば、油圧によって動作する油圧シリンダや、油圧モータや、空気圧によって動作する空気圧シリンダや、電動モータや、電動シリンダなどのアクチュエータである。また、駆動装置72は、磁界を発生させる電磁石であってもよい。駆動装置72は、発生させた磁界により、磁性体を少なくとも一部に有するブレーキ部材71をディスクやドラムに押し当てる。
【0047】
駆動装置72が油圧シリンダや油圧モータである場合、コントローラ60は、油圧装置が有する電磁弁に制御信号を入力することにより、駆動装置72の駆動を制御する。また、駆動装置72が電動モータや電動シリンダである場合、コントローラ60は、駆動装置72が有するスイッチング素子に制御信号を入力することにより、駆動装置72の駆動を制御する。また、駆動装置72が電磁石である場合、駆動装置72は、励磁コイルを有する。当該励磁コイルは、スイッチング素子を有する駆動回路によって通電される。コントローラ60は、駆動回路のスイッチング素子に制御信号を入力することによって、駆動装置72の駆動を制御する。すなわち、駆動装置72は、コントローラ60によって駆動を制御される。コントローラ60は、制御信号を出力することにより、ブレーキ部材71をディスクやドラムに押し当てて、車輪21を停止させる。
【0048】
なお、ブレーキ部材71は、駆動装置72に加え、キャビン13に設けられた不図示のブレーキペダルに連動してディスクやドラムに押し当てられてもよい。すなわち、ブレーキ部材71は、コントローラ60によって自動でディスクやドラムに押し当てられ、かつ、運転手によって手動でディスクやドラムに押し当てられる。
【0049】
図3が示す左カメラ46及び右カメラ47(以下、カメラ46、47とも記載する)は、撮像素子を有しており、撮像(撮影)を行って画像データを生成して出力する。カメラ46、47は、不図示のケーブルによって電源回路65及びコントローラ60(図3)と接続されている。カメラ46、47は、電源回路65から電力を供給されて駆動し、コントローラ60から制御信号を入力されて撮像を行う。カメラ46、47が出力した画像データは、ケーブルを通じてコントローラ60に入力される。画像データは、本発明の「検出データ」の一例である。
【0050】
カメラ46、47は、図2が示すように、ブーム42の先端部に設けられている。具体的には、左カメラ46は、先端ブーム45の先端部の左側面に固定されている。左カメラ46のレンズは、車体20の左方を向く。すなわち、左カメラ46は、ブーム42の先端部の左方を撮像する。右カメラ47は、先端ブーム45の先端部の右側面に固定されている。右カメラ47のレンズは、車体20の右方を向く。すなわち、右カメラ47は、ブーム42の先端部の右方を撮像する。
【0051】
カメラ46、47は、オートフォーカス機能を実現する測距センサ及びモータを有している。測距センサは、超音波センサやレーザセンサなどであり、障害物(被写体)までの距離を検出し、検出した距離を示す距離データを出力する。モータは、レンズなどを移動させ、焦点距離を調整する。カメラ46、47は、測距センサが出力した距離データが示す距離と焦点距離とが同じ距離になるようにモータを駆動させる。また、カメラ46、47は、撮像によって生成した画像データとともに、距離データを出力する。出力された距離データは、ケーブルを通じてコントローラ60に入力される。カメラ46、47は、本発明の「センサ」に相当する。距離データは、本発明の「検出データ」の一例である。
【0052】
図3が示す電源回路65は、ディスプレイ67やカメラ46、47や駆動装置72に供給する電力を生成する回路である。電源回路65は、例えばDC-DCコンバータである。電源回路65は、バッテリ24から供給された直流電圧を、安定した所定の電圧値の直流電圧に変換して出力する。電源回路65は、例えば、バッテリ24から供給された12Vや24V等の直流電圧を、3.3Vや5Vや12V等の安定した直流電圧に変換して出力する。電源回路65は、例えば、スイッチング素子を有するスイッチングレギュレータである。コントローラ60は、制御信号を電源回路65のスイッチング素子に入力することにより、或いは電源回路65の出力端とディスプレイ67やカメラ46、47との間に設けられたスイッチをオンオフさせる信号を出力することにより、ディスプレイ67やカメラ46、47の駆動を制御する。
【0053】
コントローラ60は、中央演算処理装置であるCPU61と、ROM62と、RAM63と、メモリ64と、を備える。
【0054】
ROM62は、オペレーションシステムであるOS51と、制御プログラム52とを記憶する。制御プログラム52は、アドレスに記述された命令をCPU61が実行することにより、実行される。制御プログラム52は、後述のブレーキ制御処理を実行する。
【0055】
RAM63は、制御プログラム52の実行に用いられる。メモリ64は、制御プログラム52の実行に必要なデータを記憶する。具体的には、メモリ64は、閾値距離及び第1閾値を記憶する。
【0056】
[ブレーキ制御処理]
【0057】
制御プログラム52は、カメラ46、47から入力された画像データに基づいて駆動装置72の駆動を制御するブレーキ制御処理を実行する。以下では、制御プログラム52が実行する処理は、コントローラ60が実行する処理として記載される。
【0058】
コントローラ60は、図4が示すように、クレーン車10が走行中か否かを判断し(S11)、クレーン車10が走行中であると判断すると(S11:Yes)、ステップS12以降の処理を実行する。すなわち、ブレーキ制御処理は、クレーン車10の走行中に実行される。コントローラ60は、例えば、エンジンが駆動されておらず、或いはクレーン装置12の操縦がされていることに応じて、クレーン車10が走行中でないと判断する(S11:No)。また、コントローラ60は、エンジンが駆動されており、かつ、クレーン装置12の操縦がされていないことに応じて、クレーン車10が走行中であると判断する(S11:Yes)。
【0059】
コントローラ60は、クレーン車10が走行中であると判断すると(S11:Yes)、カメラ駆動処理を実行する(S12)。具体的には、コントローラ60は、電源回路65の駆動を制御してカメラ46、47に電力を供給し、かつ制御信号をカメラ46、47に入力し、カメラ46、47に撮像を行わせる。
【0060】
カメラ46、47は、制御信号が入力されると、障害物(被写体)までの距離を測距センサに検出させ、測距センサが検出した距離に応じて焦点距離を調整し、撮像を行う。カメラ46、47は、撮像によって生成した画像データと、測距センサが検出した距離(以下、障害物距離と記載する)を出力する。カメラ46、47が出力した画像データ及び障害物距離は、コントローラ60に入力される。コントローラ60は、入力された画像データを解析して障害物を検出する障害物検出処理を実行する(S13)。
【0061】
例えば、コントローラ60は、入力された画像データにおいて、色や輝度や明度が閾値以上変化する変位点を算出する。コントローラ60は、変位点に囲まれた領域を障害物として検出する。コントローラ60が検出する障害物は、一乃至複数である。なお、障害物の検出は、他の既存の方法が用いられてもよい。また、コントローラ60は、カメラ46、47が判断した被写体を障害物と判断してもよい。また、CPU61の演算回数を低減するため、2値化処理などが障害物検出処理に用いられてもよい。
【0062】
次に、コントローラ60は、入力された障害物距離に基づいて、検出された障害物がブーム42の先端部に接近しているか否かを判断する(S14)。具体的には、コントローラ60は、ステップS12のカメラ駆動処理を、定期的(例えば、0.5秒間隔)に実行する。そして、コントローラ60は、障害物距離の入力を定期的に受け付ける。コントローラ60は、障害物距離が時間経過とともに短くなっていることに応じて、障害物が接近していると判断する(S14:Yes)。コントローラ60は、障害物距離が時間経過とともに長くなっている、或いは障害物距離が時間経過に拘わらず変化していないことに応じて、障害物が接近していないと判断する(S14:No)。
【0063】
コントローラ60は、障害物が接近していないと判断すると(S14:No)、クレーン車10の走行が終了したか否かを判断する(S21)。例えば、コントローラ60は、エンジンが停止されたことに応じて、クレーン車10の走行が終了されたと判断し(S21:Yes)、エンジンが停止されていないことに応じて、クレーン車10の走行が終了されていないと判断する(S21:No)。コントローラ60は、クレーン車10の走行が終了されたと判断したことに応じて(S21:Yes)、ブレーキ制御処理を終了する。一方、コントローラ60は、クレーン車10の走行が終了されていないと判断したことに応じて(S21:No)、ステップS14以降の処理を継続して実行する。
【0064】
コントローラ60は、ステップS14において、障害物が接近していると判断すると(S14:Yes)、接近している障害物の障害物距離が、メモリ64に記憶された閾値距離未満であるか否かを判断する。閾値距離は、例えば、5m~15mである。すなわち、コントローラ60は、接近している障害物までの距離が、ブーム42と障害物との接触のおそれがある距離であるか否かを判断する。
【0065】
コントローラ60は、接近している障害物までの障害物距離が閾値距離未満でないと判断すると(S15:No)、ステップS15~S20までの処理をスキップし、ステップS21の処理を実行する。
【0066】
一方、コントローラ60は、接近している障害物までの障害物距離が閾値距離未満であると判断すると(S15:Yes)、障害物における地面からの高さである障害物高さが、メモリ64に記憶された第1閾値以上であるか否かを判断する。具体的には、コントローラ60は、入力された画像データ及び障害物距離に基づいて障害物高さを算出し、算出した障害物高さが第1閾値以上であるか否かを判断する。障害物高さは、障害物が車両である場合は、車高に相当する。第1閾値は、格納姿勢にあるブーム42の先端部における地面からの高さに応じた値であって、例えば、1.5m~3mである。すなわち、コントローラ60は、接近している車両などの障害物がブーム42に接触するおそれがあるか否かを判断する。
【0067】
コントローラ60は、障害物高さが第1閾値以上でないと判断すると(S16:No)、すなわち、接近する障害物がブーム42に接触するおそれがないと判断すると、ステップS17~S20までの処理をスキップし、ステップS21の処理を実行する。
【0068】
一方、コントローラ60は、障害物高さが第1閾値以上であると判断すると(S16:Yes)、すなわち、接近する障害物がブーム42に接触するおそれがあると判断すると、ブレーキ駆動処理を実行する(S17)。具体的には、コントローラ60は、ブレーキ装置70の駆動装置72に制御信号を入力し、ブレーキ部材71をディスクやドラムに押し当てて車輪21を制止させる。
【0069】
そして、コントローラ60は、報知処理を実行する(S18)。具体的には、コントローラ60は、スピーカ66に音声信号を入力して警告音をスピーカ66に出力させ、或いは、ディスプレイ67に画像データを入力して警告画面をディスプレイ67に表示させる。なお、報知処理においてコントローラ60が出力する音声信号や画像データは、メモリ64に予め記憶される。
【0070】
コントローラ60は、ステップS18の処理の実行後、検出した障害物が継続して接近しているか否かを判断する(S19)。ステップS19の判断処理は、ステップS14の判断処理と同様にして行われる。
【0071】
コントローラ60は、障害物が継続して接近していると判断すると(S19:Yes)、ブレーキ装置70の駆動装置72の駆動及び報知処理(S18)を継続して行う。
【0072】
なお、ステップS17のブレーキ駆動処理は、複数段階に分けて行われてもよい。具体的には、コントローラ60は、まず、予備ブレーキとしてブレーキ装置70を駆動させ、その後、障害物が継続して接近していると判断すると、本ブレーキとして、駆動装置70を駆動させる。予備ブレーキと本ブレーキとにおいて、ブレーキ部材71をディスクやドラムに押し当てる押圧力が変えられてもよい。例えば、予備ブレーキでは、本ブレーキよりも低い押圧力でブレーキ部材71がディスクやドラムに押し当てられる。
【0073】
コントローラ60は、車両等の障害物が右左折を行ったり、障害物が交差点を通過したり、障害物が停止したりして、障害物が接近していないと判断すると(S19:No)、ブレーキ解除処理を実行する(S20)。具体的には、コントローラ60は、ブレーキ装置70の駆動装置72への制御信号の入力を停止する。そして、コントローラ60は、クレーン車10の走行が停止されたか否かを判断し(S21)、クレーン車10の走行が停止されていないと判断すると(S21:No)、ステップS14以降の処理を継続して行う。コントローラ60は、クレーン車10の走行が停止されたと判断すると(S21:Yes)、ブレーキ制御処理を終了する。
【0074】
[実施形態の作用効果]
【0075】
コントローラ60は、ブーム42の先端部に設けられて車体20の側方の障害物を検出するカメラ46、47から入力された画像データ及び障害物距離に基づいて、ブレーキ装置70を駆動させる。したがって、クレーン車10は、交差点等への進入時において、ブーム42の先端部への他の車両等(障害物)の接触を抑制することができる。
【0076】
また、コントローラ60は、検出した障害物が停止しているか遠ざかる場合は(S14:No)、ブレーキ装置70を駆動させず、検出した障害物が近づいている場合に(S14:Yes)、ブレーキ装置70を駆動させる。したがって、クレーン車10は、他の車両等(障害物)がブーム42の先端部に接触するおそれがある場合にブレーキ装置70を駆動させて車体20を停止させることができる。すなわち、クレーン車10は、車体20を適切に停止させることができる。
【0077】
また、コントローラ60は、検出した障害物が、ブーム42と接触しない高さのオートバイクや人や自動車である場合(S16:No)、ブレーキ装置70を駆動せず、検出した障害物が、ブーム42と接触する高さの自動車等である場合(S16:Yes)、ブレーキ装置70を駆動させる。したがって、クレーン車10は、さらに適切に車体20を停止させることができる。
【0078】
また、コントローラ60は、障害物を検出しなくなり、或いは、障害物がブーム42から離れていくと(S19:No)、ブレーキ装置70の駆動を停止して(S20)、クレーン車10を走行可能にする。したがって、ブレーキ装置70が不必要に駆動されることが防止される。その結果、クレーン車10の使い勝手が良くなる。
【0079】
また、コントローラ60は、ブレーキ装置70を駆動させたことに応じて(S17)、報知処理を実行する(S18)。したがって、ブーム42に障害物が接触するおそれがあることに応じて車体20が停止されたことを運転手に容易に認識させることができる。
【0080】
[第2実施形態]
【0081】
第1実施形態では、カメラ46、47が検出した障害物がブーム42に接触するおそれがある場合にブレーキ装置70が駆動されてクレーン車10が停止される例が説明された。本実施形態では、カメラ46、47が検出した障害物がブーム42に接触するおそれがある場合に、図9に示される照明装置68及びクラクション69が駆動され、かつ、ディスプレイ67に表示がされる例を説明する。本実施形態における照明装置68及びクラクション69以外のクレーン車10の構成は、第1実施形態で説明されたクレーン車10の構成と同じである。
【0082】
照明装置68は、例えば、照射する光の向きが回転する回転灯である。照明装置68は、例えば、ブーム42の先端部や、走行体11からブーム42の先端部に対応する位置まで延びる不図示のサポート部材の先端部や、走行体11の前端部に設けられる。すなわち、照明装置68は、ブーム42に接近する車両の運転手が視認可能な位置に設置される。照明装置68は、電源回路65から供給される電力によって点灯される。コントローラ60は、例えば、電源回路65と照明装置68との間に設けられたスイッチをオンオフする制御信号を出力することにより、照明装置68を点灯及び消灯させる。
【0083】
クラクション69は、圧力が加えられることによって警笛音を出力する装置やスピーカなどである。コントローラ60は、例えば、制御信号をクラクション69に圧力を加える押圧装置に入力することにより、或いは音声信号をクラクション69に入力することにより、クラクション69に警笛音などの音声を報知させる。照明装置68及びクラクション69は、本発明の「報知装置」の一例である。なお、照明装置68とクラクション69との一方のみがクレーン車10に設けられていてもよい。
【0084】
コントローラ60は、第1実施形態で説明したブレーキ制御処理(図4)に代えて、図10に示す報知処理を実行する。以下、図10を参照して報知処理が説明される。なお、第1実施形態と同じ処理については、第1実施形態と同一の符号(ステップ番号)を付して説明が省略される。
【0085】
コントローラ60は、第1実施形態と同様に、ステップS11からS16までの処理を実行する。そして、コントローラ60は、ステップS16において、閾値距離まで接近した障害物が、ブーム42に接触する高さの障害物であるか否かを判断する。
【0086】
コントローラ60は、閾値距離まで接近した障害物が、ブーム42に接触する高さの障害物であると判断すると(S16:Yes)、報知装置駆動処理を実行する(S41)。具体的には、コントローラ60は、照明装置68を点灯させ、かつ、クラクション69に警笛音を出力させ、さらに、障害物が接近している旨をディスプレイ67に表示させる。
【0087】
次に、コントローラ60は、第1実施形態と同様に、障害物が接近し続けているか否かを判断する(S19)。すなわち、コントローラ60は、照明装置68の点灯や警笛音によって危険を察知した障害物(車両)の運転手が当該車両を停止させたか否かを判断する。コントローラ60は、障害物が接近し続けていると判断すると(S19:Yes)、報知装置駆動処理を継続して行う。コントローラ60は、障害物が停止や、右左折や、後退等を行って障害物が接近しなくなったと判断すると(S19:No)、報知停止処理を実行する(S42)。具体的には、コントローラ60は、照明装置68を消灯させ、かつ、クラクション69への制御信号や音声信号の出力を停止させ、さらに、障害物が接近している旨のディスプレイ67の表示を停止する。その後、コントローラ60は、第1実施形態と同様にステップS21の処理を実行する。
【0088】
[第2実施形態の作用効果]
【0089】
クレーン車10は、報知処理を実行することにより、ブーム42の先端部に接近してブーム42の先端部に接触するおそれのある車両の運転手に、ブーム42の先端部に接触する危険があることを認識させることができる。その結果、クレーン車10の安全性が向上する。
【0090】
[変形例]
【0091】
本変形例のクレーン車10は、図5、6が示すように、左右のカメラ46、47に加え、前カメラ48をさらに備える。前カメラ48は、ブーム42の先端部の前面に固定されている。前カメラ48のレンズは、クレーン車10の前方を向く。すなわち、前カメラ48は、クレーン車10の前方を撮像する。前カメラ48の構成は、左右のカメラ46、47の構成と同じである。前カメラ48は、ケーブルを用いてコントローラ60と接続されている。なお、前カメラ48は、レンズが前方を向いていて前方を撮像可能であれば、ブーム42の先端部の下面や上面や左側面や右側面に設けられていてもよい。
【0092】
また、クレーン車10は、速度センサ19を備える。速度センサ19は、例えば、エンジンが駆動されたことに応じて、クレーン車10の車速に応じた信号を定期的或いは常時出力する。速度センサ19は、不図示のケーブルを用いてコントローラ60と接続されている。速度センサ19が出力した信号は、インタフェースを介してコントローラ60に入力される。速度センサ19の構成は既知であるので、詳しい説明は省略される。
【0093】
また、コントローラ60のメモリ64は、第1閾値及び閾値距離に加え、第2閾値をさらに記憶する。第2閾値は、ブーム42或いはブーム42に装着されたジブ14(図1)の最上位置に応じた値である。なお、第2閾値は、ジブ14がブーム42装着されていない場合と、ジブ14がブーム42に装着されている場合とで、異なる値とされてもよいし、ジブ14がブーム42に装着されているものとして設定されてもよい。
【0094】
また、クレーン車10は、解除ボタン15(図6)を備える。解除ボタン15は、キャビン13に設けられている。解除ボタン15は、運転手によって操作されたことに応じて、解除信号を出力する。解除ボタン15は、不図示のケーブルによってコントローラ60と接続されている。コントローラ60は、後述のように、解除信号が入力されたことに応じて、ブレーキ装置70の駆動を停止させる。すなわち、解除ボタン15が操作されると、車輪21がブレーキ部材71から解放されてクレーン車10の走行が可能となる。
【0095】
前カメラ48、速度センサ19、第2閾値以外の構成は、実施形態で説明されたクレーン車10の構成と同じである。
【0096】
コントローラ60は、実施形態で説明されたブレーキ制御処理(図4)に加え、図6が示すブレーキ制御処理を実行する。なお、実施形態と同一の処理は実施形態と同一の符号が付され、説明が省略される。
【0097】
コントローラ60は、実施形態と同様にクレーン車10が走行中であるか否かを判断する(S11)。コントローラ60は、クレーン車10が走行中であると判断すると(S11:Yes)、前カメラ駆動処理を実行する(S31)。具体的に説明すると、コントローラ60は、前カメラ48に電力を供給し、かつ前カメラ48に制御信号を入力して、前カメラ48に撮像を実行させる。制御信号を入力された前カメラ48は、左右のカメラ46、47と同様にして焦点距離を調整して撮像を行い、障害物距離及び画像データを出力する。前カメラ48が出力した画像データ及び障害物距離は、コントローラ60に入力される。コントローラ60は、入力された画像データを解析して障害物を検出する障害物検出処理を実行する(S32)。前方の障害物の検出方法は、左方及び右方の障害物の検出方法と同じである。
【0098】
コントローラ60は、検出した障害物が停止障害物であるか否かを判断する。例えば、コントローラ60は、前カメラ48から入力した障害物距離の単位時間当たりの変化量(すなわち、障害物の接近速度)が、速度センサ19から入力した信号が示すクレーン車10の速度(以下、車速とも記載する)とほぼ等しい場合に、検出した障害物が停止障害物であると判断する(S33:Yes)。コントローラ60は、例えば、障害物の接近速度が車速±閾値速度の範囲内にある場合に、障害物の接近速度が車速にほぼ等しいと判断する。閾値速度は、メモリ64に予め記憶される。
【0099】
コントローラ60は、検出した障害物が停止障害物でないと判断すると(S33:No)、ステップS34等の処理をスキップし、実施形態と同様にステップS20の処理を実行する。
【0100】
コントローラ60は、検出した障害物が停止障害物であると判断すると(S33:Yes)、停止障害物の最下点の地面からの高さが、メモリ64が記憶する第2閾値未満であるか否かを判断する(S34)。すなわち、コントローラ60は、停止障害物とブーム42とが接触することなく停止障害物の下方を通過可能か否かを判断する。なお、クレーン車10に比べて圧倒的に車高が低い普通車等の車両では、このような判断処理は必要がない。
【0101】
コントローラ60は、停止障害物の最下点の地面からの高さが、メモリ64が記憶する第2閾値未満でないと判断すると(S34:No)、すなわち、ブーム42が停止障害物と接触しないと判断すると、ステップS17~S20の処理をスキップし、ステップS21の処理を実行する。
【0102】
コントローラ60は、停止障害物の最下点の地面からの高さが第2閾値未満であると判断すると(S34:Yes)、すなわち、ブーム42が停止障害物と接触すると判断すると、ブレーキ装置70を駆動させるブレーキ駆動処理を実行する(S17)。その後、コントローラ60は、実施形態と同様に、ステップS18の処理を実行する。
【0103】
コントローラ60は、ステップS18の報知処理の実行後、解除ボタン15から解除信号が入力したか否かを判断する(S35)。すなわち、コントローラ60は、運転手が解除ボタン15を操作したか否かを判断する。コントローラ60は、解除信号が入力するまで(S35:No)、報知処理を継続して実行する。
【0104】
コントローラ60は、解除信号が入力したと判断すると(S35:Yes)、実施形態と同様にして、ブレーキ解除処理を実行する(S20)。コントローラ60は、ブレーキ解除処理の実行後、実施形態と同様にしてステップS21の処理を実行し、ブレーキ制御処理を終了する。
【0105】
[変形例の作用効果]
【0106】
コントローラ60は、高架など、車体20の前方の停止障害物がブーム42に接触すると判断すると、ブレーキ装置70を駆動させて車体20を停止させる。したがって、クレーン車10は、高架等の停止障害物とブーム42との接触を防止して安全に走行することができる。
【0107】
なお、コントローラ60は、車体20の前方の障害物が他の車両等の移動障害物であるか否かを判断していもよい。その場合、コントローラ60は、移動障害物が閾値安全距離以内に接近したことに応じて、ブレーキ装置70を駆動してもよい。閾値安全距離は、例えば2~10mであって、メモリ64に予め記憶される。
【0108】
また、図8が示すように、カメラ46、47、48(図5)に代えて、左方、右方、及び前方を撮像可能な広角レンズを有するカメラ49がブーム42の先端部に設けられていてもよい。また、前カメラ48が設けられる代わりに、左右のカメラ46、47が、車体20の前方まで撮像可能な広角レンズを有していてもよい。
【0109】
[その他の変形例]
【0110】
上述の実施形態では、センサの一例として、画像データ及び距離データを出力するカメラ46、47が説明された。しかしながら、センサは、超音波センサやレーダなどであってもよい。なお、超音波センサなど、障害物までの距離を計測可能であるが、障害物の高さや大きさを計測できないような2次元センサを用いる場合、複数の2次元センサを用いてもよい。例えば、第1の2次元センサ(超音波センサ等)は、水平方向に沿う方向を検出方向とし、他の一乃至複数の2次元センサは、第1の2次元センサに対して、上下左右に検出方向をずらして設けられる。複数の2次元センサを用いることにより、障害物までの距離に加え、障害物の高さや大きさなどを検出することができる。障害物までの距離が閾値距離未満になったことに応じてブレーキ装置70が駆動される場合は、1つの2次元センサ(超音波センサ等)によって、障害物までの距離のみが測定されてもよい。
【0111】
上述の実施形態や変形例では、コントローラ60が、クレーン車10が走行中であることに応じて、図4が示すブレーキ制御処理を実行する例が説明された。しかしながら、コントローラ60は、クレーン車10が交差点に進入したことに応じて、図4が示すブレーキ制御処理を実行してもよい。コントローラ60は、例えば、前カメラ48から入力した画像データを解析し、クレーン車10が交差点に進入したか否かを判断する。
【0112】
上述の実施形態や変形例では、カメラ46、47、48に設けられた測距センサを利用して障害物距離を検出する例が説明された。しかしながら、カメラ46、47、48に加え、測距センサがブーム42の先端部に設けられていてもよい。
【0113】
上述の第1実施形態では、ステップS17でブレーキ装置70が駆動された後、ステップS18で報知処理が実行される例が説明された。しかしながら、報知処理が実行された後、ブレーキ装置70が駆動されてもよい。すなわち、ブレーキ装置70が駆動される前に、ブレーキ装置70が駆動されることを運転手に報知してもよい。
【0114】
上述の第1実施形態では、ブレーキ駆動処理(S17)と、報知処理(S18)との両方の処理が実行される例が説明された。しかしながら、ブレーキ駆動処理と報知処理との一方の処理のみが実行されてもよい。
【0115】
上述の第2実施形態では、第1実施形態のブレーキ駆動処理(図4のステップS17)に代えて、照明装置68やクラックション69が駆動される報知装置駆動処理(図10のステップ41)が実行される例が説明された。しかしながら、ブレーキ駆動処理とともに、報知装置駆動処理が実行されてもよい。その場合、照明装置68やクラックション69の駆動は、ブレーキ装置70が駆動される前であってもよいし、ブレーキ装置70が駆動された後であってもよい。
【0116】
上述の第2実施形態では、第1実施形態の報知処理(図4のS18)に代えて、照明装置68やクラックション69が駆動される報知装置駆動処理(図10のステップ41)が実行される例が説明された。しかしながら、報知処理(図4のS18)とともに、報知装置駆動処理が実行されてもよい。
【0117】
上述の実施形態や変形例では、カメラ46、47、48がブーム42の先端部に設けられた例が説明された。しかしながら、カメラ46、47、48は、ブーム42の先端部に応じた位置に設けられていれば、ブーム42の先端部に直接設けられていなくてもよい。例えば、カメラ46、47は、基端ブーム43からブーム42の先端部に向かって延びる部材に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0118】
10・・・クレーン車
20・・・車体
21・・・車輪
42・・・ブーム
46・・・左カメラ
47・・・右カメラ
48・・・前カメラ
49・・・カメラ
60・・・コントローラ
64・・・メモリ
68・・・照明装置
69・・・クラクション
70・・・ブレーキ装置
71・・・ブレーキ部材
72・・・駆動装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10