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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】通信用電線
(51)【国際特許分類】
   H01B 11/06 20060101AFI20231121BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20231121BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20231121BHJP
   H01F 1/26 20060101ALI20231121BHJP
   H01F 1/37 20060101ALI20231121BHJP
   H05K 9/00 20060101ALN20231121BHJP
【FI】
H01B11/06
H01B7/18 H
H01B7/18 D
H01B7/00 304Z
H01F1/26
H01F1/37
H05K9/00 M
H05K9/00 W
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022204126
(22)【出願日】2022-12-21
(62)【分割の表示】P 2019234317の分割
【原出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2023040046
(43)【公開日】2023-03-22
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 亨
(72)【発明者】
【氏名】田口 欣司
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 達也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 崇樹
(72)【発明者】
【氏名】上柿 亮真
(72)【発明者】
【氏名】安好 悠太
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-207298(JP,A)
【文献】特開平05-205536(JP,A)
【文献】特開平11-053956(JP,A)
【文献】特開平07-085733(JP,A)
【文献】特開2004-158328(JP,A)
【文献】特開2008-097932(JP,A)
【文献】実開昭58-193513(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/06
H01B 7/18
H01B 7/00
H01F 1/26
H01F 1/37
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、
前記導体の外周を被覆する絶縁被覆と、
前記絶縁被覆の外側を被覆する磁性シース層と、を有し、
前記磁性シース層は、磁性材料を含有しており、
前記磁性材料は、電子顕微鏡観察における円相当径のD50値である平均粒径が15μm以下、アスペクト比4以下の粒子形状をとっている、通信用電線。
【請求項2】
記磁性シース層は、磁性を有する添加剤として、4よりも大きいアスペクト比を有するものを、不可避的不純物を除いて含有しない、請求項1に記載の通信用電線。
【請求項3】
前記磁性シース層において、前記磁性材料は、高分子材料中に分散されており、
前記高分子材料100質量部に対して、前記磁性材料が、350質量部以上、750質量部以下含有されている、請求項1または請求項2に記載の通信用電線。
【請求項4】
前記通信用電線は、前記絶縁被覆と、前記磁性シース層との間に、金属素線の編組体として構成された編組層をさらに有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信用電線。
【請求項5】
前記通信用電線は、前記磁性シース層が除去され、前記編組層が露出した編組露出部を有する、請求項4に記載の通信用電線。
【請求項6】
前記通信用電線は、前記磁性シース層、前記編組層、前記絶縁被覆がいずれも除去され、前記導体が露出した導体露出部をさらに有する、請求項5に記載の通信用電線。
【請求項7】
前記通信用電線は、前記磁性シース層の外周を被覆して、前記磁性材料を含有しない外部シース層をさらに有する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の通信用電線。
【請求項8】
前記磁性シース層と、前記外部シース層は、相溶性を有する高分子材料を含有している、請求項7に記載の通信用電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信用電線に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の分野において用いられる通信用電線において、外部からのノイズの侵入や外部へのノイズの放出を低減することを目的として、コア線の外側にシールド層が設けられる場合がある。そのようなシールド層の例として、粉末状の磁性材料を高分子材料中に分散させた材料を用いて、コア線の外周を被覆する形態のシールド層を挙げることができる。
【0003】
例えば、特許文献1に、磁性体粉層が塗膜層で挟み込まれて形成されている磁気遮蔽層を備えた磁性シールドケーブルが開示されている。具体的なケーブルの構成の一つとして、中心導体と、中心導体の周囲に被覆されている絶縁層と、絶縁層の周囲に被覆されている電磁遮蔽層と、電磁遮蔽層の周囲に被覆されている内部被覆層と、内部被覆層の周囲に被覆されている磁気遮蔽層と、磁気遮蔽層の周囲に被覆されている外部被覆層と、を備えており、磁気遮蔽層は、磁性体粉層が塗膜層で挟み込まれて形成されている形態が、挙げられている。電磁遮蔽層は、銅や銅合金の素線を用いた編組遮蔽層または横巻遮蔽層として構成されている。1GHz以上の高周波帯での通信用電線の使用が想定される場合には、上記の形態のように、金属編組等、金属材料よりなるシールド体を設けたうえで、さらにその外側に粉末状の磁性材料を含むシールド層が設けられる場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-197509号公報
【文献】特開2016-201272号公報
【文献】特開平11-86641号公報
【文献】特開2004-311600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通信用電線において、端子をはじめとする外部の部材に端末部を接続する等の目的で、外周部の被覆層を部分的に除去する加工が施されることが多い。この際、高分子材料に粉末状の磁性材料を混合した材料で構成されたシールド層が、被覆層として設けられていると、そのシールド層を除去する時に、磁性材料の粒子が高分子材料とともに、粉状物(カス)を形成して、剥落や飛散を起こしやすい。その種のカスが発生し、導体等、通信用電線の構成部材や、接続対象の外部部材に付着すると、通信用電線と外部部材との間の電気的接続や物理的接続に、影響を与える可能性がある。特に、通信用電線が、金属編組よりなるシールド体を有し、その外周に磁性材料を含む被覆層が設けられている場合に、被覆層から発生したカスは、シールド体の編組構造の編目に嵌まり込んだ状態で保持されやすく、通信用電線と外部部材との接続に与える影響が大きくなる。
【0006】
以上に鑑み、粉末状の磁性材料を含有する被覆層を備えた通信用電線であって、被覆層を加工する際に、磁性材料を含んだ粉状物の発生を抑えることができる通信用電線を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる通信用電線は、導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁被覆と、前記絶縁被覆の外側を被覆する磁性シース層と、を有し、前記磁性シース層は、磁性材料を含有しており、前記磁性材料は、平均粒径50μm以下、アスペクト比4以下の粒子形状をとっている。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる通信用電線は、粉末状の磁性材料を含有する被覆層を備えた通信用電線であって、被覆層を加工する際に、磁性材料を含んだ粉状物の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一実施形態にかかる通信用電線の構成を示す断面図である。
図2図2は、上記通信用電線の端末部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施態様を説明する。
本開示にかかる通信用電線は、導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁被覆と、前記絶縁被覆の外側を被覆する磁性シース層と、を有し、前記磁性シース層は、磁性材料を含有しており、前記磁性材料は、平均粒径50μm以下、アスペクト比4以下の粒子形状をとっている。
【0011】
上記通信用電線は、導体の外周に絶縁被覆を設けたコア線の外周に、磁性材料を含有する磁性シース層を有している。磁性材料が、ノイズの原因となる電磁波を吸収することにより、磁性シース層が、ノイズ遮蔽性を示し、外部からのノイズの侵入、および外部へのノイズの放出を、抑制することができる。ここで、磁性シース層に含有される磁性材料が、平均粒径50μm以下、アスペクト比4以下の粒子形状をとっていることにより、通信用電線の端末部における磁性シース層の除去等、磁性シース層に対して加工を施す際に、磁性材料を含んだ粉状物の発生を抑制することができる。その結果、発生した粉状物が、飛散や剥落を起こすことで、導体等、通信用電線の構成部材や、外部の部材に付着し、通信用電線と外部部材の間の電気的接続や物理的接続に影響を与える事態が、生じにくくなっている。
【0012】
前記磁性材料のアスペクト比は、2以下であるとよい。すると、磁性シース層に加工を施す際の粉状物の発生を、特に効果的に抑制することができる。
【0013】
前記磁性シース層において、前記磁性材料は、高分子材料中に分散されており、前記高分子材料100質量部に対して、前記磁性材料が、350質量部以上、750質量部以下含有されているとよい。すると、磁性シース層によるノイズ遮蔽効果を十分に得ながら、磁性シース層からの粉状物の発生を、効果的に抑制することができる。
【0014】
前記通信用電線は、前記絶縁被覆と、前記磁性シース層との間に、金属素線の編組体として構成された編組層をさらに有するとよい。すると、編組層によって、通信用電線におけるノイズ遮蔽性を、さらに高めることができる。編組層が磁性シース層の内側に存在することで、磁性シース層に加工を施す際に粉状物が発生すると、その粉状物が編組体の編目に嵌まり込み、除去が困難になるが、本通信用電線においては、磁性シース層に含有される磁性材料の粒径およびアスペクト比が所定の上限以下に制限されていることにより、粉状物の発生が抑制されているので、編組層を設けても、そのような現象が発生しにくい。
【0015】
この場合に、前記通信用電線は、前記磁性シース層が除去され、前記編組層が露出した編組露出部を有するとよい。そのような編組露出部は、通信用電線の端末等において、磁性シース層を含めて、編組層の外側に設けられた層を除去することで形成でき、端子等、外部の部材との接続に利用することができる。磁性シース層を除去する際に、磁性シース層に切り込みを形成する等の加工が必要となるが、それらの加工に際して、磁性シース層から粉状物が発生して飛散や剥落を起こす可能性が低減されていることで、粉状物が編組層の編目に嵌まり込み、編組露出部を利用した外部の部材との接続に影響を与える事態が、起こりにくい。
【0016】
この場合さらに、前記通信用電線は、前記磁性シース層、前記編組層、前記絶縁被覆がいずれも除去され、前記導体が露出した導体露出部をさらに有するとよい。すると、磁性シース層からの粉状物の発生が抑えられていることで、粉状物が導体の表面に付着し、端子等の外部の部材に導体露出部を接続する際に、粉状物がその接続に影響を与える事態が、起こりにくい。
【0017】
前記通信用電線は、前記磁性シース層の外周を被覆して、前記磁性材料を含有しない外部シース層をさらに有するとよい。すると、外部シース層によって、磁性シース層を物理的に保護し、磁性シース層によるノイズ遮蔽効果を高く維持しやすくなる。また、外部シース層を設けることで、磁性シース層に対して加工を施す際に、磁性シース層からの粉状物の飛散や剥落を、効果的に抑制することができる。
【0018】
この場合に、前記磁性シース層と、前記外部シース層は、相溶性を有する高分子材料を含有しているとよい。すると、外部シース層によって、磁性シース層からの粉状物の飛散や剥落を抑制する効果が、さらに高くなる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を用いて、本開示の一実施形態にかかる通信用電線について、詳細に説明する。
【0020】
(通信用電線の全体構成)
図1に、本開示の一実施形態にかかる通信用電線1について、軸線方向に垂直に切断した断面図を示す。また、図2に、通信用電線1の端末部の構造を、側面図にて示す。
【0021】
通信用電線1は、同軸ケーブルとして構成されている。具体的には、通信用電線1は、導体2と、導体2の外周を被覆する絶縁被覆3とを有するコア線4を備えている。そして、コア線4の外周には、金属シールド層7として、金属箔5と、金属素線の編組体として構成された編組層6とが設けられている。金属箔5が、コア線4の外周を被覆し、さらに金属箔5の外周を被覆して、編組層6が設けられている。金属シールド層7の外周には、磁性材料を含有する磁性シース層8が設けられている。また、さらに磁性シース層8の外周に、磁性材料を含有しない外部シース層9が設けられている。本実施形態にかかる通信用電線1においては、後に詳しく説明するように、磁性シース層8に含有される磁性材料の粒径およびアスペクト比が、所定の上限以下に制限されている。
【0022】
通信用電線1の両側の端末の少なくとも一方には、編組露出部11および導体露出部12を含む露出部10が設けられていることが好ましい。編組露出部11においては、外部シース層9および磁性シース層8が除去され、編組層6が露出している。導体露出部12は、編組露出部11に隣接して、通信用電線1の先端側に設けられており、外部シース層9および磁性シース層8に加え、編組層6、さらに金属箔5およびコア線4の絶縁被覆3も除去され、コア線4を構成する導体2が露出している。通信用電線1の端末に露出部10を形成することで、通信用電線1を、端子等、外部の部材に、電気的に接続することができる。例えば、編組露出部11において露出した編組層6を、外導体端子に接続するとともに、導体露出部12において露出した導体2を、内導体端子に接続すればよい。編組露出部11は、例えば、通信用電線1の端末近傍において、外部シース層9および磁性シース層8に、全周にわたって切り込みを形成し、切りこみよりも通信用電線1の先端側の部位を、引き抜くように除去することで、形成することができる。そして、露出した編組層6のうち、先端側の一部を除去し、さらに、同じ箇所で、金属箔5および絶縁被覆3も除去することで、導体露出部12を形成することができる。すると、通信用電線1の端末部において、導体2と編組層6が、隣接して段状に露出された、露出部10が形成される。
【0023】
コア線4の外周に、金属シールド層7と磁性シース層8を備えた同軸ケーブルとして構成された、上記のような通信用電線1は、1GHz以上の高周波域の信号を伝送するのに、好適に用いることができる。しかし、本開示にかかる通信用電線は、コア線4の外側を被覆して、磁性シース層8が設けられるものであれば、上記のような構造を有するものに限られず、通信周波数や用途に応じた構成を採用すればよい。磁性シース層8は、コア線4の外周を直接被覆するものであっても、上記金属シールド層7のように、他の層を介在させて、コア線4の外周を被覆するものであってもよい。
【0024】
例えば、上記の形態では、コア線4として、単独の絶縁電線を用いているが、複数の絶縁電線を用いてもよい。具体的には、1対の絶縁電線を、相互に撚り合わせるか、並走させるかして、差動信号を伝送するように、コア線を構成することができる。また、ノイズの影響がそれほど大きくない場合には、金属シールド層7として、金属箔5と編組層6のいずれか一方のみを配置するようにしてもよく、さらには金属シールド層7を省略してもよい。また、金属シールド層7として、横巻き線等、金属箔5や編組層6以外の形態のものを用いてもよい。外部シース層9についても、磁性シース層8の保護等の機能に対する要請がそれほど大きくない場合には、省略してもよい。また、上記の形態では、説明した各層を、それぞれ内側の構成層の外周に直接接触させて形成しているが、通信用電線1は、上記で説明した各層以外の構成層を、適宜含むものであってもよい。以下、上記で例示した同軸ケーブル型の通信用電線1の各構成部材について、詳細に説明する。
【0025】
(コア線)
コア線4は、通信用電線1において、電気信号の伝送を担うものであり、導体2と、導体2の外周を被覆する絶縁被覆3とを有している。導体2および絶縁被覆3を構成する材料は、特に限定されるものではない。
【0026】
導体2を構成する材料としては、種々の金属材料を用いることができるが、高い導電率を有する等の点から、銅合金を用いることが好ましい。導体2は、単線として構成されてもよいが、屈曲時の柔軟性を高める等の観点から、複数の素線(例えば7本)が撚り合わせられた撚線として構成されることが好ましい。この場合に、素線を撚り合わせた後に、圧縮成形を行い、圧縮撚線としてもよい。導体2が撚線として構成される場合に、全て同じ素線よりなっても、2種以上の素線を含んでいてもよい。
【0027】
絶縁被覆3は、絶縁性の高分子材料を主成分としてなることが好ましい。高分子材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等のハロゲン系高分子、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド等のエンジニアリングプラスチック、各種エラストマー、ゴム等を挙げることができる。中でも、通信特性を高める観点から、高分子材料として、低分子極性のものを用いることが好ましい。特に、ポリプロピレンをはじめとするポリオレフィン等、無極性の高分子材料を用いることが好ましい。高分子材料は、1種のみを用いても、混合、積層等により、2種以上を合わせて用いてもよい。高分子材料は、架橋されていてもよく、また、発泡されていてもよい。絶縁被覆3は、高分子材料に加え、適宜、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。ただし、絶縁被覆3は、磁性シース層8に含有されるような、磁性材料よりなる添加剤は、含有しない方がよい。
【0028】
導体2の径や絶縁被覆3の厚さは、特に限定されるものではない。導体断面積として、0.05mm以上、また1.0mm以下の範囲を例示することができる。また、絶縁被覆3の厚さとして、0.1mm以上、また0.5mm以下の範囲を例示することができる。
【0029】
(金属シールド層)
金属シールド層7は、コア線4と磁性シース層8との間に設けられており、金属箔5と編組層6とが積層された2層構造を有している。
【0030】
金属箔5は、金属材料の薄膜として構成されている。金属箔5を構成する金属の種類は、特に限定されるものではなく、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を例示することができる。金属箔5は、単一の金属種より構成されても、2種以上の金属種の層が積層されてもよい。また、金属箔5は、独立した金属薄膜よりなる形態のほか、高分子フィルム等の基材に、蒸着、めっき、接着等によって金属層が結合されたものであってもよい。ノイズ遮蔽性を高める観点から、金属箔5は、コア線4に対して、縦添え状に配置することが好ましい。
【0031】
編組層6は、複数の金属素線が相互に編み込まれて、中空筒状に成形された編組体として構成されている。編組層6を構成する金属素線としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属材料、あるいはそれら金属材料の表面に、スズ等によってめっきを施したものを例示することができる。
【0032】
金属シールド層7は、同軸ケーブル構造において、外導体を構成するものであり、静電遮蔽により、コア線4に対して侵入するノイズ、またコア線4から放出されるノイズを遮蔽する役割を果たす。後に説明するように、通信用電線1において、ノイズ遮蔽効果は、磁性シース層8によっても発揮されるが、通信用電線1を、1GHz以上のような高周波域の通信に用いる場合には、ノイズの影響が深刻になりやすく、磁性シース層8とともに金属シールド層7を設けることで、ノイズの影響を効果的に低減することができる。金属シールド層7として、金属箔5と編組層6を併用することで、ノイズ遮蔽効果を、高めることができる。金属箔5と編組層6の積層順は特に限定されるものではないが、信号の損失を少なくする等の理由で、金属箔5を内側、編組層6を外側に配置することが好ましい。
【0033】
(磁性シース層)
磁性シース層8は、コア線4の外周を被覆するものである。本実施形態においては、金属シールド層7を介して、コア線4の外周を被覆している。
【0034】
磁性シース層8は、粒子状の磁性材料を含有している。磁性シース層8に含有される磁性材料は、好ましくは強磁性材料であり、さらに好ましくは、軟磁性を有する金属または金属化合物である。磁性シース層8に、磁性材料、特に軟磁性材料が含有されることにより、通信用電線1において、優れたノイズ遮蔽効果を得ることができる。つまり、通信用電線1の外部からのノイズが、通信用電線1に侵入し、コア線4を伝送される信号に影響を与える現象、および、コア線4を伝送される信号に起因するノイズが、通信用電線1の外部に放出される現象を、抑制することができる。磁性シース層8に含有される磁性材料における磁性損失により、ノイズの要因となりうる高周波の電磁波が吸収され、減衰されるからである。
【0035】
1GHz以上の高周波領域で、高いノイズ遮蔽性を示す軟磁性材料として、鉄(純鉄または少量の炭素を含む鉄)、ケイ素鋼、Fe-Si-Al合金(センダスト)、Fe-Cr-Al-Si合金やFe-Cr-Si合金等の磁性ステンレス鋼、Fe-Ni系合金(パーマロイ)、フェライト等を例示することができる。これらの材料の中で、ノイズ遮蔽性にとりわけ優れる等の観点から、Fe-Si-Al合金またはフェライトを用いることが、特に好ましい。フェライトとしては、Ni-Zn系のものやMn-Zn系のものを、好適に用いることができる。磁性材料は、1種のみを用いても、混合等により、2種以上を合わせて用いてもよい。
【0036】
磁性シース層8において、磁性材料は、粒子形状をとって、マトリクス材料の中に分散されている。マトリクス材料としては、非磁性の誘電体を用いることが好ましい。さらに好ましくは、柔軟性の確保等の観点から、マトリクス材料として、樹脂材料等、高分子材料を用いるとよい。高分子材料としては、コア線4の絶縁被覆3を構成する高分子材料と同様に、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等のハロゲン系高分子、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド等のエンジニアリングプラスチック、各種エラストマー、ゴム等を挙げることができる。中でも、絶縁性および耐熱性に優れる等の点から、ポリプロピレンをはじめとするポリオレフィンまたはポリ塩化ビニルを用いることが好ましい。高分子材料は、1種のみを用いても、混合、積層等により、2種以上を合わせて用いてもよい。高分子材料は、架橋されていてもよく、また、発泡されていてもよい。磁性シース層8を構成する高分子材料は、コア線4の絶縁被覆3を構成する高分子材料と、同種のものであっても、異なるものであってもよい。
【0037】
磁性シース層8は、高分子材料に加え、適宜、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。ただし、磁性シース層8は、磁性を有する添加剤としては、以下に説明する上限よりも大きい粒径、アスペクト比を有するものを、不可避的不純物を除いて、含有しないことが好ましい。また、磁性を有さない添加剤についても、以下に磁性材料について説明する上限よりも大きい粒径、アスペクト比を有するものを、含有しないことが好ましい。
【0038】
磁性シース層8に含有される磁性材料の粒子は、平均粒径(電子顕微鏡観察における円相当径のD50値)が50μm以下となっている。磁性材料の粒径が大きすぎると、磁性材料がマトリクス材料の中に分散された複合材の組織が、脆くなってしまい、磁性材料がマトリクス材料とともに、粉状物(カス)を形成して、磁性シース層8から脱離する事態が起こりやすい。しかし、磁性材料の平均粒径を50μm以下に抑えておくことで、磁性材料とマトリクス材料との間の親和性が高くなり、磁性材料とマトリクス材料との間の結合が強くなる。すると、磁性シース層8に対して、切断等の加工を施す際に、磁性材料がマトリクス材料とともにカスを形成し、形成されたカスが磁性シース層8から脱離して、飛散や剥落を起こす事態が、生じにくくなる。50μm以下の平均粒径を有する磁性材料は、ノイズの遮蔽においても、優れた効果を発揮する。高いノイズ遮蔽効果およびカスの発生を抑制する効果を、さらに確実に得られるようにする観点から、磁性材料の粒径は、25μm以下、さらには20μm以下、15μm以下であると、より好ましい。磁性材料は、マトリクス材料中で、凝集等によって二次粒子を形成せずに分散していることが好ましいが、二次粒子を形成する場合には、一次粒径だけでなく、二次粒径も、上記の上限以下となっていることが好ましい。
【0039】
磁性材料の粒径には、特に下限は設けられない。しかし、粒子の微細化によるカス発生の抑制効果の飽和を避ける観点、また磁性材料の取り扱い性を確保する観点から、その平均粒径は、0.5μm以上としておくとよい。さらには、1μm以上、また5μm以上としておくとよい。
【0040】
また、磁性シース層8に含有される磁性材料の粒子は、アスペクト比が、4以下となっている。磁性材料の粒子のアスペクト比が大きくなると、磁性材料の比表面積が大きくなり、マトリクス材料と大きな面積で接触することになる。すると、磁性シース層8に加工を施す際に、磁性材料を含んだマトリクス材料が、カスを形成し、飛散や剥落を起こしやすくなる。しかし、磁性材料のアスペクト比を4以下に抑え、比表面積を小さくしておくことで、加工時にカスが発生しにくくなる。カスの発生を抑制する効果をさらに高める観点からは、磁性材料のアスペクト比を、3以下、さらには2以下とすることが好ましい。
【0041】
磁性材料の粒子のアスペクト比の下限は、カスの発生の観点からは、特に限定されるものではない。しかし、アスペクト比を大きくする方が、磁性シース層8によるノイズ遮蔽効果を高めることができるので、アスペクト比は、1.5以上であることが好ましい。上記のように、磁性シース層8に加工を施す際のカスの発生を抑制する効果を特に高める観点からは、磁性材料のアスペクト比を2以下としておくことが好ましいが、ノイズ遮蔽効果の向上を優先する場合には、アスペクト比を2よりも大きくすればよい。つまり、磁性材料のアスペクト比は、4以下の範囲で、カス発生の抑制およびノイズの遮蔽に求められる水準に応じて、選択すればよい。
【0042】
以上のように、磁性シース層8に含有される磁性材料の粒子として、平均粒径50μm以下、またアスペクト比4以下のものを用いることで、磁性シース層8に、切断等、機械的加工を施す際に、カスが発生し、飛散や剥落を起こすのを、抑制することができる。磁性シース層8から、磁性材料を含んだカスが発生し、飛散や剥落を起こすと、そのカスが、通信用電線1の他の構成部材や、端子をはじめとして、通信用電線1と接続される外部の部材に付着し、通信用電線1と外部の部材との間の電気的接続や物理的接続に、影響を及ぼす可能性がある。カスの発生量が、通信用電線1のいずれかの部位に付着したカスがちょうど目視される程度に抑えられていれば、カスが通信用電線1と外部部材との接続に与える影響は、無視できる程度であるが、多量のカスが発生し、通信用電線1に付着したカスが、通信用電線1の表面に留まることができずに、通信用電線1から落下するほどの量に達している場合には、カスが、通信用電線1と外部部材との接続に、大きな影響を与えうる。
【0043】
例えば、導体2と内導体端子の間や、編組層6と外導体端子の間等、電気的接続が形成される箇所に、カスが介在されると、カスによって電気抵抗が上昇し、接触不良が起こる可能性がある。また、相互に接触する部材の間にカスが介在されることで、物理的接続が不安定になる可能性がある。また、カスの発生がさらに顕著になると、カスを形成した分の構成材料が磁性シース層8から欠損すること自体によっても、外部の部材に対して磁性シース層8を接続する際の作業性の低下等、影響が生じうる。磁性シース層8からのカスの発生、および飛散や剥落が抑制されていれば、上記のようなカスの発生による影響を避けて、通信用電線1と外部の部材との間で、良好な電気的接続および物理的接続、また接続時の作業性を確保することができる。
【0044】
特に、通信用電線1が、上記で説明したように、磁性シース層8の内側に、編組層6を有する場合に、磁性シース層8からカスが発生するとすれば、発生したカスが、編組層6の編目に嵌まり込むようにして付着し、その状態で編組層6に保持されやすくなる。しかし、磁性シース層8における磁性材料の粒径およびアスペクト比の制限により、カスの発生が抑制されていることで、編組層6へのカスの付着も、効果的に抑制することができる。上記のように、通信用電線1の端末部において、磁性シース層8を除去する加工を行うことで、編組露出部11が形成され、露出した編組層6が端子等に接続されるが、編組露出部11を形成するための加工を行う際に、磁性シース層8に由来するカスが、露出した編組層6に付着しにくくなっていることで、編組層6と端子等との接続を、良好に行うことができる。導体露出部12についても、同様に、カスの付着が抑制されることで、端子等と良好な接続を形成することができる。
【0045】
磁性シース層8において、磁性材料の含有量は、特に限定されるものではないが、ノイズ遮蔽効果を高める観点から、マトリクス材料100質量部に対して、350質量部以上としておくとよい。一方、磁性シース層8からのカスの発生を効果的に抑制する観点から、その含有量は、750質量部以下としておくとよい。
【0046】
また、磁性シース層8の厚さは、ノイズ遮蔽効果を高める観点から、0.2mm以上とするとよい。一方、通信用電線1の過剰な大径化を避ける観点から、その厚さは、0.5mm以下としておくとよい。磁性シース層8としては、含有される磁性材料の種類や量を異ならせて、複数種の層を積層して設けてもよい。
【0047】
磁性シース層8によるノイズ遮蔽効果の大きさは、用いる磁性材料の種類や粒径、アスペクト比、密度等のパラメータによって調整することができる。ノイズ遮蔽効果は、通信用電線1に信号を入力した際のノイズ量として評価することができ、例えば、後の実施例に示すように、ノイズ量が、-100dB以下、さらには-110dB以下となるように、用いる磁性材料に関するパラメータを選択すればよい。
【0048】
(外部シース層)
外部シース層9は、磁性シース層8の外周を被覆して設けられる層であり、通信用電線1全体としての外周に露出している。外部シース層9は、不可避的不純物を除いて、磁性材料を含有していない。
【0049】
外部シース層9は、高分子材料を主成分として構成されていることが好ましい。具体的な高分子材料としては、磁性シース層8を構成するマトリクス材料と同様に、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等のハロゲン系高分子、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド等のエンジニアリングプラスチック、各種エラストマー、ゴム等を挙げることができる。中でも、絶縁性および耐熱性に優れる等の点から、ポリプロピレンをはじめとするポリオレフィンまたはポリ塩化ビニルを用いることが好ましい。高分子材料は、1種のみを用いても、混合、積層等により、2種以上を合わせて用いてもよい。高分子材料は、架橋されていてもよく、また、発泡されていてもよい。磁性シース層8は、高分子材料に加え、適宜、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。
【0050】
外部シース層9を構成する高分子材料は、磁性シース層8を構成するマトリクス材料と、同種のものであっても、異種のものであってもよい。好ましくは、外部シース層9を構成する高分子材料と、磁性シース層8を構成するマトリクス材料が、相溶性を有することが好ましい。さらに好ましくは、両者が同種の高分子材料よりなるとよい。さらには、外部シース層9は、磁性材料を含有しない点を除いて、磁性シース層8と同じ材料より構成されているとよい。例えば、磁性シース層8がポリプロピレンに磁性材料を分散させたものよりなっている場合に、外部シース層9は、磁性材料を含有しないポリプロピレンよりなっているとよい。
【0051】
外部シース層9は、磁性シース層8およびさらに内側の各構成部材を、外部の物体との接触等から、物理的に保護する役割を果たす。また、磁性シース層8においては、磁性材料の含有により、硬度が高くなり、亀裂や割れ等の損傷が発生しやすくなる場合があるが、磁性シース層8が外部シース層9で被覆されていることで、磁性シース層8に亀裂や割れ等の損傷が生じることがあっても、その損傷が進展し、大きな空隙の形成に至るのを、抑制することができる。すると、損傷の進展によって、磁性シース層8の面に空隙が形成され、その空隙を介して電磁波が漏洩することで、磁性シース層8のノイズ遮蔽性能が低下する事態が、起こりにくくなる。さらに、磁性シース層8が外部シース層9に被覆されていることで、磁性シース層8に対して加工を施す際に、磁性シース層8からカスが発生し、外側に飛散するのを、効果的に抑制することができる。外部シース層9を構成する高分子材料が、磁性シース層8のマトリクス材料と、相溶性を有する場合、さらには同種である場合には、外部シース層9と磁性シース層8の間の密着性が高まり、外部シース層9によって磁性シース層8からのカスの発生や飛散を抑制する効果が、特に高くなる。
【0052】
外部シース層9の厚さは、特に限定されるものではないが、磁性シース層8に対する保護性能およびカスの飛散抑制の効果を特に高める観点から、0.1mm以上とするとよい。また、磁性シース層8の厚さ以上とするとよい。一方、通信用電線1の過度の大径化を避ける観点から、外部シース層9の厚さは、0.5mm以下としておくとよい。また、磁性シース層8の厚さの2倍以下としておくとよい。
【実施例
【0053】
以下に実施例を示す。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。本実施例において、各特性の評価は、室温、大気中において行っている。
【0054】
[試料の作製]
銅合金の撚線として構成された導体の外周に、架橋発泡ポリプロピレンを用いて絶縁被覆を形成して、コア線とした。導体断面積は0.22mm、絶縁被覆の厚さは0.195mmとした。コア線の外径は、0.85mmであった。
【0055】
コア線の外周に、金属箔として、銅箔を縦添え状に配置した。さらに、銅箔の外周に、編組層を形成した。編組層は、スズめっき軟銅線(TA線)よりなる一重編組として構成した。
【0056】
編組層の外周に、磁性シース層を形成した。磁性シース層としては、ポリプロピレンをマトリクス材料として、磁性材料の粉末を混合したものを、肉厚0.25mmで押し出し成形した。磁性材料については、試料A1~A6および試料B1~B3のそれぞれについて、表1に示すように、種類、平均粒径、アスペクト比、含有量を選択した。いずれの試料においても、磁性シース層を形成した状態での外径は、2.7mmであった。
【0057】
さらに、各試料について、磁性シース層の外周に、磁性材料を含有しないポリプロピレンを押し出し成形し、外部シース層を形成することで、通信用電線を完成させた。外部シース層の肉厚は0.25mmとした。通信用電線全体としての外径は、3.2mmであった。
【0058】
[評価]
(1)皮剥ぎ性
作製した各通信用電線について、磁性シース層の加工時における、カスの発生の程度を見積もるために、皮剥ぎ性の評価を行った。具体的には、各通信用電線の端末部において、まず、外部シース層および磁性シース層を編組層の外周から除去し、編組露出部を形成した。さらに、その編組露出部の端末側において、編組層および銅箔、絶縁被覆を導体の外周から除去して、導体露出部を形成した。これらの加工を経て、図2のように、通信用電線の端部に、編組層と導体を段状に露出させた露出部が得られた。
【0059】
上記のように、通信用電線の端末部に露出部を形成した後、露出部およびその周辺を、目視観察した。磁性シース層に由来するカスの生成が、通信用電線に付着した形態でも、通信用電線から落下した形態でも、確認されなかった場合には、皮剥ぎ性が特に高い(+A)と評価した。露出部において、編組層または導体にカスが付着しているのが目視されたものの、カスの発生量が少なく、カスが通信用電線から落下しているのは確認されなかった場合には、皮剥ぎ性が高い(A)と評価した。編組層または導体に付着したカスが、通信用電線に留まらずに落下する量に達していた場合には、皮剥ぎ性が低い(B)と評価した。
【0060】
(2)ノイズ遮蔽性
通信用電線の通信性能として、IEC62153-4に従い、ノイズ量を評価した。測定に際し、上記で作製した各試料にかかる通信用電線について、ネットワークアナライザを用いて、周波数1.5GHzの信号を入力した際のノイズ量を計測した。
【0061】
[結果]
表1に、試料A1~A6および試料B1~B3のそれぞれについて、磁性シース層に含有される磁性材料の構成とともに、皮剥ぎ性およびノイズ量の評価結果を示す。表中、磁性材料の平均粒径は、電子顕微鏡観察における円相当径のD50値を示しており、磁性材料の含有量は、マトリクス材料(ポリプロピレン)を100質量部とした場合の質量部数にて表示している。
【表1】
【0062】
表1によると、磁性シース層中の磁性材料が、平均粒径50μm以下、アスペクト比4以下の粒子形状をとっている試料A1~A6では、磁性材料がフェライトおよびFe-Si-Al合金のいずれよりなる場合についても、高い皮剥ぎ性が得られている(AまたはA+)。つまり、端末加工時の磁性シース層からのカスの発生が、抑えられている。また、ノイズ量の測定値が、-105dB以下となっており、磁性シース層によって、高いノイズ遮蔽効果が得られている。
【0063】
これら試料A1~A6とは異なり、磁性材料の平均粒径が50μmを超えている試料B1、およびアスペクト比が4を超えている試料B2,B3では、皮剥ぎ性が低くなっている(B)。つまり、端末加工時に、通信用電線から落下するほどの多量のカスが、磁性シース層から発生している。特に、アスペクト比が大きくなっている試料B2,B3では、試料A1~A6と比較して、磁性材料の含有量を半分以下としているにも拘らず、端末加工時に多量のカスが発生してしまっている。このように、試料A1~A6と、試料B1~B3との皮剥ぎ性の比較から、磁性シース層に含有される磁性材料として、平均粒径50μm以下、アスペクト比4以下の粒子を用いることで、磁性シース層を加工する際のカスの発生を抑制できることが確認される。
【0064】
さらに、試料A2~A5を相互に比較すると、磁性材料のアスペクト比が3以上となっている試料A4,A5と比較して、アスペクト比が2となっている試料A2,A3では、さらに皮剥ぎ性が高くなっており(A+)、磁性シース層からのカスの発生が高度に抑制されている。このことから、アスペクト比4以下の範囲の中でも、アスペクト比をより小さくすることで、磁性シース層からのカスの発生を、特に効果的に抑制できることが分かる。試料A1~A3は、磁性材料の粒径が相互に異なるものとなっているが、いずれにおいても特に高い皮剥ぎ性(A+)が得られている。
【0065】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 通信用電線
2 導体
3 絶縁被覆
4 コア線
5 金属箔
6 編組層
7 金属シールド層
8 磁性シース層
9 外部シース層
10 露出部
11 編組露出部
12 導体露出部
図1
図2