(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】リード線折り曲げ治具およびリード線折り曲げ方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
H05K13/04 S
(21)【出願番号】P 2022212555
(22)【出願日】2022-12-28
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2022181321
(32)【優先日】2022-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.公開の事実 ウェブサイトの掲載日 令和4年4月4日 ウェブサイトのURL https://www.youtube.com/watch?v=5u7xvJSPI6g https://www.youtube.com/watch?v=mhtumGzxu1A 公開者 オムロン太陽株式会社 2.公開の事実 ウェブサイトの掲載日 令和4年9月15日 ウェブサイトのURL https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC181JF0Y2A710C2000000/ 公開者 株式会社日本経済新聞社 3.公開の事実 発行日 令和4年9月16日 刊行物 日本経済新聞 地方経済面 九州 13ページ 公開者 株式会社日本経済新聞社
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】笹原 廣喜
(72)【発明者】
【氏名】塩地 優
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-113000(JP,U)
【文献】実開昭60-141149(JP,U)
【文献】実開昭52-103751(JP,U)
【文献】実開昭61-055375(JP,U)
【文献】実開昭54-178077(JP,U)
【文献】実開昭55-019593(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
H01C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成された基板を載置する台座と、
前記貫通孔に挿通されたリードを折り曲げるように、前記台座に対する回転モーメントにより該リードを押圧する押圧部材と、を備え、
前記押圧部材は、
前記回転モーメントを生じさせる力が印加される力点を含む力点部と、
前記回転モーメントの支点となり、少なくとも押圧時に前記台座に対する位置が所定の範囲に制限される支点部と、
前記回転モーメントの作用点において、
前記回転モーメントにより前記リードに向かう方向に回転し、前記リードに押圧力を印加する作用点部と、を備え、かつ、
前記押圧部材における前記力点部と前記支点部との距離が前記作用点部と前記支点部との距離より大きく、
前記作用点部は、前記基板とともに挟み込む状態で、前記リードを押圧する、リード折り曲げ治具。
【請求項2】
前記作用点部は、前記リード
を前記基板とともに挟み込む状態で、かつ、
該リードを前記基板に密着
させた状態で押圧する、請求項1に記載のリード折り曲げ治具。
【請求項3】
前記作用点部は、押圧面であり、
前記押圧面は、前記リード
を該押圧面と前記台座とにより前記基板とともに挟み込む状態で、かつ、
該リードを前記基板の表面に密着
させた状態で押圧する、請求項1または2に記載のリード折り曲げ治具。
【請求項4】
貫通孔が形成された基板を載置する台座と、
前記貫通孔に挿通されたリードを折り曲げるように、前記台座に対する回転モーメントにより該リードを押圧する押圧部材と、を備え、
前記押圧部材は、
前記回転モーメントを生じさせる力が印加される力点を含む力点部と、
前記回転モーメントの支点となり、少なくとも押圧時に前記台座に対する位置が所定の範囲に制限される支点部と、
前記回転モーメントの作用点において、
前記回転モーメントにより前記リードに向かう方向に回転し、前記リードに押圧力を印加する作用点部と、を備え、かつ、
前記押圧部材における前記力点部と前記支点部との距離が前記作用点部と前記支点部との距離より大きく、
前記作用点部は、前記リード
を前記基板に密着
させた状態で押圧する、リード折り曲げ治具。
【請求項5】
前記作用点部は、平坦な押圧面であり、
当該押圧面は、前記リードを押圧するときに、前記リードを前記基板の表面とともに挟み込むように形成されている、請求項
1または4に記載のリード折り曲げ治具。
【請求項6】
前記押圧部材を断面視したときに、前記支点部、前記作用点部及び前記力点部がこの順に配置されている、請求項
1または4に記載のリード折り曲げ治具。
【請求項7】
前記押圧部材は、前記支点部と前記作用点部とを繋ぐ延伸部を備え、
前記台座は、
当該台座の裏面に設けられ、前記押圧部材の前記支点部と係合可能な被係合部と、
前記押圧部材の前記延伸部を貫通させる貫通孔と、を備える、請求項
6に記載のリード折り曲げ治具。
【請求項8】
前記押圧部材の前記支点部は、前記台座の裏面に係合する係合爪である、請求項
7に記載のリード折り曲げ治具。
【請求項9】
前記延伸部が前記貫通孔を貫通し、前記支点部が前記台座の下側に位置している状態において、前記係合爪が上向きに形成されている、請求項
8に記載のリード折り曲げ治具。
【請求項10】
前記リードは、前記基板の前記貫通孔に挿通されたリード線であって、
前記押圧部材は、複数の前記リード線を折り曲げる方向に整列させる整列部をさらに備え、
前記整列部は、複数の前記リード線の方向を規制する複数の溝である、請求項
1または4に記載のリード折り曲げ治具。
【請求項11】
前記複数の溝は、幅または深さが前記リード線の径より小さい、請求項
10に記載のリード折り曲げ治具。
【請求項12】
前記押圧部材の前記支点部は、前記押圧部材の回転の軸であり、前記台座に取り付けられている軸部材であり、
前記力点部は、前記軸部材を回転させるレバー部材であり、
前記作用点部は、前記軸部材の回転により回動する回動部材に形成されている、請求項
1または4に記載のリード折り曲げ治具。
【請求項13】
前記押圧部材は、前記台座により保持された前記基板とともに挟み込む状態で、かつ、前記作用点部が前記基板と当接した状態において、前記軸部材を、前記リードを折り曲げる方向にスライドさせるスライド部材をさらに備え、
前記回動部材は、前記軸部材のスライドにより回転しながらスライドするローラである、請求項
12に記載のリード折り曲げ治具。
【請求項14】
前記リードは、前記基板の前記貫通孔に挿通されたリード線であって、
前記ローラの前記リード線に押圧力を印加する押圧面には、複数の前記リード線を折り曲げる方向に整列させる整列部が設けられており、
前記整列部は、複数の前記リード線の方向を規制する複数の溝である、請求項
13に記載のリード折り曲げ治具。
【請求項15】
前記複数の溝は、幅または深さが前記リード線の径より小さい、請求項
14に記載のリード折り曲げ治具。
【請求項16】
前記台座は、前記基板の前記貫通孔に挿通された前記リードのうち、前記基板の前記貫通孔に挿通された前記リードの端部とは反対側に配置される根元側部分が収容される収容部を備える、請求項
1または4に記載のリード折り曲げ治具。
【請求項17】
請求項
1または4に記載のリード折り曲げ治具を用いて、リードを折り曲げるリード折り曲げ方法であって、
前記基板を載置し保持する工程と、
前記押圧部材の前記作用点部が、前記基板の前記貫通孔に挿通された前記リードを前記基板とともに挟み込んで、前記リードを折り曲げるように、前記台座に対する回転モーメントにより該リードを押圧する工程と、を含む、リード折り曲げ方法。
【請求項18】
請求項
10に記載のリード折り曲げ治具を用いて、リードを折り曲げるリード折り曲げ方法であって、
前記基板を載置し保持する工程と、
前記押圧部材の前記作用点部が、前記基板の前記貫通孔に挿通された前記リードを前記基板とともに挟み込む状態で、前記貫通孔に挿通された前記リードを折り曲げるように、前記台座に対する回転モーメントにより該リードを押圧する工程と、
前記リード線を折り曲げる方向に整列させる工程と、を含み、
前記整列させる工程の後に、前記押圧部材の前記作用点部が、前記基板の前記貫通孔に挿通された前記リードを前記基板とともに挟み込んだ状態で、前記押圧する工程が行われる、リード折り曲げ方法。
【請求項19】
請求項
14に記載のリード折り曲げ治具を用いて、リードを折り曲げるリード折り曲げ方法であって、
前記基板を載置し保持する工程と、
前記押圧部材の前記作用点部が、前記基板の前記貫通孔に挿通された前記リードを前記基板とともに挟み込んで、前記貫通孔に挿通された前記リードを折り曲げるように、前記台座に対する回転モーメントにより該リードを押圧する工程と、
前記リード線を折り曲げる方向に整列させる工程と、を含み、
前記押圧部材の前記作用点部が、前記基板の前記貫通孔に挿通された前記リードを前記基板とともに挟み込む状態で、前記整列させる工程と前記押圧する工程とが同時に行われる、リード折り曲げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード線折り曲げ治具およびリード線折り曲げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、リード線をプリント配電板などの基板に接続するために、リード線の先端において被覆を途中まで剥がして露出させた導線部(リード線の端部)を基板に設けられた貫通孔に挿通させ、当該貫通孔の周囲に形成されたランドに半田付けする方法が用いられる。ここで、リード線の端部をランドに半田付けするためには、貫通孔から突出したリード線の端部をランドに密着するように折り曲げる必要がある。例えば、特許文献1は、リード線と銅箔パターンの配線部とを電気的に接続するためには、リード線を正しく折り曲げて半田付けする必要があるような構成を開示している。
【0003】
従来、リード線の端部を折り曲げる方法の一例として、定規などの平板部材とピンセットとを用いた方法が知られている。当該方法において、まず、作業者は、貫通孔から突出したリード線の端部に平板部材の主面をあて、平板部材を押し倒すことによりリード線の端部を折り曲げる。次に、作業者は、ピンセットを使って、折り曲げられたリード線の端部をランドに接触するように整列させる。これにより、貫通孔から突出したリード線の端部をランドに密着するように折り曲げることができる。
【0004】
また、特許文献2には、所定のリード端子の折り曲げ方向を向いた傾斜面を有するV字状の溝にリード端子を挿入することにより、リード端子を折り曲げるリード端子折り曲げ治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭62-103277号公報
【文献】実開平05-033521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、リード線を正しく折り曲げる具体的な方法については開示していない。
【0007】
平板部材とピンセットとを用いたリード線の端部を折り曲げる方法においては、作業者が平板部材によりリード線の端部を十分な押圧力で押圧できない可能性がある。そのため、リード線の端部がランドに対して浮いてしまい、溶融半田がリード線の端部とランドとを接続できないといったリード浮き不良が発生する可能性がある。
【0008】
特許文献2のリード端子折り曲げ治具を用いた方法においても、リード端子の折り曲げが不十分であり、リード端子と基板との半田付けを適切に行えない可能性がある。また、リード線は、折り曲げても元の形状に戻ろうとするので、リード線の端部が基板の貫通孔の縁およびランド面に接触した状態で、十分な押圧力で押圧できない可能性がある。
【0009】
本発明の一態様は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、リード線の端部を適切に折り曲げることができるリード線折り曲げ治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るリード線折り曲げ治具は、複数の貫通孔が形成された基板を保持する保持部材と、前記貫通孔のそれぞれに挿通された複数のリード線の端部を折り曲げるように、前記保持部材に対する回転モーメントにより該端部を押圧する押圧部材と、を備え、前記押圧部材は、前記回転モーメントを生じさせる力が印加される力点を含む力点部と、前記回転モーメントの支点となり、少なくとも押圧時に前記保持部材に対する位置が所定の範囲に制限される支点部と、前記回転モーメントの作用点において、前記リード線に押圧力を印加する作用点部と、を備え、かつ、前記力点部と前記支点部との距離が前記作用点部と前記支点部との距離より大きい。
【0011】
上記の構成によれば、利用者は、押圧部材の力点部に力を印加することにより、押圧部材に支点部を中心とする回転モーメントを与え、作用点部によりリード線の端部を押圧することができる。すなわち、てこの原理を利用して、リード線の端部を押圧することができる。そのため、利用者は押圧部材に大きな力を印加しなくても、十分な押圧力によりリード線の端部を押圧することができる。これにより、リード線の端部を基板に深く折り曲げて、基板(例えば基板における複数の貫通孔の周囲にそれぞれ形成されているランド)に良好に密着させることができる。したがって、基板に対するリード線の端部の半田付けが容易となり、また、半田付け状態を良好にすることができる。
【0012】
なお、本発明において、「前記力点部と前記支点部との距離が前記作用点部と前記支点部との距離より大きい」とは、前記力点部の少なくとも一部(たとえば前記支点部から最も離れた部分)と前記支点部との距離が、前記作用点部の一部(押圧時にリード線の端部と当接する部分)と前記支点部との距離より大きいことを意味する。
【0013】
また、前記押圧部材を断面視したときに、前記支点部、前記作用点部及び前記力点部がこの順に配置されていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、作用点部、支点部及び力点部がこの順に配置されている場合と異なり、押圧部材において力点部に印加した力の向きを逆転させる部材を追加することなく、力点部に印加した力と同じ向き(たとえば下向きの力を印加した場合には下向き)の力を作用点部に印加することができる。すなわち、押圧部材を比較的簡素な構造とすることができるので、部品点数を削減することができる。また、押圧部材の製造コストも抑制することができる。さらに、利用者は、押圧部材の力点部に下向きの力を印加することにより、リード線の端部を押圧することができるため、作業性が向上する。
【0015】
また、前記押圧部材を断面視したときに、前記支点部、前記作用点部及び前記力点部がこの順に配置されており、前記力点部と前記作用点部との距離が前記支点部と前記作用点部との距離より大きくてもよい。
【0016】
上記構成によれば、利用者は、押圧部材の力点部により小さな力を印加するだけで、リード線の端部を十分な押圧力で押圧することができる。
【0017】
なお、本発明において、「前記力点部と前記作用点部との距離が前記支点部と前記作用点部との距離より大きい」とは、前記力点部の少なくとも一部(たとえば前記作用点部から最も離れた部分)と前記作用点部の一部(押圧時にリード線の端部と当接する部分)との距離が、前記支点部と前記作用点部(押圧時にリード線の端部と当接する部分)との距離より大きいことを意味する。
【0018】
また、前記保持部材は、当該保持部材の裏面に設けられ、前記支点部と係合可能な被係合部と、前記支点部と前記作用点部とを繋ぐ延伸部を貫通させる貫通孔とを備えてもよい。
【0019】
上記構成によれば、保持部材の裏面に回転モーメントの支点部を設けることができるため、利用者は安定して作用点部をリード線の端部に押圧することができる。また、簡素な構造のリード線折り曲げ治具を実現することができる。
【0020】
また、前記支点部は、係合爪であってもよい。
【0021】
上記の構成によれば、押圧時において係合爪を被係合部に係合させることにより、係合爪の保持部材に対する位置を固定することができる。これにより、利用者は押圧部材を安定して把持しながら、作用点部をリード線の端部に押圧することができる。また、押圧時においてのみ係合爪を被係合部に係合させる構成とすることにより、簡素な構造の安価なリード線折り曲げ治具を実現することができる。
【0022】
また、前記リード線折り曲げ治具は、複数の前記リード線の端部を折り曲げる方向に整列させる整列部をさらに備え、前記整列部は、複数の前記リード線の端部の方向を規制する複数の溝であってもよい。
【0023】
上記の構成によれば、整列部による整列が行われた状態で押圧部材による押圧が行われることにより、貫通孔から突出したリード線の端部を一方向に整列された状態で確実に折り曲げることができる。すなわち、整列部を用いることにより、複数のリード線の整列作業を効率的かつ確実に行うことが可能となる。
【0024】
また、前記複数の溝は、幅または深さが前記リード線の端部の径より小さくてもよい。
【0025】
上記構成によれば、利用者は、整列時に前記複数の溝がリード線の端部と当接しながら(リード線を押さえながら)並進移動することで、確実にリード線の端部を整列させることができる。
【0026】
また、前記支点部は、前記押圧部材の回転の軸であり、前記保持部材に取り付けられている軸部材であり、前記力点部は、前記軸部材を回転させるレバー部材であり、前記作用点部は、前記軸部材の回転により回動する回動部材に形成されていてもよい。
【0027】
また、前記押圧部材は、前記作用点部が前記基板と当接した状態において、前記軸部材を、前記リード線の端部を折り曲げる方向にスライドさせるスライド部材をさらに備え、前記回動部材は、前記軸部材のスライドにより回転しながらスライドするローラであってもよい。
【0028】
また、前記ローラの前記リード線に押圧力を印加する押圧面には、複数の前記リード線の端部を折り曲げる方向に整列させる整列部が設けられており、前記整列部は、複数の前記リード線の端部の方向を規制する複数の溝であってもよい。
【0029】
上記の構成によれば、レバー部材を回転させ、スライド部材により押圧部材をスライドさせるといった簡易的な作業方法によりリード線の端部の整列および押圧を実現することができる。
【0030】
また、前記複数の溝は、幅または深さが前記リード線の端部の径より小さくてもよい。
【0031】
上記構成によれば、利用者は、整列時に前記複数の溝がリード線の端部と当接しながら(リード線を押さえながら)並進移動することで、確実にリード線の端部を整列させることができる。
【0032】
また、前記回動部材は、前記軸部材の回転により前記リード線の端部を押圧するように回動してもよい。
【0033】
また、前記回動部材は、複数の前記リード線の端部を折り曲げる方向に整列させる整列部を備え、前記整列部は、複数の前記リード線の端部の方向を規制する複数の溝であってもよい。
【0034】
上記の構成によれば、レバー部材を回転させ、押圧するといった簡易的な作業方法によりリード線の端部の整列および押圧を実現することができる。
【0035】
また、前記複数の溝は、幅または深さが前記リード線の端部の径より小さくてもよい。
【0036】
上記構成によれば、利用者は、整列時に前記複数の溝がリード線の端部と当接しながら(リード線を押さえながら)並進移動することで、確実にリード線の端部を整列させることができる。
【0037】
また、前記保持部材は、前記基板の前記貫通孔に挿通された前記リード線のうち、前記基板の貫通孔に対して前記端部とは反対側に配置される根元側部分が収容される収容部を備えてもよい。
【0038】
上記の構成によれば、リード線を保持部材に載置する際に、リード線の根元側部分を収容することにより、リード線を保持することができる。すなわち、利用者の作業性を向上させることができる。
【0039】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るリード線折り曲げ方法は、前記リード線折り曲げ治具を用いて、複数のリード線の端部を折り曲げるリード線折り曲げ方法であって、前記基板を保持する工程と、前記貫通孔のそれぞれに挿通された複数の前記リード線の端部を折り曲げるように、前記保持部材に対する回転モーメントにより該端部を押圧する工程と、を含む。
【0040】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るリード線折り曲げ方法は、前記リード線折り曲げ治具を用いて、複数のリード線の端部を折り曲げるリード線折り曲げ方法であって、前記基板を保持する工程と、前記貫通孔のそれぞれに挿通された複数の前記リード線の端部を折り曲げるように、前記保持部材に対する回転モーメントにより該端部を押圧する工程と、複数の前記リード線の端部を折り曲げる方向に整列させる工程と、を含み、前記整列させる工程の後に、前記押圧する工程が行われる。
【0041】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るリード線折り曲げ方法は、前記リード線折り曲げ治具を用いて、複数のリード線の端部を折り曲げるリード線折り曲げ方法であって、前記基板を保持する工程と、前記貫通孔のそれぞれに挿通された複数の前記リード線の端部を折り曲げるように、前記保持部材に対する回転モーメントにより該端部を押圧する工程と、複数の前記リード線の端部を折り曲げる方向に整列させる工程と、を含み、前記整列させる工程と前記押圧する工程とが同時に行われる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の一態様によれば、リード線の端部を適切に折り曲げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の一実施形態に係るリード線折り曲げ治具の台座が基板およびリード線を保持している状態を示す、台座の上方斜視図である。
【
図2】上記リード線折り曲げ治具の棒状治具を示す斜視図、当該斜視図に示す領域Aの拡大平面図、棒状治具における押圧部の上方斜視図、および棒状治具における押圧部の下方斜視図である。
【
図3】上記リード線折り曲げ治具によるリード線の導線部の折り曲げ方法を示す工程図である。
【
図4】上記棒状治具により導線部を押圧している状態を示す、台座の上方斜視図である。
【
図5】上記棒状治具により導線部を押圧している状態を示す、台座の下方斜視図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係るリード線折り曲げ治具の台座および押圧部材の上方斜視図である。
【
図7】上記押圧部材により導線部を押圧している状態を示す、台座および押圧部材の上方斜視図である。
【
図8】上記押圧部材の回動部材の上方斜視図である。
【
図10】上記回動部材の上面図、下面図、およびに
図9に示す切断線Bにおいて切断した状態を示す矢視断面斜視図である。
【
図11】本発明のさらに他の実施形態に係るリード線折り曲げ治具の台座、およびローラを導線部の上方にセットする第1状態である押圧部材の上方斜視図である。
【
図12】後方から見た、上記台座および第1状態である上記押圧部材の側面図である。
【
図13】台座、およびローラの押圧面を導線部に当接させる第2状態である押圧部材の上方斜視図である。
【
図14】後方から見た、上記台座および第2状態である上記押圧部材の側面図である。
【
図15】台座、およびローラを回転させる第3状態である押圧部材の上方斜視図である。
【
図16】後方から見た、上記台座および第3状態である上記押圧部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の一側面に係る実施形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0045】
〔実施形態1〕
§1 適用例
まず、
図1、
図2を用いて、リード線折り曲げ治具100が適用される場面の一例について説明する。リード線折り曲げ治具100は、ワーク1と配線部2との電気的接続を確実にするようにリード線21の導線部21b(端部)を適切に折り曲げるために使用される治具である。リード線折り曲げ治具100は、いくつかの治具(後述する台座3および棒状治具4など)を総称するものである。
【0046】
図1は、リード線折り曲げ治具100の台座3(保持部材)が基板12およびリード線21を保持している状態を示す、台座3の上方斜視図である。
図2は、リード線折り曲げ治具100の棒状治具4(押圧部材)を示す斜視図(符号2A)、当該斜視図に示す領域Aの拡大平面図(符号2B)、押圧部43の上方斜視図(符号2C)、および押圧部43の下方斜視図(符号2D)である。
【0047】
図1に示すように、台座3は、基板12およびリード線21を保持するようにワーク1および配線部2を載置する板状部材である。また、台座3には係合爪43cが係合可能な被係合溝34a(被係合部)が設けられている(
図5も参照)。
【0048】
図2に示すように、棒状治具4は、利用者の持ち手となる把手部41と、押圧部43と、を備える。押圧部43は、平坦な押圧面43aa(作用点部)を有する押圧印加部43aと、一対の係合爪43cとを備える。
【0049】
利用者は、支点部としての係合爪43cを被係合溝34aに係合させながら、力点部としての把手部41を下方に押圧する(
図4および
図5も参照)。これにより、棒状治具4に係合爪43cを中心とする回転モーメントを与え、作用点部としての押圧面43aaにより導線部21bを押圧することができる。また、力点部としての把手部41と、支点部としての係合爪43cとの距離が、作用点部としての押圧面43aaと、支点部としての係合爪43cとの距離より大きくなっており、かつ、把手部41と押圧面43aaとの距離が係合爪43と押圧面43aaとの距離より大きくなっている。すなわち、てこの原理を利用して、導線部21bを押圧することができる。そのため、利用者は棒状治具4に大きな力を印加しなくても、十分な押圧力により導線部21bを押圧することができる。
【0050】
§2 構成例
(リード線折り曲げ治具100の構成)
リード線折り曲げ治具100は、ワーク1と配線部2との電気的接続を確実にするために使用される治具である。
図1および
図2に示すように、リード線折り曲げ治具100は、台座3と、棒状治具4とを備える。
【0051】
ワーク1は、ケース部11と、ケース部11の底部に設けられた基板12(プリント配線板)とを備える。ケース部11は基板12の一部を覆う。基板12は、エポキシ樹脂等の絶縁性の樹脂で形成されている。基板12の、ケース部11に覆われていない部分12aの表面には、複数のリード線21の導線部21bをそれぞれ挿通させるための複数の基板貫通孔12c(貫通孔)が形成されている。
図1に示す一例では、4本のリード線21の導線部21bをそれぞれ挿通させるための4つの基板貫通孔12cが並設されている。また、基板12の表面における複数の基板貫通孔12cの周囲にはそれぞれ、ワーク1と配線部2とを電気的に接続させるための複数のランド部12bが、設けられている。複数のランド部12bはそれぞれ分離している。
【0052】
配線部2は、複数のリード線21と、コネクタ22とを備える。リード線21は、被覆で覆われた被覆部21aと、リード線21の先端において被覆を途中まで剥がして露出させた導線部21bとを備える。導線部21bには、後述する半田作業のための予備半田を付着させている。
【0053】
ワーク1および配線部2は、リード線折り曲げ作業時に、導線部21bが基板貫通孔12cに挿通された状態で、台座3に載置される。ここで、導線部21bが、被覆部21aに対して略90°折り曲げられ、基板貫通孔12cから上方に突出するように、配線部2は台座3に載置される。以下、台座3において、ワーク1が載置される側を前方、配線部2が載置される側を後方として説明する。
【0054】
台座3は、基板12およびリード線21を保持するようにワーク1および配線部2を載置する板状部材である。
図1に示すように、台座3は、基板12を保持する基板保持部31と、リード線21を収容して保持するリード線収容溝32(収容部)と、を備える。
【0055】
基板保持部31は、台座3の表面に設けられるブロック部材である。基板保持部31は、ワーク1を台座3に載置する際に、例えばケース部11の前側面、左側面、および右側面と当接することにより、ケース部11の動きを規制する。これにより、基板保持部31は、(間接的に)基板12を保持する。
【0056】
リード線収容溝32は、台座3の表面に形成される溝である。リード線収容溝32は、基板貫通孔12cに挿通されたリード線21のうち、基板貫通孔12cに対して導線部21bとは反対側に配置される根元側部分(被覆部21aの一部)を収容する(
図3参照)。リード線収容溝32は、前後方向に直交する平面で切った切断面が円弧形状であり、被覆部21aを収容可能な幅を有する。リード線収容溝32は、基板保持部31によって保持された基板12の基板貫通孔12cに対応する位置から後方に延伸する。これにより、リード線収容溝32は、配線部2を台座3に載置する際に、被覆部21aの一部を収容することにより、リード線21を保持する。
【0057】
台座3の表面における、基板保持部31によって保持された基板12の左方および右方に対応する位置には、それぞれ一対の台座貫通孔33がさらに形成されている。当該台座貫通孔33は、後述する延伸部43bが通る孔である。
【0058】
台座3の裏面において、台座貫通孔33の前方に被係合部34がさらに設けられている(
図5参照)。被係合部34には、後述する係合爪43cが係合可能な被係合溝34aが設けられている。台座3はアルミニウム製である一方、被係合部34は剛性および強度がより優れたステンレス製であるとよい。これにより、係合爪43cが係合する際に生じる摩耗を低減することができる。なお、台座3に直接、被係合溝34aが設けられてもよい。
【0059】
棒状治具4は、導線部21bを適切に折り曲げて押圧するための治具である。
図2に示すように、棒状治具4は、利用者の持ち手となる把手部41(力点部)と、把手部41の長手方向の一端に設けられる整列部42と、把手部41の長手方向の他端に設けられる押圧部43と、を備える。
【0060】
整列部42は、棒状治具4の長手方向に垂直な面となる一端方向の端面において、導線部21bを折り曲げる方向(後方)に整列させるための複数の整列溝42a(整列部)が形成された、平板状の部材である(
図2の符号2B参照)。整列溝42aは、導線部21bを収容可能な(導線部21bの方向を規制する)溝である。整列溝42aは、導線部21bの径に基づく幅(例えば導線部21bの径の約0.5倍の幅)および導線部21bの径に基づく深さ(例えば導線部21bの径の約0.5倍の深さ)を有する、上面視において円弧形状の溝である。すなわち、整列溝42aは、幅または深さが導線部21bの径より小さくなっている。また、複数の整列溝42aは、基板貫通孔12cから上方に突出する複数の導線部21bの位置に対応するように形成されている。利用者は、導線部21bが整列溝42aに収容されるように整列部42を導線部21bに押し当て、整列部42をランド部12bに沿った方向に並進移動させることにより、導線部21bを折り曲げる方向に整列させることができる。整列部42は、このような並進移動による摩耗を低減できる剛性を有する材質(例えばステンレス)で形成されるとよい。
【0061】
なお、棒状治具4の長手方向に平行な面となる整列部42の主面においても、複数の整列溝(不図示)が形成されていてもよい。これにより、後述する仮曲げ作業においても、導線部21bを整列させた状態を保って折り曲げることができる。
【0062】
押圧部43は、押圧印加部43aと、一対の延伸部43bと、一対の係合爪43c(支点部)とを備える。押圧印加部43aは、他端方向の端部から把手部41に向かって下方に傾斜する平坦な押圧面43aa(作用点部)を有する(
図2の符号2Cおよび2D参照)。延伸部43bは、押圧印加部43aの左右方向端部において、他端方向に延伸する。係合爪43cは、延伸部43bの他端方向の端部において、上向きに形成されている。一対の延伸部43bの間の距離は、一対の台座貫通孔33の間の距離に対応する。係合爪43cは、被係合溝34aに係合可能である。係合爪43cが被係合溝34aに係合するとき(すなわち少なくとも押圧時に)、係合爪43cは、台座に対する位置が所定の範囲に制限される。利用者は、延伸部43bを台座3の表面から台座貫通孔33に通して、係合爪43cを被係合溝34aに係合させる。また、利用者は、係合爪43cを被係合溝34aに係合させながら把手部41を下方に押圧することにより、押圧印加部43aの押圧面43aaが導線部21bに向かう方向に棒状治具4を回転させる。これにより、押圧印加部43aの押圧面43aaにおいて、台座3に対する回転モーメントにより導線部21bを押圧することができる。このような回転モーメントによる押圧時において、平坦な押圧面43aaは、導線部21bにおける基板貫通孔12c近傍の部分およびランド部12bに半田付けされる部分を基板12の表面とともに挟み込むように基板12の表面と当接する(
図3の符号3E参照)。押圧部43は、このような押圧による摩耗を低減できる剛性を有する材質(例えばステンレス)で形成されるとよい。
【0063】
(変形例)
なお、棒状治具4は、整列部42および押圧部43をそれぞれ備える2つの別個の部材であってもよい。
【0064】
また、延伸部43bは、他端方向に対して所定の角度だけ下方に延伸してもよい(
図3の符号3G参照)。これにより、利用者の把手部41に印加する下方の押圧力により、効果的に導線部21bを押圧することができる。すなわち、台座3の形状に応じて、押圧印加部43aと延伸部43bとがなす角度を適宜変更してもよい。また、押圧面43aaをの面積を、押圧部43の長手方向側に広げた構造とすることによって、導線部21bが長い場合にも対応できる構造としてもよい。
【0065】
また、支点部は、上記のような被係合溝34aに係合する係合爪43cのような構成に限定されるものではなく、回転モーメントの支点となり、少なくとも押圧時に台座3に対する位置が所定の範囲に制限されるような構造であればどのような構造であってもよい。例えば、台座3側にフック形状の被係合部が設けられ、棒状治具4に、フック形状の被係合部に対して回動可能な状態で係合する軸形状の部材としての支点部が設けられていてもよい。また、逆に、台座3側に軸形状の被係合部が設けられ、棒状治具4に、軸形状の被係合部に対して回動可能な状態で係合するフック形状の部材としての支点部が設けられていてもよい。
【0066】
(リード線折り曲げ治具100によるリード線折り曲げ方法)
図3は、リード線折り曲げ治具100による導線部21bの折り曲げ方法(リード線折り曲げ方法)を示す工程図である。
図4は、棒状治具4により導線部21bを押圧している状態を示す、台座の上方斜視図である。
図5は、棒状治具4により導線部21bを押圧している状態を示す、台座の下方斜視図である。ここで、
図3に示す基板12、リード線21、および台座3は、いずれかの基板貫通孔12cを通る前後方向に延びた平面で切った切断面で示されている。以下、
図3~
図5を参照し、利用者がリード線折り曲げ治具100(台座3および棒状治具4)を用いて導線部21bを適切に折り曲げる方法の一例を説明する。
【0067】
まず、利用者は、複数の導線部21bを対応する複数の基板貫通孔12cに挿通させる(
図3の符号3A参照)。ここで、導線部21bには予備半田が付着されている。次に、利用者は、導線部21bが被覆部21aに対して略90°折り曲がるように被覆部21aを押し曲げる(
図3の符号3B参照)。次に、利用者は、導線部21bが基板貫通孔12cに挿通された状態で、ワーク1および配線部2を台座3に載置する。ここで、利用者は、基板12が基板保持部31に保持され、リード線21がリード線収容溝32に収容されるように、ワーク1および配線部2を台座3に載置する。
【0068】
次に、利用者は、導線部21bの仮曲げを行う(
図3の符号3C参照)。具体的には、利用者は、基板貫通孔12cから突出する導線部21bの前方から整列部42を当接させ、整列部42を後方に傾動させる。これにより、導線部21bを、後方に向かってある程度折り曲げることができる。
【0069】
次に、利用者は、導線部21bの整列を行う(
図3の符号3D参照)。具体的には、利用者は、導線部21bが整列溝42aに収容されるように整列部42を導線部21bに押し当て、整列部42をランド部12bに沿った方向(後方)に並進移動させる。これにより、導線部21bを、基板12にある程度密着させ、ランド部12bに沿った方向に整列させることができる。
【0070】
次に、利用者は、導線部21bの押圧を行う(
図3の符号3Eおよび3G参照)。具体的には、利用者は、延伸部43bを台座3の表面から台座貫通孔33に通して、係合爪43cを被係合溝34aに係合させる(
図4および
図5参照)。そして、利用者は、係合爪43cを被係合溝34aに係合させながら把手部41を下方に押圧することにより、押圧印加部43aの押圧面43aaが導線部21bに向かう方向に棒状治具4を回転させる。これにより、押圧印加部43aの押圧面43aaにおいて、台座3に対する回転モーメントにより導線部21bを押圧することができる。したがって、導線部21bを基板12に良好に密着させることができる。
【0071】
ここで、把手部41における利用者が押圧力を印加する部分が当該回転モーメントを生じさせる力点部、被係合溝34aに係合される係合爪43cが当該回転モーメントの支点である支点部、押圧印加部43aの押圧面43aaが当該回転モーメントの作用点部となる。すなわち、延伸部43bは、支点部と作用点部とを繋ぐ構造となっている。そして、力点部と支点部との距離が作用点部と支点部との距離より大きいため、てこの原理により、導線部21bに印加される押圧力は、把手部41に印加される押圧力より大きくなる。
【0072】
また、棒状治具4を断面視したときに、支点部、作用点部及び力点部がこの順に配置されている。よって、利用者は、棒状治具4の力点部に下向きの力を印加することにより、リード線の端部を押圧することができるので、作業性が向上する。また、棒状治具4を比較的簡素な構造とすることができるので、部品点数を削減することができる。また、棒状治具4の製造コストも抑制することができる。
【0073】
また、台座3の裏面に回転モーメントの支点部を設けているため、利用者は安定して作用点部をリード線の端部に押圧することができる。また、簡素な構造のリード線折り曲げ治具100を実現することができる。
【0074】
次に、利用者は、ワーク1および配線部2を台座3から取り外し、半田付け用の台座に載置する。そして、利用者は、半田ごてにより、導線部21bに半田Sを行き渡らせる。
【0075】
なお、導線部21bの折り曲げ方法としては上述の方法に限定されるものではない。上述のように仮曲げ、整列、押圧の順に作業を行うことが好ましいが、例えば、仮曲げ、押圧、整列の順に作業を行ってもよい。
【0076】
以上より、利用者は、把手部41に力を印加することにより、棒状治具4に係合爪43cを中心とする回転モーメントを与え、作用点部としての押圧面43aaにより導線部21bを押圧することができる。すなわち、てこの原理を利用して、導線部21bを押圧することができる。そのため、利用者は棒状治具4に大きな力を印加しなくても、十分な押圧力により導線部21bを押圧することができる。これにより、導線部21bを基板12に深く折り曲げて、基板12に良好に密着させることができる。したがって、基板12に対する導線部21bの半田付けが容易となり、また、半田付け状態を良好にすることができる。
【0077】
また、押圧面43aaを平坦な形状にすることによって、導線部21bにおける基板貫通孔12c近傍の部分を確実に押圧して折り曲げることができる。また、押圧面43aaを平坦な形状にすることによって、導線部21bにおけるランド部12bに半田付けされる部分をランド部12bの表面に接触した状態で十分な押圧力で押圧することができる。これにより、リード線21の折り曲げに対する復元力を抑制しつつ、理想的な折り曲げ状態を実現できる。
【0078】
このようなリード線折り曲げ治具100を用いたリード線21の折り曲げは、利用者がリード線21に対して大きな力を印加する必要がない。そのため、作業者は片手に障がいがあったり握力が安定しなかったりしても、容易にリード線21の折り曲げ作業を行うことができる。すなわち、作業可能な対象者の範囲を広げることができる。
【0079】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0080】
(リード線折り曲げ治具200の構成)
図6は、本実施形態に係るリード線折り曲げ治具200の台座3および押圧部材104の上方斜視図である。
図7は、押圧部材104により導線部21bを押圧している状態を示す、台座3および押圧部材104の上方斜視図である。リード線折り曲げ治具200は、棒状治具4に代えて押圧部材104を備える点で、リード線折り曲げ治具100と相違する。
図6に示すように、押圧部材104は、レバー部材141(力点部)、リンク部材142、および回動部材143を備える。
【0081】
レバー部材141は、利用者による押圧部材104の回転操作を受け付ける。レバー部材141は、台座3の一側部に位置し、台座3に対して左右方向に沿った軸を中心に回転可能となっている。
図6に示すように、レバー部材141は、台座3の表面に対して所定の角度で直立した状態(第1状態と称する)から後方に倒れる向きに回転する。そして、
図7に示すように、レバー部材141は、台座3の表面に対して所定の角度で後方に倒れた状態(第2状態と称する)まで回転する。また、レバー部材141は、第2状態からさらに同じ向きに回転可能である。なお、第1状態における台座3の表面に対するレバー部材141の角度は特に限定されるものではないが、例えば90度程度であってもよいし、前方側に少し傾く角度であってもよい。また、第2状態における台座3の表面に対するレバー部材141の角度は特に限定されるものではないが、例えば0度程度であってもよいし、台座3の表面に対して少し浮き上がる角度であってもよい。
【0082】
リンク部材142は、第1リンク部材142a(軸部材、支点部)、第2リンク部材142b、および第3リンク部材142cを備える。
【0083】
第1リンク部材142aは、押圧部材104の回転の軸となる軸部材である。第1リンク部材142aは、左右方向に延伸するように台座3に取り付けられている。第1リンク部材142aの一端は、レバー部材141の回転に伴って第1リンク部材142aが軸回りに回転するようにレバー部材141の根本部と接続されている。第1リンク部材142aの、台座3に対する位置は、固定されている。
【0084】
第2リンク部材142bは、第1リンク部材142aに対して所定の角度(例えば90°)をなす部材である。第2リンク部材142bの一端は、第1リンク部材142aの回転に伴って第2リンク部材142bが第1リンク部材142aを中心に回転するように第1リンク部材142aの他端と接続されている。
【0085】
第3リンク部材142cは、第1リンク部材142aと平行な部材である。第3リンク部材142cの一端は、第2リンク部材142bの回転に伴って第3リンク部材142cが回動するように第2リンク部材142bの他端を軸止する。
【0086】
回動部材143は、レバー部材141の回転に伴い回動する部材である。回動部材143は、第3リンク部材142cの一端に接続される。レバー部材141が第1状態のとき、回動部材143は、基板12の上方における基板貫通孔12cから上方に突出した導線部21bの手前に位置する。レバー部材141が後方に倒れる向きに回転すると、回動部材143は、レバー部材141の回転移動に対応して、後方かつ下方に回動する。そして、回動部材143は、導線部21bに当接し、そのまま導線部21bを折り曲げる。レバー部材141が第2状態になると、回動部材143は、基板12とともに導線部21bを挟み込む。
【0087】
なお、1つのレバー部材141が台座3の一側部に設けられている構成について説明したが、2つのレバー部材141が台座3の両側部に設けられていてもよい。この場合、2つのレバー部材141は、それぞれリンク部材142を介して1つの回動部材143に接続されている。
【0088】
図8は、回動部材143の上方斜視図である。
図9は、回動部材143の下方斜視図である。
図10は、回動部材143の上面図(符号10A)、下面図(符号10B)、およびに
図9に示す切断線Bにおいて切断した状態を示す矢視断面斜視図(符号10C)である。以下、
図8~
図10を参照し、回動部材143の詳細な構成の一例について説明する。
【0089】
図8および
図10の符号10Aに示すように、回動部材143の後側面には、複数の回動部材溝143a(整列部)が形成されている。回動部材溝143aは、上下方向に直交する平面で切った切断面が円弧形状であり、導線部21bを収容可能な幅および深さを有する溝である。より詳細には、回動部材溝143aは、導線部21bの径に基づく幅(例えば導線部21bの径の約0.5倍の幅)および導線部21bの径に基づく深さ(例えば導線部21bの径の約0.5倍の深さ)を有する溝である。すなわち、回動部材溝143aは、幅または深さが導線部21bの径より小さくなっている。複数の回動部材溝143aは、基板貫通孔12cから上方に突出する複数の導線部21bの位置に対応するように形成されている。
【0090】
図9、
図10の符号10B、および
図10の符号10Cに示すように、回動部材溝143aにおける回動部材143の底面側端部には、底面側に向かって溝の深さが漸次深くなっているテーパ形状部143b(整列部)が形成されている。テーパ形状部143bは、上下方向に直交する平面で切った切断面が逆三角形の形状を有する溝である。回動部材溝143aおよびテーパ形状部143bのこのような構成により、回動部材143が導線部21bを折り曲げるときに、回動部材溝143aおよびテーパ形状部143bは導線部21bを収容し、適切な方向に誘導する。すなわち、回動部材溝143aおよびテーパ形状部143bは、複数の導線部21bを折り曲げる方向に整列させることができる。
【0091】
図9、
図10の符号10B、および
図10の符号10Cに示すように、回動部材143の底面におけるテーパ形状部143bの手前側には回動部材平坦面143c(作用点部)が形成されている。レバー部材141を第2状態からさらに後方に倒す向きに押圧することにより、回動部材平坦面143cにおいて、導線部21bに押圧力を印加することができる。
【0092】
(リード線折り曲げ治具200によるリード線折り曲げ方法)
以下、
図6~
図10を参照し、利用者がリード線折り曲げ治具200(台座3および押圧部材104)を用いて導線部21bを適切に折り曲げる方法の一例を説明する。なお、実施形態2において、ワーク1および配線部2を台座3に載置するまでの工程については実施形態1と同様である。そのため、ここでは、ワーク1および配線部2を台座3に載置した後の工程について説明する。
【0093】
まず、利用者は、第1状態であるレバー部材141を第2状態になるまで後方に倒す。これにより、回動部材143は、レバー部材141の回転移動に対応して、後方かつ下方に回動する。ここで、回動部材143が導線部21bと当接するとき、導線部21bは、回動部材溝143aに収容される。そのまま回動部材143が回動すると、導線部21bは回動部材143によって折り曲がる。そして、導線部21bは、回動部材143におけるテーパ形状部143bに収容される。これにより、導線部21bをランド部12bに沿った方向に整列させることができる。レバー部材141が第2状態になるまで後方に倒されると、回動部材143は、基板12とともに導線部21bを挟み込む位置まで回動する。このとき、導線部21bは、回動部材平坦面143cと当接する。
【0094】
次に、利用者は、レバー部材141を第2状態からさらに後方に倒す向きに押圧することにより、回動部材平坦面143cが導線部21bに向かう方向に回動部材143を回動させる。これにより、台座3に対する回転モーメントによって導線部21bを押圧することができる。したがって、導線部21bを基板12に良好に密着させることができる。
【0095】
ここで、レバー部材141における利用者が押圧力を印加する部分が当該回転モーメントを生じさせる力点部、押圧部材104の回転の軸である第1リンク部材142aが当該回転モーメントの支点である支点部、回動部材平坦面143cが当該回転モーメントの作用点部となる。
図6および
図7に示すように、力点部と支点部との距離が作用点部と支点部との距離より大きいため、てこの原理により、導線部21bに印加される押圧力は、レバー部材141に印加される押圧力より大きくなる。
【0096】
以上より、利用者は、レバー部材141に力を印加することにより、第1リンク部材142aを中心とする回転モーメントを与え、作用点部としての回動部材平坦面143cにより導線部21bを押圧することができる。すなわち、実施形態1と同様に、てこの原理を利用して、導線部21bを押圧することができる。また、レバー部材141を回転させ、押圧するといった簡易的な作業方法により導線部21bの整列および押圧を同時に実現することができる。
【0097】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0098】
(リード線折り曲げ治具300の構成)
図11は、実施形態3に係るリード線折り曲げ治具300の台座3、およびローラ244を導線部21bの上方にセットする第1状態である押圧部材204の上方斜視図である。
図12は、後方から見た、台座3および第1状態である押圧部材204の側面図である。
図13は、台座3、およびローラ244を導線部21bに当接させる第2状態である押圧部材204の上方斜視図である。
図14は、後方から見た、台座3および第2状態である押圧部材204の側面図である。
図15は、台座3、およびローラ244を回転させる第3状態である押圧部材204の上方斜視図である。
図16は、後方から見た、台座3および第3状態である押圧部材204の側面図である。
【0099】
リード線折り曲げ治具300は、棒状治具4に代えて押圧部材204を備える点で、リード線折り曲げ治具100と相違する。
図11に示すように、押圧部材204は、レバー部材241(力点部)、軸部材242(支点部)、アーム243、ローラ244(回動部材)、およびスライド部材205を備える。
【0100】
レバー部材241は、利用者による押圧部材204の回転操作を受け付ける。レバー部材241は、台座3に対して左右方向に沿った軸を中心に回転可能となっている。
図11に示すように、レバー部材241は、台座3の表面に対して所定の角度をなす状態(レバー部材第1状態と称する)から後方に倒れる向きに回転する。そして、
図13および
図15に示すように、レバー部材241は、台座3の表面に対して後方に倒れた状態(レバー部材第2状態と称する)まで回転する。
【0101】
軸部材242は、押圧部材204の回転の軸となる軸部材である。軸部材242は、左右方向に延伸している。軸部材242の一端は、レバー部材241の回転に伴って軸部材242が軸回りに回転するようにレバー部材241の根本部と接続されている。上述の通り、軸部材242を含む押圧部材204は、後述するスライド部材205によって台座3に対してスライド可能に支持される。そのため、軸部材242は、ローラ244による押圧時において、台座3に対する位置がスライド部材205によってスライド可能な所定の範囲に制限される。
【0102】
アーム243は、軸部材242の回転に伴って軸部材242の回転とは逆方向に回転する。アーム243の一端部は、軸部材242の回転に伴って軸部材242の回転とは逆方向に回転するように軸部材242と接続されている。
【0103】
ローラ244は、導線部21bを適切に折り曲げて押圧するための円柱形状の部材である。ローラ244は、アーム243の他端部に設けられ、軸部材242の回転により回動する回動部材である。
図11および
図12に示すように、レバー部材241がレバー部材第1状態であるとき、ローラ244は、導線部21bの上方に位置する。
図13および
図14に示すように、レバー部材241がレバー部材第2状態であるとき、ローラ244は、導線部21bの手前に位置する。
【0104】
ローラ244は、ローラ押圧面244a(作用点部)および複数のローラ整列溝244b(整列部)を備える。ローラ押圧面244aは、ローラ244の平坦な表面である。ローラ整列溝244bは、ローラ244の円周方向に沿って設けられた溝である。ローラ整列溝244bは、導線部21bを収容可能な溝である。ローラ整列溝244bは、導線部21bの径に基づく幅および溝を有する。具体的には、ローラ整列溝244bは、導線部21bの径より小さい幅(例えば導線部21bの径の約0.5倍の幅)および導線部21bの径より小さい深さ(例えば導線部21bの径の約0.5倍の深さ)を有する。すなわち、ローラ整列溝244bは、幅または深さが導線部21bの径より小さくなっている。また、複数のローラ整列溝244bは、押圧部材204が
図13に示す第2状態のとき、基板貫通孔12cから上方に突出する複数の導線部21bの位置に対応するように形成されている。ローラ整列溝244bのこのような構成により、ローラ244が導線部21bを折り曲げるときに、ローラ整列溝244bは導線部21bを収容し、適切な方向に誘導する。すなわち、複数のローラ整列溝244bは、複数の導線部21bを折り曲げる方向に整列させることができる。
【0105】
スライド部材205は、軸部材242を台座3に対して前後方向にスライド可能に支持する部材である。スライド部材205は、
図13および
図14に示すローラ押圧面244aが基板12と当接した状態において、軸部材242を、導線部21bを折り曲げる方向にスライドさせる。具体的には、スライド部材205は、少なくとも、軸部材242を含む押圧部材204を
図11および
図13に示す位置(第1位置と称する)から
図15に示す位置(第2位置と称する)に(すなわち、後方に)スライドさせる。このような軸部材のスライドにより、ローラ244は、アーム243に対して回転しながら後方にスライドする。これにより、ローラ244は、導線部21bを折り曲げて、基板12とともに導線部21bを挟み込む。
【0106】
(リード線折り曲げ治具300によるリード線折り曲げ方法)
以下、
図11~
図16を参照し、利用者がリード線折り曲げ治具300(台座3、押圧部材204およびスライド部材205)を用いて導線部21bを適切に折り曲げる方法の一例を説明する。なお、実施形態3において、ワーク1および配線部2を台座3に載置するまでの工程については実施形態1と同様である。そのため、ここでは、ワーク1および配線部2を台座3に載置した後の工程について説明する。
【0107】
まず、利用者は、レバー部材第1状態であるレバー部材241をレバー部材第2状態になるまで後方に倒す。これにより、ローラ244は、導線部21bの上方から導線部21bの手前に移動する。そして、ローラ244は、導線部21bと当接し、導線部21bを後方にある程度折り曲げる。ここで、ローラ244が導線部21bと当接するとき、導線部21bは、ローラ整列溝244bに収容される。
【0108】
次に、利用者は、スライド部材205により押圧部材204の位置を第1位置から第2位置にスライドさせる。ここで、ローラ整列溝244bの幅は、導線部21bの径より小さいため、導線部21bは、ローラ整列溝244bに収容されながらローラ押圧面244aにより押圧される。これにより、導線部21bをランド部12bに沿った方向に整列させ、また、台座3に対する回転モーメントによって導線部21bを押圧することができる。したがって、導線部21bを基板12に良好に密着させることができる。
【0109】
ここで、レバー部材241における利用者が押圧力を印加する部分が当該回転モーメントを生じさせる力点部、押圧部材204の回転の軸である軸部材242が当該回転モーメントの支点である支点部、ローラ押圧面244aが当該回転モーメントの作用点部となる。
図11~
図16に示すように、力点部と支点部との距離が作用点部と支点部との距離より大きいため、てこの原理により、導線部21bに印加される押圧力は、レバー部材241に印加される押圧力より大きくなる。
【0110】
以上より、利用者は、レバー部材241に力を印加することにより、軸部材242を中心とする回転モーメントを与え、作用点部としてのローラ押圧面244aにより導線部21bを押圧することができる。すなわち、実施形態1と同様に、てこの原理を利用して、導線部21bを押圧することができる。また、レバー部材241を回転させ、押圧部材204をスライドさせるといった簡易的な作業方法により導線部21bの整列および押圧を同時に実現することができる。
【0111】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0112】
100、200、300 リード線折り曲げ治具
3 台座(保持部材)
4 棒状治具(押圧部材)
12 基板
12c 基板貫通孔(貫通孔)
21 リード線
21a 被覆部(リード線の根元側部分)
21b 導線部(リード線の端部)
32 リード線収容溝(収容部)
34 被係合部
34a 被係合溝(被係合部)
41 把手部(力点部)
42 整列部
42a 整列溝(整列部)
43 押圧部
43a 押圧印加部
43aa 押圧面(作用点部)
43c 係合爪(支点部)
104、204 押圧部材
141、241 レバー部材(力点部)
142a 第1リンク部材(支点部)
143 回動部材
143a 回動部材溝(整列部)
143b テーパ形状部(整列部)
143c 回動部材平坦面(作用点部)
205 スライド部材
242 軸部材(支点部)
243 アーム
244 ローラ(回動部材)
244a ローラ押圧面(作用点部)
244b ローラ整列溝(整列部)
【要約】
【課題】リード線の端部を適切に折り曲げることができるリード線折り曲げ治具を提供する。
【解決手段】リード線折り曲げ治具(100)は、台座(3)と、棒状治具(4)と、を備え、棒状治具は、回転モーメントを生じさせる力が印加される力点を含む把手部(41)と、回転モーメントの支点となり、少なくとも押圧時に台座に対する位置が所定の範囲に制限される係合爪(43c)と、回転モーメントの作用点において、リード線に押圧力を印加する押圧印加部の押圧面(43aa)と、を備える。
【選択図】
図2