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特許7388547複合分析データ管理システム、複合分析データ管理方法および複合分析データ管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】複合分析データ管理システム、複合分析データ管理方法および複合分析データ管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/62 20130101AFI20231121BHJP
【FI】
G06F21/62 318
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022517556
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2021012138
(87)【国際公開番号】W WO2021220673
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2020080177
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネ製品開発の加速化に向けた複合計測分析技術システム研究開発事業」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 智裕
(72)【発明者】
【氏名】永井 詩織
【審査官】平井 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-003750(JP,A)
【文献】特開2010-020677(JP,A)
【文献】特開2002-049729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサンプルの各々について複数種類の分析装置で取得された分析結果データを管理する複合分析データ管理システムであって、
前記複数のサンプルの各々と前記分析結果データとを紐付けて管理する複合分析データベースと、
前記複合分析データ管理システムにログイン可能な複数のユーザを管理するユーザデータベースと、
複数のプロジェクトを管理するプロジェクトデータベースと、
前記複数のプロジェクトの各々と、前記複数のサンプルから選択された少なくとも1つのサンプルとを紐付けて前記プロジェクトデータベースに登録するプロジェクト-サンプル登録手段と、
前記複数のプロジェクトの各々と、前記複数のユーザから選択された少なくとも1人のユーザとを紐付けて前記プロジェクトデータベースに登録するプロジェクト-ユーザ登録手段と、
前記複数のユーザのうちの一のユーザのログイン操作を受け付けたときに、ログインユーザを特定するログイン管理手段と、
前記ログインユーザが操作する情報端末に、前記ログインユーザに紐付けられたプロジェクトを選択可能に表示する表示制御手段とを備え、
前記表示制御手段はさらに、前記複合分析データベースから、前記ログインユーザが選択したプロジェクトに紐付けられたサンプルの前記分析結果データを抽出して、前記情報端末に表示する、複合分析データ管理システム。
【請求項2】
前記情報端末に表示されるデータの種別が指定されたテンプレートを管理するテンプレートデータベースと、
テンプレートごとに、前記複数のユーザから選択された少なくとも1人のユーザを紐付けて前記テンプレートデータベースに登録するテンプレート-ユーザ登録手段とをさらに備え、
前記表示制御手段は、前記情報端末に、前記ログインユーザに紐付けられたテンプレートを選択可能に表示し、かつ、前記ログインユーザが選択したプロジェクトに紐付けられたサンプルの前記分析結果データを、前記ログインユーザが選択したテンプレートを用いて前記情報端末に表示する、請求項1に記載の複合分析データ管理システム。
【請求項3】
前記テンプレートデータベースは、使用制限のあるテンプレートと、使用制限のないテンプレートとを管理し、
前記テンプレート-ユーザ登録手段は、前記使用制限のあるテンプレートについて、前記複数のユーザから選択された少なくとも1人のユーザを紐付けて前記テンプレートデータベースに登録するとともに、前記使用制限のないテンプレートについて前記複数のユーザを紐付けて前記テンプレートデータベースに登録する、請求項2に記載の複合分析データ管理システム。
【請求項4】
前記分析結果データは、
前記複数種類の分析装置でそれぞれ取得された複数の分析データと、
前記複数の分析データを解析して得られた少なくとも1つの特徴量とを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の複合分析データ管理システム。
【請求項5】
前記分析結果データは、前記複数の分析データ以外の情報から得られるサンプルの物性値をさらに含む、請求項4に記載の複合分析データ管理システム。
【請求項6】
複数のサンプルの各々について複数種類の分析装置で取得された分析結果データを管理する複合分析データ管理方法であって、
複合分析データベースを用いて、前記複数のサンプルの各々と前記分析結果データとを紐付けて管理するステップと、
ユーザデータベースを用いて、複数のユーザを管理するステップと、
プロジェクトデータベースを用いて、複数のプロジェクトを管理するステップと、
前記複数のプロジェクトの各々と、前記複数のサンプルから選択された少なくとも1つのサンプルとを紐付けて前記プロジェクトデータベースに登録するステップと、
前記複数のプロジェクトの各々と、前記複数のユーザから選択された少なくとも1人のユーザとを紐付けて前記プロジェクトデータベースに登録するステップと、
前記複数のユーザのうちの一のユーザのログイン操作を受け付けたときに、ログインユーザを特定するステップと、
前記ログインユーザが操作する情報端末に、前記ログインユーザに紐付けられたプロジェクトを選択可能に表示するステップと、
前記複合分析データベースから、前記ログインユーザが選択したプロジェクトに紐付けられたサンプルの前記分析結果データを抽出して、前記情報端末に表示するステップとを備える、複合分析データ管理方法。
【請求項7】
複数のサンプルの各々について複数種類の分析装置で取得された分析結果データを管理するための複合分析データ管理プログラムであって、コンピュータに、
複合分析データベースを用いて、前記複数のサンプルの各々と前記分析結果データとを紐付けて管理するステップと、
ユーザデータベースを用いて、複数のユーザを管理するステップと、
プロジェクトデータベースを用いて、複数のプロジェクトを管理するステップと、
前記複数のプロジェクトの各々と、前記複数のサンプルから選択された少なくとも1つのサンプルとを紐付けて前記プロジェクトデータベースに登録するステップと、
前記複数のプロジェクトの各々と、前記複数のユーザから選択された少なくとも1人のユーザとを紐付けて前記プロジェクトデータベースに登録するステップと、
前記複数のユーザのうちの一のユーザのログイン操作を受け付けたときに、ログインユーザを特定するステップと、
前記ログインユーザが操作する情報端末に、前記ログインユーザに紐付けられたプロジェクトを選択可能に表示するステップと、
前記複合分析データベースから、前記ログインユーザが選択したプロジェクトに紐付けられたサンプルの前記分析結果データを抽出して、前記情報端末に表示するステップとを実行させる、複合分析データ管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合分析データ管理システム、複合分析データ管理方法および複合分析データ管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の分析装置でそれぞれ得られた複数の分析結果を横断的に解析するための解析システム(以下、「複数分析装置横断解析システム」とも称する)が提案されている。この種の解析システムとして、例えば、特開2017-194360号公報(特許文献1)には、蛍光X線分析装置、原子吸光光度計および誘導結合プラズマ発光分析装置のうちの少なくとも1つと、赤外分光光度計およびラマン分光光度計のうちの少なくとも1つとを含む複数の分析装置を用いて、対象試料の測定データを取得し、取得した測定データに基づいて対象試料を特定する試料解析システムが開示されている。特許文献1では、無機物の分析に適した装置の測定データと、有機物の分析に適した装置の測定データとを併用することにより、対象試料の特定精度を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-194360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した複数分析装置横断解析システムによれば、1つのサンプルについて複数の分析装置による複数の分析結果が存在するため、これら複数の分析結果を用いてサンプルを多面的に解析することができる。よって、精度の高い解析が期待できる。
【0005】
その一方で、複数の分析結果の中には、新製品の開発など特定の目的のために取得された分析結果であって、当該開発に従事する者の間で秘密裏に管理されるべきものが含まれている。このような分析結果については、第三者に供用されることを回避するために、第三者の閲覧を制限する必要がある。
【0006】
本開示はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の分析装置による分析結果を横断的に解析するための解析システムにおいて、分析結果の秘匿性を確保しながら分析結果の共用を可能とするデータ管理を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様に係る複合分析データ管理システムは、複数のサンプルの各々について複数種類の分析装置で取得された分析結果データを管理する。複合分析データ管理システムは、複合分析データベースと、ユーザデータベースと、プロジェクトデータベースと、プロジェクト-サンプル登録手段と、プロジェクト-ユーザ登録手段と、ログイン管理手段と、表示制御手段とを備える。複合分析データベースは、複数のサンプルの各々と分析結果データとを紐付けて管理する。ユーザデータベースは、複合分析データ管理システムにログイン可能な複数のユーザを管理する。プロジェクトデータベースは、複数のプロジェクトを管理する。プロジェクト-サンプル登録手段は、複数のプロジェクトの各々と、複数のサンプルから選択された少なくとも1つのサンプルとを紐付けてプロジェクトデータベースに登録する。プロジェクト-ユーザ登録手段は、複数のプロジェクトの各々と、複数のユーザから選択された少なくとも1人のユーザとを紐付けてプロジェクトデータベースに登録する。ログイン管理手段は、複数のユーザのうちの1人のユーザのログイン操作を受け付けたときに、ログインユーザを特定する。表示制御手段は、ログインユーザが操作する情報端末に、ログインユーザに紐付けられたプロジェクトを選択可能に表示する。表示制御手段はさらに、複合分析データベースから、ログインユーザが選択したプロジェクトに紐付けられたサンプルの分析結果データを抽出して、情報端末に表示する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複数の分析装置による分析結果を横断的に解析するための解析システムにおいて、分析結果の秘匿性を確保しながら分析結果の共用を可能とするデータ管理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に従う複合分析データ管理システムの構成例を説明する概略図である。
図2】プロジェクトの概念を説明するための模式図である。
図3】情報処理装置、サーバおよび情報端末のハードウェア構成例を模式的に示す図である。
図4】情報処理装置、サーバおよび情報端末の機能構成を概略的に示す図である。
図5】データベースの機能構成を概略的に示す図である。
図6】複合分析データベースの構成例を模式的に示す図である。
図7】プロジェク-ユーザ登録情報を説明するための図である。
図8】プロジェク-サンプル登録情報を説明するための図である。
図9】ユーザU1に付与される権限の内容を説明するための図である。
図10】サーバにおけるユーザ権限の管理に関する処理を説明するためのフローチャートである。
図11】情報端末における表示処理を説明するためのフローチャートである。
図12】操作画面の一例を示す図である。
図13】テンプレート選択画面を示す図である。
図14】複数のサンプルの属性値を示す表の一例を模式的に示す図である。
図15】データベースの変更例の機能構成を概略的に示す図である。
図16】テンプレート-ユーザ登録情報を説明するための図である。
図17】テンプレート選択画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分について同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0011】
[複合分析データ管理システムの全体構成]
図1は、本実施の形態に従う複合分析データ管理システムの構成例を説明する概略図である。本実施の形態に従う複合分析データ管理システム100は、複数種類の分析装置による分析結果を横断的に解析するための複数分析装置横断解析システムに適用され得る。
【0012】
図1を参照して、複合分析データ管理システム100は、複数の分析装置4と、サーバ2と、データベース3と、複数の情報端末1とを備える。
【0013】
複数の分析装置4は、サンプルの分析を行なう。複数の分析装置4は、例えば、液体クロマトグラフ装置(LC)、ガスクロマトグラフ装置(GC)、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC-MS)、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)、波長分散型蛍光X線分析装置(WDX)および、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)などを含む。分析装置4はさらに、フォトダイオードアレイ検出器(LC-PDA)、液体クロマトグラフィータンデム質量分析装置(LC/MS/MS)、ガスクロマトグラフィータンデム質量分析装置(GC/MS/MS)、液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS-IT-TOF)、近赤外分光装置、引張試験機および、圧縮試験機などを含んでもよい。
【0014】
本実施の形態に係る複合分析データ管理システム100は、図1に示す複数の分析装置4を、互いに種類が異なる分析装置で構成することによって、1つのサンプルを複数の分析装置4を用いて多面的に分析することを可能とする。
【0015】
分析装置4は、装置本体5および情報処理装置6により構成される。装置本体5は、分析対象となるサンプルの分析を行なう。情報処理装置6には、サンプルの識別情報およびサンプルの分析条件が入力される。
【0016】
情報処理装置6は、入力された分析条件に従って、装置本体5における分析を制御する。これにより、装置本体5では、サンプルの分析結果を示す「分析データ」が取得される。また、情報処理装置6は、装置本体5にて取得された分析データを、専用のデータ解析ソフトウェアを用いて解析することにより、サンプルの「特徴量」を抽出する。
【0017】
情報処理装置6は、抽出したサンプルの特徴量を、当該サンプルの分析条件、識別情報および分析データとともに、内蔵するメモリに格納する。具体的には、情報処理装置6は、サンプルごとに、分析条件、サンプル識別情報、分析データおよび特徴量をまとめて「分析結果データ」としてメモリに格納する。
【0018】
情報処理装置6は、サーバ2と相互に通信可能に接続される。情報処理装置6およびサーバ2間の接続は有線であっても無線であってもよい。例えば、情報処理装置6とサーバ2とを繋ぐ通信網として、インターネットを利用することができる。これにより、各分析装置4の情報処理装置6は、サンプルごとの分析結果データをサーバ2に送信することができる。
【0019】
サーバ2は、主として、複数の分析装置4にて取得される分析結果データを管理するためのサーバである。サーバ2には、各分析装置4からサンプルごとの分析結果データが入力される。サーバ2にはさらに、サーバ2の外部からサンプルの「物性値」を入力することができる。
【0020】
サンプルの物性値とは、分析装置4による分析以外で得られる、サンプルの属性を示す値である。なお、上述した特徴量は、分析装置4による分析で得られるサンプルの属性値または、当該分析で得られた属性値に演算処理を施すことによって得られる属性値に相当する。サンプルの特徴量および物性値は、統計解析または機械学習に使用することができる。
【0021】
図1の例では、サーバ2にサンプルの物性値が入力される構成を示したが、分析装置4にサンプルの物性値が入力される構成としてもよい。この場合、分析装置4は、サーバ2に対して、サンプルごとに、分析結果データとともに物性値を送信することになる。あるいは、後述する情報端末1にサンプルの物性値が入力される構成としてもよい。
【0022】
サーバ2には、データベース3が接続されている。データベース3は、サーバ2と複数の分析装置4との間で遣り取りされるデータおよび、サーバ2の外部から入力されるデータを保存するための記憶部である。図1の例では、データベース3をサーバ2に外付けされた記憶部で構成しているが、サーバ2にデータベース3を内蔵する構成としてもよい。サーバ2は、サンプルの分析結果データおよび物性値を取得すると、サンプルごとに、分析結果データと物性値とを紐付けてデータベース3に格納する。
【0023】
サーバ2は、インターネット7に接続されている。さらにインターネット7には、複数の情報端末1が接続されている。これにより、複数の情報端末1の各々は、インターネット7を経由して、サーバ2との間で双方向にデータを送受信することができる。なお、サーバ2および情報端末1を繋ぐ通信網は、インターネット7に限定されるものではない。
【0024】
情報端末1は、ユーザ(例えば、解析者)により表示対象に選択されたサンプルの分析結果データおよび物性値を表示可能に構成される。情報端末1は、例えば、通信機能を備えたパーソナルコンピュータあるいは、携帯電話、スマートフォンまたはタブレットなどの携帯端末などである。
【0025】
具体的には、情報端末1は、ユーザによる表示対象の選択を受け付けると、インターネット7を経由してサーバ2にアクセスすることにより、データベース3に格納されている、表示対象に選択されたサンプルの分析結果データおよび物性値を取得する。情報端末1は、取得した分析結果データおよび物性値を表示画面に表示する。なお、複数のサンプルが表示対象に選択された場合には、情報端末1は、複数のサンプルの分析結果データおよび物性値を表示画面に並べて表示することができる。
【0026】
図1の例では、複数のユーザU1~Un(nは複数)の各々は、表示対象となるサンプルを選択することで、当該サンプルについて複数の分析装置4にて取得された分析結果データを閲覧することができる。これによると、複数の分析装置4による分析結果の横断的な解析が容易となるため、効率的かつ精度の高い解析の実現に寄与することができる。
【0027】
また、データベース3に格納されている複数のサンプルの分析結果データを複数のユーザU1~Unが共用することができるため、分析結果データを有効に利用することができる。
【0028】
その一方で、複数のサンプルの分析結果データの中には、新製品の開発など特定の目的のために取得された分析結果データであって、当該開発に従事する者の間で秘密裏に管理すべきものが含まれている。このような分析結果データについては、第三者に供用されることを回避するために、第三者の閲覧を制限する必要がある。
【0029】
そこで、本実施の形態に係る複合分析データ管理システム100では、サンプルの分析結果データの閲覧に対してユーザ権限を設定する構成とする。図1の例では、複合分析データ管理システム100の管理者M1は、複数のユーザU1~Unの各々に対して、データベース3に格納されている複数のサンプルの分析結果データを閲覧する権限を設定することができる。例えば、管理者M1は、サーバ2と相互に通信可能に接続されている情報処理装置8を用いて、ユーザ権限を設定することができる。
【0030】
各ユーザに付与される閲覧権限(すなわち、閲覧可能なデータ範囲)は、サンプルおよびユーザの属性に応じて設定することができる。本実施の形態では、サンプルおよびユーザの属性として「プロジェクト」と称する“枠”の概念を用いる。本明細書において「プロジェクト」とは、1つの製品の開発のように共通の目的の達成のために統制されるサンプルおよびユーザの集合体を規定する枠を意味する。
【0031】
図2は、プロジェクトの概念を説明するための模式図である。図2に示すように、ある製品Aを開発するためのプロジェクト(以下、「開発A」とも称する)には、その開発Aに従事する複数のユーザU1,U3,Un(例えば、設計者、製造者および分析者など)が属している。また、開発Aには、開発Aのために上述した複数の分析装置4によって取得された複数のサンプルSP1,SP4の分析結果データが属している。複数のユーザU1,U3,Unの各々には、開発Aに属しているサンプルSP1,SP4の分析結果データを閲覧する権限が付与される。
【0032】
プロジェクトに属するユーザおよびサンプルの分析結果データは、プロジェクトを管理するためのデータベース(以下、「プロジェクトデータベース」とも称する)に登録しておくことができる。これによると、例えば、開発Aの進行過程においてユーザU1が開発Aから離脱する場合には、プロジェクトデータベースにおいて開発AからユーザU1の登録を削除することによって、ユーザU1がサンプルSP1,SP4の分析結果データが閲覧する権限を自動的に無効とすることができる。
【0033】
反対に、新たなユーザが開発Aに参加する場合には、プロジェクトデータベースにおいて当該新たなユーザを開発Aに登録することによって、当該新たなユーザに対して、サンプルSP1,SP4の分析結果データを閲覧する権限を自動的に付与することができる。
【0034】
同様にして、開発Aの進行過程において開発Aのためにサンプルの分析結果データが取得されるごとに、取得された分析結果データを開発Aと紐付けてプロジェクトデータベースに登録することにより、新たに取得されたサンプルの分析結果データの閲覧権限を、開発Aに属するユーザに対して自動的に付与することができる。
【0035】
このように本実施の形態に従う複合分析データ管理システム100では、プロジェクトという枠に対してサンプルの分析結果データおよびユーザを登録する構成を採用することにより、その登録された情報に基づいて、各サンプルの分析結果データの閲覧に対するユーザ権限を容易に管理することができる。
【0036】
図1の例では、複数のユーザU1~Unは、複数のプロジェクトPJ1~PJm(mは複数)のいずれかに属している。したがって、複数のユーザU1~Unの各々は、自己が属する(登録されている)プロジェクトに登録されているサンプルの分析結果データを閲覧することができる。言い換えれば、自己が属していないプロジェクトに登録されているサンプルの分析結果データを閲覧することができない。なお、ユーザは2以上のプロジェクトに属することができる。
【0037】
[複合分析データ管理システムのハードウェア構成例]
図3は、情報処理装置6、サーバ2および情報端末1のハードウェア構成例を模式的に示す図である。
【0038】
図3を参照して、情報処理装置6は、分析装置4全体を制御するためのCPU(Central Processing Unit)60と、プログラムおよびデータを格納する記憶部とを備えており、プログラムに従って動作するように構成される。
【0039】
記憶部は、ROM(Read Only Memory)61と、RAM(Random Access Memory)62と、HDD(Hard Disk Drive)65とを含む。ROM61は、CPU60にて実行されるプログラムを格納することができる。RAM62は、CPU60におけるプログラムの実行中に利用されるデータを一時的に格納することができ、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能することができる。HDD65は、不揮発性の記憶装置であり、装置本体5による測定データおよび情報処理装置6による分析結果など情報処理装置6で生成された情報を格納することができる。HDD65に加えて、あるいは、HDD65に代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用してもよい。
【0040】
情報処理装置6は、さらに、通信インターフェイス(I/F)66、入力部63および表示部64を含む。通信I/F66は、情報処理装置6が装置本体5およびサーバ2を含む外部機器と通信するためのインターフェイスである。
【0041】
入力部63は、ユーザ(例えば、分析者)からの情報処理装置6に対する指示を含む入力を受け付ける。入力部63は、キーボード、マウスおよび、表示部64の表示画面と一体的に構成されたタッチパネルなどを含み、サンプルの分析条件および識別情報などを受け付ける。
【0042】
表示部64は、分析条件を設定する際に、例えば分析条件の入力画面およびサンプルの識別情報などを表示することができる。分析中、表示部64は、装置本体5で検出された測定データおよび情報処理装置6による分析結果を表示することができる。
【0043】
分析装置4における処理は、各ハードウェアおよびCPU60により実行されるソフトウェアによって実現される。このようなソフトウェアはROM61またはHDD65に予め記憶されている場合がある。また、ソフトウェアは、図示しない記憶媒体に格納されて、プログラムプロダクトとして流通している場合もある。そして、ソフトウェアは、CPU60によってHDD65から読み出され、CPU60により実行可能な形式でRAM62に格納される。CPU60は、このプログラムを実行する。
【0044】
(サーバのハードウェア構成)
サーバ2は、装置全体を制御するためのCPU20と、プログラムおよびデータを格納する記憶部とを備えており、プログラムに従って動作するように構成される。記憶部は、ROM21、RAM22およびHDD25を含む。
【0045】
ROM21は、CPU20にて実行されるプログラムを格納することができる。RAM22は、CPU20におけるプログラムの実行中に利用されるデータを一時的に格納することができ、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能することができる。HDD25は、不揮発性の記憶装置であり、情報処理装置6から送信された情報を格納することができる。
【0046】
サーバ2は、さらに、通信I/F26、入出力インターフェイス(I/O)24、入力部23を含む。通信I/F26は、サーバ2が情報処理装置6,8および情報端末1を含む外部機器と通信するためのインターフェイスである。
【0047】
I/O24は、サーバ2への入力またはサーバ2への出力のインターフェイスである。I/O24はデータベース3に接続される。データベース3は、サーバ2および情報処理装置6,8の間で送受信されるデータを蓄積するためのメモリである。
【0048】
入力部23は、キーボードおよびマウスなどを含み、ユーザ(例えば、管理者M1)からの指示を含む入力を受け付ける。また、入力部23は、サンプルの物性値に関する情報などを受け付ける。
【0049】
(情報端末のハードウェア構成)
情報端末1は、装置全体を制御するためのCPU10と、プログラムおよびデータを格納する記憶部とを備えており、プログラムに従って動作するように構成される。記憶部は、ROM11、RAM12およびHDD15を含む。
【0050】
ROM11は、CPU10にて実行されるプログラムを格納することができる。RAM12は、CPU10におけるプログラムの実行中に利用されるデータを一時的に格納することができ、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能することができる。HDD15は、不揮発性の記憶装置であり、サーバ2から送信された情報を格納することができる。
【0051】
情報端末1は、さらに、通信I/F16、入力部13および表示部14を含む。通信I/F16は、情報端末1がサーバ2を含む外部機器と通信するためのインターフェイスである。
【0052】
入力部13は、ユーザ(例えば、解析者)からの情報端末1に対する指示を含む入力を受け付ける。具体的には、入力部13は、キーボード、マウスおよび、表示部14の表示画面と一体的に構成されたタッチパネルなどを含み、表示対象の選択などを受け付ける。
【0053】
表示部14は、表示対象を選択する際に、例えば表示対象を選択するための操作画面などを表示することができる。表示部14はさらに、表示対象に選択されたサンプルの分析結果データを表示することができる。
【0054】
情報端末1における処理は、各ハードウェアおよびCPU10により実行されるソフトウェアによって実現される。このようなソフトウェアはROM11またはHDD15に予め記憶されている場合がある。また、ソフトウェアは、図示しない記憶媒体に格納されて、プログラムプロダクトとして流通している場合もある。そして、ソフトウェアは、CPU10によってHDD15から読み出され、CPU10により実行可能な形式でRAM12に格納される。CPU10は、このプログラムを実行する。
【0055】
[複合分析データ管理システムの機能構成]
図4は、情報処理装置6、サーバ2および情報端末1の機能構成を概略的に示す図である。
【0056】
(情報処理装置の機能構成)
図4を参照して、情報処理装置6は、分析データ取得部67と、特徴量抽出部68と、情報取得部69とを有する。これらの機能構成は、図3に示す情報処理装置6において、CPU60が所定のプログラムを実行することで実現される。
【0057】
分析データ取得部67は、装置本体5から、サンプルの分析結果を示す分析データを取得する。例えば、分析装置4がクロマトグラフ質量分析装置である場合、分析データには、クロマトグラムおよびマススペクトルが含まれる。分析装置4が走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡である場合、分析データにはサンプルの顕微鏡像を示す画像データが含まれる。分析データ取得部67は、取得した分析データを特徴量抽出部68へ転送する。
【0058】
特徴量抽出部68は、分析データ取得部67から転送された分析データを専用のデータ解析ソフトウェアを用いて解析することにより、サンプルの特徴量を抽出する。サンプルの特徴量には例えば、サンプルに含まれる成分、当該成分を有する粒子の粒子径、スペクトルのピーク強度およびピーク面積、吸光度、反射率、試験強度、ヤング率、引張強度、変形量、歪み量ならびに破断時間などが含まれる。例えば、分析データがクロマトグラムである場合、特徴量にはピーク強度およびピーク面積が含まれる。
【0059】
情報取得部69は、入力部63が受け付けた情報を取得する。具体的には、情報取得部69は、サンプル識別情報およびサンプルの分析条件を示す情報を取得する。サンプル識別情報には、例えば、サンプル名、サンプルを採取した元の材料の名称、型番およびシリアル番号などが含まれる。サンプルの分析条件には、使用する分析装置の名称および型番などを含む装置パラメータと、電圧および/または電流の印加条件または温度条件などの測定条件を示す測定パラメータとが含まれる。
【0060】
通信I/F66は、取得した分析データ、分析条件およびサンプル識別情報ならびに、抽出した特徴量を、サンプル単位でまとめて分析結果データとしてサーバ2へ送信する。
【0061】
(サーバの機能構成)
サーバ2は、分析結果データ取得部27、物性値取得部28、合成部29、登録情報取得部30および管理部31を有する。これらの機能構成は、図3に示すサーバ2において、CPU20が所定のプログラムを実行することで実現される。
【0062】
分析結果データ取得部27は、通信I/F26を介して、各分析装置4の情報処理装置6から送信された分析結果データを取得する。上述したように、分析結果データは、分析装置4で取得された分析データ、分析条件およびサンプル識別情報ならびに、分析データから抽出された特徴量を、サンプル単位でまとめたものである。
【0063】
物性値取得部28は、入力部63が受け付けたサンプルの物性値を示す情報を取得する。サンプルの物性値とは、分析装置4による分析以外で得られる、サンプルの属性を示す値であり、例えば、サンプルの性能を示す値、またはサンプルの劣化度合いを示す値(使用年数など)などが含まれる。
【0064】
合成部29は、サンプルごとに、分析結果データ(サンプル識別情報、分析条件、分析データおよび特徴量)と、物性値とを紐付ける。合成部29は、サンプルごとに紐付けられたこれらのデータを、I/O24を経由してデータベース3に格納する。1つのサンプルに対して複数の分析装置4による複数の分析結果データが存在する場合、サーバ2は、これらの複数の分析結果データを一括したものを物性値と紐付けてデータベース3に格納する。これにより、データベース3には、サンプル単位で、分析結果データが蓄積されることになる。
【0065】
登録情報取得部30は、通信I/F26が受け付けたプロジェクトに関連する情報を取得する。プロジェクトに関連する情報は、複合分析データ管理システム100の管理者M1により登録される。プロジェクトに関連する情報には、プロジェクトと、プロジェクトに属するユーザとを紐づけて管理するための「プロジェクト-ユーザ情報」と、プロジェクトと、プロジェクトに属するユーザに分析結果データを閲覧する権限が付与されるサンプルとを紐づけて管理するための「プロジェクト-サンプル情報」とが含まれる。
【0066】
管理部31は、登録情報取得部30が取得したプロジェクトに関連する情報を、I/O24を経由してデータベース3に格納する。管理部31はさらに、データベース3に格納されるプロジェクトに関連する情報に基づいて、ログインユーザによる分析結果データの閲覧を管理する。具体的には、複数のユーザU1~Unのうちの一のユーザが複合分析データ管理システム100にログインした場合、管理部31は、ログインユーザを特定するとともに、プロジェクト-ユーザ情報およびプロジェクト-サンプル情報に基づいて、ログインユーザが閲覧できるデータ範囲を管理するように構成される。管理部31は、「プロジェクト-サンプル登録手段」、「プロジェクト-ユーザ登録手段」および「ログイン管理手段」を実現する。
【0067】
(情報端末の機能構成)
情報端末1は、選択部17、表示データ生成部18および表示制御部19を有する。これらの機能構成は、図3に示す情報端末1において、CPU10が所定のプログラムを実行することで実現される。
【0068】
選択部17は、入力部13が受け付けたユーザ指示に従って、情報端末1に表示する対象を選択する。この表示対象の選択には、プロジェクトの選択、サンプルの選択およびサンプルの属性値(特徴量および物性値)の選択が含まれる。後述するように、情報端末1の表示部14には、複合分析データ管理システム100にログインして表示対象を選択するための操作画面が表示される。ユーザは、操作画面上で入力部13を用いてログイン操作および選択操作を行なうことができる。
【0069】
具体的には、選択部17は、複数のプロジェクトPJ1~PJmの中から、ユーザの選択操作に従って、1つのプロジェクトを選択する。選択部17はまた、選択されたプロジェクトにより管理される少なくとも1つのサンプルの中から、ユーザの選択操作に従って、表示対象となるサンプルを選択する。選択部17はさらに、ユーザの選択操作に従って、選択されたサンプルについて、表示対象となる属性値(特徴量および物性値)を選択する。
【0070】
表示データ生成部18は、インターネット7を経由してサーバ2にアクセスすることにより、データベース3から、表示対象に選択されたサンプルの分析結果データを取得する。上述したように、分析結果データは、複数の分析装置4によるサンプルの分析データおよびその分析条件、サンプル識別情報ならびに、分析データから抽出された特徴量を含んでいる。また、分析結果データには、サンプルごとに、物性値が紐付けられている。
【0071】
表示データ生成部18は、データベース3から取得した分析結果データから、分析データと、選択部17により選択された属性値とを抽出することにより、表示画面上に表示可能な表示形式の表示データを生成する。
【0072】
表示制御部19は、表示データ生成部18により生成された表示データを表示部14に表示する。表示制御部19は、表示形式に対するユーザ指示を入力部13が受け付けた場合には、当該ユーザ指示に従って表示形式を変更することができる。表示データ生成部18および表示制御部19は「表示制御手段」の一実施例に対応する。
【0073】
(データベースの機能構成)
図5は、データベース3の機能構成を概略的に示す図である。
【0074】
図5を参照して、データベース3は、複合分析データベースDB1と、ユーザデータベースDB2と、プロジェクトデータベースDB3と、テンプレートデータベースDB4とを有する。
【0075】
複合分析データベースDB1は、複数のサンプルの各々について、複数の分析装置4(図1参照)によって取得された分析結果データを管理するためのデータベースである。図6は、複合分析データベースDB1の構成例を模式的に示す図である。図6に示すように、複合分析データベースDB1には、複数の分析装置4によって取得された複数のサンプルの分析結果データが格納されている。
【0076】
複数のサンプルの分析結果データは、サンプル単位でまとめられている。図6には、複数のサンプルSP1~SPx(xは複数)のうちのサンプルSP1の分析結果データの内容が示されている。サンプルSP1の分析結果データは、複数の分析装置4によりそれぞれ取得された複数の分析データを含んでいる。
【0077】
なお、サンプルSP1の分析においては、サンプルSP1から、第1分析装置4~第i分析装置4(iは複数)でそれぞれ分析するのに適した状態の複数の試料SP1a~SP1iが準備される。サンプルSP1が固体である場合、試料SP1a~SP1iには、サンプルSP1の一部を採取したもの以外に、サンプルSPの一部を水溶液化したもの、サンプルSPの一部を気化したものなどが含まれる場合がある。
【0078】
試料SP1a~SP1iは、第1分析装置4~第i分析装置4によってそれぞれ分析される。第1分析装置4がクロマトグラフ質量分析装置である場合、第1分析装置4にて取得される第1分析データには、クロマトグラムおよびマススペクトルが含まれる。第2分析装置4が走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡である場合、第2分析装置4にて取得される第2分析データにはサンプルの顕微鏡像を示す画像データが含まれる。
【0079】
第1分析装置4により取得された第1分析データ、第2分析装置4にて取得された第2分析データ、および第i分析装置4にて取得された第i分析データは、サンプルSP1の分析結果データとして1つにまとめられる。
【0080】
サンプルSP1の分析結果データには、サンプルSP1の分析データを専用のデータ解析ソフトウェアを用いて解析することにより抽出された特徴量が含まれる。例えば、第1分析データがクロマトグラムである場合、第1分析データから抽出される第1特徴量および第2特徴量には、ピーク強度およびピーク面積が含まれる。第2分析データがSEM画像である場合、第2分析データから抽出される第3特徴量から第5特徴量には、SEM画像から得られた平均粒子径などの粒子径情報が含まれる。
【0081】
サンプルSP1の分析結果データには、サンプルSP1の物性値がさらに含まれる。サンプルSP1の物性値は、分析装置4による分析以外で得られる、サンプルSP1の属性を示す値である。第1物性値および第2物性値には、サンプルSP1の性能を示す値、サンプルSP1の劣化度合いを示す値などが含まれる。
【0082】
図5に戻って、ユーザデータベースDB2は、複合分析データ管理システム100にアクセス(ログイン)可能な複数のユーザU1~Unを管理するためのデータベースである。ユーザデータベースDB2には、複数のユーザU1~Unの各々の識別情報(ユーザIDなど)が格納されている。
【0083】
プロジェクトデータベースDB3は、複数のプロジェクトPJ1~PJmを管理するためのデータベースである。プロジェクトデータベースDB3には、プロジェクト-ユーザ登録情報と、プロジェクト-サンプル登録情報とが格納されている。
【0084】
図7は、プロジェクト-ユーザ登録情報を説明するための図である。図7に示すように、プロジェクト-ユーザ登録情報には、プロジェクトPJ1~PJmの各々について、プロジェクトにより管理される少なくとも1人のユーザの情報(ユーザ識別情報など)が含まれている。図7の例では、プロジェクトPJ1にはユーザU1~U3が登録されており、プロジェクトPJ2にはユーザU3~U5が登録されており、プロジェクトPJ4にはユーザU1~Unの全員が登録されている。
【0085】
ユーザは、2以上のプロジェクトに登録される場合がある。図7の例では、ユーザU1は、プロジェクトPJ1とプロジェクトPJ4とに登録されている。この場合、ユーザU1は、複合分析データ管理システム100にログインする際に、プロジェクトPJ1およびプロジェクトPJ4の少なくとも一方を選択することができる。
【0086】
図8は、プロジェクト-サンプル登録情報を説明するための図である。図8に示すように、プロジェクト-サンプル登録情報には、プロジェクトPJ1~PJmの各々について、プロジェクトにより管理される少なくとも1つのサンプルの情報が含まれる。図8の例では、プロジェクトPJ1にはサンプルSP1~SP3,SP5が登録されており、プロジェクトPJ2にはサンプルSP4,Spx(xは複数)が登録されており、プロジェクトPJmにはサンプルSP1~SPxの全てが登録されている。
【0087】
図7および図8によれば、プロジェクトPJ1に属するユーザ(ユーザU1~U3)は、サンプルSP1~SP3,SP5の分析結果データを閲覧する権限が付与される一方で、これら以外のサンプルSPの分析結果データの閲覧が制限されることになる。プロジェクトPJmに属するユーザ(ユーザU4,U5,Un)は、サンプルSP1~SPxの全ての分析結果データを閲覧する権限が付与されることになる。
【0088】
このように、各ユーザは、自己が属するプロジェクトに応じて、複合分析データベースDB1(図6参照)に格納されている複数のサンプルSP1~SPxの分析結果データのうちの閲覧できるデータ範囲が決められる。図9は、ユーザU1に付与される権限の内容を説明するための図である。
【0089】
図7のプロジェクト-ユーザ登録情報によれば、ユーザU1は、プロジェクトPJ1およびプロジェクトPJ4に登録されている。したがって、ユーザU1は、複合分析データ管理システム100にログインする際、プロジェクトPJ1およびプロジェクトPJ4の少なくとも一方を選択することができる。
【0090】
図8のプロジェクト-サンプル登録情報によれば、プロジェクトPJ1にはサンプルSP1~SP3,SP5が登録されており、プロジェクトPJ4にはサンプルSP2,SP5,SPxが登録されている。
【0091】
したがって、ユーザU1がプロジェクトPJ1を選択した場合には、図9(A)に示すように、ユーザU1は、プロジェクトPJ1により管理されるサンプルSP1~SP3,SP5の分析結果データのみを閲覧することができる。ユーザU1がプロジェクトPJ4を選択した場合には、図9(B)に示すように、ユーザU1は、プロジェクトPJ4により管理されるサンプルSP2,SP5,SPxの分析結果データのみを閲覧することができる。
【0092】
このように、ユーザが複数のプロジェクトに登録されている場合、複合分析データ管理システム100へのログイン時に選択するプロジェクトによって、当該ユーザの閲覧できるデータ範囲が異なる。
【0093】
図5に戻って、テンプレートデータベースDB4は、サンプルの属性値(特徴量および物性値)を表示するために予め作成された複数のテンプレートを管理するためのデータベースである。サンプルの属性値は、サンプルの分析データから抽出された特徴量と、サンプルの物性値とを含む。サンプルによっては物性値を持たない場合がある。また、サンプル間で物性値の種類が異なる場合がある。各テンプレートには、分析装置4ごとに分析データから抽出可能な特徴量の種別が指定されている。各テンプレートでは、特徴量とともに物性値の種別を指定することができる。テンプレートを複数種類作成しておくことで、サンプルの属性値の選択操作を簡易化することができる。
【0094】
[複合分析データ管理システムの動作]
次に、複合分析データ管理システム100の動作について説明する。以下の説明では、サーバ2にて実施されるユーザ権限の管理に関する処理、および情報端末1にて実施される表示処理を説明する。
【0095】
図10は、サーバ2におけるユーザ権限の管理に関する処理を説明するためのフローチャートである。図10のフローチャートに従うプログラムは予めサーバ2のROM21に格納される。CPU20が当該プログラムを実行することで処理が実現される。図10に示されるステップの順序はこれに限られず、任意に変更することが可能である。また、各ステップは、必要に応じて繰り返し行なうことができる。
【0096】
サーバ2は、入力部23において複数の分析装置4からの分析結果データおよび物性値の入力、および管理者M1からのプロジェクトに関連する情報の入力を受け付けると、図10に示す処理を開始する。
【0097】
サーバ2は、最初に、ステップS10により、複数のサンプルSP1~SPxの分析結果データをデータベース3内の複合分析データベースDB1に格納する(図6参照)。
【0098】
サーバ2は、ステップS11により、複合分析データ管理システム100にログイン可能な複数のユーザU1~Unをデータベース3内のユーザデータベースDB2に格納する。
【0099】
サーバ2は、ステップS12,S13により、複合分析データ管理システム100の管理者M1から受け付けたプロジェクト-ユーザ登録情報(図7参照)およびプロジェクト-サンプル登録情報(図8参照)を、データベース3内のプロジェクトデータベースDB3に格納する。ステップS13の処理は、ステップS10の処理と同時に行なうことも可能である。
【0100】
サーバ2は、ステップS14により、複数種類のテンプレートをテンプレートデータベースDB4に格納する。
【0101】
図11は、情報端末1における表示処理を説明するためのフローチャートである。図11のフローチャートに従うプログラムは予め情報端末1のROM11に格納される。CPU10が当該プログラムを実行することで処理が実現される。
【0102】
情報端末1は、入力部13においてユーザのグイン操作を受け付けると、図11に示す表示処理を開始する。情報端末1は、最初に、ステップS21により、表示部14に、複合分析データ管理システム100にログインするための操作画面(以下、「ログイン画面」とも称する)を表示する。図12は、操作画面の一例を示す図である。操作画面は、データベース3に蓄積されているデータに基づいて生成することができる。
【0103】
図12(A)は、ログイン画面の一例を示す図である。ログイン画面には、複数のアイコン110,112,114,116が表示される。アイコン110は、ユーザの識別情報を入力するためのアイコンである。ユーザは入力部13を用いてアイコン110をクリックし、自己のユーザIDなどを入力することができる。
【0104】
アイコン112,114は、プロジェクトを選択するためのアイコンである。アイコン112は、選択するプロジェクトの識別情報(プロジェクトIDなど)を入力するためのアイコンである。
【0105】
ユーザが自己のユーザIDをアイコン110に入力すると、アイコン112の下方には、ユーザが属しているプロジェクトの一覧を示すアイコン114が表示される。図12(A)に示すように、ユーザU1が複合分析データ管理システム100にログインする場面では、ログイン画面のアイコン114には、プロジェクトPJ1,PJ4のIDが表示される。ユーザU1は、入力部13を用いてプロジェクトPJ1およびプロジェクトPJ4のいずれか一方を選択することができる。なお、ユーザU1がプロジェクトPJ1を選択した場合、アイコン112にはプロジェクトPJ1のIDが自動的に入力される。
【0106】
ユーザIDおよびプロジェクトIDを入力した後に、入力部13を用いて、ログインを指示するためのアイコン116をクリックすることにより、ユーザU1は複合分析データ管理システム100にログインすることができる。
【0107】
ユーザU1が複合分析データ管理システム100にログインすると、情報端末1は、図12(B)に示すように、表示対象となるサンプルを選択するための操作画面(以下、「サンプル選択画面」とも称する)を表示する。サンプル選択画面には、複数の分析装置4(図1参照)のいずれかにより分析されたサンプルの一覧が表示される。図12(B)では、複数のサンプルSP1~SPxが表示されている。
【0108】
複数のサンプルSP1~SPxの各々は、アイコン118の形式で表示される。ただし、複数のサンプルSP1~SPxにそれぞれ対応する複数のアイコン118のうち、ログイン画面(図12(A)参照)において選択されたプロジェクトに登録されているサンプルのアイコン118のみが、ユーザの選択操作を受け付け可能に構成されている。例えば、ログイン画面においてユーザU1がプロジェクトPJ1を選択した場合、複数のアイコン118のうち、プロジェクトPJ1に登録されているサンプルSP1~SP3,SP5に対応する4個のアイコン118のみがユーザU1の選択操作を受け付け可能となり、残りのアイコン118はユーザU1の選択操作を受け付けることができない。
【0109】
なお、図12(B)では、複数のサンプルSP1~SPxの全てを操作画面に表示させる構成を例示したが、プロジェクトPJ1に登録されているサンプルSP1~SP3,SP5に対応するアイコン118のみをサンプル選択画面に表示させる構成としてもよい。すなわち、サンプルSP1~SP3,SP5以外のサンプルのアイコンはサンプル選択画面に表示させない構成とすることができる。これによると、ユーザU1に対して、プロジェクトPJ1以外のプロジェクトに登録されているサンプルの存在自体を秘匿することができる。
【0110】
図12(B)の例では、4個のサンプルSP1~SP3,SP5のうちの少なくとも1つのサンプルを示すアイコン118をユーザU1がクリックすることにより、表示対象のサンプルを選択することができる。
【0111】
なお、図12(A)では、複合分析データ管理システム100にログインするときに、プロジェクトを選択する構成例について説明したが、ログイン後にユーザはプロジェクトを選択することも可能である。サンプルの分析結果データを閲覧するアプリケーションを実行するときに、プロジェクトが選択されていればよい。
【0112】
また、図12(B)では、複数のサンプルSP1~SPxをアイコンの形式で表示する例について説明したが、表示の態様はこれに限定されない。例えば、データ管理アプリケーションについては、各サンプルの下に、分析結果データに含まれる複数のデータファイルがツリー形式で表示される構成としてもよい。
【0113】
サンプル選択画面に表示されている少なくとも1つのアイコン118をユーザがクリックすると、表示部14には、図13に示すテンプレート選択用の操作画面(以下、「テンプレート選択画面」とも称する)が表示される。図13を参照して、テンプレート選択画面には、予め作成された複数のテンプレートの一覧が表示される。図13の例では、複数のテンプレートTMP1,TMP2,・・・の各々がアイコン119の形式で表示されている。
【0114】
各テンプレートには、分析装置4ごとに分析データから抽出可能な特徴量の種別が指定されている。例えば、入力部13を用いてテンプレートTMP3を示すアイコン119をクリックすると、テンプレートTMP3の内容を示す画像120がテンプレート選択画面に表示される。テンプレートTMP3の画像120には、複数の特徴量(第1特徴量、第3特徴量、・・・第p特徴量(pは複数))の種別が指定されている。
【0115】
なお、各テンプレートでは、特徴量とともに物性値の種別を指定することができる。例えば、テンプレートTMP3では、複数の物性値(第2物性値、・・・第q物性値(qは複数))の種別が指定されている。
【0116】
サンプルの属性値(特徴量および物性値)の種別を指定したテンプレートを複数種類作成しておくことで、ユーザによる表示対象となる属性値の選択操作を簡易化することができる。図13の例では、複数のテンプレートのうちのいずれか1つのテンプレートを示すアイコン119をユーザがクリックすることにより、分析結果データに含まれる複数の属性値の中から表示対象となる属性値を選択することができる。
【0117】
図11に戻って、情報端末1は、図12(A)のログイン画面上でユーザIDの入力を受け付けると、ステップS22により、ユーザデータベースDB2を参照することにより、ログインユーザを特定する。次に、情報端末1は、プロジェクトデータベースDB3に格納されているプロジェクト-ユーザ登録情報に基づいて、特定されたログインユーザが属しているプロジェクトの一覧を示すアイコン114をログイン画面上に表示する。アイコン114に対するプロジェクトを選択する操作を受け付けると、情報端末1は、ステップS24により、プロジェクトを選択する。
【0118】
続いて、情報端末1は、ステップS25により、図12(B)のサンプル選択画面を表示する。情報端末1は、プロジェクトデータベースDB3に格納されているプロジェクト-サンプル登録情報に基づいて、選択されたプロジェクトに登録されているサンプルのアイコン118を、ユーザの選択操作を受け付け可能に表示する。サンプル選択画面上でのユーザの選択操作を受け付けると、情報端末1は、ステップS26により、選択操作に従ってサンプルを選択する。
【0119】
次に、情報端末1は、ステップS27により、図13のテンプレート選択画面を表示する。情報端末1は、複数種類のテンプレートに対応する複数のアイコン119を、ユーザの選択操作を受け付け可能に表示する。テンプレート選択画面上でのユーザの選択操作を受け付けると、情報端末1は、ステップS28により、選択操作に従ってテンプレート(すなわち、サンプルの属性値)を選択する。
【0120】
情報端末1は、ステップS29に進み、表示データを生成する。具体的には、情報端末1は、インターネット7を経由してサーバ2にアクセスすることにより、データベース3の複合分析データベースDB1から、ステップS26で選択されたサンプルの分析結果データを取得する。
【0121】
次に、情報端末1は、サンプルごとに、取得した分析結果データから、分析データと、ステップS28にて選択されたテンプレートにより指定されるサンプルの属性値(特徴量および物性値)とを抽出する。情報端末1は、ステップS29により、これらの抽出したデータに基づいて表示データを生成する。
【0122】
次に、情報端末1は、ステップS30に進み、生成された表示データを表示部14の表示画面に表示する。表示画面には、表示対象のサンプルの分析結果データが表示される。これによると、ユーザは、1つのサンプルに紐付いた複数の分析データおよび属性値を閲覧することができる。
【0123】
なお、ステップS26において複数のサンプルが選択された場合には、表示画面には複数のサンプルの分析結果データが並べて表示される。これによると、ユーザは、複数のサンプル間で分析データおよび属性値を比較参照することができる。
【0124】
特に、サンプルの属性値については、情報端末1は、複数のサンプルの属性値を表の形式でまとめて表示することができる。図14は、複数のサンプルの属性値を示す表の一例を模式的に示す図である。図14に示す表は、図11のステップS28で選択されたテンプレートを用いて作成することができる。図14には、テンプレートTMP3を用いて、プロジェクトPJ1に登録されている複数のサンプルSP1~SP3,SP5の属性値(特徴量および物性値)をまとめた表が例示されている。
【0125】
図14に示すように、各サンプルの属性値は、サンプルを行とし、属性値(特徴量/物性値)を列とする表にマトリクス状に配置される。すなわち、複数のサンプルの特徴量/物性値が種類ごとに列方向に並べて表示されている。したがって、ユーザは、1つの特徴量/物性値に対応する列を参照することにより、複数のサンプル間で当該特徴量/物性値を容易に比較することができる。
【0126】
なお、図14の表では、サンプルの分析結果データ内に該当する特徴量/物性値が含まれていない場合には、その特徴量/物性値は空欄で表示される。
【0127】
以上説明したように、本実施の形態に係る複合分析データ管理システム100によれば、プロジェクトデータベースDB3において、プロジェクトごとにユーザを紐付けて登録するとともに、プロジェクトごとに、分析結果データの閲覧が管理されるサンプルを紐付けて登録しておくことにより、各ユーザに対して、そのユーザが登録されているプロジェクトに登録されているサンプルの分析結果データの閲覧権限を付与することができる。同時に、プロジェクトに登録されているサンプルの分析結果データが、当該プロジェクトに登録されていない第三者に閲覧されることを防止することができる。これによると、分析結果データの秘匿性を確保しながら分析結果データの共用を可能とするデータ管理を簡易に実現することができる。
【0128】
なお、本実施の形態に係る複合分析データ管理システム100によれば、「プロジェクト」という枠を用いてユーザ権限を設定する構成としたことにより、プロジェクトへのユーザおよびサンプルの登録によってユーザの分析結果データの閲覧を管理することができる。これによると、ユーザごとに分析結果データの閲覧を設定する構成に比べて、分析結果データの管理を容易化することができる。
【0129】
[その他の構成例]
(1)テンプレートの使用制限
上述した実施の形態では、予め作成された複数種類のテンプレートの中から、表示対象となるサンプルの属性値(特徴量および物性値)の種別が指定されているテンプレートを選択することによって、ユーザは、所望のサンプルの属性値を簡易に閲覧することができる。
【0130】
その一方で、1つのサンプルに由来する複数の特徴量には、分析データから一意に抽出される特徴量(例えば、クロマトグラムにおけるピーク強度やピーク面積など)以外に、抽出した特徴量をさらに解析して得られた特徴量が含まれる場合がある。このような特徴量は、プロジェクトの目的(例えば、製品の目標性能または目標品質)のために独自の視点で解析して得られたものを含んでいる。このような特徴量は、第三者に知られると、プロジェクトの目的および開発戦略、ならびにノウハウなどが第三者に流出してしまう可能性があるため、秘匿化することが求められる。同様の趣旨から、サンプルの物性値についても秘匿すべきものが含まれる場合がある。
【0131】
このような特徴量および物性値の秘匿性を確保するために、複数種類のテンプレートの一部に対して使用制限を設ける構成とする。具体的には、使用制限があるテンプレートについて、テンプレートごとにユーザ権限を設定する。
【0132】
図15は、データベース3の変更例の機能構成を概略的に示す図である。図15に示すデータベース3は、図5に示すデータベース3と比較して、テンプレートデータベースDB4の構成が異なる。本変更例に係るテンプレートデータベースDB4は「テンプレート-ユーザ登録情報」を含んでいる。
【0133】
テンプレート-ユーザ登録情報とは、テンプレートと、ユーザとを紐づけて管理するための情報である。図16は、テンプレート-ユーザ登録情報を説明するための図である。図16の例では、複数のテンプレートTMP1~TMPy(yは複数)のうちTMP1~TMP5は、使用制限のない汎用のテンプレートである。使用制限のないテンプレートは、代表的には、分析データから一意に抽出される特徴量の種別が指定されたテンプレートである。
【0134】
複数のテンプレートTMP1~TMPyのうちTMP6~TMPyは、使用制限が設けられたテンプレートである。使用制限が設けられたテンプレートは、分析データから一意に抽出される特徴量以外に、当該特徴量を独自の知識やノウハウを用いて解析して得られる特徴量の種別が指定されたテンプレートである。
【0135】
テンプレートTMP1~TMP5の各々には、複数のユーザU1~Unの全員が登録されている。すなわち、複数のユーザU1~Unの各々は、テンプレートTMP1~TMP5を自由に使用することができる。これに対して、テンプレートTMP6~TMPyについては、テンプレートごとに、使用が許可されるユーザが登録されている。例えば、テンプレートTMP6には、ユーザU1,U3,U4が登録されている。したがって、ユーザU1,U3,U4のみがテンプレートTMP6を使用することができる。
【0136】
図17は、テンプレート選択画面を示す図である。図17を参照して、テンプレート選択画面には、予め作成された複数のテンプレートの一覧が表示される。図17の例では、複数のテンプレートTMP1~TMPyがアイコン119の形式で表示されている。
【0137】
複数のテンプレートTMP1~TMPyのうち使用制限があるテンプレートTMP6~TMPyについては、対応するアイコン119に「鍵」のマークK1が付されている。鍵のマークK1が付されたテンプレートについては、テンプレート-ユーザ登録情報(図16参照)に登録されているユーザのみが選択することができるように構成されている。すなわち、テンプレート-ユーザ登録情報に登録されていないユーザは、このテンプレートの中身を見ることができない仕組みとなっている。
【0138】
このように、秘匿すべき属性値の種別が指定されているテンプレートについては使用制限を設けることにより、当該属性値の秘匿性を確保しながら複数のユーザU1~Unの間でテンプレートを共用することができる。これによると、汎用性の高い属性値の種別が指定されたテンプレートについては、複数のユーザU1~Unで共用することで、複合分析データ管理システム100の利便性を高めることができる。一方、秘匿性の高い属性値の種別が指定されているテンプレートについては、限られたユーザのみに使用を制限することにより、限られたユーザが有する技術やノウハウなどが他のユーザに流出することを防ぐことができる。
【0139】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0140】
(第1項)一態様に係る複合分析データ管理システムは、複数のサンプルの各々について複数種類の分析装置で取得された分析結果データを管理する。複合分析データ管理システムは、複合分析データベースと、ユーザデータベースと、プロジェクトデータベースと、プロジェクト-サンプル登録手段と、プロジェクト-ユーザ登録手段と、ログイン管理手段と、表示制御手段とを備える。複合分析データベースは、複数のサンプルの各々と分析結果データとを紐付けて管理する。ユーザデータベースは、複合分析データ管理システムにログイン可能な複数のユーザを管理する。プロジェクトデータベースは、複数のプロジェクトを管理する。プロジェクト-サンプル登録手段は、複数のプロジェクトの各々と、複数のサンプルから選択された少なくとも1つのサンプルとを紐付けてプロジェクトデータベースに登録する。プロジェクト-ユーザ登録手段は、複数のプロジェクトの各々と、複数のユーザから選択された少なくとも1人のユーザとを紐付けてプロジェクトデータベースに登録する。ログイン管理手段は、複数のユーザのうちの一のユーザのログイン操作を受け付けたときに、ログインユーザを特定する。表示制御手段は、ログインユーザが操作する情報端末に、ログインユーザに紐付けられたプロジェクトを選択可能に表示する。表示制御手段はさらに、複合分析データベースから、ログインユーザが選択したプロジェクトに紐付けられたサンプルの分析結果データを抽出して、情報端末に表示する。
【0141】
第1項に記載の複合分析データ管理システムによれば、複合分析データベースにより管理される複数のサンプルの分析結果データの閲覧について、プロジェクトごとにユーザを紐づけて登録するとともに、プロジェクトごとに分析結果データの閲覧が管理されるサンプルを紐付けて登録しておくことにより、プロジェクトに登録されているサンプルの分析結果データが、当該プロジェクトに登録されていない第三者に閲覧されることを防止することができる。よって、分析結果データの秘匿性を確保しながら分析結果データの共用を可能とするデータ管理を実現することができる。
【0142】
(第2項)第1項に記載の複合分析データ管理システムは、テンプレートデータベースと、テンプレート-ユーザ登録手段とをさらに備える。テンプレートデータベースは、情報端末に表示されるデータの種別が指定されたテンプレートを管理する。テンプレート-ユーザ登録手段は、テンプレートごとに、複数のユーザから選択された少なくとも1人のユーザを紐付けてテンプレートデータベースに登録する。表示制御手段は、情報端末に、ログインユーザに紐付けられたテンプレートを選択可能に表示する。表示制御手段は、ログインユーザが選択したプロジェクトに紐付けられたサンプルの分析結果データを、ログインユーザが選択したテンプレートを用いて情報端末に表示する。
【0143】
第2項に記載の複合分析データ管理システムによれば、分析結果データの表示に用いるテンプレートの使用について、テンプレートごとにユーザを紐づけて登録しておくことにより、登録されていない第三者にテンプレートの中身が流出することを防止することができる。よって、テンプレートの秘匿性を確保しながらテンプレートの共用を可能とすることができる。
【0144】
(第3項)第2項に記載の複合分析データ管理システムにおいて、テンプレートデータベースは、使用制限のあるテンプレートと、使用制限のないテンプレートとを管理する。テンプレート-ユーザ登録手段は、使用制限のあるテンプレートについて、複数のユーザから選択された少なくとも1人のユーザを紐付けてテンプレートデータベースに登録する。テンプレート-ユーザ登録手段は、使用制限のないテンプレートについて複数のユーザを紐付けてテンプレートデータベースに登録する。
【0145】
第3項に記載の複合分析データ管理システムによれば、秘匿すべきデータの種別が指定されているテンプレートについては使用制限を設けることにより、当該データの秘匿性を確保しながら複数のユーザの間でテンプレートを共用することができる。これによると、汎用性の高い属性値の種別が指定されたテンプレートについては、複数のユーザで共用することで、複合分析データ管理システムの利便性を高めることができる。一方、秘匿性の高いデータの種別が指定されているテンプレートについては、限られたユーザのみに使用を制限することにより、限られたユーザが有する技術やノウハウなどが他のユーザに流出することを防ぐことができる。
【0146】
(第4項)第1項から第3項に記載の複合分析データ管理システムにおいて、分析結果データは、複数種類の分析装置でそれぞれ取得された複数の分析データと、複数の分析データを解析して得られた少なくとも1つの特徴量とを含む。
【0147】
第4項に記載の複合分析データ管理システムによれば、複数のユーザの各々は自己が属するプロジェクトに付与された権限で定められているサンプルについて、複数種類の分析装置による分析結果および特徴量の横断的な解析を容易に行なうことができる。
【0148】
(第5項)第4項に記載の複合分析データ管理システムにおいて、分析結果データは、複数の分析データ以外の情報から得られるサンプルの物性値をさらに含む。
【0149】
第5項に記載の複合分析データ管理システムによれば、複数のユーザの各々は自己が属するプロジェクトに付与された権限で定められているサンプルについて、複数種類の分析装置による分析結果、特徴量および物性値の横断的な解析を容易に行なうことができる。
【0150】
(第6項)一態様に係る複合分析データ管理方法は、複数のサンプルの各々について複数種類の分析装置で取得された分析結果データを管理する。複合分析データ管理方法は、複合分析データベースを用いて、複数のサンプルの各々と分析結果データとを紐付けて管理するステップと、ユーザデータベースを用いて、複合分析データ管理システムにログイン可能な複数のユーザを管理するステップと、プロジェクトデータベースを用いて、複数のプロジェクトを管理するステップと、複数のプロジェクトの各々と、複数のサンプルから選択された少なくとも1つのサンプルとを紐付けて前記プロジェクトデータベースに登録するステップと、複数のプロジェクトの各々と、複数のユーザから選択された少なくとも1人のユーザとを紐付けてプロジェクトデータベースに登録するステップと、複数のユーザのうちの一のユーザのログイン操作を受け付けたときに、ログインユーザを特定するステップと、ログインユーザが操作する情報端末に、ログインユーザに紐付けられたプロジェクトを選択可能に表示するステップと、複合分析データベースから、ログインユーザが選択したプロジェクトに紐付けられたサンプルの分析結果データを抽出して、情報端末に表示するステップとを備える。
【0151】
第6項に記載の複合分析データ管理方法によれば、複合分析データベースにより管理される複数のサンプルの分析結果データの閲覧について、プロジェクトごとにユーザを紐づけて登録するとともに、プロジェクトごとに分析結果データの閲覧が管理されるサンプルを紐付けて登録しておくことにより、分析結果データの秘匿性を確保しながら分析結果データを共用することができる。
【0152】
(第7項)一態様に係る複合分析データ管理プログラムは、複数のサンプルの各々について複数種類の分析装置で取得された分析結果データを管理するためのプログラムである。複合分析データ管理プログラムは、コンピュータに、複合分析データベースを用いて、複数のサンプルの各々と分析結果データとを紐付けて管理するステップと、ユーザデータベースを用いて、複合分析データ管理システムにログイン可能な複数のユーザを管理するステップと、プロジェクトデータベースを用いて、複数のプロジェクトを管理するステップと、複数のプロジェクトの各々と、複数のサンプルから選択された少なくとも1つのサンプルとを紐付けてプロジェクトデータベースに登録するステップと、複数のプロジェクトの各々と、複数のユーザから選択された少なくとも1人のユーザとを紐付けてプロジェクトデータベースに登録するステップと、複数のユーザのうちの一のユーザのログイン操作を受け付けたときに、ログインユーザを特定するステップと、ログインユーザが操作する情報端末に、ログインユーザに紐付けられたプロジェクトを選択可能に表示するステップと、複合分析データベースから、ログインユーザが選択したプロジェクトに紐付けられたサンプルの分析結果データを抽出して、情報端末に表示するステップとを実行させる。
【0153】
第7項の記載の複合分析データ管理プログラムによれば、複合分析データベースにより管理される複数のサンプルの分析結果データの閲覧について、プロジェクトごとにユーザを紐づけて登録するとともに、プロジェクトごとに分析結果データの閲覧が管理されるサンプルを紐付けて登録しておくことにより、分析結果データの秘匿性を確保しながら分析結果データを共用することができる。
【0154】
なお、上述した実施の形態および変更例について、明細書内で言及されていない組み合わせを含めて、不都合または矛盾が生じない範囲内で、実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。
【0155】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0156】
1 情報端末、2 サーバ、3 データベース、4 分析装置、5 装置本体、6 情報処理装置、7 インターネット、10,20,60 CPU、11,21,61 ROM、12,22,62 RAM、13,23,63 入力部、14,64 表示部、15,25,65 HDD、16,26,66 通信I/F、17 選択部、18 表示データ生成部、19 表示制御部、24 I/O、27 分析結果データ取得部、28 物性値取得部、29 合成部、30 登録情報取得部、31 管理部、67 分析データ取得部、68 特徴量抽出部、69 情報取得部、100 複合分析データ管理システム、110,112,114,116,118,119 アイコン、120 画像、U1~Un ユーザ、M1 管理者、PJ1~PJm プロジェクト、TMP1~TMPy テンプレート、DB1 複合分析データベース、DB2 ユーザデータベース、DB3 プロジェクトデータベース、DB4 テンプレートデータベース、SP1~SPx サンプル。
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