(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】天井搬送車及び把持部の昇降制御方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/22 20060101AFI20231121BHJP
B66C 13/48 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B66C13/22 R
B66C13/48 A
(21)【出願番号】P 2022530036
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2021011988
(87)【国際公開番号】W WO2021250976
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2020099275
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 千晶
(72)【発明者】
【氏名】渡部 太
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/017222(WO,A1)
【文献】特開平04-201988(JP,A)
【文献】特開平10-167663(JP,A)
【文献】特開2008-280149(JP,A)
【文献】特開2004-067297(JP,A)
【文献】特開2010-024026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を把持する把持部と、
前記把持部を吊り下げる吊下部と、
前記吊下部を繰り出すことによって前記把持部を下降させ、前記吊下部を巻き上げることによって前記把持部を上昇させる駆動部と、
前記吊下部と前記駆動部とが取り付けられた搬送車本体と、
前記把持部の揺れを検知する検知部と、
前記駆動部を制御して前記吊下部を巻き上げ、前記搬送車本体内に前記把持部を格納させるコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記吊下部を巻き上げる巻上制御において
、
前記検知部によって検知された前記把持部の揺れが所定幅を超える場合には、前記吊下部の巻上げを停止させて、前記搬送車本体内に前記把持部が格納される格納位置よりも低い待機位置に前記把持部を維持し、その後前記把持部の揺れが前記所定幅以下になった場合に前記吊下部を巻き上
げ、かつ、
前記待機位置に前記把持部を維持する第1揺れ待ち制御を少なくとも1回実行した場合には、前記待機位置と前記格納位置との間の収束位置に前記把持部が位置したときに前記吊下部の巻上げを一定時間停止させて、前記収束位置に前記把持部を維持する第2揺れ待ち制御を実行する、天井搬送車。
【請求項2】
前記収束位置から前記格納位置へと至る巻上制御における第2巻上速度は、前記収束位置へと至る巻上制御における第1巻上速度よりも小さい、請求項
1に記載の天井搬送車。
【請求項3】
物品を把持する把持部と、
前記把持部を吊り下げる吊下部と、
前記吊下部を繰り出すことによって前記把持部を下降させ、前記吊下部を巻き上げることによって前記把持部を上昇させる駆動部と、
前記吊下部と前記駆動部とが取り付けられた搬送車本体と、
前記把持部の揺れを検知する検知部と、
前記駆動部を制御して前記吊下部を巻き上げ、前記搬送車本体内に前記把持部を格納させるコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記吊下部を巻き上げる巻上制御において、前記検知部によって検知された前記把持部の揺れが所定幅を超える場合には、前記吊下部の巻上げを停止させて、前記搬送車本体内に前記把持部が格納される格納位置よりも低い待機位置に前記把持部を維持し、その後前記把持部の揺れが前記所定幅以下になった場合に前記吊下部を巻き上げ、
前記コントローラは、前記吊下部を繰り出す繰出制御において、前記検知部によって検知された前記把持部の揺れが前記所定幅を超える場合には、前記吊下部の繰出しを停止させ、その後前記把持部の揺れが前記所定幅以下になった場合には前記吊下部を巻き上げ、前記格納位置よりも低い収束位置に前記把持部を維持する、天井搬送車。
【請求項4】
前記所定幅は、前記搬送車本体内に前記把持部が格納される際の前記把持部及び/又は前記物品において許容される揺れの許容値よりも大きく設定されている、請求項1
~3のいずれか一項に記載の天井搬送車。
【請求項5】
物品を把持する把持部と、前記把持部を吊り下げる吊下部と、前記吊下部を繰り出すことによって前記把持部を下降させ、前記吊下部を巻き上げることによって前記把持部を上昇させる駆動部と、前記吊下部と前記駆動部とが取り付けられた搬送車本体と、前記把持部の揺れを検知する検知部と、を備えた天井搬送車における前記把持部の昇降制御方法であって、
前記吊下部を巻き上げる巻上制御において、
前記検知部によって前記把持部の揺れを検知する検知工程と、
前記把持部の揺れが所定幅を超える場合に、前記吊下部の巻上げを停止させて、前記搬送車本体内に前記把持部が格納される格納位置よりも低い待機位置に前記把持部を維持し、その後前記把持部の揺れが前記所定幅以下になった場合に前記吊下部を巻き上げる巻上工程と、を含
み、かつ、
前記待機位置に前記把持部を維持する第1揺れ待ち制御を前記巻上工程で少なくとも1回実行した場合には、前記待機位置と前記格納位置との間の収束位置に前記把持部が位置したときに前記吊下部の巻上げを一定時間停止させて、前記収束位置に前記把持部を維持する第2揺れ待ち制御を実行する、把持部の昇降制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、天井搬送車、及び、天井搬送車における把持部の昇降制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天井搬送車において、物品を把持するための把持部は、搬送車に吊り下げられた状態で、昇降させられる。把持部は、物品を把持しようとする際、ロードポート等の載置部に向けて下降する。把持部が物品を把持した後、把持部は、物品と共に上昇する。把持部が上昇する際、把持部は振動する可能性がある。特許文献1では、昇降台を巻き上げる際の振動の減衰について検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
天井搬送車において、把持部の揺れが大きい場合には、例えば揺れに関する異常を報知すると共に、把持部の昇降を停止させていた。把持部の昇降が停止すると、作業員が、手動にて、把持部の昇降を含む天井搬送車の運転を復旧させる必要があった。軌道を走行する天井搬送車が、揺れに関する異常で停止すると、軌道が塞がれてしまって渋滞を引き起こす可能性もある。
【0005】
本開示は、把持部の揺れが発生した場合でも、把持部の昇降を含む天井搬送車の運転を自動的に復旧することが可能な天井搬送車及び把持部の昇降制御方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る天井搬送車は、物品を把持する把持部と、把持部を吊り下げる吊下部と、吊下部を繰り出すことによって把持部を下降させ、吊下部を巻き上げることによって把持部を上昇させる駆動部と、吊下部と駆動部とが取り付けられた搬送車本体と、把持部の揺れを検知する検知部と、駆動部を制御して吊下部を巻き上げ、搬送車本体内に把持部を格納させるコントローラと、を備え、コントローラは、吊下部を巻き上げる巻上制御において、検知部によって検知された把持部の揺れが所定幅を超える場合には、吊下部の巻上げを停止させて、搬送車本体内に把持部が格納される格納位置よりも低い待機位置に把持部を維持し、その後把持部の揺れが所定幅以下になった場合に吊下部を巻き上げる。
【0007】
この天井搬送車によれば、コントローラによって駆動部が制御されることで、吊下部が繰り出され又は巻き上げられて、把持部が下降又は上昇する。把持部は、吊下部で吊り下げられた状態で下降又は上昇するので、揺れが発生し得る。この揺れとは、吊下部が鉛直方向に延在する状態を基準として、吊下部がいずれかの方向に揺動して角度をなすことを意味する。この天井搬送車では、把持部の揺れが所定幅を超える場合、コントローラによって、吊下部の巻上げが停止され、格納位置よりも低い待機位置で把持部が維持される。その後、把持部の揺れが所定幅以下になった場合には、コントローラによって、吊下部が巻き上げられる。このように、把持部の揺れが所定幅以下になるまでは把持部が待機位置に維持され、揺れが所定幅以下になった場合に巻上げが再開する。よって、把持部の揺れが発生した場合でも、把持部の昇降を含む天井搬送車の運転を自動的に復旧することが可能となる。
【0008】
所定幅は、搬送車本体内に把持部が格納される際の把持部及び/又は物品において許容される揺れの許容値よりも大きく設定されてもよい。把持部を待機位置に維持するか否かの判定基準である所定幅が、把持部が格納される際の揺れの許容値よりも大きく設定されている。この制御により、比較的大きな揺れが少し収束するまで把持部は待機位置で待機させられ、揺れが所定幅に収まった時点で巻上げが再開する。巻上げの再開により、吊下部の長さ(繰出し量)が短くなる。本発明者らによれば、吊下部が短い程、揺れが収束するまでの時間が早くなることが判明している。揺れが上記許容値になるまで待機位置で待つよりも、早めに巻上げを再開することで、全体として揺れを早く収束させることができる。
【0009】
コントローラは、吊下部を巻き上げる巻上制御において、待機位置に把持部を維持する第1揺れ待ち制御を少なくとも1回実行した場合には、待機位置と格納位置との間の収束位置に把持部が位置したときに吊下部の巻上げを一定時間停止させて、収束位置に把持部を維持する第2揺れ待ち制御を実行してもよい。コントローラによって収束位置における第2揺れ待ち制御が実行されることにより、把持部が搬送車本体内に格納される前に、揺れを確実に収束させることができる。
【0010】
収束位置から格納位置へと至る巻上制御における第2巻上速度は、収束位置へと至る巻上制御における第1巻上速度よりも小さくてもよい。収束位置から格納位置への巻上げに時間をかけることで、残存する揺れを効果的に小さくすることができる。
【0011】
コントローラは、駆動部を制御して吊下部を繰り出す繰出制御において検知部によって検知された把持部の揺れが所定幅を超える場合には、吊下部の繰出しを停止させ、その後把持部の揺れが所定幅以下になった場合には吊下部を巻き上げ、格納位置よりも低い収束位置に把持部を維持してもよい。この制御によれば、最初に所定幅を超える揺れが検知された位置で収束を待つよりも、全体として揺れを早く収束させることができる。
【0012】
本開示の別の態様は、物品を把持する把持部と、把持部を吊り下げる吊下部と、吊下部を繰り出すことによって把持部を下降させ、吊下部を巻き上げることによって把持部を上昇させる駆動部と、吊下部と駆動部とが取り付けられた搬送車本体と、把持部の揺れを検知する検知部と、を備えた天井搬送車における把持部の昇降制御方法であって、吊下部を巻き上げる巻上制御において、検知部によって把持部の揺れを検知する検知工程と、把持部の揺れが所定幅を超える場合に、吊下部の巻上げを停止させて、搬送車本体内に把持部が格納される格納位置よりも低い待機位置に把持部を維持し、その後把持部の揺れが所定幅以下になった場合に吊下部を巻き上げる巻上工程と、を含む。
【0013】
この把持部の昇降制御方法によれば、上述したのと同様に、把持部の揺れが所定幅以下になるまでは把持部が待機位置に維持され、揺れが所定幅以下になった場合に巻上げが再開する。よって、把持部の揺れが発生した場合でも、把持部の昇降を含む天井搬送車の運転を自動的に復旧することが可能となる。
【0014】
吊下部を巻き上げる巻上制御において、待機位置に把持部を維持する第1揺れ待ち制御を巻上工程で少なくとも1回実行した場合には、待機位置と格納位置との間の収束位置に把持部が位置したときに吊下部の巻上げを一定時間停止させて、収束位置に把持部を維持する第2揺れ待ち制御を実行してもよい。収束位置における第2揺れ待ち制御を実行することにより、把持部が搬送車本体内に格納される前に、揺れを確実に収束させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、把持部の揺れが発生した場合でも、把持部の昇降を含む天井搬送車の運転を自動的に復旧することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る天井搬送車の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の天井搬送車における検知部及びコントローラの概略構成を示す図である。
【
図3】
図3(a)は、装置壁部に対する走行方向の最小距離を示す図であり、
図3(b)は、装置壁部に対するラテラル方向の最小距離を示す図である。
【
図4】
図4(a)は、走行方向における許容値の概念を示す図であり、
図4(b)は、ラテラル方向における許容値の概念を示す図である。
【
図5】
図5は、巻上制御においてコントローラによって実行される処理のフロー図である。
【
図6】
図6は、
図5のフロー中の第1揺れ収束制御で実行される処理のフロー図である。
【
図7】
図7(a)~
図7(c)は、巻上制御における第1揺れ待ち制御(待機位置における揺れ収束制御)を示す図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、巻上制御における第2揺れ待ち制御(収束位置における揺れ収束制御)を示す図である。
【
図9】
図9は、繰出制御においてコントローラによって実行される処理のフロー図である。
【
図10】
図10(a)~
図10(c)は、繰出制御における第1揺れ待ち制御(待機位置における揺れ収束制御)を示す図である。
【
図11】
図11(a)及び
図11(b)は、繰出制御における第2揺れ待ち制御(収束位置における揺れ収束制御)を示す図である。
【
図12】
図12は、天井搬送車における揺れ収束制御と自動復旧を示す状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示されるように、一実施形態の天井搬送車1は、半導体デバイスが製造されるクリーンルームの天井付近に敷設された軌道100に沿って走行する。一実施形態の天井搬送車1は、複数の半導体ウェハが収容されたFOUP(Front Opening Unified Pod)(物品)200の搬送、及び、半導体ウェハに各種処理を施す処理装置に設けられたロードポート(載置部)300等に対するFOUP200の移載を行う。軌道100は、天井から吊り下げられている。
【0018】
天井搬送車1は、フレームユニット2と、走行ユニット(走行部)3と、ラテラルユニット4と、シータユニット5と、昇降駆動ユニット6と、保持ユニット(把持部)7と、ベルト(吊下部)Bと、コントローラ8と、を備えている。フレームユニット2は、センターフレーム21と、フロントフレーム22と、リアフレーム23と、を有している。フロントフレーム22は、センターフレーム21における前側(天井搬送車1の走行方向における前側)の端部から下側に延在している。リアフレーム23は、センターフレーム21における後側(天井搬送車1の走行方向における後側)の端部から下側に延在している。
【0019】
走行ユニット3は、センターフレーム21の上側に配置されている。走行ユニット3は、例えば、軌道100に沿って敷設された高周波電流線から非接触で電力の供給を受けることで、軌道100に沿って走行する。ラテラルユニット4は、センターフレーム21の下側に配置されている。ラテラルユニット4は、シータユニット5、昇降駆動ユニット6及び保持ユニット7を横方向(天井搬送車1の走行方向における側方)に移動させる。シータユニット5は、ラテラルユニット4の下側に配置されている。シータユニット5は、昇降駆動ユニット6及び保持ユニット7を水平面内において回動させる。
【0020】
保持ユニット7は、ロードポート300上に載置されたFOUP200のフランジ部201を把持する。保持ユニット7は、ベース71と、一対のグリッパ72と、を有している。一対のグリッパ72は、水平方向に沿って開閉可能となるようにベース71によって支持されている。一対のグリッパ72は、駆動モータ(図示省略)及びリンク機構(図示省略)によって開閉させられる。本実施形態では、一対のグリッパ72,72が開状態のときに、グリッパ72の保持面がフランジ部201の下面の高さより下方となるように、保持ユニット7の高さ位置が調整される。そして、この状態で一対のグリッパ72,72が閉状態となることで、グリッパ72の保持面がフランジ部201の下面の下方へ進出し、この状態で昇降駆動ユニット6を上昇させることにより、一対のグリッパ72,72によってフランジ部201が保持(把持)され、FOUP200が支持される。
【0021】
昇降駆動ユニット6は、シータユニット5の下側に配置されている。昇降駆動ユニット6は、保持ユニット7を昇降させる。保持ユニット7は、昇降駆動ユニット6の下側に配置されている。保持ユニット7は、昇降駆動ユニット6に取り付けられた例えば4本のベルトBによって、吊り下げられている。昇降駆動ユニット6は、内部に固定された昇降モータ(駆動部)61を有する。昇降モータ61は、ベルトBを繰り出すことによって保持ユニット7を下降させる。昇降モータ61は、ベルトBを巻き上げることによって保持ユニット7を上昇させる。なお、保持ユニット7が3本のベルトBによって吊下げられてもよい。
【0022】
天井搬送車1は、FOUP200の搬送時に保持ユニット7及びFOUP200を格納する搬送車本体10を備える。搬送車本体10は、例えば、上記したフレームユニット2、ラテラルユニット4、シータユニット5、昇降駆動ユニット6、及びベルトBを備える。言い換えれば、搬送車本体10には、ベルトBと、昇降駆動ユニット6の昇降モータ61とが取り付けられている。
図2に示されるように、搬送車本体10には、保持ユニット7及びFOUP200を格納するための格納スペースSが形成されている。格納スペースSは、主として、上記したフロントフレーム22及びリアフレーム23と、ラテラル方向において保持ユニット7を覆うカバー24,25(
図4(b)参照)とによって規定される。格納スペースSには、例えば保持ユニット7の全体が格納される。格納スペースSに、FOUP200の全体が格納されてもよいし、FOUP200の上部のみが格納されてもよい。
【0023】
コントローラ8は、例えばフロントフレーム22及びリアフレーム23に配置されている。コントローラ8は、昇降モータ61を制御してベルトBを繰り出し、保持ユニット7をロードポート300の上方に下降させる。コントローラ8は、昇降モータ61を制御してベルトBを巻き上げ、保持ユニット7を上昇させて搬送車本体10内に格納させる。保持ユニット7は、コントローラ8によって昇降モータ61が制御されることにより、FOUP200の上方(ロードポート300の上方)において昇降可能である。コントローラ8は、昇降モータ61からの回転に関わる信号を受け取ることで、ベルトBの繰出し量(ベルト長)を検知可能である。コントローラ8は、ベルトBの繰出し量(ベルト長)に基づき、保持ユニット7の位置(高さ)を検知可能である。コントローラ8は、CPU(プロセッサ)、ROM及びRAM等によって構成された電子制御ユニットである。コントローラ8は、天井搬送車1の各部を制御する。
【0024】
以上のように構成された天井搬送車1は、一例として、次のように動作する。ロードポート300から天井搬送車1にFOUP200を移載する場合には、FOUP200を保持していない天井搬送車1がロードポート300の上方に停止する。保持ユニット7の水平位置がロードポート300の真上の位置からずれている場合には、ラテラルユニット4及びシータユニット5を駆動することにより、昇降駆動ユニット6ごと保持ユニットの水平位置及び角度を微調整する。続いて、昇降駆動ユニット6が保持ユニット7を下降させ、保持ユニット7が、ロードポート300に載置されているFOUP200のフランジ部201を保持する。続いて、昇降駆動ユニット6が保持ユニット7を上昇端まで上昇させて、フロントフレーム22とリアフレーム23との間にFOUP200を配置する。続いて、FOUP200を保持した天井搬送車1が走行を開始する。
【0025】
一方、天井搬送車1からロードポート300にFOUP200を移載する場合には、FOUP200を保持した天井搬送車1がロードポート300の上方に停止する。保持ユニット7(FOUP200)の水平位置がロードポート300の真上の位置からずれている場合には、ラテラルユニット4及びシータユニット5を駆動することにより、昇降駆動ユニット6ごと保持ユニットの水平位置及び角度を微調整する。続いて、昇降駆動ユニット6が保持ユニット7を下降させて、ロードポート300にFOUP200を載置し、保持ユニット7がFOUP200のフランジ部201の保持を解放する。続いて、昇降駆動ユニット6が保持ユニット7を上昇端まで上昇させる。続いて、FOUP200を保持していない天井搬送車1が走行を開始する。
【0026】
本実施形態の天井搬送車1は、保持ユニット7の上昇時及び下降時、すなわちベルトBの巻上げ時及び繰出し時に、保持ユニット7の揺れを収束させるための制御機構を備えている。天井搬送車1が備えるこの制御機構は、保持ユニット7がFOUP200を把持している場合には、保持ユニット7及びFOUP200の揺れを収束させ、限られた時間内に保持ユニット7(及びFOUP200)を搬送車本体10に格納させる。また、保持ユニット7(及びFOUP200)の揺れが、従来は自動復旧が難しかった所定幅以上である場合にも、制御機構はこの揺れを収束させて、天井搬送車1の自動復旧を可能としている。
【0027】
天井搬送車1に備わっている、揺れを収束させるための制御機構について、
図2~
図5を参照して説明する。なお、
図2以降の図において、昇降駆動ユニット6を含む搬送車本体10、ベルトB、及び保持ユニット7の各構成が模式的に図示されている。
図2に示されるように、天井搬送車1は、保持ユニット7の揺れを検知する検知部67を備えている。検知部67は、例えば昇降駆動ユニット6に取り付けられている。検知部67は、例えば投光部及び受光部を有しており、これらの投光部及び受光部が下方に向けて露出している。一方、保持ユニット7の上面には反射板77が取り付けられている。保持ユニット7が真っすぐに垂下する状態(すなわちベルトBが鉛直方向に延在する状態)を基準として、検知部67は、下方に向けて光を出射し、反射板77で反射した反射光を検出することで、保持ユニット7の揺れを検出可能である。検知部67は、反射板77で反射した反射光を検知するかしないかを判断することで、保持ユニット7の揺れが、ある一種類の閾値(例えば本明細書における所定幅)より大きいか小さいかを判定可能である。検知部67は、後述する数種類の閾値(所定幅、収束幅、又は許容値等)に対して揺れが大きいか又は小さいかの比較・判断が可能な構成を有してもよい。検知部67は、少なくとも、後述する所定幅に対して揺れが大きいか又は小さいかの比較・判断が可能な構成を有していればよい。
【0028】
検知部67によって検出される揺れは、例えば、天井搬送車1の走行方向に対応する方向(図中に示される+X方向又は-X方向)の揺れであり得る。あるいは、検知部67によって検出される揺れは、走行方向に直交する水平なラテラル方向(図中に示される+Y方向又は-Y方向)の揺れであり得る。また、検知部67によって検出される揺れは、これらの各種方向の揺れが合成されたXY平面内のあらゆる方向の揺れであり得る。検知部67によって検出される揺れは、例えば、プラス又はマイナスのいずれか一方における振幅として、検知される。
【0029】
図2に示されるように、コントローラ8は、位置取得部81と、揺れ取得部82と、判断部83と、モータ制御部84とを有する。コントローラ8は、これらの各機能要素を備えることにより、後述する保持ユニット7の昇降制御を実行する。コントローラ8の各機能要素は、プロセッサまたは主記憶部の上にプログラムを読み込ませてそのプログラムを実行させることで実現される。
【0030】
コントローラ8は、後述する昇降制御において用いる閾値を記憶している。コントローラ8は、揺れに関する第1の閾値として、所定幅を記憶している。所定幅は、例えば、ロードポート300に載置されたFOUP200を保持ユニット7が把持して引き上げようとする際に、装置側の壁部等の障害物にFOUP200を接触させないという観点で設定されてもよい。例えば、
図3(a)に示されるように、走行方向(X方向)において、FOUP200と装置の壁部310との間の最小距離が第1距離L1である。一方、
図3(b)に示されるように、ラテラル方向(Y方向)において、FOUP200と装置の側壁部320との間の最小距離が第2距離L2である。このような場合に、所定幅は、第1距離L1又は第2距離L2の何れかに設定されてもよい。所定幅は、これらの距離のもっとも小さい値に設定されてもよい。所定幅は、天井搬送車1が適用される装置(半導体デバイス製造装置等)に対する、FOUP200の位置変化の許容値(物理的な許容値)に基づいて設定されてもよい。所定幅は、走行方向又はラテラル方向の何れかにおける許容値に基づいて設定されてもよいし、これらとは異なる方向における許容値に基づいて設定されてもよい。この所定幅は、昇降制御における第1揺れ収束制御(第1揺れ待ち制御)に用いられる。
【0031】
コントローラ8は、揺れに関する第2の閾値として、例えば、収束幅を記憶していてもよい。収束幅は、例えば、保持ユニット7が搬送車本体10に格納されようとする際に、搬送車本体10の各部に保持ユニット7(又はFOUP200)を接触させないという観点で設定されてもよい。
【0032】
例えば、
図4(a)に示されるように、走行方向(X方向)において、保持ユニット7と搬送車本体10のリアフレーム23との間の最小距離が第3距離L3である。一方、
図4(b)に示されるように、ラテラル方向(Y方向)において、保持ユニット7と搬送車本体10のカバー24との間の最小距離が第4距離L4であり、保持ユニット7と搬送車本体10のカバー25との間の最小距離が第5距離L5である。搬送車本体10は、搬送車本体10に格納される保持ユニット7を位置決めするための位置決め部材62を有してもよい。位置決め部材62は下方に向けて拡がるように開口されたテーパ部62aと、テーパ部62aの上端に形成された半円筒状の凹部である受入れ凹部63とを含む。一方、保持ユニット7は、保持ユニット7の上面に立設されて上方に突出する起立部73と、起立部73の上端に取り付けられた円筒部74とを含む。搬送車本体10に対して、保持ユニット7が正規の位置で、すなわち揺れ0の状態で格納される場合、位置決め部材62の中央に起立部73及び円筒部74が下方から挿入され、円筒部74が受入れ凹部63に嵌まり込む。搬送車本体10に対して、保持ユニット7が多少の揺れをもって近接した場合でも、位置決め部材62のテーパ部62aの範囲内に円筒部74が入っている限り、円筒部74はテーパ部62aによって案内され、最終的に受入れ凹部63に嵌まり込む。
図4(b)に示される嵌合状態において、起立部73(又は円筒部74)とテーパ部62aの開口端(下端)とのラテラル方向(Y方向)における距離が第6距離L6である。
【0033】
このような場合に、収束幅は、第3距離L3、第4距離L4、第5距離L5、又は第6距離L6の何れかに設定されてもよい。収束幅は、これらの距離のもっとも小さい値に設定されてもよい。収束幅は、搬送車本体10に対する、保持ユニット7の位置変化の許容値(物理的な許容値)に基づいて設定されてもよい。収束幅は、天井搬送車1の走行方向又はラテラル方向の何れかにおける、搬送車本体10内に保持ユニット7が格納される際の保持ユニット7及び/又はFOUP200において許容される揺れの許容値に基づいて設定されてもよい。この収束幅は、本実施形態の制御には用いられないが、変形例として、第2揺れ収束制御(第2揺れ待ち制御)に用いられてもよい。
【0034】
受入れ凹部63に円筒部74が嵌まり込み、保持ユニット7の位置決めが完了した高さが、保持ユニット7の上昇端であり、保持ユニット7の格納位置P3である。
【0035】
上記したように、搬送車本体10と保持ユニット7との関係、又は搬送車本体10と(保持ユニット7に把持された)FOUP200との関係において、搬送車本体10内に保持ユニット7が格納される際の保持ユニット7及び/又はFOUP200において許容される揺れの許容値が、物理的に決まる。上記した収束幅は、許容値よりも大きく設定されてもよい。また、上記した所定幅は、許容値よりも大きく設定されてもよい。第1揺れ収束制御に用いられる所定幅は、収束幅よりも大きく設定されている。本明細書において、「揺れを収束させる」とは、揺れが収束幅以下になることを意味するが、揺れが、実質的に0になることであってもよい。
【0036】
続いて、コントローラ8によって実行される制御(処理)、すなわち保持ユニットの昇降制御方法について説明する。まず、
図5~
図8を参照して、巻上制御について説明する。
図5は、巻上制御において、コントローラ8によって実行される処理のフロー図である。コントローラ8は、保持ユニット7がFOUP200を把持可能な位置まで下降した状態で、保持ユニット7を制御し、グリッパ72にFOUP200を把持させる。コントローラ8は、昇降モータ61を制御して、ベルトBを巻き上げる(ステップS11)。これにより、保持ユニット7及びFOUP200が上昇し始める。
【0037】
コントローラ8による昇降制御の説明において、待機位置、収束位置、及び格納位置等といった保持ユニット7の「位置」の概念が用いられるが、これらの「位置」は、保持ユニット7の高さに対応する概念である。コントローラ8において、「位置」は、例えばベルトBの繰出し量に対応しており、繰出し量が長いということは、「位置」が低いこと、すなわち保持ユニット7がロードポート300に近いことを意味する。繰出し量が短いということは、「位置」が高いこと、すなわち保持ユニット7が搬送車本体10に近いことを意味する。以下、保持ユニット7の位置を「昇降位置」という場合がある。
【0038】
図7(a)に示されるように、ベルトBが巻き上げられ、保持ユニット7及びFOUP200が上昇している。コントローラ8の位置取得部81は、昇降モータ61からの回転に関わる信号を受け取り、保持ユニット7の位置を取得する(ステップS12)。位置取得部81による位置の取得は、コントローラ8による巻上制御の間、所定時間ごとに行われる。続いて、コントローラ8は、第1揺れ収束制御を実行する(ステップS13)。
【0039】
図6を参照して、第1揺れ収束制御で実行される処理について説明する。巻上制御において、検知部67は、保持ユニット7の揺れを検知する(検知工程)。
図6に示されるように、コントローラ8の揺れ取得部82は、保持ユニット7の揺れを検知した検知部67からの信号を受け取り、保持ユニット7の揺れを取得する(ステップS21)。続いて、コントローラ8の判断部83は、検知部67によって検知された揺れが所定幅よりも大きいか否かを判断する(ステップS22)。
図7(b)に示されるように、例えば、検知部67による照射光が反射板77から外れており、保持ユニット7の揺れが大きくなっている。揺れが所定幅よりも大きいと判断された場合(ステップS22;YES)、コントローラ8のモータ制御部84は、昇降モータ61を制御してベルトBの巻上げを停止させ、保持ユニット7を任意の待機位置P1に維持する(ステップS23)。その後、コントローラ8は、ステップS21の処理及びステップS22の判断を繰り返す。
【0040】
ステップS22において、揺れが所定幅以下であると判断された場合(ステップS22;NO)、コントローラ8のモータ制御部84は、昇降モータ61を制御してベルトBを巻き上げる(ステップS24)。
図7(c)に示されるように、例えば、検知部67による照射光が反射板77に常に当たっており、保持ユニット7の揺れが少し収束している。このように、コントローラ8は、保持ユニット7の揺れが少し収束した時点で、ベルトBの巻上げを再開する。ただし、所定幅を下回ったばかりの揺れは、搬送車本体10に格納される許容値に比べて大きく、例えば許容値の2倍以上であってもよく、許容値の3倍以上であってもよい。待機位置P1は、コントローラ8によって揺れが所定幅より大きいと判断された任意の位置であってよい。待機位置P1は、コントローラ8によって揺れが所定幅より大きいと判断された任意の位置よりもやや高い位置(停止制御に要するタイムラグの分だけ高い位置)であってもよい。上記のステップS22~ステップS24の処理は、特許請求の範囲に記載された把持部の昇降制御方法における巻上工程に相当する。
【0041】
ステップS21~ステップS24を含む第1揺れ収束制御では、保持ユニット7の揺れが閾値としての所定幅よりも大きいか否かに基づいて、巻上げが停止するか、又は巻上げが継続する。巻上げを停止させるステップS23の処理は第1揺れ待ち制御に相当する。第1揺れ収束制御では、保持ユニット7の揺れが所定幅よりも大きい場合に、第1揺れ待ち制御が実行される。保持ユニット7の揺れが所定幅以下にならない限り、第1揺れ待ち制御が繰り返し実行され、保持ユニット7は任意の待機位置P1に維持される。すなわち、揺れが所定幅よりも大きいと判断されるたびに第1揺れ待ち制御が実行される。第1揺れ収束制御では、保持ユニット7及びFOUP200を安全に引き上げることができるまで、すなわち保持ユニット7の揺れがある程度小さい揺れに収まるまで、保持ユニット7を停止させて待つ制御が行われる。一方で、保持ユニット7の揺れがステップS22の判断時に常に所定幅以下である場合には、第1揺れ待ち制御は一度も実行されず、ベルトBが巻き上げられる。
【0042】
続いて、コントローラ8の位置取得部81は、昇降モータ61からの回転に関わる信号を受け取り、保持ユニット7の位置を取得する(ステップS25)。続いて、コントローラ8の判断部83は、昇降位置が収束位置であるか否かを判断する(ステップS26)。コントローラ8は、保持ユニット7の位置に関し、収束位置及び格納位置を記憶している。待収束位置及び格納位置のそれぞれに対応する所定の制御値が、コントローラ8に記憶されている。コントローラ8の判断部83は、位置取得部81によって取得された位置に基づき、保持ユニット7の位置が収束位置であるか否かを判断する。コントローラ8のモータ制御部84は、昇降モータ61を制御することにより、保持ユニット7を、収束位置及び格納位置のそれぞれの位置で停止可能である。
【0043】
昇降位置が収束位置ではないと判断された場合(ステップS26;NO)、コントローラ8は、ステップS21の処理を繰り返す。このように、保持ユニット7の上昇時、保持ユニット7が収束位置P2に達するまでに所定幅を超える揺れが検出されると、コントローラ8は、ベルトBを巻き上げながら、スイング検知と第1揺れ待ち制御とを繰り返す(
図12参照)。
【0044】
一方、ステップS26において、昇降位置が収束位置であると判断された場合(ステップS26;YES)、コントローラ8による処理が
図5に示されるフローに戻り、判断部83は、待機位置に保持ユニット7を維持する第1揺れ待ち制御を少なくとも1回実行したか否かを判断する(ステップS16)。少なくとも1回、揺れが所定幅よりも大きいと判断された場合であれば、第1揺れ待ち制御(ステップS23)が少なくとも1回実行される。その場合、保持ユニット7が待機位置で停止したと判断され(ステップS16;YES)、コントローラ8のモータ制御部84は、昇降モータ61を制御してベルトBの巻上げを一定時間停止させ、保持ユニット7を収束位置P2に維持する(ステップS17、
図8(a)参照)。
【0045】
収束位置P2は、待機位置P1と格納位置P3との間の位置である。収束位置P2は、例えば格納位置P3よりも、ベルトBの繰出し量が僅かに長い位置であってもよい。収束位置P2は、側方視において、FOUP200が搬送車本体10に重複しない程度の位置であってもよい。
【0046】
ステップS17の処理が開始してから一定時間が経過した後、コントローラ8のモータ制御部84は、昇降モータ61を制御してベルトBの巻上げを再開し、クリープ巻上制御を実行する(ステップS18)。クリープ巻上制御では、コントローラ8のモータ制御部84は、収束位置P2から格納位置P3へと至る巻上制御における第2巻上速度を、待機位置P1から収束位置P2へと至る巻上制御(ステップS11及びS24)における第1巻上速度よりも小さくする。そして、コントローラ8のモータ制御部84は、保持ユニット7が上昇端である格納位置P3に位置したときに昇降モータ61を制御してベルトBの巻上げを停止させる(ステップS19、
図8(b)参照)。
【0047】
ステップS16~ステップS18を含む第2揺れ収束制御では、第1揺れ待ち制御が実行されたか否かに基づいて、巻上げが一定時間停止するか、又は巻上げが継続する。巻上げを停止させるステップS17の処理は第2揺れ待ち制御に相当する。第2揺れ収束制御では、保持ユニット7に関する閾値は用いられず、コントローラ8は、保持ユニット7を収束位置P2で一定時間停止させることにより、揺れが上記した収束幅より小さくなっていることを保証している。
【0048】
ステップS16において、保持ユニット7が待機位置で一度も停止しなかったと判断された場合(ステップS16;NO)、コントローラ8のモータ制御部84は、保持ユニット7が上昇端である格納位置P3に位置したときに昇降モータ61を制御してベルトBの巻上げを停止させる(ステップS19)。このように、保持ユニット7が一度も所定幅より大きく揺れなかった場合には、巻上げを停止したり巻上げ速度を小さくしたりする制御は行われず、通常の巻上げが行われる。
【0049】
以上の一例の制御により、保持ユニット7の上昇時に、所定幅を超える揺れが検出されると、少なくとも1回の第1揺れ待ち制御が実行され、揺れが少し収まった後にベルトBの繰出し量を短くした状態で、第2揺れ待ち制御が実行される。その結果、保持ユニット7の揺れが収束するまでの時間を短縮できる。
【0050】
次に、
図9~
図11を参照して、繰出制御について説明する。
図9は、繰出制御において、コントローラ8によって実行される処理のフロー図である。コントローラ8は、昇降モータ61を制御してベルトBを繰り出し、FOUP200を把持した保持ユニット7を格納位置P3から下降させる(ステップS31)。
図10(a)に示されるように、ベルトBが繰り出され、保持ユニット7及びFOUP200が下降している。コントローラ8の位置取得部81は、昇降モータ61からの回転に関わる信号を受け取り、保持ユニット7の位置を取得する(ステップS32)。位置取得部81による位置の取得は、コントローラ8による繰出制御の間、所定時間ごとに行われる。続いて、コントローラ8の判断部83は、保持ユニット7がポート位置に到達したか否かを判断する(ステップS33)。コントローラ8は、保持ユニット7の位置に関し、FOUP200がロードポート300上に載置される位置であるポート位置(載置位置)を記憶している。ポート位置に対応する所定の制御値が、コントローラ8に記憶されている。コントローラ8の判断部83は、位置取得部81によって取得された位置に基づき、保持ユニット7の位置がポート位置であるか否かを判断する。
【0051】
保持ユニット7がポート位置に到達していないと判断された場合(ステップS33;NO)、コントローラ8の揺れ取得部82は、保持ユニット7の揺れを検知した検知部67からの信号を受け取り、保持ユニット7の揺れを取得する(ステップS34)。続いて、コントローラ8の判断部83は、検知部67によって検知された揺れが所定幅よりも大きいか否かを判断する(ステップS35)。揺れが所定幅よりも大きいと判断された場合(ステップS35;YES)、コントローラ8による処理は第1揺れ収束制御に移行し(ステップS36)、モータ制御部84は、昇降モータ61を制御してベルトBの巻上げを停止させ、保持ユニット7を任意の待機位置P1に維持する(ステップS23)。その後、コントローラ8は、ステップS21の処理及びステップS22の判断を繰り返す。
【0052】
ステップS36の第1揺れ収束制御は、巻上制御における第1揺れ収束制御(
図6に示されるステップS21~S26)と同じである。繰出制御において、検知部67は、保持ユニット7の揺れを検知する(検知工程)。繰出制御の途中で、揺れが所定幅よりも大きいと判断された場合(ステップS22;YES)、コントローラ8のモータ制御部84は、昇降モータ61を制御してベルトBの繰出しを停止させ、保持ユニット7を任意の待機位置P1に維持する(ステップS23、(
図10(b)参照))。その後、コントローラ8は、ステップS21の処理及びステップS22の判断を繰り返す。揺れが所定幅以下であると判断された場合(ステップS22;NO)、コントローラ8のモータ制御部84は、昇降モータ61を制御してベルトBを巻き上げる(ステップS24、(
図10(c)参照))。このように、コントローラ8は、保持ユニット7の揺れが少し収束した時点で、いったんベルトBを巻き上げ、ベルトBの繰出し量を短くする。
【0053】
ステップS21~ステップS24を含む第1揺れ収束制御では、保持ユニット7の揺れが閾値としての所定幅よりも大きいか否かに基づいて、繰出しが任意の待機位置P1で停止するか、又は巻上げが開始される。巻上げを停止させるステップS23の処理は第1揺れ待ち制御に相当する。第1揺れ収束制御では、保持ユニット7及びFOUP200を安全に引き上げることができるまで、すなわち保持ユニット7の揺れがある程度小さい揺れに収まるまで、保持ユニット7を停止させて待つ制御が行われる。
【0054】
コントローラ8の判断部83は、昇降位置が収束位置であるか否かを判断し(ステップS26)、昇降位置が収束位置ではないと判断された場合(ステップS26;NO)、コントローラ8は、ステップS21の処理を繰り返す。このように、保持ユニット7の下降時においても、保持ユニット7が収束位置P2に達するまでに所定幅を超える揺れが検出されると、コントローラ8は、ベルトBを巻き上げながら、スイング検知と第1揺れ待ち制御とを繰り返す(
図12参照)。
【0055】
ステップS26において、昇降位置が収束位置であると判断された場合(ステップS26;YES)、コントローラ8による処理が
図9に示されるフローに戻り、モータ制御部84は、昇降モータ61を制御してベルトBの巻上げを一定時間停止させ、保持ユニット7を収束位置P2に維持する(ステップS37、
図11(a)参照)。
【0056】
ステップS37を含む第2揺れ収束制御では、保持ユニット7が収束位置P2まで上昇したときに、巻上げが一定時間停止する。ステップS37の処理は第2揺れ待ち制御に相当する。第2揺れ収束制御では、保持ユニット7に関する閾値は用いられず、コントローラ8は、保持ユニット7を収束位置P2で一定時間停止させることにより、揺れが上記した収束幅より小さくなっていることを保証している。
【0057】
ステップS37の処理が開始してから一定時間が経過した後、コントローラ8による処理はステップS31に戻る。コントローラ8のモータ制御部84は、昇降モータ61を制御してベルトBを繰り出し、FOUP200を把持した保持ユニット7を収束位置P2から下降させる。
図11(b)に示されるように、保持ユニット7の揺れが十分に収まった状態で、保持ユニット7が下降させられる。
【0058】
ステップS33において、保持ユニット7がポート位置に到達したと判断された場合(ステップS33;YES)、コントローラ8のモータ制御部84は、昇降モータ61を制御してベルトBの繰出しを停止させる(ステップS38)。
【0059】
一方、ステップS35において、揺れが所定幅以下であると判断された場合(ステップS35;NO)、コントローラ8は、ステップS32の処理及びステップS33の判断を繰り返す。ステップS33において、保持ユニット7がポート位置に到達したと判断された場合(ステップS33;YES)、コントローラ8のモータ制御部84は、昇降モータ61を制御してベルトBの繰出しを停止させる(ステップS38)。このように、保持ユニット7の下降時、保持ユニット7の揺れがステップS35の判断時に常に所定幅以下である場合には、第1揺れ待ち制御は一度も実行されず、ベルトBが繰り出される。保持ユニット7が一度も所定幅より大きく揺れなかった場合には、繰出しを停止したりベルトBを巻き上げて繰出し量を短くした状態で巻上げを停止させたりする制御は行われず、通常の巻上げが行われる。
【0060】
以上の一例の制御により、保持ユニット7の下降時に、所定幅を超える揺れが検出されると、少なくとも1回の第1揺れ待ち制御が実行され、揺れが少し収まった後にベルトBの繰出し量を短くした状態で、第2揺れ待ち制御が実行される。その結果、保持ユニット7の揺れが収束するまでの時間を短縮できる。
【0061】
本実施形態の天井搬送車1及び保持ユニット7の昇降制御方法によれば、コントローラ8によって昇降モータ61が制御されることで、ベルトBが繰り出され又は巻き上げられて、保持ユニット7が下降又は上昇する。保持ユニット7は、ベルトBで吊り下げられた状態で下降又は上昇するので、揺れが発生し得る。この揺れとは、ベルトBが鉛直方向に延在する状態を基準として、ベルトBがいずれかの方向に揺動して角度をなすことを意味する。この天井搬送車では、保持ユニット7の揺れが所定幅を超える場合、コントローラ8によって、ベルトBの巻上げが停止され、格納位置P3よりも低い待機位置P1で保持ユニット7が維持される。その後、保持ユニット7の揺れが所定幅以下になった場合には、コントローラ8によって、ベルトBが巻き上げられる。このように、保持ユニット7の揺れが所定幅以下になるまでは保持ユニット7が待機位置P1に維持され、揺れが所定幅以下になった場合に巻上げが再開する。よって、保持ユニット7の揺れが発生した場合でも、保持ユニット7の昇降を含む天井搬送車の運転を自動的に復旧することが可能となる。
【0062】
図12の状態遷移図に示されるように、本実施形態の天井搬送車1及び保持ユニット7の昇降制御方法によれば、正常な昇降制御から、大きな揺れ(図中に示される「スイング」)を検知した場合の待機位置P1における第1揺れ待ち制御、さらにベルトBを巻き上げ、収束位置P2における第2揺れ待ち制御を経て、正常な昇降制御へと状態が遷移する。この一連の制御により、速やかな自動復旧が可能になっている。
【0063】
保持ユニット7を待機位置P1に維持するか否かの判定基準である所定幅が、保持ユニット7が格納される際の揺れの許容値よりも大きく設定されている。この制御により、比較的大きな揺れが少し収束するまで保持ユニット7は待機位置P1で待機させられ、揺れが所定幅に収まった時点で巻上げが再開する。巻上げの再開により、ベルトBの長さ(繰出し量)が短くなる。揺れが上記許容値に近くなるまで(或いは揺れが上記許容値になるまで)待機位置P1で待つよりも、早めに巻上げを再開することで、全体として揺れを早く収束させることができる。
【0064】
コントローラ8は、ベルトBを巻き上げる巻上制御において、待機位置P1に保持ユニット7を維持する第1揺れ待ち制御を少なくとも1回実行した場合には、収束位置P2に保持ユニット7が位置したときにベルトBの巻上げを一定時間停止させて、収束位置P2に保持ユニット7を維持する第2揺れ待ち制御を実行する。コントローラ8によって収束位置P2における第2揺れ待ち制御が実行されることにより、保持ユニット7が搬送車本体10内に格納される前に、揺れを確実に収束させることができる。
【0065】
収束位置P2から格納位置P3へと至る巻上制御における第2巻上速度は、収束位置P2へと至る巻上制御における第1巻上速度よりも小さい。収束位置P2から格納位置P3への巻上げに時間をかけることで、残存する揺れを効果的に小さくすることができる。
【0066】
コントローラ8は、昇降モータ61を制御してベルトBを繰り出す繰出制御において検知部によって検知された保持ユニット7の揺れが所定幅を超える場合には、ベルトBの繰出しを停止させ、その後保持ユニット7の揺れが所定幅以下になった場合にはベルトBを巻き上げ、格納位置P3よりも低い収束位置P2に保持ユニット7を維持する。この制御によれば、最初に所定幅を超える揺れが検知された位置で収束を待つよりも、全体として揺れを早く収束させることができる。
【0067】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、
図5に示される巻上制御において、コントローラ8のモータ制御部84が保持ユニット7を収束位置P2に停止させた状態で(ステップS17)、コントローラ8の揺れ取得部82は、保持ユニット7の収束位置における揺れを取得してもよい。続いて、コントローラ8の判断部83は、検知部67によって検知された揺れが収束幅よりも大きいか否かを判断してもよい。揺れが所定幅よりも大きいと判断した場合、コントローラ8は、収束位置における揺れの取得、及び、揺れと収束幅との対比・判断を繰り返してもよい。揺れが収束幅以下であると判断した場合、コントローラ8のモータ制御部84は、昇降モータ61を制御してベルトBを巻き上げる。保持ユニット7が上昇端である格納位置P3に位置したとき、コントローラ8のモータ制御部84は、昇降モータ61を制御してベルトBの巻上げを停止させる。
【0068】
この制御によれば、揺れが収束幅以下になるまで、保持ユニット7は収束位置P2に維持される。待機位置P1と収束位置P2における2段階の揺れ収束制御(揺れ待ち制御)により、保持ユニット7を安全かつ速やかに格納位置P3まで上昇させることができる。また収束幅が、走行方向又はラテラル方向の何れかにおける格納時の揺れの許容値に基づいて設定されているので、2段階目の揺れ収束制御が、確実かつ速やかに実行される。
【0069】
図5に示されるステップS17が省略されてもよい。すなわち、ベルトBの巻上げを停止させることなく、保持ユニット7が収束位置P2に位置する際の揺れが判断され、その判断結果に応じて、ベルトBの巻上げを停止させるか否かの制御が行われてもよい。その場合、揺れが所定幅よりも大きいと判断した場合、コントローラ8は、ベルトBの巻上げを停止させる。揺れが収束幅以下であると判断した場合、コントローラ8は、ベルトBの巻上げを継続する。
【0070】
図9に示される繰出制御において、コントローラ8は、上記した巻上制御の変形例と同様、保持ユニット7を収束位置P2に停止させた状態で(ステップS37)、揺れの取得、及び、揺れと収束幅との対比・判断を行ってもよい。
【0071】
保持ユニット7がFOUP200を把持する態様は、上記実施形態に限られない。反射板77が省略されてもよく、保持ユニット7の一部が反射板77と同等の役割を果たしてもよい。検知部は、投受光型の検知部に限られない。検知部は、例えば、保持ユニット7をカメラで撮像し、画像処理等を行うことによって保持ユニット7の揺れを検知する型式の検知部であってもよい。
【0072】
検知部67は、上記状態を基準とする保持ユニット7の揺れの大きさ(揺れ幅)を検出可能であってもよい。例えば、ベルトBが鉛直方向に延在する状態であれば、保持ユニット7の揺れは0である。検知部67は、この状態を基準として、保持ユニット7がいずれかの水平な方向に揺れる幅(検出時における最大の振幅)を検知可能であってもよい。なお、このように揺れを数値として検知したり、複数種類の閾値と比較したりするには、保持ユニット7をカメラで撮像したり、複数セットの検知部と反射板を設けたりする必要がある。
【0073】
検知部において検出される揺れ、又は、コントローラによって取得される(又は演算されてもよい)揺れは、ベルトBが鉛直方向に延在する状態を基準とする場合に限られない。例えば、天井搬送車1が所定の加速度をもって走行する場合に、ベルトB及び保持ユニット7が呈する所定の姿勢を基準として、揺れが定義されてもよい。例えば、ベルトBが、鉛直方向に対して、走行方向の前方又は後方に僅かな角度をなす状態が基準とされてもよい。収束幅が、上述した物理的な許容値に等しい値に設定されてもよい。
【0074】
吊下部は、ベルトBに限られない。吊下部は、ワイヤ等の線状部材であってもよい。把持部は保持ユニット7と異なる構成を有してもよい。把持部は、物品の一部を把持できる他の構成を有してもよい。
【0075】
物品は、FOUP200に限られない。物品は、SMIF(Standard Mechanical Interface)Pod又はFOSB(Front Opening Shipping Box)等であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…天井搬送車、2…フレームユニット、6…昇降駆動ユニット、7…保持ユニット(把持部)、10…搬送車本体、61…昇降モータ(駆動部)、67…検知部、200…FOUP(物品)、300…ロードポート(載置部)、B…ベルト(吊下部)、P1…待機位置、P2…収束位置、P3…格納位置、S…格納スペース。