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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
G01L9/00 305U
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022545545
(86)(22)【出願日】2021-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2021027282
(87)【国際公開番号】W WO2022044632
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2020144621
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】杉林 英明
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-165222(JP,A)
【文献】特開2005-337924(JP,A)
【文献】特開2001-141592(JP,A)
【文献】特開平7-12669(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0180505(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
G01L27/00-27/02
H01L29/84
H04R17/00
H04R19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電位に保持される第1電極部と、
該第1電極部に対向して設けられ、周囲の圧力変化に応じて変位する第2電極部と、
該第2電極部の外側に設けられ、基準電位に保持されるケーシング部材と、
前記第2電極部からの信号を増幅して、予め定めたサンプリング周期で前記第1電極部と前記第2電極部との間の静電容量を検出する容量検出回路と、
サンプリング前後の静電容量値の差分ΔCを計測し、該差分ΔCと予め定めた閾値Ctaを比較して、ΔC≧Ctaである場合に前記ケーシング部材への異物の付着を判定する信号処理回路と、を備えるセンサ装置。
【請求項2】
基準電位に保持される第1電極部と、
該第1電極部に対向して設けられ、周囲の圧力変化に応じて変位する第2電極部と、
該第2電極部の外側に設けられ、基準電位に保持されるケーシング部材と、
前記第2電極部からの信号を増幅して、前記第1電極部と前記第2電極部との間の静電容量を検出する容量検出回路と、
検出した静電容量値Csと予め定めた閾値Ctbを比較して、Cs>Ctbである場合に前記ケーシング部材への異物の付着を判定する信号処理回路と、を備えるセンサ装置。
【請求項3】
異物の付着を判定した場合、前記容量検出回路及び/又は前記信号処理回路のゲインが調整される、請求項1または2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記信号処理回路と外部ホストとの間でデータ伝送を行うインタフェース回路をさらに備え、
異物の付着を判定した場合、前記インタフェース回路を経由して前記外部ホストにアラーム信号を送信する、請求項1または2に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気圧や水圧などの圧力および、音波や超音波などの圧力変化を測定するためのセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力センサは、半導体製造技術を応用したMEMS(マイクロ電気機械システム)技術を用いて製造でき、例えば、約0.5~2mm角の超小型センサが実現できる。典型的な圧力センサは、2つの電極を備えたキャパシタ構造を有し、周囲圧力の変化に起因した静電容量の変化を検知することによって圧力測定が可能である。こうしたキャパシタ構造は、電極間に空気、各種ガス、電気絶縁体、圧電体などを含んでもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-120170号公報
【文献】国際公開第2016/114172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の圧力センサでは、水没や結露に起因して水滴などの異物が付着すると、検知窓が閉塞したり、電極の周囲に存在する電気力線の分布が攪乱され、測定値を変動させることがある。
【0005】
しかしながら、圧力センサからの信号を受信する外部ホストは、異物の付着という状態を認識しなければ、変動した測定値をそのまま真の値として取り扱うことになる。その結果、誤った信号処理が行われ、ユーザに不正確な情報を提示する可能性がある。
本発明の目的は、異物の付着を確実に検知できるセンサ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るセンサ装置は、
基準電位に保持される第1電極部と、
該第1電極部に対向して設けられ、周囲の圧力変化に応じて変位する第2電極部と、
該第2電極部の外側に設けられ、基準電位に保持されるケーシング部材と、
前記第2電極部からの信号を増幅して、予め定めたサンプリング周期で前記第1電極部と前記第2電極部との間の静電容量を検出する容量検出回路と、
サンプリング前後の静電容量値の差分ΔCを計測し、該差分ΔCと予め定めた閾値Ctaを比較して、ΔC≧Ctaである場合に前記ケーシング部材への異物の付着を判定する信号処理回路と、を備える。
【0007】
本発明の他の態様に係るセンサ装置は、
基準電位に保持される第1電極部と、
該第1電極部に対向して設けられ、周囲の圧力変化に応じて変位する第2電極部と、
該第2電極部の外側に設けられ、基準電位に保持されるケーシング部材と、
前記第2電極部からの信号を増幅して、前記第1電極部と前記第2電極部との間の静電容量を検出する容量検出回路と、
検出した静電容量値Csと予め定めた閾値Ctbを比較して、Cs>Ctbである場合に前記ケーシング部材への異物の付着を判定する信号処理回路と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、異物の付着を確実に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係るセンサ装置の電極構造の一例を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態1に係るセンサ装置の機械的構成の一例を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態1に係るセンサ装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
図4図4(A)は、センサ装置の開口に水滴が付着した状態を示す断面図である。図4(B)は、検出対象の静電容量の時間変化を示すグラフである。
図5】水滴Wによる寄生容量Cpwdの発生を示す説明図である。
図6】サンプリング前後の圧力値の差分ΔPの時間変化を示すグラフである。
図7】センサ装置が出力する絶対圧力Pの時間変化を示すグラフである。
図8】外部ホストおよびセンサ装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図9】本発明の実施形態2に係るセンサ装置の電極構造の一例を示す断面図である。
図10】本発明の実施形態2に係るセンサ装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
図11】水滴付着に起因した寄生容量を示す説明図である。
図12】本発明の実施形態2に係るセンサ装置の水滴検知回路の一例を示すブロック図である。
図13】本発明の実施形態3に係るセンサ装置の電極構造の一例を示す断面図である。
図14】本発明の実施形態3に係るセンサ装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
図15】水滴付着に起因した寄生容量を示す説明図である。
図16】本発明の実施形態3に係るセンサ装置の水滴検知回路の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一態様に係るセンサ装置は、
基準電位に保持される第1電極部と、
該第1電極部に対向して設けられ、周囲の圧力変化に応じて変位する第2電極部と、
該第2電極部の外側に設けられ、基準電位に保持されるケーシング部材と、
前記第2電極部からの信号を増幅して、予め定めたサンプリング周期で前記第1電極部と前記第2電極部との間の静電容量を検出する容量検出回路と、
サンプリング前後の静電容量値の差分ΔCを計測し、該差分ΔCと予め定めた閾値Ctaを比較して、ΔC≧Ctaである場合に前記ケーシング部材への異物の付着を判定する信号処理回路と、を備える。
【0011】
この構成によれば、第2電極部の外側に設けられたケーシング部材は基準電位に保持される。水滴などの異物がケーシング部材に付着すると、ケーシング部と第2電極部との間に存在する寄生容量が変化し、典型的には増加して、検出した静電容量値が増加するようになる。信号処理回路は、静電容量値の差分ΔCを計測し、この差分ΔCが閾値Ctaに等しいか、これを上回った場合にケーシング部材への異物の付着を判定する。これにより異物の付着を確実に検知できる。
【0012】
本発明の他の態様に係るセンサ装置は、
基準電位に保持される第1電極部と、
該第1電極部に対向して設けられ、周囲の圧力変化に応じて変位する第2電極部と、
該第2電極部の外側に設けられ、基準電位に保持されるケーシング部材と、
前記第2電極部からの信号を増幅して、前記第1電極部と前記第2電極部との間の静電容量を検出する容量検出回路と、
検出した静電容量値Csと予め定めた閾値Ctbを比較して、Cs>Ctbである場合に前記ケーシング部材への異物の付着を判定する信号処理回路と、を備える。
【0013】
この構成によれば、第2電極部の外側に設けられたケーシング部材は基準電位に保持される。水滴などの異物がケーシング部材に付着すると、第1電極部と第2電極部との間に存在する寄生容量が変化し、典型的には増加して、検出した静電容量値が増加するようになる。信号処理回路は、静電容量値Csが閾値Ctbを上回った場合にケーシング部材への異物の付着を判定する。これにより異物の付着を確実に検知できる。
【0014】
本発明において、異物の付着を判定した場合、前記容量検出回路及び/又は前記信号処理回路のゲインが調整されることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、異物が付着すると、検出した値が変化し、測定系のダイナミックレンジを逸脱して上限値または下限値に飽和することがある。そこで、圧力検出回路及び/又は前記信号処理回路のゲインを減少または増加させることによって、検出した値をダイナミックレンジ内に維持することが可能になる。
【0016】
本発明において、前記信号処理回路と外部ホストとの間でデータ伝送を行うインタフェース回路をさらに備え、
異物の付着を判定した場合、前記インタフェース回路を経由して前記外部ホストにアラーム信号を送信することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、異物の付着を判定した場合、インタフェース回路を経由して外部ホストにアラーム信号を送信することによって、異物付着状態を外部ホストに通知することが可能になる。これにより外部ホストは、ユーザに提示する情報に誤差があることを通知したり、ユーザへの情報提示を停止したりできる。
【0018】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るセンサ装置の電極構造の一例を示す断面図である。この電極構造10は、第1電極部として機能する導電性のベース基板11と、第2電極部として機能するメンブレン15と、両者間に間隙Gを維持するスペーサ部とを備える。ベース基板11は導電性がない場合は内側の面に電極を付加してもよい。スペーサ部は、ガード電極層13と、その上下に配置された電気絶縁層12,14とを含む。ベース基板11とメンブレン15は間隙側に電極を付けて外部端子へ引き出してもよい。
【0019】
電極間の静電容量Csは、間隙Gの誘電率ε、電極面積S、電極間距離dを用いて、Cs=ε×S/dで表される。外部と間隙Gとの圧力差に応じてメンブレン15が弾性変形すると、メンブレン15とベース基板11との間の電極間距離dが変化し、それに応じて静電容量Csも変化する。静電容量Csの変化は、センス端子TSを経由して外部回路によって検出される。
【0020】
ベース基板11とメンブレン15との間の静電容量を測定する場合、ベース端子TBとセンス端子TSとの間に正電圧または負電圧を一定周期で印加し、発生する電荷を取り出してA/D(アナログ/デジタル)変換し、続いてデジタル演算によって直線性や温度特性を補正して適正な圧力値に変換している。
【0021】
ベース基板11およびメンブレン15は、例えば、多結晶Si、アモルアァスSi、単結晶Siなどの導電性材料で形成される。電気絶縁層12,14は、酸化シリコンなどの電気絶縁性材料で形成される。ガード電極層13は、メンブレン15とベース基板11との間に介在することにより、圧力変化に関係しない浮遊静電容量をキャンセルすることが可能になる。
【0022】
図2は、本発明の実施形態1に係るセンサ装置の機械的構成の一例を示す断面図である。センサ装置20は、基板21と、基板21の上に搭載された集積回路30と、図1に示した電極構造10と、ケーシング22などを備える。
【0023】
集積回路30は、例えば、ASIC、FPGA、PLD、CPLDなどで構成され、アナログ回路およびプログラム可能なデジタル回路が内蔵されている。電極構造10は、集積回路30の上に搭載可能であり、ボンディングワイヤを用いて互いに電気的に接続される。基板21には、配線パターン、電源端子、インタフェース端子などが設けられ、その上面には集積回路30が搭載され、ボンディングワイヤを用いて互いに電気的に接続される。
【0024】
ケーシング22は、金属などの導電性材料で形成された筒状部材であり、基板21の上面に固定された状態で電極構造10および集積回路30を収納するための内部空間を確保している。ケーシング22の上部には、外気と内部空間とを連通するための開口22aが設けられる。内部空間は、空気だけでもよく、あるいは図示のようにゲル(gel)23が充填されてもよい。ゲル23は、電極構造10および集積回路30を封入するために使用される。ゲル23の柔軟性により、外部圧力は電極構造10へ伝達可能である。さらにゲル23の防水性、耐水性、防食性により電極構造10および集積回路30の保護が図られる。
【0025】
図3は、本発明の実施形態1に係るセンサ装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。集積回路30は、増幅器31と、CDC(Capacitance to Digital Convertor)回路32と、デジタルフィルタ33と、温度センサ35と、TDC(Temperature to Digital Convertor)回路36と、デジタルフィルタ37と、同期回路40と、デジタル補正部41と、メモリ部42と、ロジック部43と、デジタルI/F(インタフェース)部44などで構成される。なお、図示していないが、電極構造10と増幅器31との間には、電極構造10に矩形波電圧を供給するパルス発生器が設けられる。こうした集積回路30は、CPU、GPUなどの演算プロセッサ、EEPROM、RAMなどのメモリ、ソフトウエア、アナログ回路などのハードウエアの組合せで実装できる。
【0026】
増幅器31は、上述した電極構造10からの電荷信号をアナログ圧力信号に変換して適正なレベルまで増幅する。CDC回路32は、増幅器31からの圧力信号をデジタル信号に変換する。デジタルフィルタ33は、CDC回路32からのデジタル信号に対してフィルタリングを施し、高域周波数のノイズ成分を除去し、低域周波数帯の信号を出力する。
【0027】
温度センサ35は、PN接合ダイオードやサーミスタなどを含み、電極構造10近傍の温度を計測してアナログ温度信号を出力する。TDC回路36は、温度センサ35からの温度信号をデジタル信号に変換する。デジタルフィルタ37は、TDC回路36からのデジタル信号に対してフィルタリングを施し、高域周波数のノイズ成分を除去し、低域周波数帯の信号を出力する。
【0028】
デジタル補正部41は、温度センサ35からのデジタル温度信号およびメモリ部42に保存された補正係数を用いて、デジタルフィルタ33から出力されるデジタル圧力信号を補正し、温度補正および直線性補正を行う。
【0029】
同期回路40は、CDC回路32、TDC回路36、デジタルフィルタ33,37に所定周期のクロックを供給してデジタル動作を同期させる。このクロックに基づいて圧力信号のサンプリング周期が設定される。クロックは、固定された単一周期でもよく、あるいは複数の周期から選択可能でもよい。
【0030】
メモリ部42は、EEPROM、ポリヒューズ、RAMなどで構成され、レジスタおよびFIFOバッファを有する。レジスタは、測定データ、補正係数などの各種デジタルデータを保存する機能を有する。FIFOバッファは、デジタルデータを一時的に保存して、入力と出力のタイミングを調整する機能を有する。一括でデジタルデータを読み出すことで通信の頻度を低減し、消費電力をセーブすることが可能である。
【0031】
デジタルI/F部44は、外部ホストと通信する機能を有し、各種デジタルデータの送受信を行う。外部ホストは、PC(パーソナルコンピュータ)、スマートフォン、携帯電子機器、腕時計などとして構成され、CPU、GPUなどの演算プロセッサ、EEPROM、RAMなどのメモリ、ソフトウエア、アナログ回路などのハードウエアの組合せで構成でき、類似の通信インタフェースを含む。
【0032】
ロジック部43は、ソフトウエアで実装される各種プログラムを保存する機能を有し、例えば、メモリ部42に保存された測定データに対して信号処理を施すプログラム、集積回路30の全体動作を制御するプログラム、外部ホストへの送信データ(例えば、アラーム)を生成するプログラム、外部ホストからの受信データを処理するプログラムなどが保存される。
【0033】
次にデジタル補正部41の特性補正機能について説明する。センサ装置20は、出荷前の特性検査の際に製品テスタを用いて絶対圧力値の校正を行ってから出荷する。絶対圧力値の校正は、例えば、温度:-20℃/25℃/65℃、圧力範囲:30kPa~110kPaの環境にてセンサ出力の初期値を測定する。これらの初期値に基づいて、補正係数aij(i,jは整数)を算出し、これらを集積回路30内の不揮発メモリに保存しておく。
【0034】
次に、センサ装置20を搭載した電子機器において実際に圧力センシングを実施する場合、デジタル補正部41は、補正係数aijを読み出し、測定した圧力値と温度値を用いて多項式演算を行い、下記の最終出力p(L,T)が得られる。ここで、aijは温度/直線性の補正係数、f(L)は直線性の関数、f(T)は温度の関数である。
p(L,T)=Σ[aij・f(L)・f(T)] …(1)
【0035】
これらの補正演算は、集積回路30内のCPUによって1ms以内に実行され、結果として温度特性と直線性が補正され、使用温度範囲にて高精度な絶対圧力値が得られる。
【0036】
次にロジック部43の各種機能について説明する。一例として、ロジック部43には下記のような機能を有するプログラムが保存される。
・水滴検知機能
・ゲイン調整機能
・閾値/ゲイン設定機能
・ゲイン初期化機能
・アラーム機能
・高速ODR(Output Data Rate)機能
【0037】
最初に水滴検知機能について説明する。図4(A)は、センサ装置20の開口22aに水滴Wが付着した状態を示す断面図である。図4(B)は、検出対象の静電容量Cの時間変化を示すグラフである。図5は、水滴Wによる寄生容量Cpwdの発生を示す説明図である。ケーシング22は接地され、ベース基板11とともにグランド電位に保持される。
【0038】
水滴Wが付着していない場合、センサ装置20のメンブレン15が気圧に応じて撓み変形しており、電極間の静電容量Csの計測によって気圧を正確に検出できる。一方、図4に示すように、時刻t0で水滴Wが開口22aに接触し始めて、時刻t1で水滴Wが完全に付着すると、電極間の静電容量Csに対して水滴Wによる静電容量ΔCが追加されるようになる。一例として、時刻t0から時刻t1までは約1ms(ミリ秒)以内であり、ΔCは約0.1pF~10pFである。
【0039】
図6は、サンプリング前後の圧力値の差分ΔPの時間変化を示すグラフである。圧力値の差分ΔPは、静電容量の差分ΔCに対応する。気圧が変化しない場合、差分ΔPはゼロを示すが、時刻t0~t1で水滴Wが付着すると、ΔPはパルス状に増加して、その後再びゼロに戻る。このとき差分ΔPと予め定めた閾値Pthを比較して、ΔP≧Pthである場合にケーシング22への水滴Wの付着を判定することができる。圧力閾値Pthは、静電容量の閾値Ctaに対応する。
【0040】
次にゲイン調整機能について説明する。図7は、センサ装置20が出力する絶対圧力Pの時間変化を示すグラフである。絶対圧力Pは、電極間の静電容量Csに対応する。水滴Wが付着していない場合、絶対圧力Pは約1気圧に相当する100kPaを示している。ゲイン調整を行わない場合、時刻t0~t1で水滴Wが付着すると、水滴Wによる静電容量ΔCの増加に起因して絶対圧力Pは大きく増加し、測定系のダイナミックレンジを逸脱して上限値UL(ここでは、130kPa)に飽和してしまう。出力信号が飽和すると、常に一定となり、無意味な数値になる。
【0041】
一方、上述のように水滴付着を検知した場合、ゲイン調整機能によりゲインを減少させることによって、グラフの△印で示すように、気圧の変化に応じた信号を出力することが可能になる。従って、絶対圧力Pは、水滴Wによる誤差を内在することになるが、圧力の相対変化に関する情報を提示することが可能になる。
【0042】
ゲイン調整は、集積回路30の各ブロックのうちの少なくとも1つのゲインを増減させてもよく、あるいはロジック部43においてデジタルデータに対して信号処理を施すプログラムを用いて行ってもよい。
【0043】
次に閾値/ゲイン設定機能とゲイン初期化機能について説明する。上述した閾値Pthおよび集積回路30の各ブロックのゲインは、工場出荷時の初期値および外部ホストが設定可能なユーザ設定値としてメモリ部42に保存可能である。そのため外部ホストからのコマンドに従って、閾値Pthおよび集積回路30のゲインを変更したり、初期化することが可能である。
【0044】
一例として、メモリ部42に水滴付着前の初期ゲインおよび水滴付着後のゲインを予め保存する。ゲインは、デジタル補正部41の演算結果に対して乗算することで反映してもよい。ゲイン調整後の最終出力p(L,T,G)は、下記の式(2)で表される。ここで、aijは温度/直線性の補正係数、f(L)は直線性の関数、f(T)は温度の関数、Gはゲインである。
p(L,T,G)=Σ[aij・f(L)・f(T)]×G …(2)
【0045】
例えば、初期ゲインGi=1.0、水滴付着後ゲインGwd=0.1に設定した場合、水滴付着の前後でゲインが1/10に切り替わるため、水滴の影響によって信号が飽和することを回避できる。その後、水滴が蒸発する時間を見計らって、初期ゲインに戻してもよく、これにより通常の圧力測定を再開することが可能である。
【0046】
次にアラーム機能について説明する。上述のように水滴付着を検知した場合、メモリ部42に事前に保存したアラーム情報を、デジタルI/F部44を経由して外部ホストに送信することが可能である。アラーム情報は、テキストデータまたはバイナリデータの形態でもよく、ハードウェアの外部出力の割込み信号の形態でもよい。例えば、水滴付着を検知した場合、メモリ部42の所定アドレスに設定された水滴検知ビット(フラグ)を0→1に切り替え、このフラグ情報を、例えば、SPI/I2Cなどのシリアル通信規格に従って外部ホストに送信してもよい。あるいは、水滴付着イベントの発生を表示する割込みレジスタにフラグ情報を転送し、外部ホストから読み出してもよい。あるいは、集積回路30の外部出力端子を介して出力レベルが0→1に切り替わるような割込み信号を出力してもよく、この場合はリアルタイムで通知できる。
【0047】
外部ホストが集積回路30からアラームを受信すると、センサ装置20が非定常状態であることを認識できる。これにより外部ホストは、ユーザに提示する情報に誤差があることを通知したり、ユーザへの情報提示を停止したりできる。
【0048】
次に高速ODR(Output Data Rate)機能について説明する。同期回路40は、複数の周波数を有するクロック、例えば、低周波クロックと高周波クロックを選択的に発生するように構成してもよい。同期回路40が発生するクロックの周波数を高くすることによって、1回の圧力測定に要する時間が短くなり、全体の測定時間も短縮されて、高速ODRを実現できる。例えば、クロック周波数66kHz(周期15.1μs)で128回のサンプリングを実施すると、測定時間は15.1μs×128=1940μsとなる。一方、クロック周波数を2倍の132kHz(周期7.6μs)で128回のサンプリングを実施すると、測定時間は7.6μs×128=970μsとなり、全体の測定時間を短縮できる。連続的に測定を続けると、970μs毎に圧力値が得られることになる。
【0049】
こうした高速ODR手法を用いて高速レートの圧力測定を行い、連続する2つのサンプリング時刻での圧力差分ΔPを監視する。例えば、ODR=1000Hzとすると、1ms毎に圧力差分ΔPが得られる。外部気圧は、その性質上、msオーダーの急激な過渡変化を起こすことはなく、水滴が付着した場合にのみ急激な圧力変化が起こる。そこで、差分ΔPと予め定めた閾値Pthを比較して、ΔP≧Pthである場合にケーシング22への水滴Wの付着を判定することができる。
【0050】
図8は、外部ホストおよびセンサ装置の動作の一例を示すフローチャートである。ユーザがホストにインストールされた圧力測定アプリを起動すると、ステップH1において、ホストはセンサ制御フローを開始する。次にステップH2において、ホストは、水滴検知モードに必要なパラメータを設定するコマンドをセンサに送信する。センサは、ステップS1において水滴検知モードに必要なパラメータ(例えば、サンプリングレート、閾値Pth、ゲイン切替えの有効/無効)をメモリに保存する。
【0051】
次にステップH3において、ホストは、圧力測定を開始するコマンドをセンサに送信する。センサは、ステップS2において圧力測定を開始し、続いてステップS3において測定した圧力データをメモリに保存する。次にステップH4において、ホストは、圧力データを読み出すためのコマンドをセンサに送信して、測定された圧力データを受信する。次にステップH5において、ホストは、圧力測定アプリの画面に測定された圧力を表示する。ステップS3,H4,H5は、マルチタスク処理によって他のステップと同時並行に実行される。
【0052】
続いてセンサは、ステップS4においてサンプリング前後の圧力データの差分ΔPを算出し、ステップS5において差分ΔPと予め定めた閾値Pthを比較する。差分ΔPが閾値Pthより小さい場合(ΔP<Pth)、ステップS6に移行して圧力測定を継続するものと判定し、ステップS4に戻る。一方、ΔP≧Pthである場合、ステップS7に移行してセンサへの水滴付着ありと判定し、水滴検知アラームを発動する。この場合、例えば、割り込み出力端子をローレベルからハイレベルに変化させてもよく、あるいは状態レジスタのフラグを立ててもよい。
【0053】
続いてセンサは、ステップS8においてゲイン切り替えが有効または無効であるかを確認する。無効であれば、ステップS9に移行してゲイン切り替えなしで測定を停止する。一方、有効であれば、ステップS10に移行してゲインを下げて測定を継続する。
【0054】
一方、ステップH6において、ホストは、センサからの水滴検知アラームを確認する。次にステップH7において、圧力測定アプリの画面での圧力表示を停止する。このときアラーム発生のメッセージを表示してもよい。次にステップH8において、ホストは、圧力測定を停止するコマンドをセンサに送信する。センサは、ステップS11において圧力測定を停止する。
【0055】
このように本実施形態によれば、水滴の付着を正確に検出することが可能になる。さらに水滴付着後はゲイン切り替えを行うことが好ましく、これにより測定値がダイナミックレンジの上限値または下限値に飽和するのを回避でき、測定を継続できる。
【0056】
また、ホストを使用しているユーザに向けて水滴検知アラームを通知できるため、ユーザは、センサが非定常状態であることを認識できる。
【0057】
また、集積回路のデジタル信号処理によって、水滴検出フロー、ゲイン調整フロー、アラーム発動フローなどがプログラミングによって容易に実装可能である。また、簡易なロジック回路で集積化できるため、チップ面積やコストの増加を抑制しつつ、高い付加価値を実現することができる。
【0058】
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2に係るセンサ装置の電極構造の一例を示す断面図である。この電極構造50は、超音波を送信/受信するpMUT(Piezo Micro-machined Ultrasonic Transducer)として使用可能であり、一例として、シリコンなどの基板51と、AlNなどの支持層52と、AlN,KNN,PZTなどの圧電体層53と、第1電極部としての下部電極54と、ヒータ55と、第2電極部としての上部電極56と、ケーシング部材としてのAlNなどの保護膜57とを備える。基板51には、超音波が通過する窓51aが設けられる。
【0059】
図10は、本発明の実施形態2に係るセンサ装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。集積回路60は、CPUなどのコントローラ61と、電荷ポンプ回路(昇圧回路)62と、増幅器63と、バンドパス特性を備えたADC(Analog to Digital Convertor)回路64と、DSP(Digital Signal Processor)回路65と、基準電圧回路66と、メモリ67と、I2CなどのI/F(インタフェース)回路68などで構成される。上部電極56は、スイッチ回路により、増幅器63またはADC回路64に交互に接続される。下部電極54は、基準電圧回路66に接続される。バンドパス特性はADCでAD変換後にデジタルフィルタで構成してもよい。
【0060】
センサ装置の動作に関して、下部電極54と上部電極56との間に、例えば、周波数20kHz~500kHzの駆動信号をパルス状に印加すると、ピエゾ効果によって圧電体層53が振動し、空気の圧力変化である超音波USが窓51aを通って外部に放出される。放出された超音波USが物体によって反射され、再び窓51aを通って圧電体層53を振動させる。このときピエゾ効果によって下部電極54と上部電極56との間にパルス信号が発生する。駆動信号からパルス信号までの時間を測定することにより、センサから物体までの距離が計測できる。
【0061】
こうしたセンサ装置に、水滴などの異物を検知する機能を付与できる。一例として、図9に示すように、保護膜57には、上部電極56を露出させる開口57aが設けられる。保護膜57の上面には導電性薄膜が設けられ、この薄膜は、下部電極54とともに基準電圧(例えば、グランド電位)に保持される。
【0062】
図11は、水滴付着に起因した寄生容量を示す説明図である。保護膜57には、上部電極56を露出させる開口57aが設けられる。保護膜57の上面には導電性薄膜が設けられ、この薄膜は、下部電極54とともに基準電圧(例えば、グランド電位)に保持される。下部電極54と上部電極56との間には検出対象の静電容量Csが存在する。水滴が開口57aに付着すると、上部電極56と導電性薄膜とが容量結合し、水滴に起因した新たな寄生容量Cpが静電容量Csに対して並列的に追加される。
【0063】
図12は、本発明の実施形態2に係るセンサ装置の水滴検知回路の一例を示すブロック図である。集積回路70は、増幅器71と、CDC回路72と、デジタルフィルタ73と、同期回路75と、ロジック部74と、デジタルI/F部76などで構成される。なお、図示していないが、電極構造50と増幅器71との間には、電極構造50に矩形波電圧を供給するパルス発生器が設けられる。こうした集積回路70は、CPU、GPUなどの演算プロセッサ、EEPROM、RAMなどのメモリ、ソフトウエア、アナログ回路などのハードウエアの組合せで実装できる。
【0064】
増幅器71は、上述した電極構造50からの電荷信号をアナログ圧力信号に変換して適正なレベルまで増幅する。CDC回路72は、増幅器71からの圧力信号をデジタル信号に変換する。デジタルフィルタ73は、CDC回路72からのデジタル信号に対してフィルタリングを施し、高域周波数のノイズ成分を除去し、低域周波数帯の信号を出力する。
【0065】
ロジック部74は、ソフトウエアで実装される各種プログラムを保存する機能を有し、例えば、メモリに保存された測定データに対して信号処理を施すプログラム、集積回路70の全体動作を制御するプログラム、外部ホストへの送信データ(例えば、アラーム)を生成するプログラム、外部ホストからの受信データを処理するプログラムなどが保存される。
【0066】
同期回路75は、CDC回路72、デジタルフィルタ73、ロジック部74に所定周期のクロックを供給してデジタル動作を同期させる。このクロックに基づいてサンプリング周期が設定される。
【0067】
デジタルI/F部76は、外部ホストと通信する機能を有し、各種デジタルデータの送受信を行う。
【0068】
次に水滴検知の動作について説明する。下部電極54を基準電圧回路66から切り離し、事前に水滴が付着していない状態でCsの最大値Cs_maxを計測し、閾値Ctbとしてメモリに保存する。水滴が付着すると寄生容量Cpが発生し、電極間容量CsはCs+Cpに変化する。水滴付着の診断モードでは、電極間容量Csを定期的に測定する。この場合、上部電極56に矩形パルスを入力してCsを測定する。Cs>Ctbの場合に水滴付着と判定できる。
【0069】
代替として、サンプリング前後の静電容量値の差分ΔCを計測し、該差分ΔCと予め定めた閾値Ctaを比較して、ΔC≧Ctaである場合に水滴付着ありと判定することが可能である。
【0070】
こうして水滴付着と判定した場合、実施形態1と同様に、回路系のゲイン調整機能、アラーム機能を実施することも可能である。
【0071】
(実施形態3)
図13は、本発明の実施形態3に係るセンサ装置の電極構造の一例を示す断面図である。この電極構造80は、音波を電気信号に変換するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイクロホンとして使用可能であり、一例として、シリコンなどの基板81と、電気絶縁層82と、第2電極部としての導電性の振動板83と、電気絶縁性のスペーサ84と、第1電極部としての導電性の背極板85と、電気絶縁層86,87とを備える。電気絶縁層86,87には、振動板83と接続された電極Daおよび背極板85と接続された電極Dbが設けられる。背極板85には、音波が通過する多数の貫通孔85aが設けられる。
【0072】
図14は、本発明の実施形態3に係るセンサ装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。集積回路90は、電圧レギュレータ91と、電荷ポンプ回路92と、基準電圧回路93と、増幅器94と、ADC(Analog to Digital Convertor)回路95と、DSP(Digital Signal Processor)回路96と、PDM(Pulse Density Modulation)回路97と、I2CなどのI/F(インタフェース)回路98と、フィルタ回路99と、バッファ回路100などで構成される。背極板85は、電荷ポンプ回路(昇圧回路)92に接続され、所定のDC電圧に保持される。振動板83は、基準電圧回路93および増幅器94に接続され、所定の基準電圧に保持される。
【0073】
センサ装置の動作に関して、振動板83と背極板85との間にはDC電圧が印加される。上方から音波が到来して、貫通孔85aを通過し、振動板83を振動させる。このとき電極間距離が変化して、電極間の静電容量Csも変化し、振動板83の電圧が変化する。この電圧信号が増幅され、ADC回路95によってデジタル信号に変換され、フィルタ回路99を経由してアナログ信号としても利用される。こうして空気の圧力変化である音波が電気信号に変換される。
【0074】
こうしたセンサ装置に、水滴などの異物を検知する機能を付与できる。一例として、図15に示すように、電極構造80には、導体を有するFPC(フレキシブルプリント基板)が固定され、さらに導電性材料で形成されたケーシング88が、電気絶縁性の補強板Laおよび接着剤Lbを介して固定される。ケーシング88には、音波が通過する開口88aが設けられる。ケーシング88は、基準電圧(例えば、グランド電位)に保持される。振動板83と背極板85との間には検出対象の静電容量Csが存在する。水滴が開口88aに付着すると、FPCの導体とケーシング88とが容量結合し、水滴に起因した新たな寄生容量Cpが静電容量Csに対して並列的に追加される。
【0075】
図16は、本発明の実施形態3に係るセンサ装置の水滴検知回路の一例を示すブロック図である。集積回路110は、増幅器111と、CDC回路112と、デジタルフィルタ113と、同期回路115と、ロジック部114と、デジタルI/F部116などで構成される。なお、図示していないが、電極構造80と増幅器111との間には、電極構造80に矩形波電圧を供給するパルス発生器が設けられる。こうした集積回路110は、CPU、GPUなどの演算プロセッサ、EEPROM、RAMなどのメモリ、ソフトウエア、アナログ回路などのハードウエアの組合せで実装できる。
【0076】
増幅器111は、上述した電極構造80からの電荷信号をアナログ圧力信号に変換して適正なレベルまで増幅する。CDC回路112は、増幅器111からの圧力信号をデジタル信号に変換する。デジタルフィルタ113は、CDC回路112からのデジタル信号に対してフィルタリングを施し、高域周波数のノイズ成分を除去し、低域周波数帯の信号を出力する。
【0077】
ロジック部114は、ソフトウエアで実装される各種プログラムを保存する機能を有し、例えば、メモリに保存された測定データに対して信号処理を施すプログラム、集積回路110の全体動作を制御するプログラム、外部ホストへの送信データ(例えば、アラーム)を生成するプログラム、外部ホストからの受信データを処理するプログラムなどが保存される。
【0078】
同期回路115は、CDC回路112、デジタルフィルタ113、ロジック部114に所定周期のクロックを供給してデジタル動作を同期させる。このクロックに基づいてサンプリング周期が設定される。
【0079】
デジタルI/F部114は、外部ホストと通信する機能を有し、各種デジタルデータの送受信を行う。
【0080】
次に水滴検知の動作について説明する。振動板83を基準電圧回路93から切り離し、事前に水滴が付着していない状態でCsの最大値Cs_maxを計測し、閾値Ctbとしてメモリに保存する。水滴が付着すると寄生容量Cpが発生し、電極間容量CsはCs+Cpに変化する。水滴付着の診断モードでは、電極間容量Csを定期的に測定する。この場合、振動板83に矩形パルスを入力してCsを測定する。Cs>Ctbの場合に水滴付着と判定できる。
【0081】
代替として、サンプリング前後の静電容量値の差分ΔCを計測し、該差分ΔCと予め定めた閾値Ctaを比較して、ΔC≧Ctaである場合に水滴付着ありと判定することが可能である。
【0082】
こうして水滴付着と判定した場合、実施形態1と同様に、回路系のゲイン調整機能、アラーム機能を実施することも可能である。
【0083】
以上の実施形態では、異物として水滴を例示したが、それ以外にも油、泥、海水などの各種液体、土、砂、埃、ガラス片、金属片、木片、紙片、布きれなどの各種固体、虫、毛、カビなどの各種生体物質の付着を検出することも可能である。
【0084】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、異物の付着を確実に検知できるため、産業上極めて有用である。
【符号の説明】
【0086】
10,50,80 電極構造
11 ベース基板
12,14 電気絶縁層
13 ガード電極層
15 メンブレン
20 センサ装置
21 基板
22,88 ケーシング
22a 開口
23 ゲル
30,60,70,90,110 集積回路
53 圧電体層
54 下部電極
56 上部電極
57 保護膜
83 振動板
85 背極板
G 間隙
W 水滴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16